(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092550
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】ポンプシステムの製造方法
(51)【国際特許分類】
F04D 15/00 20060101AFI20220615BHJP
F04B 49/10 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
F04D15/00 H
F04B49/10 311
F04D15/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020219582
(22)【出願日】2020-12-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】521002442
【氏名又は名称】長瀬 文男
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 文男
【テーマコード(参考)】
3H020
3H145
【Fターム(参考)】
3H020BA07
3H020BA13
3H020BA22
3H020CA07
3H020DA01
3H020EA04
3H145AA12
3H145AA23
3H145BA33
3H145BA42
3H145CA16
3H145DA01
3H145EA15
3H145EA37
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポンプを駆動するポンプ駆動回路への負荷を軽減することができるポンプシステムを提供する。
【解決手段】ポンプシステムは、貯水槽S1に貯留される水を揚水して管渠PI2へ排出するポンプ2と、貯水槽S1の水位が予め設定された起動水位になるとポンプ2を起動し、その後、予め設定された停止水位になるとポンプ2を停止するポンプ制御装置1と、を備える。そして、ポンプ2の1分当たりの揚水量は、関係式(1)が成立するように設定されている。Q<=n*y/15(1)、ここで、Qは、ポンプ2の1分間当たりの揚水量、nは、ポンプ2に要求される1時間当たりの起動および停止を繰り返し回数、yは、貯水槽S1の貯水量の有効容量である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水槽に貯留される水を揚水して前記貯水槽外へ排出するポンプと、
前記貯水槽の水位が予め設定された起動水位になるとポンプを起動し、その後、予め設定された停止水位になると前記ポンプを停止するポンプ制御装置と、を備え、
前記ポンプの1分当たりの揚水量は、下記式(1)の関係式が成立するように設定されている、
ポンプシステム。
【数1】
ここで、Qは、前記ポンプの1分間当たりの揚水量であり、nは、前記ポンプに要求される1時間当たりの起動および停止を繰り返し回数であり、yは、前記貯水槽の貯水量の有効容量である
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
水位計で検出された貯水槽の水位が起動水位になるとポンプを起動し、その後停止水位になるとポンプを停止するポンプ制御装置を備えた複数のマンホールポンプ装置により汚水を下水処理施設に搬送するマンホールポンプシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。ここで、各ポンプ制御装置は、停止水位として、第1停止水位と、ポンプの単位送水量当たりの消費電力量に基づいて第1停止水位を基準にして起動水位側に設定された第2停止水位が設定可能に構成され、ポンプの所定時間当たりの起動頻度を指標にして、第1停止水位と第2停止水位の何れか一方を停止水位に設定するように構成されている。例えば、ポンプを停止した時から起動水位に達した時間が3分以内であれば、停止水位を第1停止水位に切り替え、3分以上であれば停止水位を第2停止水位に維持する。このように、各ポンプ制御装置は、ポンプの所定時間当たりの起動頻度に応じて単位送水量当たりの消費電力量の低い領域で運転することにより消費電力を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたマンホールポンプシステムの場合、貯水槽の容量およびポンプの揚水能力が、貯水槽に流れ込む単位時間当たりの予測水量に応じて適切に設定されていない場合、ポンプの起動頻度が増加してしまう。この場合、ポンプ制御装置が備えるポンプを駆動するポンプ駆動回路への負荷が増大してしまい、ポンプ駆動回路が故障してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、ポンプを駆動するポンプ駆動回路への負荷を軽減することができるポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るポンプシステムは、
貯水槽に貯留される水を揚水して前記貯水槽外へ排出するポンプと、
前記貯水槽の水位が予め設定された起動水位になるとポンプを起動し、その後、予め設定された停止水位になると前記ポンプを停止するポンプ制御装置と、を備え、
前記ポンプの1分当たりの揚水量は、下記式(1)の関係式が成立するように設定されている。
【数1】
ここで、Qは、前記ポンプの1分間当たりの揚水量であり、nは、前記ポンプに要求される1時間当たりの起動および停止を繰り返し回数であり、yは、前記貯水槽の貯水量の有効容量である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポンプの1分当たりの揚水量が、上記式(1)の関係式が成立するように設定されているので、ポンプに要求される1時間当たりの起動および停止の繰り返し回数を貯水槽の有効容量に応じた適切な回数にすることができる。従って、ポンプ制御装置に加わる負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係るポンプシステムの構成図である。
【
図2】実施の形態に係るポンプ制御装置が実行するポンプ制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態に係るポンプシステムの動作説明図である。
【
図4】実施の形態に係るポンプシステムの動作説明図である。
【
図5】実施の形態に係るポンプシステムの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態に係るポンプシステムについて図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係るポンプシステムは、貯水槽に貯留される水を揚水して貯水槽外へ排出するポンプと、ポンプ制御装置と、を備える。ポンプ制御装置は、ポンプを駆動するポンプ駆動回路を有し、貯水槽の水位が予め設定された起動水位になるとポンプ駆動回路からポンプへ電流を供給することによりポンプを起動させる。また、ポンプ制御装置は、ポンプの運転を開始させた後、予め設定された停止水位になるとポンプ駆動回路からポンプへの電流供給を遮断することにより前記ポンプを停止させるポンプ制御装置と、を備える。そして、ポンプの1分当たりの揚水量は、下記式(1)の関係式が成立するように設定されている。
【数2】
ここで、Qは、ポンプの1分間当たりの揚水量であり、nは、ポンプに要求される1時間当たりの起動および停止を繰り返し回数であり、yは、貯水槽の貯水量の有効容量である。
【0010】
本実施の形態に係るポンプシステムは、例えば雨水管、下水管等の管渠から濾過槽を通って流入する下水を貯水槽に貯留し、貯水槽に貯留した水をポンプで河川、海等に放出するシステムである。本実施の形態に係るポンプシステムは、例えば
図1に示すように、濾過槽S2と、濾過槽S2に管渠PI1を介して連通する貯水槽S1と、貯水槽S1に貯留された水を排出するための管渠PI2と、とともに使用される。濾過槽S2は、矢印AR1に示すように、雨水管、下水管等の管渠(図示せず)から流入する下水に含まれる異物を濾過して除去するフィルタFMを有する。そして、下水は、フィルタFMの上側に流入し、フィルタFMで濾過処理された後、フィルタFMの下側から管渠PI1へ排出される。貯水槽S1は、その上側で管渠PI1に連通しその底側で管渠PI2に連通している。そして、濾過処理済の下水が、矢印AR2に示すように管渠PI1から貯水槽S1に流入する。
【0011】
本実施の形態に係るポンプシステムは、管渠PI2に設置されたポンプ2と、ポンプ2の動作を制御するポンプ制御装置1と、貯水槽S1の水位を計測する水位計3と、を備える。ポンプ2は、内蔵する電動機(図示せず)の駆動電力の供給を受けるための給電線(図示せず)を介してポンプ制御装置1に接続されている。また、電動機のロータには、電動機の始動時にポンプ制御装置1から供給される電流を抑制することにより給電線を保護するための始動制御装置(図示せず)が設けられている。そして、ポンプ2は、ポンプ制御装置1から電動機の駆動電力が供給されると起動し、貯水槽S1に貯留される水を揚水して貯水槽S1外の管渠PI2へ排出する。水位計3は、フロート式の水位センサを有する。なお、水位計3としては、例えば投込圧力式の水位センサ、気泡式の水位センサ等を採用してもよい。水位計3は、信号線(図示せず)を介してポンプ制御装置1に接続されており、貯水槽S1の水位を示す水位検知信号を、信号線を介して定期的にポンプ制御装置1へ送信している。
【0012】
ポンプ制御装置1は、ポンプ2を駆動するポンプ駆動回路12と、ポンプ駆動回路12を制御するポンプ制御部11と、を有する。ポンプ駆動回路12は、ポンプ制御部11から入力される制御信号に基づいて、駆動電力をポンプ2へ供給する。ポンプ制御部11は、マイクロコンピュータ(図示せず)と、マイクロコンピュータで実行される制御プログラムが格納されるとともにワーキング領域として利用されるメモリ(図示せず)と、を有する。ポンプ制御部11は、そのメモリに、貯水槽S1の水位について、ポンプ2を起動させる際の基準水位である予め設定された起動水位を示す情報と、ポンプ2を停止させる際の基準水位である予め設定された停止水位を示す情報と、を記憶させている。そして、ポンプ制御部11は、算出した水位と起動水位または停止水位とを比較した結果に応じて、ポンプ2を起動または停止させるための制御信号を生成してポンプ駆動回路12へ出力する。ここで、停止水位は、貯水槽S1における管渠PI2に連通する部位よりも高い位置に設定されている。これにより、ポンプ2が空気を引き込むことに起因して故障してしまうことを防止している。
【0013】
次に、本実施の形態に係るポンプ制御装置1が実行するポンプ制御処理について
図2および
図3を参照しながら説明する。なお、このポンプ制御処理は、ポンプ制御装置1へ電源が投入されたことを契機として開始される。まず、ポンプ制御部11は、水位計3から前述の水位検知信号が入力されたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、ポンプ制御部11は、水位計3から水位検知信号が入力されない限り(ステップS101:No)、ステップS101の処理を繰り返し実行する。一方、ポンプ制御部11は、水位計3から水位検知信号が入力されると(ステップS101:Yes)、入力される水位検知信号に基づいて、貯水槽S1の水位を算出する(ステップS102)。次に、ポンプ制御部11は、貯水槽S1の水位Lvが前述の起動水位LvH以上であるか否かを判定する(ステップS103)。ここで、ポンプ制御部11は、貯水槽S1の水位Lvが起動水位LvH未満であると判定すると(ステップS103:No)、再びステップS101の処理を実行する。一方、ポンプ制御部11は、貯水槽S1の水位Lvが起動水位LvH以上であると判定すると(ステップS103:Yes)、ポンプ2を起動させるための制御信号を生成してポンプ駆動回路12へ出力する。これにより、ポンプ駆動回路12が、ポンプ2へ駆動電力を供給することによりポンプ2を起動させる(ステップS104)。
【0014】
続いて、ポンプ制御部11は、ポンプ2が起動した後、水位計3から前述の水位検知信号が入力されたか否かを判定する(ステップS105)。ここで、ポンプ制御部11は、水位計3から水位検知信号が入力されない限り(ステップS105:No)、ステップS105の処理を繰り返し実行する。一方、ポンプ制御部11は、水位計3から水位検知信号が入力されると(ステップS105:Yes)、入力される水位検知信号に基づいて、貯水槽S1の水位を算出する(ステップS106)。その後、ポンプ制御部11は、貯水槽S1の水位Lvが前述の停止水位LvL以下であるか否かを判定する(ステップS107)。ここで、ポンプ制御部11は、貯水槽S1の水位Lvが停止水位LvLよりも高いと判定すると(ステップS107:No)、再びステップS105の処理を実行する。一方、ポンプ制御部11は、貯水槽S1の水位Lvが停止水位LvL以下であると判定すると(ステップS107:Yes)、ポンプ2を停止させるための制御信号を生成してポンプ駆動回路12へ出力する。これにより、ポンプ駆動回路12が、ポンプ2への駆動電力の供給を遮断してポンプ2を停止させる(ステップS108)。次に、再びステップS101の処理が実行される。
【0015】
このように、前述の一連のポンプ制御処理が実行されることにより、貯水槽S1の水位Lvは、例えば
図3に示すように、起動水位LvHと停止水位LvLとの間で経時的に上昇および下降を繰り返すように変動する。なお、
図3は、下水の単位時間当たりの貯水槽S1への流入量は一定である場合を示している。ここで、下水の単位時間当たりの貯水槽S1への流入量が増加したとする。この場合、ポンプ2が停止している間における貯水槽S1の水位の増加率が大きくなることにより、貯水槽S1の水位が停止水位LvLから起動水位LvHに至るまでの時間dT1が短くなるとともに、ポンプ2の動作中における貯水槽S1の水位の減少率が小さくなることにより、貯水槽S1の水位が起動水位LvHから停止水位LvLに至るまでの時間dT2が長くなる。一方、下水の単位時間当たりの貯水槽S1への流入量が減少したとする。この場合、ポンプ2が停止している間における貯水槽S1の水位の増加率が小さくなり、貯水槽S1の水位が停止水位LvLから起動水位LvHに至るまでの時間dT1が長くなるとともに、ポンプ2の動作中における貯水槽S1の水位の減少率が大きくなることにより、貯水槽S1の水位が起動水位LvHから停止水位LvLに至るまでの時間dT2が短くなる。
【0016】
ところで、単位時間当たりのポンプ2の起動回数が多くなると、その分、ポンプ駆動回路12に加わる負荷が大きくなる。特に、ポンプ2の起動時には、ポンプ駆動回路12からポンプ2へ比較的大きな電流を流す必要があり、ポンプ2の起動回数が多くなると、ポンプ制御装置1とポンプ2とを接続する給電線にジュール熱が蓄積して給電線が焼損してしまう場合がある。そこで、ポンプ2には、一般的に1時間当たりの起動の繰り返し回数について制限回数が設けられている場合が多い。従って、ポンプ2は、貯水槽S1への下水の流入量の変動に関わらず、常に、その起動の繰り返す回数が前述の制限回数以下となるようにその単位時間当たりの揚水量が設定される必要がある。
【0017】
これに対して、発明者は、貯水槽S1の起動水位LvHと停止水位LvLとの差分に相当する水量である有効容量とポンプ2に許容される単位時間当たりの許容起動回数とに基づいて、下水の貯水槽S1への流入量の変動に関わらず、ポンプ2の単位時間当たりの起動回数を前述の許容起動回数以下にするための条件として、前述の式(1)で表される関係式を導出した。以下、その条件の導出方法について説明する。
【0018】
ポンプ2の起動時刻の時間間隔(以下、「起動間隔」と称する。)は、下記式(2)の関係式で表される。
【数3】
ここで、αは、ポンプ2の起動間隔であり、Xは、下水の貯水槽S1への1分当たりの流入量であり、yは、前述の有効容量であり、Qは、ポンプ2の1分当たりの揚水量である。
【0019】
そして、ポンプ2に許容される1時間、即ち、60分間当たりの許容起動回数がn回、即ち、ポンプ2に許容される起動時刻の時間間隔が(60/n)分間であるとすると、下記式(3)の関係式が成立する。
【数4】
【0020】
式(3)を変形すると、下記式(4)に示す関係式で表される。
【数5】
【0021】
ここで、式(4)の左辺をF(X)としたときに、F(X)=0で表される二次方程式の解が、実根を持たない条件、即ち、F(X)=0で表される二次方程式についての解の公式における平方根が虚数または0となる条件から、
図4に示すように全てのXに対してF(X)≧0となる下記式(5)の関係式が成立する。
【数6】
【0022】
式(5)を変形すると、下記の式(6)の関係式が成立する。
【数7】
【0023】
つまり、ポンプ2の1分間当たりの揚水量Q[m
3/min]は、ny/15[m
3/min]以下となるように設定されればよいことになる。ここで、例えばポンプ2の1分間当たりの揚水量Qが、200[m
3/min]であり、1時間当たりの許容起動回数nが「6」であるポンプ2の場合、貯水槽S1の有効容量yは、500[m
3]以上であればよい。言い換えると、ポンプ2の1時間当たりの許容起動回数nが「6」であり且つ貯水槽S1の有効容量yが500[m3]である場合、ポンプ2の1分間当たりの揚水量Qは、
図5の曲線L2のように全てのXに対して10min以上(6回以下)を満足する。また、1時間当たりの許容起動回数nが「8」であるポンプ2の場合、貯水槽S1の有効容量yは、375[m
3]以上であればよい。この式(6)は、ポンプ2の1時間当たりの許容起動回数nと貯水槽S1の有効容量yが決まっている場合において、選定できるポンプ2の最大揚水能力を決めるのに利用できる。
【0024】
ところで、ポンプ2の起動間隔αの貯水槽S1への下水の流入量Xに対する依存性は、
図5に示すようなグラフで表される。
図5の実線L1、破線L2、実線L3は、いずれも、ポンプ2の1分間当たりの揚水量が200[m
3/min]の場合の依存性を示している。また、実線L1は、貯水槽S1の有効容量が400[m
3]の場合を示し、破線L2は、貯水槽S1の有効容量が500[m
3]の場合を示し、一点鎖線L3は、貯水槽S1の有効容量が600[m
3]の場合を示している。例えば、有効容量が400m
3では、55m
3/min<X<145m
3/minの流入量の時、αは10min以内となり、nが6回を超えて焼損する虞がある。有効容量500m
3では、曲線L1が曲線L2にシフトし、流入量Xの値に関わらずαが10min以上、即ち、nが6回以下となる。
図5中の「使用できない範囲」とは、起動間隔αが10分未満、即ち、nが6回を超えており、ポンプ2の許容起動回数を超えているために使用できない範囲を示している。
【0025】
また、前述の式(1)は、下記式(7)に示す関係式に変形できる。
【数8】
【0026】
この式(7)の関係式は、ポンプ2の1時間当たりの許容起動回数nとポンプ2の揚水能力とが決まっている場合に、貯水槽S1における最適な有効容量yを設定するために利用できる。この式(7)に従って貯水槽S1の有効容量yを決めることにより、ポンプ2の始動制御装置を保護する観点から物理的に安全な最小有効容量を決定することができる。
【0027】
更に、前述の式(1)は、下記式(8)に示す関係式に変形できる。
【数9】
【0028】
例えばポンプ2として、その揚水能力を式(1)で決まる揚水能力Qよりも大きいものを採用した場合、式(8)の関係式に基づいてポンプ2の1時間当たりの許容起動回数nが小さく(例えば6以下)なるように有効容量y、即ち、起動水位LvHと停止水位LvLとの差を大きく設定すればよい。また、貯水層S1の有効容量yを式(7)で決まる有効容量yよりも小さくせざるを得ない場合、例えばポンプ2の揚水量Qを調節するための吐出弁(図示せず)と吐出弁の動作を制御する吐出弁制御部(図示せず)とをポンプ2に別途設けてもよい。そして、ポンプ2の吐出弁制御部が、ポンプ2の揚水量Qを小さくしてnを小さく(例えば6以下)なるように吐出弁を制御してもよい。このような吐出弁を設けることは、
図5に示す「使用できない範囲」においてポンプ2を適切に動作させるための解決策となる。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態に係るポンプシステムによれば、ポンプ2の1分当たりの揚水量Qが、上記式(1)の関係式が成立するように設定されているので、ポンプ2に要求される1時間当たりの起動および停止の繰り返し回数を貯水槽S1の有効容量に応じた適切な回数にすることができる。従って、ポンプ制御装置1に加わる負荷を軽減することができる。
【0030】
また、始動制御装置を備えるポンプにおいては、始動抵抗器が発熱し損傷する危険性が高い。そこで、発明者は、始動抵抗器の損傷を防ぐため、貯留層S1に流入する水の流量がいかなる流量であっても始動抵抗器が損傷してしまうような起動頻度とならない最小有効容量を見出す方法を発見した。また、ポンプ2の揚水量Qと有効容量yと起動頻度nと起動間隔αとの関連性を見出し、この関連性に基づいてポンプシステムを構築した。本実施の形態に係るポンプシステムは、始動制御装置の始動抵抗器の発熱による損傷を防ぐ観点から発明したものであり、前述の判別式を用いた物理的に安全な最小有効容量の決定方法に関するものである。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。また、ポンプ2の1分間当たりの揚水量Qは、前述の式(6)の関係式を満たす最大値よりも小さい量に設定されてもよい。この場合、ポンプシステムは、管渠PI1から貯水槽S1への下水の流入を遮断するゲート(図示せず)と、貯水槽S1の水位が予め設定された上限水位に到達した場合にゲートを閉じるゲート駆動装置(図示)と、を備える構成とすればよい。
【0032】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態及び変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、ポンプの揚水量、貯水槽の有効容量およびポンプの起動回数との間で成立するこれらの最適値を決定するための関係式を見出したものであり、下水処理場等に設置されるポンプシステムとして好適である。
【符号の説明】
【0034】
1:ポンプ制御装置、2:ポンプ、3:水位計、11:ポンプ制御部、12:ポンプ駆動回路、PI1,PI2:管渠、S1:貯水槽、S2:濾過槽
【手続補正書】
【提出日】2021-04-16
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、ポンプシステムの製造方法に関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、ポンプを駆動するポンプ駆動回路への負荷を軽減することができるポンプシステムの製造方法を提供することを目的とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るポンプシステム
の製造方法は、
貯水槽に貯留される水を揚水して前記貯水槽外へ排出するポンプと、
前記貯水槽の水位が予め設定された起動水位になるとポンプを起動し、その後、予め設定された停止水位になると前記ポンプを停止するポンプ制御装置と、を備え
るポンプシステムの製造方法であって、
前記ポンプの1分当たりの揚水量
を、下記式(1)の関係式が成立するように設定
する。
【数1】
ここで、Qは、前記ポンプの1分間当たりの揚水量であり、nは、前記ポンプ
の1時間
当たりの許容起動回数であり、yは、前記貯水槽の貯水量の有効容量である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明によれば、ポンプの1分当たりの揚水量が、上記式(1)の関係式が成立するように設定されているので、ポンプの1時間当たりの許容起動回数を貯水槽の有効容量に応じた適切な回数にすることができる。従って、ポンプ制御装置に加わる負荷を軽減することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水槽に貯留される水を揚水して前記貯水槽外へ排出するポンプと、
前記貯水槽の水位が予め設定された起動水位になるとポンプを起動し、その後、予め設定された停止水位になると前記ポンプを停止するポンプ制御装置と、を備え
るポンプシステムの製造方法であって、
前記ポンプの1分当たりの揚水量
を、下記式(1)の関係式が成立するように設定
する、ポンプシステム
の製造方法。
【数1】
ここで、Qは、前記ポンプの1分間当たりの揚水量であり、nは、前記ポンプ
の1時間当たりの許容起動回数であり、yは、前記貯水槽の貯水量の有効容量である
【手続補正書】
【提出日】2021-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るポンプシステムの製造方法は、
貯水槽に貯留される水を揚水して前記貯水槽外へ排出するポンプと、
前記貯水槽の水位が予め設定された起動水位になるとポンプを起動し、その後、予め設定された停止水位になると前記ポンプを停止するポンプ制御装置と、を備えるポンプシステムの製造方法であって、
前記ポンプの1分
間当たりの揚水量
が、下記式(1)の関係式
を満たすように
、式(1)を用いた計算によって設定する。
【数1】
ここで、Qは、前記ポンプの1分間当たりの揚水量であり、nは、前記ポンプの1時間当たりの許容起動回数であり、yは、前記貯水槽の貯水量の有効容量である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明によれば、ポンプの1分間当たりの揚水量が、上記式(1)の関係式を満たすように、式(1)を用いた計算によって設定するので、ポンプの1時間当たりの許容起動回数を貯水槽の有効容量に応じた適切な回数にすることができる。従って、ポンプ制御装置に加わる負荷を軽減することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水槽に貯留される水を揚水して前記貯水槽外へ排出するポンプと、
前記貯水槽の水位が予め設定された起動水位になるとポンプを起動し、その後、予め設定された停止水位になると前記ポンプを停止するポンプ制御装置と、を備えるポンプシステムの製造方法であって、
前記ポンプの1分
間当たりの揚水量
が、下記式(1)の関係式
を満たすように
、式(1)を用いた計算によって設定する、
ポンプシステムの製造方法。
【数1】
ここで、Qは、前記ポンプの1分間当たりの揚水量であり、nは、前記ポンプの1時間当たりの許容起動回数であり、yは、前記貯水槽の貯水量の有効容量である