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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092344
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20220615BHJP
   G01T 1/204 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G01T1/204
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205111
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】會田 博之
(72)【発明者】
【氏名】堀内 弘
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188BB02
2G188CC09
2G188CC15
2G188CC17
2G188CC19
2G188CC22
2G188DD05
2G188DD11
2G188DD12
2G188DD14
2G188DD36
2G188DD42
2G188DD44
2G188DD47
2G188EE07
(57)【要約】
【課題】 外部からの衝撃に強い放射線検出器を提供する。又は、軽量化及び薄型化が可能な放射線検出器を提供する。
【解決手段】 放射線検出器は、光電変換基板2と、シンチレータ層5と、保護体13と、筐体51と、入射窓52と、を備える。光電変換基板2及び保護体13で覆われ、かつ、シンチレータ層5が位置している空間は、大気圧より減圧された空間である。保護体13は、入射窓52の内面S52aを押圧した状態に保持され、又は入射窓52の内面S52aに接着材を介して接着されている。光電変換基板2は、入射窓52に固定され、又は筐体51の上壁に固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び前記第1主面とは反対側の第2主面を有する光電変換基板と、
前記光電変換基板の前記第2主面側に位置したシンチレータ層と、
前記光電変換基板とともに前記シンチレータ層を挟み、前記光電変換基板とともに前記シンチレータ層を密閉した保護体と、
前記光電変換基板、前記シンチレータ層、及び前記保護体を収容し、開口を含む筐体と、
前記保護体と対向した内面を有し、前記筐体に固定され、前記開口を閉塞した入射窓と、を備え、
前記光電変換基板及び前記保護体で覆われ、かつ、前記シンチレータ層が位置している空間は、大気圧より減圧された空間であり、
前記保護体は、
前記入射窓の前記内面を押圧した状態に保持され、又は
前記入射窓の前記内面に接着材を介して接着され、
前記光電変換基板は、
前記入射窓に固定され、又は
前記筐体のうち前記開口が形成された上壁に固定されている、
放射線検出器。
【請求項2】
前記保護体は、前記入射窓の前記内面を押圧した状態に保持され、前記入射窓の前記内面に接触している、
請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記保護体は、前記入射窓の前記内面を押圧した状態に保持され、
前記保護体と前記入射窓との間の空間は、密閉され、大気圧より減圧されている、
請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記光電変換基板の前記第1主面に設けられた無機層をさらに備え、
平面視にて、前記無機層は、前記シンチレータ層の全体に重なっている、
請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項5】
第1主面及び前記第1主面とは反対側の第2主面を有する光電変換基板と、
前記光電変換基板の前記第2主面側に位置したシンチレータ層と、
前記光電変換基板とともに前記シンチレータ層を挟み、前記光電変換基板とともに前記シンチレータ層を密閉した保護体と、
前記光電変換基板、前記シンチレータ層、及び前記保護体を収容し、開口を含む筐体と、
前記光電変換基板の前記第1主面と対向した内面を有し、前記筐体に固定され、前記開口を閉塞した入射窓と、を備え、
前記光電変換基板及び前記保護体で覆われ、かつ、前記シンチレータ層が位置している空間は、大気圧より減圧された空間であり、
前記光電変換基板は、
前記入射窓の前記内面を押圧した状態に保持され、又は
前記入射窓の前記内面に接着材を介して接着され、
前記光電変換基板は、
前記入射窓に固定され、又は
前記筐体のうち前記開口が形成された上壁に固定されている、
放射線検出器。
【請求項6】
前記光電変換基板は、前記入射窓の前記内面を押圧した状態に保持され、
前記光電変換基板の前記第1主面は、前記入射窓の前記内面に接触している、
請求項5に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記光電変換基板は、前記入射窓の前記内面を押圧した状態に保持され、
前記光電変換基板と前記入射窓との間の空間は、密閉され、大気圧より減圧されている、
請求項5に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記入射窓の前記内面と、前記光電変換基板の前記第1主面と、の間に設けられた無機層をさらに備え、
平面視にて、前記無機層は、前記シンチレータ層の全体に重なっている、
請求項5に記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記光電変換基板は、前記第1主面を含み可撓性を持つ基材と、複数の光電変換素子と、を有する、
請求項1又は5に記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記シンチレータ層は、タリウム賦活ヨウ化セシウムで形成されている、
請求項1又は5に記載の放射線検出器。
【請求項11】
前記光電変換基板に電気的に接続された回路基板をさらに備え、
前記筐体は、前記開口とは反対側に底壁を有し、
前記回路基板は、前記底壁に固定され、前記光電変換基板に間隔を空けて位置している、
請求項1又は5に記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
X線フィルムに置き換わるX線画像診断機器として、X線画像検出器の普及拡大が図られている。X線フィルムに対してX線画像検出器は、X線撮影から画像確認までの時間が非常に短く、画像のダイナミックレンジが広く、フィルム現像に必要な薬液も必要が無いという利点を有している。
【0003】
現在実用化されているX線画像検出器の多くでは、まず、人体等の被写体を透過したX線画像をX線画像検出器内部のシンチレータ層にて可視光に変換される。次いで、変換された可視光像は平面状の基材の上にマトリクス状に敷き詰めた複数の光電変換素子によって電気信号に変換される。その後、X線画像検出器の回路基板により変換された電気信号を画像情報に変換し、X線画像検出器の外部に出力される。
【0004】
X線画像検出器は、診断装置に固定した状態にて使用される固定式のX線画像検出器と、診断装置とは固定されない携帯式のX線画像検出器とがある。特に携帯式のX線画像検出器は撮影できる部位の自由度が高いという特徴があり、この特徴が医療の診察において有益とされている。
【0005】
携帯式のX線画像検出器の多くは、X線入射側に位置した入射窓と、筐体と、筐体の内部に収容された基台、X線検出パネル、及び回路基板と、を備えている。X線検出パネルは基台に固定されている。X線検出パネルは、入射窓に間隔を空けて配置されている。又は、入射窓とX線検出パネルとの間に緩衝材が設置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
携帯式のX線画像検出器は、持ち運ぶことが多く、また使用の際には固定されず不安定な状態であることが多い。そのため、携帯式のX線画像検出器は、固定式のX線画像検出器よりも外部からの衝撃が加わり易いという特徴がある。
【0007】
X線画像検出器に用いられているX線検出パネルにおいて、画素が高精細に形成された光電変換基板の上に厚いシンチレータ層(100乃至1000μm厚のシンチレータ層)が積層されている。そのため、X線画像検出器に外部からの衝撃が加わると、光電変換基板とシンチレータ層と界面にて剥がれが発生し易くなる。光電変換基板からシンチレータ層が剥がれると、出力されるX線画像に悪影響を及ぼすこととなる。
【0008】
上述した従来構造のX線画像検出器では、X線検出パネルは、筐体内部に設置され強固で大きな基台に固定されており、X線画像検出器の外部に露出している筐体及び入射窓とは接していない。上述したように、入射窓とX線検出パネルとの間に緩衝材が設置されている。そのため、外部からX線画像検出器に加わる衝撃がX線検出パネルに直接加わることは無いという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005-195643号公報
【特許文献2】特開2010-262134号公報
【特許文献3】特開2014-2114号公報
【特許文献4】特開2016-180707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本実施形態は、外部からの衝撃に強い放射線検出器を提供する。又は、軽量化及び薄型化が可能な放射線検出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態に係る放射線検出器は、
第1主面及び前記第1主面とは反対側の第2主面を有する光電変換基板と、前記光電変換基板の前記第2主面側に位置したシンチレータ層と、前記光電変換基板とともに前記シンチレータ層を挟み、前記光電変換基板とともに前記シンチレータ層を密閉した保護体と、前記光電変換基板、前記シンチレータ層、及び前記保護体を収容し、開口を含む筐体と、前記保護体と対向した内面を有し、前記筐体に固定され、前記開口を閉塞した入射窓と、を備え、前記光電変換基板及び前記保護体で覆われ、かつ、前記シンチレータ層が位置している空間は、大気圧より減圧された空間であり、前記保護体は、前記入射窓の前記内面を押圧した状態に保持され、又は前記入射窓の前記内面に接着材を介して接着され、前記光電変換基板は、前記入射窓に固定され、又は前記筐体のうち前記開口が形成された上壁に固定されている。
【0012】
また、一実施形態に係る放射線検出器は、
第1主面及び前記第1主面とは反対側の第2主面を有する光電変換基板と、前記光電変換基板の前記第2主面側に位置したシンチレータ層と、前記光電変換基板とともに前記シンチレータ層を挟み、前記光電変換基板とともに前記シンチレータ層を密閉した保護体と、前記光電変換基板、前記シンチレータ層、及び前記保護体を収容し、開口を含む筐体と、前記光電変換基板の前記第1主面と対向した内面を有し、前記筐体に固定され、前記開口を閉塞した入射窓と、を備え、前記光電変換基板及び前記保護体で覆われ、かつ、前記シンチレータ層が位置している空間は、大気圧より減圧された空間であり、前記光電変換基板は、前記入射窓の前記内面を押圧した状態に保持され、又は前記入射窓の前記内面に接着材を介して接着され、前記光電変換基板は、前記入射窓に固定され、又は前記筐体のうち前記開口が形成された上壁に固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線検出器を示す断面図である。
図2図2は、上記X線検出器のX線検出パネル、回路基板、及び複数のFPCを示す斜視図である。
図3図3は、上記X線検出器のX線検出パネルの一部を示す拡大断面図である。
図4図4は、上記X線検出器の一部を示す平面図であり、X線検出パネル、入射窓、及び支持材を示す図である。
図5図5は、第2の実施形態に係るX線検出器を示す断面図である。
図6図6は、第3の実施形態に係るX線検出器を示す断面図である。
図7図7は、上記第3の実施形態に係るX線検出器を示す平面図である。
図8図8は、第4の実施形態に係るX線検出器を示す断面図である。
図9図9は、第5の実施形態に係るX線検出器を示す断面図である。
図10図10は、第6の実施形態に係るX線検出器を示す断面図である。
図11図11は、第7の実施形態に係るX線検出器を示す断面図である。
図12図12は、第8の実施形態に係るX線検出器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0015】
始めに、本発明の実施形態の基本構想について説明する。
例えば、特許文献1に示すようなX線画像検出器は、筐体内部に配置された基台(支持板)を必要としている。衝撃に弱い放射線検出パネルを保護するため、基台には強度が必要である。しかしながら、基台に十分な強度を持たせると、基台の重量が大きくなり、携帯式のX線画像検出器の重量を増加させ、可搬性を損なうという問題がある。
【0016】
また、基台の強度を確保するため、基台はある程度の厚みを有する必要があり、厚い基台を筐体の内部に格納することとなる。そのため、筐体の厚みが大きくなり、X線画像検出器の厚みが大きくなり、X線画像検出器の可搬性を損なうという問題がある。
【0017】
そこで、本発明の実施形態においては、かかる問題を改善するものであり、可搬性が高く実現に有用である携帯式の放射線検出器を得ることができるものである。例えば、外部からの衝撃に強い放射線検出器を得ることができるものである。又は、軽量化及び薄型化が可能な放射線検出器を得ることができるものである。次に、上記問題を改善するための手段及び手法について説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線検出器1を示す断面図である。X線検出器1は、X線画像検出器であり、X線検出パネルを利用するX線平面検出器である。
【0019】
図1に示すように、X線検出器1は、X線検出パネルPNL、回路基板11、接続基板としてのFPC(フレキシブルプリント基板)2e1、筐体51、入射窓52、支持材15、スペーサ9a,9b等を備えている。X線検出パネルPNLは、光電変換基板2、シンチレータ層5、保護体13等を備えている。
【0020】
光電変換基板2は、第1主面S2a、及び第1主面S2aとは反対側の第2主面S2bを有している。シンチレータ層5は、光電変換基板2の第2主面S2b側に位置している。保護体13は、光電変換基板2とともにシンチレータ層5を挟み、光電変換基板2とともにシンチレータ層5を密閉している。
【0021】
回路基板11にはFPC2e1に対応するコネクタが実装され、FPC2e1はコネクタを介して回路基板11に電気的に接続されている。FPC2e1とX線検出パネルPNLとの接続には、ACF(異方性導電フィルム)を利用した熱圧着法が用いられる。この方法により、X線検出パネルPNLの複数の微細なパッドと、FPC2e1の複数の微細なパッドとの電気的接続が確保される。
【0022】
上記のように、回路基板11は、上記コネクタ、FPC2e1等を介してX線検出パネルPNL(光電変換基板2)に電気的に接続されている。回路基板11は、X線検出パネルPNLを電気的に駆動し、かつ、X線検出パネルPNLからの出力信号を電気的に処理するものである。
【0023】
X線検出パネルPNL、回路基板11、FPC2e1等は、筐体51の内部に収容されている。筐体51は、開口OPと、開口OPとは反対側の底壁51aと、側壁51bと、を有している。底壁51a及び側壁51bは、一体に形成されている。
【0024】
入射窓52は、X線検出パネルPNLと対向した内面S52aを有し、筐体51に固定され、開口OPを閉塞している。本実施形態において、内面S52aは、X線検出パネルPNLの保護体13と対向している。
【0025】
入射窓52はX線を透過させる。そのため、X線は入射窓52を透過してX線検出パネルPNLに入射される。入射窓52は、板状に形成され、筐体51内部を保護する機能を有している。入射窓52は、X線吸収率の低い材料で薄く形成することが望ましい。本実施形態において、入射窓52は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon-Fiber-Reinforced Plastic)で形成されている。これにより、入射窓52で生じる、X線の散乱と、X線量の減衰とを低減することができる。そして、薄くて軽いX線検出器1を実現することができる。
【0026】
筐体51の底壁51aには、スペーサ9a,9bを介して回路基板11が固定されている。言い換えると、筐体51は、スペーサ9a,9bを介して回路基板11を支持している。上記のように、回路基板11は、非X線入射側にて筐体51の内側に固定されている。スペーサ9a,9bを使用することで、主に金属で構成される筐体51(底壁51a)から回路基板11までの電気的絶縁距離を保持することができる。回路基板11は、光電変換基板2(X線検出パネルPNL)に間隔を空けて位置している。
【0027】
X線検出パネルPNL及び回路基板11は、筐体51に固定されている。X線検出器1は、X線検出パネルPNLや回路基板11を支持するための支持板を筐体51の内部に設けなくともよい。上記支持板の分、X線検出器1の重量を低減したり、X線検出器1の薄型化を図ったり、できるため、可搬性の高いX線検出器1を得ることができる。
【0028】
光電変換基板2(X線検出パネルPNL)は、筐体51又は入射窓52に固定されている。本実施形態において、光電変換基板2(X線検出パネルPNL)は、支持材15により入射窓52に固定されている。
【0029】
図2は、本実施形態のX線検出器1のX線検出パネルPNL、回路基板11、及び複数のFPC2e1,2e2を示す斜視図である。なお、図2には、X線検出器1の全ての部材を示していない。保護体13等、X線検出器1のいくつかの部材の図示は、図2において省略している。
【0030】
図2に示すように、X線検出パネルPNLは、光電変換基板2、シンチレータ層5等を備えている。光電変換基板2は、基材2a、複数の光電変換部2b、複数の制御ライン(又はゲートライン)2c1、複数のデータライン(又はシグナルライン)2c2等を有している。なお、光電変換部2b、制御ライン2c1、及びデータライン2c2の数、配置等は図2の例に限定されるものではない。
【0031】
複数の制御ライン2c1は、行方向に延在し、列方向に所定の間隔をあけて並べられている。複数のデータライン2c2は、列方向に延在し、複数の制御ライン2c1と交差し、行方向に所定の間隔をあけて並べられている。
【0032】
複数の光電変換部2bは、基材2aの一方の主面側に設けられている。光電変換部2bは、制御ライン2c1とデータライン2c2とにより区画された四角形状の領域に設けられている。1つの光電変換部2bは、X線画像の1つの画素に対応する。複数の光電変換部2bは、行方向及び列方向にマトリクス状に並べられている。上記のことから、光電変換部2bは、アレイ基板である。
【0033】
各々の光電変換部2bは、光電変換素子2b1と、スイッチング素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)2b2と、を有している。TFT2b2は、対応する一の制御ライン2c1と、対応する一のデータライン2c2とに接続されている。光電変換素子2b1はTFT2b2に電気的に接続されている。
【0034】
制御ライン2c1は、FPC2e1を介して回路基板11に電気的に接続されている。回路基板11は、FPC2e1を介して複数の制御ライン2c1に制御信号S1を与える。データライン2c2は、FPC2e2を介して回路基板11に電気的に接続されている。光電変換素子2b1によって変換された画像データ信号S2(光電変換部2bに蓄積された電荷)は、TFT2b2、データライン2c2、及びFPC2e2を介して回路基板11に伝送される。
【0035】
X線検出器1は、画像伝送部4をさらに備えている。画像伝送部4は、配線4aを介して回路基板11に接続されている。なお、画像伝送部4は、回路基板11に組込まれてもよい。画像伝送部4は、図示しない複数のアナログ-デジタル変換器によりデジタル信号に変換された画像データの信号に基づいて、X線画像を生成する。生成されたX線画像のデータは、画像伝送部4から外部の機器に向けて出力される。
【0036】
図3は、本実施形態に係るX線検出器1のX線検出パネルPNLの一部を示す拡大断面図である。
図3に示すように、光電変換基板2は、基材2a、複数の光電変換部2b、絶縁層21,22,23,24,25を有している。複数の光電変換部2bは、検出領域DAに位置している。各々の光電変換部2bは、光電変換素子2b1と、TFT2b2と、を備えている。
【0037】
TFT2b2は、ゲート電極GE、半導体層SC、ソース電極SE、及びドレイン電極DEを有している。光電変換素子2b1は、フォトダイオードで構成されている。なお、光電変換素子2b1は、光を電荷に変換するように構成されていればよい。
【0038】
基材2aは、板状の形状を有し、絶縁材料で形成されている。基材2aの平面形状は、例えば四角形である。基材2aは、可撓性を持ち、湾曲可能である。基材2aの材料としては、例えば樹脂であるポリイミド(PI)を挙げることができる。基材2aは、上述した第1主面S2aを有している。複数の光電変換部2b(光電変換素子2b1及びTFT2b2)は、基材2aの第1主面S2aとは反対側に位置している。
なお、本実施形態と異なり、基材2aは、ガラスで形成されてもよい。
【0039】
絶縁層21は、基材2aの上に設けられている。絶縁層21の上に、ゲート電極GEが形成されている。ゲート電極GEは、上記制御ライン2c1に電気的に接続されている。絶縁層22は、絶縁層21及びゲート電極GEの上に設けられている。半導体層SCは、絶縁層22の上に設けられ、ゲート電極GEに対向している。半導体層SCは、非晶質半導体としての非晶質シリコン、多結晶半導体としての多結晶シリコン等の半導体材料で形成されている。
【0040】
絶縁層22及び半導体層SCの上に、ソース電極SE及びドレイン電極DEが設けられている。ゲート電極GE、ソース電極SE、ドレイン電極DE、上記制御ライン2c1、及び上記データライン2c2は、アルミニウムやクロムなどの低抵抗金属を用いて形成されている。
【0041】
ソース電極SEは、半導体層SCのソース領域に電気的に接続されている。また、ソース電極SEは、上記データライン2c2に電気的に接続されている。ドレイン電極DEは、半導体層SCのドレイン領域に電気的に接続されている。
【0042】
絶縁層23は、絶縁層22、半導体層SC、ソース電極SE、及びドレイン電極DEの上に設けられている。光電変換素子2b1は、ドレイン電極DEに電気的に接続されている。絶縁層24は、絶縁層23及び光電変換素子2b1の上に設けられている。バイアス線BLは、絶縁層24の上に設けられ、絶縁層24に形成されたコンタクトホールを通り光電変換素子2b1に接続されている。絶縁層25は、絶縁層24及びバイアス線BLの上に設けられている。絶縁層25は、上述した第2主面S2bを有している。
【0043】
絶縁層21,22,23,24,25は、無機絶縁材料、有機絶縁材料等の絶縁材料で形成されている。無機絶縁材料としては、酸化物絶縁材料、窒化物絶縁材料、及び酸窒化物絶縁材料を挙げることができる。有機絶縁材料としては樹脂を挙げることができる。
【0044】
シンチレータ層5は、光電変換基板2(第2主面S2b)の上に設けられている。シンチレータ層5は、複数の光電変換部2bと対向している。シンチレータ層5は、少なくとも検出領域DAに位置し、複数の光電変換部2bの上方を覆っている。シンチレータ層5は、入射されるX線を光(蛍光)に変換するように構成されている。
【0045】
なお、光電変換素子2b1は、シンチレータ層5から入射される光を電荷に変換する。変換された電荷は光電変換素子2b1に蓄積される。TFT2b2は、光電変換素子2b1への蓄電及び光電変換素子2b1からの放電を切替えることができる。なお、光電変換素子2b1の自己容量が不十分である場合、光電変換基板2はコンデンサ(蓄積キャパシタ)をさらに有し、光電変換素子2b1で変換された電荷をコンデンサに蓄積してもよい。
【0046】
シンチレータ層5は、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)で形成されている。真空蒸着法を用いてシンチレータ層5を形成すれば、複数の柱状結晶の集合体からなるシンチレータ層5が得られる。シンチレータ層5の厚みは、例えば、600μmである。シンチレータ層5の最表面において、シンチレータ層5の柱状結晶の太さは、8乃至12μmである。柱状構造結晶のタリウム賦活ヨウ化セシウムで形成されたシンチレータ層5は、X線の吸収効率が高いため、X線検出パネルPNLに優れたX線検出パネルPNLを得ることができる。
【0047】
シンチレータ層5を形成する材料は、CsI:Tlに限定されるものではない。シンチレータ層5は、タリウム賦活ヨウ化ナトリウム(NaI:Tl)、ナトリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Na)、ユーロピウム賦活臭化セシウム(CsBr:Eu)、ヨウ化ナトリウム(NaI)等で形成されてもよい。
【0048】
なお、真空蒸着法を用いてシンチレータ層5を形成する際には、開口を有するマスクが用いられる。この場合、光電変換基板2上の開口に対峙する領域にシンチレータ層5が形成される。また、蒸着によるシンチレータ材は、マスクの表面にも堆積する。そして、シンチレータ材は、マスクの開口の近傍にも堆積し、開口の内部に徐々に張り出すように結晶が成長する。マスクから開口の内部に結晶が張り出すと、開口の近傍において、光電変換基板2へのシンチレータ材の蒸着が抑制される。そのため、図2に示したように、シンチレータ層5の周縁近傍は、外側になるに従い厚みが漸減している。
【0049】
又は、シンチレータ層5は、マトリクス状に並べられ、光電変換部2bに一対一で設けられ、それぞれ四角柱状の形状を有する複数のシンチレータ部を有してもよい。そのようなシンチレータ層5を形成する際、酸硫化ガドリニウム(GdS)蛍光体粒子をバインダ材と混合したシンチレータ材を、光電変換基板2上に塗布し、シンチレータ材を焼成して硬化させる。その後、ダイサによりダイシングするなどし、シンチレータ材に格子状の溝部を形成する。上記の場合、複数のシンチレータ部の間には、空気又は酸化防止用の窒素(N)等の不活性ガスが封入される。又は、複数のシンチレータ部の間の空間は、大気圧より減圧された空間に設定されてもよい。
【0050】
本実施形態において、X線検出パネルPNLは、光反射層6及び防湿カバー(防湿部)7をさらに備えている。光反射層6は、シンチレータ層5の上に設けられている。光反射層6は、少なくとも検出領域DAに位置し、シンチレータ層5の上面を覆っている。光反射層6は、光(蛍光)の利用効率を高めて感度特性の向上を図るために設けられている。すなわち、光反射層6は、シンチレータ層5において生じた光のうち、光電変換部2bが設けられた側とは反対側に向かう光を光電変換部2b側に反射させる。
【0051】
例えば、表面が銀合金やアルミニウムなどの光反射率の高い金属層を含むシートや、光散乱性粒子を含む樹脂シート等をシンチレータ層5の上に設けることで光反射層6を形成してもよい。ただし、光反射層6は、必ずしも必要ではなく、X線検出パネルPNLに求められる感度特性などに応じて設ければよい。
【0052】
防湿カバー7は、光電変換基板2、シンチレータ層5、及び光反射層6の上に設けられている。防湿カバー7は、シンチレータ層5及び光反射層6を覆っている。防湿カバー7は、空気中に含まれる水分により、光反射層6の特性やシンチレータ層5の特性が劣化するのを抑制するために設けられている。防湿カバー7は、シンチレータ層5の露出部分を完全に覆っている。防湿カバー7は光反射層6等との間に隙間を空けてもよいし、防湿カバー7は光反射層6等と接触してもよい。
【0053】
防湿カバー7は、金属を含むシートで形成されている。上記金属としては、アルミニウムを含む金属、銅を含む金属、マグネシウムを含む金属、タングステンを含む金属、ステンレス、コバール等を挙げることができる。防湿カバー7が金属を含んでいる場合、防湿カバー7は、水分の透過を、防止したり、大幅に抑制したりすることができる。
【0054】
また、防湿カバー7は、樹脂層と金属層とが積層された積層シートで形成されてもよい。この場合、樹脂層は、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、テフロン(登録商標)、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、弾性ゴム等の材料で形成することができる。金属層は、例えば、前述した金属を含むものとすることができる。金属層は、スパッタリング法、ラミネート法等を用いて形成することができる。
【0055】
この場合、樹脂層より金属層をシンチレータ層5側に設けた方が好ましい。樹脂層により金属層を覆うことができるので、外力などにより金属層が受け得る損傷を抑制することができる。また、金属層が樹脂層よりもシンチレータ層5側に設けられていれば、樹脂層を介した透湿によるシンチレータ層5の特性の劣化を抑制することができる。
【0056】
防湿カバー7としては、金属層を含むシート、無機絶縁層を含むシート、樹脂層と金属層とが積層された積層シート、及び樹脂層と無機絶縁層とが積層された積層シートを挙げることができる。上記のことから、防湿カバー7の無機層は、金属層にかぎらず、無機絶縁層であってもよい。又は、防湿カバー7は、金属層及び無機絶縁層の両方を有してもよい。無機絶縁層は、酸化珪素、酸化アルミニウム等を含む層で形成することができる。無機絶縁層は、スパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0057】
本実施形態において、保護体13は、光反射層6及び防湿カバー7を有し、光反射層6及び防湿カバー7の積層体で形成されている。但し、保護体13の構成は、本実施形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。
例えば、保護体13は防湿カバー7のみで形成されてもよい。
又は、X線検出パネルPNLが、光反射層6を備え、防湿カバー7を備えていない場合、保護体13は光反射層6のみで形成されてもよい。
又は、X線検出パネルPNLが、防湿カバー7を備え、光反射層6を備えていない場合、保護体13は防湿カバー7のみで形成されてもよい。
【0058】
図4は、本実施形態のX線検出器1の一部を示す平面図であり、X線検出パネルPNL、入射窓52、及び支持材15を示す図である。図4において、支持材15には右上がりの斜線を付し、シンチレータ層5には右下がりの斜線を付している。
図1及び図4に示すように、光電変換基板2は、検出領域DAと、検出領域DAの周囲に位置する枠状の非検出領域NDAと、を有している。
【0059】
シンチレータ層5は、少なくとも検出領域DAに位置している。保護体13(光反射層6及び防湿カバー7)は、検出領域DA及び非検出領域NDAに位置している。保護体13は、図4に示す平面図において、シンチレータ層5を完全に覆っている。保護体13は、光電変換基板2とともにシンチレータ層5を密封している。本実施形態において、光電変換基板2及び保護体13で覆われ、かつ、シンチレータ層5が位置している空間は、密閉空間であり、大気圧より減圧された空間である。
【0060】
空気が存在する大気圧の空間と比較して、シンチレータ層5が位置する上記空間に存在し得る水分の量を大幅に低減することができ、又は、上記空間に水分を存在させなくすることができる。そのため、シンチレータ層5に向かう水分の量を低減させることができ、又は、シンチレータ層5への水分の浸入を防止することができる。
【0061】
支持材15は、非検出領域NDAに位置し、シンチレータ層5の周囲に設けられている。本実施形態において、支持材15は、非検出領域NDAのうち保護体13より外側の領域に位置している。支持材15は、枠状の形状を有し、非検出領域NDAを連続的に延在している。支持材15は、光電変換基板2(第2主面S2b)と、入射窓52と、を気密に接合している。
【0062】
本実施形態において、保護体13と入射窓52との間の空間(光電変換基板2、入射窓52、及び支持材15で囲まれた空間)は、密閉され、大気圧より減圧されている。可撓性を持つ基材2aは、フレキシブルなX線検出パネルPNLの形成に寄与している。上記のことから、保護体13は入射窓52の内面S52aを押圧した状態に保持され、保護体13の表面は内面S52aに接触している。
【0063】
上記のように構成された第1の実施形態に係るX線検出器1によれば、X線検出器1は、第1主面S2a及び第2主面S2bを有する光電変換基板2と、シンチレータ層5と、保護体13と、開口OPを含む筐体51と、内面S52aを有する入射窓52と、を備えている。
【0064】
光電変換基板2は、可撓性を持つ基材2aを有している。そのため、基材2aがガラス等で形成されたリジッド基板である場合と比較して、光電変換基板2の軽量化及び薄型化に寄与することができる。さらに、基材2aはガラスに比べて湾曲可能であるため、衝撃に強く、かつ、割れ難い基材2aを得ることができる。
【0065】
X線検出パネルPNLは、入射窓52に固定されている。入射窓52の弾性率(剛性)は、基材2aの弾性率(剛性)より高い。そのため、入射窓52はX線検出パネルPNLを良好に支持することができる。X線検出器1は、特許文献1に示すような厚くて重量のある基台(支持板)無しに構成されている。これにより、X線検出器1の軽量化及び薄型化を図ることができ、可搬性の高いX線検出器1を得ることができる。
【0066】
ところで、X線検出パネルPNLを入射窓52に固定することで、入射窓52に加えられる衝撃がX線検出パネルPNLに直接伝わったり、筐体51に加えられる衝撃が実質的に吸収されること無しにX線検出パネルPNLに伝わったり、することになる。そして、その衝撃がシンチレータ層5に伝わることで、シンチレータ層5が光電変換基板2から剥離し、シンチレータ層5の内部にて発生した蛍光が光電変換基板2の光電変換部2b(画素)に伝わらなくことで、撮影したX線画像の画質が落ちてしまう可能性がある。
【0067】
そこで、保護体13と入射窓52との間の空間(光電変換基板2、入射窓52、及び支持材15で囲まれた空間)を、大気圧より低い減圧状態にしている。X線検出パネルPNLには、大気圧により、入射窓52側に向かう圧力が加えられる。保護体13は入射窓52の内面S52aを押圧した状態に保持されるため、上記外部からの衝撃がシンチレータ層5に伝わっても、光電変換基板2からのシンチレータ層5の剥離を防止することができ、又は上記剥離を抑制することができる。上記のことから、外部からの衝撃に強いX線検出器1を得ることができる。
【0068】
X線検出器1の主な用途が医療における人体の診断であり、人間の通常の生活環境では最も標高の高い町とされるボリビアのエル・アルトで標高4100mとされており、その際の気圧環境としては0.6気圧である。また、高地に類似する気圧の環境としては、航空機によるX線検出器1の輸送時の、0.8~0.7気圧程度である。
【0069】
外部からの衝撃による光電変換基板2からのシンチレータ層5の剥離を抑制するには、上記環境下においても、シンチレータ層5が位置している空間を、外部気圧環境以下とすることが必要である。そのため、シンチレータ層5が位置している空間の圧力は0.6気圧以下であることが望ましい。
【0070】
保護体13と入射窓52との間に空隙が存在すると、外部からの衝撃によりX線検出パネルPNLが振動し、入射窓52と保護体13が衝突する可能性がある。そして、入射窓52と保護体13が衝突すると、その衝突による力がシンチレータ層5に加わり、シンチレータ層5の微細な柱状構造が崩れてしまう。その崩れによって、シンチレータ層5にて発生した蛍光が散乱され、散乱によってX画像の解像度が低下し、出力される画像の品質が低下してしまう。
【0071】
そこで、本実施形態において、保護体13の表面は内面S52aに接触している。外部からの衝撃による入射窓52と保護体13の衝突を防ぐことが可能となるため、X線画像の品質劣化を防止することが可能となる。X線検出器1の周囲の環境の気圧を考慮すると、保護体13と入射窓52との間の空間(光電変換基板2、入射窓52、及び支持材15で囲まれた空間)も、0.6気圧以下であることが望ましい。
【0072】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図5は、第2の実施形態に係るX線検出器1を示す断面図である。X線検出器1は、本第2の実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。
【0073】
図5に示すように、入射窓52の内面S52aは、X線検出パネルPNLの保護体13と対向していない。本実施形態において、内面S52aは、光電変換基板2の第1主面S2aと対向している。
【0074】
支持材15は、非検出領域NDAに位置し、シンチレータ層5の周囲に設けられている。本実施形態において、支持材15は、非検出領域NDAのうち保護体13より外側の領域に位置している。支持材15は、枠状の形状を有し、非検出領域NDAを連続的に延在している。支持材15は、光電変換基板2と、入射窓52との隙間を閉塞している。本実施形態において、光電変換基板2(X線検出パネルPNL)は、支持材15により入射窓52に固定されている。
【0075】
本実施形態において、光電変換基板2と入射窓52との間の空間は、支持材15により密閉され、大気圧より減圧されている。上記のことから、光電変換基板2(基材2a)は入射窓52の内面S52aを押圧した状態に保持され、光電変換基板2(基材2a)の第1主面S2aは内面S52aに接触している。本実施形態において、基材2aは、ガラスで形成されている。
【0076】
上記のように構成された第2の実施形態に係るX線検出器1によれば、X線検出器1は、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。基材2aに実質的に0.7mmの厚みを持つガラス基板を使用している。しかしながら、保護体13は、薄いアルミ箔、フィルム等の剛性の低い材料を用いている。これは、保護体13の剛性を低くすることで基材2aと保護体13の素材の違いによる熱膨張率差等による基板の反りの量を低くすることが出来るためである。
【0077】
X線検出パネルPNLは入射窓52に固定されているため、X線検出器1の外部からの衝撃は入射窓52からX線検出パネルPNLに伝わることになる。この際に図1に示した第1の実施形態では、入射窓52に固定されているのは剛性の低い保護体13であるため、衝撃がシンチレータ層5に伝わり易い。しかしながら、図5に示した第2の実施形態では入射窓52に固定されているのは剛性の高い光電変換基板2(基材2a)となるため、シンチレータ層5への衝撃の伝わりが改善され、微細な柱状結晶構造を有するシンチレータ層5の破壊や、シンチレータ層5と光電変換基板2との界面での剥離を防止することが可能となる。
【0078】
本第2の実施形態では、基材2aの材質にガラスを用いている。但し、基材2aに、薄くて可撓性のある樹脂製の材料として、ポリイミド等の材料を用いてもよい。基材2aがガラス基板である場合と比較して、基材2aを250g以上軽くすることが可能となり、X線検出器1の可搬性向上に寄与することができる。
【0079】
可撓性のある樹脂製の基材2aは、ガラス基板と比較して透湿量が多いという特徴がある。ガラス基板では実質的な透湿量は0(無し)と見なすことが出来るが、例として100μmの厚みを持つポリイミド基板の水蒸気透過率は実質的に21g・mm/day・mとなる。
【0080】
X線検出パネルPNLの基材2aに可撓性のある樹脂を用いると、筐体51と入射窓52の隙間や、CFRP等の樹脂製の入射窓52を通して外部から侵入した水分が、基材2aを通してシンチレータ層5の内部に到達する可能性がある。シンチレータ層5にタリウム賦活ヨウ化セシウム等の潮解性のある材料を用いた場合、シンチレータ層5の内部に到達した水分によりシンチレータ層5が潮解する。
【0081】
これにより、シンチレータ層5の柱状結晶構造が崩れ、その崩れによりシンチレータ層5にて発生した蛍光が散乱し、その散乱によってX線画像の解像度が劣化し、出力画像の劣化を招く場合がある。特に、X線検出器1の高温多湿環境での使用や、X線検出器1の長期間の使用によって上記悪影響が発生することがある。
【0082】
しかしながら、本実施形態において、光電変換基板2と入射窓52との間の空間は、大気圧より減圧されている。減圧状態の空間は、空気が存在する大気圧の空間と比較して、空間に存在し得る水分の量を大幅に低減することができる。又は、空間に水分を存在させなくすることができる。そのため、基材2aが透湿性を持っていても、第1主面S2aから基材2aに浸入してシンチレータ層5に向かう水分の量を低減させることができる。又は、シンチレータ層5への水分の浸入を防止することができる。そして、シンチレータ層5の劣化を抑制することができる。
【0083】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図6は、第3の実施形態に係るX線検出器1を示す断面図である。図7は、上記第3の実施形態に係るX線検出器1を示す平面図である。X線検出器1は、本第3の実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。
【0084】
図6及び図7に示すように、X線検出器1は、無機層ILをさらに備えている。無機層ILは、光電変換基板2の第1主面S2aに設けられている。本実施形態において、無機層ILは、第1主面S2aに張り付けられている。平面視において、無機層ILは、少なくともシンチレータ層5の全体に重なっている。無機層ILにより、第1主面S2aから基材2aに浸入する水分の量を低減することができ、シンチレータ層5の劣化を抑制することができる。
【0085】
本実施形態において、無機層ILはアルミ箔で形成されている。無機層ILは導電性を有しているため、光電変換基板2を電気的にシールドすることができる。また、無機層ILは光反射材で形成されている。無機層ILにより、X線検出パネルPNLから回路基板11側への光漏れを抑制することができる。なお、上記光漏れを抑制する効果は、無機層ILが光吸収材で形成される場合も同様である。
【0086】
無機層ILを形成する材料は、アルミニウムに限定されるものではなく、チタン、モリブデン、銅、酸化シリコン、窒化シリコン、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)、インジウム・ジンク・オキサイド(IZO)等の無機材料であってもよい。
無機層ILの厚みは、例えば10μmである。
【0087】
上記のように構成された第3の実施形態に係るX線検出器1によれば、X線検出器1は、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。X線検出器1は無機層ILをさらに備えている。無機層ILは、光電変換基板2に対してシンチレータ層5の反対側に位置している。無機層ILは金属で構成されているため、無機層ILの水蒸気透過量は非常に低い。10μmの厚みを持ちアルミ箔で形成された無機層ILの水分透過量は実質的に0(無し)と見なすことが出来る。
アルミは、実用的な金属中において比重が軽く、また圧延も容易のため、アルミ箔を薄く圧延形成することで、無機層ILを他の実用金属箔よりも軽くすることが可能となる。
【0088】
光電変換基板2の第1主面S2aに無機層ILを張り付けることにより、X線検出パネルPNLの外部の水蒸気のシンチレータ層5の内部への進入を抑制することが可能となる。X線検出器1が高温多湿の環境下に置かれても、シンチレータ層5の性能の劣化を抑制することができ、製品寿命の長いX線検出器1を得ることが可能となる。
【0089】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図8は、第4の実施形態に係るX線検出器1を示す断面図である。X線検出器1は、本第4の実施形態で説明する構成以外、上記第2の実施形態と同様に構成されている。
【0090】
図8に示すように、X線検出器1は、無機層ILをさらに備えている。無機層ILは、入射窓52の内面S52aと、光電変換基板2の第1主面S2aと、の間に設けられている。本実施形態において、無機層ILは、第1主面S2aに張り付けられている。平面視において、無機層ILは、少なくともシンチレータ層5の全体に重なっている。本実施形態において、光電変換基板2(基材2a)は、無機層ILを介して入射窓52の内面S52aを間接に押圧した状態に保持され、無機層ILは内面S52aに接触している。
【0091】
上記のように構成された第4の実施形態に係るX線検出器1によれば、X線検出器1は、上述した第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
光電変換基板2(基材2a)は、入射窓52の内面S52aと対向している。CFRP等の樹脂製の入射窓52を透過した水分は、入射窓52と対向した無機層ILにて遮断される。光電変換基板2の第1主面S2aに到達する水分の量を減少させることができるため、シンチレータ層5の内部へ到達する水分の量を減少させることができ、シンチレータ層5の劣化を抑制することができる。なお、無機層ILは、入射窓52の内面S52aに張り付けられてもよく、この場合も、シンチレータ層5の内部への水分の進入を抑制することができる。
【0092】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。図9は、第5の実施形態に係るX線検出器1を示す断面図である。X線検出器1は、本第5の実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。
【0093】
図9に示すように、X線検出器1は、支持材15の替わりに接着材ALを備えている。接着材ALは、入射窓52と保護体13との間に位置している。保護体13は、入射窓52の内面S52aに接着材ALを介して接着されている。
【0094】
上記のように構成された第5の実施形態に係るX線検出器1によれば、X線検出器1は、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、外部からの衝撃に強いX線検出器1を得ることができる。
【0095】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。図10は、第6の実施形態に係るX線検出器1を示す断面図である。X線検出器1は、本第6の実施形態で説明する構成以外、上記第2の実施形態と同様に構成されている。
【0096】
図10に示すように、X線検出器1は、支持材15の替わりに接着材ALを備えている。接着材ALは、入射窓52と光電変換基板2(基材2a)との間に位置している。光電変換基板2は、入射窓52の内面S52aに接着材ALを介して接着されている。
【0097】
上記のように構成された第6の実施形態に係るX線検出器1によれば、X線検出器1は、上述した第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、外部からの衝撃に強いX線検出器1を得ることができる。
【0098】
図9及び図10に示したように、接着材ALを用いて保護体13を入射窓52に接着したり、光電変換基板2を入射窓52に接着したり、することも有効である。何故なら、保護体13を入射窓52に接着したり、光電変換基板2を入射窓52に接着したり、しない場合、外部からX線検出器1に加えられた振動により、保護体13と入射窓52の間や、光電変換基板2と入射窓52の間に、横方向のずれが発生する場合があるためである。このずれの発生により、入射窓52に接している保護体13又は光電変換基板2の第1主面S2aにこすれが発生し、保護体13の表面又は光電変換基板2の第1主面S2aが損傷してしまう。そして、保護体13によるシンチレータ層5の保護機能の低下や、光電変換基板2の破損によるX線検出器1の動作不良が発生する可能性がある。
【0099】
そこで、接着材ALを用いることで、外部からX線検出器1に振動が加えられても、入射窓52に対する保護体13の位置ずれの発生や、入射窓52に対する光電変換基板2の位置ずれの発生を防止することができる。これにより、保護体13の保護機能の低下や、光電変換基板2の破損を抑制することができる。
【0100】
但し、X線検出器1のリサイクル等の観点において、図1図5等に示したX線検出器1の構成の方が望ましい。何故なら、接着材ALを用いると、入射窓52とX線検出パネルPNLとの分離が困難となるためである。X線検出器1のリサイクルや、X線検出器1の修理の際に両者が分離できないことにより問題となることがある。そのため、入射窓52とX線検出パネルPNLとの間の空間を減圧した方が望ましい場合がある。
【0101】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。図11は、第7の実施形態に係るX線検出器1を示す断面図である。X線検出器1は、本第7の実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。
【0102】
図11に示すように、筐体51は、底壁51aと、側壁51bと、開口OPが形成された上壁51cと、を有している。底壁51a、側壁51b、及び上壁51cは、一体に形成されている。光電変換基板2(X線検出パネルPNL)は、支持材15により上壁51cに固定されている。
上記のように構成された第7の実施形態に係るX線検出器1によれば、X線検出器1は、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0103】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。図12は、第8の実施形態に係るX線検出器1を示す断面図である。X線検出器1は、本第8の実施形態で説明する構成以外、上記第2の実施形態と同様に構成されている。
【0104】
図12に示すように、筐体51は、底壁51aと、側壁51bと、開口OPが形成された上壁51cと、を有している。底壁51a、側壁51b、及び上壁51cは、一体に形成されている。光電変換基板2(X線検出パネルPNL)は、支持材15により上壁51cに固定されている。
上記のように構成された第8の実施形態に係るX線検出器1によれば、X線検出器1は、上述した第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0106】
例えば、筐体51及び入射窓52で囲まれた内部の空間(X線検出パネルPNLが露出する空間)は、空気が存在する大気圧の空間である。但し、上記空間は、大気圧より減圧された空間であってもよい。又は、上記空間は、不活性ガス、乾燥エア等の乾燥ガスが充填された空間であってもよい。なお、乾燥ガスは水分を含まないガスである。これにより、シンチレータ層5を水分から、一層、保護することができる。
【0107】
上述した技術は、上記X線検出器1への適用に限定されるものではなく、他のX線検出器、各種の放射線検出器に適用することができる。放射線検出器は、X線検出パネルPNLの替わりに、放射線を検出する放射線検出パネルを備えていればよい。
【符号の説明】
【0108】
1…X線検出器、PNL…X線検出パネル、2…光電変換基板、S2a…第1主面、
S2b…第2主面、2a…基材、2b…光電変換部、2b1…光電変換素子、
2b2…TFT、51…筐体、51a…底壁、51b…側壁、51c…上壁、
OP…開口、52…入射窓、S52a…内面、5…シンチレータ層、6…光反射層、
7…防湿カバー、11…回路基板、13…保護体、15…支持材、AL…接着材、
IL…無機層、DA…検出領域、NDA…非検出領域。
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