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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092588
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】フィルム引張要素
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/90 20170101AFI20220615BHJP
   A61C 19/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61C 13/107 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
A61C5/90
A61C19/00 L
A61C13/107
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021193065
(22)【出願日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】20213108.2
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】マルクス リヒテンシュタイガー
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052FF07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造コストを増加させることなく卓越した装着快適性を提供し、さらに同時に、使い捨て部品としての形成とそれに伴って最適な感染防止効果にもかかわらず環境への負荷も少なくする、フィルム引張要素を提供する。
【解決手段】口唇リング14と前庭リング16を備えていてそれらの間あるいはそれらを超えてフィルム12が延在するフィルム引張要素10に関し、前庭リング16および/または口唇リング14の少なくとも一方に圧力がかけられたガスが充填される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口唇リングと前庭リングを備えていてそれらの間あるいはそれらを超えてフィルムが延在するフィルム引張要素であって、前庭リング(16)および/または口唇リング(14)の少なくとも一方に圧力がかけられたガスが充填されることを特徴とするフィルム引張要素。
【請求項2】
口唇リング(14)と前庭リング(16)のいずれにもガスが充填されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム引張要素。
【請求項3】
ガスが空気、特に周囲空気であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム引張要素。
【請求項4】
口唇リング(14)および/または前庭リング(16)が空気注入可能であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフィルム引張要素。
【請求項5】
口唇リング(14)および/または前庭リング(16)がいずれもチューブから形成され、そのチューブがリング(14,16)間に延在するフィルム(12)と結合されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のフィルム引張要素。
【請求項6】
リング(14,16)とフィルム(12)が相互に一体性であり、特に同じ材料から形成されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のフィルム引張要素。
【請求項7】
口唇リング(14)が圧力空気接続部(18)を備え、それを介して空気注入可能であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のフィルム引張要素。
【請求項8】
両方のリング(14,16)内のガス、特に空気が、特に圧力空気管(24)を介して、相互に流体結合されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のフィルム引張要素。
【請求項9】
圧力空気接続部(18)が特に調節可能である圧力空気源と接続可能あるいは接続されていて、それによって前庭リング(16)および/または口唇リング(14)に個別に調節可能な圧力を付加可能であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のフィルム引張要素。
【請求項10】
口唇リング(14)と前庭リング(16)の両方、さらにフィルム(12)が高弾力性の材料から形成され、リング(14,16)の空気注入に際してそれらのリングの直径とフィルム引張要素(10)の直径のいずれもが拡大することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のフィルム引張要素。
【請求項11】
圧力空気接続部(18)を備え、必要に応じてそれを介して口唇リング(14)および/または前庭リング(16)から圧力空気を排出可能であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のフィルム引張要素。
【請求項12】
リング(14,16)が50ミリバールないし200ミリバールの超過圧で空気注入可能であり、空気注入によってリングの容積が(解放された状態と比べて)数倍、特に最低3倍に拡大することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のフィルム引張要素。
【請求項13】
空気注入された状態において前庭リング(16)および/または口唇リング(14)が、フィルム(12)が広げられた際のリング(14,16)間の距離の少なくとも10分の1に相当しかつ最大でもその距離の3分の1の直径を有することを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載のフィルム引張要素。
【請求項14】
圧力空気接続部(18)が下唇の領域内の、特に患者の前歯の側方で、口唇リング(14)に取り付けられることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載のフィルム引張要素。
【請求項15】
リング(14,16)の材料厚が異なっていて、特に前庭リング(16)の材料厚が口唇リング(14)のものより大きいことを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載のフィルム引張要素。
【請求項16】
製造に際してフィルム(12)の折り返しおよび固定、特に溶接によってリング(14,16)が形成されることを特徴とする請求項1ないし15のいずれかに記載のフィルム引張要素。
【請求項17】
前庭リング(16)が口唇リング(14)に比べて小さな超過圧を有し、また独自の圧力空気接続部(18)もしくは補助圧力空気接続部、特に減圧弁を備えることを特徴とする請求項1ないし16のいずれかに記載のフィルム引張要素。
【請求項18】
圧力空気アダプタ(20)を備え、それによってフィルム引張要素(10)の圧力空気接続部(18)を歯科治療室の圧力空気供給部に接続可能であることを特徴とする請求項1ないし17のいずれかに記載のフィルム引張要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1前文に記載のフィルム引張要素に関する。
【背景技術】
【0002】
その種のフィルム引張要素は、10年以上前からオプトラゲートの商品名で、患者の口腔内の歯科治療に際して患者の口内への自由なアクセスを可能にするために有効に使用されている。フィルム引張要素は、前庭リングと口唇リングから形成され、それらの間にフィルムが延在する。その要素においてフィルムは両方のリングに対して摺動可能に取り付けられ、弾力性である。アレルギー反応を防止するために、フィルムがラテックス不使用で形成される。
【0003】
その種のフィルム引張要素は、患者の口腔内の保護すべき領域を被包するように設計される。この要素は、一方で歯科医師を感染症から保護するものであるが、他方では患者も保護する。使用後には、使用済みのフィルム引張要素を廃棄しなければならない。そのため、低コストかつ少ない原料消費で製造し得ることが重要である。
【0004】
患者の口へのアクセスを保証するために、従来知られていて先行技術においてフィルム引張要素の口唇リングと前庭リングの両方が比較的硬質の樹脂材料から形成される。
【0005】
それによって、患者の口を十分な程度に広げて保持し得ることが保証される。口唇リングを硬質に形成しても通常それほど不快に感じられることはないが、初期世代のフィルム引張要素の場合は、患者の歯肉に硬質の前庭リングが接して前庭領域全体で不快に感じるという患者からの苦情があった。
【0006】
患者による拒絶が頻発することを防止するため、第2世代のフィルム引張要素においては、主要な領域においてより柔軟な樹脂材料を付着することによって、高コストなクッション加工が前庭リングに施された。材料消費が著しく大きくかつ高い製造コストの原因となるにもかかわらず、依然としてこの極めて高コストな解決方式が使用されている。
【0007】
その種のフィルム引張要素が、例えば特許文献1によって知られている。
【0008】
コストの理由からは、不快なものとして見られている硬質の前庭リングを備えたタイプのフィルム引張要素がむしろ要望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3708112号(A1)明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、製造コストを増加させることなく卓越した装着快適性を提供し、さらに同時に、使い捨て部品としての形成とそれに伴って最適な感染防止効果にもかかわらず環境への負荷も少なくする、請求項1の前文に記載のフィルム引張要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題は、本発明に従って請求項1によって解決される。従属請求項によって好適な追加構成が定義される。
【0012】
本発明によれば、フィルム引張要素が2本のリング、すなわち口唇リングと前庭リングを備える。フィルム引張要素を使用する際に口唇リングが口腔外に配置されるように設定され、前庭リングは口腔内、すなわち患者の口腔前庭内に配置されるように設定される。
【0013】
本発明によれば、両方のリングが中空である。それらのリングにはガス、特に空気が充填され、そのガスに圧力がかけられる。その場合、リングの内圧が少なくとも周囲気圧と同じであるか、より高いことと理解される。
【0014】
両方のリングがチューブとして形成され、それぞれ閉鎖された中空空間を形成することが好適である。本発明によれば、両方のリングがそれらのリング間に延在するフィルムと同じ材料からなることが好適である。フィルムが前庭リングを超えて延在し、従って前庭リング上で折り返されることも可能である。
【0015】
フィルムと両方のリングは、周知のように高弾力性の材料から形成される。リングとフィルムを一体性にすることが好適である。
【0016】
各リングの中空空間を相互に接続する圧力空気管を設けることも可能である。その場合、両方のリングが圧力空気管と共に単一の閉鎖された中空空間を形成する。
【0017】
リングの一方、好適には口唇リングが、圧力空気接続部を備えることができる。それによって、そのリング、また好適には前庭リングにも、任意の所要の圧力をかけることが可能になる。
【0018】
圧力を高めると各リングが硬くなり、圧力をより低くすると各リングが柔らかくなり容易に変形可能になる。
【0019】
本発明によれば、使用中において両方のリングが、それらリングの間にフィルムが引張可能でありかつ前庭リングを軽く手動で押圧することによって幾らか楕円形の形状でフィルム引張要素が患者の口内に挿入可能になるような硬度を有する。
【0020】
解放された状態において両方のリングは、圧力がかかっている場合に、実質的に円形状を有することが好適である。
【0021】
リングとフィルムが一体性であるため、フィルム引張要素全体を射出成形法によって高速に製造することが容易に可能になる。その他の任意の製造方法も同様に可能である。
【0022】
一般的に、歯科医師の診療室は圧力空気源を備える。この圧力空気源は歯科医師によって例えば手あるいは足で操作され、適宜なアダプタを介して口唇リングおよび前庭リングに空気注入するために使用することもできる。空気注入時間の選択によってリングの硬度を調節することができる。一方、圧力空気源が設定圧力および/または放出される空気流の点に関して調節可能である場合、その調節可能性を本発明に係る口唇リングおよび前庭リングの空気注入のために使用することもできる。
【0023】
材料厚の選定に応じて空気注入に際してリングが極僅かしか変形しない形状を有することができ、従って圧力空気によって単にリングが強固に充填されるだけとなる。しかしながら、両リングあるいは少なくともリング一方が空気注入によって一種のチューブ型の風船のように膨張することも可能である。
【0024】
その実施形態においては、各リングの断面直径を例えば3倍に増加させることができる。
【0025】
リングへの圧力空気の影響はリングの材料厚に大きく依存する。例えばフィルムが0.3mmの材料厚を有する場合、リングも同じ材料厚を有することができる。しかしながら、リングに対して顕著に大きな材料厚、例えば0.8mmを選択することもできる。考えられるリングとフィルムの材料厚の範囲は0.05mmないし1.2mmであるが、個別のケースによってはその範囲の上方あるいは下方の材料厚を選択することも除外されない。
【0026】
リングは、空気注入された状態においていずれにしても空気注入されていない状態に比べて顕著に拡大された断面直径を有する。一般的に、断面直径はフィルムに向かって緩やかな尖形を有する円形を成す。射出成形型を適宜に選択することによってリングに空気注入された場合に断面直径が円形あるいは楕円形になるようにすることも可能である。
【0027】
両方のリングの製造のために、単に例えば5ないし10cmの直径を有するチューブ形状のフィルムをいずれも末端側の例えば8mmの長さで折り返すことも可能である。
【0028】
折り返された末端は、例えば1mmの先端領域でフィルムに溶接される。それに代えて、接着剤を使用した結合も可能である。
【0029】
本発明の範囲を逸脱することなく、その他の任意の本発明の変更が可能である。例えば、口唇リングと前庭リングの間の圧力空気管内に減圧弁を設置することができる。そのことは、前庭リングが口唇リングに比べて小さな超過圧を有するように作用する。
【0030】
本発明のその他の詳細、特徴、ならびに利点は、添付図面を参照しながら後述する実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係るフィルム引張要素の実施形態を示した立体図である。
図2図1のフィルム引張要素の背面を示した説明図である。
図3図1および図2の本発明に係るフィルム引張要素の平面図である。
図4図1および図2の本発明に係るフィルム引張要素の側面図である。
図5】本発明に係るフィルム引張要素の変更された構成形態を示した説明図である。
図6】本発明に係るフィルム引張要素の別の実施形態を示した説明図である。
図7】本発明に係るフィルム引張要素のさらに別の実施形態を示した説明図である。
図8】本発明に係るフィルム引張要素のさらに別の実施形態を示した説明図である。
図9】本発明に係るフィルム引張要素を、変更された実施形態において、線IX-IXに沿った断面で示した説明図である。
図10】本発明に係るフィルム引張要素のさらに別の実施形態を示した別の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1には、フィルム引張要素10が三次元で示されている。フィルム引張要素10は、上面図において実質的に円形である。図示された実施例おいて、面取りされた角部を有する四角形に近似した形状である。
【0033】
それに代えて、その他の任意の形状も可能であり、例えば円形、楕円形もしくは長円形とすることができる。
【0034】
患者の開口の形状に一定程度近似すれば好適である。
【0035】
フィルム引張要素10は、口唇リング14と前庭リング16の間に延在する高弾力性のフィルム12を有する。両リング14および16は、フィルム12から突出して一体性に延在するチューブの形式で形成される。口唇リング14と前庭リング16には、加圧されたガスが充填される。そのガスは、不活性ガス、あるいは例えば周囲空気とすることができる。
【0036】
リング14および16は空気注入可能であることが好適である。そのため、フィルム引張要素10が少なくとも1個の圧力空気接続部18を備えるが、図1において圧力空気接続部18は省略されている。
【0037】
圧力空気接続部18は、空気注入用に使用する圧力空気源を取り外した際に空気注入されたリング14から空気が漏出することを防止するチェック弁を備えることが好適である。
【0038】
図1ならびにその他の図面において、1個の圧力空気接続部18のみが示されている。前庭リング16の空気注入用にも同様の装備を備えるべきであることが理解される。そのため前庭リング16も、例えば口腔の前庭リング16からフィルム12に沿って、好適には側方に、延在することができる圧力空気接続部18を備える。
【0039】
図1においてフィルム引張要素10は前面側から示されており、図2においては背面から立体的に示されている。口唇リング14は周知のように前庭リング16より幾らか大きくなる。フィルム12は両方のリングの直径より半径方向内側に幾らか凹むことが好適であり、それによって唇への整合性を有する。
【0040】
フィルム引張要素10を患者の口内に装着するために口唇リング14と前庭リング16に幾らか空気注入することが好適であり、例えば100ミリバールの超過圧に空気注入する。
【0041】
フィルム引張要素10が形状安定し、患者の口内に挿入可能になる。挿入後に、圧力空気接続部18ならびに場合によってさらに別の圧力空気接続部を介して、所要の超過圧、例えば300ミリバールまでフィルム引張要素10に空気注入する。
【0042】
この実施形態において拡張が実行され、例えば臼歯の前庭側を口腔内スキャナによってスキャンするために、患者の口内への良好なアクセスを歯科医師が有する。
【0043】
フィルム引張要素10はリング14および16と同じ材料厚で製造され、両リング14および16がフィルム12と一体性に製造されることが好適である。材料厚は必要に応じて広範囲に調節することができ、図示された実施例においては0.2mmである。
【0044】
所要の超過圧によって、各リング14および16が空気注入されていない柔軟な状態と比べて膨張し、空気注入されていない柔軟な状態の約2倍の断面直径に膨張する。
【0045】
それによって、すなわち空気圧によって、口唇リング14と前庭リング16が硬化し、従って、従来の技術において利用されていたものの本発明によって排除可能になる硬質の樹脂リングに対して、所要の代替機能を提供することができる。
【0046】
図3には、図1および図2の実施形態におけるフィルム引張要素10が平面図で示されている。フィルム引張要素10が対称形であり、高さに比べて幾らか幅が大きく、従って開口の形状にある程度整合することが示されている。
【0047】
図4において、リング14および16が空気注入された状態におけるフィルム引張要素10が示されている。図示されているように、フィルム引張要素10全体が半径Rで湾曲し、開口よりも数cm外側でかつ開口の前方に位置する。
【0048】
フィルム12は幾らか半径方向内側に湾曲して延在し、従って唇の形状に整合する。
【0049】
図5には、本発明に係るフィルム引張要素10の変更された構成形態が示されている。圧力空気接続部18が取り外し可能な圧力空気アダプタ20と結合される。そのアダプタは、リング14および16に空気注入するために歯科医の治療室に存在する圧力空気が使用されるように機能する。さらに、この解決方式においては、リング14および16の間に延在する図示されていない圧力空気管が設けられる。
【0050】
さらに、この実施形態において、前庭リング16の断面直径が口唇リング14の断面直径に比べて顕著に大きくなる。そのため、前庭リング16が幾らか柔軟で、口唇リングが幾らか硬質になる。
【0051】
そのような硬度の配分は、口唇リング14を前庭リング16に比べてより高い超過圧に空気注入することによっても達成することができる。そのことを達成するように、例えばリング14および16の間の圧力空気管内に減圧弁を設けることができる。
【0052】
図6図7、および図8には、本発明に係るフィルム引張要素10の別の実施形態が示されている。空気注入された状態におけるフィルム引張要素10の湾曲のため、フィルム引張要素10を極めて容易に患者の口内に挿入することができる。
【0053】
歯科医師は、親指と人差し指を使ってリング14および16を略矢状面で圧縮し、従ってフィルム引張要素10がさらに幅広くなり、一方高さは小さくなる。その後まず前庭リング16の片方の遠心端を患者の口腔前庭に挿入し、次に近心領域、すなわち切歯前方の領域を挿入し、親指と人差し指の間の圧力を削減した後、圧力の減少によって幾らか近心方向に移動し従って挿入が容易になったもう一方の遠心領域を挿入する。
【0054】
かけられていた圧力が均等化の作用を成すため、圧迫部位と場合によっては傷を発生させることもあり得る硬質の樹脂リングとは異なって患者に不快感を与えず、歯科医師が口唇リング14への圧力を上下で完全に解除すると、本発明に係るフィルム引張要素10が自動的に患者の口の形状に適合する。
【0055】
本発明に係るフィルム引張要素10の線IX-IXに沿った断面が図9に示されている。断面軌道は図8に示されている。
【0056】
この実施形態において、製造に際してフィルム12が末端で折り返され、それによって口唇リング14と前庭リング16が形成される。折り返された末端、さらにそれの先端領域22が、その末端を冷却の間にフィルム12に圧接することによって、短い範囲にわたってフィルム12に溶接される。
【0057】
図9に示されるように、この実施形態において口唇リング14と前庭リング16が幾らか台形形状を有する。
【0058】
図1ないし図8においてリング14および16の少なくとも一方に圧力空気接続部18が取り付けられ、圧力がかけられている際に各リング14および16が閉鎖された中空空間を形成することが理解される。
【0059】
図10には、さらに別の実施形態が示されている。それによれば、リング14および16の間の圧力空気管24がどのようにフィルム12に沿って延在し得るかが示されている。圧力空気管24はフィルム12に埋入することもでき、これもフィルムならびにリング14および16と一体性に延在することができる。
【0060】
圧力空気接続部18は図10に概略的に示されたチェック弁26を備え、圧力空気源から取り外した際に注入された圧力空気が流出することをチェック弁が防止する。
【0061】
しかしながら、圧力空気を幾らか抜く必要がある場合は、歯科医師が圧力空気管24内のチェック弁26の箇所を親指と人差し指の間で幾らか圧縮することができ、それによってチェック弁26を機能しないようにして幾らか空気を排出することができる。
【0062】
本発明に係るフィルム引張要素10は、均一なフィルム厚で使用することもできる高弾力性のフィルム12のみからなるため、極めて容易かつ低コストに製造することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【外国語明細書】