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特開2022-92351タッチパネル装置、コントローラ及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092351
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】タッチパネル装置、コントローラ及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20220615BHJP
   G06F 3/045 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
G06F3/041 590
G06F3/045 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205120
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】一川 大輔
(57)【要約】
【課題】接触抵抗の影響を受けずに、安定した2点の座標を算出することができるタッチパネル装置、コントローラ及びプログラムを提供する。
【解決手段】CPU31は、タッチされた2点における中点座標をメモリ33に記録し、2点タッチから1点タッチの切り替わりにおいて、メモリ33に記録された中点座標を基準として、測定される1点タッチの座標と点対称となる座標を2点目の座標として算出し、測定される1点タッチの座標と疑似的に算出された2点目の座標をコンピュータ40に出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗膜方式のタッチパネルと、
前記タッチパネルにタッチされた2点における中点座標を測定する第1測定手段と、
前記タッチパネルにタッチされた2点のうち一方の押下点の座標を測定する第2測定手段と、
前記中点座標を記憶する記憶手段と、
2点タッチから1点タッチの切り替え後、前記記憶手段に記録された中点座標を基準として、前記第2測定手段により測定された押下点の座標と点対称となる座標を2点目の座標として算出し、前記第2測定手段により測定された押下点の座標及び前記算出された2点目の座標を外部装置に出力する制御手段と
を備えることを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記タッチパネルにタッチされた2点を結ぶ線分の傾きを判定する判定手段と、
前記タッチパネルにタッチされた2点の2点間距離を測定する第3測定手段と、を備え、
前記記憶手段は、前記2点タッチの開始時の前記2点間距離を記憶し、
前記制御手段は、前記2点タッチが継続されている場合に、前記2点を結ぶ線分の傾き、前記第1測定手段により測定された中点座標及び前記2点タッチの開始時の前記2点間距離に基づいて、前記2点の各座標を算出し、当該2点の各座標を外部装置に出力することを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
抵抗膜方式のタッチパネルにタッチされた2点における中点座標を測定する第1測定手段と、
前記タッチパネルにタッチされた2点のうち一方の押下点の座標を測定する第2測定手段と、
前記中点座標を記憶する記憶手段と、
2点タッチから1点タッチの切り替え後、前記記憶手段に記録された中点座標を基準として、前記第2測定手段により測定された押下点の座標と点対称となる座標を2点目の座標として算出し、前記第2測定手段により測定された押下点の座標及び前記算出された2点目の座標を外部装置に出力する制御手段と
を備えることを特徴とするコントローラ。
【請求項4】
前記タッチパネルにタッチされた2点を結ぶ線分の傾きを判定する判定手段と、
前記タッチパネルにタッチされた2点の2点間距離を測定する第3測定手段と、を備え、
前記記憶手段は、前記2点タッチの開始時の前記2点間距離を記憶し、
前記制御手段は、前記2点タッチが継続されている場合に、前記2点を結ぶ線分の傾き、前記第1測定手段により測定された中点座標及び前記2点タッチの開始時の前記2点間距離に基づいて、前記2点の各座標を算出し、当該2点の各座標を外部装置に出力することを特徴とする請求項3に記載のコントローラ。
【請求項5】
抵抗膜方式のタッチパネルに接続されるコンピュータを、
抵抗膜方式のタッチパネルにタッチされた2点における中点座標を測定する第1測定手段、
前記タッチパネルにタッチされた2点のうち一方の押下点の座標を測定する第2測定手段、
前記中点座標を記憶する記憶手段、及び
2点タッチから1点タッチの切り替え後、前記記憶手段に記録された中点座標を基準として、前記第2測定手段により測定された押下点の座標と点対称となる座標を2点目の座標として算出し、前記第2測定手段により測定された押下点の座標及び前記算出された2点目の座標を外部装置に出力する制御手段
として機能させることを特徴とするプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル装置、コントローラ及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗膜方式のタッチパネルにおいても2点のタッチ位置が検出できる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-168977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、抵抗膜方式のタッチパネルは、静電容量方式のタッチパネルと比較すると、2点検出の位置精度が低く、ジェスチャー操作を行う際に期待した動作とならない場合がある。特に、指でタッチ操作を行う際は、パネルと指の接触面積が一定では無いために接触抵抗が変わり、2点の座標に誤差が生じやすくなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、接触抵抗の影響を受けずに、安定した2点の座標を算出することができるタッチパネル装置、コントローラ及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書のタッチパネル装置は、抵抗膜方式のタッチパネルと、前記タッチパネルにタッチされた2点における中点座標を測定する第1測定手段と、前記タッチパネルにタッチされた2点のうち一方の押下点の座標を測定する第2測定手段と、前記中点座標を記憶する記憶手段と、2点タッチから1点タッチの切り替え後、前記記憶手段に記録された中点座標を基準として、前記第2測定手段により測定された押下点の座標と点対称となる座標を2点目の座標として算出し、前記第2測定手段により測定された押下点の座標及び前記算出された2点目の座標を外部装置に出力する制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接触抵抗の影響を受けずに、安定した2点の座標位置を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)は、本実施の形態に係るタッチパネル装置を示す図である。(B)は、CPUの機能を示す機能ブロック図である。
図2】(A)は、2点タッチの開始時のタッチ状態を示す図である。(B)は、2点タッチが継続されている場合のタッチ状態を示す図である。
図3】(A)は、2点タッチから1点タッチに移行した場合のタッチ状態を示す図である。(B)は、中点座標がメモリに記録された場合での1点タッチ状態を示す図である。
図4】CPUで実行される処理を示すフローチャートである。
図5】CPUで実行される処理を示すフローチャートである。
図6】X軸方向の2点間の距離と電圧測定部において測定される電圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1(A)は、本実施の形態に係るタッチパネル装置を示す図である。図1(A)に示すように、タッチパネル装置100は、スイッチSW1~SW7、抵抗R,Rx1,Ry1、抵抗膜10,20、及びタッチパネルコントローラ30(以下「コントローラ」という)を備えている。抵抗膜10は上部抵抗膜であり、抵抗膜20は下部抵抗膜である。抵抗膜10及び20は互いに対向して配置されており、例えば液晶ディスプレイなどの表示装置(不図示)上に重ねられる。抵抗膜10(第1抵抗膜)の1つの辺にはXH電極12(第1電極)が設けられ、別の1つの辺にはXH電極12と対向するXL電極14(第2電極)が設けられている。抵抗膜20(第2抵抗膜)の1つの辺にはYH電極22(第3電極)が設けられ、別の1つの辺にはYH電極22と対向するYL電極24(第4電極)が設けられている。XH電極12とXL電極14との対向する方向(X軸方向)は、YH電極22とYL電極24とが対向する方向(Y軸方向)と交叉しており、図1(A)では直交している。
【0011】
抵抗膜10及び20は、例えばITO(Indium Tin Oxide)により形成された透明の導電膜である。抵抗膜10及び20は例えば同じ材料により形成され、電気抵抗は略均一に分布している。XH電極12、XL電極14、YH電極22及びYL電極24は、例えば銅またはアルミニウムなどの金属により形成されている。
【0012】
スイッチSW1~SW7は、それぞれトランジスタにより構成されている。各スイッチのトランジスタのベースはコントローラ30に接続されている。スイッチSW1及びSW4のエミッタは、電源電圧Vccに接続されている。スイッチSW2のエミッタは、抵抗Rx1を介して電源電圧Vccに接続されている。スイッチSW5のエミッタは抵抗Ry1を介して電源電圧Vccに接続されている。スイッチSW3、SW6及びSW7のエミッタは接地されている。電源電圧Vccは例えば5Vである。
【0013】
XH電極12は、スイッチSW1及びSW2のコレクタに接続され、さらに抵抗Rを介してスイッチSW7のコレクタに接続されている。XL電極14は、スイッチSW3のコレクタに接続されている。YH電極22は、スイッチSW4及びSW5のコレクタに接続されている。YL電極24は、スイッチSW6のコレクタに接続されている。
【0014】
コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)31、AD変換器32、メモリ33、及び入出力インタフェース(I/F)36を備える。CPU31は、判定手段、第1測定手段、第2測定手段、第3測定手段及び制御手段として機能する。AD変換器32は、電圧測定部ADX1、ADX2、ADY1及びADY2を備える。電圧測定部ADX1はXH電極12に接続され、電圧測定部ADX2はXL電極14に接続されている。電圧測定部ADY1はYH電極22に接続され、電圧測定部ADY2はYL電極24に接続されている。メモリ33は、記憶手段として機能し、電圧測定部ADX1、ADX2、ADY1及びADY2で測定された電圧、及び座標検出に必要なデータ(例えば、2点間距離や中点座標の測定値、各種パラメータの設定値や補正値)などを記録する。
【0015】
抵抗Rx1の電気抵抗は、XH電極12とXL電極14との間における抵抗膜10の電気抵抗と略同一である。抵抗Ry1の電気抵抗は、YH電極22とYL電極24との間における抵抗膜20の電気抵抗と略同一である。
【0016】
コントローラ30は、外部装置としてのコンピュータ40に接続されている。コントローラ30で取得されたタッチ入力のデータは、入出力I/F36を介してコンピュータ40に送信される。入出力I/F36は、コンピュータ40とコントローラ30との間でデータの送受信を行うインタフェースである。
【0017】
図1(B)は、CPU31の機能を示す機能ブロック図である。CPU31は、印加部34及び検出部35として機能する。印加部34は、スイッチSW1~SW7に電圧を印加しスイッチSW1~SW7のオン/オフを制御することにより、各電極への電圧印加を制御する。検出部35は、電圧測定部ADX1、ADX2、ADY1及びADY2が測定した電圧を取得し、これらの電圧に基づき、1点タッチ又は2点タッチを判断するとともに、2点タッチの場合の中点座標、2点間距離、2点を結ぶ線分の方向及び2点の座標を検出する。
【0018】
以下、コントローラ30が実行する特徴的な処理を説明する。コントローラ30は、2点タッチの中点座標、2点間距離及び各タッチ点の座標を測定することができるが、これらの具体的な測定方法は後述する。
【0019】
図2(A)は、2点タッチの開始時のタッチ状態を示す図である。
【0020】
図2(A)に示すように、1点目のタッチが点Pであり、2点目のタッチが点Qであり、点P及び点Qの中点が点Mであり、点P及び点Qの2点間距離が距離Dであるとする。例えば、1点タッチから2点タッチに切り替わった直後などのように、2点タッチが開始されると、コントローラ30は、中点Mの座標および2点間距離Dを測定し、測定された中点Mの座標および2点間距離Dを一時的にメモリ33に記録して、点Pと点Qを結ぶ線分の傾き、中点Mの座標および2点間距離Dから点P及び点Qの座標の算出し、点P及び点Qの座標をコンピュータ40に出力する。
【0021】
図2(B)は、2点タッチが継続されている場合のタッチ状態を示す図である。
【0022】
2点タッチが継続されている間は、コントローラ30は、点Pと点Qを結ぶ線分の傾き、測定された中点Mの座標、及びメモリ33に一時的に記録してある2点間距離Dから点P及び点Qの座標を算出する。2点タッチが継続されている間、コントローラ30は、中点Mの座標を逐次更新し、点P及び点Qの座標を算出し、コンピュータ40に出力する。また、2点タッチが継続されている間、コントローラ30は、2点間距離Dの測定は行わず、2点間距離Dの記録を更新しない。なお、2点タッチが継続されている間、2点間距離Dは一定であるため、「拡大」「縮小」及び「回転」などのジェスチャー操作を行うことはできない。
【0023】
図3(A)は、2点タッチから1点タッチに移行した場合のタッチ状態を示す図である。
【0024】
タッチ数が2点から1点に切り替わった場合、コントローラ30は、中点Mの座標のメモリ33への記録の有無を確認する。2点タッチ時に中点Mの座標がメモリ33に記録されている場合、コントローラ30は、メモリ33に記録された中点Mの座標と1点タッチで測定された点Pの座標とから2点目の点Qの座標を算出し、点P及び点Qの座標をコンピュータ40に出力する。この際、コントローラ30は、中点Mの座標や2点間距離Dを更新しない。また、コントローラ30は、メモリ33に記録された中点Mの座標を基準として、1点タッチで測定された点Pの座標と点対称となる座標を2点目の点Qの座標として算出する。
【0025】
図3(B)は、中点座標がメモリ33に記録された場合での1点タッチ状態を示す図である。
【0026】
コントローラ30は、メモリ33に記録された中点Mの座標と、1点タッチで測定された点Pの座標とから2点目の点Qの座標を算出し、点P及び点Qの座標をコンピュータ40に出力する。1点タッチの場合、測定する座標が点Pの1点のみであるため正確なタッチ位置を測定できる。算出する2点目の点Qの座標についても、基準となる中点Mの座標が固定されているため、安定した座標を算出することができる。ユーザがタッチ位置(点P)を中点Mから遠ざけることで、点Qの座標も中点Mから離れるので、2点ジェスチャー操作の「拡大」を行うことができる。また、タッチ位置(点P)を中点Mに近づけることで、点Qの座標も中点Mに近づくので、2点ジェスチャー操作の「縮小」を行うことができる。タッチ位置(点P)を中点Mを中心に時計方向又は半時計方向に回すように操作をすることで、点Qの座標も中点Mの周囲を時計方向又は半時計方向に回るので、2点ジェスチャー操作の「回転」を行うことができる。
【0027】
コントローラ30は、タッチオフを検出した場合、メモリ33に一時的に記録されている中点Mの座標及び2点間距離Dをクリアし、座標をコンピュータ40に出力しない。
【0028】
図4、5は、CPU31で実行される処理を示すフローチャートである。
【0029】
まず、CPU31は、X軸方向の電圧測定を行う(S1)。具体的には、CPU31は、スイッチSW2及びSW3をONとし、これ以外のスイッチをOFFにして、電圧測定部ADX1において電圧を測定する。この状態では、XH電極12には抵抗Rx1を介しVccが印加され、XL電極14は接地されるため、抵抗膜10のX軸方向に電位分布が生じている。この状態において電圧測定部ADX1により電圧を測定し、メモリ33に測定した電圧を記録する。尚、電圧測定部ADX1において測定される電圧は、XH電極12とXL電極14との間の抵抗成分と抵抗Rx1とにより分圧された値となる。
【0030】
次に、Y軸方向の電圧測定を行う(S2)。具体的には、CPU31は、スイッチSW5及びSW6をONとし、これ以外のスイッチをOFFにして、電圧測定部ADY1において電圧を測定する。この状態では、YH電極22には抵抗Ry1を介しVccが印加され、YL電極24は接地されるため、抵抗膜20のY軸方向に電位分布が生じている。この状態において電圧測定部ADY1により電圧を測定し、メモリ33に測定した電圧を記録する。尚、電圧測定部ADY1において測定される電圧は、YH電極22とYL電極24との間の抵抗成分と抵抗Ry1とにより分圧された値となる。
【0031】
次に、CPU31は、タッチが検出されたか否かを判定する(S3)。例えば、CPU31は、スイッチSW4及びSW7をONとし、これ以外のスイッチをOFFにして、電圧測定部ADX1において電圧を測定する。電圧測定部ADX1の電圧が閾値以上変動していれば、タッチが行われたと判断できる。この場合、未タッチ状態での電圧測定部ADX1の電圧は0Vになり、タッチされれば、タッチ位置に応じた抵抗膜10及び抵抗膜20の合成抵抗と抵抗Rとで分圧された電圧が電圧測定部ADX1で測定される。タッチが検出されない場合には(S3でNO)、CPU31は、メモリ33に記録された2点間距離及び中点座標をクリアし(S4)、手順はS1に戻る。
【0032】
タッチが検出された場合には(S3でYES)、CPU31は、タッチ入力が1点タッチであるか否かを判別する(S5)。具体的には、S1において電圧測定部ADX1で測定した電圧及びS2において電圧測定部ADY1で測定した電圧が、Vcc/2であるか又はVcc/2未満であるかを判断する。電圧測定部ADX1で測定した電圧及び電圧測定部ADY1で測定した電圧がともにVcc/2である場合は、CPU31はタッチ入力が1点タッチであると判断する。一方、電圧測定部ADX1で測定した電圧及び電圧測定部ADY1で測定した電圧の少なくとも一方がVcc/2未満である場合は、CPU31はタッチ入力が2点タッチであると判断する。
【0033】
タッチ入力が2点タッチである場合(S5でNO)、CPU31は、現在が2点タッチの開始時であるか否かを判別する(S6)。メモリ33に中点座標や2点間距離が記録されていなければ、CPU31は、現在が2点タッチの開始時であると判断する。メモリ33に中点座標や2点間距離が記録されていれば、CPU31は、現在は2点タッチが継続されている状態であると判断する。
【0034】
現在が2点タッチの開始時である場合には(S6でYES)、CPU31は、2点を結ぶ線分の傾きが、X軸方向あるいはY軸方向に平行であるか、又は斜め方向であるか否かを判定する(S7)。
【0035】
図4の処理に先立ち、初期的な処理として、タッチ点が0である又は1点である状態で、スイッチSW2及びSW3をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして、抵抗膜10のX軸方向に電位分布を形成した状態で、電圧測定部ADX1により電圧をあらかじめ測定する。CPU31は、この状態で電圧測定部ADX1にて測定した電圧をメモリ33に初期電圧α1として記録する。同様に、タッチ点が0である又は1点である状態でスイッチSW5及びSW6をONとし、これ以外のスイッチをOFFにして、抵抗膜20のY軸方向に電位分布を形成し、電圧測定部ADY1により電圧をあらかじめ測定する。CPU31は、この状態で電圧測定部ADY1にて測定した電圧をメモリ33に初期電圧α2として記録する。このような初期電圧の設定は、例えば装置を使用し始める際、装置の製造時など、適当なタイミングで行うことができる。
【0036】
S7において、CPU31は、S1及びS2において測定された電圧と記録されている初期電圧α1、α2とを比較することにより、2点を結ぶ線分が、X軸方向に平行であるか、Y軸方向に平行であるか、あるいはX軸方向・Y軸方向に対して斜め方向であるのかを判断する。
【0037】
S1において測定された電圧が初期電圧α1よりも低く、S2において測定された電圧が初期電圧α2と略同じである場合には、CPU31は2点を結ぶ線分がX軸方向と平行であると判断する。また、S1において測定された電圧が初期電圧α1と略同じであり、S2において測定された電圧が初期電圧α2よりも低い場合には、CPU31は2点を結ぶ線分がY軸方向に平行であると判断する。更に、S1において測定された電圧が初期電圧α1よりも低く、S2において測定された電圧が初期電圧α2よりも低い場合には、CPU31は2点を結ぶ線分は斜め方向であると判断する。
【0038】
また、2点を結ぶ線分の傾きが、右上がり方向であるか、あるいは図2(A)に示すように左上がり方向であるかを判定するために、CPU31は、スイッチSW1及びSW3をONとし、これ以外のスイッチをOFFにして抵抗膜10のX軸方向に電位分布を形成し、電圧測定部ADY1及びADY2で電圧を測定する。電圧測定部ADY1において測定された電圧が電圧測定部ADY2において測定された電圧よりも低い場合、CPU31は2点を結ぶ線分の傾きは右上がりであると判断する。また、電圧測定部ADY1において測定された電圧が電圧測定部ADY2において測定された電圧よりも高い場合、CPU31は2点を結ぶ線分の傾きは左上がりであると判断する。
【0039】
次に、CPU31は、2点の中点座標を測定する(S8)。具体的には、CPU31は、スイッチSW1及びSW3をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして抵抗膜10のX軸方向に電位分布を形成し、電圧測定部ADY1及びADY2で電圧を測定する。CPU31は、電圧測定部ADY1において測定された電圧と電圧測定部ADY2において測定された電圧との平均値を算出することによりX軸方向の電圧を取得し、この電圧に基づき中点のX座標を取得する。例えば、CPU31は、XH電極12とXL電極14との間の距離に、上記算出された平均値に対するXH電極12とXL電極14との間の電位差の比率を乗算することで、XH電極12からのX軸方向の距離を取得する。
【0040】
同様に、CPU31は、スイッチSW4及びSW6をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして抵抗膜20のY軸方向に電位分布を形成し、電圧測定部ADX1及びADX2で電圧を測定する。CPU31は、電圧測定部ADX1において測定された電圧と電圧測定部ADX2において測定された電圧との平均値に基づき中点のY座標を取得する。例えば、CPU31は、YH電極22とYL電極24との間の距離に、上記算出された平均値に対するYH電極22とYL電極24との間の電位差の比率を乗算することで、YH電極22からのY軸方向の距離を取得する。
【0041】
次に、CPU31は、2点間の距離を測定する(S9)。具体的には、S1及びS2において測定された電圧に基づき2点間の距離を算出する。
【0042】
図6は、X軸方向の2点間の距離と電圧測定部ADX1において測定される電圧との関係を示し、距離算出用データとして用いられる。この距離算出用データはメモリ33に格納されている。曲線41aは2点がX軸に平行な直線上に存在している場合の2点間の距離と電圧測定部ADX1との関係を示す。曲線41bは2点がX軸に平行な直線上ではなく右上がりまたは左上がりの直線上に存在している場合の2点間の距離と電圧測定部ADX1との関係を示す。
【0043】
図6に示されるように、2点間の距離が広がるに従い、電圧測定部ADX1において測定される電圧の値は低下する。また、2点が電圧の印加されている方向(X軸方向)に平行な位置にある場合と、2点がX軸方向に平行な位置にない、右上がりまたは左上がりの場合とでは、2点間の距離と電圧測定部ADX1において測定される電圧との関係が異なる。
【0044】
よって、CPU31は、S7において検出された2点の位置関係、即ち、2点を結ぶ線分の傾きに応じて、図6に示す2点間の距離と電圧測定部ADX1において測定された電圧との関係を選択し、選択された関係に基づきX軸方向における2点間の距離を得る。
【0045】
具体的には、2点がX軸方向に平行な直線上に存在している場合には、CPU31は、図6における曲線41aと電圧測定部ADX1において測定された電圧とに基づき、X軸方向における2点間の距離を算出する。また、2点が右上がりまたは左上がりの直線上に存在している場合には、図6における曲線41bと電圧測定部ADX1において測定された電圧に基づき、X軸方向における2点間の距離を算出する。
【0046】
尚、メモリ33は、Y軸方向の2点間の距離と電圧測定部ADY1において測定される電圧との関係を示す距離算出用データも備えている。CPU31は、X軸方向と同様の方法により、Y軸方向の2点間の距離と電圧測定部ADY1において測定される電圧との関係を示す距離算出用データと、電圧測定部ADY1において測定された電圧とに基づきY軸方向の2点間の距離を得る。
【0047】
次に、CPU31は、2点の位置関係(2点を結ぶ線分の傾き)、中点座標及び2点間距離に基づいて、2点のそれぞれの座標を算出する(S10)。
【0048】
具体的には、2点間のX軸方向の距離をLx、2点間のY軸方向の距離をLyとして算出し、中点座標を(Xc、Yc)とした場合、2点の座標は下記式(1)~(4)のいずれかで表わされる。尚、式(1)は、2点が右上がりの直線上に存在している場合、式(2)は、2点が左上がりの直線上に存在している場合、式(3)は、2点がX軸方向の直線上にある場合、式(4)は、2点がY軸方向の直線上にある場合を示す。
【0049】
(Xc+Lx/2、Yc+Ly/2)、(Xc-Lx/2、Yc-Ly/2)…(1)
(Xc+Lx/2、Yc-Ly/2)、(Xc-Lx/2、Yc+Ly/2)…(2)
(Xc+Lx/2、Yc)、(Xc-Lx/2、Yc)…(3)
(Xc、Yc+Ly/2)、(Xc、Yc-Ly/2)…(4)
【0050】
図4に戻り、CPU31は、S9で測定された2点間距離をメモリ33に記録し(S11)、S8で測定された中点座標をメモリ33に記録する(S12)。
【0051】
最後に、CPU31は、S10で算出された2点の各座標をコンピュータ40に出力し(S13)、手順はS1に戻る。
【0052】
現在は2点タッチが継続されている状態である場合には(S6でNO)、CPU31は、上記S7と同様の方法で、2点を結ぶ線分の傾きが、X軸方向あるいはY軸方向に平行であるか、又は斜め方向であるか否かを判定する(S14)。
【0053】
次に、CPU31は、上記S8と同様の方法で、2点の中点座標を測定する(S15)。CPU31は、S14の2点を結ぶ線分の傾き、S15で測定された中点座標及びS11でメモリ33に記録された2点間距離に基づいて、2点の各座標を算出する(S16)。S16では、測定される2点間距離を使用せずに、メモリ33に記録された2点間距離を使用する点で上記S10と異なるが、その他はS10と同様である。その後、手順はS12に進み、S15で測定された中点座標がメモリ33に登録される。
【0054】
タッチ入力が1点タッチである場合(S5でYES)、CPU31は、メモリ33に中点座標が記録されているか否かを判別する(図5のS17)。
【0055】
メモリ33に中点座標が記録されていない場合には(S17でNO)、CPU31は、1点タッチの座標を測定する(S18)。具体的には、CPU31は、スイッチSW1及びSW3をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして電圧測定部ADY1又はADY2で測定された電圧に基づいて、タッチ点のX座標を検出する。この際、CPU31は、XH電極12とXL電極14との間の電位差に対する電圧測定部ADY1又はADY2で測定された電圧の比率に、XH電極12とXL電極14との間の距離を乗算することで、XH電極12からタッチ点までのX軸方向の距離を算出する。さらに、CPU31は、スイッチSW4及びSW6をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして電圧測定部ADX1又はADX2によって測定された電圧に基づいて、タッチ点のY座標を検出する。ここでは、CPU31は、YH電極22とYL電極24との間の電位差に対する電圧測定部ADX1又はADX2で測定された電圧の比率に、YH電極22とYL電極24との間の距離を乗算することで、YH電極22からタッチ点までのY軸方向の距離を算出する。
【0056】
CPU31は、測定された1点タッチの座標をコンピュータ40に出力して(S19)、手順はS1に戻る。
【0057】
メモリ33に中点座標が記録されている場合には(S17でYES)、CPU31は、S18と同様の方法で、1点タッチの座標を測定する(S20)。次いで、CPU31は、メモリ33に記録された中点座標と、S20で測定された1点タッチの座標とから2点目の座標を算出して(S21)、手順はS13に進む。S21では、CPU31は、メモリ33に記録された中点座標を基準として、1点タッチの座標と点対称となる座標を2点目の座標として算出する。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態によれば、2点タッチから1点タッチの切り替わりにおいて、CPU31は、切り替え直前の中点座標をメモリ33に記録し(S12)、メモリ33に記録された中点座標を基準として、測定される1点タッチの座標と点対称となる座標を2点目の座標として算出し(S21)、測定される1点タッチの座標と疑似的に算出された2点目の座標をコンピュータ40に出力する(S13)。したがって、1点タッチの測定のみのため、接触抵抗の影響を受けずに、安定した2点の座標を算出でき、拡大、縮小及び回転等のジェスチャー操作を安定的に行うことができる。
【0059】
なお、S21では、1点タッチで2点が算出されるため、抵抗膜方式のタッチパネルで精度の高いジェスチャー操作を行うことができる。
【0060】
また、2点タッチが継続されている場合には(S6でNO)、CPU31は、2点を結ぶ線分の傾き、測定された中点座標及び2点タッチ開始時にメモリ33に記録された2点間距離に基づいて、2点の各座標を算出する(S16)。このように、接触抵抗の影響が大きい2点間距離は固定して、中点座標の測定のみのため、接触抵抗の影響を受けずに、安定した2点の座標を算出することができる。
【0061】
上述したコントローラ30の機能は、コンピュータによって実現することができる。この場合、コントローラ30の処理内容を記述したプログラムがコンピュータに提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記コントローラ30の機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。
【0062】
例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記録媒体の形態で流通させてもよい。また、そのプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に予め格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータからダウンロードさせてもよい。
【0063】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
ADX1、ADX2、ADY1、ADY2 電圧測定部
R,Rx1,Ry1 抵抗
SW1~SW7 スイッチ
10,20 抵抗膜
12 XH電極
14 XL電極
22 YH電極
24 YL電極
30 コントローラ
31 CPU
32 AD変換器
33 メモリ
36 入出力I/F
100 タッチパネル装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6