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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092341
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】サセプタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/458 20060101AFI20220615BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20220615BHJP
   C30B 25/12 20060101ALI20220615BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20220615BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20220615BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
C23C16/458
C23C16/42
C30B25/12
C30B29/06 504L
H01L21/205
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205105
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】菅野 晃
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 典昭
(72)【発明者】
【氏名】田部井 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】井上 昌利
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077DA01
4G077DB01
4G077EG04
4G077HA12
4G077SA12
4G077TA12
4G077TF03
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA17
4K030BA37
4K030CA01
4K030CA11
4K030FA10
4K030GA05
4K030JA01
4K030KA47
4K030LA15
5F045AA06
5F045AB06
5F045AC00
5F045AC03
5F045AD17
5F045AF01
5F045BB02
5F045BB14
5F045DP04
5F045DQ10
5F045EK06
5F045EM02
5F045EM09
5F045EM10
5F045HA06
5F131AA02
5F131BA04
5F131CA12
5F131EB56
5F131EB78
5F131EB79
(57)【要約】
【課題】炭素材料からなる基材の表面を炭化ケイ素(SiC)の薄膜で覆ったカーボン複合材料からなるサセプタにおいて、前記基材に形成された炭化ケイ素膜の膜厚の均一性を高くすることができ、汚染のないサセプタ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】炭素材料からなる基材2の全面が炭化ケイ素からなる薄膜3で被覆され、シリコンウェーハが載置される一の主面および前記一の主面と対向する他の主面を有するサセプタ1であって、前記一の主面に形成された薄膜の膜厚に対する前記他の主面に形成された薄膜の膜厚の比率が0.7以上1.2以下であり、前記一の主面において、中心部と外縁部とにおける膜厚差が、前記一の主面に形成された薄膜の膜厚の平均値の40%以下、かつ、前記一の主面の外縁部の最大膜厚と最小膜厚との膜厚差が、前記一の主面に形成された薄膜の膜厚の平均値の40%以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料からなる基材の全面が炭化ケイ素からなる薄膜で被覆され、シリコンウェーハが載置される一の主面および前記一の主面と対向する他の主面を有するサセプタであって、
前記一の主面に形成された薄膜の膜厚に対する前記他の主面に形成された薄膜の膜厚の比率が0.7以上1.2以下であり、前記一の主面において、中心部と外縁部とにおける膜厚差が、前記一の主面に形成された薄膜の膜厚の平均値の40%以下、かつ、前記一の主面の外縁部の最大膜厚と最小膜厚との膜厚差が、前記一の主面に形成された薄膜の膜厚の平均値の40%以下であることを特徴とするサセプタ。
【請求項2】
前記基材の全面に形成された炭化ケイ素からなる薄膜の膜厚は、少なくとも60μmであることを特徴とする請求項1に記載されたサセプタ。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載されたサセプタの製造方法であって、
チャンバ内において炭素材料からなる基材を、該基材に対する支持位置を移動させながら支持し、
前記基材の前記一の主面に対し原料ガスの供給方向が平行になるように供給し、前記基材の全面に炭化ケイ素からなる薄膜を形成することを特徴とするサセプタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サセプタ及びその製造方法に関し、例えばエピタキシャル成膜装置においてウェーハを保持するサセプタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造用装置の一つであるエピタキシャル成膜装置においては、シリコンウェーハを保持する部材であるサセプタとして、炭素材料(カーボン基材と呼ぶ)を炭化ケイ素(SiC)で覆ったカーボン複合材料が使用されている。前記サセプタには、その形状によりパンケーキ型、パレル型、枚葉型などがあり、装置や処理方法によって、複数種が用いられている。
前記サセプタを製造する場合、いずれの型であっても所定のコーティング炉にカーボン基材の状態で設置され、CVD法等によって炭化ケイ素(SiC)をカーボン基材の表面に成膜することによって、カーボン複合材料からなるサセプタが得られる。
【0003】
ところで、CVD法によってカーボン基材の表面に炭化ケイ素(SiC)の薄膜を成膜する際、カーボン基材を支持する治具とカーボン基材との接触部位には炭化ケイ素膜が付着しないことになる。
そのような課題に対し特許文献1には、1回目の成膜処理の後に、カーボン基材を一度炉から取り出し、カーボン基材と治具とが接触する位置を変えて2回目以降の成膜処理を行うことが記載されている。そのようにすることで全面が炭化ケイ素(SiC)に覆われたカーボン複合材料を得ることができる。
【0004】
前記のように接触位置をずらしての複数回の成膜処理は治具の接触跡を消すための有効な手段ではあるが、一度、炉からカーボン複合材料を出すことでカーボン複合材料は炉外気に曝されることとなる。そのため、炭化ケイ素膜表面が汚染される虞があるという課題があった。汚染されてしまった場合、その汚染層の上に新たな炭化ケイ素膜を積層することとなり、このカーボン複合材料をサセプタとして使用することになると、エピタキシャル工程においてシリコンウェーハを汚染する原因となる。
【0005】
そこで特許文献1に記載の発明にあっては、最初に炭化ケイ素の成膜を行った後、支持跡をなくすために一度カーボン複合材料を取り出して支持位置の変更を行い、カーボン複合材料表面の純化処理(ハロゲンガスの吹き付け)を行うことで表面の汚染を軽減し、炉内において再度、炭化ケイ素の成膜を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-174841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された方法にあっては、カーボン基材を一度炉から取り出すために汚染の可能性は無くならない。また、時間を空けて複数回の成膜処理を行う必要があるため、工数及びコストが増加し、望ましくないという課題があった。
【0008】
更に、カーボン基材を保持する治具が接触する部位は、他の部分より炭化ケイ素の膜厚が薄く、2回成膜の場合には、約半分程度となる。そのため、エピタキシャル成膜工程において、炭化ケイ素膜の消耗により、基材であるカーボンが露出する虞があった。
また、炭化ケイ素膜の厚さの不均一性は、シリコンウェーハに対するエピタキシャル成膜工程での膜厚ばらつきを生み出す要因にもなる。炭化ケイ素の膜厚が大きくばらつく場合、熱伝導性が異なるため均一なエピタキシャル膜を得ることが困難であるという課題があった。
【0009】
本発明は、上記事情の下になされたものであり、炭素材料からなる基材の表面を炭化ケイ素(SiC)の薄膜で覆ったカーボン複合材料からなるサセプタにおいて、前記基材に形成された炭化ケイ素膜の膜厚の均一性を高くすることができ、汚染の抑制されたサセプタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するためになされた本発明に係るサセプタは、炭素材料からなる基材の全面が炭化ケイ素からなる薄膜で被覆され、シリコンウェーハが載置される一の主面および前記一の主面と対向する他の主面を有するサセプタであって、前記一の主面に形成された薄膜の膜厚に対する前記他の主面に形成された薄膜の膜厚の比率が0.7以上1.2以下であり、前記一の主面において、中心部と外縁部とにおける膜厚差が、前記一の主面に形成された薄膜の膜厚の平均値の40%以下、かつ、前記一の主面の外縁部の最大膜厚と最小膜厚との膜厚差が、前記一の主面に形成された薄膜の膜厚の平均値の40%以下であることに特徴を有する。
また、前記基材の全面に形成された炭化ケイ素からなる薄膜の膜厚は、少なくとも60μmであることが望ましい。
【0011】
このような構成によれば、基材の表面に形成された薄膜の均一性が向上し、一の主面における熱伝導の均一性が良好となる。その結果、そのサセプタを用いたシリコンウェーハへのエピタキシャル成膜工程において、均一なエピタキシャル膜を得ることができる。
【0012】
また、前記課題を解決するためになされた本発明に係るサセプタの製造方法は、前記サセプタの製造方法であって、チャンバ内において炭素材料からなる基材を、該基材に対する支持位置を移動させながら支持し、前記基材の前記一の主面に対し原料ガスの供給方向が平行になるように供給し、前記基材の全面に炭化ケイ素からなる薄膜を形成することに特徴を有する。
このような方法によれば、前記したサセプタを得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、炭素材料からなる基材の表面を炭化ケイ素(SiC)の薄膜で覆ったカーボン複合材料からなるサセプタにおいて、前記基材に形成された炭化ケイ素膜の膜厚の均一性を高くすることができ、汚染の抑制されたサセプタ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係るサセプタの断面図である。
図2図2は、図1のサセプタの一部を拡大した断面図である。
図3図3は、図1のサセプタを製造する際に使用するCVD装置を模式的に示した断面図である。
図4図4は、図3のCVD装置の平面図である。
図5図5は、本発明の実施例の結果を示す断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかるサセプタ及びその製造方法の一実施形態について、図1乃至図4に基づいて説明する。図は模式的または概念的なものであり、各部位の厚みと幅との関係、部位間の大きさの比率等は、正確に図示されていない。
【0016】
図1に示すように、サセプタ1は、炭素材料からなる円板状のカーボン基材2を有している。このカーボン基材2は、その全面が炭化ケイ素からなる所定厚さ(例えば60μm以上)の薄膜3で被覆されている。
即ち、この薄膜3は、サセプタ1のウェーハ載置面である一の主面F1を被覆する炭化ケイ素からなる薄膜3Fと、一の主面F1と対向する裏の面である他の主面F2を被覆する炭化ケイ素からなる薄膜3Bと、またカーボン基材2の外周面を被覆する炭化ケイ素からなる薄膜3Sとから構成されている。
【0017】
また、このサセプタ1は、その一の主面F1に半導体基板を載置する一つの凹形状のザグリ部4が形成された、いわゆる枚葉タイプのサセプタである。
前記ザグリ部4は平面視上円形に形成され、中央に円柱状の凹部4aが形成されている。また、このサセプタ1は、その中心部Oを通る回転軸Lとした円対称性を有している。このとき、ザグリ部4の最深部(中心部O)の深さをToとすると、平均深さTdは、To/2となる。
【0018】
そして、前記サセプタ1の厚さTと前記平均深さTdとの比(T/Td)が、6≦T/Td≦30であることが好ましい。前記サセプタ1の厚さTと前記深さToとの比(T/To)が3≦T/To≦13であることが好ましい。
このように、サセプタ1の厚さTと前記平均深さTdとの比(T/Td)が、6≦T/Td≦30となるように、ザグリ部4が形成されるため、反り抑制の効果を得ることができる。
【0019】
ここで、前記サセプタ1の厚さTと前記平均深さTdとの比(T/Td)が、6未満である場合には、厚さに対しザグリが深すぎることでウェーハの外周成膜が不良となる可能性があり好ましくない。また、前記サセプタ1の厚さTと前記平均深さTdとの比(T/Td)が30を超える場合には、サセプタが厚肉化し、カーボン基材2の剛性の影響が無視できなくなり、薄膜での反り量制御が困難になるため、好ましくない。
【0020】
前記したようにカーボン基材2としては、半導体用サセプタとして適用できる炭素材料が用いられ、薄膜3としては炭化ケイ素が用いられる。薄膜3は、カーボン基材2の全面に形成されるもので、カーボン基材2からの発塵、不純物の外方拡散を防止、あるいはカーボン基材2の全面を保護すると共に、カーボン基材2の反りを抑制する役割を有する。
【0021】
ここで、図2に示すサセプタ1の主面F1に形成された薄膜3Fの膜厚t1の平均に対する他の主面F2に形成された薄膜3Bの膜厚t2の平均の比率は、0.7~1.2の間に形成されている。
前記比率が0.7より小さいと、そのサセプタを用いたエピタキシャル成膜工程において、熱伝導性の差異が生じ、均一なエピタキシャル膜を得ることが困難になる。
また、前記比率が1.2より大きいと、薄膜3の膜厚ばらつきに起因する熱伝導性の差異に加えて、サセプタの反りが生じやすくなり、エピタキシャル膜が不均一となる。
【0022】
また、サセプタ1の主面F1において、中心部Oと外縁部F1aとにおける膜厚差d1が、主面F1に形成された薄膜3Fの膜厚t1の平均の40%以下になるよう形成されている。
また、好ましくは、サセプタ1の主面F1において、外縁部F1aの最大膜厚と最小膜厚との膜厚差d2が、主面F1に形成された薄膜3Fの膜厚t1の平均の40%以下になるよう形成されている。
前記膜厚差d1或いはd2が膜厚t1の平均の40%以下であれば、主面F1における熱伝導の均一性が良好となり、そのサセプタを用いたエピタキシャル成膜工程において、均一なエピタキシャル膜を得ることができる。
一方、前記膜厚差が膜厚t1の平均の40%より大きくなると、斑が発生しやすく、主面F1における熱伝導が不均一となり、均一なエピタキシャル膜を得ることができなくなる。
【0023】
前記のようなサセプタ1は、例えば図3に示すようなCVD装置5を用いることにより製造することができる。
図3に示すCVD装置5は、処理空間を形成するチャンバ10と、キャリアガス(水素ガス)をチャンバ10内に供給するため、チャンバ10側面に設けられたガス流入口11と、流入口11に対向する反対側のチャンバ10側面に設けられたガス流出口12とを有する。
【0024】
また、チャンバ10内においてサセプタ1のカーボン基材2の下面側を支持するための支持部20と、カーボン基材2の周囲に複数配置され、カーボン基材2の側部周面(外周)を摺接可能に支持する柱状のガード部材13とを備える。
支持部20は、モータ21により定速で回転可能に設けられたローラ22が、カーボン基材2の周方向に沿って回転するよう配置された複数の支持脚20a~20dを有している。各支持部20a~20dのローラ22は、カーボン基材2の裏側面の周縁部に当接し、各ローラ22が一方向に回転することによりカーボン基材2は支持されつつ中心部Oを中心に回転するように構成されている。尚、各支持脚20a~20dのローラ22の回転動作(回転開始、停止、回転方向、回転速度)は同期するように図示しない制御部により制御されている。
また、図3に示すようにチャンバ10の上下には、ヒータ部15が設けられ、炉内を所定温度まで昇温可能に構成されている。
【0025】
このCVD装置5を用いてサセプタ1を製造する場合、予め円形のザグリ部が形成された炭素材料からなるカーボン基材2を、チャンバ10内の支持部20a~20d上に配置する。
次いで図示しない制御部により支持部20a~20dのローラ22を所定の回転速度で回転開始する。これによりカーボン基材2は、中心部Oを中心に所定速度(例えば0.1rpm)で回転する。
【0026】
また、ヒータ部15を駆動してチャンバ10内を例えば500℃に昇温し、チャンバ10内をガス流出口12から吸引して真空状態とする。
次にガス流入口11よりキャリアガス(H)を所定の流量でチャンバ10内に導入する。その後、チャンバ10内を例えば1300℃に昇温し、キャリアガスとともに原料ガス(SiCl、C)を所定時間導入する。
【0027】
ここで、前記原料ガスは、キャリアガスによってカーボン基材2の上下面に沿って流れ、ガス流出口12より排出される。
また、カーボン基材2は、下面側周縁部を支持するよう設けられた、複数の回転駆動されるローラ22によって中心部Oを中心に回転しているため、カーボン基材2の下面側周縁部における支持位置が同じ箇所とならず(固定されず変化する)、形成膜の膜厚の均一性が向上する。
【0028】
形成膜が所定の厚さ(例えば60μm以上)となるように所定時間(例えば14時間)原料ガスをチャンバ10内に供給した後、原料ガスの供給を停止し、更に所定時間経過後(例えば1時間後)にローラ22の回転を停止する。
【0029】
これらの処理によりカーボン基材2上には、炭化ケイ素からなる薄膜3が形成され、本発明のサセプタ1が製造されることになる。この薄膜3は、カーボン基材2が原料ガスに曝される間、チャンバ10内でカーボン基材2を支持する位置が常に変化しているため、膜厚の均一性が高く形成されている。即ち、得られたサセプタ1において、その主面F1に形成された薄膜3Fの膜厚t1の平均に対する他の主面F2に形成された薄膜3Bの膜厚t2の平均の比率が、0.7~1.2の間に形成される。また、サセプタ1の主面F1において、中心部Oと外縁部F1aとにおける膜厚差d1、及び外縁部F1aの最大膜厚と最小膜厚との膜厚差d2が、主面F1に形成された薄膜3Fの膜厚t1の平均の40%以下になるよう形成される。
【0030】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、サセプタ1の主面F1に形成された薄膜3Fの膜厚t1の平均に対する他の主面F2に形成された薄膜3Bの膜厚t2の平均の比率が、0.7~1.2の間に形成される。また、サセプタ1の主面F1において、中心部Oと外縁部F1aとにおける膜厚差d1或いは外縁部F1aの最大膜厚と最小膜厚との膜厚差d2が、主面F1に形成された薄膜3Fの膜厚t1の平均の40%以下になるよう形成される。
これにより、カーボン基材2の表面に形成された薄膜3の均一性が向上し、主面F1における熱伝導の均一性が良好となる。その結果、そのサセプタを用いたシリコンウェーハへのエピタキシャル成膜工程において、均一なエピタキシャル膜を得ることができる。
また、炭素材料からなるカーボン基材2に炭化ケイ素からなる薄膜をCVDにより形成する際、カーボン基材2に対する支持位置を固定しないことにより、カーボン基材2全体に対し均一な薄膜を形成することができる。また、それにより従来のように薄膜形成の途中でチャンバからカーボン基材2を取り出す必要が無く、汚染の抑制された単一層の薄膜を形成することができる。
【0031】
尚、前記実施の形態においては、ザグリ部が形成されたサセプタを例に説明したが、本発明にあっては、その形態に限定されるものではなく、ザグリ部を有しないサセプタにも適用することができる。
また、ザグリ部を有する場合、図示したような円柱形状のザグリ部に限らず、例えば、凹状に湾曲したザグリ部を有するサセプタにも本発明を適用することができる。
【実施例0032】
本発明に係るサセプタ及びその製造方法について、実施例に基づきさらに説明する。
[実験1]
(実施例1)
実施例1では、サセプタの基材の材料として等方性黒鉛を用い、ザグリ部が形成されたカーボン基材を用意した。そして、前述した実施の形態に従い、前記カーボン基材の表面に炭化ケイ素の薄膜を形成した。
即ち、図3図4に示したCVD装置において、チャンバ内にカーボン基材を配置し、真空引き後、チャンバ内を500℃まで昇温してキャリアガス(H)をチャンバ内に導入した。次いで、チャンバ内を1300℃まで昇温し、カーボン基材の支持位置を固定しないように該基材を0.1rpmの回転速度で回転させ、カーボン基材の表裏面に沿って原料ガス(SiCl、C)を供給した。所定時間(14時間)の経過後、原料ガスの供給を止め、1時間後にカーボン基材の回転を停止して基材表面に所定厚さの炭化ケイ素の薄膜を形成した。
この方法により得られたサセプタの断面をSEM用いて観察した。図5は、その断面写真である。図5の写真に示すように、カーボン基材の表面に形成された炭化ケイ素膜は、(層間に汚染の恐れのある)積層された膜ではなく、単一層であることを確認した。
【0033】
(比較例1)
比較例1では、実施例1で用いたCVD装置において、カーボン基材の支持位置を固定して(ローラを回転させず支持して)、基材表面に炭化ケイ素膜を形成した。その他の条件は実施例1と同様にした。この比較例1では、5枚のカーボン基材に対し成膜処理を実施した。
この方法により得られたサセプタの断面を観察したところ、得られた5枚のサセプタのうち、3枚のサセプタにおいて膜剥がれ(基材の露出)が生じていた。これは、カーボン基材の支持部に対する膜の張り付きが発生し、チャンバからの取り出しの際に剥がれが生じたものであった。また、その他の2枚のサセプタでは、膜剥がれは生じなかったが、主面側(ウェーハ積載面側)において、膜厚の最小値が20μm、最大値が180μmとなり大きな膜厚差が生じた。
【0034】
[実験2]
実験2では、カーボン基材の表面に形成する炭化ケイ素膜の好適な膜厚について検討した。実施例2~5、及び比較例4において、膜厚は、原料ガスの供給時間により調整した。
基材表面への炭化ケイ素膜の形成後、得られたサセプタを用い、エピタキシャル成膜処理とクリーニング処理とを繰り返し行い、所定のライフ時間(連続運転4000時間)を達成できるかを検証した。
実施例2では、主面(ウェーハ載置面)における炭化ケイ素膜の膜厚が61μmであった。また、前記膜厚は、実施例3では66μm、実施例4では70μm、実施例5では80μm、実施例6では100μmであった。
また、前記膜厚は、比較例2では42μm、比較例3では55μm、比較例4では58μmであった。
実験2の結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示すように炭化ケイ素膜が60μmを下回るサセプタにあっては、必要なライフを得ることができなかった。よって、炭化ケイ素膜は60μm以上が好ましいことを確認した。
【0037】
[実験3]
実験3では、サセプタの基材の材料として等方性黒鉛を用い、ザグリ部が形成されたカーボン基材を用意した。図3に示したCVD装置を用い、複数の膜厚形成条件により基材表面に炭化ケイ素膜を形成した。
次いで各条件により形成したサセプタを用い、シリコンウェーハに対しエピタキシャル膜を形成する処理を行った。
【0038】
サセプタの製造においては、図3に示したCVD装置を用いて、サセプタの基材の表面に炭化ケイ素膜を形成する際、処理時間を増減することにより膜厚の厚さを調整した。薄膜形成終了後、CVD装置より取り出したサセプタの主面(ウェーハ載置面)に形成された炭化ケイ素膜の膜厚の平均に対する他の主面(ウェーハ非載置面)に形成された薄膜の膜厚の平均の比率を求めた。
【0039】
表2に示すように前記比率は、実施例7では0.7であり、実施例8では0.8であり、実施例9では0.9であり、実施例10では1.0であり、実施例11では1.1であり、実施例12では1.2であった。
また、比較例5では前記比率が0.5であり、比較例6では0.6であり、比較例7では1.3であり、比較例8では1.4であった。
【0040】
尚、実施例7~12、及び比較例5~8にあっては、サセプタの主面(ウェーハ載置面)において、中心と外縁部とにおける膜厚差の、主面に形成された薄膜の膜厚の平均に対する割合(%)はいずれも30%とした。さらにサセプタの主面(ウェーハ載置面)において、外縁部の最大膜厚と最小膜厚との膜厚差の、主面に形成された薄膜の膜厚の平均に対する割合(%)についても、いずれも30%とした。
実験3の結果を表2に示す。表2に示す各条件の評価(合否)は、シリコンウェーハに形成したエピタキシャル膜の均一性により行った。エピタキシャル膜の膜厚の面内分布が±5%以下を○、±5%を超えたものを×とした。
【0041】
【表2】
【0042】
実験3の結果よりサセプタの主面(ウェーハ載置面)に形成された炭化ケイ素膜の膜厚の平均に対する他の主面(ウェーハ非載置面)に形成された薄膜の膜厚の平均の比率は0.7~1.2の範囲であればエピタキシャル膜の膜厚均一性が良好になることを確認した。
【0043】
[実験4]
実験4では、実験3と同様に図3に示したCVD装置を用い、複数の膜厚形成条件により基材表面に炭化ケイ素膜を形成した。
次いで各条件により形成したサセプタを用い、シリコンウェーハに対しエピタキシャル膜を形成する処理を行った。
【0044】
サセプタの製造においては、図3に示したCVD装置を用いて、サセプタの基材の表面に炭化ケイ素膜を形成する際、処理時間を増減することにより膜厚の厚さを調整した。
薄膜形成終了後、CVD装置より取り出したサセプタの主面(ウェーハ載置面)において、中心と外縁部とにおける膜厚差の、主面に形成された薄膜の膜厚の平均に対する割合(%)を求めた。
【0045】
前記割合は、実施例13では0%であり、実施例14では10%であり、実施例15では20%であり、実施例16では30%であり、実施例17では40%であった。
また、前記割合は、比較例9では50%であり、比較例10では60%であった。
【0046】
尚、実施例13~17、及び比較例9、10にあっては、サセプタの主面(ウェーハ載置面)に形成された炭化ケイ素膜の膜厚の平均に対する他の主面(ウェーハ非載置面)に形成された薄膜の膜厚の平均の比率をいずれも1.0とした。さらにサセプタの主面(ウェーハ載置面)において、外縁部の最大膜厚と最小膜厚との膜厚差の、主面に形成された薄膜の膜厚の平均に対する割合(%)については、いずれも30%とした。
実験4の結果を表3に示す。表3に示す各条件の評価(合否)は、実験3と同様にシリコンウェーハに形成したエピタキシャル膜の均一性により行った。エピタキシャル膜の膜厚の面内分布が±5%以下を○、±5%を超えたものを×とした。
【0047】
【表3】
【0048】
実験4の結果よりサセプタの主面(ウェーハ載置面)において、中心と外縁部とにおける膜厚差が、主面に形成された薄膜の膜厚の平均の0%~40%の範囲であれば炭化ケイ素膜の膜厚均一性が良好になることを確認した。
【0049】
[実験5]
実験5では、実験3と同様に図3に示したCVD装置を用い、複数の膜厚形成条件により基材表面に炭化ケイ素膜を形成した。
次いで各条件により形成したサセプタを用い、シリコンウェーハに対しエピタキシャル膜を形成する処理を行った。
【0050】
サセプタの製造においては、図3に示したCVD装置を用いて、サセプタの基材の表面に炭化ケイ素膜を形成する際、処理時間を増減することにより膜厚の厚さを調整した。
薄膜形成終了後、CVD装置より取り出したサセプタの主面(ウェーハ載置面)において、外縁部の最大膜厚と最小膜厚との膜厚差の、主面に形成された薄膜の膜厚の平均に対する割合(%)を求めた。
【0051】
前記割合は、実施例18では0%であり、実施例19では10%であり、実施例20では20%であり、実施例21では30%であり、実施例22では40%であった。
また、前記割合は、比較例11では50%であり、比較例12では60%であった。
【0052】
尚、実施例18~22、及び比較例11、12にあっては、サセプタの主面(ウェーハ載置面)に形成された炭化ケイ素膜の膜厚の平均に対する他の主面(ウェーハ非載置面)に形成された薄膜の膜厚の平均の比率をいずれも1.0とした。さらにサセプタの主面(ウェーハ載置面)において、中心と外縁部とにおける膜厚差の、主面に形成された薄膜の膜厚の平均に対する割合(%)については、いずれも30%とした。
実験5の結果を表4に示す。表4に示す各条件の評価(合否)は、実験3、4と同様にシリコンウェーハに形成したエピタキシャル膜の均一性により行った。エピタキシャル膜の膜厚の面内分布が±5%以下を○、±5%を超えたものを×とした。
【0053】
【表4】
【0054】
実験5の結果よりサセプタの主面(ウェーハ載置面)において、外縁部の最大膜厚と最小膜厚との膜厚差が、主面に形成された薄膜の膜厚の平均の0%~40%の範囲であればエピタキシャル膜の膜厚均一性が良好になることを確認した。
【符号の説明】
【0055】
1 サセプタ
2 カーボン基材
3 薄膜
4 ザグリ部
5 CVD装置
10 チャンバ
11 ガス流入口
12 ガス流出口
20 支持部
図1
図2
図3
図4
図5