(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092338
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】紙幣処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/10 20190101AFI20220615BHJP
B65H 5/28 20060101ALI20220615BHJP
B65H 29/66 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
G07D11/10 131C
G07D11/10 131A
B65H5/28 Z
B65H29/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205100
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】下野 元喜
【テーマコード(参考)】
3E040
3E141
3F053
3F101
【Fターム(参考)】
3E040AA01
3E040BA06
3E040CA20
3E040FB03
3E040FB15
3E141AA01
3E141BA06
3E141CA20
3E141FB03
3E141FB15
3F053GB01
3F053GB14
3F053LA08
3F053LB04
3F101LA08
3F101LB04
(57)【要約】
【課題】処理効率の低下を抑制することが可能となる紙幣処理装置を提供する。
【解決手段】制御部は、ドラム31をドラム位置検出手段191により検出される第1のドラム位置から固定の回転速度で紙幣収納方向へ所定時間回転させた後、リール101を固定の回転速度でテープ巻取方向へ回転させると共にドラム31が第2のドラム位置に位置したことをドラム位置検出手段191により検出するまでのリール巻戻時間を取得し、このリール巻戻時間に基づいて、予め作成されたリール巻戻時間と累積巻取長さとの対比テーブルを参照し、累積巻取長さを推定する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を一枚ずつテープに挟持しながら回転体であるドラムに巻き付けて収納すると共に一枚ずつ繰り出し可能なドラム式収納繰出装置と、
前記ドラム式収納繰出装置に収納している紙幣についての、収納枚数と紙幣収納繰出方向に沿った紙幣の長さおよび紙幣間の隙間の累計である累積巻取長さとを記憶する記憶部と、
前記ドラム式収納繰出装置を制御する制御部と、
を備える紙幣処理装置であって、
前記ドラム式収納繰出装置は、
前記テープの一端が連結されて紙幣を一枚ずつ前記テープに挟持しながら巻き付けて収納する前記ドラムと、
前記テープの他端が連結されて前記テープを巻き取るリールと、
紙幣の位置に基づいて前記ドラムの位置を検出するドラム位置検出手段と、
を備え、
前記制御部は、
前記ドラムを前記ドラム位置検出手段により検出される第1のドラム位置から固定の回転速度で紙幣収納方向へ所定時間回転させた後、
前記リールを固定の回転速度でテープ巻取方向へ回転させると共に前記ドラムが第2のドラム位置に位置したことを前記ドラム位置検出手段により検出するまでのリール巻戻時間を取得し、
当該リール巻戻時間に基づいて、予め作成された前記リール巻戻時間と前記累積巻取長さとの対比テーブルを参照し、前記累積巻取長さを推定する
ことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
前記第1のドラム位置は、前記ドラムが次の紙幣の受け入れを待機するドラム待機位置である
ことを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記推定した累積巻取長さと、前記記憶部に記憶されている累積巻取長さとに差異がある場合に、前記記憶部に記憶されている累積巻取長さを、前記推定した累積巻取長さに更新する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
前記ドラム位置検出手段は、
前記ドラムにおける紙幣入出口側に設けられて前記ドラム式収納繰出装置へ収納される、または前記ドラム式収納繰出装置から繰り出される紙幣を検知する紙幣検知センサを有し、
前記ドラム式収納繰出装置への紙幣の収納動作において、前記紙幣検知センサが、前記ドラムへ収納される紙幣の通過によって紙幣検知状態から紙幣非検知状態へと変化すると、前記ドラムが前記第1のドラム位置に位置したことを検出する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の紙幣処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記紙幣検知センサが紙幣検知状態である場合に、そのまま前記ドラムを紙幣収納方向へ回転させることになり、
前記ドラム位置検出手段は、
その後、前記紙幣検知センサが紙幣検知状態から紙幣非検知状態へと変化すると、前記ドラムが前記第1のドラム位置に位置したことを検出する
ことを特徴とする請求項4に記載の紙幣処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記紙幣検知センサが紙幣非検知状態である場合に、前記リールをテープ巻取方向へ回転させ、前記ドラムに収納されていた紙幣によって前記紙幣検知センサが紙幣検知状態になると、前記ドラムを紙幣収納方向へ回転させることになり、
前記ドラム位置検出手段は、
その後、前記紙幣検知センサが紙幣検知状態から紙幣非検知状態へと変化すると、前記ドラムが前記第1のドラム位置に位置したことを検出する
ことを特徴とする請求項4または5に記載の紙幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紙幣を入金部より取り込み、識別部で識別して、一時貯留部へ一時的に貯留した後、所定の金種ごとに分類して、金種別の収納部へ収納する紙幣処理装置が知られている。そのような紙幣処理装置の中には、一時貯留部や金種別の収納部を、紙幣を一枚ずつテープに挟持しながら回転体であるドラムに巻き付けて収納し、また収納時とは逆回転でドラムを回転させて紙幣を繰り出す、テープ式あるいはドラム式とも呼ばれるものがある(例えば、特許文献1参照)。ドラム式収納繰出装置は、紙幣を集積状態で収納するスタッカと比較して、ドラムで巻き取った紙幣を一枚ずつ紙幣の姿勢を変化させることなく繰り出すことができるため、繰り出し不良が起きにくい。
【0003】
ドラム式収納繰出装置は、ドラムの外周に紙幣をテープと共に巻き付けて収納する。したがって、収納している紙幣の枚数が少ないときは、ドラムに紙幣およびテープを巻き付けた全体の外径は、ドラム自体の外径サイズに近い。そして、紙幣の収納量が増えるにしたがって、ドラムに紙幣およびテープを巻き付けた全体の外径も増えていく。そして、この外径に応じて、例えば、ドラム式収納繰出装置への紙幣の収納速度および繰出速度がほぼ一定になるようにドラムの回転を制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドラム式収納繰出装置には、ドラムに紙幣およびテープを巻き付けた全体の外径に対応するデータとして、収納している紙幣についての、紙幣収納繰出方向に沿った紙幣の長さおよび紙幣間の隙間の累計である累積巻取長さを記憶するものがある。このような装置においては、累積巻取長さを良好に把握できないと、ドラムの回転制御を適正に行うことができない可能性があり、それに起因して不具合を生じ、処理効率の低下に繋がる可能性がある。
【0006】
したがって、本発明は、処理効率の低下を抑制することが可能となる紙幣処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の態様は、紙幣を一枚ずつテープに挟持しながら回転体であるドラムに巻き付けて収納すると共に一枚ずつ繰り出し可能なドラム式収納繰出装置と、前記ドラム式収納繰出装置に収納している紙幣についての、収納枚数と紙幣収納繰出方向に沿った紙幣の長さおよび紙幣間の隙間の累計である累積巻取長さとを記憶する記憶部と、前記ドラム式収納繰出装置を制御する制御部と、を備える紙幣処理装置であって、前記ドラム式収納繰出装置は、前記テープの一端が連結されて紙幣を一枚ずつ前記テープに挟持しながら巻き付けて収納する前記ドラムと、前記テープの他端が連結されて前記テープを巻き取るリールと、紙幣の位置に基づいて前記ドラムの位置を検出するドラム位置検出手段と、を備え、前記制御部は、前記ドラムを前記ドラム位置検出手段により検出される第1のドラム位置から固定の回転速度で紙幣収納方向へ所定時間回転させた後、前記リールを固定の回転速度でテープ巻取方向へ回転させると共に前記ドラムが第2のドラム位置に位置したことを前記ドラム位置検出手段により検出するまでのリール巻戻時間を取得し、当該リール巻戻時間に基づいて、予め作成された前記リール巻戻時間と前記累積巻取長さとの対比テーブルを参照し、前記累積巻取長さを推定することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る第2の態様は、上記第1の態様において、前記第1のドラム位置は、前記ドラムが次の紙幣の受け入れを待機するドラム待機位置であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る第3の態様は、上記第1または第2の態様において、前記制御部は、前記推定した累積巻取長さと、前記記憶部に記憶されている累積巻取長さとに差異がある場合に、前記記憶部に記憶されている累積巻取長さを、前記推定した累積巻取長さに更新することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る第4の態様は、上記第1乃至第3のいずれか一態様において、前記ドラム位置検出手段は、前記ドラムにおける紙幣入出口側に設けられて前記ドラム式収納繰出装置へ収納される、または前記ドラム式収納繰出装置から繰り出される紙幣を検知する紙幣検知センサを有し、前記ドラム式収納繰出装置への紙幣の収納動作において、前記紙幣検知センサが、前記ドラムへ収納される紙幣の通過によって紙幣検知状態から紙幣非検知状態へと変化すると、前記ドラムが前記第1のドラム位置に位置したことを検出することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る第5の態様は、上記第4の態様において、前記制御部は、前記紙幣検知センサが紙幣検知状態である場合に、そのまま前記ドラムを紙幣収納方向へ回転させることになり、前記ドラム位置検出手段は、その後、前記紙幣検知センサが紙幣検知状態から紙幣非検知状態へと変化すると、前記ドラムが前記第1のドラム位置に位置したことを検出することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る第6の態様は、上記第4または第5の態様において、前記制御部は、前記紙幣検知センサが紙幣非検知状態である場合に、前記リールをテープ巻取方向へ回転させ、前記ドラムに収納されていた紙幣によって前記紙幣検知センサが紙幣検知状態になると、前記ドラムを紙幣収納方向へ回転させることになり、前記ドラム位置検出手段は、その後、前記紙幣検知センサが紙幣検知状態から紙幣非検知状態へと変化すると、前記ドラムが前記第1のドラム位置に位置したことを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、処理効率の低下を抑制することが可能となる紙幣処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の紙幣処理装置の内部構成を概略的に示す側面図である。
【
図2】実施形態の紙幣処理装置の内部構成を概略的に示す側面図であって、入金処理ルートを太線で示すものである。
【
図3】実施形態の紙幣処理装置の内部構成を概略的に示す側面図であって、分配処理ルートを太線で示すものである。
【
図4】実施形態の紙幣処理装置の内部構成を概略的に示す側面図であって、出金処理ルートを太線で示すものである。
【
図5】実施形態の紙幣処理装置のドラム式収納繰出装置を示す正面図であって、収納している紙幣がない状態を示すものである。
【
図6】実施形態の紙幣処理装置のドラム式収納繰出装置を示す正面図であって、収納している紙幣が少ない状態を示すものである。
【
図7】実施形態の紙幣処理装置のドラム式収納繰出装置を示す正面図であって、収納している紙幣が多い状態を示すものである。
【
図8】実施形態の紙幣処理装置におけるリール巻戻時間と累積巻取長さとの対比テーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態の紙幣処理装置を図面を参照して以下に説明する。
【0016】
<紙幣処理装置10の全体構成>
図1に示す実施形態の紙幣処理装置10は、装置外からセットされる紙幣Sを識別しつつ内部に一時貯留する入金処理、このように一時貯留した紙幣Sを種類別に分類して内部に収納する分配処理、分類されて収納されている紙幣Sを装置外に取り出し可能に出金する出金処理などが可能な紙幣入出金装置である。なお、以下の説明における「装置前後方向の前側」は紙幣処理装置10における操作者側を、「装置前後方向の後側」は紙幣処理装置10における操作者とは反対側を、「装置左右方向」は紙幣処理装置10における操作者から見ての左右を示す。
【0017】
紙幣処理装置10の装置前側の上部には、入金用の紙幣Sが装置外から挿入されてセットされると共にセットされた紙幣Sを装置内に取り込んで繰り出す入金部11が設けられている。入金部11には、操作者によって装置外から紙幣Sが投入される。このとき、入金部11には、紙幣Sが長辺を装置左右方向に沿わせ短辺を装置前後方向に沿ってやや後ろ下がりにして上下に集積された状態で投入される。入金部11は、このように装填された集積状態の紙幣Sを最上位置のものから一枚ずつその短辺が搬送方向に沿うように移動させて装置内部に繰り出す。紙幣Sは、紙幣処理装置10内の全体において、長辺を装置左右方向に沿わせた姿勢のまま移動する。
【0018】
また、紙幣処理装置10の装置前側の上部には、この入金部11の上方かつ装置前後方向の後方に、入金用の紙幣Sのうち受け入れ不可なリジェクト紙幣Sが装置内から繰り出されると共に出金用の紙幣Sが装置内から繰り出され、これらを装置外に取り出し可能に出金する出金部12が設けられている。
【0019】
紙幣処理装置10の上面における出金部12の装置前後方向の後方には、操作者の操作入力を受け付けると共に操作者に対し表示を行うタッチパネル式の操作表示部14と、紙幣処理装置10の全体を制御する制御部15と、データなどを記憶する記憶部16とが設けられている。操作表示部14は、紙幣処理装置10の操作画面や稼働状況に関する情報画面を表示する。
【0020】
紙幣処理装置10の内部には、入金部11の装置前後方向の後方に、紙幣Sを識別する識別部17が設けられており、この識別部17の装置前後方向の後方に、識別部17によって識別された紙幣Sを一時貯留すると共に貯留した紙幣Sを一枚ずつ繰り出し可能な一時貯留部としてのドラム式収納繰出装置18(A)が設けられている。
【0021】
入金部11には、載置板19が設けられており、この載置板19は、入金部11内で昇降する。入金部11は、下降状態にある載置板19上に集積状態の紙幣Sが装置外から載置されることになり、載置板19の上昇後、集積状態の紙幣Sを集積方向の上端のものから一枚ずつ紙幣処理装置10の内部に繰り出す。
【0022】
紙幣処理装置10は、上記した入金部11、出金部12、識別部17およびドラム式収納繰出装置18(A)に加えて、紙幣Sを集積状態で繰り出し可能に収納する集積式収納庫51と、紙幣Sを繰り出し可能に収納する複数の還流庫であるドラム式収納繰出装置18(B)とを内部に有している。また、紙幣処理装置10は、入金部11、出金部12、識別部17、ドラム式収納繰出装置18(A)、集積式収納庫51および複数のドラム式収納繰出装置18(B)の間で紙幣Sを搬送する搬送通路20を内部に有している。識別部17は、搬送通路20で搬送中の紙幣Sを識別する。搬送通路20の通路幅方向は装置左右方向であり、よって紙幣Sはその長辺が通路幅方向に沿う姿勢で搬送通路20によって搬送される。
【0023】
搬送通路20は、入金部11の装置前後方向の後端部から延びて、入金部11から繰り出された紙幣Sを識別部17に搬送し、その後、ドラム式収納繰出装置18(A)に搬送する入金搬送路21を有している。言い換えれば、入金搬送路21は入金部11とドラム式収納繰出装置18(A)とを結んでおり、その中間位置に識別部17が設けられている。
【0024】
また、搬送通路20は、入金搬送路21における入金部11と識別部17との間から下方に分岐する上下搬送路55と、入金搬送路21における識別部17とドラム式収納繰出装置18(A)との間から上方に分岐する出金搬送路35と、入金搬送路21における出金搬送路35の分岐位置とドラム式一時貯留部18との間から上方に分岐して出金搬送路35に合流する連結搬送路36と、を有している。上下搬送路55と出金搬送路35と連結搬送路36とが分岐することで、入金搬送路21は、入金部11と上下搬送路55の分岐位置との間の前側送路部21aと、上下搬送路55の分岐位置と出金搬送路35の分岐位置との間の中間送路部21bと、出金搬送路35の分岐位置と連結搬送路36の分岐位置との間の中間送路部21cと、連結搬送路36の分岐位置と出金搬送路35の分岐位置とドラム式収納繰出装置18(A)との間の後側送路部21dとに分けられる。
【0025】
識別部17は、中間送路部21bに設けられており、中間送路部21bで搬送中の紙幣Sの真偽、汚れ度合い、損傷度合いおよび金種と、複数枚の紙幣Sが少なくとも一部分が重なった状態で搬送される重送および規定値を超える角度となる斜行を含む搬送異常の有無とを識別する。
【0026】
入金部11にセットされた紙幣Sが、例えば、入金部11から入金搬送路21の前側送路部21aおよび中間送路部21bで識別部17に向けて搬送され、識別部17で識別後に中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dでドラム式収納繰出装置18(A)に搬送される。
【0027】
ドラム式収納繰出装置18(A)は、紙幣Sを一時的に貯留するもので、入金搬送路21の少なくとも中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dで搬送されてきた紙幣Sを一枚ずつ取り込んで収納し、収納している紙幣Sを一枚ずつ後側送路部21dに繰り出す。ドラム式収納繰出装置18(A)は、例えば、入金部11にセットされた紙幣Sの貯留および当該貯留した紙幣Sの繰り出しを行う。このドラム式収納繰出装置18(A)は、紙幣Sを一枚ずつ間隔をあけてテープ30と共に回転体であるドラム31に巻き付けて収納する巻付収納タイプであり、よって、貯留している紙幣Sをテープ30と共にドラム31から解いて一枚ずつ間隔をあけて計数しながら繰り出す。テープ30と共にドラム31に巻き付けられる紙幣Sは、テープ30のこの紙幣Sと共にドラム31に巻き付けられる部分と、テープ30の既にドラム31に巻き付けられている部分との間に、ドラム31の径方向において挟持される。言い換えれば、ドラム式収納繰出装置18(A)は、紙幣Sを一枚ずつテープ30に挟持しながら巻き付けて収納するドラム31を有し、ドラム31は、巻き取った紙幣Sを一枚ずつ繰り出す。
【0028】
巻付収納タイプのドラム式収納繰出装置18(A)は、紙幣Sを貯留する際の順番とは逆の順番で繰り出すことになる。このため、複数金種の紙幣Sをランダムに混合して貯留する場合であっても、制御部15は、識別部17の識別結果からドラム式収納繰出装置18(A)に貯留する各紙幣Sの金種などを把握可能となっており、よって、ドラム式収納繰出装置18(A)から繰り出す各紙幣Sの金種などを把握可能となっている。
【0029】
ドラム式収納繰出装置18(A)のドラム31は、回転軸回りに回転可能に設けられており、回転軸回りの一方の方向(
図1では右回り)に回転することでテープ30を巻き取るようになっている。ドラム31は、テープ30を巻き取ることで、巻き取るテープ30の間に紙幣Sを一枚ずつ挟み込んで保持するようになっている。また、ドラム31は、回転軸回りの他方の方向(
図1では左回り)に回転することで、巻き取っていたテープ30を送り出すことになり、送り出すテープ30に保持している紙幣Sを一枚ずつ繰り出すようになっている。
【0030】
出金搬送路35は、入金搬送路21の中間送路部21b,21cの間から上方に延出した後、装置前方に延出しており、この出金搬送路35の末端が出金部12に接続されている。連結搬送路36および出金搬送路35は、中間送路部21b,21cで搬送されてきた紙幣Sを出金部12に搬送する。また、出金搬送路35は、ドラム式一時貯留部18から繰り出されて後側送路部21dおよび中間送路部21cで搬送されてきた紙幣Sを出金部12に搬送する。
【0031】
ここで、出金部12は、出金搬送路35から繰り出された紙幣Sを下側から上側に順に集積させる。出金部12に集積された紙幣Sは、出金部12から装置外に取り出される。出金搬送路35は、例えば、ドラム式収納繰出装置18(A)から後側送路部21dおよび中間送路部21cに繰り出された紙幣Sを上方に分岐搬送して出金部12に搬送する。
【0032】
入金部11、出金部12、操作表示部14、識別部17、ドラム式収納繰出装置18(A)、入金搬送路21、出金搬送路35、連結搬送路36および制御部15は、紙幣処理装置10の上部を構成する上部ユニット41に設けられている。
【0033】
上部ユニット41の下側には、紙幣処理装置10の高さ方向の中間部から下部を構成する下部ユニット42が設けられている。下部ユニット42には、装置前側の前部位置に集積式収納庫51が設けられており、集積式収納庫51の装置前後方向の後方に、上下2段、装置前後方向に4列の合計8台のドラム式収納繰出装置18(B)が設けられている。8台のドラム式収納繰出装置18(B)のうち、上段の4台は高さ方向の位置を一致させており、下段の4台も高さ方向の位置を一致させている。集積式収納庫51の高さは、ドラム式収納繰出装置18(B)の2台分の高さと同等であり、集積式収納庫51は、上下2段のドラム式収納繰出装置18(B)と高さ方向の位置を重ね合わせている。
【0034】
入金搬送路21の前側送路部21aと中間送路部21bとの間から下方に分岐する上下搬送路55は、入金搬送路21から下方に延出して集積式収納庫51に接続されている。前側送路部21aと中間送路部21bとの間は、前側送路部21aから中間送路部21bへの紙幣Sの搬送が可能であり、上下搬送路55と中間送路部21bとの間は紙幣Sの行き来が可能である。上下搬送路55は、例えば、ドラム式収納繰出装置18(A)から入金搬送路21の後側送路部21dに繰り出され、後側送路部21dおよび中間送路部21c,21bで搬送されて識別部17を通過した後の紙幣Sを中間送路部21bと前側送路部21aとの間から下方に分岐搬送して集積式収納庫51に収納する。
【0035】
集積式収納庫51は、紙幣Sを一枚ずつ取り込んで収納可能であり、収納している紙幣Sを一枚ずつ繰り出し可能となっている。集積式収納庫51は、紙幣Sを上部から受け入れて水平状態で下から上に直接重なるように集積させて収納すると共に、収納している紙幣Sを上端部のものから繰り出す集積収納タイプとなっている。集積収納タイプの集積式収納庫51は、ドラム式収納繰出装置18(A)および後述するドラム式収納繰出装置18(B)のような巻付収納タイプに比べて紙幣Sの収納効率が大幅に高い。その一方で、ドラム式収納繰出装置18(A)および後述するドラム式収納繰出装置18(B)のような巻付収納タイプは、集積収納タイプの集積式収納庫51に比べて、紙幣Sの重送を生じる可能性が低く、貯留している紙幣Sを正確に一枚ずつ分離し間隔をあけて繰り出し可能である。
【0036】
搬送通路20は、上下搬送路55の装置前後方向の中間位置から後方に分岐する収納搬送路57を有している。この収納搬送路57は、上下搬送路55から装置前後方向の後方に延出した後、紙幣処理装置10の装置前後方向の後端部付近で下方に延出して装置前後方向の最後列の上段のドラム式収納繰出装置18(B)に接続されており、このドラム式収納繰出装置18(B)を介して最後列の下段のドラム式収納繰出装置18(B)にも接続されている。収納搬送路57が分岐することによって、上下搬送路55は、収納搬送路57の分岐位置から上側の上側送路部55aと、収納搬送路57の分岐位置から下側の下側送路部55bとに分けられる。
【0037】
搬送通路20は、収納搬送路57の中間位置から下方に分岐する複数具体的には3カ所の分岐搬送路61,62,63を有している。分岐搬送路61は、装置前後方向の最前列の上段のドラム式収納繰出装置18(B)に接続されており、このドラム式収納繰出装置18(B)を介して、最前列の下段のドラム式収納繰出装置18(B)に接続されている。分岐搬送路62は、前から2列目の上段のドラム式収納繰出装置18(B)に接続されており、このドラム式収納繰出装置18(B)を介して、前から2列目の下段のドラム式収納繰出装置18(B)に接続されている。分岐搬送路63は、前から3列目の上段のドラム式収納繰出装置18(B)に接続されており、このドラム式収納繰出装置18(B)を介して、前から3列目の下段のドラム式収納繰出装置18(B)に接続されている。
【0038】
8台のドラム式収納繰出装置18(B)は、いずれも、紙幣Sを収納するもので、ドラム式収納繰出装置18(A)とほぼ同様の構成である。これらのドラム式収納繰出装置18(B)は、いずれも、紙幣Sを一枚ずつ間隔をあけてテープ30と共にドラム31に巻き付けて収納する巻付収納タイプであって、収納している紙幣Sをテープ30と共にドラム31から解いて一枚ずつ間隔をあけて計数しながら繰り出す。テープ30と共にドラム31に巻き付けられる紙幣Sは、テープ30のこの紙幣Sと共にドラム31に巻き付けられる部分と、テープ30の既にドラム31に巻き付けられている部分との間に、ドラム31の径方向において挟持される。言い換えれば、ドラム式収納繰出装置18(B)は、紙幣Sを一枚ずつテープ30に挟持しながら巻き付けて収納するドラム31を有し、ドラム31は、巻き取った紙幣Sを一枚ずつ繰り出す。
【0039】
巻付収納タイプのドラム式収納繰出装置18(B)は、紙幣Sを収納する際の順番とは逆の順番で繰り出す。このため、1台のドラム式収納繰出装置18(B)に複数金種の紙幣Sをランダムに混合して収納する場合であっても、制御部15は、識別部17の識別結果から、このドラム式収納繰出装置18(B)に収納する各紙幣Sの金種などを把握可能となっており、よって、このドラム式収納繰出装置18(B)から繰り出す各紙幣Sの金種なども把握可能となっている。
【0040】
上下搬送路55の上側送路部55a、収納搬送路57および分岐搬送路61,62,63は、例えば、ドラム式収納繰出装置18(A)から入金搬送路21の後側送路部21dに繰り出され、後側送路部21dおよび中間送路部21c,21bで搬送されて識別部17を通過後の紙幣Sを中間送路部21bと前側送路部21aとの間から分岐搬送して8台のドラム式収納繰出装置18(B)に選択的に収納させる。8台のドラム式収納繰出装置18(B)は、例えば、8台全部を、それぞれが設定された単一金種の紙幣Sのみを収納する単金種収納庫に設定したり、そのうちの何台かを、それぞれが設定された単一金種の紙幣Sのみを収納する単金種収納庫に設定し、残りを、それぞれ複数金種の紙幣Sを金種混合で収納する金種混合収納庫に設定したり、そのうちの一台を、出金リジェクト紙幣を収納する出金リジェクト収納庫に設定したりすることができる。
【0041】
下部ユニット42には、集積式収納庫51と、8台のドラム式収納繰出装置18(B)と、上下搬送路55の上側送路部55aの下部と、下側送路部55bと、収納搬送路57と、分岐搬送路61~63とが設けられている。上下搬送路55の上側送路部55aの上部は上部ユニット41に設けられている。
【0042】
下部ユニット42は、装置前後方向の前方に開口する直方体の箱状の筐体75と、8台のドラム式収納繰出装置18(B)が設けられて筐体75内に配置されるユニット本体76と、筐体75の装置前後方向前部の開口を開閉する扉体77とを有している。集積式収納庫51は、ユニット本体76の前部に着脱可能に設けられている。
【0043】
<紙幣処理装置10の主な処理>
次に、実施形態の紙幣処理装置10の制御部15により制御される主な処理について説明する。
【0044】
[入金処理]
入金処理は、入金部11に装置外からセットされた紙幣Sを装置内部のドラム式収納繰出装置18(A)に一時貯留する処理である。
【0045】
入金部11に装置外から紙幣Sがセットされたことを図示略のセンサで検知した状態で、操作表示部14へ入金処理開始の操作が入力されると、制御部15の制御によって、入金部11および搬送通路20が、
図2に太線で示す入金処理ルートで紙幣Sを搬送する。
【0046】
つまり、入金部11が紙幣Sを一枚ずつ分離し所定の間隔をあけて繰り出し、繰り出された紙幣Sを、搬送通路20の入金搬送路21の前側送路部21aおよび中間送路部21bが搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が紙幣Sの識別を行う。具体的に、識別部17は、紙幣Sについて、真券であるか偽券であるかの真偽判別と、汚れ度合いが高い汚損券であるか否かの汚損判別と、損傷度合いが高い損傷券であるか否かの損傷判別と、金種識別とを行う。これらの識別に加えて、識別部17は、紙幣Sの重送および斜行を含む搬送異常の有無を識別する。
【0047】
識別部17の識別の結果、真券であって汚損券ではなく損傷券でもなく搬送異常もない、受け入れ可能と識別された正常紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dがドラム式収納繰出装置18(A)に搬送して、ドラム式収納繰出装置18(A)が貯留する(
図2の太実線参照)。それ以外の紙幣Sであって識別部17が受け入れ不可と識別したリジェクト紙幣Sについては、入金搬送路21の中間送路部21b,21cが連結搬送路36に搬送し、連結搬送路36および出金搬送路35が出金部12に搬送する(
図2の太実線から太破線参照)。制御部15は、ドラム式収納繰出装置18(A)に一時貯留する紙幣Sのそれぞれについて貯留順序と金種とを記憶する。
【0048】
入金処理において制御部15の制御により出金部12にリジェクトされるリジェクト紙幣Sは、偽券と、汚損率(汚損の度合い)が規定値よりも高い汚損券と、損傷率(損傷の度合い)が規定値よりも高い損傷券と、複数枚の紙幣Sが少なくとも一部分が重なった状態で搬送される重送および紙幣Sの角度が規定値を超える斜行紙幣Sなどの搬送異常券とである。
【0049】
入金部11にセットされた紙幣Sを全てドラム式収納繰出装置18(A)および出金部12のいずれかに搬送した状態になると、識別部17の識別結果からドラム式収納繰出装置18(A)が貯留している紙幣Sの金種別の枚数および総額などの金額情報を含む入金結果を操作表示部14が表示する。出金部12に搬送された紙幣Sは、装置外に取り出し可能となる。なお、出金部12とは別に、紙幣Sを装置外に取り出し可能とするリジェクト部を設けて、このリジェクト部に受け入れ不可の紙幣Sを搬送するようにしても良い。そして、制御部15は、入金処理を確定するか、入金処理をキャンセルするか、入金部11に紙幣Sを追加投入するかの判定を促す表示を操作表示部14に表示させる。
【0050】
[分配処理]
分配処理は、上記した入金処理でドラム式収納繰出装置18(A)に一時貯留した紙幣Sを装置内部のドラム式収納繰出装置18(B)に分類して収納する処理である。
【0051】
入金処理後の金額情報の操作表示部14への表示後、操作者が操作表示部14に入金処理を確定する操作を入力すると、制御部15の制御によって、ドラム式収納繰出装置18(A)と、搬送通路20と、8台のドラム式収納繰出装置18(B)のうちの適宜のものとが、例えば
図3に太線で示す分配処理ルートで紙幣Sを搬送し収納する。
【0052】
つまり、ドラム式収納繰出装置18(A)が一時貯留させていた紙幣Sを一枚ずつ間隔をあけて繰り出し、入金搬送路21の後側送路部21dおよび中間送路部21c,21bと、上下搬送路55の上側送路部55aと収納搬送路57とが搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が、紙幣Sの識別の順序と、重送および斜行を含む搬送異常の有無とを再度識別することになる。なお、このとき、識別部17は、真偽判別、汚損判別、損傷判別および金種識別は行わない。
【0053】
そして、制御部15は、搬送異常がなければ、この識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と既に記憶している入金処理時の金種情報とに基づいて、この紙幣Sの金種を取得して計数する。このように金種を得て計数した紙幣Sを、収納搬送路57および分岐搬送路61~63の適宜のものが制御部15で制御されて、8台のドラム式収納繰出装置18(B)のうちの、この判定した金種の紙幣Sを収納する収納先のものに収納させる。
【0054】
[出金処理]
出金処理は、装置内部のドラム式収納繰出装置18(B)に収納されている紙幣Sを装置外に取り出し可能となるように出金部12に出金する処理である。
【0055】
操作表示部14に、出金させる紙幣Sの金額情報と共に出金処理の選択操作が入力されると、制御部15は、金額情報に応じて金種別の出金枚数を決定し、出金対象金種の紙幣Sが収納されたドラム式収納繰出装置18(B)から、搬送通路20によって、例えば
図4に太線で示す出金処理ルートで紙幣Sを出金部12に搬送する。
【0056】
例えば、単一の金種が指定され、一つの第1のドラム式収納繰出装置18(B)から紙幣Sを繰り出して出金部12へ搬送する場合を例にとって出金処理を説明すると、以下のようになる。なお、複数金種の組み合わせで出金処理される場合には、適宜、複数あるドラム式収納繰出装置18(B)を切り替えながら、単一金種の場合と同じ処理を繰り返すことになる。
【0057】
つまり、第1のドラム式収納繰出装置18(B)が、収納していた紙幣Sを一枚ずつ分離し計数しつつ間隔をあけて繰り出し、繰り出された紙幣Sを、分岐搬送路61~63の適宜のもの、収納搬送路57、上下搬送路55の上側送路部55a、入金搬送路21の中間送路部21b,21c、連結搬送路36および出金搬送路35が、出金部12に向けて搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が紙幣Sの識別順序と搬送異常の有無とを再度識別することになる。なお、このとき、識別部17は、真偽判別、汚損判別および金種識別は行わず、損傷判別を行う。
【0058】
そして、制御部15は、識別部17で識別した紙幣Sが、半券などの損傷券および重送紙幣Sでなければ、斜行紙幣Sなどの搬送異常券を含め、そのまま出金部12に出金させる。
【0059】
他方、制御部15は、識別部17で識別した紙幣Sが、半券などの損傷券あるいは重送紙幣Sであれば、この紙幣Sを処理不可と判定して、第1のドラム式収納繰出装置18(B)、搬送通路20および出金部12の駆動を停止して、エラー復旧処理を促す表示を操作表示部14に表示させる。これにより、操作者が、損傷券とされた紙幣Sあるいは重送紙幣Sを含んで、搬送通路20に残留している紙幣Sを取り出すことになる。
【0060】
<ドラム式収納繰出装置18の構成>
紙幣処理装置10において一時貯留庫として使用されるドラム式収納繰出装置18(A)と金種別の還流庫として使用されるドラム式収納繰出装置18(B)とは、ほぼ同様の構成である。このドラム式収納繰出装置18についてさらに説明する。ドラム式収納繰出装置18は、制御部15によって動作が制御される。
【0061】
図5に示すように、ドラム式収納繰出装置18は、上記したドラム31と、ドラム31に長さ方向の一端部が連結されて固定される一本の上記したテープ30と、このテープ30の長さ方向の他端部が連結されて固定されるリール101とを有している。ドラム31およびリール101は、いずれも既定の外径の円筒状の部分にテープ30を巻き付ける。テープ30は既定の長さおよび既定の一定の厚さである。
【0062】
ドラム式収納繰出装置18は、筐体110と、筐体110に位置固定で回転可能に支持されたドラム回転軸111を有している。ドラム31は、ドラム回転軸111に支持されてドラム回転軸111を中心にドラム回転軸111と一体に回転する。ドラム式収納繰出装置18は、ドラム回転軸111を回転させるステッピングモータからなるドラム回転モータ115を有している。ドラム回転モータ115は、ドラム回転軸111およびドラム31を駆動力をもって回転させると共にドラム回転軸111およびドラム31にブレーキをかけてこれらを停止させる。ドラム回転モータ115は、装置電源がオフの状態でも磁力でドラム回転軸111およびドラム31を停止状態に維持するようになっている。ドラム回転モータ115は、装置電源がオンの状態では、ドラム31に巻き付けられたテープ30が駆動力をもってドラム31から引き出される際に、テープ30に抵抗力を付与し張力を発生させながら連れ回り回転する。ドラム式収納繰出装置18には、ドラム31の回転量を検知するためのエンコーダは設けられていない。
【0063】
ドラム式収納繰出装置18は、筐体110に位置固定で回転可能に支持されるリール回転軸121を有している。リール回転軸121はドラム回転軸111と平行に配置されている。リール101は、リール回転軸121に支持されてリール回転軸121を中心にリール回転軸121と一体に回転する。ドラム式収納繰出装置18は、リール回転軸121を回転させるステッピングモータからなるリール回転モータ125を有している。リール回転モータ125は、リール回転軸121およびリール101を駆動力をもって回転させると共にリール回転軸121およびリール101にブレーキをかけてこれらを停止させる。リール回転モータ125は、装置電源がオフの状態でも磁力でリール回転軸121およびリール101を停止状態に維持するようになっている。リール回転モータ125は、装置電源がオンの状態では、リール101に巻き付けられたテープ30が駆動力をもってリール101から引き出される際に、テープ30に抵抗力を付与し張力を発生させながら連れ回り回転する。ドラム式収納繰出装置18には、リール101の回転量を検知するためのエンコーダは設けられていない。
【0064】
ドラム式収納繰出装置18は、ドラム31とリール101との間に配置されて筐体110に位置固定で支持されるローラ軸131を有している。ローラ軸131は、ドラム回転軸111およびリール回転軸121と平行に配置されている。ローラ軸131には、ガイドローラ132が設けられている。ガイドローラ132は、フリーローラであり筐体110に対してローラ軸131を中心に回転可能となっている。ガイドローラ132には、テープ30のドラム31とリール101との間の部分が掛けられている。ガイドローラ132は、ドラム31との間にテープ30の直線状部135を形成する。
図6に示すように、直線状部135は、テープ30のドラム31に巻き付けられた巻付部136とで、ドラム31における、紙幣Sを入出させる紙幣入出口138を構成する。ドラム式収納繰出装置18には、ガイドローラ132の回転量を検知するためのエンコーダは設けられていない。すなわち、ドラム式収納繰出装置18には、テープ30の駆動系にエンコーダは設けられていない。
【0065】
ドラム式収納繰出装置18は、ローラ軸131に支持されて筐体110に対しローラ軸131を中心に回動するガイドアーム141を有している。ガイドアーム141には、ローラ軸131とは反対側の先端部に、ローラ軸131と平行な支持軸142が設けられており、この支持軸142には、この支持軸142を中心に回転するフリーローラである先端ローラ143が設けられている。
【0066】
ガイドアーム141は、テープ30のガイドローラ132とドラム31との間の直線状部135に沿って延在しており、先端ローラ143は、テープ30のドラム31に巻き付けられた巻付部136のドラム31の径方向における外端部に当接する。これにより、ガイドアーム141は、ドラム31へのテープ30の巻き付け量の大小に応じて姿勢が変化するテープ30の直線状部135にほぼ沿うように回動する。
【0067】
ドラム式収納繰出装置18は、ドラム式収納繰出装置18において紙幣Sが出入りする収納繰出口151を形成すると共に、収納繰出口151とドラム31の紙幣入出口138とを結ぶように延在する紙幣ガイド152および紙幣ガイド153と、これら紙幣ガイド152,153の近傍に配置されて、これら紙幣ガイド152,153の間で案内される紙幣Sを収納繰出口151と紙幣入出口138との間で行き来させる複数の搬送ローラ155とを有している。これら紙幣ガイド152,153と複数の搬送ローラ155とが、収納繰出口151と紙幣入出口138とを連結する連結搬送通路157を構成している。連結搬送通路157は、搬送通路20から紙幣Sを受け取ってドラム31に向けて搬送すると共にドラム31から繰り出された紙幣Sを受け取って搬送通路20に向けて搬送する。
【0068】
ドラム式収納繰出装置18は、搬送通路20により搬送されてきて収納繰出口151に繰り出された紙幣Sを、連結搬送通路157が紙幣ガイド152,153で案内しつつ複数の搬送ローラ155でドラム31の紙幣入出口138に向けて搬送する。また、連結搬送通路157で搬送されてきた紙幣Sを受け入れて収納するようにドラム回転モータ115がドラム回転軸111およびドラム31を紙幣Sを収納する紙幣収納方向(
図5~
図7における時計回り方向)に回転させる。その際に、制御部15は、連結搬送通路157の搬送速度に同期させるようにドラム31の回転速度を制御する。
【0069】
すると、連結搬送通路157により紙幣入出口138に搬送されてきた紙幣Sは、共に紙幣入出口138を構成する、テープ30の巻付部136と、紙幣Sと共に巻付部136に巻き付けられる直前の直線状部135との間に押し込まれ、テープ30の直線状部135を構成している部分と共に巻付部136に巻き付けられる。その結果、紙幣Sは、テープ30の巻付部136と、テープ30のこの紙幣Sと共に巻付部136に巻き付けられた部分とで、ドラム31の径方向において挟持される。ドラム式収納繰出装置18は、このようにして、搬送通路20により搬送されてきて収納繰出口151に繰り出された紙幣Sを紙幣Sの搬送方向すなわち紙幣Sの収納繰出方向に所定の間隔をあけて一枚ずつテープ30に挟持しながらドラム31に巻き付けて、テープ30の巻付部136に収納する。
【0070】
ここで、ドラム31と、ドラム31に巻き付けられたテープ30の巻付部136とが、内部に紙幣Sを収納するドラム収納部161となっている。よって、上記を言い換えると、連結搬送通路157によって紙幣入出口138に搬送されてきた紙幣Sは、紙幣入出口138を構成する、ドラム収納部161と、紙幣Sと共にドラム収納部161に巻き付けられる直前の直線状部135との間に位置し、テープ30の直線状部135を構成している部分と共にドラム収納部161に巻き付けられる。その際に、テープ30のドラム収納部161に巻き付けられた部分は、ドラム収納部161となり、紙幣Sは、このドラム収納部161内に収納される。
【0071】
また、ドラム式収納繰出装置18は、リール回転モータ125でリール回転軸121およびリール101を、リール101にテープ30を巻き取る方向であるテープ巻取方向(
図5~
図7における反時計回り方向)に回転させると、リール101にテープ30のリール101側の部分が巻き取られることになり、よって、テープ30がドラム収納部161から引き出される。すると、ドラム31に巻き付けられてドラム収納部161を構成していた巻付部136からテープ30が引き出され、それまでドラム収納部161にあってテープ30で挟持されていた紙幣Sがテープ30と共にドラム収納部161から収納繰出口151側に繰り出される。すると、この紙幣Sは、連結搬送通路157の紙幣ガイド152,153で案内されながら複数の搬送ローラ155で搬送されて収納繰出口151から搬送通路20に繰り出され、搬送通路20で搬送される。この際にも、制御部15が、連結搬送通路157の搬送速度にドラム31の繰り出し速度を同期させるようにリール101の回転速度を制御する。
【0072】
ここで、紙幣処理装置10内において、紙幣Sは、上記したように通路幅方向に長辺を沿わせ、紙幣搬送方向に短辺を沿わせる姿勢で移動することになる。よって、ドラム式収納繰出装置18内の連結搬送通路157においても、紙幣Sは、同様に、紙幣ガイド152,153で案内されながら、通路幅方向に長辺を沿わせ、紙幣搬送方向に短辺を沿わせる姿勢で移動することになる。そして、紙幣Sは、短辺を収納繰出方向に沿わせて、ドラム収納部161に収納され、ドラム収納部161から繰り出される。ドラム式収納繰出装置18は、このように紙幣Sが通路幅方向に長辺を沿わせることから、図示は略すが、ドラム31が通路幅方向となる軸方向に長い円筒状をなし、テープ30およびリール101の組が、通路幅方向となるドラム31の軸方向に離間して二組設けられている。
【0073】
筐体110には、二本のテープ30の間に紙幣検知センサ171が設けられている。紙幣検知センサ171は、紙幣Sの搬送方向においては、紙幣入出口138と同等の位置に設けられており、この位置の紙幣Sの有無を検知する。紙幣検知センサ171は、紙幣入出口138にある紙幣Sを厚さ方向に挟むように設けられた発光センサ172と受光センサ173とからなる遮光型の光学センサである。
【0074】
紙幣検知センサ171は、発光センサ172と受光センサ173との間に紙幣Sがあれば、発光センサ172の発光が紙幣Sで遮光されて受光センサ173で受光されない遮光状態になり、この遮光状態にあれば紙幣検知センサ171の位置に紙幣Sがあることを検知する。また、紙幣検知センサ171は、発光センサ172と受光センサ173との間に紙幣Sがなければ、発光センサ172の発光が遮光されずに受光センサ173で受光される透光状態になり、この透光状態にあれば紙幣検知センサ171の位置に紙幣Sがないことを検知する。紙幣検知センサ171は、ドラム31における紙幣入出口138側に設けられており、ドラム式収納繰出装置18内に収納されドラム収納部161へ収納される、またはドラム収納部161から繰り出されドラム式収納繰出装置18から繰り出される紙幣Sを検知する。
【0075】
搬送通路20には、収納繰出口151の近傍位置に、搬送通路20から収納繰出口151に受け渡される紙幣Sおよび収納繰出口151から搬送通路20に受け渡される紙幣Sをカウントするカウントセンサ181が設けられている。カウントセンサ181は、搬送通路20の紙幣Sを厚さ方向に挟むように設けられた発光センサ182と受光センサ183とからなる遮光型の光学センサである。カウントセンサ181は、発光センサ182と受光センサ183との間に紙幣Sがあれば、発光センサ182の発光が紙幣Sで遮光されて受光センサ183で受光されない遮光状態になり、この遮光状態にあればカウントセンサ181の位置に紙幣Sがあることを検知する。また、カウントセンサ181は、発光センサ182と受光センサ183との間に紙幣Sがなければ、発光センサ182の発光が遮光されずに受光センサ183で受光される透光状態になり、この透光状態にあればカウントセンサ181の位置に紙幣Sがないことを検知する。カウントセンサ181は、透光状態から遮光状態になり、その後透光状態になると、一枚の紙幣Sがカウントセンサ181の位置を通過したことを検知する。
【0076】
<ドラム式収納繰出装置18の紙幣収納動作>
ドラム式収納繰出装置18に紙幣Sを収納させる際、制御部15は、ドラム回転モータ115を駆動してドラム31を紙幣収納方向(
図5~
図7における時計回り方向)へ回転させる。すると、ドラム31の紙幣収納方向への回転動作に伴い、リール101は、テープ巻取方向とは逆のテープ30が繰り出されるテープ繰出方向(
図5~
図7における時計回り方向)へテープ30の張力により回転することになって、テープ30がリール101から引き出される。そして、制御部15は、搬送通路20側からドラム式収納繰出装置18の収納繰出口151へ進入してくる紙幣Sを紙幣入出口138の位置でテープ30に挟持させながら、ドラム31へ巻き付けさせる。これにより、紙幣Sがドラム式収納繰出装置18のドラム収納部161に収納されて行く。
【0077】
上記収納動作に伴い、制御部15は、収納繰出口151の近傍の搬送通路20に設けられたカウントセンサ181の検知により、収納する紙幣Sの枚数をカウントする。さらに、制御部15は、このカウントセンサ181の検知時間に基づき、紙幣Sの搬送方向長さおよび後述する累積巻取長さを算出して記憶部16に記憶させる。すなわち、記憶部16が、ドラム式収納繰出装置18に収納している紙幣Sについての、収納枚数と累積巻取長さとを記憶する。
【0078】
そして、このドラム式収納繰出装置18へ搬送される最終の紙幣Sがカウントセンサ181を通過すると、カウントセンサ181の検知状態が、紙幣検知状態(遮光状態)から紙幣非検知状態(透光状態)へ変化する。その後、この最終の紙幣Sが紙幣検知センサ171を通過すると、紙幣検知センサ171の検知状態が、紙幣検知状態(遮光状態)から紙幣非検知状態(透光状態)へ変化する。
【0079】
ドラム式収納繰出装置18は、紙幣検知センサ171で検知される紙幣Sの位置に基づいてドラム31の位置を検出するドラム位置検出手段191を備えている。ドラム位置検出手段191は、紙幣検知センサ171を含んでいる。ドラム位置検出手段191は、上記のようにドラム式収納繰出装置18へ搬送される最終の紙幣Sによって、紙幣検知センサ171が紙幣検知状態(遮光状態)から紙幣非検知状態(透光状態)へ変化した時点で、ドラム31が所定のドラム待機位置(第1のドラム位置)に位置したことを検出する。言い換えれば、ドラム式収納繰出装置18は、紙幣検知センサ171が、ドラム31へ収納される最終となる紙幣Sの通過によって紙幣検知状態(遮光状態)から紙幣非検知状態(透光状態)へと変化した直後のドラム31の位置をドラム待機位置として検出する。
【0080】
制御部15は、ドラム位置検出手段191が、ドラム31が所定のドラム待機位置に位置したことを検出した時点で、ドラム回転モータ115の駆動を停止する。すると、ドラム31が次の紙幣Sの受け入れを待機する所定のドラム待機位置で停止する。言い換えれば、ドラム位置検出手段191は、ドラム式収納繰出装置18への紙幣Sの収納動作において、紙幣検知センサ171が、ドラム31へ収納される紙幣Sの通過によって紙幣検知状態(遮光状態)から紙幣非検知状態(透光状態)へと変化すると、ドラム31がドラム待機位置に位置したことを検出する。ドラム式収納繰出装置18は、紙幣Sの収納動作および繰り出し動作を行なっていない非動作状態では、次の紙幣Sの収納動作および繰り出し動作に備えるために、ドラム31をこのドラム待機位置で停止させて待機する。
【0081】
<ドラム式収納繰出装置18の紙幣繰出動作>
ドラム式収納繰出装置18から紙幣Sを繰り出す際に、制御部15は、リール回転モータ125を駆動してリール101をテープ巻取方向(
図5~
図7における反時計回り方向)へ回転させる。すると、リール101のこのテープ巻取方向への回転動作に伴い、ドラム31は、紙幣収納方向とは逆の、紙幣Sが繰り出される紙幣繰出方向(
図5~
図7における反時計回り方向)へテープ30の張力により回転させられることになる。すると、ドラム収納部161に収納されていた紙幣Sがドラム収納部161から繰り出されて行き、ドラム式収納繰出装置18の収納繰出口151から搬送通路20側へと搬送される。
【0082】
このようにドラム式収納繰出装置18から紙幣Sを繰り出す際に、制御部15は、収納繰出口151の近傍の搬送通路20に配置されたカウントセンサ181の検知により、繰り出す紙幣Sの枚数をカウントする。そして、制御部15は、繰り出す枚数の中の最後となる紙幣Sが紙幣検知センサ171を通過後に、所定のタイミングでリール回転モータ125の駆動を停止する。すると、ドラム31は、上記したドラム待機位置に位置して停止し、次の紙幣Sの受け入れを待機するドラム待機位置に位置する。
【0083】
そして、制御部15は、カウントセンサ181で検知された、繰り出した紙幣Sの枚数分を減算して現在のドラム式収納繰出装置18に収納されている紙幣枚数を算出し、この算出した紙幣枚数と、繰り出した紙幣Sの分を減算した後述する累積巻取長さとを記憶部16に記憶させて、紙幣繰出動作を終了する。すなわち、記憶部16が、ドラム式収納繰出装置18に収納している紙幣Sについての、収納枚数と累積巻取長さとを記憶する。
【0084】
なお、ドラム位置検出手段191は、例えばエラー復旧時等において連結搬送通路157に紙幣Sがなく、紙幣検知センサ171が、紙幣非検知状態(透光状態)にあった場合に、ドラム31の紙幣繰出方向への駆動により、紙幣検知センサ171が、ドラム収納部161内に収納されていて最初に繰り出された紙幣Sによって紙幣検知状態(遮光状態)になったときには、ドラム31が所定のドラム設定位置(第2のドラム位置)に位置したことを検出する。
【0085】
<累積巻取長さについて>
ここで、累積巻取長さについて説明する。累積巻取長さとは、ドラム31に巻き取られたテープ30の長さの合計であり、言い換えると、ドラム式収納繰出装置18に収納している紙幣Sについての、紙幣収納繰出方向に沿った紙幣Sの長さおよび紙幣収納繰出方向に隣り合う紙幣S間の隙間の累計値である。累積巻取長さは、カウントセンサ181の検知結果を基に算出される。
【0086】
具体的には、制御部15は、一枚の紙幣Sがカウントセンサ181を通過する場合において、カウントセンサ181のこの紙幣Sについての紙幣検知状態の継続時間と、この紙幣Sの搬送通路20での搬送速度とから、この紙幣Sの紙幣搬送方向(紙幣収納繰出方向)の長さを求める。そして、制御部15は、この長さに、隣り合う紙幣Sと紙幣Sとの間の距離として一律の固定値(例えば5mm)を加えたものを、この紙幣Sの一枚による巻取長さとする。制御部15は、このような巻取長さを、ドラム式収納繰出装置18のドラム収納部161に収納される紙幣Sの全てについて累計することで累積巻取長さを算出する。
【0087】
上述したように、制御部15は、一枚の紙幣Sの長さを、カウントセンサ181のこの紙幣Sについての紙幣検知状態の継続時間と、この紙幣Sの搬送速度とから算出する。ここで、カウントセンサ181は搬送通路20に設けられているため、このカウントセンサ181を通過する紙幣Sの搬送速度は、搬送通路20を駆動する搬送駆動モータの回転速度によって決まり、ドラム31が収納方向へ回転することによるテープ30の移動速度の影響は受けない。したがって、ドラム31のドラム収納部161の外径が変化することにより、テープ30の移動速度が変化しても、この紙幣Sは、カウントセンサ181を所定の一定速度で安定して通過する。このため、カウントセンサ181での検知結果を用いて紙幣Sの長さを求めることで、精度良く紙幣Sの長さを算出することができる。
【0088】
このような累積巻取長さは、ドラム31にテープ30および紙幣Sを巻き付けた状態のドラム収納部161の外径に対応している。すなわち、累積巻取長さが第1の長さのときのドラム収納部161の外径に対して、累積巻取長さが第1の長さよりも所定長さ長くなれば、この所定長さに応じた分だけ、ドラム収納部161の外径は大きくなる。
【0089】
ここで、ドラム収納部161の外径が変化すると、ドラム31を一定の回転速度で回転させていた場合、ドラム収納部161の紙幣入出口138を構成する外周部の周速は、ドラム収納部161の外径が小さければ遅く、ドラム収納部161の外径が速ければ速くなってしまう。これに対して、連結搬送通路157は、一定の速度で紙幣Sを搬送するため、この連結搬送通路157による搬送速度と、ドラム収納部161の紙幣入出口138を構成する外周部の周速とを合わせる必要がある。このため、制御部15は、ステッピングモータであるドラム回転モータ115の回転速度、すなわち単位時間当たりの回転量を、ドラム収納部161の外径に対応する累積巻取長さが短ければ速く、長ければ遅くするように累積巻取長さに応じた値に変化させるようになっている。よって、制御部15は、累積巻取長さを記憶部16に記憶させて管理している。しかしながら、累積巻取長さを良好に把握できないと、連結搬送通路157とドラム収納部161との速度が合わず、搬送不良(ジャム)を生じてしまう可能性がある。
【0090】
また、ドラム回転モータ115の回転速度、すなわち単位時間当たりの回転量を制御するにあたって、累積巻取長さが短ければドラム収納部161の重さが軽く、累積巻取長さが長ければドラム収納部161の重さが重くなって、負荷が変化する。このため、負荷の大きさに応じて、適切にドラム回転モータ115に駆動を与える必要がある。具体的には、負荷が大きい場合には、ドラム回転モータ115を低速駆動させ、負荷が小さい場合にはドラム回転モータ115を高速駆動させるなど、駆動パターンを切り替える制御となる。負荷に対して駆動パターンが適切に選択されていない場合には、ドラム回転モータ115に脱調現象を誘発するおそれがある。このためにも、制御部15は、累積巻取長さを記憶部16に記憶させて管理している。これによって、現在掛かっているドラム回転モータの負荷に応じて、適切な駆動パターンでドラム31を駆動することが可能となる。つまり、制御部15は、ドラム31を回転させる際に、現在のドラム回転モータ115に掛かる負荷を判断するため、上述した累積巻取長さを記憶部16から読み出して、現在の累積巻取長さに応じた駆動パターンでドラム回転モータ115を駆動するようになっている。
【0091】
すなわち、ドラム31の回転駆動にかかる負荷は、一律ではなく、ドラム式収納繰出装置18へ収納している紙幣Sのサイズと枚数とによって増減する。このため制御部15は、ドラム31の駆動源であるステッピングモータからなるドラム回転モータ115を紙幣Sのサイズと収納枚数ごとに決められる負荷に応じた制御方法(駆動パターン)により、脱調させることなく適切に駆動させる必要がある。この理由により、ドラム式収納繰出装置18を備える紙幣処理装置10では、ドラム式収納繰出装置18に収納している紙幣Sの量を把握するため、記憶部16へ、収納枚数と共に、収納した紙幣Sの長さの累計値(累積巻取長さ)を記憶させている。ドラム式収納繰出装置18を複数備える紙幣処理装置10では、制御部15は、各々のドラム式収納繰出装置18について、収納枚数と共に収納した紙幣Sの長さの累計値(累積巻取長さ)を記憶しており、収納枚数の管理とドラム回転駆動の制御に活用している。これによって、累積巻取長さに応じて、ドラム31の駆動源であるドラム回転モータ115を適切に駆動することが可能となる。
【0092】
以上のように、制御部15は、ドラム回転モータ115すなわちドラム31を、記憶部16に記憶された累積巻取長さに応じて制御するようになっている。このため、累積巻取長さを良好に把握できないと、ドラム回転モータ115すなわちドラム31の回転制御を適正に行うことができない可能性があり、それに起因して不具合を生じ、処理効率の低下に繋がる可能性がある。すなわち、記憶部16に記憶され管理されているはずの累積巻取長さが、実際の累積巻取長さと異なると、それに起因して不具合を生じ、処理効率の低下に繋がる可能性がある。
【0093】
例えば、紙幣搬送において搬送不良(ジャム)などのエラーが発生して、操作者による保守作業(エラー復旧作業)を行う際に、紙幣Sが多くドラム式収納繰出装置18から抜き取られた場合などに、記憶部16の累積巻取長さが、実際の累積巻取長さと大きく異なる可能性がある。
【0094】
このようなケースにおいては、紙幣処理装置10の側では、もはやドラム式収納繰出装置18の正確な累積巻取長さを把握できない。このため、記憶部16で管理している累積巻取長さと、エラー復旧作業終了後における実際の累積巻取長さとに開きがある場合に、制御部15は、ドラム式収納繰出装置18のドラム31の駆動を適切に行うことができず、例えば、紙幣搬送において再び搬送不良(ジャム)が発生したり、ドラム31の回転駆動源であるドラム回転モータ115の脱調などを招き、復旧に時間がかかり、紙幣処理装置10による処理効率を低下させてしまうことになる。
【0095】
紙幣処理装置10は、上記のような場合においても、以下の累積巻取推定処理を行うことにより、現在の累積巻取長さを推定することが可能となる。
【0096】
<累積巻取推定処理>
累積巻取推定処理について以下説明する。
【0097】
紙幣処理装置10は、上記したように、紙幣Sの位置に基づいてドラム31が所定のドラム待機位置にあることを検出するドラム位置検出手段191を有している。
【0098】
累積巻取推定処理を開始する場合、制御部15は、ドラム回転モータ115を予め設定された固定の回転速度(例えば制御上可能な最低速度)で紙幣収納方向へ回転させて、ドラム待機位置にあるドラム31をドラム待機位置から紙幣収納方向へ所定の空巻時間(例えば2秒間)だけ回転させて停止させる。このときのドラム31の停止位置をドラム空巻位置とする。以上がステップS1である。
【0099】
このドラム空巻位置にあるとき、現在のドラム31の巻取外径すなわちドラム収納部161の外径の大きさによって、ドラム31に巻き取られているテープ30の長さは異なる。例えば、ドラム31に収納されている紙幣Sの枚数が少なく、
図6に示すように、ドラム収納部161の外径が小さい場合には、ドラム31が上記空巻時間の間に巻き取るテープ30の長さである空巻長さは短くなる。他方、ドラム31に収納されている紙幣Sの枚数が多く、
図7に示すように、ドラム収納部161の外径が大きい場合には、ドラム31が上記空巻時間の間に巻き取るテープ30の空巻長さは長くなる。
【0100】
次に、制御部15は、リール回転モータ125を予め設定された固定の回転速度(例えば制御上可能な最低速度)で回転させてリール101をテープ巻取方向へ回転させるリール巻戻動作を開始するとともに、そのリール巻戻時間取得手段201がこのリール巻戻動作の時間計測を開始する。すると、このリール巻戻動作に伴ってドラム31が紙幣繰出方向へ回転する。そして、制御部15は、このドラム31の回転によって、ドラム位置検出手段191がドラム設定位置を検出した時に、リール回転モータ125の回転を停止させるとともに、そのリール巻戻時間取得手段201がリール巻戻動作の時間計測を終了する。すなわち、ドラム待機位置検出手段192は、今回の累積巻取推定処理の開始後、ドラム収納部161に収納されている最初の紙幣Sによって、紙幣検知センサ171の検知が、紙幣非検知状態(透光状態)から紙幣検知状態(遮光状態)へと変化すると、ドラム31が所定のドラム設定位置に位置したことを検出することになり、この検出時に、制御部15は、リール回転モータ125の回転を停止させるとともに、そのリール巻戻時間取得手段201がリール巻戻動作の時間計測を終了する。これにより、リール巻戻時間取得手段201が、ドラム31がドラム空巻位置からドラム設定位置に戻るまでの時間となるリール巻戻時間を取得する。以上がステップS2である。
【0101】
このとき、ドラム収納部161の外径の違いに起因する、ステップS1でのドラム31に巻き取ったテープ30の長さの違いによって、リール巻戻時間には違いが生じる。
【0102】
例えば、
図6および
図7で比較して見ると、ドラム31に収納されている紙幣Sの枚数が少なく、
図6に示すように、ドラム収納部161の外径が小さい場合、空巻時間の間にドラム31に巻き取られるテープ30の長さは短くなる。しかも、このとき、リール101に巻き付けられているテープ30の外径は大きい。これら両方の理由から、リール巻戻時間は短くなる。
【0103】
他方、ドラム31に収納されている紙幣Sの枚数が多く、
図7に示すように、ドラム収納部161の外径が大きい場合、空巻時間の間にドラム31に巻き取られるテープ30の長さは長くなる。しかも、このとき、リール101に巻き付けられているテープ30の外径は小さい。これら両方の理由から、リール巻戻時間は長くなる。
【0104】
すなわち、ドラム収納部161の外径が大きい場合は、ドラム収納部161の外径が小さい場合に比べてリール巻戻時間は長く計測されることになる。
【0105】
次に、制御部15は、その累積巻取推定手段202が、上記のようにしてリール巻戻時間取得手段201が取得したリール巻戻時間(測定値)に基づいて、
図8に示すように予め作成されたリール巻戻時間とドラム31のテープ巻始めからの累積巻取長さとの対比テーブルを参照することによって、ドラムの現在位置であるドラム設定位置における累積巻取長さを推定する。以上がステップS3である。
【0106】
ここで、リール巻戻時間と累積巻取長さとの対比テーブルは、実験やシミュレーションにより作成される。複数あるドラム式収納繰出装置18で一つの対比テーブルを参照しても良いが、例えば、金種別に設けられる還流収納庫としてのドラム式収納繰出装置18(B)については、それぞれに専用の対比テーブルを用意して、これを参照するようにしても良い。この場合、金種別のドラム式収納繰出装置18(B)においては、収納する紙幣Sが単一金種となるため、紙幣Sの紙幣収納繰出方向の長さは一定となる。よって、カウントセンサ181の検知時間に基づく紙幣Sの長さの算出を省略することが可能となる。
【0107】
以上を纏めると、制御部15は、累積巻取長さを推定する累積巻取推定処理において、ステップS1として、ドラム回転モータ115を固定速度で駆動して、ドラム31をドラム待機位置から紙幣収納方向へ所定時間回転させてドラム空巻位置で停止させる。その後、制御部15は、ステップS2として、リール回転モータ125を固定速度で駆動させてリール101をテープ巻取方向へ回転させるリール巻戻動作を開始するとともに、このリール巻戻動作の時間計測を開始し、その後、このリール巻戻動作に伴ってドラム31が紙幣繰出方向へ回転し、このドラム31の回転によりドラム位置検出手段191がドラム31がドラム設定位置に位置したことを検出した時に、リール回転モータ125の駆動を停止させるとともに、時間計測を終了させて、その結果として、リール巻戻時間取得手段201が、ドラム31が空巻位置からドラム設定位置に戻るまでの時間となるリール巻戻時間を取得する。その後、制御部15は、ステップS3として、リール巻戻時間取得手段201によって取得したリール巻戻時間(測定値)に基づいて、累積巻取推定手段202が、予め作成された、リール巻戻時間とドラム31のテープ巻始めからの累積巻取長さとの対比テーブルを参照することによって、ドラム31の現在位置(ドラム設定位置)における累積巻取長さを推定する。
【0108】
以上をさらに纏めると、制御部15は、ドラム31をドラム位置検出手段191により検出される所定のドラム待機位置(第1のドラム位置)から固定の回転速度で紙幣収納方向へ所定の空巻時間回転させるステップS1を行い、その後、リール101を固定の回転速度でテープ巻取方向へ回転させると共にドラム31が所定のドラム設定位置(第2のドラム位置)に位置したことをドラム位置検出手段191により検出するまでのリール巻戻時間を取得するステップS2を行い、このリール巻戻時間に基づいて、予め作成されたリール巻戻時間と累積巻取長さとの対比テーブルを参照し、累積巻取長さを推定するステップS3を行う。
【0109】
そして、制御部15は、累積巻取推定手段202が推定した累積巻取長さと、記憶部16に記憶されている累積巻取長さとに差異がある場合に、記憶部16に記憶されている累積巻取長さを、累積巻取推定手段202が推定した累積巻取長さに更新する。その後、制御部15は、ドラム設定位置にあるドラム31を所定の回転速度(例えば制御上可能な最低速度)で紙幣収納方向に回転させ、紙幣検知センサ171が、紙幣検知状態(遮光状態)から紙幣非検知状態(透光状態)へと変化することで、ドラム位置検出手段191によりドラム31がドラム待機位置に位置したことを検出すると、ドラム31をこのドラム待機位置で停止させて累積巻取推定処理を終了する。
【0110】
よって、その後、制御部15は、記憶部16に記憶されている、累積巻取推定手段202が推定した累積巻取長さに応じた駆動パターンにより、連結搬送通路157の搬送速度に、ドラム収納部161の収納速度および繰出速度を合わせるなどして、ドラム31およびリール101の駆動を行う。
【0111】
なお、ドラム式収納繰出装置18は、累積巻取推定処理を行った場合に、この累積巻取推定処理によるドラム設定位置を、ドラム31が次の紙幣Sの受け入れを待機する所定のドラム待機位置としても良い。すなわち、累積巻取推定処理を行った場合は、ドラム収納部161に収納されている最初の紙幣Sによって、紙幣検知センサ171が、紙幣非検知状態(透光状態)から紙幣検知状態(遮光状態)へと変化すると、ドラム31がドラム待機位置に位置したことを検出する。この場合、ドラム式収納繰出装置18に紙幣Sを収納させる際に、紙幣検知センサ171が、収納する最終の紙幣Sによる紙幣検知状態(遮光状態)から紙幣非検知状態(透光状態)へ変化することで検出する、ドラム31のドラム待機位置とは位置が若干異なることになる。
【0112】
あるいは、累積巻取推定処理を行った場合に、ドラム収納部161に収納されている最初の紙幣Sによって、紙幣検知センサ171が、紙幣非検知状態(透光状態)から紙幣検知状態(遮光状態)へと変化したことを検知し、ドラム31がドラム設定位置に位置したことを検知すると、続けて、ドラム31を所定の回転速度(例えば制御上可能な最低速度)で紙幣収納方向に回転させ、紙幣検知センサ171が、紙幣検知状態(遮光状態)から紙幣非検知状態(透光状態)へと変化して、ドラム31がドラム待機位置に位置したことを検出するまで動作を続けるようにしても良い。この場合、累積巻取推定処理において、リール101によるテープ30の巻き取りを開始してから、ドラム31がこのドラム待機位置に位置するまでの時間をリール巻戻時間とする。このようにすれば、ドラム式収納繰出装置18に紙幣Sを収納する際と、累積巻取推定処理時とで同じドラム待機位置でドラム31を停止させることができる。この場合、リール巻戻時間と累積巻取長さとの対比テーブルも上記とは異なることになる。
【0113】
このように、本実施形態の紙幣処理装置10は、記憶部16に記憶されている累積巻取長さと実際の累積巻取長さとに差異が生じている場合であっても、累積巻取推定処理を行うことにより、ドラム31の現在位置における累積巻取長さを推定できるため、ドラム回転モータ115を適切な駆動パターンで駆動させることが可能となる。
【0114】
なお、累積巻取推定処理は、ドラム式収納繰出装置18を動作させる度に毎回行う必要はなく、ドラム式収納繰出装置18に係るエラーの復旧処理後など、ドラム式収納繰出装置18から紙幣Sの抜き取りが予想される場合にのみ行わせる方が良い。したがって、制御部15は、通常時には記憶部16に記憶されている累積巻取長さを利用してドラム31の駆動を行うことになる一方、上記したような非常時には、累積巻取推定処理により推定した累積巻取長さを正として記憶部16に記憶させ、この累積巻取長さを利用してドラム31の駆動を行う。制御部15は、エラーの復旧処理後には自動的にドラム式収納繰出装置18の累積巻取推定処理を行う。
【0115】
また、本実施形態の紙幣処理装置10は、電源投入持やエラー復旧処理後にドラム待機位置が不確定である場合には、紙幣頭出処理を行い、ドラム待機位置を設定することが可能となっている。ドラム待機位置の検出方法について以下説明する。
【0116】
<ドラム待機位置(紙幣頭出位置)の検出方法について>
{紙幣頭出位置制御その1}
【0117】
ドラム待機位置が不確定である場合であり、且つ、連結搬送通路157に紙幣Sの残留がなく、且つ、ドラム位置検出手段191の紙幣検知センサ171が紙幣検知状態(遮光状態)である場合に動作させる紙幣頭出処理において、制御部15は、まず、ドラム31を所定の回転速度(制御上可能な最低速度)で紙幣収納方向へ回転させる。すると、このドラム31の回転動作に伴い、紙幣検知センサ171で検知されていた紙幣Sが、紙幣検知センサ171側からドラム31側へ搬送される。
【0118】
その後、紙幣検知センサ171が紙幣検知状態(遮光状態)から紙幣非検知状態(透光状態)へと変化した時点で、ドラム位置検出手段191は、ドラム31がドラム待機位置に位置したことを検出する。制御部15は、その直後にドラム31の駆動を停止させることで、ドラム31を、このときの位置であるドラム待機位置に固定する。
【0119】
以上を言い換えると、ドラム待機位置が不確定である場合であり、且つ、連結搬送通路157に紙幣Sの残留がなく、且つ、紙幣検知センサ171が紙幣検知状態(遮光状態)である場合に動作させる紙幣頭出処理において、制御部15は、ドラム31を所定の回転速度で紙幣収納方向へ回転させることにより、紙幣検知センサ171で検知されていた紙幣Sが、紙幣検知センサ171側からドラム31側へ搬送されることになって、これにより、紙幣検知センサ171が紙幣検知状態(遮光状態)から紙幣非検知状態(透光状態)へと変化した直後のドラム31の位置をドラム待機位置として、ドラム31への駆動を停止して、ドラム31をこのドラム待機位置に停止させる。
【0120】
{紙幣頭出し位置制御その2}
【0121】
ドラム待機位置が不確定である場合であり、且つ、連結搬送通路157に紙幣Sの残留がなく、且つ、ドラム位置検出手段191の紙幣検知センサ171が紙幣非検知状態(透光状態)である場合に動作させる紙幣頭出処理において、制御部15は、まず、リール101を所定の回転速度(例えば制御上可能な最低速度)でテープ巻取方向へ回転させる。すると、このリール101の回転動作に伴い、ドラム31が紙幣繰出方向へ回転する。これにより、ドラム31へ収納されている紙幣収納方向最後の紙幣Sすなわち紙幣繰出方向先頭の紙幣Sが、ドラム31から最初に繰り出されて行く。
【0122】
制御部15は、紙幣検知センサ171に、この紙幣Sが検知されるまで、リール101のテープ巻取方向への回転動作を続けさせてドラム31を紙幣繰出方向に回転させ、紙幣検知センサ171が紙幣非検知状態(透光状態)から紙幣検知状態(遮光状態)へと変化した直後にリール101の回転を停止させる。
【0123】
次に、制御部15は、ドラム31を所定の回転速度(例えば制御上可能な最低速度)で紙幣収納方向へ回転させる。これにより、紙幣検知センサ171で検知されていた紙幣Sが、紙幣検知センサ171側からドラム31側へ搬送される。
【0124】
その後、紙幣検知センサ171が紙幣検知状態(遮光状態)から紙幣非検知状態(透光状態)へと変化した時点で、ドラム位置検出手段191は、ドラム31がドラム待機位置に位置したことを検出する。制御部15は、その直後にドラム31の駆動を停止させることで、ドラム31を、このときの位置であるドラム待機位置で固定する。
【0125】
以上を言い換えると、ドラム待機位置が不確定である場合であり、且つ、連結搬送通路157に紙幣Sの残留がなく、且つ、紙幣検知センサ171が紙幣非検知状態(透光状態)である場合に動作させる紙幣頭出処理において、制御部15は、まず、リール101を所定の回転速度でテープ巻取方向へ回転させて、このリール回転動作に伴ってドラム31を紙幣繰出方向へ回転させることにより、ドラム31に収納されている最終の紙幣Sがドラム31から最初に繰り出されて行き、紙幣検知センサ171にこの紙幣Sが検知されるまでドラム31の回転動作を行う。そして、紙幣検知センサ171が透光状態から遮光状態へと変化した直後にリール101の駆動を停止させる。次に、ドラム31を所定の回転速度で紙幣収納方向へ駆動させることにより、紙幣検知センサ171で検知されていたこの紙幣Sが、紙幣検知センサ171側からドラム31側へ搬送されることにより、紙幣検知センサ171が紙幣検知状態(遮光状態)から紙幣非検知状態(透光状態)へと変化した直後のドラム31の位置をドラム待機位置として、ドラムの駆動を停止して、ドラム31をドラム待機位置に停止させる。
【0126】
以上に述べた紙幣処理装置10によれば、制御部15は、ドラム31を、ドラム位置検出手段191により紙幣Sの位置に基づいて検出される第1のドラム位置としてのドラム待機位置から固定の回転速度で紙幣収納方向へ所定時間回転させた後、リール101を固定の回転速度でテープ巻取方向へ回転させると共にドラム31が第2のドラム位置としてのドラム設定位置に位置したことをドラム位置検出手段191により検出するまでのリール巻戻時間を取得する。そして、制御部15は、このリール巻戻時間に基づいて、予め作成されたリール巻戻時間と累積巻取長さとの対比テーブルを参照し、累積巻取長さを推定する。これにより、累積巻取長さを良好に把握でき、ドラム31の回転制御を適正に行うことができる。したがって、例えばドラム式収納繰出装置18から紙幣Sが抜き取られることにより累積巻取長さの実際値と記憶値とに齟齬が生じても、記憶値を推定値に更新することにより、実際値と記憶値との齟齬に起因して生じる不具合を抑制でき、処理効率の低下を抑制することが可能となる。
【0127】
また、ドラム位置検出手段191は、紙幣Sの位置に基づいてドラム31の位置を検出するため、エンコーダ等の高額部品が不要となり、コスト増を抑制することができる。
【0128】
また、ドラム31が次の紙幣Sの受け入れを待機するドラム待機位置から固定の回転速度で紙幣収納方向へ所定時間回転させるため、収納および繰り出し動作の制御上必要なドラム待機位置を検知するドラム位置検出手段191を利用することができる。したがって、コスト増を抑制することができる。
【0129】
また、ドラム待機位置をドラム設定位置にかえて第2のドラム位置とすることも可能であり、この場合、累積巻取長さの推定後にドラム31はドラム待機位置に位置することになるため、そのまま、紙幣Sの収納処理および繰出処理を行うことができる。
【0130】
また、制御部15は、推定した累積巻取長さと、記憶部16に記憶されている累積巻取長さとに差異がある場合に、記憶部16に記憶されている累積巻取長さを、推定した累積巻取長さに更新する。よって、記憶部16の累積巻取長さを推定した累積巻取長さに自動的に書き換えることができる。
【0131】
また、ドラム位置検出手段191は、紙幣Sの収納動作において、紙幣検知センサ171が、ドラム31へ収納される紙幣Sの通過によって紙幣検知状態から紙幣非検知状態へと変化すると、ドラム31がドラム待機位置に位置したことを検出する。よって、容易且つ正確にドラム31がドラム待機位置に位置したことを検出することができる。
【0132】
また、制御部15は、紙幣検知センサ171が紙幣検知状態である場合に、そのままドラム31を紙幣収納方向へ回転させることになり、ドラム位置検出手段191は、その後、紙幣検知センサ171が紙幣検知状態から紙幣非検知状態へと変化すると、ドラム31がドラム待機位置に位置したことを検出する。よって、ドラム31がドラム待機位置になくても、容易且つ正確にドラム31をドラム待機位置に配置することができる。
【0133】
また、制御部15は、紙幣検知センサ171が紙幣非検知状態である場合に、リール101をテープ巻取方向へ回転させ、ドラム31に収納されていた紙幣Sによって紙幣検知センサ171が紙幣検知状態になると、ドラム31を紙幣収納方向へ回転させることになり、ドラム位置検出手段191は、その後、紙幣検知センサ171が紙幣検知状態から紙幣非検知状態へと変化すると、ドラム31がドラム待機位置に位置したことを検出する。よって、ドラム31がドラム待機位置になくても、容易且つ正確にドラム31をドラム待機位置に配置することができる。
【符号の説明】
【0134】
10 紙幣処理装置
15 制御部
16 記憶部
18 ドラム式収納繰出装置
20 搬送通路
30 テープ
31 ドラム
101 リール
138 紙幣入出口
171 紙幣検知センサ
191 ドラム位置検出手段
S 紙幣