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特開2022-92601オーバーシュートおよびアンダーシュート防止のための波形成形
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092601
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】オーバーシュートおよびアンダーシュート防止のための波形成形
(51)【国際特許分類】
   H04B 5/02 20060101AFI20220615BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20220615BHJP
   H04B 1/59 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
H04B5/02
G06K7/10 164
G06K7/10 176
H04B1/59
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198977
(22)【出願日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】20213183
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518139306
【氏名又は名称】パントロニクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ ヨングスマ
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル ピーバー
【テーマコード(参考)】
5K012
【Fターム(参考)】
5K012AB01
5K012AC01
5K012AC09
5K012AC11
5K012AD02
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、受信機との通信の複雑さが低減され、通信範囲が広く、安定性が良好な送信機を提供することである。
【解決手段】RFフィールド(3)内の振幅変調データ信号(2)をRFID通信システム(5;22)の受信機(4)に無線で送信するための送信機(1;21)であって、送信機(1;21)は、特定の周波数および波形を有するキャリア信号(7)を生成するための波発生器(6)と、送信されるデータ信号に関してキャリア信号(7)を変調するための変調段(15)と、RFフィールド(3)内の振幅変調データ信号(2)を無線で送信するために増幅器(9)およびマッチング回路(10)を介して変調段(15)または波発生器(6)に接続されたアンテナ(11)とを備え、送信機(1;21)が、直接的または間接的にデータ信号に依存してキャリア信号(7)の波形を選択するために波発生器(6)に接続された成形段(16)をさらに備えることを特徴とする、送信機(1;21)。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFフィールド(3)内の振幅変調データ信号(2)をRFID通信システム(5;22)の受信機(4)に無線で送信するための送信機(1;21)であって、
特定の周波数および波形を有するキャリア信号(7)を生成するための波発生器(6)と、
送信されるデータ信号に関して前記キャリア信号(7)を変調するための変調段(15)と、
増幅器(9)およびマッチング回路(10)を介して、前記変調段(15)または波発生器(6)に接続され、前記RFフィールド(3)内の前記振幅変調データ信号(2)を無線で送信するアンテナ(11)と、を備え、
前記送信機(1;21)は、前記波発生器(6)に接続され、直接的または間接的に前記データ信号に応じて前記キャリア信号(7)の波形を選択する成形段(16)をさらに備えることを特徴とする、送信機(1;21)。
【請求項2】
前記送信機(1;21)は、前記データ信号を符号化し、符号化データ信号(14)の立ち上がりエッジおよび/または立ち下がりエッジの前および/または後の時間枠において、前記キャリア信号(7)を変調するために前記符号化データ信号(14)を前記変調段(15)に提供するとともに、前記キャリア信号(7)の波形を成形するために前記符号化データ信号(14)を前記成形段(16)に提供するエンコーダ段(13)をさらに備える、請求項1に記載の送信機(1;21)。
【請求項3】
形状構成段(17)は、前記データ信号および/または前記符号化データ信号(14)の特定の波形について前記キャリア信号(7)の異なる波形を有する構成データを記憶する、請求項1または2に記載の送信機(1;21)。
【請求項4】
前記成形段(16)は、前記RFフィールド(3)のエンベロープ(18;20)の立ち上がりエッジの間の前記データ信号または符号化データ信号(14)の前記立ち上がりエッジの後の第1の時間枠(t3->t4)において、この第1の時間枠(t3>t4)の外側と同じ周波数であるがより低いエネルギー含有量を有する前記キャリア信号(7)の波形を選択するように構築されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の送信機(1;21)。
【請求項5】
前記成形段(16)は、前記第1の時間枠(t3>t4)内では前記キャリア信号(7)の三角波形または鋸歯状波形を選択し、前記第1の時間枠(t3>t4)外では正弦波形を選択するように構築されている、請求項4に記載の送信機(1;21)。
【請求項6】
前記成形段(16)は、前記RFフィールド(3)のエンベロープ(18)の立ち下がりエッジの間の前記データ信号または符号化データ信号(14)の前記立ち下がりエッジの後の第2の時間枠(t1>t2)において、この第2の時間枠(t1>t2)の外側と同じ周波数であるがより高いエネルギー含有量を有する前記キャリア信号(7)の波形を選択するように構築されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の送信機(1;21)。
【請求項7】
前記成形段(16)は、前記第2の時間枠(t1>t2)内の前記キャリア信号(7)の方形波形と、前記第2の時間枠(t1>t2)外の正弦波形とを選択するように構築されている、請求項5に記載の送信機(1;21)。
【請求項8】
前記波発生器(6)は、13.56MHzのNFC周波数を有するキャリア信号(7)を生成するように構築されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の送信機(1;21)。
【請求項9】
前記変調段(15)または波発生器(6)は、
第1の時間枠(t1->t2)内のオーバーシュートを回避するために第1の時間枠(t3->t4)内の前記データ信号または符号化データ信号(14)の前記振幅をさらに低減し、
第2の時間枠(t1->t2)内のアンダーシュートを回避するために第2の時間枠(t1->t2)内の前記データ信号または符号化データ信号(14)の前記振幅をさらに増加させる、請求項4から8のいずれか一項に記載の送信機(1;21)。
【請求項10】
RFフィールド(3)内の振幅変調データ信号(2)をRFID通信システム(5;22)の受信機(4)に無線で送信するために、請求項1から9のいずれか一項に記載の送信機(1;21)を使用する方法であって、前記方法は、
送信されるデータ信号または符号化データ信号(14)を用いて特定の周波数および波形を有するキャリア信号(7)の振幅変調を処理するステップと、
前記データ信号または符号化データ信号(14)の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの発生に応じて、1つまたはいくつかの波に対して前記キャリア信号(7)のより高いまたは低いエネルギー含有量を有する異なる波形を選択するステップと、を備える方法。
【請求項11】
前記RFフィールド(3)の前記エンベロープ(18;20)のオーバーシュートを低減または回避するために、前記データ信号または符号化データ信号(14)の立ち上がりエッジの発生における1つまたはいくつかの波のための前記キャリア信号(7)のより低いエネルギー含有量が選択されるか、または、
前記RFフィールド(3)の前記エンベロープ(18;20)のアンダーシュートを低減または回避するために、前記データ信号または符号化データ信号(14)の立ち下がりエッジの発生における1つまたはいくつかの波のための前記キャリア信号(7)のより高いエネルギー含有量が選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記RFフィールド(3)の前記エンベロープ(18;20)の立ち上がりエッジの持続時間を短縮するために、前記データ信号または符号化データ信号(14)の前記立ち上がりエッジの発生における1つまたはいくつかの波のための前記キャリア信号(7)のより高いエネルギー含有量が選択されるか、または、
前記RFフィールド(3)の前記エンベロープ(18;20)の立ち下がりエッジの持続時間を短縮するために、前記データ信号または符号化データ信号(14)の前記立ち下がりエッジの発生における1つまたはいくつかの波のための前記キャリア信号(7)のより低いエネルギー含有量が選択される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFフィールド内の振幅変調データ信号をRFID通信システムの受信機に無線で送信するための送信機に関し、この送信機は、
特定の周波数および波形を有するキャリア信号を生成するための波発生器と、
送信されるデータ信号に関してキャリア信号を変調するための変調段と、
RFフィールド内の振幅変調データ信号を無線で送信するために増幅器およびマッチング回路を介して変調段または波発生器に接続されたアンテナと
を備える。
【背景技術】
【0002】
既知の無線周波数識別通信システムは、アクティブまたはパッシブトランスポンダと通信するために、RFIDリーダまたは送信機においてST25R3916のような集積回路を使用する。典型的な用途では、パッシブトランスポンダまたはタグは、取り付けられた製品の製品識別を記憶し、リーダはこの製品情報を取得するために使用される。リーダは電力供給され、そのアンテナによって放射される磁気RFフィールドを生成する。リーダおよびタグが互いに近接しているとき、リーダ生成RFフィールドがタグのアンテナ内に誘導され、パッシブタグに電力供給するために使用される。タグはまた、リーダから信号を受信し、リーダに応答を返信するためのトランシーバも有する。
【0003】
タグとリーダとの間で情報を送信するために使用される変調のプロトコルおよびタイプを定義する、ISO/IEC18000-3またはISO/IEC14.443タイプAおよびBまたはISO15.693またはECMA-340 13,56MHz近距離無線通信(NFC)またはNFCフォーラムまたはソニー社からのFeliCaのような社内規格などの規格がある。これらの規格の一部または全ては、RFフィールド内のデジタルデータを有する振幅変調データ信号を無線でタグに送信するために振幅変調を使用するように定義している。たとえば、ISO14.443タイプAは、データ信号を送信用の符号化データ信号に符号化するために変形ミラー符号化を使用するように、さらに定義している。
【0004】
NFC通信システムは、ますます異なる用途に使用されてきた。これらのシステムの多くは、近くのPCB基板、金属ケースなどのような不利な条件を有し、これらはRFフィールド内の振幅変調データ信号の変調形状に対して悪影響を及ぼす可能性がある。図1から図3は、このような悪影響の例を示す。図1Aは、RFフィールドを生成するためにTxピンが増幅器およびマッチング回路を介してアンテナに接続されている先端技術の送信機のTxピン上の振幅変調データ信号の一例を示す。図1Bは、送信機のアンテナ付近のRFフィールドを示す。RFフィールドのエンベロープの立ち上がりエッジは、規格の不適合、または送信機と受信機との間の通信の故障にさえつながる可能性のある、キャリア信号の最大振幅のオーバーシュートを示す。図2Aは、RFフィールドのエンベロープの立ち下がりエッジの終わりにおけるアンダーシュートおよびRFフィールドのエンベロープの立ち上がりエッジの終わりにおけるオーバーシュートにつながる、先端技術の送信機のTxピン上の10%ASK振幅変調データ信号の別の例を示す。図3Aは、RFフィールドのエンベロープの立ち上がりエッジの終わりにおける「リンギング」と呼ばれる影響につながる、先端技術の送信機のTxピン上の100%振幅変調データ信号の別の例を示す。別のこのような悪影響は「ハンプ」と呼ばれ、RFフィールドのエンベロープの立ち下がりエッジの減少または立ち上がりエッジの立ち上がりが単調ではないときである。この影響は、たとえば、NFCフォーラムのバージョン2.1、文献「Analog Technical Specification(アナログ技術仕様)」の段落5.7.2.2.に記載されている。
【0005】
RFフィールドにおけるこれらの問題のある悪影響を解決するために、集積回路ST25R3916を備える送信機は、異なるレベル間でキャリア信号の送信機電圧を動的に変化させる。オーバーシュートが回避されるべきである場合、送信機電圧は、RFフィールドのエンベロープの立ち上がりエッジの時間枠中の変調エッジの間に動的に変化させられる。この解決策は、集積回路内に異なる供給電圧が存在しなければならず、これらの電圧間の切り替えが行われなければならないという欠点を有する。これは、いくつかの電源を必要とする。そうでなければ、レギュレータはその出力電圧を非常に迅速に変化させる必要がある。
【0006】
別の送信機で実現されるRFフィールドにおけるこの問題のあるオーバーシュートを解決するための別の既知の解決策は、制御可能な抵抗器の変更とともにQ係数を変更することでアンテナを離調することによって、アンテナ特性を動的に適合させることである。この解決策は、米国特許第9,654,181号明細書に記載されており、アンテナの離調がアンテナ特性を変化させ、これによって完全なアンテナシステムの挙動を変化させるという欠点を有する。これにより、通信範囲が狭くなり、関連情報が交換され得る前に送信機とタグとの間の通信が失われるおそれがある。その結果、逆効果をもたらさないために、いかなる適応制御も非常に慎重に適用されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第9,654,181号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】NFCフォーラムのバージョン2.1、文献「Analog Technical Specification(アナログ技術仕様)」の段落5.7.2.2.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、受信機との通信の複雑さが低減され、通信範囲が広く、安定性が良好な送信機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、直接的または間接的にデータ信号に依存してキャリア信号の波形を選択するために波発生器に接続された成形段をさらに備える送信機によって達成される。
【0011】
この成形段は、変調段が受信するのと同時にデータ信号または符号化データ信号を受信するように構築され、したがって、振幅変調データ信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジがいつ発生するかがわかる。この知識に基づいて、成形段は、オーバーシュートまたはアンダーシュートを回避するために限られた期間にわたってより高いまたは低いエネルギー含有量で波発生器によって生成されるキャリア信号の別の波形を動的に選択し、さもなければRFフィールド内の妨害物体によって別の問題のある悪影響がRFフィールドに引き起こされる可能性がある。波のエネルギー含有量は、波の中または下に含まれる領域に関連している。たとえば、波発生器によって生成されたキャリア信号の一般的な波形が正弦波であり、RFフィールドのエンベロープ内の立ち上がりエッジの終わりにおけるオーバーシュートが回避されるべきである場合には、成形段は、1つまたはいくつかの波の波発生器を正弦波から鋸歯状波または三角波に切り替える。正弦波と同じ周波数および振幅を有する鋸歯状波または三角波のエネルギー含有量は正弦波のエネルギー含有量よりも低いので、適切な時点でより低いエネルギー含有量を有するこの1つまたはいくつかの波は、RFフィールド内のエンベロープのオーバーシュートを低減または回避するのに役立つ。
【0012】
本発明のこれらおよびその他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかとなり、これらを参照して明確化されるだろう。当業者は、様々な実施形態が組み合わせられてもよいことを理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】RFフィールドを生成するためにTxピンが増幅器およびマッチング回路を介してアンテナに接続されている先端技術の送信機のTxピン上の100%振幅変調データ信号の一例を示す図である。
図1B】RFフィールドのエンベロープの立ち上がりエッジのオーバーシュートを有する、図1Aの振幅変調データ信号の送信機のアンテナ付近のRFフィールドを示す図である。
図2A】RFフィールドを生成するためにTxピンがマッチング回路を介してアンテナに接続されている先端技術の送信機のTxピン上の10%ASK振幅変調データ信号の別の例を示す図である。
図2B】RFフィールドのエンベロープの立ち下がりエッジのアンダーシュートおよび立ち上がりエッジのオーバーシュートを有する、図2Aの振幅変調データ信号の送信機のアンテナ付近のRFフィールドを示す図である。
図3A】RFフィールドを生成するためにTxピンがマッチング回路を介してアンテナに接続されている先端技術の送信機のTxピン上の100%振幅変調データ信号のさらなる例を示す図である。
図3B】立ち上がりエッジのオーバーシュート、およびRFフィールドのエンベロープの立ち上がりエッジの終わりにおける「リンギング」と呼ばれる影響を有する、図3Aの振幅変調データ信号の送信機のアンテナ付近のRFフィールドを示す図である。
図4】本発明による、振幅変調データ信号を送信するための送信機の第1の実施形態を示す図である。
図5図5Aは、RFフィールドのエンベロープ内のアンダーシュートを回避するために1つの方形波が挿入された、図4に示される送信機のTxピン上の10%ASK振幅変調データ信号を示す図であり、図5Bは、RFフィールドのエンベロープ内のオーバーシュートを回避するために1つの鋸歯状波が挿入された、図4に示される送信機のTxピン上の10%ASK振幅変調データ信号を示す図である。
図6A】オーバーシュートを回避するために2つの三角波が挿入された、図4に示される送信機のTxピン上の100%振幅変調データ信号を示す図である。
図6B】RFフィールドのエンベロープ内のオーバーシュートを示す図である。
図7】本発明による、振幅変調データ信号を送信するための送信機の第2の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図4は、本発明の第1の実施形態による、RFフィールド3内の振幅変調データ信号2をRFID通信システム5の受信機4に無線で送信するための送信機1を示す。送信機1は、特定の周波数および波形を有するキャリア信号7を生成するための波発生器6を備える。RFID通信システム5は、正弦波の波形を有する13.56MHzのキャリア信号7の共振周波数を定義する、NFC規格ISO18.092に準拠している。RFID通信システム5は、ISO/IEC14.443タイプAおよびBまたはISO15.693またはECMA-340 13.56MHzに、さらに準拠している。波発生器6は、送信機1の集積回路8内で実現され、集積回路8のTxピンTxにある増幅器9を介して振幅変調データ信号2を提供する。マッチング回路10は、TxピンTxに接続されており、インピーダンスをアンテナ11にマッチングさせる。マッチング回路10およびアンテナ11は、パッシブまたはアクティブなタグ、または携帯電話などその他いずれかのアクティブなデバイスとして実現可能な近傍の受信機4に増幅された振幅変調データ信号2を共鳴させて送信するように配置されている。
【0015】
集積回路8のデータ段12は、受信機4に送信されるデジタルデータを記憶する。NFC規格で定義されるように、変形ミラー符号化は、変調段15に符号化データ信号14を提供するエンコーダ段13でデジタルデータのデータ信号14を符号化するように処理されなければならない。変調段15は、集積回路8のTxピンTxにおいて振幅変調データ信号2を提供するために符号化データ信号14の10%振幅シフトキーイングASK変調を達成するために波発生器6によって生成されるキャリア信号7の振幅を取るように構築される。本発明の別の実施形態では、50%または100%ASK変調、または当業者にとって既知のその他いずれかの変調または符号化を使用することができる。
【0016】
送信機1は、直接的または間接的にデータ信号に依存してキャリア信号7の波形を選択するために波発生器6に接続された成形段16をさらに備える。本発明のこの実施形態では、波形は、符号化データ信号が使用される際にデータ信号から間接的に選択される。これを達成するために、成形段16は、エンコーダ段13に接続されており、変調段15に提供されるのと同時に符号化データ信号14を受信する。したがって、成形段16は、振幅変調データ信号2の立ち上がりまたは立ち下がりエッジが発生するときの情報を有する。図5Aは、時間インスタンスt1が立ち下がりエッジを含む、TxピンTxにおける振幅変調データ信号2を示す。図5Bは、アンテナ11によって生成されるRFフィールドを示しており、時間インスタンスt2におけるこのRFフィールドは、図2Bに示されるように先端技術で知られている送信機が使用される場合、アンダーシュートを含むことになる。このアンダーシュートを回避するために、成形段16は、RFフィールド3により多くのエネルギーを提供するために、時間インスタンスt1の後、時間インスタンスt2の直前の第2の時間枠で別の波形を選択するように構築される。成形段16によって選択されるこのような別の波形は形状構成段17に記憶され、これは正弦波形よりも高いエネルギー含有量および低いエネルギー含有量を有する波形を記憶する。方形波形は、正弦波形よりも多くのエネルギーを信号に含み、成形段16は、図5Bに示されるように、振幅変調データ信号3のエンベロープ18におけるアンダーシュートを回避するためにキャリア信号7の単一の正弦波を単一の方形波で置き換えるために、方形波形を選択する。
【0017】
図5Aは、時間インスタンスt3のTxピンTxにおける振幅変調データ信号2が立ち上がりエッジを含むことをさらに示す。図5Bは、図2Bに示されるように、時間インスタンスt4におけるRFフィールドが、先端技術で知られている送信機が使用される場合にはるかに高くなるであろうオーバーシュートをほとんど含まないことを示す。このオーバーシュートを低減または回避さえするために、成形段16は、RFフィールド3により少ないエネルギーを提供するために、時間インスタンスt3の後、時間インスタンスt4の直前の第1の時間枠で別の波形を選択するように構築される。より少ないエネルギーを有する成形段16によって選択されるこのような別の波形は、可能な波形を2つだけ挙げると鋸歯状波または三角波形であり得、これらの波形は構成データとして形状構成段17に記憶されている。この実施形態では、正弦波形よりも少ないエネルギーを信号内に有する鋸歯状波形が成形段16によって選択され、これは、図5Bに示されるように、振幅変調データ信号3のエンベロープ18内のオーバーシュートを低減するために、キャリア信号7の単一の正弦波を単一の鋸歯状波で置き換える。2つの正弦波が2つの鋸歯状波で置き換えられている場合、図5Bに示されるわずかなオーバーシュートは完全に回避することができる。
【0018】
RFフィールド3内のオーバーシュートまたはアンダーシュートで説明したのと同様に、立ち下がりエッジの減少またはRFフィールド3のエンベロープの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジが単調ではないとき、いわゆる「ハンプ」は低減されるか、または完全に回避され得る。キャリア信号7の正弦波の半波または全波あるいはいくつかの波を、適切な時点でより高いまたは低いエネルギー含有量を有する信号の半波または全波あるいはいくつかの波で置き換えることにより、図3Bに示される「ハンプ」または「リンギング」のようなRFフィールド3の歪みが低減されるか、または完全に回避され得る。これは、金属またはその他の物体が近くにあり、RFフィールド3を乱す場合であっても、受信機4のアンテナで受信した振幅変調データ信号は規格に完全に準拠し、エラーなしに復号され得るという利点を有する。
【0019】
正弦波形を1つずつ生成することができるような波発生器6は、同じ出願人の欧州特許第3182585号明細書から知られている。この先行技術文献は、正弦波を生成するために出力電流の増分を合算するM個のデジタル波形成形ビットの小さな増分によって正弦波を生成するデジタル電力増幅器を開示している。この教示の本発明の改善として、全種類の他の波形も生成することができ、当業者は、正弦波形の代わりに三角波形を生成するためにM個のデジタル波形成形ビットの増分を合算する方法を理解するだろう。鋸歯状波形あるいは矩形波形のような別の波形にも同じことが該当する。したがって、本発明は、上述の先行技術から知られるデジタル電力増幅器の本発明の使用をさらに特徴とする。デジタル電力増幅器の本発明の使用は、形状構成段17に記憶された信号波のより高いまたは低いエネルギー含有量を有する異なる波形のためのM個のデジタル波形成形ビットによって実現され、この選択されたM個のデジタル波形成形ビットは、成形段16によって波発生器6を操縦するために使用される。形状構成段17は、データ信号または符号化データ信号の特定の波形に関連して、またはこれと組み合わせて、異なる波形についてこれらのM個のデジタル波形成形ビットを記憶する。
【0020】
図6Aは、図6Bに示されるようなRFフィールドのエンベロープ20内のオーバーシュートを回避するために挿入された2つの三角波19を有する、図4に示される送信機1のTxピンTx上の100%振幅変調データ信号を示す。この例では、キャリア信号のエネルギーを低減するために、波形が正弦波から三角波に変更されているのみならず、これに加えて、正弦波の振幅と比較して三角波の振幅が低減されており、RFフィールドのエンベロープ20内のオーバーシュートを低減するのにさらに役立つ。別の実施形態では、アンダーシュートを回避するためにより多くのエネルギー含有量を有する波形への変更に加えて、正弦波の振幅を増加してもよい。
【0021】
図7は、本発明の第2の実施形態による、RFフィールド3内の振幅変調データ信号2をRFID通信システム22の受信機4に無線で送信するための送信機21を示す。第1の実施形態の送信機1と第2の実施形態の送信機21との違いは、波発生器6が常に同じ振幅を有するキャリア信号7を提供し、符号化データ信号14を有するこのキャリア信号7の振幅変調が変調段15で処理されることである。このわずかに異なる配置により、本発明の第1の実施形態による送信機1と同じ発明的利点が達成され得る。さらに、本発明のこの第2の実施形態では、増幅器9は集積回路8の一部ではなく、TxピンTxに接続された外部増幅器9として実現される。
【0022】
図示されない本発明の第3の実施形態では、データ信号は符号化されず、したがってキャリア信号を変調するために直接的に使用される。したがって、成形段は、データ信号に直接的に依存して、キャリア信号の波形を選択する。
【0023】
本発明のさらなる実施形態では、波発生器は、一般に使用されるキャリア信号のために鋸歯状波または三角波を生成することができる。成形段は、第2の時間枠において、RFフィールドのエンベロープ内のアンダーシュートを回避するために、より高いエネルギー含有量を有する正弦波形を使用することができる。本発明の別の実施形態では、波発生器は、RFフィールドのエンベロープ内のオーバーシュートを回避するために、一般に使用されるキャリア信号のための方形波と、より低いエネルギー含有量を有する正弦波形または鋸歯状波形または三角波形とを生成することができる。当業者は、キャリア信号のための一般的な波形としてどの種類の波形が使用されるかに応じて、波形の全ての種類の異なる選択を提供することができる。
【0024】
本発明のさらなる実施形態では、RFフィールドのエンベロープ内の立ち上がりエッジの持続時間を短縮するために、データ信号または符号化データ信号の立ち上がりエッジの発生における1つまたはいくつかの波に対してキャリア信号のより高いエネルギー含有量が選択されてもよい。これは、いくつかの実施形態では関係しないが、オーバーシュートを引き起こす可能性があるが、立ち上がりエッジの持続時間の短縮は、たとえばビットレートを増加させるのに、または受信機におけるビット検出を容易にするのに役立つ。同様に、RFフィールドのエンベロープ内の立ち下がりエッジの持続時間を短縮するために、データ信号または符号化データ信号の立ち下がりエッジの発生における1つまたはいくつかの波に対してキャリア信号のより低いエネルギー含有量が選択されてもよい。これは、いくつかの実施形態では関係しないが、アンダーシュートを引き起こす可能性があるが、立ち下がりエッジの持続時間の短縮は、たとえばビットレートを増加させるのに、または受信機におけるビット検出を容易にするのに役立つ。

図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7