(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092500
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】電池温調装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6568 20140101AFI20220615BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20220615BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20220615BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20220615BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220615BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20220615BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/613
H01M2/10 S
B60K11/04 J
B60K11/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205335
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】大森 保
【テーマコード(参考)】
3D038
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC12
3D038AC17
3D038AC22
5H031AA09
5H031HH01
5H031HH06
5H031KK08
5H040AA28
5H040AA29
5H040AS06
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY08
5H040NN05
(57)【要約】
【課題】車両に搭載される電池パックが有する二次電池の温度を調整する電池温調装置において、車両に搭載されるヒータ以外の負荷に供給される電力が低減することを抑制する。
【解決手段】ヒータHと熱媒体との間で熱交換を行う蓄熱器3と、蓄熱器3と電池パック2とを互いに接続する経路4と、経路4の電池パック側開口部を開状態または閉状態に切り替える電池パック側切替部5と、経路4の蓄熱器側開口部を開状態または閉状態に切り替える蓄熱器側切替部6と、制御部7とを備えて電池温調装置1を構成し、制御部7は、二次電池Bの充電中、ヒータHを駆動させて熱媒体に蓄熱し、車両Veの稼働中、ヒータHを停止させるとともに、熱媒体と二次電池Bとの間で熱交換が行われることで二次電池Bが昇温するように、電池パック側開口部及び蓄熱器側開口部を開状態にさせる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電池パックが有する二次電池の温度を調整する電池温調装置であって、
前記二次電池から供給される電力により駆動するヒータを有し、前記ヒータと熱媒体との間で熱交換を行う蓄熱器と、
前記蓄熱器と前記電池パックとを互いに接続し、前記熱媒体が通る経路と、
前記経路の電池パック側開口部を開状態または閉状態に切り替える電池パック側切替部と、
前記経路の蓄熱器側開口部を開状態または閉状態に切り替える蓄熱器側切替部と、
前記ヒータ、前記電池パック側切替部、及び前記蓄熱器側切替部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記二次電池の充電中、前記ヒータを駆動させて前記熱媒体に蓄熱し、前記車両の稼働中、前記ヒータを停止させるとともに、前記熱媒体と前記二次電池との間で熱交換が行われることで前記二次電池が昇温するように、前記電池パック側開口部及び前記蓄熱器側開口部を開状態にさせる
ことを特徴とする電池温調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池温調装置であって、
前記経路に接続され、外気と前記熱媒体との間で熱交換を行うラジエータと、
前記経路のラジエータ側開口部を開状態または閉状態に切り替えるラジエータ側切替部と、
を備え、
前記制御部は、前記蓄熱器及び前記二次電池の温度に基づき、前記ラジエータ側開口部を開状態または閉状態に切り替える
ことを特徴とする電池温調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電池温調装置であって、
前記制御部は、
前記車両の稼働中、前記蓄熱器の温度が温度閾値より大きい場合で、かつ、前記二次電池の温度が低温側閾値から前記低温側閾値より大きい高温側閾値までの範囲内にある場合、前記電池パック側開口部、前記蓄熱器側開口部、及び前記ラジエータ側開口部を閉状態にさせて、前記二次電池を保温させ、
前記車両の稼働中、前記蓄熱器の温度が前記温度閾値より大きい場合で、かつ、前記二次電池の温度が前記低温側閾値より小さい場合、前記電池パック側開口部及び前記蓄熱器側開口部を開状態にさせるとともに前記ラジエータ側開口部を閉状態にさせて、前記蓄熱器から前記電池パックに移動する前記熱媒体により前記二次電池を昇温させ、
前記車両の稼働中、前記蓄熱器の温度が前記温度閾値より大きい場合で、かつ、前記二次電池の温度が前記高温側閾値より大きい場合、前記電池パック側開口部及び前記ラジエータ側開口部を開状態にさせるとともに前記蓄熱器側開口部を閉状態にさせて、前記ラジエータから前記電池パックに移動する前記熱媒体により前記二次電池を冷却させる
ことを特徴とする電池温調装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の電池温調装置であって、
前記制御部は、
前記車両の稼働中、前記蓄熱器の温度が温度閾値以下である場合で、かつ、前記二次電池の温度が前記低温側閾値より大きい高温側閾値より大きい場合、前記電池パック側開口部及び前記蓄熱器側開口部を開状態にさせるとともに前記ラジエータ側開口部を閉状態にさせて、前記蓄熱器から前記電池パックに移動する前記熱媒体により前記二次電池を冷却させ、
前記車両の稼働中、前記蓄熱器の温度が前記温度閾値以下である場合で、かつ、前記二次電池の温度が前記高温側閾値以下の場合、前記蓄熱器側開口部及び前記ラジエータ側開口部を開状態にさせるとともに前記電池パック側開口部を閉状態にさせて、前記ラジエータから前記蓄熱器に移動する前記熱媒体により前記蓄熱器を冷却させる
ことを特徴とする電池温調装置。
【請求項5】
請求項2~4の何れか1項に記載の電池温調装置であって、
前記制御部は、前記二次電池の充電中、前記蓄熱器の温度が温度閾値より大きい場合、前記電池パック側開口部及び前記ラジエータ側開口部を開状態にさせるとともに前記蓄熱器側開口部を閉状態にさせて、前記ラジエータから前記電池パックに移動する前記熱媒体により前記二次電池を冷却させる
ことを特徴とする電池温調装置。
【請求項6】
請求項2~4の何れか1項に記載の電池温調装置であって、
前記制御部は、前記二次電池の充電中、前記蓄熱器の温度が温度閾値以下である場合、前記電池パック側開口部及び前記蓄熱器側開口部を開状態にさせるとともに前記ラジエータ側開口部を閉状態にさせて、前記蓄熱器から前記電池パックに移動する前記熱媒体により前記二次電池を冷却または昇温させる
ことを特徴とする電池温調装置。
【請求項7】
請求項2~4の何れか1項に記載の電池温調装置であって、
前記制御部は、
前記蓄熱器の温度が駆動停止閾値以下である場合、前記ヒータを駆動させ、
前記蓄熱器の温度が前記駆動停止閾値より大きい場合、前記ヒータを停止させ、
前記車両の稼働率が稼働率閾値より小さい場合、前記駆動停止閾値を第1の所定値分大きくし、
前記稼働率が前記稼働率閾値以上である場合、前記駆動停止閾値を第2の所定値分小さくする
ことを特徴とする電池温調装置。
【請求項8】
請求項2~4の何れか1項に記載の電池温調装置であって、
前記制御部は、前記車両の稼働中、前記二次電池の充電量が充電量閾値以下になった場合、前記電池パック側開口部及び前記ラジエータ側開口部を開状態にさせるとともに前記蓄熱器側開口部を閉状態にさせて、前記ラジエータから前記電池パックに移動する前記熱媒体により前記二次電池を冷却させる
ことを特徴とする電池温調装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の電池温調装置であって、
前記電池パック側切替部と前記蓄熱器側切替部との間に設けられ、前記熱媒体の流量を制御する流量制御弁を備える
ことを特徴とする電池温調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される電池パックが有する二次電池の温度を調整する電池温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池温調装置として、二次電池からヒータに供給される電力によりヒータを駆動し、ヒータが発熱することによって二次電池を昇温させるものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
しかしながら、上記電池温調装置では、ヒータが駆動することによって二次電池の電力が消費されるため、車両に搭載されるヒータ以外の負荷に供給される電力が低減するという懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一側面に係る目的は、車両に搭載される電池パックが有する二次電池の温度を調整する電池温調装置において、車両に搭載されるヒータ以外の負荷に供給される電力が低減することを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一つの形態である電池温調装置は、車両に搭載される電池パックが有する二次電池の温度を調整する電池温調装置であって、前記二次電池から供給される電力により駆動するヒータを有し、前記ヒータと熱媒体との間で熱交換を行う蓄熱器と、前記蓄熱器と前記電池パックとを互いに接続し、前記熱媒体が通る経路と、前記経路の電池パック側開口部を開状態または閉状態に切り替える電池パック側切替部と、前記経路の蓄熱器側開口部を開状態または閉状態に切り替える蓄熱器側切替部と、前記ヒータ、前記電池パック側切替部、及び前記蓄熱器側切替部の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記二次電池の充電中、前記ヒータを駆動させて前記熱媒体に蓄熱し、前記車両の稼働中、前記ヒータを停止させるとともに、前記熱媒体と前記二次電池との間で熱交換が行われることで前記二次電池が昇温するように、前記電池パック側開口部及び前記蓄熱器側開口部を開状態にさせる。
【0007】
これにより、車両の稼働中、二次電池を昇温させる際、二次電池から供給される電力がヒータにより消費されないため、車両に搭載されるヒータ以外の負荷に供給される電力が低減することを抑制することができる。
【0008】
また、上記電池温調装置は、前記経路に接続され、外気と前記熱媒体との間で熱交換を行うラジエータと、前記経路のラジエータ側開口部を開状態または閉状態に切り替えるラジエータ側切替部とを備え、前記制御部は、前記蓄熱器及び前記二次電池の温度に基づき、前記ラジエータ側開口部を開状態または閉状態に切り替えるように構成してもよい。
【0009】
これにより、外気により二次電池や蓄熱器の温度を調整することができるため、二次電池の消費電力を抑えることができ、車両に搭載されるヒータ以外の負荷に供給される電力が低減することをさらに抑制することができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記車両の稼働中、前記蓄熱器の温度が温度閾値より大きい場合で、かつ、前記二次電池の温度が低温側閾値から前記低温側閾値より大きい高温側閾値までの範囲内にある場合、前記電池パック側開口部、前記蓄熱器側開口部、及び前記ラジエータ側開口部を閉状態にさせて、前記二次電池を保温させ、前記車両の稼働中、前記蓄熱器の温度が前記温度閾値より大きい場合で、かつ、前記二次電池の温度が前記低温側閾値より小さい場合、前記電池パック側開口部及び前記蓄熱器側開口部を開状態にさせるとともに前記ラジエータ側開口部を閉状態にさせて、前記蓄熱器から前記電池パックに移動する前記熱媒体により前記二次電池を昇温させ、前記車両の稼働中、前記蓄熱器の温度が前記温度閾値より大きい場合で、かつ、前記二次電池の温度が前記高温側閾値より大きい場合、前記電池パック側開口部及び前記ラジエータ側開口部を開状態にさせるとともに前記蓄熱器側開口部を閉状態にさせて、前記ラジエータから前記電池パックに移動する前記熱媒体により前記二次電池を冷却させるように構成してもよい。
【0011】
これにより、車両の稼働中、蓄熱器やラジエータにより二次電池の温度を調整することができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記車両の稼働中、前記蓄熱器の温度が温度閾値以下である場合で、かつ、前記二次電池の温度が前記低温側閾値より大きい高温側閾値より大きい場合、前記電池パック側開口部及び前記蓄熱器側開口部を開状態にさせるとともに前記ラジエータ側開口部を閉状態にさせて、前記蓄熱器から前記電池パックに移動する前記熱媒体により前記二次電池を冷却させ、前記車両の稼働中、前記蓄熱器の温度が前記温度閾値以下である場合で、かつ、前記二次電池の温度が前記高温側閾値以下の場合、前記蓄熱器側開口部及び前記ラジエータ側開口部を開状態にさせるとともに前記電池パック側開口部を閉状態にさせて、前記ラジエータから前記蓄熱器に移動する前記熱媒体により前記蓄熱器を冷却させるように構成してもよい。
【0013】
これにより、車両の稼働中、蓄熱器やラジエータにより二次電池や蓄熱器の温度を調整することができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記二次電池の充電中、前記蓄熱器の温度が温度閾値より大きい場合、前記電池パック側開口部及び前記ラジエータ側開口部を開状態にさせるとともに前記蓄熱器側開口部を閉状態にさせて、前記ラジエータから前記電池パックに移動する前記熱媒体により前記二次電池を冷却させるように構成してもよい。
【0015】
これにより、二次電池の充電中、ラジエータにより二次電池の温度を調整することができる。
【0016】
また、前記制御部は、前記二次電池の充電中、前記蓄熱器の温度が温度閾値以下である場合、前記電池パック側開口部及び前記蓄熱器側開口部を開状態にさせるとともに前記ラジエータ側開口部を閉状態にさせて、前記蓄熱器から前記電池パックに移動する前記熱媒体により前記二次電池を冷却または昇温させるように構成してもよい。
【0017】
これにより、二次電池の充電中、蓄熱器により二次電池の温度を調整することができる。
【0018】
また、前記制御部は、前記蓄熱器の温度が駆動停止閾値以下である場合、前記ヒータを駆動させ、前記蓄熱器の温度が前記駆動停止閾値より大きい場合、前記ヒータを停止させ、前記車両の稼働率が稼働率閾値より小さい場合、前記駆動停止閾値を第1の所定値分大きくし、前記稼働率が前記稼働率閾値以上である場合、前記駆動停止閾値を第2の所定値分小さくするように構成してもよい。
【0019】
これにより、車両の稼働率が比較的低く二次電池の温度が比較的低くなるときに、ヒータが駆動する頻度を高くして蓄熱器の温度を上げることができるとともに、車両の稼働率が比較器高く二次電池の温度が比較的高くなるときに、ヒータが停止する頻度を低くして蓄熱器の温度を下げることができるため、二次電池を昇温するために必要な電力を最適化することができる。
【0020】
また、前記制御部は、前記車両の稼働中、前記二次電池の充電量が充電量閾値以下になった場合、前記電池パック側開口部及び前記ラジエータ側開口部を開状態にさせるとともに前記蓄熱器側開口部を閉状態にさせて、前記ラジエータから前記電池パックに移動する前記熱媒体により前記二次電池を冷却させるように構成してもよい。
【0021】
これにより、車両の稼働中、二次電池の次回の充電の準備のために二次電池を冷却することができる。
【0022】
また、上記電池温調装置は、前記電池パック側切替部と前記蓄熱器側切替部との間に設けられ、前記熱媒体の流量を制御する流量制御弁を備えるように構成してもよい。
【0023】
これにより、二次電池の温度を目標温度にするためにかかる時間の短縮化を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、車両に搭載される電池パックが有する二次電池の温度を調整する電池温調装置において、車両に搭載されるヒータ以外の負荷に供給される電力が低減することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態の電池温調装置の一例を示す図である。
【
図2】第1実施形態の制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】蓄熱器の温度とヒータの駆動状態との関係、二次電池の充電量とヒータに供給される電力との関係、及び二次電池の温度とヒータに供給される電力との関係の一例を示す図である。
【
図4】第2実施形態の電池温調装置の一例を示す図である。
【
図5】第2実施形態の制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態の電池温調装置の変形例を示す図である。
【
図7】第2実施形態の電池温調装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0027】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の電池温調装置の一例を示す図である。
【0028】
図1に示す電池温調装置1は、フォークリフトや電気自動車などの車両Veに搭載される電池パック2が有する二次電池Bの温度を調整する。なお、二次電池Bは、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池などの1つ以上の充放電可能な電池により構成される。
【0029】
また、電池温調装置1は、蓄熱器3と、経路4と、電池パック側切替部5と、蓄熱器側切替部6と、ファンF1と、制御部7とを備える。
【0030】
蓄熱器3は、二次電池Bから供給される電力により駆動するヒータHを有する。ヒータHは、熱媒体(不凍液や空気など)との間で熱交換を行う。すなわち、二次電池BからヒータHに電力が供給されてヒータHが駆動すると、ヒータHが発熱し、蓄熱器3内の熱媒体が蓄熱する。
【0031】
経路4は、配管などにより構成され、蓄熱器3と電池パック2とを互いに接続する。また、経路4には熱媒体が通る。
【0032】
電池パック側切替部5は、バルブなどにより構成され、経路4における電池パック2近傍の開口部(電池パック側開口部)を開状態または閉状態に切り替える。電池パック側開口部が開状態になると、経路4と電池パック2との間で熱媒体の移動が可能な状態になり、電池パック側開口部が閉状態になると、経路4と電池パック2との間で熱媒体の移動が不可能な状態になる。
【0033】
蓄熱器側切替部6は、バルブなどにより構成され、経路4における蓄熱器3近傍の開口部(蓄熱器側開口部)を開状態または閉状態に切り替える。蓄熱器側開口部が開状態になると、経路4と蓄熱器3との間で熱媒体が移動することができる状態になり、蓄熱器側開口部が閉状態になると、経路4と蓄熱器3との間で熱媒体が移動することができない状態になる。
【0034】
ファンF1は、蓄熱器3と電池パック2との間の経路4内に設けられ、経路4内の熱媒体を循環させる。
【0035】
制御部7は、マイクロコンピュータなどにより構成され、ヒータH、電池パック側切替部5、蓄熱器側切替部6、及びファンF1の動作を制御する。
【0036】
図2は、第1実施形態の制御部7の動作の一例を示すフローチャートである。
【0037】
まず、制御部7は、制御周期毎に、二次電池Bが充電中であるか否かを判断するとともに車両Veが稼働中であるか否かを判断する(ステップS101、S102)。例えば、制御部7は、二次電池Bの充電を制御する充電制御部から送られてくる、二次電池Bの充電を開始した旨を示す情報を受け取ってから二次電池Bの充電を終了した旨を示す情報を受け取るまでの期間、二次電池Bが充電中であると判断し、それ以外の期間、二次電池Bが充電中でないと判断する。また、制御部7は、車両Veの走行を制御する走行制御部から送られてくる、車両Veの稼働を開始した旨を示す情報を受け取ってから車両Veの稼働を終了した旨を示す情報を受け取るまでの期間、車両Veが稼働中であると判断し、それ以外の期間、車両Veが稼働中でないと判断する。なお、走行制御部は、ユーザなどのキーオン操作により車両Veの稼働を開始し、キーオフ操作により車両Veの稼働を終了する。
【0038】
次に、制御部7は、二次電池Bが充電中であると判断する場合(ステップS101:Yes)、ヒータHを駆動させるとともに、電池パック側開口部及び蓄熱器側開口部が閉状態になるように、電池パック側切替部5及び蓄熱器側切替部6の動作を制御するとともに、ファンF1を停止させる(ステップS103)。これにより、蓄熱器3を密閉状態にさせるとともにヒータHを発熱させることができるため、ヒータHが発生する熱を利用して蓄熱器3内の熱媒体を効率よく蓄熱させることができる。
【0039】
なお、制御部7は、二次電池Bの充電中、二次電池Bの充電に必要な電力と、ヒータHの駆動に必要な電力との合計電力が、車両Veの外部に設けられる不図示の充電器から電池パック2に供給されるように充電制御部に指示するように構成してもよい。これにより、車両Veの稼働中において、車両Veに搭載されるヒータH以外の負荷に供給される電力が低減することを抑制することができる。
【0040】
また、制御部7は、ステップS103において、
図3(a)に示すように、蓄熱器3の温度が駆動停止閾値以下である場合、ヒータHを駆動させ、蓄熱器3の温度が駆動停止閾値より大きい場合、ヒータHを停止させるように構成してもよい。なお、駆動停止閾値は、例えば、蓄熱器3の定格温度とする。
【0041】
または、制御部7は、ステップS103において、ヒータHを駆動させているとき、
図3(b)に示す二次電池Bの充電量(二次電池Bの電圧または充電率(二次電池Bの満充電容量に対する現在の充電容量の割合))とヒータHに供給する電力との関係を示す情報D1を参照し、二次電池Bの現在の充電量に対応するヒータHの供給電力を求めるように構成してもよい。なお、
図3(b)に示す情報D1では、二次電池Bの充電量が大きくなるほど、ヒータHに供給する電力が大きくなるものとする。また、ヒータHに供給される電力が大きくなるほど、ヒータHの温度が高くなるものとする。これにより、二次電池Bの充電量が大きいほど、ヒータHの温度を高くすることができる。なお、二次電池Bの充電量とヒータHの供給電力との関係は非線形でもよい。
【0042】
または、制御部7は、ステップS103において、ヒータHを駆動させているとき、
図3(c)に示す二次電池Bの温度とヒータHに供給する電力との関係を示す情報D2を参照し、二次電池Bの現在の温度に対応するヒータHの供給電力を求めるように構成してもよい。なお、
図3(c)に示す情報D2では、二次電池Bの温度が低くなるほど、ヒータHに供給する電力が大きくなるものとする。これにより、二次電池Bの温度が低くなるほど、ヒータHの温度を高くすることができる。
【0043】
または、制御部7は、ステップS103において、ヒータHを駆動させているとき、
図3(b)に示す情報D1及び
図3(c)に示す情報D2を参照し、二次電池Bの現在の充電量に対応するヒータHの供給電力、及び、二次電池Bの現在の温度に対応するヒータHの供給電力を求め、それら供給電力のうちの大きい方の供給電力をヒータHに供給する電力として採用するように構成してもよい。
【0044】
また、
図2に示すフローチャートにおいて、制御部7は、車両Veが稼働中であると判断する場合(ステップS102:Yes)、ヒータHを停止させるとともに、電池パック側開口部及び蓄熱器側開口部が開状態になるように電池パック側切替部5及び蓄熱器側切替部6の動作を制御するとともに、ファンF1を駆動させる(ステップS104)。これにより、二次電池Bの充電中において、蓄熱した熱媒体が蓄熱器3から電池パック2に移動し、熱媒体と二次電池Bとの間で熱交換が行われるため、二次電池Bを昇温させることができる。
【0045】
このように、第1実施形態の電池温調装置1によれば、二次電池Bの充電中、ヒータHを駆動させて熱媒体を蓄熱しておき、車両Veの稼働中、ヒータHを停止させるとともに、蓄熱した熱媒体を用いて二次電池Bを昇温させている。これにより、車両Veの稼働中、二次電池Bから供給される電力がヒータHにより消費されないため、車両Veに搭載されるヒータH以外の負荷に供給される電力が低減することを抑制することができる。
【0046】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態の電池温調装置の一例を示す図である。なお、
図4において、
図1に示す構成と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
図4に示す電池温調装置1は、蓄熱器3と、経路4と、電池パック側切替部5と、蓄熱器側切替部6と、ファンF1と、制御部7と、ラジエータ8と、ラジエータ側切替部9と、ファンF2と、ファンF3とを備える。
【0048】
ラジエータ8は、冷却装置であり、経路4に接続される。また、ラジエータ8において、外気と熱媒体との間で熱交換が行われる。
【0049】
ラジエータ側切替部9は、バルブなどにより構成され、経路4におけるラジエータ8近傍の開口部(ラジエータ側開口部)を開状態または閉状態に切り替える。ラジエータ側開口部が開状態になると、経路4とラジエータ8との間で熱媒体が移動することができる状態になり、ラジエータ側開口部が閉状態になると、経路4とラジエータ8との間で熱媒体が移動することができない状態になる。
【0050】
ファンF2は、蓄熱器3とラジエータ8との間の経路4内に設けられ、経路4内の熱媒体を循環させる。
【0051】
ファンF3は、ラジエータ8に設けられ、ラジエータ8内を通る外気の流量を増加させる。
【0052】
制御部7は、蓄熱器3及び二次電池Bの温度に基づいて、ヒータH、電池パック側切替部5、蓄熱器側切替部6、ラジエータ側切替部9、及びファンF1~F3の動作を制御する。なお、蓄熱器3及び二次電池Bの温度はサーミスタなどの不図示の温度センサにより計測される。
【0053】
図5は、第2実施形態の制御部7の動作の一例を示すフローチャートである。
【0054】
まず、制御部7は、制御周期毎に、二次電池Bが充電中であるか否かを判断するとともに車両Veが稼働中であるか否かを判断する(ステップS201、S202)。
【0055】
次に、制御部7は、二次電池Bが充電中であると判断する場合で(ステップS201:Yes)、かつ、蓄熱器3の温度が温度閾値より大きい場合(ステップS203:Yes)、電池パック側開口部及びラジエータ側開口部が開状態になるとともに蓄熱器側開口部が閉状態になるように、電池パック側切替部5、蓄熱器側切替部6、及びラジエータ側切替部9の動作を制御するとともに、ファンF1~F3を駆動させる(ステップS204)。これにより、二次電池Bの充電中、外気と熱交換された熱媒体により二次電池Bを冷却することができる。なお、温度閾値は、二次電池Bの定格温度に基づいて設定されてもよい。
【0056】
また、制御部7は、ステップS204において、
図3(a)に示すように、蓄熱器3の温度が駆動停止閾値以下である場合、ヒータHを駆動させ、蓄熱器3の温度が駆動停止閾値より大きい場合、ヒータHを停止させるように構成してもよい。
【0057】
または、制御部7は、ステップS204において、ヒータHを駆動させているとき、
図3(b)に示す情報D1を参照し、二次電池Bの現在の充電量に対応するヒータHの供給電力を求めるように構成してもよい。
【0058】
または、制御部7は、ステップS204において、ヒータHを駆動させているとき、
図3(c)に示す情報D2を参照し、二次電池Bの現在の温度に対応するヒータHの供給電力を求めるように構成してもよい。
【0059】
または、制御部7は、ステップS204において、ヒータHを駆動させているとき、
図3(b)に示す情報D1及び
図3(c)に示す情報D2を参照し、二次電池Bの現在の充電量に対応するヒータHの供給電力、及び、二次電池Bの現在の温度に対応するヒータHの供給電力を求め、それら供給電力のうちの大きい方の供給電力をヒータHに供給する電力として採用するように構成してもよい。
【0060】
また、
図5に示すフローチャートにおいて、制御部7は、二次電池Bが充電中であると判断する場合で(ステップS201:Yes)、かつ、蓄熱器3の温度が温度閾値以下である場合(ステップS203:No)、蓄熱器側開口部及び電池パック側開口部が開状態になるとともにラジエータ側開口部が閉状態になるように、電池パック側切替部5、蓄熱器側切替部6、及びラジエータ側切替部9の動作を制御するとともに、ファンF1のみを駆動させる(ステップS205)。これにより、二次電池Bの充電中、ヒータHが停止している場合、蓄熱器3と熱交換された熱媒体により二次電池Bを冷却することができる。また、二次電池Bの充電中、ヒータHが駆動している場合、蓄熱器3と熱交換された熱媒体により二次電池Bを昇温することができる。
【0061】
また、制御部7は、車両Veが稼働中であると判断する場合で(ステップS202:Yes)、かつ、蓄熱器3の温度が温度閾値より大きい場合で(ステップS206:Yes)、かつ、二次電池Bの温度が低温側閾値から高温側閾値までの範囲内にある場合(ステップS207:No、ステップS208:No)、ヒータHを停止させるとともに、電池パック側開口部、蓄熱器側開口部、及びラジエータ側開口部が閉状態になるように、電池パック側切替部5、蓄熱器側切替部6、及びラジエータ側切替部9の動作を制御するとともに、ファンF1~F3を停止させる(ステップS209)。なお、高温側閾値は、二次電池Bの定格温度の上限値としてもよい。また、低温側閾値は、二次電池Bの定格温度の下限値としてもよい。これにより、二次電池Bを適温(定格温度の下限値から上限値までの範囲)に保つことができるため、二次電池Bの劣化を抑えることができる。
【0062】
また、制御部7は、車両Veが稼働中であると判断する場合で(ステップS202:Yes)、かつ、蓄熱器3の温度が温度閾値より大きい場合で(ステップS206:Yes)、かつ、二次電池Bの温度が低温側閾値より小さい場合(ステップS207:Yes)、ヒータHを停止させるとともに、蓄熱器側開口部及び電池パック側開口部が開状態になるとともにラジエータ側開口部が閉状態になるように、電池パック側切替部5、蓄熱器側切替部6、及びラジエータ側切替部9の動作を制御するとともに、ファンF1のみを駆動させる(ステップS205)。これにより、車両Veの稼働中、蓄熱器3と熱交換された熱媒体により二次電池Bを昇温させることができる。
【0063】
また、制御部7は、車両Veが稼働中であると判断する場合で(ステップS202:Yes)、かつ、蓄熱器3の温度が温度閾値より大きい場合で(ステップS206:Yes)、かつ、二次電池Bの温度が高温側閾値より大きい場合(ステップS207:No、ステップS208:Yes)、ヒータHを停止させるとともに、電池パック側開口部及びラジエータ側開口部が開状態になるとともに蓄熱器側開口部が閉状態になるように、電池パック側切替部5、蓄熱器側切替部6、及びラジエータ側切替部9の動作を制御するともに、ファンF1~F3を駆動させる(ステップS210)。これにより、車両Veの稼働中、外気と熱交換された熱媒体により二次電池Bを冷却することができる。
【0064】
また、制御部7は、車両Veが稼働中であると判断する場合で(ステップS202:Yes)、かつ、蓄熱器3の温度が温度閾値以下である場合で(ステップS206:No)、かつ、二次電池Bの温度が高温側閾値より大きい場合(ステップS211:Yes)、ヒータHを停止させるとともに、蓄熱器側開口部及び電池パック側開口部が開状態になるとともにラジエータ側開口部が閉状態になるように、電池パック側切替部5、蓄熱器側切替部6、及びラジエータ側切替部9の動作を制御するとともに、ファンF1のみを駆動させる(ステップS205)。これにより、車両Veの稼働中、蓄熱器3と熱交換された熱媒体により二次電池Bを冷却することができる。
【0065】
また、制御部7は、車両Veが稼働中であると判断する場合で(ステップS202:Yes)、かつ、蓄熱器3の温度が温度閾値以下である場合で(ステップS206:No)、かつ、二次電池Bの温度が高温側閾値以下である場合(ステップS211:No)、ヒータHを停止させるとともに、蓄熱器側開口部及びラジエータ側開口部が開状態になるとともに電池パック側開口部が閉状態になるように、電池パック側切替部5、蓄熱器側切替部6、及びラジエータ側切替部9の動作を制御するとともに、ファンF2及びファン3のみを駆動させる(ステップS212)。これにより、車両Veの稼働中、外気と熱交換された熱媒体により蓄熱器3を冷却することができる。蓄熱器3の温度が温度閾値以下である状態は、車両Veの稼働が所定時間経過したと判断されるため、次の充電および蓄熱に向けて蓄熱器3を適温まで冷却し、次の充電および蓄電の準備をすることができる。
【0066】
なお、
図5に示すフローチャートにおいて、ステップS201、S203、S204、S211、S212を省略してもよい。
【0067】
また、
図5に示すフローチャートにおいて、ステップS201、S203、S204を省略してもよい。
【0068】
また、
図5に示すフローチャートにおいて、ステップS211、S212を省略してもよい。
【0069】
このように、第2実施形態の電池温調装置1では、第1実施形態の電池温調装置1と同様に、二次電池Bの充電中、ヒータHを駆動させて熱媒体を蓄熱しておき、車両Veの稼働中、ヒータHを停止させるとともに、蓄熱した熱媒体を用いて二次電池Bを昇温させている。これにより、車両Veの稼働中、二次電池Bから供給される電力がヒータHにより消費されないため、車両Veに搭載されるヒータH以外の負荷に供給される電力が低減することを抑制することができる。
【0070】
また、第2実施形態の電池温調装置1では、ラジエータ8を備えているため、外気により二次電池Bや蓄熱器3を冷却することができる。これにより、車両Veの稼働中、二次電池Bや蓄熱器3を冷却するために二次電池Bの電力が消費されないため、車両Veに搭載されるヒータH以外の負荷に供給される電力が低減することをさらに抑制することができる。
【0071】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0072】
<変形例1>
制御部7は、
図5に示すステップS203において、車両Veの稼働率が稼働率閾値より小さい場合、駆動停止閾値を第1の所定値分大きくし、車両Veの稼働率が稼働率閾値以上である場合、駆動停止閾値を第2の所定値分小さくするように構成してもよい。なお、車両Veの稼働率は、単位時間に対する車両Veの稼働時間の割合とする。また、稼働率閾値、第1の所定値、及び第2の所定値は、実験やシミュレーションなどにより設定される任意の値とする。
【0073】
これにより、車両Veの稼働率が比較的低く二次電池Bの温度が比較的低くなるときに、ヒータHが駆動する頻度を高くして蓄熱器3の温度を上げることができるとともに、車両Veの稼働率が比較器高く二次電池Bの温度が比較的高くなるときに、ヒータHが停止する頻度を低くして蓄熱器3の温度を下げることができるため、二次電池Bを昇温するために必要な電力を最適化することができる。
【0074】
<変形例2>
制御部7は、車両Veが稼働中である場合で(
図5に示すステップS202:Yes)、かつ、二次電池Bの充電量が充電量閾値以下になった場合、ヒータHを停止させるとともに、電池パック側開口部及びラジエータ側開口部が開状態になるとともに蓄熱器側開口部が閉状態になるように、電池パック側切替部5、蓄熱器側切替部6、及びラジエータ側切替部9の動作を制御するとともに、ファンF1~F3を駆動させるように構成してもよい。
【0075】
これにより、車両Veの稼働中、二次電池Bの次回の充電の準備のために二次電池Bを冷却することができる。
【0076】
<変形例3>
第1実施形態または第2実施形態の電池温調装置1は、
図6または
図7に示すように、熱媒体の流量を制御する流量制御部10を備えるように構成してもよい。なお、流量制御部10は、バルブなどにより構成され、電池パック側切替部5と蓄熱器側切替部6との間に設けられているものとする。また、制御部7は、ユーザなどの指示により流量制御部10の動作を制御するように構成してもよい。
【0077】
これにより、熱媒体の流量が増加するように流量制御部10の動作を制御することで、二次電池Bの温度を目標温度にするためにかかる時間の短縮化を図ることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 電池温調装置
2 電池パック
3 蓄熱器
4 経路
5 電池パック側切替部
6 蓄熱器側切替部
7 制御部
8 ラジエータ
9 ラジエータ側切替部
Ve 車両
B 二次電池
H ヒータ
F1~F3 ファン