(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092513
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】シザーケース及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
B26B 13/22 20060101AFI20220615BHJP
A45C 11/00 20060101ALI20220615BHJP
B26B 29/04 20060101ALI20220615BHJP
B25H 3/00 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
B26B13/22
A45C11/00 K
B26B29/04
B25H3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205364
(22)【出願日】2020-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】500316261
【氏名又は名称】株式会社美装モリタ商会
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】木村 好孝
【テーマコード(参考)】
3B045
3C012
3C061
3C065
【Fターム(参考)】
3B045CE06
3B045FC04
3C012BG01
3C061BC03
3C061BC05
3C065FA02
3C065GA06
(57)【要約】
【課題】効果的且つ簡単に消毒できるとともに、カットされた毛髪の付着を抑制することができるシザーケースを提供する。
【解決手段】本シザーケース1は、ハサミ20を含む理美容器具を収納するものであって、ケース本体2と、ケース本体内に設けられるシザーホルダ3と、を備える。そして、シザーホルダは、樹脂製のベース板15と、ベース板の表面に設けられる樹脂製の波状板16と、を備え、波状板は、複数並設される半筒部17と、隣り合う半筒部の側縁部同士を連結してベース板15の表面に接合される接合面部18と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハサミを含む理美容器具を収納するシザーケースであって、
ケース本体と、前記ケース本体内に設けられるシザーホルダと、を備え、
前記シザーホルダは、樹脂製のベース板と、前記ベース板の表面に設けられる樹脂製の波状板と、を備え、
前記波状板は、複数並設される半筒部と、隣り合う前記半筒部の側縁部同士を連結して前記ベース板の表面に接合される接合面部と、を備えることを特徴とするシザーケース。
【請求項2】
前記半筒部の上部開口は、前記ベース板の表面から離れるに連れて低位となるように前記半筒部の軸方向に対して傾斜している請求項1に記載のシザーケース。
【請求項3】
前記ベース板及び前記波状板のうちの少なくとも一方は、抗菌材を含んでいる請求項1又は2に記載のシザーケース。
【請求項4】
前記ケース本体は、シート状に展開可能に構成されており、
前記ケース本体は、人造皮革からなる表皮材と、前記表皮材の裏面を覆う樹脂製の裏カバー材と、を備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシザーケース。
【請求項5】
前記表皮材及び前記裏カバー材の各周縁部は、溶着により一体化されている請求項4に記載のシザーケース。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシザーケースの使用方法であって、
前記ケース本体の上部開口を介して空の前記シザーホルダに消毒液を噴霧した後に、消毒済みの前記ハサミを前記シザーホルダに保持することを特徴とするシザーケースの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シザーケース及びその使用方法に関し、更に詳しくは、ハサミを含む理美容器具を収納するシザーケース及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシザーケースとして、ケース本体と、ケース本体内に設けられるシザーホルダと、を備えるものが一般に知られている(例えば、特許文献1、2等を参照)。これら特許文献1、2には、例えば、
図16に示されるように、シザーホルダ103は、ベース板115と、ベース板115の表面側に複数並設される保持部117と、を備えることが記載されている。この保持部117は、矩形片を折り重ねて両縁部分を縫製119することで扁平筒状に形成されている。
なお、特許文献1及び2には、ケース本体やシザーホルダの具体的な材質について明確に記載されていないが、意匠性等の観点から、天然皮革又は人造皮革製のケース本体やシザーホルダが採用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-224472号公報
【特許文献2】特開2002-112822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、感染症(例えば、新型コロナウィルス肺炎のCOVID-19)が大流行しており、理美容の施設等においても、感染症対策として、ハサミやコーム等の直接的に皮膚に接する器具類は当然として、シザーケース等の間接的に皮膚に接する器具類についても徹底した消毒(主に、アルコール等の消毒剤による消毒)が求められている。
【0005】
しかしながら、従来のシザーケースでは、縫製119された扁平筒状の保持部117を備えるシザーホルダ103を採用しているので、ケース本体の上部開口を介してシザーホルダ103に消毒液を噴霧しても、保持部117の重なり部分Sまで消毒剤が届き難く、シザーホルダ103を効果的に消毒することができない。さらに、保持部117の重なり部分Sにカットされた毛髪が入り込むとそれを除去し難く、毛髪を介してウイルス等が付着してしまう恐れがある。その結果、感染対策に伴い徹底した消毒が求められる中、折角消毒を施したハサミやコーム等の器具をシザーホルダ103に保持した時点で汚染されてしまう。
【0006】
さらに、天然皮革製のケース本体やシザーホルダを採用する場合、変色等の可能性があるため、表面に消毒液(特にエタノール等のアルコール消毒液)を付与できない。一方、人造皮革製のケース本体やシザーホルダを採用する場合、革の裏側(床面)は細かな繊維の集合体であることから、ケース本体やシザーホルダの内面を効果的に消毒することできず、またカットされた毛髪が付着し易くそれを除去し難い。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、効果的且つ簡単に消毒できるとともに、カットされた毛髪の付着を抑制することができるシザーケース及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ハサミを含む理美容器具を収納するシザーケースであって、ケース本体と、前記ケース本体内に設けられるシザーホルダと、を備え、前記シザーホルダは、樹脂製のベース板と、前記ベース板の表面に設けられる樹脂製の波状板と、を備え、前記波状板は、複数並設される半筒部と、隣り合う前記半筒部の側縁部同士を連結して前記ベース板の表面に接合される接合面部と、を備えることを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記半筒部の上部開口は、前記ベース板の表面から離れるに連れて低位となるように前記半筒部の軸方向に対して傾斜していることを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記ベース板及び前記波状板のうちの少なくとも一方は、抗菌材を含んでいることを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記ケース本体は、シート状に展開可能に構成されており、前記ケース本体は、人造皮革からなる表皮材と、前記表皮材の裏面を覆う樹脂製の裏カバー材と、を備えることを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記表皮材及び前記裏カバー材の各周縁部は、溶着により一体化されていることを要旨とする。
【0013】
上記問題点を解決するために、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシザーケースの使用方法であって、前記ケース本体の上部開口を介して空の前記シザーホルダに消毒液を噴霧した後に、消毒済みの前記ハサミを前記シザーホルダに保持することを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシザーケースによると、ケース本体と、ケース本体内に設けられるシザーホルダと、を備え、シザーホルダは、樹脂製のベース板と、ベース板の表面に設けられる樹脂製の波状板と、を備え、波状板は、複数並設される半筒部と、隣り合う半筒部の側縁部同士を連結してベース板の表面に接合される接合面部と、を備える。これにより、シザーホルダを効果的且つ簡単に消毒できるとともに、シザーホルダに対するカットされた毛髪の付着を抑制することができる。そして、例えば、ケース本体の上部開口を介して空のシザーホルダに消毒液を噴霧した後に、消毒済みのハサミをシザーホルダに保持することで、理美容の被施術者毎にシザーケースを消毒して感染症対策を施すことができる。
【0015】
また、前記半筒部の上部開口が、前記ベース板の表面から離れるに連れて低位となるように前記半筒部の軸方向に対して傾斜している場合は、半筒部の上部開口の開口面積が比較的広くなるため、半筒部内を更に効果的且つ簡単に消毒できるとともに、半筒部に対するハサミの挿脱性を高めることができる。
【0016】
また、前記ベース板及び前記波状板のうちの少なくとも一方が、抗菌材を含んでいる場合は、シザーホルダの表面に抗菌機能を持たせることができる。
【0017】
また、前記ケース本体が、シート状に展開可能に構成されており、前記ケース本体が、人造皮革からなる表皮材と、前記表皮材の裏面を覆う樹脂製の裏カバー材と、を備える場合は、ケース本体をシート状に展開することで、ケース本体の両表面を効果的且つ簡易に消毒することができる。また、ケース本体の表面への毛髪の付着を抑制できるとともに、ケース本体の表面に付着した毛髪を簡易に除去することができる。さらに、表皮材と裏カバー材で異なる表面色や表面模様を採用することで、意匠性を高めることができる。
【0018】
さらに、前記表皮材及び前記裏カバー材の各周縁部が、溶着により一体化されている場合は、表皮材を構成する基布(繊維)が外部に露出しないため、ケース本体に対する毛髪の付着を更に抑制することができる。
【0019】
本発明のシザーケースの使用方法によると、上記のシザーケースを用いて、ケース本体の上部開口を介して空のシザーホルダに消毒液を噴霧した後に、消毒済みのハサミをシザーホルダに保持する。これにより、理美容の被施術者毎にシザーケースを消毒して感染症対策を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【
図8】上記シザーケースを構成するケース本体(展開状態)の正面図である。
【
図10】上記シザーケースの作用を説明するための説明図であり、(a)(b)はケース本体を折り畳む途中の状態を示す。
【
図11】上記シザーケースの作用を説明するための説明図であり、(a)(b)ははケース本体を折り畳む途中の状態を示す。
【
図12】上記シザーケースの作用を説明するための説明図である。
【
図13】上記シザーケースの外観画像処理図である。
【
図14】上記シザーケースの外観画像処理図である。
【
図15】上記シザーケースの外観画像処理図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0022】
<シザーケース>
本実施形態に係るシザーケースは、例えば、
図1等に示すように、ハサミ20を含む理美容器具を収納するシザーケース1であって、ケース本体2と、ケース本体2内に設けられるシザーホルダ3と、を備える。そして、例えば、
図5~
図7に示すように、シザーホルダ3は、樹脂製のベース板15と、ベース板15の表面に設けられる樹脂製の波状板16と、を備え、波状板16は、複数並設される半筒部17と、隣り合う半筒部17の側縁部同士を連結してベース板15の表面に接合される接合面部18と、を備える。
なお、理美容器具としては、ハサミ20の他に、コーム21、レーザー(剃刀)、トリマー(小型バリカン)、ダッカール(髪止め具)22等が挙げられる(例えば、
図12等参照)。
【0023】
ケース本体2の構成、材質等は特に問わない。このケース本体2は、例えば、展開不能なケース状に形成されていてもよいが、消毒の簡易性等の観点から、シート状に展開可能に構成されていることが好ましい(例えば、
図8等参照)。具体的に、ケース本体2は、シート状に展開された状態より折り重ねて係止(例えば、スナップボタン、面ファスナ等の係止具による係脱可能な係止等)することでケース状に保持されることができる。
【0024】
ケース本体2は、例えば、天然皮革や単一の樹脂シートにより形成されていてもよいが、消毒の簡易性及び意匠性等の観点から、人造皮革からなる表皮材11と、表皮材11の裏面を覆う樹脂製の裏カバー材12と、を備えることが好ましい(例えば、
図9等参照)。表皮材11を構成する人造皮革としては、例えば、合成皮革、人工皮革、ポリ塩化ビニル(PVC)レザー等が挙げられる。さらに、裏カバー材12を構成する樹脂としては、適度な柔軟性を有する限り特に問わないが、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、各種エラストマー等が挙げられる。
【0025】
なお、上記の合成皮革とは、基布(例えば、織布、編布、不織布等)にポリウレタン樹脂等の合成樹脂を塗布したものを意図する。さらに、ポリ塩化ビニルレザーとは、合成皮革の中で合成樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂を使用したものを意図する。さらに、人工皮革とは、基布(不織布)にポリウレタン樹脂等の合成樹脂溶液を含浸させたものを意図する。
【0026】
表皮材11及び裏カバー材12の各周縁部は、毛髪の付着の抑制性等の観点から、表皮材11を構成する基布(繊維)11aの周縁部が外部に露出しないように、溶着により一体化されていることが好ましい(例えば、
図9等参照)。この溶着としては、例えば、熱圧着、レーザー溶着、振動溶着等が挙げられる。さらに、表皮材11と裏カバー材12とは、意匠性等の観点から、表面色及び/又は表面模様が異なっていることが好ましい。
【0027】
シザーホルダ3は、ベース板15及び波状板16を備えてハサミ20を保持可能である限り、その構成、配置形態等は特に問わない。このシザーホルダ3は、例えば、ケース本体2内に単に挿入されていてもよいが、ハサミ20の挿脱性及び保持性等の観点から、ケース本体2にスナップボタン、面ファスナ等の係止具により係脱可能に取り付けられていることが好ましい(例えば、
図1等参照)。
【0028】
ベース板15及び波状板16を構成する樹脂は、例えば、ポリスチレン、AES樹脂、ASA樹脂等の硬質樹脂であってもよいが、ハサミ20の保持性等の観点から、軟質樹脂であることが好ましい。この軟質樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、各種エラストマー等が挙げられる。また、ベース板15及び波状板16は、同種の樹脂により形成されていてもよいし、異種の樹脂により形成されていてもよい。
なお、上記の軟質樹脂及び硬質樹脂とは、JIS K6900(1994)のプラスチック-用語に記載の軟質プラスチック及び硬質プラスチックを意図する。
【0029】
ベース板15及び波状板16のうちの少なくとも一方は、例えば、抗菌材を含んでいることができる。この抗菌材としては、例えば、アルデヒド系、フェノール系、ピリチオン系などの有機系抗菌材、銀、銅、亜鉛といった金属の発生するイオンによって抗菌効果を発生させる無機系抗菌材、わさび、カラシ、ヒノキといった植物から抽出された天然系抗菌材等が挙げられる。これらは1種を用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。さらに、抗菌材は、例えば、ベース板15や波状板16の成形前の原料に練り込まれていてもよいし、成形後のベース板15や波状板16の表面加工(例えば、塗布、浸漬等)により膜形成されていてもよい。
【0030】
ベース板15は、例えば、平坦な板状に形成されていてもよいし、湾曲した板状に形成されていてもよい。さらに、ベース板15は、毛髪の視認性の観点から、透明又は半透明であることが好ましい。さらに、波状板16は、毛髪の視認性の観点から、透明又は半透明であることが好ましい。さらに、波状板16の備える複数の半筒部17の個数は特に問わない。
【0031】
半筒部17の断面形状(半筒部17の軸方向と直交する断面形状)は、特に問わないが、例えば、略U字状、略C字状、略V字状等が挙げられる(例えば、
図6等参照)。
【0032】
半筒部17の上部開口17a(すなわち、ハサミ20の挿入口17a)は、例えば、半筒部16の軸方向に対して直交していてもよいが、ハサミ20の挿脱性等の観点から、ベース板15の表面から離れるに連れて低位となるように半筒部17の軸方向に対して傾斜していることが好ましい(例えば、
図7等参照)。この場合、半筒部17の下部開口17bも、ベース板15の表面から離れるに連れて低位となるように半筒部17の軸方向に対して傾斜していることが好ましい。これは、波状板16の材料歩留まりを高め得るためである。
【0033】
接合面部18の形状、個数等は特に問わない。この接合面部18は、例えば、ベース板15の表面に対して、熱圧着、レーザー溶着、振動溶着等により溶着されていてもよいし、接着剤による接着されていてもよい。これら溶着及び接着は、単一で採用されてもよいし、併用されてもよい。また、接合面部18は、毛髪の付着の抑制性等の観点から、隣り合う半筒部17が並び方向に離間するように各半筒部17の側縁部同士を連結することが好ましい(例えば、
図6等参照)。この隣り合う半筒部17の離間間隔は、例えば、隣り合う半筒部17内に保持されるハサミ20の指環部が前後に重なるような値に設定されていることができる(例えば、
図12等参照)。
【0034】
<シザーケースの使用方法>
本実施形態に係るシザーケースの使用方法は、上記の実施形態に係るシザーケース1の使用方法であって、例えば、
図1等に示すように、ケース本体2の上部開口2aを介して空のシザーホルダ3に消毒液を噴霧(図中仮想線の矢印で示す。)した後に、消毒済みのハサミ20をシザーホルダ3に保持する(例えば、
図12等参照)。
【0035】
消毒液としては、例えば、エタノール等のアルコール消毒液、次亜塩素酸ナトリウム液等の塩素系消毒液、洗剤等の界面活性剤、次亜塩素酸水などが挙げられる。さらに、ハサミ20を含む理美容器具の消毒としては、例えば、紫外線照射による消毒、蒸気消毒、エタノールによる消毒、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒、逆性石けん液による消毒、グルコン酸クロルヘキシジンによる消毒、両性界面活性剤による消毒などが挙げられる。
【0036】
消毒液の噴霧は、例えば、シザーケース1とは別に保管された消毒液を噴霧可能な消毒用容器を用いて行ってもよいが、消毒の簡易性等の観点から、シザーケース1のケース本体2内に収納された消毒用容器7を用いて行うことが好ましい(例えば、
図4等参照)。
【0037】
本実施形態に係るシザーケースの使用方法としては、例えば、
図8及び
図9等に示すように、ケース本体2をシート状に展開した状態でケース本体2の表面に消毒液を噴霧(図中仮想線の矢印で示す。)する形態が挙げられる。
【0038】
なお、上記実施形態で記載した各構成の符号は、後述する実施例に記載の具体的構成との対応関係を示すものである。
【実施例0039】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0040】
本実施例に係るシザーケース1は、理美容器具(例えば、ハサミ20、コーム21、レーザー、トリマー、ダッカール22等)を収納するものである(
図12参照)。このシザーケース1は、
図1~
図4に示すように、ケース本体2と、ケース本体2内に設けられるシザーホルダ3と、を備えている。
【0041】
なお、
図1中の符号24は、ダッカール22を止めるためのベルトを示し、符号25は、ベルト通しを示し、符号26は、底蓋を示す。この底蓋26は、開閉可能に構成されており、底蓋26を開放することでケース本体2内の底部に溜まる毛髪を排出できる。
【0042】
ケース本体2は、シート状に展開可能に構成されている(
図8参照)。このケース本体2は、シート状に展開された状態より複数回折り重ねてスナップボタン5により係止することでケース状に保持される(
図10及び
図11参照)。ここで、シート状に展開されたケース本体2を2重に折り重ねた部分によって、ケース本体2内に、シザーホルダ3の収納空間6a、及び収納空間6aと仕切られた収納空間6bが形成される(
図4参照)。この収納空間6bには、消毒液を噴霧可能な消毒用容器7が収納される。
【0043】
ケース本体2は、
図9に示すように、人造皮革からなる表皮材11と、表皮材11の裏面を覆う軟質樹脂製(例えば、ポリ塩化ビニル等)の裏カバー材12と、を備えている。この表皮材11は、基布(例えば、不織布等)11aと、基布11aの表面に積層される表面樹脂層(例えば、ポリウレタン樹脂層等)11bと、を備えている。
【0044】
表皮材11及び裏カバー材12の各周縁部は、全周にわたって熱圧着により一体化されて溶着部13とされている。これにより、表皮材11を構成する基布(繊維)11aの周縁部が外部に露出しない。この溶着された表皮材11及び裏カバー材12の各周縁部の厚さは、溶着されていない表皮材11と裏カバー12の部分の厚さの和よりも小さい。また、表皮材11は、表面加工により革調の表面模様を有している。一方、裏カバー材12の表面は無地である。すなわち、表皮材11と裏カバー材12とは、表面模様が異なっている。なお、表皮材11と裏カバー12との表面色は、同じ色(例えば、黒色)とされている。
【0045】
なお、本実施例では、表皮材11及び裏カバー材12は、製作性等の観点から、各周縁部の溶着とともにスナップボタン5の取付により一体化されている。ただし、表皮材11と裏カバー材12とは、両者の表面が接着剤により接着されていてもよい。
【0046】
シザーホルダ3は、ハサミ20を保持するものである(
図15参照)。このシザーホルダ3は、
図5~
図7に示すように、軟質樹脂製(例えば、ポリ塩化ビニル等)のベース板15と、ベース板15の表面に設けられる軟質樹脂製(例えば、ポリ塩化ビニル等)の波状板16と、を備えている。さらに、ベース板15及び波状板16は、透明である。さらに、ベース板15及び波状板16は、抗菌材(例えば、銀イオン系抗菌材等)を含んでいる。
【0047】
ベース板15は、平坦な板状に形成されている。このベース板15は、平面矩形状に形成されている。さらに、ベース板15は、ケース本体2に対してスナップボタン5により係脱可能に取り付けられる(
図1参照)。
【0048】
波状板16は、複数(
図6中4つ)並設される半筒部17と、隣り合う半筒部17の側縁部同士を連結してベース板15の表面に接合される接合面部18と、を備えている。
【0049】
半筒部17の断面形状は、略U字状とされている。この半筒部17の上部開口17a(すなわち、ハサミ20の挿入口17a)は、ベース板15の表面から離れるに連れて低位となるように半筒部17の軸方向に対して傾斜している(
図7参照)。さらに、半筒部17の下部開口17bも、上部開口17aと同様にして半筒部17の軸方向に対して傾斜している。
【0050】
なお、半筒部17にハサミ20を挿入する際には、ハサミ20のネジ部20a(
図12参照)が半筒部17の上部開口17aを形成する上縁により案内されることで、ハサミ20が半筒部17の幅方向の中央部に寄るように案内される。
【0051】
接合面部18は、ベース板15の表面に対して熱圧着により溶着されている。この接合面部18は、隣り合う半筒部17が並び方向に離間するように各半筒部18の側縁部同士を連結する。これら隣り合う半筒部17の離間の間隔は、隣り合う半筒部17内に保持されるハサミ20の指環部が前後に重なるような値に設定されている(
図12参照)。
【0052】
なお、並び方向の最外側に位置する半筒部17の外側縁部には、接合面部28が設けられている。この接合面部28は、他の半筒部17に連結されず、ベース板15の表面に接合(具体的に熱圧着)されている。
【0053】
次に、上記のように構成されたシザーケース1の作用及び効果について説明する。
理美容の被施術者が替わる際には、
図1に示すように、シザーホルダ3からハサミ20を取り外した状態で、ケース本体2の上部開口2aを介して空のシザーホルダ3に消毒液を噴霧(図中仮想線の矢印で示す。)して消毒を行う。この噴霧は、収納空間6bに収納された消毒用容器7を用いて行われる(
図4参照)。その後、消毒済みのハサミ20をシザーホルダ3に保持して、次の理美容の被施術者に対応する。
【0054】
一方、1日の理美容業務が終了した際には、
図8に示すように、ケース本体2をシート状に展開した状態でシザーホルダ3を取り外して水洗いを行う。その後、ケース本体2の両表面に消毒液を噴霧(図中仮想線の矢印で示す。)して消毒を行う。
【0055】
以上より、本実施例のシザーケース1によると、ケース本体2と、ケース本体2内に設けられるシザーホルダ3と、を備え、シザーホルダ3は、樹脂製のベース板15と、ベース板15の表面に設けられる樹脂製の波状板16と、を備え、波状板16は、複数並設される半筒部17と、隣り合う半筒部17の側縁部同士を連結してベース板15の表面に接合される接合面部18と、を備える。これにより、シザーホルダ3を効果的且つ簡単に消毒できるとともに、シザーホルダ3に対するカットされた毛髪の付着を抑制することができる。そして、ケース本体2の上部開口2aを介して空のシザーホルダ3に消毒液を噴霧した後に、消毒済みのハサミ20をシザーホルダ3に保持することで、理美容の被施術者毎にシザーケース1を消毒して感染症対策を施すことができる。特に、感染症対策に必要な衛生管理を機能的且つ敏速的に作業工程のワンシーンで行うことができる。
【0056】
さらに、本実施例では、半筒部17の上部開口17aは、ベース板15の表面から離れるに連れて低位となるように半筒部17の軸方向に対して傾斜している。これにより、半筒部17の上部開口17aの開口面積が比較的広くなるため、半筒部17内を更に効果的且つ簡単に消毒できるとともに、半筒部17に対するハサミ20の挿脱性を高めることができる。
【0057】
また、本実施例では、ベース板15及び波状板16は、抗菌材を含んでいる。これにより、シザーホルダ3の表面に抗菌機能を持たせることができる。
【0058】
また、本実施例では、ケース本体2は、シート状に展開可能に構成されており、ケース本体2は、人造皮革からなる表皮材11と、表皮材11の裏面を覆う樹脂製の裏カバー材12と、を備える。これにより、ケース本体2をシート状に展開することで、ケース本体2の両表面を効果的且つ簡易に消毒することができる。また、ケース本体2の表面への毛髪の付着を抑制できるとともに、ケース本体2の表面に付着した毛髪を簡易に除去することができる。さらに、表皮材11と裏カバー材12で異なる表面模様を採用したので、意匠性を高めることができる。
【0059】
さらに、本実施例では、表皮材11及び裏カバー材12の各周縁部は、溶着により一体化されている。これにより、表皮材11を構成する基布(繊維)11aが外部に露出しないため、ケース本体2に対する毛髪の付着を更に抑制することができる。
【0060】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更することができる。すなわち、上記実施例のシザーケース1は、例えば、金具29(
図2参照)を介して肩紐で吊り下げて使用してもよいし、ベルト通し25(
図3参照)を介してベルトに装着して使用してもよい。
【0061】
また、上記実施例では、表皮材11と裏カバー12との表面色を同じ色としたが、これに限定されず、異なる色としてもよい。さらに、上記実施例では、表皮材11と裏カバー12との表面模様を異なる模様としたが、これに限定されず、同じ模様としてもよい。
【0062】
さらに、上記実施例のシザーホルダ3においては、劣化等した際には新たなシザーホルダ3に交換することができる。
【0063】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
1;シザーケース、2;ケース本体、2a;上部開口、3;シザーホルダ、11;表皮材、11a;基布、12;裏カバー材、15;ベース板、16;波状板、17;半筒部、17a;上部開口、18;接合面部、20;ハサミ。