(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092361
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】タッチパネル
(51)【国際特許分類】
G06F 3/045 20060101AFI20220615BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
G06F3/045 G
G06F3/041 420
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205133
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】今井 雄貴
(57)【要約】
【課題】均一な電位分布を形成することが可能な段差形状を有するタッチパネルを提供する。
【解決手段】抵抗膜11及び31は、少なくとも1辺に1つ以上の段差を有する形状であり、抵抗膜31は、電極36と平行に配置されたエッチングパターン38と、電極35と平行に配置されたエッチングパターン37とを備え、抵抗膜11は、第4領域13に接する側のY方向の第3領域12の一端にX方向と平行に配置されたダミー電極16を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域と、第1の方向の長さが前記第1領域よりも短い第2領域とを有する第1抵抗膜と、
前記第1領域と対向する第3領域と、前記第2領域と対向し、前記第1の方向の長さが前記第3領域よりも短い第4領域とを有し、前記第1抵抗膜と対向する第2抵抗膜とを備え、
前記第1抵抗膜は、
前記第1の方向の前記第1領域の少なくとも一端に設けられた第1電極と、
前記第1の方向の前記第2領域の少なくとも一端に設けられた第2電極と、
一端が前記第1電極と接続され、他端が前記第2電極と接続され、前記第1領域上に前記第1の方向と平行に配置された第3電極と、
前記第1領域上に前記第3電極と平行に配置された第1エッチングパターンと、
前記第2領域上に前記第2電極と平行に配置された第2エッチングパターンと、
を備え、
前記第2抵抗膜は、
前記第1の方向と直交する第2の方向の前記第3領域の一端に設けられた第4電極と、
前記第2の方向の前記第4領域の一端に設けられた第5電極と、
前記第3電極と対向するように前記第3領域上に前記第1の方向と平行に配置された第1ダミー電極と、
を備えることを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記第2エッチングパターンを挟み込むように、前記第2領域上に前記第2電極と平行に配置された第2ダミー電極を備えることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記第2ダミー電極は前記第1領域内に延伸されていることを特徴とする請求項2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記第1エッチングパターンは前記第2エッチングパターンと連結されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、抵抗膜方式の4線式タッチパネルが知られている(例えば、特許文献1参照)。このタッチパネルは、X方向の両端に電極が配置された第1基板と、Y方向の両端に電極が配置された第2基板とを備えている。第1基板及び第2基板の表面には、抵抗膜が形成されている。第1基板及び第2基板は、同一の矩形の形状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、様々な形状のタッチパネルが要望されている。例えば、
図1(A)は、凸状のタッチパネルの下部基板を示し、
図1(B)は凸状のタッチパネルの上部基板を示す。下部基板及び上部基板の表面には、抵抗膜が形成されている。例えば、
図1(A)の一方の電極に5Vの電圧を印加し、他方の電極を接地すると、
図1(A)に示すように等電位線が大きく湾曲してしまう。同様に、
図1(B)の一方の電極に5Vの電圧を印加し、他方の電極を接地すると、
図1(B)に示すように等電位線が大きく湾曲してしまう。
【0005】
このように、凸状のタッチパネルは段差があるために、矩形のタッチパネルと異なり、X方向についても、Y方向についても、等電位線が大きく湾曲してしまう。つまり、X方向及びY方向に均一な電位分布を形成できないという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、均一な電位分布を形成することが可能な段差形状を有するタッチパネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のタッチパネルは、第1領域と、第1の方向の長さが前記第1領域よりも短い第2領域とを有する第1抵抗膜と、前記第1領域と対向する第3領域と、前記第2領域と対向し、前記第1の方向の長さが前記第3領域よりも短い第4領域とを有し、前記第1抵抗膜と対向する第2抵抗膜とを備え、前記第1抵抗膜は、前記第1の方向の前記第1領域の少なくとも一端に設けられた第1電極と、前記第1の方向の前記第2領域の少なくとも一端に設けられた第2電極と、一端が前記第1電極と接続され、他端が前記第2電極と接続され、前記第1領域上に前記第1の方向と平行に配置された第3電極と、前記第1領域上に前記第3電極と平行に配置された第1エッチングパターンと、前記第2領域上に前記第2電極と平行に配置された第2エッチングパターンと、を備え、前記第2抵抗膜は、前記第1の方向と直交する第2の方向の前記第3領域の一端に設けられた第4電極と、前記第2の方向の前記第4領域の一端に設けられた第5電極と、前記第3電極と対向するように前記第3領域上に前記第1の方向と平行に配置された第1ダミー電極と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、段差形状を有するタッチパネルでも、均一な電位分布を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(A)は凸状のタッチパネルの下部基板を示す図であり、(B)は凸状のタッチパネルの上部基板を示す図である。
【
図2】本実施の形態に係るタッチパネルの構成を示す図である。
【
図3】(A)は、下部基板に形成された抵抗膜の構成図である。(B)は、
図3(A)のA-A′線の断面図であり、(C)は
図3(A)のB-B′線の断面図である。
【
図4】(A)は、
図3(A)の領域Pの拡大図である。(B)はダミー電極が配置された抵抗膜の構成図であり、(C)は(B)の領域Qの拡大図である。
【
図5】上部基板に形成された抵抗膜の構成図である。
【
図6】(A)は、ダミー電極が配置された抵抗膜の第1変形例の構成図である。(B)は、ダミー電極が配置された抵抗膜の第2変形例の構成図である。
【
図7】(A)は、ダミー電極が配置された抵抗膜の第3変形例の構成図である。(B)は、
図7(A)の抵抗膜と対向する抵抗膜の構成図である。(C)は、ダミー電極が配置された抵抗膜の第4変形例の構成図である。(D)は、
図7(C)の抵抗膜と対向する抵抗膜の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図2は、本実施の形態に係るタッチパネルの構成を示す図である。タッチパネル1は、透明フィルムで構成される上部基板10と、透明なガラスで構成される下部基板30とを備えている。上部基板10及び下部基板30は、例えば同じ大きさの凸形状である。なお、上部基板10及び下部基板30の形状は凸形状に限定されず、例えば、L字形状のように、1辺に1つ以上の段差を有する形状であればよい。
【0012】
上部基板10の裏面(すなわち下部基板30と対向する面)には、酸化インジウムスズ(ITO)の抵抗膜11が形成されている。下部基板30のおもて面(すなわち上部基板10と対向する面)には、酸化インジウムスズ(ITO)の抵抗膜31が形成されている。なお、抵抗膜11と抵抗膜31との間には、空間が形成されており、抵抗膜31上には図示しないドットスペーサが設けられている。
【0013】
専用ペンまたは指で上部基板10に触れると、上部基板10がたわみ、抵抗膜11,31が接触・導通することにより、図示しないコントローラが入力を検知する。なお、凸形状により空いた空間60には、図示しないボタン、スイッチ、コントローラ又はUSBポートなどが配置されてもよい。
【0014】
図3(A)は、下部基板30に形成された抵抗膜31の構成図である。
図3(B)は、
図3(A)のA-A′線の断面図であり、
図3(C)は、
図3(A)のB-B′線の断面図である。
図3(A)において、点線は等電位線を示す。
【0015】
図3(A)に示すように、抵抗膜31(第1抵抗膜)は、矩形の第1領域32と、X方向(第1の方向)の長さが第1領域32よりも短い矩形の第2領域33とを有する。
【0016】
抵抗膜31は、X方向の第1領域32の少なくとも一端に設けられた電極34(第1電極)と、X方向の第2領域33の少なくとも一端に設けられた電極35(第2電極)と、一端が電極34と接続され、他端が電極35と接続され、第1領域32上にX方向と平行に配置された電極36(第3電極)と、第1領域32上に電極36と平行に配置されたエッチングパターン38(第1エッチングパターン)と、第2領域33上に電極35と平行に配置されたエッチングパターン37(第2エッチングパターン)と、を備えている。エッチングパターン37は電極35と平行に複数設けられている。エッチングパターン38のX方向の長さは電極36のX方向の長さと略同一である。電極34~36は、例えば、銀、銅、又は合金などで構成されているが、光透過性が要求される場合には、酸化インジウムスズ(ITO)などで構成されていてもよい。
【0017】
電極36と平行にエッチングパターン38を設けない場合には、電極36からの電位の影響を受けて、等電位線が
図1(A)に示すように大きく湾曲してしまう。本実施の形態では、
図3(A)に示すように、電極36と平行にエッチングパターン38を設けることで、電極36を第1領域32の抵抗膜から絶縁させることができ、第1領域32のX方向の電位分布には電極34からの電位のみが影響するので、X方向に均一な電位分布を形成することができる。
【0018】
また、電極35と平行にエッチングパターン37を設けない場合には、
図1(A)に示すように第1領域32の端部で発生する等電位線が第2領域33まで流れ込んでしまい、電位分布の均一性がとれず、第2領域33は第1領域32の延長エリアとして機能しないことになる。本実施の形態では、
図3(A)に示すように、電極35と平行にエッチングパターン37を設けることで、第1領域32の端部で発生する等電位線が第2領域33まで流れ込むことを抑制し、X方向に均一な電位分布を形成することができる。この結果、第2領域33は第1領域32の延長エリアとして機能する。つまり、第1領域32及び第2領域33においてX方向の同じ位置では、略同一の電位を示すことになる。
【0019】
図4(A)は、
図3(A)の領域Pの拡大図である。エッチングパターン37を電極35と平行に設けた場合、
図4(A)に示すように、隣り合うエッチングパターン37の間に電位分布の乱れ39が生じ、第2領域33でのX方向の電位検知に影響を及ぼす可能性がある。
【0020】
このため、
図4(B)、(C)に示すように、エッチングパターン37を挟み込むように、第2領域33上に電極35と平行にダミー電極40(第2ダミー電極)を配置する。このように、電位分布が乱れる箇所へダミー電極40を配置することで第2領域33のX方向に均一な電位分布を形成することができる。なお、ダミー電極40には電源電圧が直接印加されることはない。
図4(B)はダミー電極40が配置された抵抗膜31の構成図であり、
図4(C)は
図4(B)の領域Qの拡大図である。
【0021】
図5は、上部基板10に形成された抵抗膜11の構成図である。
図5において、点線は等電位線を示す。
【0022】
図5に示すように、抵抗膜11(第2抵抗膜)は、第1領域32と対向する矩形の第3領域12と、第2領域33と対向し、X方向の長さが第3領域12よりも短い矩形の第4領域13とを有する。抵抗膜11は、抵抗膜31と対向する(
図2参照)。
【0023】
抵抗膜11は、第4領域13の反対側のY方向の第3領域12の一端に設けられた電極14(第4電極)と、第3領域12の反対側のY方向の第4領域13の一端に設けられた電極15(第5電極)と、電極36(第3電極)と対向するように第3領域12上にX方向と平行に配置されたダミー電極16(第1ダミー電極)とを備えている。ダミー電極16は、電極36と略同一の長さを有している。ダミー電極16には電源電圧が直接印加されることはない。
【0024】
ダミー電極16を第3領域12上にX方向と平行に配置しない場合には、
図1(B)に示すように、矩形の抵抗膜の際にY方向の電位分布が均一だった箇所からスペース101が発生するので、領域102に十分な導通領域を確保できない。このため、等電位線が大きく湾曲してしまう。
【0025】
本実施の形態では、
図5に示すように、ダミー電極16を、第4領域13に接する側のY方向の第3領域12の一端にX方向と平行に配置することで、第4領域13に接する側のY方向の第3領域12の一端近傍(つまり領域103)に十分な導通領域を確保することができ、Y方向に均一な電位分布を形成することができる。
【0026】
図6(A)は、ダミー電極40が配置された抵抗膜31の第1変形例の構成図である。
図6(B)は、ダミー電極40が配置された抵抗膜31の第2変形例の構成図である。
【0027】
図6(A)では、電極35と平行に配置されたエッチングパターン41は、
図4(B)のエッチングパターン37よりもY方向の長さが長い。電位分布の均一性へ影響を与える一因は、電極35とダミー電極40との間の絶縁性にあるため、
図4(B)のエッチングパターン37よりも、広範囲のITOを除去している
図6(A)のエッチングパターン41の方が絶縁性が高くなり、X方向の電位分布の均一性は高くなる。
【0028】
図6(B)では、エッチングパターン42が、電極35及び電極36と平行に配置されている。つまり、エッチングパターン42では、電極35と平行に配置されたエッチングパターンと電極36と平行に配置されたエッチングパターンとが連結されている。この場合も、電極35及び電極36とダミー電極40との間の絶縁性が高くなり、X方向の電位分布の均一性は高くなる。
【0029】
さらに、ダミー電極40は、第1領域32内に延伸され、第1領域32及び第2領域33のY方向の長さと略同一である。
図6(B)では電極35及び電極36とダミー電極40との間を絶縁してしまうため、ダミー電極40を第1領域32内まで伸ばすことで、第1領域32及び第2領域33のX方向の電位分布の均一性を向上させている。
【0030】
図7(A)は、ダミー電極40が配置された抵抗膜31の第3変形例の構成図である。
図7(B)は、
図7(A)の抵抗膜31と対向する抵抗膜11の構成図である。
図7(C)は、ダミー電極40が配置された抵抗膜31の第4変形例の構成図である。
図7(D)は、
図7(C)の抵抗膜31と対向する抵抗膜11の構成図である。
【0031】
図7(A)の抵抗膜31及び
図7(B)の抵抗膜11は、L字形状である。
図7(A)の抵抗膜31の左側の1辺にはY方向と平行な電極44が配置されている。
図7(A)の抵抗膜31の右側には、
図4(B)の抵抗膜31と同様に、電極34-36、エッチングパターン37、38及びダミー電極40が設けられている。このように、抵抗膜31の左右のいずれか1辺に1つ以上の段差を有する形状でも、X方向に均一な電位分布を形成することができる。
【0032】
また、
図7(B)の抵抗膜11では、
図5の抵抗膜11と同様に、ダミー電極16を、第4領域13に接する側のY方向の第3領域12の一端にX方向と平行に配置している。
図7(B)の抵抗膜11でも、
図5の抵抗膜11と同様に、領域103に十分な導通領域を確保することができ、Y方向に均一な電位分布を形成することができる。
【0033】
図7(C)の抵抗膜31では、抵抗膜31の左側の1辺にはY方向と平行な電極44が配置されており、右側の1辺には複数の段差が形成されている。電極35、36、エッチングパターン37、38及びダミー電極40の複数セットが、複数の段差に沿ってそれぞれ設けられている。このように、抵抗膜31の左右のいずれか1辺に複数の段差を有する形状でも、
図7(A)と同様に、X方向に均一な電位分布を形成することができる。
【0034】
図7(D)の抵抗膜11は、右側の1辺に複数の段差を有する。複数のダミー電極16が、複数の段差に沿ってそれぞれ設けられている。このように、抵抗膜11の左右のいずれか1辺に複数の段差を有する形状でも、
図7(B)と同様に、領域103に十分な導通領域を確保することができ、Y方向に均一な電位分布を形成することができる。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態によれば、抵抗膜11及び31は、左右の少なくとも1辺に1つ以上の段差を有する形状であり、抵抗膜31では、電極36と平行にエッチングパターン38を設けることで、電極36を第1領域32の抵抗膜から絶縁させ、X方向に均一な電位分布を形成することができる。さらに、抵抗膜31では、電極35と平行にエッチングパターン37を設けることで、第1領域32の端部で発生する等電位線が第2領域33まで流れ込むことを抑制し、X方向に均一な電位分布を形成することができる。また、抵抗膜11では、ダミー電極16を、第4領域13に接する側のY方向の第3領域12の一端にX方向と平行に配置することで、第4領域13に接する側のY方向の第3領域12の一端近傍(つまり領域103)に十分な導通領域を確保することができ、Y方向に均一な電位分布を形成することができる。
【0036】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 タッチパネル
10 上部基板
11 抵抗膜
12 第3領域
13 第4領域
15 電極
16 ダミー電極
30 下部基板
31 抵抗膜
32 第1領域
33 第2領域
34、35、36 電極
37、38、41、42 エッチングパターン
40 ダミー電極