(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092340
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】防災服及び防災服の製造方法
(51)【国際特許分類】
A41D 13/00 20060101AFI20220615BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
A41D13/00 102
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205103
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】305013910
【氏名又は名称】国立大学法人お茶の水女子大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】角田 千枝
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恵
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AC24
(57)【要約】
【課題】災害時に人体をより安全に保護できる防災服及び防災服の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る防災服の製造方法は、人体の顔部に装着されるフェイスマスクを備える防災服の製造方法であって、フェイスマスクは、頭部に装着される顔面部パターンと、衿ぐりから身体に沿って装着される身頃パターンとを有し、頭部が正面を向いた姿勢と、あごを上側に向けた姿勢とで頭部の寸法をそれぞれ計測する計測工程と、計測工程で計測した計測値に基づいて顔面部パターン及び身頃パターンを作成する作成工程と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の顔面部に装着されるフェイスマスクを備える防災服の製造方法であって、
前記フェイスマスクは、顔面及び頸部全体に装着される顔面部パターンと、衿ぐりから身体に沿って装着される身頃パターンとを有し、頭部が正面を向いた姿勢と、あごを上側に向けた姿勢とで頭部の寸法をそれぞれ計測する計測工程と、
前記計測工程で計測した計測値に基づいて前記顔面部パターン及び前記身頃パターンを作成する作成工程と、
を備えることを特徴とする防災服の製造方法。
【請求項2】
前記計測工程において、前記フェイスマスクが頭部の上下の動きに追従する長さを有するために、鼻根が最もくぼんだ位置からオトガイ上点までの弧長であるCT2と、頸窩点から頭部の上向き最大時のオトガイ上点までの2点間距離であるCT8とを計測する、ことを特徴とする請求項1に記載の防災服の製造方法。
【請求項3】
前記計測工程において、前記フェイスマスクが頭部の左右の動きに追従する長さを有するために、頭部の左向き最大時の右の耳珠点から右の頸付根点までの2点間距離であるCT9を計測する、ことを特徴とする請求項2に記載の防災服の製造方法。
【請求項4】
前記計測工程において、人体の鼻根が最もくぼんだ位置から人体の鼻尖点までの曲線距離であるCT1と、人体の一方の上耳底点から人体の鼻根が最もくぼんだ位置を通り、人体の他方の上耳底点までの実長であるCT11と、人体の一方の耳珠点から人体の鼻尖点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長であるCT13と、右の耳珠点から左向き最大時の右の頸付根点までの2点間距離であるCT9と、上耳底点から耳珠点までの2点間距離であるCT14と、を計測する、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の防災服の製造方法。
【請求項5】
前記計測工程において、人体の後頭点から頸椎点までの2点間距離であるCT10と、人体の一方の上耳底点から後頭点を通り、人体の他方の上耳底点までの実長であるCT12と、を計測することを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の防災服の製造方法。
【請求項6】
前記顔面部パターンは、顔面部前側パターンを備え、
前記作成工程において、前記顔面部前側パターンの前中心の長さであるA3が式(1)を満たすように作成することを特徴とする請求項2に記載の防災服の製造方法。
式(1)・・・A3≧CT2+CT8
【請求項7】
前記顔面部パターンは、顔面部前側パターンを備え、
前記作成工程において、前記顔面部前側パターンは、耳珠点から前記顔面部前側パターンの下端のサイドネックポイントまでの長さであるA6が式(2)を満たすように作成することを特徴とする請求項3に記載の防災服の製造方法。
式(2)・・・A6≧CT9
【請求項8】
前記顔面部パターンは、顔面部前側パターンを備え、
前記作成工程において、前記顔面部前側パターンは、
前中心の上端から鼻先までの長さであるA4が式(3)を満たし、
前記顔面部前側パターンの上端上にある上耳底点から頸付根点までの長さであるA13が式(4)を満たし、
前記顔面部前側パターンの上端の長さであるA8が式(5)を満たし、かつ
耳珠点から鼻先までの長さであるA10が式(6)を満たすように作成すること特徴とする請求項4に記載の防災服の製造方法。
式(3)・・・A4≧CT1
式(4)・・・A13≦CT9+CT14
式(5)・・・A8≧CT11/2
式(6)・・・A10≧CT13/2
【請求項9】
前記顔面部パターンは、顔面部前側パターンと、顔面部前側パターンと連結してなる顔面部後側パターンとを備え、
前記作成工程において、前記顔面部後側パターンを、
後中心の長さであるA7が式(7)を満たし、かつ
前記顔面部後側パターンの上端の長さであるA9が式(8)を満たすように作成することを特徴とする請求項5に記載の防災服の製造方法。
式(7)・・・A7≦CT10
式(8)・・・A9≧CT12/2
【請求項10】
前記作成工程において、前記身頃パターンを、前記身頃パターンの前衿ぐりの長さであるA1が式(9)を満たし、かつ前記身頃パターンの後衿ぐりの長さであるA2が式(10)を満たすように作成することを特徴とする請求項1に記載の防災服の製造方法。
式(9)・・・A1≦A11
式(10)・・・A2≦A12
ただし、A11は顔面部前側パターンの前衿ぐりの長さであり、A12は顔面部前側パターンの後ろ衿ぐりの長さである。
【請求項11】
前記計測工程において、人体の片側の半身を計測することを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の防災服の製造方法。
【請求項12】
前記計測工程において、複数の人体を測定して、複数の人体の計測結果の平均値+2σの値とすることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の防災服の製造方法。
【請求項13】
人体の頭部に装着されるフードを備える防災服の製造方法であって、
頭部にヘルメットを装着している状態と、頭部にヘルメットを装着していない状態との両方で頭部の複数箇所の長さを計測する計測工程と、
前記計測工程で計測した計測値に基づき、前記フードを構成するフードパターンを作成する作成工程と、
を備えることを特徴とする防災服の製造方法。
【請求項14】
前記計測工程において、前記計測値が、右の耳珠点から左向き最大時の右の頸付根点までの2点間距離であるCT9と、一方の耳珠点からヘルメット上の頭頂点を通り、他方の耳珠点までの、耳眼面に垂直な実長であるCT15’と、人体の一方の耳珠点からヘルメット上の後部最突点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長であるCT17’と、ヘルメット上の頭頂点からヘルメット上の前部最突点までの実長CT18’と、を含むことを特徴とする請求項13に記載の防災服の製造方法。
【請求項15】
前記計測工程において、前記計測値が、頸椎点からヘルメット上の後部最突点を通り、ヘルメット上の頭頂点までの実長であるCT16’を含むことを特徴とする請求項13又は14に記載の防災服の製造方法。
【請求項16】
前記フードパターンは、サイドネックポイントから耳珠点までの長さであるA14が式(A)を満たし、耳珠点からフード最上点までの長さであるA15が式(B)を満たし、耳珠点からA14と垂直である直線とフード後ろ中心の出来上がり線と交差する点までの長さであるA16が式(C)を満たし、かつフード最上点から前端までの長さであるA18が式(D)を満たすことを特徴とする請求項14に記載の防災服の製造方法。
式(A)・・・A14≧CT9
式(B)・・・A15≧CT15’/2
式(C)・・・A16≧CT17’/2
式(D)・・・A18≧CT18’
【請求項17】
前記フードパターンは、フード中心出来上がり線の頭頂からバックネックポイントまでの長さA17が式(E)を満たすことを特徴とする請求項15に記載の防災服の製造方法。
式(E)・・・A17≧CT16’
【請求項18】
頭部にヘルメットを装着していない状態のフードパターン上に、耳珠点から後最突点までを示す案内線A16を前方のフード端に接するまで線を延長した、案内線A19を引き、
頭部にヘルメットを装着していない状態の前記フードパターン上に、サイドネックポイントから耳珠点までを示す案内線A14を前方のフード端に接するまで線を延長した、案内線A20を引き、
前記案内線A19及び前記案内線A20に沿って、頭部にヘルメットを装着していない状態の前記フードパターンを切り開き、
前記案内線A19に沿って縦方向に切り開かれた分量であるA21は式(α)を満たし、かつ前記案内線A20に沿って横方向に切り開かれた分量であるA22は式(β)を満たすことを特徴とする請求項13に記載の防災服の製造方法。
式(α)・・・A21≧(CT15’-CT15)/2
式(β)・・・A22≧(CT17’-CT17)/2
ただし、上記式(α)において、CT15は、人体の一方の耳珠点から人体の頭頂点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長であり、CT15’は、一方の耳珠点からヘルメット上の頭頂点を通り、他方の耳珠点までの、耳眼面に垂直な実長である。上記式(β)において、CT17は、人体の一方の耳珠点から人体の後部最突点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長であり、CT17’は、人体の一方の耳珠点からヘルメット上の後部最突点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長である。
【請求項19】
前記計測工程において、人体の片側の半身を計測することを特徴とする請求項13~18のいずれか一項に記載の防災服の製造方法。
【請求項20】
前記計測工程において、複数の人体を測定して、前記計測値を複数の人体の計測結果の平均値+2σの値とすることを特徴とする請求項13~19のいずれか一項に記載の防災服の製造方法。
【請求項21】
請求項1~12のいずれか一項に記載の防災服の製造方法で製造したことを特徴とする防災服。
【請求項22】
請求項15~20のいずれか一項に記載の防災服の製造方法で製造したことを特徴とする防災服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災服及び防災服の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
災害時に人体に悪影響となる粉じんの吸い込みを防止するため及び感染を予防するためには、マスクの着用が有用である。一方、一般的な家庭用マスク、サージカルマスク及び防じんマスクは、面体の周辺全てから人体に悪影響となる粉じんが漏れ込む可能性がある。災害時に人体に悪影響となる粉じんの吸い込みをより軽減できる防災服が求められている。
【0003】
特許文献1には、衣服と結合したマスク要素を有し、マスク要素は、収容状態及び展開状態をとり、展開状態において前記着用者の鼻及び/又は口を覆うように前方に伸展するようにした、防護服が開示されている。また、特許文献2には、マスクを有するフードを縫着した上衣を有する緊急避難服が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011-527386号公報
【特許文献2】実公昭59-105151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される防護服は、マスク形状及びサイズが顔面形状に適したように設計されていないので、マスク面体の周辺全てから粉じんが漏れ込む恐れがあった。また、人体の頭部が動いたときに、防護服がずれる恐れがあり、その結果、粉じんの漏れ込みを十分に防ぐことができないという問題があった。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、災害時に人体をより確実に保護できる防災服及び防災服の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)人体の顔面部に装着されるフェイスマスクを備える防災服の製造方法であって、前記フェイスマスクは、顔面及び頸部全体に装着される顔面部パターンと、衿ぐりから身体に沿って装着される身頃パターンとを有し、頭部が正面を向いた姿勢と、あごを上側に向けた姿勢とで頭部の寸法をそれぞれ計測する計測工程と、前記計測工程で計測した計測値に基づいて前記顔面部パターン及び前記身頃パターンを作成する作成工程と、を備えることを特徴とする防災服の製造方法。
(2)前記計測工程において、前記フェイスマスクが頭部の上下の動きに追従する長さを有するために、鼻根が最もくぼんだ位置からオトガイ上点までの弧長であるCT2と、頸窩点から頭部の上向き最大時のオトガイ上点までの2点間距離であるCT8とを計測する、ことを特徴とする(1)に記載の防災服の製造方法。
(3)前記計測工程において、前記フェイスマスクが頭部の左右の動きに追従する長さを有するために、頭部の左向き最大時の右の耳珠点から右の頸付根点までの2点間距離であるCT9を計測する、ことを特徴とする(2)に記載の防災服の製造方法。
(4)前記計測工程において、人体の鼻根が最もくぼんだ位置から人体の鼻尖点までの曲線距離であるCT1と、人体の一方の上耳底点から人体の鼻根が最もくぼんだ位置を通り、人体の他方の上耳底点までの実長であるCT11と、人体の一方の耳珠点から人体の鼻尖点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長であるCT13と、右の耳珠点から左向き最大時の右の頸付根点までの2点間距離であるCT9と、上耳底点から耳珠点までの2点間距離であるCT14と、を計測する、ことを特徴とする(2)又は(3)に記載の防災服の製造方法。
(5)前記計測工程において、人体の後頭点から頸椎点までの2点間距離であるCT10と、人体の一方の上耳底点から後頭点を通り、人体の他方の上耳底点までの実長であるCT12と、を計測することを特徴とする(2)~(4)のいずれか一項に記載の防災服の製造方法。
(6)前記顔面部パターンは、顔面部前側パターンを備え、前記作成工程において、前記顔面部前側パターンの前中心の長さであるA3が式(1)を満たすように作成することを特徴とする(2)に記載の防災服の製造方法。
式(1)・・・A3≧CT2+CT8
(7)前記顔面部パターンは、顔面部前側パターンを備え、前記作成工程において、前記顔面部前側パターンは、耳珠点から前記顔面部前側パターンの下端のサイドネックポイントまでの長さであるA6が式(2)を満たすように作成することを特徴とする(3)に記載の防災服の製造方法。
式(2)・・・A6≧CT9
(8)前記顔面部パターンは、顔面部前側パターンを備え、前記作成工程において、前記顔面部前側パターンは、前中心の上端から鼻先までの長さであるA4が式(3)を満たし、前記顔面部前側パターンの上端上にある上耳底点から頸付根点までの長さであるA13が式(4)を満たし、前記顔面部前側パターンの上端の長さであるA8が式(5)を満たし、かつ耳珠点から鼻先までの長さであるA10が式(6)を満たすように作成すること特徴とする(4)に記載の防災服の製造方法。
式(3)・・・A4≧CT1
式(4)・・・A13≦CT9+CT14
式(5)・・・A8≧CT11/2
式(6)・・・A10≧CT13/2
(9)前記顔面部パターンは、顔面部前側パターンと、顔面部前側パターンと連結してなる顔面部後側パターンとを備え、前記作成工程において、前記顔面部後側パターンを、後中心の長さであるA7が式(7)を満たし、かつ前記顔面部後側パターンの上端の長さであるA9が式(8)を満たすように作成することを特徴とする(5)に記載の防災服の製造方法。
式(7)・・・A7≦CT10
式(8)・・・A9≧CT12/2
(10)前記作成工程において、前記身頃パターンを、前記身頃パターンの前衿ぐりの長さであるA1が式(9)を満たし、かつ前記身頃パターンの後衿ぐりの長さであるA2が式(10)を満たすように作成することを特徴とする(1)に記載の防災服の製造方法。
式(9)・・・A1≦A11
式(10)・・・A2≦A12
ただし、A11は顔面部前側パターンの前衿ぐりの長さであり、A12は顔面部後側パターンの後ろ衿ぐりの長さである。
(11)前記計測工程において、人体の片側の半身を計測することを特徴とする(1)~(10)のいずれか一項に記載の防災服の製造方法。
(12)前記計測工程において、複数の人体を測定して、複数の人体の計測結果の平均値+2σの値とすることを特徴とする(1)~(11)のいずれか一項に記載の防災服の製造方法。
(13)人体の頭部に装着されるフードを備える防災服の製造方法であって、頭部にヘルメットを装着している状態と、頭部にヘルメットを装着していない状態との両方で頭部の複数箇所の長さを計測する計測工程と、前記計測工程で計測した計測値に基づき、前記フードを構成するフードパターンを作成する作成工程と、を備えることを特徴とする防災服の製造方法。
(14)前記計測工程において、前記計測値が、右の耳珠点から左向き最大時の右の頸付根点までの2点間距離であるCT9と、一方の耳珠点からヘルメット上の頭頂点を通り、他方の耳珠点までの、耳眼面に垂直な実長であるCT15’と、人体の一方の耳珠点からヘルメット上の後部最突点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長であるCT17’とヘルメット上の頭頂点からヘルメット上の前部最突点までの実長CT18’と、を含むことを特徴とする(13)に記載の防災服の製造方法。
(15)前記計測工程において、前記計測値が、頸椎点からヘルメット上の後部最突点を通り、ヘルメット上の頭頂点までの実長であるCT16’を含むことを特徴とする(13)又は(14)に記載の防災服の製造方法。
(16)前記フードパターンは、サイドネックポイントから耳珠点までの長さであるA14が式(A)を満たし、耳珠点からフード最上点までの長さであるA15が式(B)を満たし、耳珠点からA14と垂直である直線とフード後ろ中心の出来上がり線と交差する点までの長さであるA16が式(C)を満たし、かつフード最上点から前端までの長さであるA18が式(D)を満たすことを特徴とする(14)に記載の防災服の製造方法。
式(A)・・・A14≧CT9
式(B)・・・A15≧CT15’/2
式(C)・・・A16≧CT17’/2
式(D)・・・A18≧CT18’
(17)前記フードパターンは、フード中心出来上がり線の頭頂からバックネックポイントまでの長さA17が式(E)を満たすことを特徴とする(15)に記載の防災服の製造方法。
式(E)・・・A17≧CT16’
(18)頭部にヘルメットを装着していない状態のフードパターン上に、耳珠点から後最突点までを示す案内線A16を前方のフード端に接するまで線を延長した、案内線A19を引き、頭部にヘルメットを装着していない状態の前記フードパターン上に、サイドネックポイントから耳珠点までを示す案内線A14を上方のフード端に接するまで線を延長した、案内線A20を引き、前記案内線A19及び前記案内線A20に沿って、頭部にヘルメットを装着していない状態の前記フードパターンを切り開き、前記案内線A19に沿って縦方向に切り開かれた分量であるA21は式(α)を満たし、かつ前記案内線A20に沿って横方向に切り開かれた分量であるA22は式(β)を満たすことを特徴とする(13)に記載の防災服の製造方法。
式(α)・・・A21≧(CT15’-CT15)/2
式(β)・・・A22≧(CT17’-CT17)/2
ただし、上記式(α)において、CT15は、人体の一方の耳珠点から人体の頭頂点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長であり、CT15’は、人体の一方の耳珠点からヘルメット上の頭頂点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長である。上記式(β)において、CT17は、人体の一方の耳珠点から人体の後部最突点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長であり、CT17’は、人体の一方の耳珠点からヘルメット上の後部最突点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長である。
(19)前記計測工程において、人体の片側の半身を計測することを特徴とする(13)~(18)のいずれか一項に記載の防災服の製造方法。
(20)前記計測工程において、複数の人体を測定して、前記計測値を複数の人体の計測結果の平均値+2σの値とすることを特徴とする(13)~(19)のいずれか一項に記載の防災服の製造方法。
(21)(1)~(12)のいずれか一項に記載の防災服の製造方法で製造したことを特徴とする防災服。
(22)(15)~(20)のいずれか一項に記載の防災服の製造方法で製造したことを特徴とする防災服。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、災害時に人体を確実に保護できる防災服及び防災服の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る防災服の写真である。
【
図2】本発明の実施形態に係るフェイスマスクのパターン図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るフェイスマスクのパターン図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るフードのパターンのパターン図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る防災服の製造方法の計測点を示した模式図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るフェイスマスクの製造方法の計測点及び測定項目を示した模式図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るフードの製造方法の計測点及び測定項目を示した模式図である。
【
図8】本発明の実施例1に係るフェイスマスクのパターンを示した模式図である。
【
図9】本発明の実施例1に係るフェイスマスクを着用して頭部を動かしたときの写真である。
【
図10】本発明の実施例2に係るフードのパターンを示した模式図である。
【
図11】本発明の実施例2に係るフードを着用したときの写真である。
【
図12】本発明の実施例3に係るフードのパターン作成方法を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施形態について、特徴とする技術要件の限定理由や好ましい態様について順次説明する。まず、本発明の実施形態に係る防災服について説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る防災服1は、フェイスマスク10とフード11とケープ12とを備える。フェイスマスク10とフード11とを両方を装着して使用することも、フェイスマスク10のみ、フード11のみ、ケープ12のみで使用することもできる。本実施形態の防災服1は、フェイスマスク10及びフード11の構成に特徴を有する。以下、フェイスマスク10及びフード11についてそれぞれ詳細に説明する。
【0012】
(フェイスマスク)
図2に示すように、フェイスマスク10は、自体の所定部分に配置される複数のパターンを有する。フェイスマスク10は、
図2に示す複数のパターンを縫製一体化することにより製造される。
フェイスマスク10は、顔面部パターン20を備える。顔面部パターン20は、顔面部及び頸部全体と接触し、鼻孔及び口を覆うように構成されてなる顔面部前側パターン30を備える。また
図3に示すように、顔面部前側パターン30の前中心31の長さであるA
3が式(1)を満たすことを特徴とする。
式(1)・・・A
3≧CT
2+CT
8
ただし、上記式(1)において、CT
2は、人体の鼻根が最もくぼんだ位置から人体のオトガイ上点までの弧長であり、CT
8は頸窩点から頭部の上向き最大時の人体のオトガイ上点までの2点間距離である。
【0013】
頸窩点から人体のオトガイ上点までの2点間距離は、頭部が動くことにより変化する。そして、頭部の上向き最大時に、頸窩点から人体のオトガイ上点までの2点間距離が最大となる。そのため、顔面部前側パターン30の前中心31の長さであるA3が式(1)を満たさない場合、頭部が動いたときに顔面部前側パターン30がずれて、鼻孔及び口が露わになる恐れがある。その結果、粉じんが鼻孔及び口から人体に侵入することを十分の防止できない恐れがある。ただし、顔面部前側パターン30の前中心31が伸縮性のない生地で構成されている場合、A3は顔面部前側パターン30の前中心31の長さである。顔面部前側パターン30の前中心31が伸縮性のある生地で構成されている場合、A3は、生地の伸縮性を加味した顔面部前側パターン30の前中心31の長さである。
【0014】
顔面部前側パターン30は、立体型、プリーツ型、平型の形状であってもよい。顔面部前側パターン30は、複数のパターンが結合されたものであってもよい。結合の手段は、縫合、フック、ファスナー、ループ式のファスナー(共布及び別布ループやセッパなど)、面ファスナー、ボタン又はスナップなどであってもよい。顔面部前側パターン30は、既知の生地を使用してもよい。生地は、伸縮性のあるものであってもよい。
【0015】
フェイスマスク10は、耳掛けを有してもよい。これにより、フェイスマスク10を確実に頭部に装着させることができる。
【0016】
図3に示すように、フェイスマスク10は、顔面部前側パターン30において、耳側直線上の一点で人体の耳珠点と重なる点から顔面部前側パターン30の耳側下端のサイドネックポイント(SNP)までの長さであるA
6が式(2)を満たすことが好ましい。
式(2)・・・A
6≧CT
9
ただし、上記式(2)において、CT
9は、右半身で計測するときに頭部の左向き最大時の、人体の右の耳珠点から右の頸付根点までの2点間距離である。また、CT
9において、耳珠点と頸付根点とは人体の同じ半身の場所である。
【0017】
顔面部前側パターン30が式(2)を満たす場合、頭部が左右に動作した時に、フェイスマスク10がよりずれにくくなる。その結果、災害時に人体をより確実に保護できる。ただし、顔面部前側パターン30が伸縮性のある生地で構成されている場合、A6は、生地の伸縮性を加味した長さである。
【0018】
図3に示すように、フェイスマスク10は、顔面部前側パターン30において、前中心31の上端から鼻先までの長さであるA
4が式(3)を満たしてもよい。顔面部前側パターン30の耳側出来上がり線の上端から下端までの長さであるA
13が式(4)を満たしてもよい。顔面部前側パターン30の上端の長さであるA
8が式(5)を満たしてもよい。顔面部前側パターン30の鼻側の曲線の突点から耳側直線上の一点で人体の耳珠点と重なる点までの長さであるA
10が式(6)を満たしてもよい。
式(3)・・・A
4≧CT
1
式(4)・・・A
13≦CT
9+CT
14
式(5)・・・A
8≧CT
11/2
式(6)・・・A
10≧CT
13/2
【0019】
ただし、上記式(3)において、CT1は、人体の鼻根が最もくぼんだ位置から人体の鼻尖点までの曲線距離である。上記式(4)において、CT9は、右半身で計測するときに右の耳珠点から左向き最大時の右の頸付根点までの2点間距離である。CT14は、上耳底点から耳珠点までの2点間の距離である。上記式(5)において、CT11は、人体の一方の上耳底点から人体の鼻根が最もくぼんだ位置を通り、人体の他方の上耳底点までの実長である。上記式(6)において、CT13は、人体の一方の耳珠点から人体の鼻尖点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長である。
【0020】
顔面部前側パターン30が上記式(3)~(6)を満たす場合、フェイスマスク10の形状が更に人体に適合するものとなる。また、大きな頭部動作をしてもフェイスマスク10がよりずれにくくなる。そのため、災害時に人体をより確実に保護できる。ただし、顔面部前側パターン30が伸縮性のある生地を使用して形成されている場合、A4、A13、A8、A10及びA11はそれぞれ、生地の伸縮性を加味した長さを表す。
【0021】
図2に示すように、フェイスマスク10において、顔面部パターン20は、顔面部前側パターン30と連結してなる顔面部後側パターン40を備える。また
図3に示すように、顔面部後側パターン40において、後中心41の長さであるA
7が式(7)を満たし、顔面部後側パターン40の上端の長さであるA
9が式(8)を満たす。
式(7)・・・A
7≦CT
10
式(8)・・・A
9≧CT
12/2
ただし、上記式(7)において、CT
10は、人体の後頭点から頸椎点までの2点間直線距離である。上記式(8)において、CT
12は、人体の一方の上耳底点から人体の後頭点を通り人体の他方の上耳底点までの実長である。
また、A
7をCT
10より小さい数値とする場合は、前中心31の長さは変えず、脇の長さであるA
13を式(4)の範囲で繋がり良いように短く調整しても良い。
【0022】
顔面部前側パターン30と連結してなる顔面部後側パターン40を備えることにより、粉じんの侵入場所が更に少なくなる。これにより、災害時に人体をより確実に保護できる。
【0023】
顔面部前側パターン30と顔面部後側パターン40との連結手段は、縫合、フック、ファスナー、ループ式のファスナー(共布及び別布ループやセッパなど)、面ファスナー、ボタン又はスナップなどであってもよい。また、顔面部前側パターン30と顔面部後側パターン40とが一つの生地から形成されてもよい。顔面部後側パターン40の構成材料は、顔面部前側パターン30と同じものを使用することができる。顔面部後側パターン40が伸縮性のある生地を使用して形成されている場合、A7及びA9はそれぞれ、生地の伸縮性を加味した長さを表す。
【0024】
顔面部後側パターン40が、上記式(7)及び(8)を満たす場合、フェイスマスク10の形状が更に人体に適合するものとなる。また、大きな頭部動作をしてもフェイスマスク10がよりずれにくくなる。そのため、災害時に人体をより確実に保護できる。
【0025】
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係るフェイスマスク10は、衿ぐりから身体に沿って装着される身頃パターン21を備えてもよい。身頃パターン21の前衿ぐり51の長さであるA
1が式(9)を満たしてもよい、身頃パターン21の後衿ぐり61の長さであるA
2が式(10)を満たしてもよい。
式(9)・・・A
1≦A
11
式(10)・・・A
2≦A
12
ただし、A
11は顔面部前側パターンの前衿ぐりの長さであり、A
12は顔面部後側パターンの後ろ衿ぐりの長さである。
【0026】
身頃パターン21を備えることにより、フェイスマスク10の下部で生じる隙間が少なくなる。これにより、粉じんがフェイスマスク10の下部から侵入することをより確実に防止することができる。
【0027】
顔面部パターン20と身頃パターン21とは連結していてもよい。顔面部パターン20と身頃パターン21との連結手段は、縫合、フック、ファスナー、ループ式のファスナー(共布及び別布ループやセッパなど)、面ファスナー、ボタン又はスナップなどであってもよい。また、顔面部パターン20と身頃パターン21とが一つの生地から形成されてもよい。さらに、顔面部パターン20と身頃パターン21との連結部分は、タックやギャザーであってもよい。また、連結部分がタックやギャザーの場合、A11はA1よりも長くかつA12はA2よりも長く、顔面部パターン側のA11及びA12にタックやギャザーが入る。身頃パターン21を構成する材料は、顔面部前側パターン30及び顔面部後側パターン40と同じものを使用することができる。身頃部パターンは身頃前側パターン50と身頃後側パターン60有してもよい。
【0028】
身頃パターン21が、上記式(9)及び(10)を満たす場合、フェイスマスク10の形状が更に人体に適合するものとなる。また、大きな頭部動作をしてもフェイスマスク10がよりずれにくくなる。そのため、災害時に人体をより確実に保護できる。
【0029】
(フード)
また、災害時に身体を守るアイテムとして、頭部保護を目的としたヘルメットや防災頭巾がある。しかしながら、ヘルメットや防災頭巾を着用した場合でも、発災時には頭部以外は露わになる。その結果、体幹部分は危険にさらされた状態で避難しなければならないのが現状である。そこで、ヘルメットと共に防災服を着用し体幹部も保護する防災服が求められている。一方、特許文献2には、マスクを有するフードを縫着した上衣を有する緊急避難服が開示されている。
【0030】
しかしながら、特許文献2に開示される緊急避難服は、フードの上からヘルメットを被ると、フードの布がヘルメットの顎ひもを留める際の妨げになるという問題があった。また、特許文献2に開示される緊急避難服のフードは、フードをヘルメットの上から被ることを想定していないので、フードの大きさは十分ではないという問題があった。さらに、人体の頭部が動いたときに、フードがずれる恐れがある。その結果、頭部及び体幹部を十分に保護することができないという問題があった。
【0031】
図1に示すように、フード11は、ヘルメットを装着した頭部を覆うように構成されている。また
図4に示すように、フードパターン22において、サイドネックポイント(SNP)から人体の耳珠点と重なる点までの長さであるA
14が式(A)を満たす。人体の耳珠点と重なる点からフード最上点までの長さであるA
15が式(B)を満たす。人体の耳珠点と重なる点からA
14の直線に対して90度である直線とフード後ろ中心の出来上がり線とが交差する点までの長さであるA
16が式(C)を満たす。かつ、フード最上点から前端までの長さであるA
18が式(D)を満たす。
式(A)・・・A
14≧CT
9
式(B)・・・A
15≧CT
15’/2
式(C)・・・A
16≧CT
17’/2
式(D)・・・A
18≧CT
18’
【0032】
ただし、上記式(A)において、CT9は、右半身で計測するときに人体の右の耳珠点から人体の左向き最大時の右の頸付根点までの2点間距離である。上記式(B)において、CT15’は、人体の一方の耳珠点からヘルメット上の頭頂点を通り、人体の他方の耳珠点までの、耳眼面に垂直な実長である。上記式(C)において、CT17’は、人体の一方の耳珠点からヘルメット上の後部最突点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長である。上記式(D)において、CT18’はヘルメット上の頭頂点からヘルメット上の前部最突点までの実長である。
【0033】
フード11が式(A)~(D)を満たさない場合、フード11をヘルメットの上から被ることができない。また、大きな頭部動作をした場合、フード11がずれる恐れがある。その結果、災害時に頭部及び体幹部を十分に保護することができない恐れがある。
【0034】
フードパターン22を形成する材料は、既知の生地を使用してもよい。生地は、伸縮性のあるものであってもよい。フード11が伸縮性のある生地を使用して形成されている場合、A14、A15、A16及びA18はそれぞれ、生地の伸縮性を加味した長さを表す。
【0035】
図4に示すように、フードパターン22は、フード中心の出来上がり線とA
14を上方に延長した直線とが交差する点からバックネックポイント(BNP)までの長さであるA
17が式(E)を満たしてもよい。
式(E)・・・A
17≧CT
16’
ただし、上記式(E)において、CT
16’は、頸椎点からヘルメット上の後部最突点を通り、ヘルメット上の頭頂点までの実長である。
【0036】
フードパターン22が式(A)~(E)を満たす場合、フード11の形状がさらに、ヘルメットを装着した人体と適合するようになる。また、大きな頭部の上下動作をしてもフード11がよりずれにくくなる。その結果、災害時に頭部及び体幹部をより確実に保護することができる。
【0037】
次に、本発明の実施形態に係る防災服の製造方法について説明する。まず、フェイスマスクの製造方法について説明する。
(フェイスマスクの製造方法)
フェイスマスク10の製造方法は、頭部が正面を向いた姿勢と、あごを上側に向けた姿勢とで顔面部の寸法をそれぞれ計測する計測工程と、計測工程で計測した計測値に基づいて前記顔面部パターン及び前記身頃パターンを作成する作成工程と、を備える。
【0038】
フェイスマスク10がずれる原因の一つに人体の動作がある。人体の動作により寸法が変化する箇所を測定すれば、人体が動作した場合でも、ずれにくいフェイスマスク10を製造することができる。頭部が正面を向いた姿勢とは、直立し、顔は前方を向き視線は水平になる姿勢である。
【0039】
計測工程において、フェイスマスク10が頭部の上下の動きに追従する長さを有するために、鼻根が最もくぼんだ位置からオトガイ上点までの弧長であるCT2と、頸窩点から頭部の上向き最大時のオトガイ上点までの2点間距離であるCT8とを計測してもよい。そして、作成工程において、顔面部前側パターンの前中心の長さであるA3が式(1)を満たすように作成してもよい。
式(1)・・・A3≧CT2+CT8
【0040】
頭部の上向き最大時とは、水平姿勢の目線と頭部の上向きの動作のみを行った時の目線とがなす角度が最大となるときである。頭部を動かしたとき、頸窩点からオトガイ上点までの2点間距離が最も大きくなるのは、頭部の上向き最大時である。そのため、CT8を計測することで、人体が動作した場合でも、よりずれにくいフェイスマスク10を製造することができる。
【0041】
計測工程において、フェイスマスクが頭部の左右の動きに追従する長さを有するために、右半身で計測する場合において頭部の左向き最大時の右の耳珠点から右の頸付根点までの2点間距離であるCT9を計測してもよい。そして、作成工程において、顔面部前側パターンは、耳珠点から顔面部前側パターンの下端のサイドネックポイントまでの長さであるA6が式(2)を満たすように作成してもよい。これにより、頭部が左右に動作した時でも、よりずれにくいフェイスマスク10を製造することができる。
式(2)・・・A6≧CT9
【0042】
計測工程において、人体の鼻根が最もくぼんだ位置から人体の鼻尖点までの曲線距離であるCT1と、頭部の左向き最大時の右の耳珠点から右の頸付根点までの2点間距離であるCT9と、上耳底点から耳珠点までの2点間の距離であるCT14と、体の一方の上耳底点から人体の鼻根が最もくぼんだ位置を通り、人体の他方の上耳底点までの実長であるCT11と、人体の一方の耳珠点から人体の鼻尖点を通り人体の他方の耳珠点までの実長であるCT13と、を計測してもよい。
【0043】
そして、作成工程において、顔面部前側パターンは、前中心の上端から鼻先までの長さであるA4が式(3)を満たし、顔面部前側パターンの脇の長さであるA13が式(4)を満たし、顔面部前側パターンの上端の長さであるA8が式(5)を満たし、かつ耳珠点から鼻先までの長さであるA10が式(6)を満たすように作成してもよい。これにより、大きな頭部動作をしてもよりずれにくいフェイスマスク10を製造することができる。その結果、災害時に人体をより確実に保護できるフェイスマスク10を製造できる。
式(3)・・・A4≧CT1
式(4)・・・A13≦CT9+CT14
式(5)・・・A8≧CT11/2
式(6)・・・A10≧CT13/2
【0044】
計測工程において、人体の後頭点から頸椎点までの2点間距離であるCT10と、人体の一方の耳珠点から人体の後頭点を通り人体の他方の耳珠点までの実長であるCT12と、を計測してもよい。そして、作成工程において、顔面部後側パターンを、後中心の長さであるA7が式(7)を満たし、顔面部後側パターンの上端の長さであるA9が式(8)を満たすように作成してもよい。これにより、より人体の形状に適合したフェイスマスク10を製造することができる。
式(7)・・・A7≦CT10
式(8)・・・A9≧CT12/2
【0045】
計測工程において、身頃パターンを、身頃パターンの前衿ぐりの長さであるA1が式(9)を満たし、かつ身頃パターンの後衿ぐりの長さであるA2が式(10)を満たすように作成してもよい。これにより、より人体の形状に適合したフェイスマスク10を製造することができる。
式(9)・・・A1≦A11
式(10)・・・A2≦A12
ただし、A11は顔面部前側パターンの前衿ぐりの長さであり、A12は顔面部前側パターンの後ろ衿ぐりの長さである。
【0046】
フェイスマスク10の製造方法は、上述した構成以外に、既知のフェイスマスクを製造する方法と同じ方法を有していてもよい。
【0047】
(フードの製造方法)
次に、フード11の製造方法について説明する。
フード11の製造方法は、頭部にヘルメットを装着している状態と、頭部にヘルメットを装着していない状態との両方で頭部の複数箇所の長さを計測する計測工程と、計測工程で計測した計測値に基づき、フード11を構成するフードパターンを作成する作成工程とを備える。上述の方法によって製造されたフード11は、頭部にヘルメットを装着している状態から、更にフード11を装着することができる。これにより、頭部及び体幹部をより確実に保護することができる。
【0048】
計測工程において、右半身で計測するときに右の耳珠点から左向き最大時の右の頸付根点までの2点間距離であるCT9と、一方の耳珠点からヘルメット上の頭頂点を通り、他方の耳珠点までの、耳眼面に垂直な実長であるCT15’と、一方の耳珠点からヘルメット上の後頭最突点を通り、他方の耳珠点までの実長であるCT17’と、ヘルメット上の頭頂点からヘルメット上の前部最突点までの実長CT18’と、を測定してもよい。
【0049】
フードパターン22は、サイドネックポイントから人体の耳珠点と重なる点までの長さであるA14が式(A)を満たし、人体の耳珠点と重なる点からフード最上点までの長さであるA15が式(B)を満たし、人体の耳珠点と重なる点からA14の直線に対して90度でフード後ろ中心の出来上がり線と交差する点までの長さであるA16が式(C)を満たし、かつフード最上点から前端までの長さであるA18が式(D)を満たしてもよい。
式(A)・・・A14≧CT9
式(B)・・・A15≧CT15’/2
式(C)・・・A16≧CT17’/2
式(D)・・・A18≧CT18’
【0050】
これにより、フード11の形状がヘルメットを装着した人体と適合するようになる。また、大きな頭部の上下動作をしてもフード11がよりずれにくくなる。その結果、災害時に頭部及び体幹部をより確実に保護することができる。
【0051】
計測工程において、頸椎点からヘルメット上の後部最突点を通り、ヘルメット上の頭頂点までの実長であるCT16’を計測してもよい。フードパターンは、フード中心出来上がり線の頭頂からバックネックポイントまでの長さA17が式(E)を満たしてもよい。ここで、フード中心出来上がり線の頭頂は、フード中心出来上がり線とA14を上方に延長した直線とが交差する点である。
式(E)・・・A17≧CT16’
【0052】
本発明の実施形態に係るフード11Aの製造方法は、ヘルメットを被らない状態で作成した既存のフードパターン22Aを、計測工程で測定した計測値に合わせて、切り開く方法でパターンを作成する工程を用いてもよい。例えば、下記の方法を有していてもよい。
【0053】
図12に示すように、既存のフードパターン22A上に、人体の耳珠点と重なる点からA
14の直線に対して90度でフード後ろ中心の出来上がり線と交差する点までを示す案内線A
16を前方のフード端に接するまで線を延長した、案内線A
19を引く。既存のフードパターン22A上に、サイドネックポイントから耳珠点までを示す案内線A
14をフードパターン22Aの後ろ中心の出来上がり線の上端に接するまで線を延長した、案内線A
20を引く。案内線A
19及び案内線A
20に沿って、上記フードパターン22Aを切り開き、案内線A
19に沿って縦方向に切り開かれた分量であるA
21は式(α)を満たし、かつ案内線A
20に沿って横方向に切り開かれた分量であるA
22は式(β)を満たす。
式(α)・・・A
21≧(CT
15’-CT
15)/2
式(β)・・・A
22≧(CT
17’-CT
17)/2
ただし、上記式(α)において、CT
15は、人体の一方の耳珠点から人体の頭頂点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長であり、CT
15’は、人体の一方の耳珠点からヘルメット上の頭頂点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長である。上記式(β)において、CT
17は、人体の一方の耳珠点から人体の後部最突点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長であり、CT
17’は、人体の一方の耳珠点からヘルメット上の後部最突点を通り、人体の他方の耳珠点までの実長である。
【0054】
本発明の他の実施形態に係るフード11の製造方法は、計測工程において、人体の片側の半身のみを計測してもよい。
【0055】
本発明の他の実施形態に係るフード11の製造方法は、計測工程において、複数の人体を測定して、計測値を複数の人体の計測結果の平均値+2σの値としてもよい。人体の計測結果の平均値+2σの値を使用することで、多くの人に適合する形状を有するフード11を製造することができる。これにより、一人ひとりの計測値に合わせてフード11を製造した場合と比べると、製造コストを低減させることができる。
【0056】
本発明の他の実施形態に係るフード11の製造方法は、上述した構成以外に、既知のフードを製造する方法と同じ方法を有していてもよい。
【実施例0057】
(実施例1)
防災服を製造するために、複数名を被検者とし人体の測定を行った。測定後に計測値の平均値及び標準偏差を求めた。計測点を
図5に示し、計測箇所を
図6及び7に示した。
上記の測定結果に基づき基本のフェイスマスクのパターンを作成し、更にデザイン展開を加え、
図8に示すフェイスマスクのパターンを作成した。その後、フェイスマスクのパターンを組み立てて、フェイスマスクを作成した。フェイスマスクの顔面部前側パターンの前中心の長さであるA
3が式(1)を満たした。
式(1)・・・A
3≧CT
2+CT
8
【0058】
図9に示すように、実施例1のフェイスマスクは、頭部が上向き最大時でも、フェイスマスクがずれることが無かった。そのため、頭部が動いたときでも確実に人体を保護することができる。
【0059】
(実施例2)
実施例1に示したのと同様に、複数名を被検者とし人体及びヘルメットを装着した人体の計測を行った。測定後に計測値の平均値及び標準偏差を求めた。
【0060】
上記の測定結果に基づき基本のフードパターンを作成し、更にデザイン展開を加え、
図10に示すフードのパターンを作成した。その後、フードパターンを組み立てて、フードを作成した。作成したフードは、サイドネックポイントから耳珠点までの長さであるA
14が式(A)を満たした。耳珠点からフード最上点までの長さであるA
15が式(B)を満たした。耳珠点から後最突点までの長さであるA
16が式(C)を満たした。また、フード最上点から前端までの長さであるA
18が式(D)を満たした。
式(A)・・・A
14≧CT
9
式(B)・・・A
15≧CT
15’/2
式(C)・・・A
16≧CT
17’/2
式(D)・・・A
18≧CT
18’
【0061】
図11に示すように、実施例2のフードはヘルメットを装着した状態からフードを被ることができる。そのため、災害時により安全に人体を保護することができる。
【0062】
(実施例3)
実施例2の測定結果に基づき、ヘルメットを装着していない設定の既存のフードを切り開き、
図12に示す方法でフードパターンを作成した。その後、フードパターンを組み立てて、フードを作成した。作成したフードは、式(A)~(D)を満たした。さらに、実施例3のフードは、案内線A
19に沿って縦方向に切り開かれた分量であるA
21が式(α)を満たした。また、前記案内線A
20に沿って横方向に切り開かれた分量であるA
22が式(β)を満たした。
式(α)・・・A
21≧(CT
15’-CT
15)/2
式(β)・・・A
22≧(CT
17’-CT
17)/2