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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092575
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】四輪駆動電動化車両の駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/10 20160101AFI20220615BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20220615BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20220615BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20220615BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20220615BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20220615BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20220615BHJP
【FI】
B60W20/10
B60K6/48
B60K6/485
B60K6/52
B60W10/08 900
B60W10/06 900
B60W10/10 900
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172697
(22)【出願日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0171888
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】許 志 旭
【テーマコード(参考)】
3D202
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202AA08
3D202AA09
3D202BB02
3D202BB11
3D202BB32
3D202CC72
3D202DD05
3D202FF02
3D202FF06
3D202FF15
(57)【要約】
【課題】変速時に動力伝達経路で発生するエネルギー損失を最小化して燃費向上を図るようにした四輪駆動電動化車両の駆動制御装置を提供する。
【解決手段】本発明は、エンジン、前輪モーター、及び前記エンジン及び前輪モーターの動力を変速して前輪ホイールに出力する変速機を含む前輪用パワートレインと、後輪モーター、及び前記後輪モーターの動力を減速して後輪ホイールに出力する減速機を含む後輪用パワートレインと、前記エンジンを駆動して走行しているうちに前記変速機で変速が始まれば、運転者要求パワーのうち後輪モーターが出力することができるパワーを後輪モーターに出力するように指令し、運転者要求パワーから前記後輪モーターに指令した出力パワーと前記エンジンの出力パワーを差し引いて残ったパワー(運転者要求パワー-後輪モーター出力パワー-エンジン出力パワー)を前輪モーターに出力するように指令する制御部と、を含むことを特徴とする。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン、前輪モーター、及び前記エンジン及び前輪モーターの動力を変速して前輪ホイールに出力する変速機を含む前輪用パワートレインと、
後輪モーター、及び前記後輪モーターの動力を減速して後輪ホイールに出力する減速機を含む後輪用パワートレインと、
前記エンジンを駆動して走行しているうちに前記変速機で変速が始まれば、運転者要求パワーのうち後輪モーターが出力することができるパワーを後輪モーターに出力するように指令し、運転者要求パワーから前記後輪モーターに指令した出力パワーと前記エンジンの出力パワーを差し引いて残ったパワーを前輪モーターに出力するように指令する制御部と、
を含むことを特徴とする四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記前輪モーターが出力することができる最大パワーと前記後輪モーターが出力することができる最大パワーを合わせたパワーが運転者要求パワーより小さいとき、前記エンジンを駆動させ、前記エンジンに運転点マップによって決定されるパワーを出力するように指令することを特徴とする請求項1に記載の四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、変速時に運転者要求パワーを後輪モーターが出力することができる最大パワーより大きければ、前記後輪モーターに最大パワーを出力するように指令し、
前記エンジンが出力するエンジン出力パワーは運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーを差し引いたパワーだけ前輪ホイールに出力されることを特徴とする請求項2に記載の四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【請求項4】
前記前輪モーター及び前記後輪モーターに充放電可能に連結されるバッテリーを含み、
前記制御部は、変速時に前記後輪モーター最大パワーとエンジン出力パワーの和が運転者要求パワーより大きければ、前記前輪モーターに前記バッテリーの充電のための発電を指令し、
前記前輪モーターは、運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーとエンジン出力パワーを差し引いて残ったパワーを用いて前記バッテリーの充電のための発電を遂行することを特徴とする請求項3に記載の四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、変速時に運転者要求パワーが後輪モーター最大パワー以下であれば、前記後輪モーターに運転者要求パワーを出力するように指令し、前記前輪モーターに前記バッテリーの充電のための発電を指令し、
前記前輪モーターは、エンジン出力パワーを用いて前記バッテリーの充電のための発電を遂行することを特徴とする請求項4に記載の四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、エンジンを駆動して走行しているうちに前記変速機で変速を遂行しない場合、運転者要求パワーからエンジン出力パワーを差し引いて残ったパワーを前輪モーターに出力するように指令することを特徴とする請求項4に記載の四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記運転者要求パワーがエンジン出力パワー未満であれば、前記前輪モーターに前記バッテリーの充電のための発電を指令し、前記前輪モーターは、運転者要求パワーからエンジン出力パワーを差し引いて残ったパワーを用いて前記バッテリーの充電のための発電を遂行することを特徴とする請求項6に記載の四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記運転者要求パワーがエンジン出力パワーを超えれば、前記運転者要求パワーからエンジン出力パワーを差し引いて残ったパワーを前記前輪モーターに出力するように指令することを特徴とする請求項6に記載の四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前輪モーターの動力のみ使用して走行しているうちに変速機で変速が始まれば、運転者要求パワーのうち後輪モーターが出力することができるパワーを後輪モーターに出力するように指令し、運転者要求パワーから後輪モーター出力パワーを差し引いたパワーを前輪モーターに出力するように指令することを特徴とする請求項1に記載の四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、変速時に後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー以上であれば、前記後輪モーターに運転者要求パワーを出力するように指令することを特徴とする請求項9に記載の四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、変速時に後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー以上であれば、前記前輪モーターに‘0’パワーを出力するように指令することを特徴とする請求項10に記載の四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、変速時に後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー未満であれば、前記後輪モーターに出力可能な最大パワーを出力するように指令し、前記運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーを差し引いたパワーを前輪モーターに出力するように指令することを特徴とする請求項10に記載の四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、前輪モーター最大パワーと後輪モーター最大パワーの和が運転者要求パワー以上であり、前記後輪モーター最大パワーと減速機の作動効率を掛けた値が前記前輪モーター最大パワーと変速機の作動効率を掛けた値より小さければ、走行中に前記前輪モーターのみ単独で駆動させることを特徴とする請求項9に記載の四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【請求項14】
エンジン、及び前記エンジンの動力を変速して前輪ホイールに出力する変速機を含む前輪用パワートレインと、
後輪モーター、及び前記後輪モーターの動力を減速して後輪ホイールに出力する減速機を含む後輪用パワートレインと、
前記エンジンを駆動して走行しているうちに前記変速機で変速が始まれば、運転者要求パワーのうち後輪モーターが出力することができるパワーを後輪モーターに出力するように指令し、運転者要求パワーから後輪モーター出力パワーを差し引いたパワーをエンジンに出力するように指令する制御部と、
を含むことを特徴とする四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【請求項15】
前記制御部は、変速時に後輪モーターが出力することができる最大パワーが運転者要求パワー以上であれば、前記後輪モーターに運転者要求パワーを出力するように指令し、前記エンジンを停止させることを特徴とする請求項14に記載の四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【請求項16】
前記制御部は、変速時に後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー未満であれば、前記後輪モーターに最大パワーを出力するように指令し、前記エンジンに運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーを差し引いて残ったパワーを出力するように指令することを特徴とする請求項15に記載の四輪駆動電動化車両の駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は四輪駆動電動化車両の駆動制御装置に関し、より詳しくは、変速中に動力伝達経路で発生するエネルギー損失を最小化して燃費向上を図ることができる四輪駆動電動化車両の駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ハイブリッド車両、電気自動車、水素燃料電池車両などは、走行駆動源として電気モーターが搭載されており、このような車両を電動化車両という。電動化車両の四輪駆動用パワートレインの一例として、前輪にエンジン及び/又は前輪モーターが連結され、後輪には前輪モーターに比べて小型の後輪モーターが連結されたパワートレインが適用される。前輪に車両走行のためのメイン駆動源であるエンジン及び前輪モーターが連結され、後輪に補助駆動源である後輪モーターが連結された四輪駆動用パワートレインの場合、前輪モーターには変速機が連結され、後輪モーターには変速機が連結されず、減速機のみ連結されている。このような四輪駆動用パワートレインは、変速機が装着されているので変速が不可避であり、変速機と連結されている前輪モーター及び/又はエンジンを使って走行しているうちに変速を行う場合、変速ギアの段間比によって変速損失が発生する。変速損失は燃費悪化の要因として作用して燃費の低下をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2012-043683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記のような点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、変速時に動力伝達経路で発生するエネルギー損失を最小化して燃費向上を図ることができる四輪駆動電動化車両の駆動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による四輪駆動電動化車両の駆動制御装置は、エンジン、前輪モーター、及び前記エンジン及び前輪モーターの動力を変速して前輪ホイールに出力する変速機を含む前輪用パワートレインと、後輪モーター、及び前記後輪モーターの動力を減速して後輪ホイールに出力する減速機を含む後輪用パワートレインと、前記エンジンを駆動して走行しているうちに前記変速機で変速が始まれば、運転者要求パワーのうち後輪モーターが出力することができるパワーを後輪モーターに出力するように指令し、運転者要求パワーから前記後輪モーターに指令した出力パワーと前記エンジンの出力パワーを差し引いて残ったパワーを前輪モーターに出力するように指令する制御部と、を含むことを特徴とする。
【0006】
また、前記制御部は、走行中に前記前輪モーターが出力することができる最大パワーと前記後輪モーターが出力することができる最大パワーを合わせたパワーが運転者要求パワーより小さいとき、前記エンジンを駆動させ、前記エンジンに運転点マップによって決定されるパワーを出力するように指令することを特徴とする。
【0007】
前記制御部は、変速時に運転者要求パワーが後輪モーターが出力することができる最大パワーより大きければ、前記後輪モーターに最大パワーを出力するように指令し、前記エンジンが出力するエンジン出力パワーは運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーを差し引いたパワーだけ前輪ホイールに出力されることを特徴とする。
【0008】
また、前記前輪モーター及び前記後輪モーターに充放電可能に連結されるバッテリーを含み、前記制御部は、変速時に前記後輪モーター最大パワーとエンジン出力パワーの和が運転者要求パワーより大きければ、前記前輪モーターにバッテリーの充電のための発電を指令し、前記前輪モーターは運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーとエンジン出力パワーを差し引いて残ったパワーを用いて前記バッテリーの充電のための発電を遂行することを特徴とする。
【0009】
前記制御部は、変速時に運転者要求パワーが後輪モーター最大パワー以下であれば、前記後輪モーターに運転者要求パワーを出力するように指令し、前記前輪モーターに前記バッテリーの充電のための発電を指令し、前記前輪モーターはエンジン出力パワーを用いて前記バッテリーの充電のための発電を遂行することを特徴とする。
【0010】
前記制御部は、エンジンを駆動して走行しているうちに前記変速機で変速を遂行しない場合、運転者要求パワーからエンジン出力パワーを差し引いて残ったパワーを前輪モーターに出力するように指令することを特徴とする。
【0011】
前記制御部は、前記運転者要求パワーがエンジン出力パワー未満であれば、前記前輪モーターに前記バッテリーの充電のための発電を指令し、前記前輪モーターは運転者要求パワーからエンジン出力パワーを差し引いて残ったパワーを用いて前記バッテリーの充電のための発電を遂行することを特徴とする。
【0012】
前記制御部は、前記運転者要求パワーがエンジン出力パワーを超えれば、前記運転者要求パワーからエンジン出力パワーを差し引いて残ったパワーを前記前輪モーターに出力するように指令することを特徴とする。
【0013】
前記制御部は、前輪モーターの動力のみ使用して走行しているうちに変速機で変速が始まれば、運転者要求パワーのうち後輪モーターが出力することができるパワーを後輪モーターに出力するように指令し、運転者要求パワーから後輪モーター出力パワーを差し引いて残ったパワーを前輪モーターに出力するように指令することを特徴とする。
【0014】
前記制御部は、変速時に後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー以上であれば、前記後輪モーターに運転者要求パワーを出力するように指令することを特徴とする。
【0015】
前記制御部は、変速時に後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー以上であれば、前記前輪モーターに‘0’パワーを出力するように指令することを特徴とする。
【0016】
前記制御部は、変速時に後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー未満であれば、前記後輪モーターに出力可能な最大パワーを出力するように指令し、前記運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーを差し引いたパワーを前輪モーターに出力するように指令することを特徴とする。
【0017】
前記制御部は、前輪モーター最大パワーと後輪モーター最大パワーの和が運転者要求パワー以上であり、前記後輪モーター最大パワーと減速機の作動効率を掛けた値が前記前輪モーター最大パワーと変速機の作動効率を掛けた値より小さければ、走行中に前記前輪モーターのみ単独で駆動させることを特徴とする。
【0018】
本発明による他の四輪駆動電動化車両の駆動制御装置は、エンジン、及び前記エンジンの動力を変速して前輪ホイールに出力する変速機を含む前輪用パワートレインと、後輪モーター、及び前記後輪モーターの動力を減速して後輪ホイールに出力する減速機を含む後輪用パワートレインと、前記エンジンを駆動して走行しているうちに前記変速機で変速が始まれば、運転者要求パワーのうち後輪モーターが出力することができるパワーを後輪モーターに出力するように指令し、運転者要求パワーから後輪モーター出力パワーを差し引いたパワーをエンジンに出力するように指令する制御部と、を含むことを特徴とする。
【0019】
前記制御部は、変速時に後輪モーターが出力することができる最大パワーが運転者要求パワー以上であれば、前記後輪モーターに運転者要求パワーを出力するように指令し、前記エンジンを停止させることを特徴とする。
【0020】
前記制御部は、変速時に後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー未満であれば、前記後輪モーターに最大パワーを出力するように指令し、前記エンジンに運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーを差し引いて残ったパワーを出力するように指令することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、変速時に動力伝達経路で発生するエネルギー損失を最小化することができ、それによる燃費向上が可能であり、また変速中にトルクインターベンションによる変速ショックの大部分を除去し、それによる商品性改善が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】四輪駆動電動化車両の動力伝達系統を一例として示す図である。
図2】本発明による四輪駆動電動化車両の駆動制御のための構成を示す図である。
図3】本発明による四輪駆動電動化車両の前輪モーター駆動時の動力伝達経路を示す図である。
図4】本発明による四輪駆動電動化車両の前輪モーター駆動中変速時の動力伝達経路を示す図である。
図5】本発明による四輪駆動電動化車両のエンジンオンモードでの走行時の動力伝達経路を示す図である。
図6】本発明による四輪駆動電動化車両のエンジンオンモードでの走行中変速時の動力伝達経路を示す図である。
図7a】本発明による四輪駆動電動化車両の変速時の駆動制御過程を示すフローチャートである。
図7b】本発明による四輪駆動電動化車両の変速時の駆動制御過程を示すフローチャートである。
図8】四輪駆動電動化車両用動力伝達系統の他の例を示す図である。
図9】四輪駆動電動化車両用動力伝達系統の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。添付図面に示す事項は本発明の実施例を容易に説明するために図式化したものである。添付図面で、図1はエンジン及び前輪モーターを含む前輪用パワートレインと後輪モーターを含む後輪用パワートレインとが組み合わせられた四輪駆動(E-4WD、Electronic-4Wheel Drive)電動化車両の動力伝達系統を示す図、図2は本発明による四輪駆動電動化車両の変速時の駆動制御のための構成を示す図である。図1に示すように、前輪用パワートレイン100は、エンジン110と、前輪モーター120と、変速機130と、エンジンクラッチ140とを含む。エンジン110及び前輪モーター120は車両の走行のための動力を出力する。変速機130は前輪モーター120の後端(出力端)に連結され、エンジン110及び前輪モーター120の動力を変速して前輪ホイール150に出力することができる。エンジンクラッチ140はエンジン110と前輪モーター120との間に配置され、接続作動するか又は解除作動する。
より詳細には、エンジンクラッチ140の接合作動の際、エンジン動力が変速機130に伝達され、エンジンクラッチ140の解除作動の際、エンジン動力が断絶されて変速機130に伝達されない。
【0024】
変速機130は、エンジン110及び前輪モーター120で発生する動力を変速ギア段によって変速して前輪ホイール150に伝達することができる。例えば、変速機130としては、自動変速機(AT、Auto Transmission)又はダブルクラッチ変速機(DCT、Dual Clutch Transmission)が採択される。そして、図面符号170は、エンジン110のクランクプーリーと連結されてエンジン始動及び発電を行う始動発電機(HSG:Hybrid Starter Generator)170である。前輪モーター120及び始動発電機170はバッテリー160と電気的に連結される。バッテリー160は前輪モーター120と始動発電機170に充放電可能に連結される。より詳細に説明すると、バッテリー160は前輪モーター120と始動発電機170に放電するか前輪モーター120と始動発電機170によって充電可能である。後輪用パワートレイン200は、バッテリー160と充放電可能に連結される後輪モーター210と、後輪モーター210の動力を減速して後輪ホイール230に出力する減速機220とを含んでなる。後輪モーター210は車両の走行のための動力を出力するように駆動される。
【0025】
本発明では、前輪用パワートレイン100と後輪用パワートレイン200が組み合わせられた四輪駆動電動化車両の走行中に変速機130の変速が行われる場合、車両駆動を担当するエンジン110とモーター120、210の出力パワーを制御して変速損失を最小化することができる。具体的には、変速機130が連結されている前輪モーター120及び/又はエンジン110を使って走行しているうちに変速が始まる場合、変速機130が連結されていない後輪モーター210の動力を最大に使うことにより、変速中に動力伝達系統で発生するエネルギー損失を最小化して燃費向上を図るようにする。四輪駆動電動化車両の変速時のエンジン110とモーター120、210などの制御主体である制御部10としては、図2に示すように、上位制御器11と、上位制御器11の指令を受けてエンジン110の全般的な作動を制御するエンジン制御器12と、上位制御器11の指令を受けて前輪モーター120と後輪モーター210の全般的な駆動を制御するモーター制御器13などを使うことができる。
【0026】
また、上位制御器11は、変速機制御器14に指令を下すか変速機制御器14から変速フェーズ(phase)などの情報を受信することができる。変速機制御器14は、上位制御器11の指令を受けて変速機130の作動を制御することができる。四輪駆動電動化車両は、前輪モーター120及び/又は後輪モーター210の動力のみ用いて走行するEV(electric vehicle)モードと、エンジン110の動力を用いて走行するエンジンオンモードなどの走行モードとを提供することができる。ここで、EVモードは、前輪モーター120の動力のみ用いて走行する前輪モーター駆動モードを含む。そして、エンジンオンモードは、エンジン110の動力のみ用いて走行するエンジン単独駆動モードと、エンジン110を主動力源として使いながら前輪モーター120及び/又は後輪モーター210を補助動力源として使用するHEV(hybrid electric vehicle)モードとを含む。本発明では、前記のような走行モードで変速機130が装着されている前輪用パワートレイン100の動力を使って走行しているうちに変速が始まる場合、動力伝達経路で発生するエネルギー損失を低減することができる。言い換えれば、前輪モーター駆動モードとエンジンオンモードで走行しているうちに変速が始まれば、後輪モーター210の動力を最大に使って変速損失を最小化することができる。
【0027】
図3及び図4は前輪モーター駆動モードでの走行時の動力伝達経路を示す図である。具体的に、図3は本発明による四輪駆動電動化車両の変速前の動力伝達経路を示す図、図4は本発明による四輪駆動電動化車両の変速時の動力伝達経路を示す図である。前輪モーター120を使って走行する場合、図3に示すように、前輪モーター120の動力は変速機130を介して前輪ホイール150に伝達され、前輪モーター120はバッテリー160の電力によって駆動される。運転者の加速ペダル踏量(すなわち、加速ペダルストローク)によって可変する運転者要求パワーが前輪モーター最大パワーと後輪モーター最大パワーを合算したパワーより小さい場合、EVモードで走行するために前輪モーター120及び/又は後輪モーター210が駆動されることができる。前輪モーター最大パワーは前輪モーター120が出力することができる最大パワーであり、後輪モーター最大パワーは後輪モーター210が出力することができる最大パワーである。そして、EVモードで走行するとき、前輪モーター120又は後輪モーター210を単独で駆動させるか否かは動力伝達効率に基づいて判断することができる。すなわち、前輪モーター120と後輪モーター210の動力伝達効率に基づいて前輪モーター120と後輪モーター210のいずれか一つのモーターを選択して単独で駆動することができる。
【0028】
前輪モーター120の動力伝達効率は、前輪モーター120の動力が変速機130を介して前輪ホイール150に出力されるときの動力伝達効率であり、変速機130の作動効率によって決定されることができる。後輪モーター210の動力伝達効率は、後輪モーター210の動力が減速機220を介して後輪ホイール230に出力されるときの動力伝達効率であり、減速機220の作動効率によって決定される。よって、前輪モーター120の最大パワーと変速機130の作動効率を掛けて算出した第1値(A)と、後輪モーター210の最大パワーと減速機220の作動効率を掛けて算出した第2値(B)とを比較し、第1値(A)が第2値(B)より大きい場合、EVモードで走行するとき、前輪モーター120を単独で駆動させることが動力伝達効率の面で好ましい。また、第1値(A)が第2値(B)より大きい場合、前輪用パワートレイン100の動力伝達効率が増大し、前輪モーター120の単独駆動で運転者要求パワーを満たすことができる。すなわち、第1値(A)が第2値(B)より大きい場合、前輪モーター最大パワー値が運転者要求パワー以上となることができる。したがって、制御部10は、“前輪モーター最大パワー+後輪モーター最大パワー≧運転者要求パワー”であり、かつ“後輪モーター最大パワー×減速機作動効率<前輪モーター最大パワー×変速機作動効率”であれば、車両駆動源の中で前輪モーター120を単独で駆動させる。
【0029】
例えば、上位制御器11は、前輪モーター最大パワーと後輪モーター最大パワーを合わせたパワー値(前輪モーター最大パワー+後輪モーター最大パワー)が運転者要求パワー以上であると判断し、前輪モーター最大パワーと変速機作動効率を掛けた値(前輪モーター最大パワー×変速機作動効率)が後輪モーター最大パワーと減速機作動効率を掛けた値(後輪モーター最大パワー×減速機作動効率)より大きいと判定すれば、モーター制御器13に前輪モーター120の単独駆動を要請することができ、モーター制御器13は前輪モーター120を単独で駆動させることができる。制御部10は、エンジン110、前輪モーター120及び後輪モーター210の中で前輪モーター120のみ使用して走行しているうちに変速機130の変速が始まれば、運転者要求パワーのうち後輪モーター210が出力することができるだけのパワーを後輪モーター210に出力するように指令する。ここで、後輪モーター210は後輪モーター最大パワー以下のパワーを出力するように要請される。変速機130の変速開始可否は、変速フェーズに基づいて判断することができる。制御部10は、前輪モーター120の単独駆動によって走行しているうち変速機130の変速フェーズが所定の第1フェーズ(α)以上であれば、変速機130の変速が始まったと判断することができる。
【0030】
例えば、上位制御器11は、変速機制御器14から受けた変速フェーズ値が第1フェーズ(α)以上であれば、変速機130で変速が始まったと判断することができる。第1フェーズ(α)は一般的に使われる‘1’値に設定されることができるが、変速時の前輪モーター120のトルク低減速度によって‘1’以外の値に設定されることができる。例えば、変速時の前輪モーター120のトルクを相対的に早く低減させることができる場合、第1フェーズ(α)は‘1’以外の値に設定できる。制御部10は、変速機130の変速フェーズ情報に基づいて変速が始まったと判断すれば、後輪モーター最大パワーと運転者要求パワーを比較する。後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー以上であれば、後輪モーター210が運転者要求パワーを満たすパワーを出力することができるので、後輪モーター210は運転者要求パワーを出力するように制御される。すなわち、後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー以上であれば、後輪モーター210には運転者要求パワーと同じ値のパワーを出力するように要請する指令が伝達され、前輪モーター120には‘0’パワーを出力するように要請する指令が伝達される。
【0031】
そして、後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー未満であれば、後輪モーター210が運転者要求パワーを全部出力することはできないので、後輪モーター210は最大パワーを出力するように制御され、前輪モーター120は運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーを差し引いたパワー(運転者要求パワー-後輪モーター最大パワー)を出力するように制御される。すなわち、後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー未満であれば、制御部10により、後輪モーター210は後輪モーター最大パワーを出力するように制御され、前輪モーター120は運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーを差し引いただけのパワーを出力するように制御される。これにより、図4に示すように、後輪モーター最大パワーが減速機220を介して後輪ホイール230側に出力され、前輪モーター出力パワーが変速機130を介して前輪ホイール150側に出力される。このように、変速を遂行するとき、前輪モーター出力パワーを‘0’に制御するか又は前輪モーター出力パワーを変速前より減少させたパワー値に制御することにより、変速損失を最小化することができる。
【0032】
図5及び図6はエンジンオンモードでの走行時の動力伝達経路を示す図である。具体的に、図5は本発明による四輪駆動電動化車両の変速前の動力伝達経路を示す図、図6は本発明による四輪駆動電動化車両の変速時の動力伝達経路を示す図である。制御部10は、運転者要求パワーが前輪モーター最大パワーと後輪モーター最大パワーを合わせたパワー値(前輪モーター最大パワー+後輪モーター最大パワー)より大きければ、運転者要求パワーを満たすためにエンジン110を駆動させる。例えば、上位制御器11は、運転者要求パワーが前輪モーター最大パワーと後輪モーター最大パワーの和より大きければ、エンジン制御器12にエンジン110の駆動を要請し、エンジン制御器12は、前もって決まった最適運転点(Optimal Operating Line、OOL)の条件によってエンジン110を駆動させる。エンジン110は最適運転点の条件によって決定されるパワーを指令に従って出力し、前輪モーター120は運転者要求パワーからエンジン110が出力するパワー(すなわち、エンジン出力パワー)を差し引いて残ったパワー(運転者要求パワー-エンジン出力パワー)の出力を要請される。ここで、前輪モーター120に要請するパワーが正(+)の値であれば、前輪モーター120はバッテリー160を放電させながら駆動されて前輪ホイール150に動力を出力し、前輪モーター120に要請するパワーが負(-)の値であれば、前輪モーター120は発電モードで作動してバッテリー160を充電させる。
【0033】
最適運転点は燃費向上のための値として予め設定されてエンジン制御器12に記憶できる。例えば、エンジン回転速度(RPM)によってエンジン効率が最大になる最適のエンジントルクを決定するように構成された運転点マップがエンジン制御器12に記憶できる。エンジン制御器12は、上位制御器11の指令に従って運転点マップを介して決定される最適運転点(すなわち、最適のトルク値)でエンジン110の駆動を制御することができる。図5に示すように、エンジン110の動力を使うエンジンオンモードで走行する場合、エンジン110の動力が変速機130を介して前輪ホイール150に伝達される。
制御部10は、エンジン110の動力又はエンジン110及び前輪モーター120の動力を使ってエンジンオンモードで走行しているうちに変速機130の変速が始まるか、又は、図5のように、エンジン110、前輪モーター120及び後輪モーター210の動力を使ってエンジンオンモードで走行しているうちに変速機130の変速が始まれば、運転者要求パワーのうち後輪モーター210が出力することができるだけのパワーを後輪モーター210に出力するように指令し、エンジンパワーでバッテリー160を充電させ、変速機130に入力されるトルクを最小化させる。 前述したように、変速機130の変速開始可否は、変速フェーズに基づいて判断することができる。制御部10は、エンジンオンモードで走行しているうちに変速機130の変速フェーズが所定の第2フェーズ(β)以上であれば、変速機130の変速が始まったと判断することができる。
【0034】
例えば、上位制御器11は、変速機制御器14から受けた変速フェーズ値が第2フェーズ(β)以上であれば、変速機130で変速が始まったと判断することができる。第2フェーズ(β)は一般的に使われる‘1’値に設定できるが、変速時のエンジン110のトルク低減速度によって‘1’以外の値に設定できる。例えば、変速時のエンジン110のトルクを相対的に早く低減させることができる場合、第2フェーズ(β)は‘1’以外の値が適用できる。制御部10は、エンジンオンモードで走行しているうちに変速機130の変速が始まれば、後輪モーター最大パワーと運転者要求パワーを比較した結果による所定の動力を出力するように後輪モーター210に要請する。具体的に、制御部10は、後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー以上であれば、後輪モーター210に運転者要求パワーを要請して後輪モーター210が運転者要求パワーだけのパワーを出力するように制御し、後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー未満であれば、後輪モーター210に最大パワーを要請して後輪モーター210が最大パワーを出力するように制御する。後輪モーター210に運転者要求パワーが要請されるとき、エンジン110は最適運転点の条件によって決定される最適のパワーを出力するように指令を受け、前輪モーター120は運転者要求パワーから後輪モーター出力パワーとエンジン出力パワーを差し引いたパワー(運転者要求パワー-後輪モーター出力パワー-エンジン出力パワー)を出力するように指令される。
【0035】
ここで、後輪モーター出力パワーは運転者要求パワーと同じ値のパワー(後輪モーター出力パワー=運転者要求パワー)であるため、前輪モーター120にはマイナス(-)値のエンジン出力パワーと同じパワーを出力することが要請され、よって前輪モーター120はエンジン出力パワーを用いてバッテリー160を充電させる。言い換えれば、前輪モーター120はエンジン出力パワーによって発電機として作動してバッテリー160を充電させる。例えば、上位制御器11は、後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー以上であれば、後輪モーター210に運転者要求パワーを出力するように要請することと、前輪モーター120にマイナス(-)値のエンジン出力パワーを出力するように要請することとをモーター制御器13に指令する。すると、モーター制御器13は後輪モーター210に運転者要求パワーを出力するように指令し、前輪モーター120にエンジン出力パワーを用いてバッテリー160の充電のための発電を遂行するように指令する。これにより、後輪モーター210が運転者要求パワーを全部出力するとき、エンジン110が出力するパワー(すなわち、エンジン出力パワー)は前輪ホイール150に出力されずに前輪モーター120に印加され、前輪モーター120はエンジン出力パワーを用いてバッテリー160を充電させる。また、後輪モーター出力パワーは減速機220を介して後輪ホイール230に伝達される。
【0036】
また、変速が始まって後輪モーター210が最大パワーを要請される場合、エンジン110は運転点マップによって決定される出力パワーを要請され、前輪モーター120は運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーとエンジン出力パワーを差し引いたパワー(運転者要求パワー-後輪モーター最大パワー-エンジン出力パワー)を要請される。変速時に後輪モーター210が運転者要求パワーを全部出力することはできない場合、後輪モーター210が出力できないパワー(すなわち、運転者要求パワーに対する後輪モーター最大パワーの不足分)をエンジン出力パワーで満たすようになる。すなわち、後輪モーター最大パワーが運転者要求パワーより小さい場合、エンジン出力パワーの少なくとも一部が変速機130を介して前輪ホイール150に伝達される。ここで、前輪ホイール150に伝達されるパワーは運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーを差し引いたパワー(運転者要求パワー-後輪モーター最大パワー)と決定される。これにより、前輪ホイール150に伝達されるパワー(以下、‘前輪伝達パワー’という)からエンジン出力パワーを差し引いたパワー(前輪伝達パワー-エンジン出力パワー)が前輪モーター120に要請される。前輪伝達パワーからエンジン出力パワーを差し引いたパワーがマイナス(-)値の場合、すなわち後輪モーター最大パワーとエンジン出力パワーの和が運転者要求パワーより大きい場合、前輪モーター120はエンジン出力パワーから前輪伝達パワーを差し引いたパワー(エンジン出力パワー-前輪伝達パワー)を用いてバッテリー160を充電させる。
【0037】
より詳細に説明すると、変速機130で変速を遂行するとき、後輪モーター210とエンジン110に要請するパワーの和(後輪モーター最大パワー+エンジン出力パワー)が運転者要求パワーより大きい場合、制御部10は、前輪モーター120にバッテリー160の充電のための発電を指令する。ここで、前輪モーター120は運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーとエンジン出力パワーを差し引いたパワー(運転者要求パワー-後輪モーター最大パワー-エンジン出力パワー)を用いてバッテリー160の充電のための発電動作を遂行する。例えば、上位制御器11は、後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー未満であれば、後輪モーター210に最大パワーを出力するように要請することと、前輪モーター120に前輪伝達パワーからエンジン出力パワーを差し引いたパワー(前輪伝達パワー-エンジン出力パワー)を出力するように要請することとをモーター制御器13に指令し、モーター制御器13は、後輪モーター210に最大パワーを出力するように指令し、前輪モーター120にエンジン出力パワーから前輪伝達パワーを差し引いたパワー(エンジン出力パワー-前輪伝達パワー)だけバッテリー160を充電させるように指令する。
これにより、図6に示すように、後輪モーター210が最大パワーを出力するとき、エンジン110が出力するパワーの一部(すなわち、前輪伝達パワー)は前輪ホイール150に伝達され、残りのパワー(エンジン出力パワー-前輪伝達パワー)は前輪モーター120によってバッテリー160の充電に使われる。ここで、後輪モーター最大パワーは減速機220を介して後輪ホイール230に出力される。
【0038】
このように、エンジンオンモードで走行しているうちに変速機130の変速動作が始まれば、後輪モーター210ができるだけ多くの走行動力を出力し、後輪モーター210がエンジン110より多くの走行動力を出力することもできる。以下に、図7a及び図7bに基づいて本発明による四輪駆動電動化車両の変速時の駆動制御方法を説明する。図7a及び図7bは本発明による四輪駆動電動化車両の変速時の駆動制御方法を示すフローチャートであるが、本発明の変速時の駆動制御方法が図7a及び図7bに示す手順に必ずしも限定されるものではない。図7aを参照すると、まず運転者要求パワーを前輪モーター最大パワーと後輪モーター最大パワーを合算したパワー(前輪モーター最大パワー+後輪モーター最大パワー)と比較する(S100)。運転者要求パワーが前輪モーター最大パワーと後輪モーター最大パワーを合わせたパワーより大きければ、エンジン110を駆動させる(S210)。そして、運転者要求パワーが前輪モーター最大パワーと後輪モーター最大パワーを合わせたパワー以下であれば、前輪モーター最大パワーと変速機作動効率を掛けた第1値(前輪モーター最大パワー×変速機作動効率)と、後輪モーター最大パワーと減速機作動効率を掛けた第2値(後輪モーター最大パワー×減速機作動効率)とを比較する(S110)。
【0039】
第1値が第2値より大きければ、車両の駆動源の中で前輪モーター120を単独で駆動させてEVモードで走行する(S120)。前輪モーター120の単独駆動中に変速機130で変速が始まるかを判断する(S130)。変速機130の変速が始まれば、後輪モーター最大パワーを運転者要求パワーと比較する(S140)。後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー以上であれば、変速が完了するまで後輪モーター210に運転者要求パワーと同じ値のパワーを出力するように指令し(S150)、前輪モーター120に‘0’パワーを出力するように指令して変速損失を最小化する。後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー未満であれば、変速が完了するまで後輪モーター210に最大パワーを出力するように指令し、前輪モーター120に運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーを差し引いたパワー(運転者要求パワー-後輪モーター最大パワー)を出力するように指令し(S160)、変速機130で発生するエネルギー損失を低減するようにする。変速機130での変速が完了すれば、車両駆動モードを再び前輪モーター駆動モードに転換し(S170)、運転者要求パワーと前輪モーター最大パワーを比較する(S180)。運転者要求パワーが前輪モーター最大パワー以下であれば前輪モーター駆動モードを維持し、運転者要求パワーが前輪モーター最大パワーより大きければ後輪モーター210を駆動させる(S190)。
【0040】
後輪モーター210の駆動が始まれば、運転者要求パワーを前輪モーター最大パワーと後輪モーター最大パワーを合わせたパワーと比較し(S200)、運転者要求パワーが前輪モーター最大パワーと後輪モーター最大パワーの和より大きければ、モーター120、210駆動のみでは運転者要求パワーを満たすことができないので、エンジン110を駆動させる(S210)。図7bを参照すると、エンジン110は最適運転点制御によってエンジン効率を最大化することができるパワーを出力するように駆動される(S220)。エンジン110が駆動されれば、変速機130で変速が始まるかを判断し(S230)、変速が始まらなかった場合、運転者要求パワーと最適運転点制御によるエンジン出力パワーを比較する(S240)。変速が始まらなかった場合、運転者要求パワーからエンジン出力パワーを差し引いたパワーを前輪モーター120に出力するように指令する。よって、運転者要求パワーがエンジン出力パワーより小さければ、前輪モーター120は制御部10の指令に従って前輪モーター120と電気的に連結されているバッテリー160を充電させる(S250)。ここで、前輪モーター120はエンジン出力パワーから運転者要求パワーを差し引いたパワーを用いて発電を遂行する。そして、運転者要求パワーがエンジン出力パワーより大きければ、前輪モーター120は制御部10の指令に従って運転者要求パワーからエンジン出力パワーを差し引いただけのパワーを出力する。ここで、前輪モーター120はバッテリー160の電力を用いて駆動され、前輪モーター出力パワーは変速機130を介して前輪ホイール150に伝達される。
【0041】
S230段階での比較結果、変速機130で変速が始まったと判断すれば、後輪モーター最大パワーを運転者要求パワーと比較する(S260)。後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー以上であれば、後輪モーター210が運転者要求パワーを出力することができるので、後輪モーター210に運転者要求パワーを出力するように指令し、前輪モーター120に運転者要求パワーから後輪モーター出力パワーとエンジン出力パワーを差し引いたパワーを出力するように指令する(S270)。ここで、後輪モーター出力パワーは運転者要求パワーと同じパワー値を有するので、前輪モーター120はエンジン出力パワーを用いてバッテリー160を充電させる。変速機130で変速が完了するまで、後輪モーター210は運転者要求パワーを出力し、前輪モーター120はエンジン出力パワーを用いてバッテリー160を充電させる。そして、後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー未満であれば、後輪モーター210が運転者要求パワーを完全に出力することができないので、後輪モーター210に最大パワーを出力するように要請し、エンジン出力パワーの少なくとも一部を前輪ホイール150に送り出す(S280)。ここで、前輪ホイール150に伝達されるエンジンパワー(すなわち、前輪伝達パワー)は運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーを差し引いたパワー(運転者要求パワー-後輪モーター最大パワー)と決定される。
【0042】
そして、ここで運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーとエンジン出力パワーを差し引いたパワー(運転者要求パワー-後輪モーター最大パワー-エンジン出力パワー)を前輪モーター120に出力するように要請する(S280)。よって、前輪モーター120はエンジン出力パワーから前輪ホイール150に伝達される前輪伝達パワーを差し引いたパワー(エンジン出力パワー-前輪伝達パワー)をバッテリー充電に使う。例えば、モーター制御器13は、上位制御器11の指令に従って前輪モーター120のバッテリー充電動作を制御することができる。ここで、前輪モーター120がバッテリー充電に使用するエンジンパワーを制御して、エンジン出力パワーの少なくとも一部が前輪ホイール150に伝達されるようにすることができる。変速機130で変速が完了するまで、後輪モーター210は最大パワーを出力し、前輪モーター120はエンジン出力パワーから前輪伝達パワーを差し引いたパワー(エンジン出力パワー-前輪伝達パワー)を用いてバッテリー160を充電させる。一方、図8及び図9は四輪駆動電動化車両用動力伝達系統の他の例を示す図である。図8に示す矢印はエンジンオンモードでの走行中に変速が始まる前の動力伝達経路を示し、図9に示す矢印は変速中の動力伝達経路を示す。図8を参照すると、四輪駆動電動化車両は、エンジン111を含む前輪用パワートレイン101と、後輪モーター211を含む後輪用パワートレイン201とが組み合わせられた動力伝達系統を備えることができる。
【0043】
具体的に、前輪用パワートレイン101は、エンジン111と、エンジン111の動力を変速して前輪ホイール151に出力する変速機131とを含が、前輪モーターは含んでいない。後輪用パワートレイン201は、後輪モーター211と、後輪モーター211の動力を減速して後輪ホイール231に出力する減速機221とを含む。前記のような前輪用パワートレイン101及び後輪用パワートレイン201を備える車両の場合にも、走行中に変速が発生するとき、後輪モーター211に動力を最大に出力するように指令して変速損失を最小化することができる。すなわち、変速機131が連結されているエンジン111を使って走行しているうちに変速が始まる場合、変速機131が連結されていない後輪モーター211を介して走行駆動力を最大に発生することにより、変速中に動力伝達系統で発生するエネルギー損失を低減して燃費向上を図ることができる。図8に示すように、前輪用パワートレイン101が前輪モーターを含んでいない場合、前輪モーターを用いたバッテリー充電ができないが、変速機131を介して前輪ホイール151に伝達されるエンジンパワーを減少させることによって変速損失を低減することができる。車両は、変速機131で変速が遂行されない場合、運転者の加速ペダル踏量によって変動される運転者要求パワーを基準に、エンジン111に運転者要求パワーが要請されるか、又はエンジン111にエンジン最適運転点によって決定されるパワーが要請されることができる。
【0044】
ここで、エンジン111が運転者要求パワーを全部出力することができなければ、後輪モーター211に運転者要求パワーからエンジン出力パワーを差し引いただけのパワー(運転者要求パワー-エンジン出力パワー)が要請できる。このように、エンジン111の動力又はエンジン111と後輪モーター211の動力を用いて走行しているうちに、すなわちエンジンオンモードで走行しているうちに変速機131で変速が始まれば、制御部10は、後輪モーター最大パワーを運転者要求パワーと比較し、その比較結果によって後輪モーター211が出力することができるパワーを後輪モーター211に要請する。後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー以上であれば、後輪モーター211が運転者要求パワーだけのパワーを全部出力することができるので、制御部10は、図9に示すように、後輪モーター211に運転者要求パワーを出力するように指令し、エンジン111に‘0’パワーを出力するように要請してエンジン111を停止させる。そして、後輪モーター最大パワーが運転者要求パワー未満であれば、後輪モーター211が運転者要求パワーを全部出力することはできないので、制御部10は後輪モーター211に最大パワーを出力するように指令し、エンジン111に運転者要求パワーから後輪モーター最大パワーを差し引いたパワー(運転者要求パワー-後輪モーター最大パワー)を出力するように指令する。このように、変速時に変速機131を介して前輪ホイール151に伝達されるパワーを最小化することにより、変速中に動力伝達系統で発生するエネルギー損失を低減することができる。
【0045】
以上で本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0046】
10 制御部
11 上位制御器
12 エンジン制御器
13 モーター制御器
14 変速機制御器
100、101 前輪用パワートレイン
110、111 エンジン
120 前輪モーター
130、131 変速機
140 エンジンクラッチ
150、151 前輪ホイール
160、161 バッテリー
170、171 始動発電機
200、201 後輪用パワートレイン
210、211 後輪モーター
220、221 減速機
230、231 後輪ホイール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9