(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092378
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/04 20060101AFI20220615BHJP
H01Q 9/40 20060101ALI20220615BHJP
H01Q 9/42 20060101ALI20220615BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20220615BHJP
H01Q 1/32 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
H01Q9/04
H01Q9/40
H01Q9/42
H01Q1/38
H01Q1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205163
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 洋平
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA02
5J046AA12
5J046AB06
5J046MA00
5J046PA01
(57)【要約】
【課題】主として小型化とともにより安定化されたアンテナ特性を有するアンテナを提供すること。
【解決手段】少なくとも1つの接地部と給電部とを有するアンテナが提供される。当該アンテナは、前記給電部から前記アンテナの先端部へと延伸する第1延伸部と、前記先端部から前記接地部へと延伸する第2延伸部とを有する。当該アンテナにおいて、前記第1延伸部と、前記先端部と、前記第2延伸部とが互いに立体的に結合している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの接地部と給電部とを有するアンテナであって、前記アンテナは、前記給電部から前記アンテナの先端部へと延伸する第1延伸部と、前記先端部から前記接地部へと延伸する第2延伸部とを有し、前記第1延伸部と、前記先端部と、前記第2延伸部とが互いに立体的に結合している、アンテナ。
【請求項2】
前記立体的な結合が巻回および/または折り返しを含む、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記給電部と前記接地部とが同一面上に位置する、請求項1または2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記接地部を少なくとも2つ有し、該接地部と前記給電部とによって前記アンテナが自立可能である、請求項1~3のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項5】
前記アンテナが表面実装品である、請求項1~4のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項6】
前記アンテナの内側に配置される支持体をさらに有する、請求項1~5のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項7】
前記支持体の主面が平坦である、請求項6に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記アンテナが上面視で略四角形の形状を有する、請求項1~7のいずかれに記載のアンテナ。
【請求項9】
前記アンテナの共振周波数が13GHz以下である、請求項1~8のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項10】
前記アンテナの共振周波数が6GHz以上9GHz以下の範囲内である、請求項9に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記アンテナのインピーダンスが25Ω以上55Ω以下の範囲内である、請求項1~10のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項12】
前記アンテナが地板間距離に依存しない、請求項1~11のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項13】
前記アンテナが車輛用または電子機器用である、請求項1~12のいずれかに記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナに関する。より具体的には、本発明はモノポールアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
情報を無線信号によって送受信する情報通信装置において、様々な形状のアンテナが使用されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、従前のアンテナには克服すべき課題があることに気付き、そのための対策を取る必要性を見出した。具体的には以下の課題があることを本願発明者は見出した。
【0005】
例えば
図17に示すように、当該分野では、様々な形状のアンテナが知られている。
例えば
図17Aは、ストレート型のアンテナを示す。
図17Bは、先端部が折り曲げられた折り曲げ型のアンテナを示す。
図17Cは、先端部が巻回された渦型のアンテナを示す。
図17A~Cに例示するアンテナは、いずれもモノポールアンテナと呼ばれるものである(1/4λ)。
図17Dは、板状または平面状に二次元的に延在する折り返し型(又はスイッチバック型)のモノポールアンテナを示す(1/2λ)。
【0006】
板状のアンテナとして、例えば特許文献1には、斜交する面上に同軸ケーブルを接続するための給電点を有するアンテナが開示されている(特許文献1の
図4参照)。
【0007】
当該分野では、アンテナの小型化が求められている。しかし、特許文献1に開示のアンテナでは、給電点に同軸ケーブルをハンダなどで接続することから、寸法の縮小には物理的な限界がある。
【0008】
また、特許文献1に開示のアンテナでは、同軸ケーブルを給電点に接続することから、同軸ケーブルからの漏れ電流によってアンテナ特性が変化して不安定化する。また、ハンダの付着によってもアンテナ特性が変化して不安定化する場合がある。
【0009】
本発明はかかる課題に鑑みて為されたものである。即ち、本発明の主たる目的は、小型化とともにより安定化されたアンテナ特性を有するアンテナを提供することである。
【0010】
尚、特許文献1に開示のアンテナにはインピーダンス調整領域が狭帯域に制限されることや地板間距離に依存するという問題もある。そこで本発明ではインピーダンス調整領域が狭帯域に制限されないアンテナを提供することや地板間距離に依存しないアンテナを提供することを副次的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は、従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することによって上記課題の解決を試みた。その結果、上記目的が達成されたアンテナの発明に至った。
【0012】
例えば
図1に示すようにアンテナを給電部(4)から先端部(3)へと延伸または延在する第1延伸部(1)と、アンテナの先端部(3)と、かかる先端部(3)から接地部(5)へと延伸または延在する第2延伸部(2)とに分けて立体的に構成すること、特に巻回や折り返しなどを利用して立体的に構成することによって、アンテナ特性の安定化が達成できると考えた。また、このような構成によるとグランド(GND)のための接地部を複数設けることができ、多共振化によってもアンテナ特性をより安定化できると考えた。さらにこのような構成を有するアンテナは、特に脚部として延出し得る給電部(4)および複数の接地部(5,6)を備えるアンテナは、例えば基板などに直接的に載置することができるので、同軸ケーブルなどを使用する必要がなく、よりコンパクトに設計できると考えた。
【0013】
このような検討に基づく鋭意研究の結果、本願発明者は、例えばコンピュータの基板、具体的にはプリント回路基板などに表面実装できるほどアンテナを小型化できることを見出し、なおかつ放射パターンやインピーダンスなどのアンテナ特性をより安定化できることを見出した。
【0014】
本開示では、少なくとも1つの接地部と給電部とを有するアンテナが提供される。本開示のアンテナは、前記給電部から前記アンテナの先端部へと延伸する第1延伸部と、前記先端部から前記接地部へと延伸する第2延伸部とを有する。本開示のアンテナにおいて、前記第1延伸部と、前記先端部と、前記第2延伸部とが互いに立体的に結合している。
【発明の効果】
【0015】
本開示では、小型化とともにより安定化されたアンテナ特性を有するアンテナが得られる。また、上記の構成によってインピーダンス調整領域が狭帯域に制限されないアンテナや地板間距離に依存しないアンテナなども得られる。尚、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでなく、また、付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るアンテナを給電部側から模式的に示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係るアンテナを先端部側から模式的に示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係るアンテナを模式的に示す概略図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係るアンテナを支持体とともに給電部側から模式的に示す概略斜視図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係るアンテナを支持体とともに先端部側から模式的に示す概略斜視図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態に係るアンテナを支持体とともに模式的に示す概略図である。
【
図7】
図7は、本開示の他の一実施形態に係るアンテナを給電部側から模式的に示す概略斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示の他の一実施形態に係るアンテナを先端部側から模式的に示す概略斜視図である。
【
図9】
図9は、本開示の他の一実施形態に係るアンテナを支持体とともに給電部側から模式的に示す概略斜視図である。
【
図10】
図10は、本開示の他の一実施形態に係るアンテナを支持体とともに先端部側から模式的に示す。
【
図11】
図11は、実施例1で作製したモノポールアンテナ(1/2λ)の形状およびアンテナ特性を示す。
【
図12】
図12は、比較例1で作製したストレート型モノポールアンテナ(1/4λ)の形状およびアンテナ特性を示す。
【
図13】
図13は、比較例2で作製した折り曲げ型モノポールアンテナ(1/4λ)の形状およびアンテナ特性を示す。
【
図14】
図14は、比較例3で作製した渦型モノポールアンテナ(1/4λ)の形状およびアンテナ特性を示す。
【
図15】
図15は、比較例4で作製した折り返し型モノポールアンテナ(1/2λ)の形状およびアンテナ特性を示す。
【
図16】
図16は、実施例1および比較例1~4で作製したアンテナの周波数[GHz]とインピーダンス[Ω]との関係を示す。
【
図17】
図17は、従前のアンテナ(A)~(D)を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、少なくとも1つの接地部と給電部とを有するアンテナに関し、当該アンテナは、前記給電部から前記アンテナの先端部へと延伸する第1延伸部と、前記先端部から前記接地部へと延伸する第2延伸部とを有し、前記第1延伸部と、前記先端部と、前記第2延伸部とが互いに立体的に結合している。以下、このようなアンテナを「本開示のアンテナ」と称する。
【0018】
例えば
図1に示す本開示の一実施形態に係るアンテナ(10)では、給電部(4)から先端部(3)へと延伸または延在する第1延伸部(1)と、アンテナの先端部(3)と、かかる先端部(3)から接地部(5)へと延伸または延在する第2延伸部(2)とが互いに連続して結合することによって立体的に構成されている。それゆえ、本開示のアンテナは、立体的にコンパクトであり、より小型化することができる。
【0019】
本開示のアンテナは、このような立体的な構成を有することでアンテナ特性をより安定化することができる。
【0020】
本開示において「アンテナ特性」とは、概して、アンテナの特性の全般を意味し、具体的には、指向性利得などの放射パターンやインピーダンスなどの特性を意味する。
【0021】
本開示においてアンテナ特性の「安定化」とは、概して、アンテナ特性が大きく変動しないことを意味する。例えば、アンテナ特性が放射パターンである場合、アンテナ特性の安定化とは、アンテナが無指向性であること、特にアンテナ特性が指向性利得の場合にはX-Y面において外形が真円に近い放射パターンを有することなどを意味する。
また、アンテナ特性がインピーダンスである場合、アンテナ特性の安定化とは、例えば、所望の周波数帯または必要周波数帯において、目標として設定したインピーダンス(例えば25Ω以上55Ω以下、好ましくは45Ω以上55Ω以下のインピーダンス)を安定して示すことなどを意味する。本開示のアンテナでは、幅広い周波数帯(例えば13GHz以下、好ましくは6GHz以上9GHz以下)にわたって、目標として設定したインピーダンスを含む帯域を形成することが好ましい。
【0022】
このようなアンテナ特性の安定化、特にインピーダンス変動の安定化は、例えば、アンテナの自立性、形状安定性などによってさらに向上させることができる。
【0023】
このようにアンテナ特性を安定化することで、幅広い周波数帯(例えば13GHz以下、好ましくは6GHz以上9GHz以下)においてインピーダンスを安定して調整することができる。換言すると、インピーダンス調整領域が狭帯域に限定されないアンテナを提供することができる。
【0024】
さらに、本開示のアンテナでは複数の接地部を設けることで多共振化することができ、より幅広い帯域、すなわちブロードバンドに対応することができる。
【0025】
本開示のアンテナは、例えば
図1に示すように、例えば脚部として延出し得る給電部または給電点(4)と複数の接地部または接地点(5,6)とを備えることができる。このような給電部および接地部を有することで例えばコンピュータなどの基板、具体的にはプリント回路基板に本開示のアンテナを載置または実装することができる。そのため、本開示のアンテナでは同軸ケーブルなどを使用する必要がなく、よりコンパクトに設計することができる。
【0026】
本開示のアンテナは、このような構成を有することでより小型化することができ、なおかつより安定化されたアンテナ特性を有することができる。
【0027】
尚、本開示のアンテナは、図示する実施形態に限定されるものではない。
【0028】
本開示において「アンテナ」とは、電流と、電波または電磁波とを相互に変換することができる部品または装置またはデバイスを意味する。本開示において、アンテナは、モノポールアンテナであることが好ましい。モノポールアンテナとすることで製造コストをより低減することができる。
【0029】
本開示のアンテナは、導体から構成されていることが好ましい。導体として、例えば金属および/または合金などが挙げられる。金属および/または合金に含まれ得る金属元素として、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)などが挙げられる。導体として、銅、アルミニウム、ステンレス鋼および真鍮(黄銅またはブラスと称される場合もある)から成る群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。本開示のアンテナは、ブラス材から製造されることが特に好ましい。
【0030】
本開示のアンテナが金属および/または合金などの材料から構成される場合、さらにメッキ層または表面処理層を有していてよい。メッキ層または表面処理層はクロムまたはニッケルなどの元素を含むことが好ましい。
【0031】
本開示のアンテナは、セラミックなどから構成されていてもよい。セラミックとして、高い誘電率を有するセラミックが好ましい。例えばチップアンテナなどに使用することができる誘電体セラミックなどを特に制限なく使用することができる。アンテナは、金属とセラミックの複合材料などから構成されていてよい。
【0032】
本開示において、アンテナの各部材(例えば、給電部、接地部、延伸部および/または先端部など)は板状であることが好ましく、それらが互いに立体的に組み合わされていることが好ましい。各部材は、必要に応じて屈曲していても、折り返されていてもよい。各部材の厚みに特に制限はなく、例えば1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.1mm以上0.4mm以下である。各部材の厚みは、均一であっても、均一でなくともよい。
【0033】
本開示においてアンテナの「給電部」とは、外部の構造から電力または電気エネルギーが供給され得る点を意味する。給電部の形状に特に制限はない。給電部は板状の形状を有することが好ましい(
図1参照)。給電部は、例えば基板、より具体的にはプリント回路基板の給電線または電源配線と接続されることが好ましい。給電部は、当該基板との接触部分において、基板の表面形状に沿った形状を有することが好ましい。給電部は、単一の板状の形状であっても、板状の形状でなくともよい。
【0034】
本開示において「板状」とは、完全に平坦な板状の形状に限らず、少なくとも一部に湾曲部分や屈曲部分および/または傾斜部分などを備えてもよい。
【0035】
本開示においてアンテナの「接地部」とは、外部の構造と接触してグランド(GND)を形成し得る点または部分を意味する。接地部の形状および位置に特に制限はない。接地部は延伸部から部分的に延出していても、延出していなくてもよい。接地部が延伸部から延出する場合、接地部は板状の形状を有することが好ましい(
図1参照)。接地部は、例えば基板、より具体的にはプリント回路基板のGND層またはGND配線と接続されることが好ましい。接地部は、当該基板との接触部分において、基板の表面形状に沿った形状を有することが好ましい。各々の接地部は、単一の板状の形状であっても、板状の形状でなくともよい。
【0036】
接地部は延伸部の任意の縁部に設けられていてよい。接地部は延伸部の下方または底部の縁部に設けられていることが好ましい。その場合、延伸部の縁部に設けられた接地部は給電部と高さが一致していることが好ましい。
【0037】
本開示においてアンテナの「先端部」とは、本開示のアンテナにおいて、給電部から最も高い位置に存在し得る部分または領域を意味する。換言すると、給電部からアンテナの高さ方向(例えば
図1に示すZ
a方向)において、最も高い位置に存在し得る部分または領域を意味する。先端部の形状に特に制限はない。先端部は板状の形状を有することが好ましい(
図1、2参照)。
【0038】
本開示において「先端部」の高さ、つまり給電部からの距離および位置に特に制限はない。換言すると「地板」から「先端部」までの距離(以下、「地板距離」と称する)に特に制限はない。このような構成に基づいて、本発明では地板距離に依存しないアンテナを提供することができる。
【0039】
先端部は少なくとも2つの接続部を有していることが好ましく、その一方の接続部に第1延伸部が結合または連続し、他方の接続部に第2延伸部が結合または連続していることが好ましい(
図1、2参照)。
【0040】
本開示においてアンテナの「延伸部」とは、アンテナの先端部、好ましくはアンテナの先端部の接続部に結合または連続して延在し得る部分を意味する。
【0041】
本開示のアンテナは、少なくとも2つの延伸部を有していてもよい。
(1)アンテナの給電部からアンテナの先端部へと延伸する部分または領域を「第1延伸部」または「第1部分」と称する。換言すると、アンテナの給電部とアンテナの先端部との間に延在し得る部分または領域を「第1延伸部」または「第1部分」と称する。
(2)アンテナの先端部からアンテナの接地部へと延伸する部分または領域を「第2延伸部」または「第2部分」と称する。換言すると、アンテナの先端部とアンテナの接地部との間に延在し得る部分または領域を「第2延伸部」または「第2部分」と称する。
【0042】
本開示においてアンテナの「第1延伸部」と「先端部」と「第2延伸部」とが互いに立体的に結合しているとは、「第1延伸部」と「先端部」と「第2延伸部」とが非平面的に結合または連続していることを意味する。換言すると、「第1延伸部」と「先端部」と「第2延伸部」とが非二次元的に結合または連続していることを意味する。
【0043】
アンテナの立体的な形状として、アンテナの全体形状(給電部および接地部を除く)が立方体や直方体などの箱形や四角柱など略柱状の形状を有していることが好ましい(
図3参照)。換言すると、本開示のアンテナは、上面視で略四角形の形状を有することが好ましい。本開示において「略四角形」とは、概して、4つの角部を有する形状を意味する。従って、「略四角形」には、4つの角部の全ての角度が90°である正方形や長方形などの四角形、菱形や台形などの形状も含まれ得る。角部は丸められていてよい。
【0044】
アンテナの立体的な形状として、アンテナの全体形状(給電部および接地部を除く)が三角柱の形状を有していてもよい。換言すると、本開示のアンテナは、上面視で略三角形の形状を有していてもよい(図示せず)。本開示において「略三角形」とは、概して、3つの角部を有する三角形と識別できる形状を意味する。従って、「略三角形」には角部が丸められた形状も含まれ得る。
【0045】
アンテナの立体的な形状として、アンテナの全体形状(給電部および接地部を除く)が多角柱の形状を有していてもよい。換言すると、本開示のアンテナは、上面視で略多角形の形状を有していてよい(図示せず)。本開示において「略多角形」とは、概して、5つ以上の角部を有する多角形と識別できる形状を意味する。従って、「略多角形」には角部が丸められた形状も含まれ得る。また、「略多角形」は、例えば上面視で略十字型や星型などの幾何学的な形状を有していてよい。
【0046】
アンテナの立体的な形状として、アンテナの全体形状(給電部および接地部を除く)が略円筒の形状を有していてもよい。換言すると、本開示のアンテナは、上面視で略円形の形状を有していてもよい(図示せず)。本開示において「略円形」とは、概して、円形と識別できる形状を意味する。従って、「略円形」には楕円などの形状も含まれ得る。その他、上面視で一部に略円形を有する形状、例えば鍵穴形状や、複数の略円形からなる形状であってもよい。
【0047】
このような立体的な構成は、いずれも上面視で線対称あるいは点対称の形状であっても、そうでなくともよい。このような立体的で三次元的な構成によって、アンテナの多共振化を達成することができる。アンテナの多共振化によってアンテナ特性がより安定化するとともに幅広い帯域での共振周波数を達成することができる。
【0048】
本開示のアンテナにおいて、「第1延伸部」と「先端部」と「第2延伸部」との立体的な結合は、アンテナの先端部の2つの接続部の一方に第1延伸部および第2延伸部のいずれか一方が配置されていて、アンテナの先端部の2つの接続部の他方に第1延伸部および第2延伸部の他方が配置されていることが好ましい。換言すると、第1延伸部と第2延伸部との間にアンテナの先端部がそれぞれ接続部を介して配置されていることが好ましい。
【0049】
「第1延伸部」と「先端部」と「第2延伸部」との立体的な結合は「巻回」を含んでいてよい。換言すると「第1延伸部」と「先端部」と「第2延伸部」とが「巻回」によって互いに立体的に結合していてよい。
【0050】
本開示において「巻回」とは、上面視で「第1延伸部」と「先端部」と「第2延伸部」とが連続的に結合して旋回していることを意味する。図示するように、巻回には、例えば、上面視で略四角形の形状を有するように「第1延伸部」と「先端部」と「第2延伸部」とが折り曲げにより結合されていること(
図3参照)や、上面視で略円形の形状で「第1延伸部」と「先端部」と「第2延伸部」とが湾曲により結合されていること(図示せず)などが含まれる。換言すると、「巻回」とは、屈曲や湾曲によって、より具体的には螺旋状または渦状に旋回させることなどを含む。
【0051】
本開示において「螺旋状」または「渦状」とは、上下方向(Z軸方向)の移動または変位を伴う旋回を意味する。
【0052】
例えば
図1に示す本開示の一実施形態に係るアンテナ(10)では、長方形の形状を有する板状の先端部(3)の2つの接続部、換言すると2つの短辺に第1延伸部(1)と第2延伸部(2)とが折り曲げにより連続して結合されている。
【0053】
第1延伸部(1)は、給電部(4)と先端部(3)との間で約90°の角度で1回だけ折り曲げられていてよい。換言すると、第1延伸部(1)は、上面視で略L字形の形状を有していてよい。従って、第1延伸部(1)は、先端部(3)とともに、上面視で略U字形の形状を有することができる。
【0054】
例えば、第2延伸部(2)は、接地部(5)と先端部(3)との間で約90°の角度で2回にわたって折り曲げられている。換言すると、第2延伸部(2)は、上面視で略U字形の形状を有する。従って、第2延伸部(2)は、先端部(3)とともに、同様に上面視で略U字形の形状を有することができる。
【0055】
このようなことから、図示する態様において、第1延伸部(1)および第2延伸部(2)は、先端部(3)とともに「巻回」によって螺旋状または渦状に互いに連続して結合してよい。
【0056】
「第1延伸部」と「先端部」と「第2延伸部」との立体的な結合には「折り返し」が含まれていてよい。
【0057】
本開示において「折り返し」とは、本開示のアンテナを側面から見た場合あるいは展開図で見た場合、長手方向(X軸方向またはY軸方向)に進行し、さらに高さ方向(又はZ軸方向)に進行した後(つまり上昇または下降した後)、Uターンして、すなわち「折り返し」て、長手方向を逆方向に進行することを意味する。本開示において「折り返し」は「スイッチバック」とも呼ばれる(
図17D参照)。
【0058】
本開示の立体的な結合に含まれ得る折り返しの数に特に制限はない。折り返しは、先端部と第1延伸部との結合または結合体に含まれていてもよい。あるいは、先端部と第2延伸部との結合または結合体に折り返しが含まれていてもよい。
【0059】
例えば
図1に示す態様では、アンテナ(10)の先端部(3)と第2延伸部(2)との結合または結合体に「折り返し」が含まれている。
【0060】
本開示のアンテナは、このような「巻回」および/または「折り返し」を含むことによって、三次元的にコンパクトにより小さく設計することができる。
【0061】
本開示のアンテナ、特に「第1延伸部」と「先端部」と「第2延伸部」との立体的な結合には「巻回」および「折り返し」の両方が含まれることが好ましい。立体的な結合が「巻回」を含むことで「第1延伸部」と「先端部」と「第2延伸部」とが上面視で旋回し、さらに上下方向(Z軸方向、より具体的にはZa方向および/またはZb方向)に移動または変位しながら旋回することができる。換言すると、螺旋状または渦状に旋回することができる。さらに「折り返し」を含むことで、旋回しながら、上下方向(Z軸方向、より具体的にはZa方向および/またはZb方向)に移動または変位するとともにX軸方向および/またはY軸方向に蛇行することができる。換言すると、螺旋状または渦状に旋回しながら蛇行することができる。
【0062】
本開示のアンテナは、このような「巻回」および/または「折り返し」を含むことによって、給電部と接地部との間の距離を大きくすることができ、アンテナ特性をより安定化させることができる。
【0063】
本開示のアンテナは複数の接地部を含むことが好ましい。本開示のアンテナは複数の接地部を含むことで多共振化することができ、アンテナ特性をより安定化させることができる。このような複数の接地部を設けることでより安定したブロードバンド化を達成することができる。
【0064】
本開示のアンテナにおいて、給電部と接地部とが同一面上に位置することが好ましい。例えば
図1に示すように給電部(4)は第1延伸部(1)から外側に約90°の角度で延出し、接地部(5,6)が第2延伸部(2)からそれぞれ外側に約90°の角度で延出している。給電部(4)および接地部(5,6)は、好ましくは板状の形状を有し、同一面上に位置している。このように本開示のアンテナが給電部(4)とともに少なくとも2つの接地部(5,6)を有することによってアンテナが自立可能となる。そうすることで、アンテナ特性、特にインピーダンス変動がより安定化する。
【0065】
本開示においてアンテナが自立可能であることでアンテナを基板、より具体的にはプリント回路基板に載置または実装することができる。従って、ケーブルなどが不要となり、より小型化することができる。換言すると、本開示のアンテナは、表面実装品として使用することができる。
【0066】
本開示において「表面実装品」とは、当該分野で公知の表面実装テクノロジー(SMT)を使用して、例えばプリント回路基板などの基板に実装可能な部品または部材を意味する。「表面実装品」は、表面実装デバイス(SMD)と称する場合もある。本開示のアンテナは、SMTによってプリント回路基板などの基板に自動実装され得ることが好ましい。
【0067】
本開示において「接地部」は、表面実装だけでなく、通常の端子として他の構造体と係合および/または嵌合などにより結合してよい。
【0068】
本開示のアンテナは、その内側に配置され得る支持体をさらに有していてよい(
図4~6および
図9~10参照)。
【0069】
アンテナの内側に支持体を配置することによって、アンテナの変形を防止することができる。そのためアンテナをより小型化することができる。また、支持体を配置することによって、アンテナの形状安定性や自立性をより高めることで、アンテナ特性をより安定化することができる。
【0070】
支持体の寸法に特に制限はないが、例えば
図4~6および
図9~10に示すように支持体が四角柱の形状を有している場合、一辺の寸法は、例えば10mm以下、好ましくは6mm以下、より好ましくは1mm以上5mm以下である。
【0071】
本開示において、支持体とアンテナとは互いにその少なくとも一部が接触することが好ましい。支持体とアンテナとが一体化して結合していることがより好ましい。
【0072】
支持体の形状に特に制限はない。例えば、アンテナの形状に合わせて、支持体は立方体や長方体などの箱形または四角柱の形状を有していることが好ましい。支持体は、三角柱、多角柱、円筒などの他の形状を有していてもよい。
【0073】
支持体の少なくとも1つの主面は平坦(又はスムーズ又はフラット)であることが好ましい。支持体の「主面」とは、支持体の頂部に位置し得る第1主面と、底部に位置し得る第2主面とを意味する。
【0074】
支持体の「第1主面」とは、例えば、本開示のアンテナの先端部が位置し得るZa方向の上面または頂面を意味する。
支持体の「第2主面」とは、例えば、本開示のアンテナの給電部および/または接地部が位置し得るZb方向の下面または底面を意味する。
【0075】
主面が「平坦」であるとは、第1主面および第2主面のいずれか一方が少なくとも平滑(又はスムーズ)であることを意味する。換言すると、主面が「平坦」であるとは、第1主面および第2主面のいずれか一方の表面に意図的に形成された凹凸がないことを意味する。
【0076】
支持体の主面が「平坦」であることによって、例えば基板などの板状の構造物への本開示のアンテナの載置をより促進させることができる。支持体の第1主面(頂面)が平坦であることが好ましい。支持体の第1主面(頂面)が平坦であることによって、例えば、表面吸着によって本発明のアンテナを基板などに安定して実装することができる。
【0077】
支持体を構成する材料に特に制限はない。支持体は、樹脂(例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、液晶ポリマー(LCP)など)から構成されることが好ましい。
【0078】
支持体の内部に誘電体、特に誘電率が高い誘電体、例えば誘電率が高い樹脂製の誘電体を配置することでアンテナ特性をさらに安定化させることができる。そのため、本開示のアンテナをより小型化することができる。
【0079】
本開示のアンテナは、アンテナ特性として、例えば13GHz以下、好ましくは3GHz以上10GHz以下、より好ましくは6GHz以上9GHz以下、特に好ましくは6GHz以上8.5GHz以下の範囲内の所望の周波数帯または必要周波数帯を安定して有することができる。本開示のアンテナは、少なくとも6GHz以上9GHz以下のハイバンドの周波数帯を安定して有し、ブロードバンド化されていることが好ましい。
【0080】
本開示のアンテナは、アンテナ特性として、例えば、所望の周波数帯または必要周波数帯において、25Ω以上55Ω以下、好ましくは45Ω以上55Ω以下の範囲内のインピーダンスを安定して有する。本開示のアンテナは、より好ましくは13GHz以下、特に6GHz以上9GHz以下の周波数帯において、例えば25Ω以上55Ω以下、好ましくは45Ω以上55Ω以下の範囲内のインピーダンスを有する。本開示のアンテナは、6GHz以上9GHz以下の周波数帯において、50Ωを目標とするインピーダンスのピーク値を有することが特に好ましい。本開示のアンテナは、このような範囲内のインピーダンスの値を有することで超広帯域(UWB)での通信に対応することができる。
【0081】
本開示のアンテナは、多共振化されていてよく、様々な共振域においてより安定して対応可能である。本開示のアンテナは、高利得で無指向性であることが好ましい。
【0082】
本開示のアンテナの用途に特に制限はない。本開示のアンテナは、小型でより安定したアンテナ特性を有することから、例えば、自動車、ハイブリッド車、電気自動車などの車輛、スマートフォン、ウェアラブルデバイスなどの電子機器などに搭載され、またはそれら電子機器との通信に使用することができる。
【0083】
本開示のアンテナは、より小型化できることから、車輛のコンピュータ、特にECU(エンジン・コントロール・ユニット)の内部の基板、スマートフォンやウェアラブルデバイスの内部の基板に配置して使用することができる。
【0084】
本開示のアンテナは、より具体的な用途として、例えば、近距離無線通信(NFC)、近距離(例えば1m程度)での高速通信、位置検出、特に距離測定などに利用することができる。
【0085】
本開示のアンテナを車輛のコンピュータ、特にECUの基板に配置する場合、車輛の盗難防止や自動運転の際の通信などに使用することができる。
【0086】
[製造方法]
本開示のアンテナの製造方法に特に制限はない。例えば、本開示のアンテナを金属や合金などの板状材料から製造する場合、板状材料をカットして折り曲げるだけで簡単に製造することができる。また、板状材料をカットして各部材を溶接などで結合させてもよい。
本開示のアンテナが誘電体セラミックから製造される場合、チップ型セラミックアンテナと同様に製造することができる。例えば、セラミック分野で公知の印刷技術などを利用して耐熱性の支持体上に誘電体セラミックのアンテナを形成してもよい。
【0087】
以下、本開示のアンテナをいくつかの実施形態を挙げて例示として説明するが、本開示のアンテナは、これらに限定されるものではない。
【0088】
[実施形態]
第1実施形態
本開示の第1実施形態に係るアンテナ10を
図1~3に示す。
各図面において、X
a-X
b方向のX軸と、このX軸に直行するY
a-Y
b方向のY軸とに平行なX-Y面のZ
a-Z
b方向の法線をZ軸とするXYZ座標系に基づいて、アンテナの形状を説明する。説明の便宜上、Z
aの方向を上方と称し、Z
bの方向を下方と称する場合もある。また、XYZ座標系の中心に向かう方向を内側方向と称し、中心から遠ざかる方向を外側方向と称する場合もある。
【0089】
例えば
図1に示す通り、アンテナ10は、第1延伸部1と、第2延伸部2と、先端部3と、給電部4と、第1接地部5(本開示では給電部から最も遠い位置にある接地部を第1接地部と称する)と、第2接地部6(本開示では先端部に最も近い位置にある接地部を第2接地部と称する)とを有する。アンテナ10は、金属または合金、好ましくはブラス材からなる1枚の金属板から製造されることが好ましい。
【0090】
アンテナ10の第1延伸部1、第2延伸部2、先端部3、給電部4、第1接地部5および第2接地部6のそれぞれの形状に特に制限はない。第1延伸部1と、先端部3と、第2延伸部2とが互いに連続的に結合して上面視が略四角形の形状を有するように立体的に構成されることが好ましい。アンテナ10は、全体として箱型の立体形状を有することが好ましい(
図3参照)。換言すると、アンテナ10は、全体として、例えば
図4~6に示す箱型の立体形状を有する支持体11に沿うような形状を有することが好ましい。アンテナ10が全体として箱型の立体形状を有することで全体をコンパクトにより小型化することができる。
【0091】
第1延伸部1は、給電部4から先端部3へと延伸する部分または領域である。図示する態様では、第1延伸部1は、少なくとも1回屈曲していて、2つの面、すなわちX-Z面に平行する面(a)と、Z-Y面に平行する面(b)とを有する(
図3参照)。各面(a,b)の形状に特に制限はない。各面(a,b)は、電波の送受信を考慮して、複数の四角形を組み合わせて構成することが好ましい。換言すると、給電部4から先端部3に向けて、階段状に上昇することが好ましい。このようなことから第1延伸部は「上昇部」と称することもできる。第1延伸部を構成する面の数および寸法に特に制限はない。
【0092】
第2延伸部2は、先端部3から第1接地部5へと延伸する部分または領域である。図示する態様では、第2延伸部2は、少なくとも2回屈曲していて、3つの面、すなわちY-Z面に平行する面(c)と、X-Z面に平行する面(d)と、Y-Z面に平行する面(e)とを有する(
図3参照)。各面(c,d,e)の形状に特に制限はない。各面(c,d,e)は、電波の送受信を考慮して、複数の四角形を組み合わせて構成することが好ましい。換言すると、先端部3から第1接地部5に向けて、階段状に下降することが好ましい。このようなことから第2延伸部は「下降部」と称することもできる。第2延伸部2を構成する面の数および寸法に特に制限はない。
【0093】
先端部3は、例えば
図2に示すように、Z
a方向においてアンテナの最も高い位置に存在する部分または領域である。図示する態様では、先端部3は板状の形状を有する。先端部3の形状に特に制限はないが、電波の送受信を考慮すると、長方形の板状の形状を有することが好ましい。先端部3を構成する面の数および寸法に特に制限はない。
【0094】
先端部3は、長方形の板状の形状を有する場合、その両接続部、換言すると両短辺にそれぞれ第1延伸部1(具体的には面b)および第2延伸部2(具体的には面c)を配置することが好ましい。
【0095】
給電部4は、X-Y面に平行して存在してよく、第1延伸部1の面(a)から外側のYb方向に延出し得る。図示する態様では、給電部4は板状の形状を有する。給電部4の形状に特に制限はないが、基板などへの表面実装を考慮すると、上面視が長方形または正方形などの略四角形の板状の形状を有することが好ましい。給電部4の寸法に特に制限はない。
【0096】
第1接地部5は、X-Y面に平行して存在してよく、第2延伸部2の面(e)から外側のXa方向に延出し得る。図示する態様では、第1接地部5は板状の形状を有する。第1接地部5の形状に特に制限はないが、基板などへの表面実装およびグランドの形成を考慮すると、上面視が長方形または正方形などの略四角形の板状の形状を有することが好ましい。第1接地部5の寸法に特に制限はない。
【0097】
本開示において、第1接地部は、給電部に対して、上面視で270°以下の範囲内の角度で配置されることが好ましい。
【0098】
第2接地部6は、例えば
図2に示すように、X-Y面に平行して存在してよく、第2延伸部2の面(c)から外側のX
b方向に延出し得る。図示する態様では、第2接地部6は板状の形状を有する。第2接地部6の形状に特に制限はないが、基板などへの表面実装およびグランドの形成を考慮すると、上面視が長方形または正方形などの略四角形の板状の形状を有することが好ましい。第2接地部6の寸法に特に制限はない。このように第2接地部6を設けることによってアンテナを多共振化することができる。また、第2接地部6は、第1接地部5および給電部4とともに、同一面(X-Y面に平行な面)に存在し得ることから、アンテナが自立可能となり、基板などへの表面実装がより促進され得る。
【0099】
第2延伸部2の面(d)は、第3接地部をさらに有していてよい(図示せず)。第3接地部は、面(d)から外側のYa方向に延出してよい。
【0100】
図1~3に示すように、アンテナ10では、第1延伸部1と、先端部3と、第2延伸部2とが互いに立体的に結合している。より具体的には、第1延伸部1が給電部4から先端部3までZ
a方向に上昇し、具体的には上昇しながら旋回し、第2延伸部2が先端部3から第1接地部5までZ
b方向に下降することによって、具体的には下降しながら旋回することでグランド(GND)を形成している。このようにアンテナ10では、第1延伸部1および第2延伸部2が先端部3と一体となって、螺旋状、換言すると渦状に巻回しながら先端部3を頂点にして上下することでアンテナをよりコンパクトに小型化することができる。このような立体的な構成により、アンテナ10は小型化とともにより安定したアンテナ特性を有することができる(
図1参照)。
【0101】
また、アンテナ10では、先端部3と第2延伸部2の面(d)とが、面(c)を経由する折り返し構造を有するので、蛇行して経路が延びることでアンテナをより立体的に構成することができ、アンテナをより小型化するとともにアンテナ特性をさらに安定化させることができる。
【0102】
アンテナ10では、このような立体的な渦型または螺旋型の折り返し構造によって、アンテナをよりコンパクトに設計することができ、アンテナ特性をより安定化させることができる。
【0103】
本開示のアンテナの寸法に特に制限はないが、例えば、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の寸法が、それぞれ、例えば10mm以下、好ましくは6mm以下、より好ましくは1mm以上5mm以下である。
【0104】
第2実施形態
本開示の第2実施形態に係るアンテナ20を
図4~6に示す。アンテナ20は、第1実施形態のアンテナ10(以下、「アンテナ本体10」または単に「本体10」と称する)の内側に支持体11を配置することで構成できる。
【0105】
アンテナ20において、本体10と支持体11とが互いにその少なくとも一部が接触することが好ましい。本体10と支持体11とが互いに結合していることがより好ましい。本体10と支持体11との結合は、例えば係合および/または嵌合などによって行われてよい。例えば、本体10から内側に延出する凸部を設け、支持体11に本体10の凸部に相補的な形状を有する凹部を設け、本体10の凸部と支持体11の凹部とを互いに係合および/または嵌合させることで本体10と支持体11とを結合させてよい。あるいは、支持体11に凸部に設け、本体10と係合および/または嵌合させることで本体10と支持体11とを結合させてよい。より具体的には、支持体11に段差を設けることで本体10と支持体11とを互いに係合および/または嵌合させてよい。あるいは、本体10が有する弾性によって、支持体11と本体10とが接触して互いに結合していてよい。あるいは、圧着や圧入、熱カシメなどによって本体10と支持体11とを結合させてもよい。
【0106】
支持体11は、
図4~6に示すように、平坦な2つの主面、すなわちX-Y面に平行する上方の第1主面(f)(以下、「頂面(f)」と称する場合もある(
図6D参照))および下方の第2主面(g)(以下、「底面(g)」と称する場合もある(
図6E参照))を有することが好ましい。頂面(f)および底面(g)の表面がそれぞれ平坦であることで、表面実装テクノロジー(SMT)によって、例えば表面吸着による基板などへの表面実装が容易となる。さらにSMTによってアンテナを支持体と共にプリント回路基板などの基板に自動実装することができる。
【0107】
支持体11は、その内部の構造が実質でも中空でもよい。支持体11は、その内部に誘電体を含むことが好ましい。支持体11の内部に誘電体を含むことでアンテナ特性をより小型化することができる。
【0108】
第3実施形態
本開示の第3実施形態に係るアンテナ30を
図7および
図8に示す。アンテナ30は、
図1~3に示すアンテナ10のバリエーションの1つである。従って、アンテナ30は、アンテナ10と同様の構成を有する。
【0109】
例えば
図7および
図8に示す通り、アンテナ30は、第1延伸部31と、第2延伸部32と、先端部33と、給電部34と、第1接地部35と、第2接地部36と、第3接地部37とを有する。アンテナ30の第1延伸部31、第2延伸部32、先端部33、給電部34、第1接地部35および第2接地部36は、それぞれ
図1~3に示すアンテナ10の第1延伸部1、第2延伸部2、先端部3、給電部4、第1接地部5および第2接地部6に対応し得る。
【0110】
アンテナ30は、金属または合金、好ましくはブラス材からなる1枚の金属板から製造されることが好ましい。
【0111】
アンテナ30の第1延伸部31、第2延伸部32、先端部33、給電部34、第1接地部35、第2接地部36および第3接地部37のそれぞれの形状に特に制限はない。
【0112】
アンテナ30は、アンテナ10と同様に上面視が略四角形であり、立体的な渦型または螺旋型の折り返し構造を有する。
【0113】
第1延伸部31は、給電部34から先端部33へと延伸する部分または領域である。図示する態様では、第1延伸部31は、1つの面、すなわちX-Z面に平行する面を有する。
【0114】
第2延伸部32は、先端部33から第1接地部35へと延伸する部分または領域である。図示する態様では、第2延伸部32は2回屈曲していて、3つの面、すなわち2つのY-Z面に平行する面と、1つのX-Z面に平行する面とを有する。
【0115】
先端部33は、例えば
図7に示すように、Z
a方向においてアンテナの最も高い位置に存在する部分または領域である。図示する態様では、先端部33は、中央で屈曲した帯状の形状を有する。換言すると、先端部33は、Y-Z面に平行する細長い帯状の面と、X-Z面に平行する細長い帯状の面とを有する。先端部33の形状に特に制限はないが、電波の送受信を考慮すると、帯状の形状を有することが好ましい。先端部33を構成する面の数および寸法に特に制限はない。
【0116】
先端部33は、帯状の形状を有する場合、その両接続部、換言すると両短辺にそれぞれ第1延伸部31および第2延伸部32を配置することが好ましい。
【0117】
給電部34は、例えば
図7に示すように、X-Y面に平行して存在してよく、第1延伸部31から外側のY
b方向に延出し得る。
【0118】
第1接地部35は、例えば
図7に示すように、X-Y面に平行して存在してよく、第2延伸部32から外側のX
a方向に延出し得る。
【0119】
第2接地部36は、例えば
図8に示すように、X-Y面に平行して存在してよく、第2延伸部32から外側のX
b方向に延出し得る。
【0120】
第3接地部37は、例えば
図8に示すように、X-Y面に平行して存在してよく、第2延伸部32から外側のY
a方向に延出し得る。図示する態様では、第3接地部37は板状の形状を有する。第3接地部37の形状に特に制限はないが、基板などへの表面実装およびグランドの形成を考慮すると、上面視が長方形または正方形などの略四角形の板状の形状を有することが好ましい。第3接地部37の寸法に特に制限はない。第3接地部37を設けることによって、アンテナの自立、多共振化、表面実装をさらに促進させることができる。
【0121】
図7および
図8に示すように、アンテナ30では、第1延伸部31と、先端部33と、第2延伸部32とが互いに立体的に結合している。第1延伸部31および第2延伸部32は、先端部33と同様に帯状の形状を有することから、第1延伸部31および第2延伸部32が先端部33と一体となって、給電部34から先端部33までZ
a方向に第1延伸部31が上昇し、先端部33から第1接地部35までZ
b方向に第2延伸部32が下降することができ、具体的には下降しながら旋回することでグランドを形成することができる。
【0122】
アンテナ30は、
図1~3に示すアンテナ10と比べて構造がシンプルであることから、より小型化することができる。さらに第3接地部37を有することから、アンテナ30は多共振化にともなってアンテナ特性がさらに安定化し得る。また、表面実装の際に、アンテナの自立性がさらに向上する。
【0123】
第4実施形態
本開示の第4実施形態に係るアンテナ40を
図9および
図10に示す。アンテナ40は、第3実施形態のアンテナ30(以下、「アンテナ本体30」または単に「本体30」と称する)の内側に支持体21を配置することで構成できる。支持体21は、
図4~6に示す支持体11と同様の構成を有することができる。
【0124】
図9および
図10に示す本開示の第4実施形態に係るアンテナ40は、
図4~6に示す第2実施形態のアンテナ20と同様の効果を奏することができる。
【実施例0125】
実施例1
板状のブラス材(厚み:0.3mm)を用いて
図11に示す形状を有するアンテナを作製した(
図11Aの斜視図および
図11Bの六面図参照)。
図11Bにおいて、符号P、Q、Rは、それぞれ接地部を示す。実施例1で作製したアンテナは、モノポールアンテナ(1/2λ)であった。アンテナ本体のX軸方向の寸法は5mmであり、Y軸方向の寸法(ただし、給電部の寸法を除く)は5mmであり、Z軸方向の寸法(高さ)は5.5mmであった。支持体は樹脂製であり、支持体のX軸方向の寸法は4.4mmであり、Y軸方向の寸法は4.4mmであり、Z軸方向の寸法(高さ)は5mmであった。実施例1で作製したアンテナのインピーダンスを
図11Cに示し、放射パターンとして指向性利得(デシベル(dB))を
図11Dに示す。
【0126】
比較例1
板状のブラス材(厚み:0.3mm)を用いて
図12に示す形状を有するアンテナを作製した(
図12Aの斜視図および
図12Bの六面図参照)。比較例1で作製したアンテナは、「ストレート型」のモノポールアンテナ(1/4λ)であった。比較例1で作製したアンテナのX軸方向の寸法(幅)は2mmであり、Z軸方向の寸法(高さ)は8mmであった。支持体は樹脂製であり、支持体のX軸方向の寸法は5mmであり、Y軸方向の寸法は5mmであり、Z軸方向の寸法(高さ)は約8mmであった。比較例1で作製したアンテナのインピーダンスを
図12Cに示し、放射パターンとして指向性利得(dB)を
図12Dに示す。
【0127】
比較例2
板状のブラス材(厚み:0.3mm)を用いて
図13に示す形状を有するアンテナを作製した(
図13Aの斜視図および
図13Bの六面図参照)。比較例2で作製したアンテナは、「折り曲げ型」のモノポールアンテナ(1/4λ)であった。比較例2で作製したアンテナのX軸方向の寸法(幅)は2mmであり、Y軸方向の寸法(折り曲げ部分の寸法)(ただし、給電部の寸法を除く)は3mmであり、Z軸方向の寸法(高さ)は5.6mmであった。支持体は樹脂製であり、支持体のX軸方向の寸法は5mmであり、Y軸方向の寸法は5mmであり、Z軸方向の寸法(高さ)は5.3mmであった。比較例2で作製したアンテナのインピーダンスを
図13Cに示し、放射パターンとして指向性利得(dB)を
図13Dに示す。
【0128】
比較例3
板状のブラス材(厚み:0.3mm)を用いて
図14に示す形状を有するアンテナを作製した(
図14Aの斜視図および
図14Bの六面図参照)。比較例3で作製したアンテナは、「渦型」のモノポールアンテナ(1/4λ)であった。つまり、
図11に示す実施例1のアンテナの先端部をX-Z面まで延長して先端をX-Z面で切断したものである。延長された先端部のX-Z面におけるX軸方向の寸法は3mmであった。支持体は樹脂製であり、支持体のX軸方向の寸法は4.4mmであり、Y軸方向の寸法は4.4mmであり、Z軸方向の寸法(高さ)は5mmであった。比較例3で作製したアンテナのインピーダンスを
図14Cに示し、放射パターンとして指向性利得(dB)を
図14Dに示す。
【0129】
比較例4
板状のブラス材(厚み:0.3mm)を用いて
図15に示す形状を有するアンテナを作製した(
図15Aの斜視図および
図15Bの六面図参照)。
図15Bにおいて、符号S、T、Uは、それぞれ接地部を示す。比較例4で作製したアンテナは、「折り返し型」(スイッチバック型)のモノポールアンテナ(1/2λ)であった。比較例4で作製したアンテナのX軸(長手軸)方向の寸法は17mmであり、Z軸方向の寸法(高さ)は6mmであった。支持体は樹脂製であり、支持体のX軸方向の寸法は20mmであり、Y軸方向の寸法は3mmであり、Z軸方向の寸法(高さ)は7mmであった。比較例4で作製したアンテナのインピーダンスを
図15Cに示し、放射パターンとして指向性利得(dB)を
図15Dに示す。
【0130】
図11~
図15(D)に示すアンテナの指向性利得から、実施例1のアンテナ(
図11D)は、立体的にコンパクトに小型化したにもかかわらず、比較例1~4で作製したアンテナ、特に比較例4で作製した折り返し型のアンテナ(
図15D)と比較して、指向性利得の外形が真円に近い放射パターンを有することから、より安定したアンテナ特性を有することがわかった。
【0131】
尚、
図11~
図15(C)は、実施例1および比較例1~4のアンテナのインピーダンスを示し、円の中心が目標とする「50Ω」のインピーダンスを示す。実施例1のアンテナ(
図11C)は、立体的にコンパクトに小型化したにもかかわらず、比較例1~4で作製したアンテナ、特に比較例3で作製した渦型のアンテナ(
図14C)と比較して、インピーダンスがより円の中心付近に収束していることから、より安定したアンテナ特性を有することがわかった。
【0132】
さらに、実施例1および比較例1~4で作製したアンテナのインピーダンスを以下の表1に具体的に示す。
【0133】
【0134】
さらに、実施例1および比較例1~4で作製したアンテナの周波数[GHz]とインピーダンス[Ω]との関係を
図16に示す。
【0135】
実施例1のアンテナは、比較例1~4で作製したアンテナと比べて、小型化したにもかかわらず、6GHz~9GHzの広い帯域にわたって、目標とする50Ω付近、具体的には25Ω~55Ωのインピーダンスが安定して得られることがわかった。
【0136】
以上のことから、実施例1で作製した本開示のアンテナは、比較例1~4で作製した従前のアンテナと比べて、小型化したにもかかわらず、広い帯域にわたって、より安定化されたアンテナ特性を有することがわかった。
本開示のアンテナは、より小型化され、より安定なアンテナ特性を有すること、ならびに上記の構成によってインピーダンス調整領域が狭帯域に制限されないことや地板間距離に依存しないことなどから、超広帯域(UWB)での通信により適切に使用することができる。
本開示のアンテナは、例えば、車輛(例えば、乗用車、ハイブリッド車、電気自動車など)、電子機器(例えばスマートフォン、ウェアラブルデバイスなど)に搭載して通信および/または位置検出などに使用することができる。