IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タムロンの特許一覧

特開2022-92496像振れ補正装置、レンズユニットおよび撮像装置
<>
  • 特開-像振れ補正装置、レンズユニットおよび撮像装置 図1
  • 特開-像振れ補正装置、レンズユニットおよび撮像装置 図2
  • 特開-像振れ補正装置、レンズユニットおよび撮像装置 図3
  • 特開-像振れ補正装置、レンズユニットおよび撮像装置 図4
  • 特開-像振れ補正装置、レンズユニットおよび撮像装置 図5
  • 特開-像振れ補正装置、レンズユニットおよび撮像装置 図6
  • 特開-像振れ補正装置、レンズユニットおよび撮像装置 図7
  • 特開-像振れ補正装置、レンズユニットおよび撮像装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092496
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】像振れ補正装置、レンズユニットおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20220615BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20220615BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
G03B5/00 J
H04N5/232 480
H04N5/225 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205328
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 敏憲
(72)【発明者】
【氏名】杉本 陽平
(72)【発明者】
【氏名】向井 麻理
【テーマコード(参考)】
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2K005AA01
2K005AA20
2K005CA02
2K005CA23
2K005CA35
2K005CA44
2K005CA46
2K005CA53
2K005CA60
5C122EA41
5C122FB03
5C122GE05
5C122GE11
5C122HA82
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で可動部が固定部から離脱することを防止可能な像振れ補正装置を実現する。
【解決手段】像振れ補正装置(10)は、固定部(11)と、レンズ(14)を保持する可動部(12)と、固定部(11)に固定され、可動部(12)が光軸に沿う方向に固定部から離脱することを規制する外れ止め部(13)とを有する。可動部(12)の固定部(11)とは反対側の面の周方向における一部のみが外れ止め部(13)と対向する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、レンズを保持するとともに、前記レンズの光軸と交差する方向へ前記固定部に対して移動可能な可動部と、前記固定部に固定され、前記可動部が前記光軸に沿う方向に前記固定部から離脱することを規制する外れ止め部と、を有する像振れ補正装置であって、
前記可動部の前記固定部とは反対側の面の周方向における一部のみが前記外れ止め部と対向する、像振れ補正装置。
【請求項2】
前記外れ止め部は、
前記光軸に沿う方向において前記固定部から前記可動部側へ延在する軸部と、
前記軸部の先端から前記光軸と交差する方向に沿って延在するフランジ部と、
を有する、請求項1に記載の像振れ補正装置。
【請求項3】
前記フランジ部は、その外周部の一部が切り欠かれている切り欠き部を有し、
前記固定部は、前記切り欠き部に挿入される凸部を有する、
請求項2に記載の像振れ補正装置。
【請求項4】
前記可動部と前記フランジ部との間に介在し、粘弾性を有する粘弾性接着部をさらに有する、請求項2または3に記載の像振れ補正装置。
【請求項5】
前記可動部を、前記レンズの光軸と交差する方向へ前記固定部に対して移動させる電磁アクチュエータをさらに有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の像振れ補正装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の像振れ補正装置を有するレンズユニット。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の像振れ補正装置を有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像振れ補正装置、レンズユニットおよび撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一眼レフカメラなどの光学機器には、手振れ補正機構などの像振れ補正装置を有する光学機器が知られている。当該像振れ補正装置は、通常、手振れを補正するための構成として、レンズを保持する可動部を固定部に対して、レンズの光軸と交差する方向に摺動させる構成を有する。また、当該像振れ補正装置は、可動部が光軸方向に沿って固定部から離脱することを防止するために、光軸に沿って固定部から離れる方向へ可動部が移動することを規制する構成を有している。
【0003】
このような光軸方向に沿う離脱を規制する構成には、光軸方向とは垂直な方向にポールを挿入することにより可動部の離脱を規制する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、当該構成には、光軸に沿う方向において固定部に向けて可動部をばねで付勢する構成、および、光軸に沿う方向において、可動部を挟んで固定部とは反対側に可動部の全周を覆う蓋部材を配置する構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-275767号公報
【特許文献2】特開2010-175788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、構造の複雑さの観点から問題を有している。たとえば、特許文献1に記載の構造では、光軸に沿う方向において可動部が固定部から離脱することを規制する構成において、光軸に沿う方向と交差する方向にポールが挿入されている。そのため、可動部および固定部においてポールを挿入し保持するための構造が必要となる。また、特許文献2に記載の構造では、ばねによる付勢で可動部の離脱を規制するため、固定部および可動部にばねを架け渡すための構造が必要となる。さらに、特許文献2に記載の構造では、蓋部材が光軸に沿う方向において可動部の全周を蓋部材で覆うため、蓋部材を固定部に十分に固定するための構成が必要となる。
【0006】
このため、従来の像ぶれ補正装置は、レンズユニットの設計に制約を生じさせる場合がある。たとえば、以下に示すような場合に、設計の制約を生じさせると考えられる。
・手振れ補正用レンズの光軸に沿う方向における隣に配置されたレンズが、ズーム動作において手振れ補正用レンズに極端に近接する光学系を採用したい場合。
・レンズ同士の間隔を狭めて、光学系を小型化したい場合。
・手振れ補正用レンズに重なる蓋部材をズーム動作において駆動させる必要がある場合。
・手振れ補正用レンズの周辺に別のレンズ群の部品を配置したい場合。
【0007】
このため、構造上の制約および光学系への制約を減らしつつ、可動部が光軸に沿う方向において固定部から離脱することを防止可能な像振れ補正装置が求められている。
【0008】
本発明の一態様は、簡素な構成で可動部が固定部から離脱することを防止可能な像振れ補正装置を実現することを第一の課題とする。
また、本発明の一態様は、像振れ補正装置に起因する設計上の制約を軽減可能なレンズユニットおよび撮像装置を実現することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
少なくとも上記の第一の課題を解決するために、本発明の一態様に係る像振れ補正装置は、固定部と、レンズを保持するとともに前記レンズの光軸と交差する方向へ前記固定部に対して移動可能な可動部と、前記固定部に固定され、前記可動部が前記光軸に沿う方向に前記固定部から離脱することを規制する外れ止め部と、を有する像振れ補正装置であって、前記可動部の前記固定部とは反対側の面の周方向における一部のみが前記外れ止め部と対向する。
【0010】
また、少なくとも上記の第二の課題を解決するために、本発明の一態様に係るレンズユニットは、上記の像振れ補正装置を有する。
【0011】
さらに、少なくとも上記の第二の課題を解決するために、本発明の一態様に係る撮像装置は、上記の像振れ補正装置を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、簡素な構成で可動部が固定部から離脱することを防止可能な像振れ補正装置を実現することができる。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、像振れ補正装置に起因する設計上の制約を軽減可能なレンズユニットおよび撮像装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置の光学的な構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る像振れ補正装置の構成を模式的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る像振れ補正装置の構成を模式的に示す分解斜視図である。
図4図2の像振れ補正装置をA-A線で切断した断面を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態における外れ止め部の構成を模式的に示す斜視図である。
図6】本実施形態の像振れ補正装置に従来の蓋部材を適用した状態を模式的に示す断面図である。
図7】本実施形態の像振れ補正装置に従来の蓋部材を適用した状態を模式的に示す平面図である。
図8】粘弾性接着部を有する、本発明の他の実施形態に係る像振れ補正装置の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0016】
[撮像装置]
本発明の実施形態に係る撮像装置は、像振れ補正装置を有する。当該撮像装置は、後述する像振れ補正装置を有する以外は、公知の撮像装置と同様に構成され得る。像振れ補正装置は、後に詳述するが、撮像装置の光学系の一部を構成するように配置される。本発明の実施形態における撮像装置は、デジタルカメラおよびビデオカメラなどの、固体撮像素子を有する撮像装置であってよい。また、当該撮像装置は、レンズが撮像装置の本体に固定されているレンズ固定式の撮像装置であってもよいし、一眼レフカメラおよびミラーレス一眼カメラのように、着脱自在なレンズユニットを有するレンズ交換式の撮像装置であってもよい。当該撮像装置の例には、一眼レフカメラ、監視カメラおよびコンパクトデジタルカメラが含まれる。
【0017】
本実施形態に係る撮像装置は、撮像素子により取得した撮像画像データを電気的に加工して、撮像画像の形状を変化させる画像処理部、ならびに、当該画像処理部において撮像画像データを加工するために用いる画像補正データおよび画像補正プログラム等を保持する画像補正データ保持部、などをさらに有することがより好ましい。
【0018】
[レンズユニット]
本発明の実施形態に係るレンズユニットは、像振れ補正装置を有する。本実施形態において、「レンズユニット」とは、光軸に沿って移動可能な一以上のレンズ群を有する光学系である。レンズ群は、一以上のレンズ成分で構成され、複数のレンズ成分を含む場合では、レンズ成分の互いの相対的な位置関係は固定されている。レンズユニットの例には、ズームレンズおよび単焦点レンズが含まれる。レンズ成分の例には、単レンズ、空気間隔を介することなく二以上の単レンズが接合してなる接合レンズ、および、空気間隔を介することなく一枚の単レンズと樹脂とが一体化してなる複合レンズ、が含まれる。
【0019】
ここで、本発明の実施形態に係る撮像装置およびレンズユニットを、図を示して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る撮像装置の光学的な構成を模式的に示す図である。図1は、撮像装置の一例としてのミラーレス一眼カメラを示している。
【0020】
図1に示されるように、ミラーレス一眼カメラ50は、本体51および本体51に着脱可能なレンズユニット1を有している。レンズユニット1は、本体51に着脱自在なレンズ鏡筒2と、レンズ鏡筒2に収容されている複数のレンズLと、像振れ補正装置10とを有する。レンズLおよび像振れ補正装置10は、光軸OA上に配置されている。また、本体51は、撮像素子としてCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ52を有している。CMOSイメージセンサ52は、撮像素子の一例であり、本体51中において、光軸OAが中心軸となる位置に配置されている。なお、撮像素子には、CMOSイメージセンサ以外に、CCD(Charge Coupled Device)センサであってもよい。
【0021】
複数のレンズLの一部は、光軸OAに沿って移動可能なレンズ群を構成してもよい。たとえば、レンズユニット1における像振れ補正装置10よりも像側(CMOSイメージセンサ52側)のレンズLは、光軸OAに沿って移動可能なレンズ群を構成してもよい。
【0022】
[像振れ補正装置の構成]
図2は、本発明の実施形態1に係る像振れ補正装置10の構成を模式的に示す図である。図3は、本発明の実施形態1に係る像振れ補正装置10の構成を模式的に示す分解斜視図である。図4は、本発明の実施形態1に係る像振れ補正装置10を図2のA-A線で切断した断面を模式的に示す図である。図2に示されるように、像振れ補正装置10は、固定部11、可動部12、および外れ止め部13を有する。
【0023】
固定部11は、レンズ鏡筒2に固定されている。固定部11は、光軸OAに沿って平面視したときの形状(以下、「平面形状」とも言う)が略円環形状である板状の部材である。より詳しくは、固定部11の平面形状は、円環形状における外周部の一部が欠けた形状である。
【0024】
固定部11は、固定部11の平面形状における一方の主面11A側に、当該一方の主面の外周縁部から光軸OAに沿って突出している凸部111を有する。凸部111は、三つある。それぞれの凸部111は、固定部11の平面形状における周方向の等間隔の位置に配置されている。
【0025】
また、図3に示されるように、固定部11は、三つのヨーク112を有する。ヨーク112は、鉄などの磁性体で構成されている板状の部材であり、固定部11に対して固定されている。ヨーク112は、固定部11の平面形状における他方の主面11B側に配置されており、それぞれのヨーク112は、固定部11の平面形状における周方向の等間隔の位置に配置されている。また、図4に示されるように、固定部11は、固定部11を光軸に沿う方向において貫通する三つの孔部114を有している。それぞれの孔部114は、固定部11の平面形状において前述の凸部111の近傍の位置に配置されており、平面形状の周方向における等間隔の位置に形成されている。孔部114には、後述するネジ113が挿通される。さらに、固定部11は、三つのコイル115を有する。それぞれのコイル115は、固定部11の平面形状における周方向の等間隔の位置に配置されており、固定部11を挟んでヨーク112に対向している。
【0026】
可動部12は、略円環形状の平面形状を有する部材である。より詳しくは、可動部12は、平面形状が略円環形状である板状の円環部と、円環部の外周縁から平面方向に沿って外側に延在する三か所の突出部121と、円環部の中央の開口部を囲み、円環部における一方の主面12Aから光軸に沿って延在している筒部とを有する。円環部、突出部121および筒部は、樹脂で一体的に成形されている。可動部12の平面形状における中心から突出部121の突出端縁までの距離は、固定部11の略円環形状の半径よりも若干短い。
筒部の突端縁部にはレンズ14が固定されており、このようにして可動部12は、レンズ14を保持している。
【0027】
三か所の突出部121は、可動部12と一体的に成形された板形状である。可動部12の平面形状の周方向において等間隔に配置されている。突出部121における他方の主面12B側には、磁石122が配置されている。よって、三つの磁石122も、可動部12の平面形状の周方向において等間隔に配置されている。
【0028】
また、突出部121は、平面形状が外側に凸である円弧状の突出端縁を有しており、当該突出端縁の一部が切り欠かれた切り欠き部123を有している。したがって、切り欠き部123も、可動部12に三つ形成されており、それぞれの切り欠き部123は、可動部12の平面形状の周方向において等間隔に配置されている。切り欠き部123の平面形状は、略U字形である。
【0029】
可動部12は、その他方の主面12B側に三つの凹部を有しており、当該三つの凹部は、可動部12の平面形状の周方向において等間隔に配置されている。いずれの凹部にも1つの転動体15が回転可能に収容されている。転動体15は、球状の部材であり、当該凹部の深さよりもわずかに大きな直径を有しており、凹部に収容された転動体15の球曲面の一部が凹部よりもわずかに突出する。
【0030】
外れ止め部13は、固定部11に対して固定されている。図5は、本発明の実施形態1における外れ止め部13の構成を模式的に示す斜視図である。図5に示されるように、外れ止め部13は、軸部131と、軸部131の一端から軸部131の軸方向に直交する方向に沿って延在するフランジ部132とを有する。
【0031】
軸部131は、円筒体である。円筒体の他端部の内周面には、ネジ113に螺合する雌ネジが形成されている。また、軸部131は、その他端部が固定部11の前述の(ネジ113が挿通可能な)孔部114に内嵌する外径を有している。さらに、軸部131は、可動部12の突出部121に形成されている切り欠き部123に非接触で挿通され得る外径を有している。
【0032】
フランジ部132は、平面形状が円環形状の板状部材である。フランジ部132の平面形状は、可動部12の切り欠き部123よりも大きな外径を有している。また、フランジ部132は、その外周部の一部が切り欠かれている切り欠き部1321を有している。切り欠き部1321の平面形状は、略U字形であり、固定部11が有する凸部111が嵌合可能な寸法を有している。
【0033】
固定部11は、その一方の主面11A側で可動部12と対向している。このとき、固定部11の三つのヨーク112およびコイル115と可動部12の三つの磁石122とは、それぞれが対向しており、ヨーク112は磁石122に引き付けられる。なお、ヨーク112および磁石122の位置は、それぞれ、可動部12のレンズ14がレンズユニット1の光軸OA上の所望の位置にあるときに最も引き合うように調整されている。
【0034】
外れ止め部13は、可動部12における一方の主面12A側から切り欠き部123を介して固定部11に向けて進出する。外れ止め部13の軸部131は、可動部12の切り欠き部123に挿通され、軸部131は、その他端部において固定部11の前述の孔部114に内嵌する。さらに、孔部114には、固定部11の他方の主面11B側からネジ113が挿入され、ネジ113は、軸部131の内周面の他端部に形成された雌ネジと螺合する。こうして、外れ止め部13は、固定部11に固定される。
【0035】
外れ止め部13について、軸部131は、光軸と交差する方向において、隙間を有して可動部12の切り欠き部123に挿通されている。また、外れ止め部13は、フランジ部132が光軸に沿う方向において可動部12の一方の主面12Bに対して若干の隙間を有する状態で固定部11に対して固定される。また、フランジ部132は、可動部12の周方向における三か所で可動部12と対向している。このように、可動部12の固定部11とは反対側の面の周方向における一部のみが外れ止め部13と対向する。
【0036】
また、外れ止め部13は、フランジ部132の切り欠き部1321が固定部11の凸部111に嵌合した状態で固定部11に固定される。このように、固定部11の凸部111は、外れ止め部13の切り欠き部1321に挿入される。
【0037】
外れ止め部13は、光軸に沿う方向において、光軸と交差する方向における三か所で、可動部12を介して固定部11に固定されている。軸部131は、光軸と交差する方向における三か所で、光軸と交差する方向において、可動部12の切り欠き部123に対して隙間を有しており、フランジ部132は、光軸に沿う方向において、可動部12に対してわずかな隙間を有している。
【0038】
したがって、可動部12は、固定部11に対して、光軸と交差する方向において、切り欠き部123と軸部131との隙間の分だけ移動することが可能である。
【0039】
また、可動部12は、固定部11に対して、光軸に沿う方向において、固定部11から離れたときにフランジ部132に当接する。このように、可動部12は、固定部11に対して、光軸に沿う方向において、フランジ部132との隙間の分だけ離脱可能である。
【0040】
また、可動部12は、他方の主面12B側において、転動体15を介して固定部11と接触している。よって、可動部12は、固定部11に対して、光軸と交差する方向において、円滑に移動可能である。
【0041】
[作用効果]
像振れ補正装置10は、上記のような外れ止め部13を有する。すなわち、像振れ補正装置10は、軸部131と切り欠き部123との間の隙間を有することから、像振れ補正装置10に手振れなどによる振動が加わったときに、それに応じて可動部12が固定部11に対して光軸と交差する方向に移動することができる。また、可動部12は、磁石122とヨーク112の間にはたらく磁力によって、固定部11に引き付けられる。このため、可動部12は、固定部11に対して光軸に沿う方向の位置関係を一定に保った状態で、光軸に交差する方向に対してのみ所期の位置に移動可能に、固定部11に保持される。また、可動部12は、コイル115に通電することによって、固定部11に対して光軸に沿う方向の位置関係を一定に保った状態で、光軸に交差する方向に対してのみ所期の位置に移動する。このように、ヨーク112、コイル115および磁石122は、可動部12を、レンズの光軸と交差する方向へ固定部11に対して移動させる電磁アクチュエータを構成しており、可動部12を迅速かつ円滑に移動可能である。よって、像振れ補正装置10は、たとえば手振れによる10Hz程度の外部からの振動を受けたときに光学系全体の光軸を調整し、撮像時のボケやブレを低減できる。
【0042】
また、可動部12の固定部11とは反対側の面の周方向における一部のみが外れ止め部13と対向する。このように可動部12の光軸に沿って固定部11から離脱する方向への移動は、外れ止め部13のフランジ部132によって規制される。よって、像振れ補正装置10では、可動部12がレンズ14の光軸に沿う方向に固定部11から離脱することが防止される。
【0043】
本実施形態では、上記のような像振れ補正装置における可動部の外れ止めが、周方向の三か所に配置された外れ止め部13という簡素な構成によって実現される。このため、像振れ補正装置をさらに小型化することが可能となる。また、レンズユニットにおける像振れ補正装置の周辺の空間のさらなる有効活用が可能となる。この点について、図面を参照して説明する。
【0044】
図6および図7は、蓋部材101を本実施形態の像振れ補正装置に適用した状態を示す図である。図6は断面図であり、図7は平面図である。図6および図7に示されるように、像振れ補正装置100は、蓋部材101を従来の用途に適した位置に有する以外は、前述の像振れ補正装置10と同じに構成されている。蓋部材101は、固定部11の反対側から可動部12の周方向全域にわたって可動部12を覆っている。
【0045】
蓋部材101は、可動部12の全周を覆うため、外れ止め部13に比べて明らかに大型である。加えて、蓋部材101を固定部11に十分に固定するための構成も大型になることがある。このため、可動部12および固定部11の周辺の空間には、蓋部材101の設置のために塞がれる領域が生じる。
【0046】
たとえば、蓋部材101は可動部12の全周を覆うため、可動部12の周方向の一部のみに配置される外れ止め部13の組み立て精度における許容範囲に比べて、蓋部材101の組み立て精度における許容範囲はより大きく設定される。そのため、図6に示されるように、蓋部材101は、通常、外れ止め部13よりも、可動部12からより離れた位置に配置される。したがって、本実施形態の像振れ補正装置10の厚みは、図5に示す像振れ補正装置100に比べて、光軸に沿う方向における蓋部材101の一方の主面と外れ止め部13のフランジ部132における一方の主面との距離、すなわちDだけ薄くすることができる。
【0047】
また、図7に示されるように、蓋部材101は、可動部12および固定部11の周縁部を全周にわたって覆う。一方、図2に示されるように、本実施形態の像振れ補正装置10の周囲には、固定部11および可動部12のいずれもが存在しない領域B、および固定部11は存在するが可動部12が存在しない領域B、が形成される。したがって、レンズユニットの構成をこれらの領域に配置し、あるいは進入可能に構成することが可能になる。たとえば、像振れ補正装置10は、領域Bが広く、かつ厚みも薄いことにより、
・レンズ14と、レンズ14に隣接して配置された他のレンズがズーム動作でより近接する光学系を採用すること、
・レンズ14に隣接した部材をズーム動作で駆動すること、および、
・レンズ14の周辺に別のレンズ群の部品を配置すること、
が可能である。このように、像振れ補正装置10は、蓋部材101を有する従来の像振れ補正装置に比べて、レンズユニットの光学特性のさらなる向上、あるいはレンズユニットのさらなる小型化を可能にする。
【0048】
さらに、外れ止め部13は、フランジ部132に切り欠き部1321を有する。このため、固定部11に外れ止め部13を固定する際に、固定部11の凸部111を切り欠き部1321に嵌合させることにより、外れ止め部13の固定時における位置合わせを容易にし、またネジ止めする際の供回りを抑制することが可能となる。
【0049】
[実施形態1のまとめ]
本実施形態の像振れ補正装置(10)は、固定部(11)と、レンズ(14)を保持するとともに光軸と交差する方向へ固定部に対して移動可能な可動部(12)と、固定部に固定され、可動部が光軸に沿う方向に固定部から離脱することを規制する外れ止め部(13)と、を有する像振れ補正装置であって、可動部の固定部とは反対側の面の周方向における一部のみが外れ止め部と対向する。本実施形態によれば、簡素な構成で可動部が固定部から離脱することを防止可能な像振れ補正装置を実現することができる。
【0050】
本実施形態では、外れ止め部は、光軸に沿う方向において固定部から可動部側へ延在する軸部(131)と、軸部の先端から光軸と交差する方向に沿って延在するフランジ部(132)と、を有する。この構成は、可動部の固定部からの離脱を簡易な構成で防止する観点から、より効果的である。
【0051】
本実施形態では、フランジ部は、その外周部の一部が切り欠かれている切り欠き部(1321)を有し、固定部は、切り欠き部に挿入される凸部(111)を有する。この構成は、像振れ補正装置の組み立て効率を向上させる観点からより効果的である。
【0052】
本実施形態では、像振れ補正装置(10)は、可動部を、レンズの光軸と交差する方向へ固定部に対して移動させる電磁アクチュエータ(ヨーク112、コイル115および磁石122)をさらに有する。この構成は、可動部12を固定部11に対して、光軸と交差する方向へ迅速かつ円滑に移動させる観点からより効果的である。
【0053】
本実施形態のレンズユニット(1)および撮像装置(ミラーレス一眼カメラ50)は、上記の像振れ補正装置を有する。本実施形態によれば、像振れ補正装置に起因する設計上の制約を軽減可能なレンズユニットおよび撮像装置を実現することができる。
【0054】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0055】
[像振れ補正装置の構成]
図8は、本発明の一実施形態に係る像振れ補正装置20の構成を模式的に示す断面図である。図8に示すように、像振れ補正装置20は、さらに粘弾性接着部26を有する以外は、前述の像振れ補正装置10と実質的に同じ構造である。
【0056】
粘弾性接着部26は、粘弾性と接着性とを有する部材である。粘弾性接着部26は、可動部12とフランジ部132との間に介在し、可動部12とフランジ部132とに当接している。
【0057】
粘弾性接着部26を構成する材料は、粘弾性と接着性とを有していればよい。粘弾性接着部26を構成する材料の例には、紫外線硬化性ゲル、シリコーンゲル、ブチルゴムおよびエラストマーが含まれる。また、粘弾性接着部26を構成する材料は、市販品であってもよい。市販の当該材料の例には、ハネナイトシリーズ(内外ゴム株式会社、「ハネナイト」は同社の登録商標)、ミヤフリークシリーズ(宮坂ゴム株式会社製)、TB3168(株式会社スリーボンド製)およびαGELシリーズ(株式会社タイカ製、「αGEL」は同社の登録商標)が含まれる。粘弾性接着部26の形状は、フランジ部132と可動部12との間に介在したときに、十分な接着性と、可動部12の移動を十分に許容する粘弾性とを発現できる形状であればよい。粘弾性接着部26の形状の例にはボール形状、ワッシャー形状およびスリーブ形状が含まれる。
【0058】
粘弾性接着部26が有する粘弾性は、光学系全体の光軸の振動の減衰に関連する構成および特性に応じて適宜に調整することが可能である。たとえば、粘弾性接着部26が有する粘弾性は、粘弾性接着部26が介在すべき可動部12とフランジ部132との隙間の大きさ、可動部12の重量、外部衝撃の振動周波数に関連する特性としての像振れ補正装置20およびレンズユニットの重量、あるいは、手振れの許容される強度に関連する特性としてのレンズユニットの焦点範囲、などに応じて当該粘弾性を決めてよい。
【0059】
より具体的には、粘弾性接着部26の粘弾性は、手振れによる像振れに適切に対応するように、10Hz以下程度の振動の周波数には実質的に影響せず、100Hz以上の撮像に際して外乱となる振動の周波数を減衰させるように調整してよい。また、粘弾性接着部26の粘弾性は、粘弾性接着部の寸法に応じて適宜に調整してもよい。たとえば、粘弾性接着部26の粘弾性は、粘弾性接着部26が前述したような形状を有する場合は、そのような形状における粘弾性接着部26の寸法に応じて適宜に調整され得る。
【0060】
[作用効果]
本実施形態は、簡素な構成で可動部12が固定部11から離脱することを防止可能な点において、上述した実施形態1と同様の作用効果を奏する。すなわち、像振れ補正装置20に手振れなどによる外部衝撃が加わると、実施形態1について上述したようにして、可動部12は固定部11に対して、光軸に沿う方向または光軸と交差する方向に移動するが、光軸に沿う方向における可動部12の固定部11からの離脱は外れ止め部13によって規制される。
【0061】
本実施形態では、外れ止め部13と可動部12との間に粘弾性接着部26をさらに有する、このため、本実施形態では、外部衝撃による可動部12の上記の移動および離脱は、粘弾性接着部26が有する粘弾性および接着性により、減衰される。
【0062】
一般に、カメラにおいて、特に一眼タイプのレンズ交換式カメラにおいては、シャッター動作時の振動が外乱となり、像振れ補正装置が予期せぬ動作をすることがある。従来の像振れ補正装置では、手振れ以外の振動にも反応し、撮像に影響を及ぼすことがある。このため、手振れのみを補正することが可能な像振れ補正装置が望まれている。このような手振れの補正に適用される像振れ補正装置には、固定部と可動部との隙間にゲルを封入するという簡素な構成を含む手振れ補正機構が検討されている。このような簡素な手振れ補正機構には、固定部に紫外線硬化性ゲルを封入する穴に注入されたゲル(ゲルだまり)に、可動部から延伸した棒状部材を挿入し、ゲルと棒状部材との間に生じる粘性抵抗を利用する構成が知られている。しかしながら、この構成は、以下の問題を有している。
・ゲルだまりを設ける必要があるため像振れ補正装置が大型化する。
・ゲルを一度硬化させてしまうと、修理の際、分解、清掃がほぼ不可能である。
・紫外線照射用の窓を別途設ける必要があり、像振れ補正装置の設計に制約が生じる。
【0063】
これに対して、本実施形態に係る像振れ補正装置20は、上記のような外れ止め部13と粘弾性接着部26とを有する。粘弾性接着部26は、可動部12とフランジ部132との間に介在し、粘弾性と接着性とを発現する。このため、可動部12の固定部11に対する、レンズ14の光軸に沿う方向への移動および交差する方向への移動は、粘弾性接着部26によって共に減衰される。したがって、以下のような効果を奏する。
・可動部12とフランジ部132との間の隙間を利用するため、専用のゲルだまりを設ける必要がない。
・組み立て時においては、可動部12とフランジ部132との隙間にゲルを塗布または配置するだけであるため、ゲルを一度硬化させても修理の際、分解、清掃が可能である。
・ゲルに紫外線照射するための窓を別途設ける必要がない。
【0064】
以上の説明から明らかなように、本実施形態では、像振れ補正装置(20)は、可動部(12)とフランジ部(132)との間に介在し、粘弾性を有する粘弾性接着部(26)をさらに有する。本実施形態は、外部衝撃による像振れ補正装置の振動をより減衰させる観点から、より効果的である。
【0065】
〔変形例〕
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
たとえば、実施形態2において、粘弾性接着部26が適度な粘弾性および接着性を有し、可動部12を固定部11に対する所期の位置へ戻す復元性を十分に発現可能であれば、粘弾性接着部26は、本発明の像振れ補正装置において、可動部12の光軸に対する位置を復元させる機能も発現し得る。本発明の実施形態では、可動部12の光軸に対する位置への復元に磁石122の磁力を利用しているが、粘弾性接着部26が上記の復元性を有する場合には、本発明の実施形態における像振れ補正装置は、ヨーク112を有していなくともよい。この場合、粘弾性接着部26は、光軸に沿う方向における復元性に富み、光軸に直交する方向への復元性が小さいことが、可動部の動作における不要な負荷の増加を抑制する観点から好ましい。このような復元性を発現させるためには、光軸に沿う方向において大きな接触面積を有する粘弾性接着部が好ましく、例えばワッシャー形状の粘弾性接着部が好ましい。
【符号の説明】
【0067】
1 レンズユニット
2 レンズ鏡筒
10、20、100 像振れ補正装置
11 固定部
11A、12A 一方の主面
11B、12B 他方の主面
12 可動部
13 外れ止め部
14、L レンズ
15 転動体
26 粘弾性接着部
50 ミラーレス一眼カメラ(撮像装置)
51 本体
52 CMOSイメージセンサ
101 蓋部材
111 凸部
112 ヨーク
113 ネジ
114 孔部
115 コイル
121 突出部
122 磁石
123、1321 切り欠き部
131 軸部
132 フランジ部
OA 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8