(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092605
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】経口固形製剤および経口組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20220615BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220615BHJP
A23L 33/115 20160101ALI20220615BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220615BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220615BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220615BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220615BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20220615BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20220615BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20220615BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220615BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20220615BHJP
A61K 31/194 20060101ALI20220615BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220615BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220615BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20220615BHJP
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A23K 20/163 20160101ALI20220615BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20220615BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20220615BHJP
A61K 35/745 20150101ALN20220615BHJP
【FI】
A23L5/00 C
A23L33/10
A23L33/115
A61K9/48
A61K47/36
A61K47/24
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A23K20/158
A23K20/163
A61P1/14
A61K31/19
A61K35/745
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199686
(22)【出願日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2020205425
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年6月21日にウェブサイトにて、第75回日本栄養・食糧学会大会講演要旨集で「短鎖脂肪酸(酢酸)を内包した大腸送達性製剤の便通改善および食後血糖値上昇抑制作用」(E-36)の演題の要旨を発表 2021年7月4日オンライン開催の「第75回日本栄養・食糧学会大会」において発表 2021年6月25日に森下仁丹株式会社によるプレスリリースにて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000191755
【氏名又は名称】森下仁丹株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100207136
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 有希
(72)【発明者】
【氏名】川上 宏智
(72)【発明者】
【氏名】児玉 高幸
(72)【発明者】
【氏名】河野 麻実子
(72)【発明者】
【氏名】山口 大貴
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B035
4C076
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】 経口摂取後、有効成分を大腸に送達できる経口固形製剤および経口組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明の経口固形製剤は大腸に送達可能な調製物を含む。ここで、調製物は、有機酸およびその薬理学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する。本発明の経口固形製剤は、一般食品、サプリメント、保健機能食品、医薬品などの経口組成物を構成する材料として利用できる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口固形製剤であって、大腸に送達可能な調製物を含み、
該調製物が、有機酸およびその薬理学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する、経口固形製剤。
【請求項2】
さらに、前記調製物を内包する少なくとも1種の皮膜を含む、請求項1に記載の経口固形製剤。
【請求項3】
前記皮膜が多糖類を含有する、請求項2に記載の経口固形製剤。
【請求項4】
前記調製物がさらに両性界面活性剤を含有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の経口固形製剤。
【請求項5】
前記有機酸が、2から10の炭素数を有する脂肪酸である、請求項1から4のいずれか1項に記載の経口固形製剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の経口固形製剤を含有する、経口組成物。
【請求項7】
腸内環境を改善するために用いられる、請求項6に記載の経口組成物。
【請求項8】
生活習慣病の改善または予防のために用いられる、請求項6に記載の経口組成物。
【請求項9】
血糖値または血中尿酸値の上昇を抑制させるために用いられる、請求項6または8に記載の経口組成物。
【請求項10】
血中の中性脂肪濃度の上昇を抑制させるために用いられる、請求項6または8に記載の経口組成物。
【請求項11】
ストレスまたは疲労感を軽減させるために用いられる、請求項6に記載の経口組成物。
【請求項12】
血中のケトン体濃度を上昇させるために用いられる、請求項6に記載の経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口固形製剤および経口組成物に関し、より詳細には大腸に送達可能な調製物を含む経口固形製剤および経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの大腸は、生活習慣病や、免疫機能などの様々な体質に影響を及ぼす重要な臓器である。大腸の機能を整えることにより、こうした体質の改善が期待されている。
【0003】
また、大腸内には、大多数の腸内細菌が生息し、腸内フローラと言われる細菌叢が形成されている。この腸内フローラを形成する腸内細菌は、例えば乳酸菌、ビフィズス菌などの善玉菌(乳酸産生菌と呼ぶこともある);ウェルシュ菌などの悪玉菌;バクテロイデス属菌などの日和見菌;に大別される。腸内フローラのバランスが崩れると腸内環境が変化し、その結果、体調に悪影響を与え様々な疾患を引き起こす可能性があることが知られている。
【0004】
これに対し、例えば非特許文献1には、ビフィドバクテリウムに対して所定量の短鎖脂肪酸(例えば、酢酸、プロピオン酸または酪酸)を有効成分として共存させることにより当該ビフィドバクテリウムの増殖を促進することが報告されている。
【0005】
近年では、健康志向の高まりから、種々の製剤を積極的に摂取しようとするニーズが高まっている。しかし、このような製剤や非特許文献1であっても、経口摂取後、有効成分(短鎖脂肪酸)を大腸に送達できた報告はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kaneko T et al., J. Dairy Sci., 1994, 77(2), pp.393-404
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、経口摂取後、有効成分を大腸に送達できる経口固形製剤および経口組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、経口固形製剤であって、大腸に送達可能な調製物を含み、
該調製物が、有機酸およびその薬理学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する、経口固形製剤である。
【0009】
1つの実施形態では、本発明の経口固形製剤はさらに、上記調製物を内包する少なくとも1種の皮膜を含む。
【0010】
さらなる実施形態では、上記皮膜は多糖類を含有する。
【0011】
1つの実施形態では、上記調製物はさらに両性界面活性剤を含有する。
【0012】
1つの実施形態では、上記有機酸は、2から10の炭素数を有する脂肪酸である。
【0013】
本発明はまた、上記経口固形製剤を含有する、経口組成物である。
【0014】
1つの実施形態では、本発明の経口組成物は腸内環境を改善するために用いられる。
【0015】
1つの実施形態では、本発明の経口組成物は生活習慣病の改善または予防のために用いられる。
【0016】
さらなる実施形態では、本発明の経口組成物は血糖値または血中尿酸値の上昇を抑制させるために用いられる。
【0017】
1つの実施形態では、本発明の経口組成物は血中の中性脂肪濃度の上昇を抑制させるために用いられる。
【0018】
1つの実施形態では、本発明の経口組成物はストレスまたは疲労感を軽減させるために用いられる。
【0019】
1つの実施形態では、本発明の経口組成物は血中のケトン体濃度を上昇させるために用いられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、経口摂取後、調製物が大腸に送達することにより、有機酸およびその薬理学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を大腸に投与でき、しかも、この化合物は大腸よりも上部にある胃などの他の消化管で吸収等の影響を受けにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の経口固形製剤を三層構造のシームレスカプセルの形態で製造するために使用され得る製造装置のノズル部分を表す模式断面図である。
【
図2】実施例1で得られた経口固形製剤(E1)と、比較例1で得られたプラセボ製剤(C1)とを用いた健常成人の整腸機能の改善の確認試験の結果を示すグラフである。
【
図3】実施例2で得られた経口固形製剤(E2)と、比較例2で得られたプラセボ製剤(C2)とを用いた健常成人の食後血糖値上昇の抑制の確認試験の結果を示すグラフであって、各製剤の摂取期間第1日目の規定食事摂取後に得られた結果を示すグラフである。
【
図4】実施例2で得られた経口固形製剤(E2)と、比較例2で得られたプラセボ製剤(C2)とを用いた健常成人の食後血糖値上昇の抑制の確認試験の結果を示すグラフであって、各製剤の摂取期間第5日目の規定食事摂取後に得られた結果を示すグラフである。
【
図5】参考例1で得られたプラセボ製剤(R1)を用いた崩壊部位の確認試験の結果を示す、カプセル内視鏡で撮影された写真である。
【
図6】実施例2で得られた経口固形製剤(E2)摂取群および比較例2で得られたプラセボ製剤(C2)摂取群のそれぞれにおける、製剤摂取前後の糞便中インドール濃度の測定結果(被験者毎の結果の平均値)を示すグラフである。
【
図7】実施例2で得られた経口固形製剤(E2)摂取群および比較例2で得られたプラセボ製剤(C2)摂取群のそれぞれにおける、製剤摂取前後の糞便中p-クレゾール濃度の測定結果(被験者毎の結果の平均値)を示すグラフである。
【
図8】実施例2で得られた経口固形製剤(E2)摂取群および比較例2で得られたプラセボ製剤(C2)摂取群のそれぞれにおける、製剤摂取後の便臭スコアの平均値の変化有無について集計した被験者人数の割合を示すグラフであって、(a)は被験者が健常成人である場合の当該割合を示すグラフであり、(b)は被験者が便秘傾向者である場合の当該割合を示すグラフである。
【
図9】健常成人を被験者としたヒト試験において、実施例2で得られた経口固形製剤(E2)の摂取2週目の便性状スコアの平均値と、比較例2で得られたプラセボ製剤(C2)の摂取2週目の便性状スコアの平均値と直線で結んで被験者毎に対比させたグラフである。
【
図10】便秘傾向者を被験者としたヒト試験において、実施例2で得られた経口固形製剤(E2)の摂取2週目の便性状スコアの平均値と、比較例2で得られたプラセボ製剤(C2)の摂取2週目の便性状スコアの平均値と直線で結んで被験者毎に対比させたグラフである。
【
図11】実施例2で得られた経口固形製剤(E2)の摂取群における、製剤摂取前後の唾液中コルチゾール濃度の測定結果を被験者毎に示すグラフである。
【
図12】比較例2で得られたプラセボ製剤(C2)摂取群における、製剤摂取前後の唾液中コルチゾール濃度の測定結果を被験者毎に示すグラフである。
【
図13】実施例7の固化物(E7)を投与したラットで構成される酢酸投与群と、比較例3の固化物(C3)を投与したラットで構成されるコントロール群との各々において、投与前の血液中ケトン体濃度(平均値)と、投与13日目の血液中ケトン体濃度(平均値)との変化を表すグラフである。
【
図14】比較例3の固化物(C3)を投与したコントロール群のラットにおける血中中性脂肪濃度の測定値(平均値)と、実施例7の固化物(E7)を投与した酢酸投与群のラットにおける血中中性脂肪濃度の測定値(平均値)とを示すグラフである。
【
図15】比較例3の固化物(C3)を投与したコントロール群のラットにおける血中尿酸濃度の測定値(平均値)と、実施例7の固化物(E7)を投与した酢酸投与群のラットにおける血中尿酸濃度の測定値(平均値)とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳述する。
【0023】
(経口固形製剤)
本発明の経口固形製剤は、大腸に送達可能な調製物を含む。
【0024】
ここで、本明細書中に用いられる用語「経口固形製剤」とは、粉末剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤、または錠剤の剤形を有する製剤であって、液剤、シロップ剤、エアゾール剤などの流動性を有する剤形のものを除外して言う。本発明の経口固形製剤は、当該外観を満足する限り、例えば、その内部には固体、液体、ゲルなどの任意の性状を有する成分の1つまたはそれ以上が含まれていてもよい。
【0025】
さらに、本明細書中に用いられる用語「大腸に送達可能」とは、ヒトおよび動物(以下、これらを包括して生体と言うことがある)の各々が対象物を経口摂取した後、対象物が、胃などの他の消化管によって分解および/または吸収されないか、あるいは分解および/または吸収の影響をほとんど受けることなく当該他の消化管を通じて大腸まで送達され得ることを指して言う。
【0026】
大腸に送達可能な調製物(以下、省略して調製物と言うことがある)は、有機酸およびその薬理学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物(以下、化合物(a)と言うことがある)を含有する。このような調製物は経口摂取後大腸に送達することにより、化合物(a)を大腸に投与でき、しかも、この化合物(a)は大腸よりも上部にある胃などの他の消化管で吸収等の影響を受けにくくなる。
【0027】
調製物に含まれる有機酸は、大腸到達後、大腸の腸内環境を整えたり、食後血糖値の上昇を抑制したりするなど、生体の体質を改善する成分である。
【0028】
ここで、本明細書中に用いられる用語「上昇を抑制する」とは、血糖値、血中尿酸値、血中の中性脂肪濃度などの値または濃度とともに用いられる語であって、化合物(a)を服用しない場合と比べて上昇速度を小さくする(時間軸に対する増加量の傾きを小さくする)態様と、化合物(a)を服用しなければ上昇する傾向がある場合に化合物(a)の服用によって服用前の値または濃度が維持される態様と、化合物(a)の服用後の値または濃度が服用前よりも小さくなる態様とのいずれをも包含する。
【0029】
有機酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、クロロゲン酸、フェルラ酸、オロト酸およびコハク酸、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
また、有機酸は、好ましくは炭素数2~10、より好ましくは炭素数2~6の脂肪酸である。1つの実施形態では、調製物に含有され得る有機酸は好ましくは炭素数2~10の直鎖の脂肪酸である。1つの実施形態では、調製物に含有され得る有機酸は好ましくは炭素数2~10の飽和脂肪酸である。1つの実施形態では、喫食経験が十分で生体に対する安全性が高い、汎用性に富む、入手が容易である等の理由から、有機酸は酢酸であることが好ましい。
【0031】
有機酸の薬理的に許容可能な塩(以下、省略して有機酸の塩ということがある)としては、例えば上記有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機酸の塩としては、上記の成分のうち、生体に対する安全性が高い、汎用性に富む、入手が容易である等の理由から、有機酸のナトリウム塩、有機酸のカリウム塩、またはこれらの混合物が好ましい。
【0032】
化合物(a)の含有量は、本発明の経口固形製剤の全質量を基準として、例えば0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上である。化合物(a)の含有量が0.01質量%以上であると、経口固形製剤の経口摂取後に、整腸機能や腸内環境や血糖値上昇抑制など各種作用を得やすくなり、しかも、経口摂取の際に経口固形製剤の量(例えば、粒数)を減らすこともできる。化合物(a)の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば、80質量%以下、50質量%以下、30質量%以下、15質量%以下であってもよい。
【0033】
調製物は、上記化合物(a)に加え、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳酸産生菌、界面活性剤、および油脂のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。例えば、経口固形製剤が粉末剤、顆粒剤、散剤、丸剤、または錠剤である場合に、調製物は、賦形剤、結合剤、滑沢剤、および崩壊剤を含むことができる。
【0034】
賦形剤としては、例えば、乳糖、乳糖造粒物、コーンスターチ、L-システイン、トレハロース、マルチトール、およびソルビトール、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
結合剤としては、例えば、結晶セルロース、澱粉、ショ糖、α化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム末、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、およびポリエチレングリコール、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、タルク、微粒二酸化ケイ素等が挙げられる。
【0037】
崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、部分α化デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩(ナトリウム塩、カルシウム塩)や誘導体等が挙げられる。
【0038】
乳酸産生菌は、後述するような代謝によって乳酸を産生することのできる微生物である。乳酸産生菌は原則として生菌である。
【0039】
界面活性剤は好ましくは両性界面活性剤である。両性界面活性剤は、その両性界面活性を示す分子中に陽イオン構造および陰イオン構造の両方を含む。両性界面活性剤の例としては、アミドベタイン型の両性界面活性剤、およびイミダゾリン型の両性界面活性剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。本発明の経口固形製剤はヒトなどの生体に対して使用されることから、安全性が高い両性界面活性剤として、天然物由来の両性界面活性剤を用いることが好ましい。天然物由来の両性界面活性剤の例としてはレシチンが挙げられる。
【0040】
界面活性剤の含有量は、本発明の経口固形製剤の全質量を基準として、好ましくは3質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~30質量%、さらにより好ましくは10質量%~20質量%である。界面活性剤の含有量がこのような範囲内を満足することにより、カプセル化などのより経口摂取に適した製剤化が可能となる。
【0041】
油脂は、調製物の構成成分を溶解または懸濁させるために使用され得る。調製物が油脂を含有することにより、経口固形製剤を製造する際、調製物の周囲に多量の水などが存在する場合に、調製物中の油脂以外の成分が悪影響を受けにくくできる。このような油脂は、水素添加油脂であってもよく、非水素添加油脂であってもよく、あるいは水素添加油脂と非水素添加油脂との混合物であってもよい。
【0042】
油脂は、例えば融点が40℃以上の油脂である。
【0043】
融点が40℃以上の油脂は、食用精製加工油脂の日本農林規格(平成25年12月24日農林水産省告示第3115号)によると、動物油脂、植物油脂またはこれらの混合油脂に「水素添加(水素を添加し、不飽和脂肪酸を飽和化させることで融点調整)」、「分別(遠心、濾過または滴下により分離操作を行って、融点や硬さや固体脂含量の異なる部分に分けること)」および「エステル交換(触媒を用いて脂肪酸の組成を変えることで融点調整)」などの技術により食用の用途に適合した融点に調整した油脂である。なお、本明細書における用語「融点」とは、対象の油脂を毛細管中で加熱したときに軟化して温度上昇を開始する直前の温度をいう。
【0044】
水素添加油脂は、水素添加処理(いわゆる水添処理)が施された油脂であり、例えば、原料の油脂に施される水素添加の程度で融点調整したものであってもよい。水素添加油脂は、部分水素添加油脂であってもよく、完全水素添加油脂であってもよく、あるいは部分水素添加油脂と完全水素添加油脂との混合物であってもよい。
【0045】
水素添加油脂の例として、水添ナタネ種子油、水添ホホバ油、水添大豆油、水添パーム油、水添パーム核油、水添ココナッツ油、およびそれらの組み合わせが挙げられる。水素添加油脂は、上記に限らず、任意の成分であってもよい。
【0046】
非水素添加油脂は、水素添加処理が施されていない油脂であり、例えば原料の油脂を分別またはエステル交換して融点調整したものであってもよい。また、非水素添加油脂は、例えばパーム油系油脂であってもよい。パーム油の主要脂肪酸はパルチミン酸およびオレイン酸であり、この2種類の脂肪酸によって組成比率80質量%以上になり、室温では半固形状である。このパーム油を特定の温度で分別すると、低融点の液状油および高融点の固体油に分けることができる。低融点の液体油にはオレイン酸が多く含まれており、高融点の固体油にはパルチミン酸が多く含まれている。液体油はパームオレインと呼ばれ、固体油はパームステアリン(パルチミン酸が組成中には最も多いがパームパルチミンとは呼ばれていない)と慣用的に呼ばれている。また、パーム油をエステル交換することでも融点が調整された所望の非水素添加油脂を得ることができる。非水素添加油脂は、パーム油の分別油、およびパーム油または該パーム分別油のエステル交換油脂をそれぞれ単独で使用するか、これらを混合して使用してもよい。
【0047】
非水素添加油脂の例としては、パーム油を分別したパームステアリン、パームオレイン、パームスーパーオレイン、パームダブルオレイン、パームミッドフラクション、およびパーム油または該パーム分別油のエステル交換油脂、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。非水素添加油脂は、上記に限らず、任意の成分であってもよい。
【0048】
融点が40℃以上の油脂は、ショ糖脂肪酸エステルまたはグリセリン脂肪酸エステルを含んでもいてもよい。ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖の水酸基に、脂肪酸(例えば、ステアリン酸またはオレイン酸)等が反応したものであり、例えば乳化剤として使用されている。グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンが有する3つのヒドロキシル基のうちの1つまたは2つに脂肪酸がエステル結合したものである。グリセリン脂肪酸エステルもまた、例えば乳化剤として使用される。グリセリンの3つのヒドロキシル基の全てに結合したものは、脂肪あるいは油脂であり、グリセリン脂肪酸エステルとは明確に区別される。このような融点が40℃以上の油脂の例としては、食用植物油脂、食用精製加工油脂、ショ糖脂肪酸エステル、およびグリセリン脂肪酸エステル、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0049】
1つの実施形態では、調製物は、例えば、融点が40℃以上の油脂と界面活性剤とを含有できる。この場合、調製物は、大腸よりも上部にある胃や小腸などの他の消化管で崩壊しにくくなり、より一層大腸に送達されやすくなる。しかも、調製物は大腸で崩壊でき、この調製物から放出された化合物(a)を大腸に投与できる。
【0050】
ここで、本発明の経口固形製剤において、上記調製物が複数の皮膜(例えば、2層の皮膜)により重ねて内包されている場合、上記油脂は、最外層の内部に位置する核に存在する調製物の構成成分として含有されていることに加え、核と最外層の皮膜との間に介在する構成成分としても含有されていることが好ましい。このような場合、例えば核に含まれる調製物には、融点が40℃以上の油脂が含有され、核と最外層の皮膜との間(中間層ともいう)には融点が45℃以上の油脂が含有されている。経口固形製剤が例えばシームレスカプセルの剤形を有する場合、中間層に用いられる油脂の融点は、調製物に用いられる油脂の融点以上であることが好ましい。中間層に用いられる油脂の融点が調製物に用いられる油脂の融点以上であると、経口固形製剤を作製する際の冷却時において、調製物よりも先に中間層が固化しやすくなる。
【0051】
融点が45℃以上の油脂は、例えば、上記融点が40℃以上の油脂のうち、融点が45℃以上であるものが選択される。融点が45℃以上の油脂の具体的な例としては、上記パーム油系油脂などの植物(分別)油脂、蜜蝋、高度硬化油、マーガリン、およびショートニング、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
調製物はさらに他の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば発泡剤、着色剤、着香剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、pH調整剤、香料、および香油、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。調製物への添加剤の含有量は、特に限定されず、当業者によって適切な含有量が適宜選択され得る。
【0053】
本発明の経口固形製剤において、上記調製物は、例えば少なくとも1種の皮膜に内包されている。このような皮膜は、生体が経口摂取した後、例えば胃や小腸内では比較的または十分に堅牢である材料で構成されている。また、皮膜は大腸にて特異的に崩壊し得る材料で構成されてもよい。
【0054】
皮膜を構成し得る材料の例としては水溶性天然高分子、好ましくは多糖類が挙げられる。多糖類の例としてはセルロース誘導体が挙げられ、より具体的な例としては、ゼラチン、カゼイン、ゼイン、ペクチンまたはその誘導体、アルギン酸またはその塩、寒天、ゲランガム、カラギナン、ファーセレラン、キトサン、カードラン、デンプン、変性デンプン、プルラン、およびマンナン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。例えば最外層の皮膜における多糖類の含有量は、当該皮膜の組成物の全固形分質量を基準として好ましくは50質量%~90質量%である。
【0055】
皮膜はまた、特に最外層における柔軟性を確保するために可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の例としては、グリセリン、ソルビトールなどが挙げられる。可塑剤の含有量は、乾燥後の皮膜全体質量を基準として、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~40質量%、さらにより好ましくは15~30質量%である。皮膜における可塑剤の含有量が上記範囲内を満足することにより、当該皮膜は製剤の製造途中で採用され得る乾燥工程や高温の付与に対して十分な耐久性を有することができる。これにより、皮膜表面のヒビ割れや他の皮膜との付着や溶けの懸念から解放され得る。
【0056】
本発明の経口固形製剤は好ましくはシームレスカプセルであり、例えば以下のようにして製造される。
【0057】
上記調製物を皮膜の内包物とするには、例えば三層以上の多重ノズルを用いる滴下法、具体的には三層ノズルを用いて冷却液中に滴下していく方法(例えば、特開昭49-59789号公報、特開昭51-8176号公報および特開昭60-172343号公報)が用いられる。
【0058】
すなわち、当該シームレスカプセルの製造では、最も外側、中間および最も内側の三方に分離したノズル(三層ノズル)が使用される。例えば、調製物がその構成成分を予め混合した状態で最も内側のノズルから吐出され、最外層を構成する多糖類等を含有する液体が最も外側のノズルから吐出され、中間のノズルからは、中間層液として油脂(例えば融点が45℃以上の油脂)が吐出される。吐出時は、定常速度で流下する冷却液中に一定速度で同時に押出して複合ジェットを形成し、冷却液中に放出させることによって、冷却液と皮膜構成材料との間に作用する表面張力によって、三層構造シームレスカプセルを連続的に製造することができる。三層ノズルの場合、得られたカプセルは三層の構造を有し、その一番内側に核となる調製物が含有される。
【0059】
図1に、三層ノズルが用いられた滴下法において、三層構造シームレスカプセルを製造するのに好適な製造装置のノズル部の模式的断面図を示す。
【0060】
図1に示すように、三層ノズルAは、内側ノズル10、中間ノズル12および外側ノズル14を同心円状に備える。外側ノズル14の外表面は三層ノズルAの外形状を構成し、中間ノズル12は外側ノズル14の内側に位置し、内側ノズル10は中間ノズル12の内側に位置する。このような三層ノズルAを用いた場合、内側ノズル10から核となる上記調製物の液16が吐出され、中間ノズル12から中間層となる油脂(例えば融点が45℃以上の油脂)18が吐出され、外側ノズル14から最外層となる上記多糖類を含む液20が吐出される。三層ノズルAからシームレスカプセルジェットBは、例えばナタネ油などの油脂で構成される冷却液24に吐出されることにより、当該冷却液24内でカプセルジェットBが断続的となり、最終的に粒子状のシームレスカプセル22を形成する。
【0061】
上記のようにして得られたシームレスカプセル22は取り出され、その後5℃~30℃にて2時間~12時間かけて通風乾燥される。また、通風乾燥されたシームレスカプセルに含まれる水分をさらに取り除く必要がある場合には、通風乾燥後に真空乾燥や真空凍結乾燥が行われてもよい。真空乾燥では、真空度が例えば0.002MPa~0.5MPaに保持され、真空凍結乾燥では-20℃以下の温度が設定される。真空乾燥および真空凍結乾燥に要する時間は特に限定されないが、例えば5時間~200時間、好ましくは24時間~170時間である。シームレスカプセルの乾燥が不十分であると、シームレスカプセル内に存在する水が調製物中の成分に悪影響を与えることがある。
【0062】
このようにして、本発明の経口固形製剤を、調製物の外周が皮膜で覆われたシームレスカプセルの形態で得ることができる。
【0063】
なお、上記
図1の方法では、三層ノズルAを使用する場合について説明したが、本発明の経口固形製剤は当該ノズルを使用する場合にのみ限定されるものではない。例えば、三層ノズルAから中間ノズル12を取り外した二層ノズルを使用して製造することも可能である。この場合、中間層の形成が省略され、上記調製物が最外層の皮膜によって内包されたシームレスカプセルが形成され得る。あるいは、複数の中間ノズルの同心円状に設けることにより、複数の中間層を有するシームレスカプセルの形態の経口固形製剤を得ることも可能である。
【0064】
上記以外では、本発明の経口固形製剤は、上記調製物を固化することにより、そのまま粉末剤、顆粒剤、散剤、丸剤、または素錠の剤形に加工したものであってもよい。あるいは、本発明の経口固形製剤は、上記調製物を当該分野において公知のハードカプセルに収容し、カプセル剤の剤形に加工したものであってもよい。あるいは、本発明の経口固形製剤は、上記調製物を当該分野において公知の腸溶性コーティングを行うことにより、錠剤の剤形に加工したものであってもよい。
【0065】
本発明の経口固形製剤によれば、上記調製物によって化合物(a)が大腸に送達され得ることにより、化合物(a)が、大腸に対して様々な作用を発揮することができる。
【0066】
例えば、大腸に送達された化合物(a)は、大腸内に元々から存在する乳酸産生菌の生存状態をより長く維持することができる。あるいは、本発明の経口固形製剤を通じて化合物(a)とともに大腸に送達された乳酸産生菌についても、大腸内でその生存状態を長く維持することができる。これにより、本発明の経口固形製剤を摂取した生体の腸内において優勢な腸内環境を形成できることが期待できる。そして乳酸産生菌が優勢な腸内環境を形成することにより、腸内で有害な菌(いわゆる、悪玉菌)の生育を抑制することも期待できる。また、化合物(a)で腸内環境が改善されることにより、便臭や便性状を改善することができ、しかも腸内の腐敗産物の発生を低減することができる。
【0067】
また、大腸に送達された化合物(a)は、例えば排便回数を適切に調節し得る機能、便性状を改善する機能や腸内腐敗産物の発生を低減する機能がある点で、大腸自体の機能(整腸機能)の向上を図ることができる。さらに、化合物(a)が大腸に送達されることにより、食後血糖値の上昇を抑制することや、ストレスや疲労感を改善する等の様々な体質の改善を行うことも可能である。またさらに、本発明の経口固形製剤によれば、化合物(a)が大腸に送達されることにより、例えば免疫機能の維持、体脂肪の低減、内臓脂肪の低減、中性脂肪および血中脂質の低減、BMI低下、血中コレステロールの低下、血圧降下、血流改善、体温維持、肌の保湿、睡眠の質改善、脳(認知)機能の改善、記憶力の向上、肝機能の改善、尿酸値の上昇抑制、動脈硬化の予防、抗アレルギー作用、有害菌の低減作用、食欲低減の改善などの作用が得られることも期待できる。中でも、化合物(a)が大腸に送達されることにより、血糖値または血中尿酸値、あるいは血中の中性脂肪濃度の上昇を抑制することができ、しかも、これらが関わる生活習慣病を予防又は改善することができる。このような生活習慣病として、例えば、糖尿病、メタボリックシンドローム、高尿酸値症(痛風)などが挙げられる。また、化合物(a)が大腸に送達されることにより、コルチゾールの上昇を抑制できるため、ストレスおよび疲労感を軽減することができる。さらにまた、化合物(a)が大腸に送達されることにより、血中のケトン体濃度を高めることができ、これによりアルツハイマー型認知症、パーキンソン病、てんかん等の脳機能疾病や生活習慣病(例えば、糖尿病)に対する予防または治療の効果を期待することができる。しかも、血液中ケトン体濃度の上昇と血中中性脂肪濃度の低下とが一緒に機能することにより、ダイエット効果(例えば体内脂肪低減効果)も期待することができる。
【0068】
化合物(a)の服用量は、例えば、1.0mg/日以上、好ましくは5.0mg/日以上、より好ましくは10.0mg/日以上、さらに好ましくは15.0mg/日以上、特に好ましくは17.5mg/日以上である。一方、化合物(a)の服用量の上限値は、好ましくは30g/日以下、より好ましくは6g/日以下、さらにより好ましくは1g/日以下、またさらに好ましくは300mg/日以下、特に好ましくは60mg/日以下である。また、化合物(a)の服用量は、上記に限らず、摂取する生体の種類(例えばヒトまたは動物のいずれか)、年齢等によって調整可能である。1つの実施形態では、経口固形製剤は成人に投与されてもよい。
【0069】
(経口組成物)
本発明の経口組成物は、上記経口固形製剤を含有する。1つの実施形態では、経口組成物は、上記経口固形製剤(第1製剤とも言う)以外に、他の製剤(第2製剤)も含有できる。
【0070】
第2製剤は、その剤形は特に限定されず、例えば、固形又は液体であってもよい。すなわち、第2製剤は、粉末剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、液剤、またはシロップ剤であってもよい。
【0071】
第2製剤を構成する材料は、第2製剤の剤形や目的等に応じて任意に選択することができるため、特に限定されない。第2製剤は、例えば乳酸産生菌を含有できる。
【0072】
乳酸産生菌は、代謝によって乳酸を産生することのできる微生物であり、例えば、食品、化粧品、医薬品等の製造分野において一般に使用され得るもの(例えばグラム陽性の杆菌や球菌)が包含される。乳酸産生菌の例としては、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、ラクトバシラス(Lactobacillus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、フルクトバシラス(Fructobacillus)属、オエノコッカス(Oenococcus)属、テトラジェノコッカス(Tetragenococcus)属またはバシラス(Bacillus)属のいずれかに属する微生物、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0073】
ビフィドバクテリウム属の微生物の具体的な例としては、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B. longum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(B. bifidum)、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(B. adolescentis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B. infantis)、ビフィドバクテリウム・ブレーべ(B. breve)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(B. lactis)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(B. pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(B. animalis)、ビフィドバクテリウム・アクチノコロニフォルム(B. actinocoloniiforme)、ビフィドバクテリウム・アエミリアナム(B. aemilianum)、ビフィドバクテリウム・アエロフィルム(B. aerophilum)、ビフィドバクテリウム・アエスクラピ(B. aesculapii)、ビフィドバクテリウム・アングラタム(B. angulatum)、ビフィドバクテリウム・アンセリス(B. anseris)、ビフィドバクテリウム・アピリ(B. apri)、ビフィドバクテリウム・アクイケフィリ(B. aquikefiri)、ビフィドバクテリウム・アステロイデス(B. asteroides)、ビフィドバクテリウム・アヴェサニ(B. avesanii)、ビフィドバクテリウム・ビアヴァティ(B. biavatii)、ビフィドバクテリウム・ボヘミカム(B. bohemicum)、ビフィドバクテリウム・ボンビ(B. bombi)、ビフィドバクテリウム・ボウム(B. boum)、ビフィドバクテリウム・カリミコニス(B. callimiconis)、ビフィドバクテリウム・カリトリチダラム(B. callitrichidarum)、ビフィドバクテリウム・カリトリコス(B. callitrichos)、ビフィドバクテリウム・カニス(B. canis)、ビフィドバクテリウム・カストリス(B. castoris)、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム(B. catenulatum)、ビフィドバクテリウム・カチュロラム(B. catulorum)、ビフィドバクテリウム・セビダラム(B. cebidarum)、ビフィドバクテリウム・コエリナム(B. choerinum)、ビフィドバクテリウム・コレエピ(B. choloepi)、ビフィドバクテリウム・コミューン(B. commune)、ビフィドバクテリウム・コリネフォルメ(B. coryneforme)、ビフィドバクテリウム・クリセチ(B. criceti)、ビフィドバクテリウム・クニクリ(B. cuniculi)、ビフィドバクテリウム・デンティコレンス(B. denticolens)、ビフィドバクテリウム・デンティウム(B. dentium)、ビフィドバクテリウム・ドリコティディス(B. dolichotidis)、ビフィドバクテリウム・エリスロセビィ(B. erythrocebi)、ビフィドバクテリウム・エルムリス(B. eulemuris)、ビフィドバクテリウム・フィーカル(B. faecale)、ビフィドバクテリウム・フェルシネウム(B. felsineum)、ビフィドバクテリウム・ガリカム(B. gallicum)、ビフィドバクテリウム・ガリナルム(B. gallinarum)、ビフィドバクテリウム・グロボーサム(B. globosum)、ビフィドバクテリウム・ゲルディ(B. goeldii)、ビフィドバクテリウム・ハパリ(B. hapali)、ビフィドバクテリウム・インペラトリス(B. imperatoris)、ビフィドバクテリウム・インディカム(B. indicum)、ビフィドバクテリウム・イノピナタム(B. inopinatum)、ビフィドバクテリウム・イタリカム(B. italicum)、ビフィドバクテリウム・ジャッチ(B. jacchi)、ビフィドバクテリウム・カシワノヘンス(B. kashiwanohense)、ビフィドバクテリウム・レムラム(B. lemurum)、ビフィドバクテリウム・レオントピテシィ(B. leontopitheci)、ビフィドバクテリウム・マグナム(B. magnum)、ビフィドバクテリウム・マルゴレシィ(B. margollesii)、ビフィドバクテリウム・メリシカム(B. merycicum)、ビフィドバクテリウム・ミニマム(B. minimum)、ビフィドバクテリウム・モンゴリエンセ(B. mongoliense)、ビフィドバクテリウム・モラビエンス(B. moraviense)、ビフィドバクテリウム・ムカラベンス(B. moukalabense)、ビフィドバクテリウム・マイオソティス(B. myosotis)、ビフィドバクテリウム・オエディポディス(B. oedipodis)、ビフィドバクテリウム・オロムセンス(B. olomucense)、ビフィドバクテリウム・パノス(B. panos)、ビフィドバクテリウム・パルメ(B. parmae)、ビフィドバクテリウム・パブロラム(B. parvulorum)、ビフィドバクテリウム・ポルシナム(B. porcinum)、ビフィドバクテリウム・プリマチウム(B. primatium)、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラタム(B. pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・サイクラエロフィラム(B. psychraerophilum)、ビフィドバクテリウム・プロラム(B. pullorum)、ビフィドバクテリウム・ラモーサム(B. ramosum)、ビフィドバクテリウム・ロイテリ(B. reuteri)、ビフィドバクテリウム・ロウセティ(B. rousetti)、ビフィドバクテリウム・ルミナレ(B. ruminale)、ビフィドバクテリウム・ルミナンティウム(B. ruminantium)、ビフィドバクテリウム・サエクラレ(B. saeculare)、ビフィドバクテリウム・サグイニ(B. saguini)、ビフィドバクテリウム・サミリィ(B. samirii)、ビフィドバクテリウム・スカリゲラム(B. scaligerum)、ビフィドバクテリウム・スカルドビィ(B. scardovii)、ビフィドバクテリウム・シミアラム(B. simiarum)、ビフィドバクテリウム・ステレンボッシェンス(B. stellenboschense)、ビフィドバクテリウム・スターコリス(B. stercoris)、ビフィドバクテリウム・サブタイル(B. subtile)、ビフィドバクテリウム・スイス(B. suis)、ビフィドバクテリウム・サームアシドフィラム(B. thermacidophilum)、ビフィドバクテリウム・サーモフィラム(B. thermophilum)、ビフィドバクテリウム・ティビグラヌリ(B. tibiigranuli)、ビフィドバクテリウム・ティシーエリ(B. tissieri)、ビフィドバクテリウム・ツルミエンス(B. tsurumiense)、ビフィドバクテリウム・ヴァンシンデレニィ(B. vansinderenii)、ビフィドバクテリウム・ヴェスペルティリオニス(B. vespertilionis)、およびビフィドバクテリウム・キシロコペ(B. xylocopae)が挙げられる。
【0074】
ラクトバシラス属の微生物の具体的な例としては、ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)、ラクトバシラス・アミロボラス(L. amylovorus)、ラクトバシラス・アニマリス(L. animalis)、ラクトバシラス・ブルガリクス(L. bulgaricus)、ラクトバシラス・デルブリッキィ(L. delbrueckii)、ラクトバシラス・ヘルベティカス(L. helveticus)、ラクトバシラス・サリバリウス(L. salivarius)、ラクトバシラス・カゼイ(L. casei)、ラクトバシラス・カルバータス(L. curvatus)、ラクトバシラス・プランタラム(L. plantarum)、ラクトバシラス・サケイ(L. sakei)、ラクトバシラス・ブレビス(L. brevis)、ラクトバシラス・ロイテリ(L. reuteri)、ラクトバシラス・ラムノーサス(L. rhamnosus)、ラクトバシラス・パラカゼイ(L. paracasei)、ラクトバシラス・ガセリ(L. gasseri)、ラクトバシラス・ブフネリ(L. buchneri)、ラクトバシラス・クリスパタス(L. crispatus)、ラクトバシラス・ブルガタス(L. vulgatus)、ラクトバシラス・サーモフィラス(L. thermophilus)、ラクトバシラス・ケフィリ(L. kefiri)、ラクトバシラス・ペントーサス(L. pentosus)、ラクトバシラス・セロビオサス(L. cellobiosus)、ラクトバシラス・ディバージェンス(L. divergens)、ラクトバシラス・ファーメンタム(L. fermentum)、ラクトバシラス・フルクトーサス(L. fructosus)、ラクトバシラス・ヒルガルディ(L. hilgardii)、ラクトバシラス・ライヒマニ(L. leicnmannii)、ラクトバシラス・ルミニス(L. ruminis)、ラクトバシラス・サンフランシスコ(L. sanfancisco)、およびラクトバシラス・バチノステルクス(L. vaccinostrcus)が挙げられる。
【0075】
エンテロコッカス属の微生物の具体的な例としては、エンテロコッカス・アヴィウム(Enterococcus avium)、エンテロコッカス・カッセリフラヴァス(E. casseliflavus)、エンテロコッカス・セコラム(E. cecorum)、エンテロコッカス・デュランズ(E. durans)、エンテロコッカス・フェーカリス(E. faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)、エンテロコッカス・ガリナルム(E. gallinarum)、エンテロコッカス・ヒラー(E. hirae)、エンテロコッカス・マロドレイタス(E. malodoratus)、エンテロコッカス・ムンディティー(E. mundtii)、エンテロコッカス・シュードヴィウム(E. pseudoavium)、エンテロコッカス・ラフィノーサス(E. raffinosus)、エンテロコッカス・サッカロリティキュース(E. saccharolyticus)、エンテロコッカス・セリオリシーダ(E. seriolicida)、エンテロコッカス・ソリタリウス(E. solitarius)、およびエンテロコッカス・ヴィローラム(E. villorum)が挙げられる。
【0076】
スタフィロコッカス属の微生物の具体的な例としては、スタフィロコッカス・カルノーサス(S. carnosus)、スタフィロコッカス・キシローサス(S. xylosus)、およびスタフィロコッカス・エピデルミディス(S. epidermidis)が挙げられる。
【0077】
ストレプトコッカス属の微生物の具体的な例としては、ストレプトコッカス・サーモフィラス(S. thermophilus)、ストレプトコッカス・フェーカリス(S. faecalis)、およびストレプトコッカス・サリバリウス(S. salivarius)が挙げられる。
【0078】
ラクトコッカス属の微生物の具体的な例としては、ラクトコッカス・ラクティス(L. lactis)、ラクトコッカス・ラフィノラクティス(L. raffinolactis)、およびラクトコッカス・プランタラム(L. plantarum)が挙げられる。
【0079】
ペディオコッカス属の微生物の具体的な例としては、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカス・クラウセニ(Pediococcus claussenii)、およびペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)が挙げられる。
【0080】
ロイコノストック属の微生物の具体的な例としては、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック・ラクティス(Leuconostoc lactis)、およびロイコノストック・ファラックス(Leuconostoc fallax)が挙げられる。
【0081】
乳酸産生菌は、原則として生菌であるが、死菌であってもよい。
【0082】
経口組成物が生菌の乳酸産生菌と化合物(a)とを含有する場合、大腸に当該生菌を投与でき、しかも、化合物(a)により大腸における当該生菌の増殖を促進するだけでなく乳酸産生菌の生菌数減少を抑制することができる。
【0083】
本発明の経口組成物は、ヒトや愛玩動物、家畜、家禽、養殖魚などの動物の口から摂取され得る組成物を包含し、例えば、飲食品、飼料(餌料)および医薬品が挙げられる。また、経口組成物の剤形として、例えば粉末剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、液剤(懸濁剤、乳剤などを含む)が挙げられる。
【0084】
本発明の経口組成物が飲食品である場合、当該飲食品の例としては、一般食品;サプリメント;特定保健用食品、栄養機能食品、および機能性表示食品等の保健機能食品;清涼飲料水;茶飲料;コーヒー飲料;加工乳;乳飲料;豆乳類;および酒類が挙げられる。
【0085】
飲食品には上記経口固形製剤以外に、食品素材や他の添加剤が含まれていてもよい。食品素材としては、必ずしも限定されないが、例えば、植物エキス、野菜類、肉エキス、肉類、魚粉、油脂類、糖類などが挙げられる。飲食品に含まれ得る他の添加剤としては、必ずしも限定されないが、例えば、賦形剤(例えば、デキストリン、セルロース誘導体(例えば、セルロース、結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース))、甘味料、着色料、保存料、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防カビ剤、イーストフード、ガムベース、かんすい、苦味料、酵素、光沢剤、香料、酸味料、調味料、凝固剤、乳化剤、pH調整剤、膨張剤、栄養強化剤、溶媒(例えば、水およびエタノール)などが挙げられる。飲食品に含有され得る食品素材および他の添加剤の含有量は、特に限定されず、当業者によって適切な含有量が適宜選択され得る。
【0086】
本発明の経口組成物が飼料(餌料)である場合、当該飼料(餌料)の例としては、ペットフード、配合飼料、および濃厚飼料が挙げられる。
【0087】
飼料には上記経口固形製剤以外に、飼料素材や他の添加剤が含まれていてもよい。飼料素材としては、必ずしも限定されないが、例えば、穀物粉、牧草粉、卵殻粉、貝殻粉、魚粉、植物エキス、野菜類、肉エキス、肉類、油脂類、糖類などが挙げられる。飼料に含まれ得る他の添加剤としては、必ずしも限定されないが、例えば、保存料、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊剤、酸化防止剤、防カビ剤、酵素、光沢剤、香料、酸味料、乳化剤、pH調整剤、膨張剤、栄養強化剤、溶媒(例えば、水およびエタノール)などが挙げられる。飼料に含有され得る飼料素材および他の添加剤の含有量は、特に限定されず、当業者によって適切な含有量が適宜選択され得る。
【0088】
上記飼料はまた、上記各成分の有無に関わらず、愛玩動物、家畜、家禽、養殖魚などの生体内(特に腸内)の環境に適切なものにするために、種々の乳酸産生菌を生菌の状態で含む製剤をさらに含有していてもよい。
【0089】
本発明の経口組成物が医薬品である場合、当該医薬品には、上記経口固形製剤以外に、他の医薬成分や他の添加剤が含まれていてもよい。他の医薬成分の例としては、特に限定されず、経口医薬品として採用され得る種々の医薬成分が包含される。医薬品に含まれ得る他の添加剤としては、必ずしも限定されないが、例えば、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、賦型剤、着色剤、着香剤、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、pH調整剤などが挙げられる。医薬品に含まれ得る他の添加剤の具体的な例としては、デキストリン、セルロース誘導体(例えば、セルロース、結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)、アラビアゴム末、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、タルク、二酸化ケイ素(例えば、軽質無水ケイ酸または含水二酸化ケイ素)、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、澱粉類、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、寒天末、エステル油、ロウ、高級脂肪酸、高級アルコール、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、多価アルコール、水、エタノールなどが挙げられる。医薬品に含有され得る他の医薬成分および他の添加剤の含有量は、特に限定されず、当業者によって適切な含有量が適宜選択され得る。
【0090】
上記医薬品はまた、上記各成分の有無に関わらず、ヒトの生体内(特に腸内)の環境を適切なものにするために、種々の乳酸産生菌を生菌の状態で含む製剤をさらに含有していてもよい。
【0091】
本発明の経口組成物は、上記形態を有することにより、上記経口固形製剤を効率良く生体内に摂取させることができる。
【0092】
本発明の経口組成物はまた、例えば、血液中ケトン体の濃度を上昇させることができる。これによりアルツハイマー型認知症、パーキンソン病、てんかん等の脳機能疾病や生活習慣病(例えば、糖尿病)に対する予防または治療の効果を期待することができる。さらに本発明の経口組成物は血中中性脂肪の濃度低下を促すこともできる。その結果、当該血液中ケトン体濃度の上昇と血中中性脂肪濃度の低下とが一緒に機能することにより、ダイエット効果(例えば体内脂肪低減効果)も期待することができる。
【実施例0093】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0094】
(実施例1:経口固形製剤(E1)の作製)
表1に示す組成にしたがって経口固形製剤(E1)を以下のようにして作製した。
【0095】
融点が43℃である食用油脂A(水素添加油脂(ココナッツ油とパーム核油とを由来とする完全水素添加油脂))の融解液と、大豆レシチンとを60℃で撹拌して均一に混合した混合液の中に、粉末酢A(酸度13.5質量%、佐藤食品工業株式会社製粉末酢エコピュア)を配合し、懸濁液(核用の液;調製液)を作製した。
【0096】
一方、融点が52℃である食用油脂B(パーム由来の非水素添加油脂)の融解液と大豆レシチンとを60℃で撹拌して均一に混合した中間層液(中間層用の液)を得た。また、ゼラチン(ゼリー強度:240ブルーム)、グリセリン、低メトキシ(LM)ペクチンおよび精製水を60℃の下で均一混合した混合液(最外層用の液)を作製した。
【0097】
次いで、
図1に示す三層ノズルAの内側ノズル10から上記で作製した核用の液、中間ノズル12から上記で作製した中間層用の液、および外側ノズル14から上記で作製した最外層用の液のそれぞれを、12℃に冷却されかつ流動するナタネ油中に同時に滴下して三層構造のシームレスカプセルを作製した。
【0098】
得られた三層構造のシームレスカプセルを、20℃で8時間通風乾燥し、さらに約7日間真空乾燥することにより、直径約6.0mmの経口固形製剤(E1)を得た。さらに、経口固形製剤(E1)内の核(調製物)は37℃で固体であることを確認した。
【0099】
(実施例2:経口固形製剤(E2)の作製)
表1に示す組成にしたがって経口固形製剤(E2)を以下のようにして作製した。
【0100】
実施例1で使用した融点が43℃である食用油脂Aの融解液と、大豆レシチンとを60℃で撹拌して均一に混合した混合液の中に、粉末酢B(酸度13.5質量%、キユーピー醸造株式会社製粉末酢K)を配合し、懸濁液(核用の液;調製液)を作製した。
【0101】
実施例1で使用した食用油脂Bの融解液と大豆レシチンとを混合して60℃で撹拌して均一に混合した中間層液を得、さらにβ-カロテンを添加して、中間層用の液を得た。また、ゼラチン(ゼリー強度:240ブルーム)、グリセリン、低メトキシ(LM)ペクチンおよび精製水を60℃の下で均一混合した混合液(最外層用の液)を作製した。
【0102】
上記核用の液、中間層用の液および最外層用の液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、直径約6.2mmの経口固形製剤(E2)を得た。さらに、経口固形製剤(E2)の核(調製物)は37℃で固体であることを確認した。
【0103】
(比較例1:プラセボ製剤(C1)の作製)
表1に示す組成にしたがってプラセボ製剤(C1)を以下のようにして作製した。
【0104】
実施例1で使用した食用油脂Aの融解液と、大豆レシチンとを60℃で撹拌して均一に混合した混合液の中に、超微粒子シリカを配合し、懸濁液(核用の液;調製液)を作製した。
【0105】
実施例1で使用した食用油脂Bの融解液と大豆レシチンとを60℃で撹拌して均一に混合した中間層液(中間層用の液)を得た。また、ゼラチン(ゼリー強度:240ブルーム)、グリセリン、低メトキシ(LM)ペクチンおよび精製水を60℃の下で均一混合した混合液(最外層用の液)を作製した。
【0106】
上記核用の液、中間層用の液および最外層用の液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、直径約6.0mmのプラセボ製剤(C1)を得た。さらに、プラセボ製剤(C1)の核(調製物)は37℃で固体であることを確認した。
【0107】
(比較例2:プラセボ製剤(C2)の作製)
表1に示す組成にしたがってプラセボ製剤(C2)を以下のようにして作製した。
【0108】
実施例1で使用した食用油脂Aの融解液と、大豆レシチンとを60℃で撹拌して均一に混合した混合液(核用の液;調製液)を作製した。
【0109】
実施例1で使用した食用油脂Bの融解液と大豆レシチンとを60℃で撹拌して均一に混合した中間層液を得、さらにβ-カロテンを添加して、中間層用の液を得た。また、ゼラチン(ゼリー強度:240ブルーム)、グリセリン、低メトキシ(LM)ペクチンおよび精製水を60℃の下で均一混合した混合液(最外層用の液)を作製した。
【0110】
上記核用の液、中間層用の液および最外層用の液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、直径約6.2mmのプラセボ製剤(C2)を得た。さらに、プラセボ製剤(C2)の核(調製物)は37℃で固体であることを確認した。
【0111】
(参考例1:プラセボ製剤(R1)の作製)
表1に示す組成にしたがってプラセボ製剤(R1)を以下のようにして作製した。
【0112】
実施例1で使用した食用油脂Aの融解液と、大豆レシチンとを60℃で撹拌して均一に混合した混合液の中に、馬鈴薯デンプンを配合し、懸濁液(核用の液;調製液)を作製した。
【0113】
実施例1で使用した食用油脂Bの融解液と大豆レシチンとを混合して60℃で撹拌して均一に混合した中間層液(中間層用の液)を得た。また、ゼラチン(ゼリー強度:240ブルーム)、グリセリン、低メトキシ(LM)ペクチンおよび精製水を60℃の下で均一混合した混合液(最外層用の液)を作製した。
【0114】
上記核用の液、中間層用の液および最外層用の液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、直径約6.5mmのプラセボ製剤(R1)を得た。さらに、プラセボ製剤(R1)の核(調製物)は37℃で固体であることを確認した。
【0115】
【0116】
(評価1:整腸機能の改善作用の確認試験(ヒト試験))
20代から50代までの健常成人7名(男性:5名、女性:2名)を被験者とし、これらの被験者を対象に、実施例1で得られた経口固形製剤(E1)および比較例1で得られたプラセボ製剤(C1)を用いた整腸機能の改善作用を確認するためのヒト試験を実施した。
【0117】
試験は、被験者がいずれの製剤を摂取しているか分からない単盲検試験にて行われ、1日あたりの摂取量は15粒(実施例1の経口固形製剤(E1)の場合、酢酸量:25.2mg/15粒)とした。実施例1の経口固形製剤(E1)と、比較例1のプラセボ製剤(C1)とのいずれを先に摂取するかは、被験者毎にランダムに割り付けた。試験期間を3週間に設定し、各製剤の摂取期間をそれぞれ1週間とした。
【0118】
ここで、先の摂取期間で摂取した製剤を十分に排出させるため、両摂取期間の間に1週間のインターバル期間を設け、このインターバル期間をウォッシュアウト期間とした。被験者は、試験期間中、排便日誌にて毎日の排便状況を記録し、試験終了後には追加アンケートを実施した。試験終了後、被験者の排便日誌を集計し、1週間当たりの排便回数を計数した。
【0119】
排便日誌による1週間当たりの排便回数の結果を表2に示し、かつ各製剤を摂取した期間(1週間)当たりの被験者7名の排便回数の平均値を
図2に示す。さらに、被験者へのアンケートの質問項目とその集計結果を表3に示す。なお、
図2に示すP=0.026は、Wilcoxonの符号付順位検定法を用いて算出された。この算出結果から、P<0.05であったため、比較例1と実施例1とで有意な差が確認された。
【0120】
【0121】
【0122】
表2に示すように、被験者7名のうち6名では、比較例1のプラセボ製剤(C1)の摂取期間と比較して、実施例1の経口固形製剤(E1)の摂取期間の間の排便回数が増加し、
図2からも明らかなように、それらの摂取期間の間で有意差が生じていた。また表3のアンケート結果に示すように、ほとんどの被験者が実施例1の経口固形製剤(E1)を摂取したことによる整腸機能の改善を実感できた。
【0123】
(評価2:食後血糖値上昇の抑制作用の確認試験(ヒト試験))
20代から40代までの健常成人8名(男性:5名、女性:3名)を被験者とし、この被験者を対象に、実施例2で得られた経口固形製剤(E2)および比較例2で得られたプラセボ製剤(C2)を用いた血糖値上昇の抑制作用を確認するためのヒト試験を実施した。
【0124】
試験は、被験者がいずれの製剤を摂取しているか分からない単盲検試験にて行われ、1日あたりの摂取量は5粒(実施例2の経口固形製剤(E2)の場合、酢酸量:17.5mg/5粒)とした。実施例2の経口固形製剤(E2)と、比較例2のプラセボ製剤(C2)とのいずれを先に摂取するかは、被験者毎にランダムに割り付けた。試験期間を14日間に設定し、各製剤の摂取期間をそれぞれ5日間とした。
【0125】
試験開始2日間(第1日目および第2日目)を前観察期間として設定し、先の摂取期間で摂取した製剤を排出させるため、両摂取期間の間に2日間のインターバル期間を設け、このインターバル期間をウォッシュアウト期間とした。被験者は、摂取期間の第1日目と第5日目には昼食1~2時間前に、実施例2の経口固形製剤(E2)または比較例2のプラセボ製剤(C2)を摂取した。また、摂取期間第1日目と第5日目の昼食には、規定食事を被験者に提供し、その摂取時間も記録した。
【0126】
試験期間中は自己検査用グルコース測定器(アボットジャパン合同会社製FreeStyleリブレ(登録商標))にて血糖値を常にモニタリングし、被験者の血糖値のデータから、規定食事を摂取した後の血糖値の変化をグラフにて記した。
【0127】
なお、自己検査用グルコース測定器は、間質液中のグルコース値を毎分測定し、15分毎に測定されたデータに基づいて最適化された平均値が記録される装置である。このようにして記録された平均値のうち、規定食事を摂取した後の最初の最適化された平均値が記録された時点T1を食後測定ポイントの「1」に設定した。これにより、それ以降の当該平均値が記録された時点T2、T3、T4、・・・は、それぞれ食後ポイント「2」、「3」、「4」・・・に相当する。なお、時点T1から15分間遡った時点T0を食後測定ポイントの「0」に設定した。
【0128】
ここで、規定食事の摂取を終了した直後から血糖上昇最大値の差分をΔ血糖値とし、食後測定ポイント(横軸)に対する被験者全員のΔ血糖値の平均値(縦軸)の変化をプロットした。各製剤の摂取期間第1日目の規定食事摂取後に得られた結果を
図3に示し、かつ各製剤の摂取期間第5日目の規定食事摂取後に得られた結果を
図4に示す。
【0129】
図3に示すように、各製剤の摂取期間第1日目において、実施例2の経口固形製剤(E2)を摂取したことにより、昼食後(すなわち、食後測定ポイント1後)の血糖値は一旦上昇するものの、時間が経過するにつれ、比較例2のプラセボ製剤(C2)を摂取した場合と比較して低く抑えられていた。また、
図4に示すように各製剤の摂取期間第5日目においても、実施例2の経口固形製剤(E2)を摂取したことにより、昼食後(すなわち、食後測定ポイント1後)の血糖値は、比較例2のプラセボ製剤(C2)を摂取した場合と比較して著しく低く抑えられていた。
図3および
図4の結果から、実施例2で得られた経口固形製剤(E2)を単回摂取した場合(
図3)でも、継続的に摂取した場合(
図4)でも、ともに食後の血糖値の上昇を抑制する作用が示されていることがわかる。
【0130】
(評価3:プラセボ製剤(R1)の崩壊部位の確認試験(ヒト試験))
40代の健常成人を被験者とし、この被験者を対象に、参考例1で得られたプラセボ製剤(R1)を用いた崩壊部位を確認するためのヒト試験を実施した。
【0131】
被験者には、参考例1で得られたプラセボ製剤(R1)60粒と、カプセル内視鏡(コヴィディエンジャパン社製PillCam(登録商標)SB3)とを同時に経口投与した。
【0132】
ここで、被験者に対して腸管洗浄は行わず、カプセル内視鏡を摂取する12時間前から絶食とし、小腸内容物が出来る限り残らない状態で試験を行った。また、カプセル内視鏡で撮影された画像から、参考例1のプラセボ製剤(R1)の崩壊部位を確認した。画像撮影後、被験者の協力により、採便シート(株式会社高橋型精製楽流カップ(登録商標))に糞便がある状態にし、糞便内にプラセボ製剤(R1)が崩壊することなく残存しているか否かを確認した。この確認を糞便内にカプセル内視鏡本体の存在が確認できるまで、もしくはカプセル内視鏡による撮影終了後3回目の排便まで実施した。
【0133】
上記一連の試験を通じて得られた、カプセル内視鏡で撮影した画像(写真)を
図5に示す。経口投与後、カプセル内視鏡は33秒で胃に到達し、31分では胃内に存在し(
図5の(a))、57分で十二指腸に到達し、1時間26分では小腸内に存在し(
図5の(b))、4時間47分で盲腸に到達したことを確認した。そして、投与開始から8時間10分経過後(
図5の(c))および8時間19分経過後(
図5の(d))には大腸に到達していた(両時間は、小腸通過後十分に経過した時間でもある)。
【0134】
図5の(a)~(d)に示すように、カプセル内視鏡と一緒に投与されたブラセボ製剤(R1)は、胃や小腸内ではその球体の形状が保持されており崩壊しておらず(
図5の(a)および(b))、しかも大腸内でも崩壊していなかった(
図5の(c)および(d))。一方で、採取した糞便からは、プラセボ製剤(R1)を検出することはできなかった。
【0135】
以上の結果より、参考例1で得られたプラセボ製剤(R1)は、ヒトに経口投与した後、胃や小腸では崩壊せず、大腸内で崩壊することが確認された。ここで、実施例1および2で得られた経口固形製剤(E1)および(E2)は、核用の液に使用した成分以外は参考例1のプラセボ製剤(R1)と類似した組成により設計されたものである。このことから、実施例1および2で得られた経口固形製剤(E1)および(E2)は、参考例1のプラセボ製剤(R1)と同様に、胃や小腸では崩壊せず、大腸に到達後に崩壊できる性質を有していると考えられる。
【0136】
(評価4:腸内腐敗産物低減作用の確認試験(ヒト試験))
20代から50代までの健常成人19名(男性:9名、女性:10名)を被験者とし、この被験者を対象に、実施例2で得られた経口固形製剤(E2)および比較例2で得られたプラセボ製剤(C2)を用いたヒト試験により、腸内腐敗産物低減作用を確認することとした。
【0137】
上記のヒト試験を、被験者がいずれの製剤を摂取しているか分からない単盲検試験にて行い、1日あたりの摂取量は5粒(経口固形製剤(E2)の場合、酢酸量:17.5mg/5粒)とした。被験者をランダムに2群(9名の群と、10名の群)に分け、一方の群は経口固形製剤(E2)を摂取し、もう一方の群はプラセボ製剤(C2)を摂取した。試験期間は、両群とも前観察期間を2週間、および製剤の摂取期間を8週間の計10週間に設定した。なお、前観察期間と製剤の摂取期間とを連続した期間で行った。
【0138】
被験者の協力により、前観察期間の終了直前(摂取期間開始前)、および製剤の摂取期間終了直前の計2回糞便を採取し、この糞便を-80℃で保管した。その後、糞便中のインドールおよびp-クレゾール濃度を測定した。
【0139】
経口固形製剤(E2)摂取群およびプラセボ製剤(C2)摂取群のそれぞれにおける、製剤摂取前後の糞便中インドール濃度の測定結果(被験者毎の結果の平均値)を
図6に示す。また、経口固形製剤(E2)摂取群およびプラセボ製剤(C2)摂取群のそれぞれにおける、製剤摂取前後の糞便中p-クレゾール濃度の測定結果(被験者毎の結果の平均値)を
図7に示す。
【0140】
図6および
図7に示すように、実施例2で得られた経口固形製剤(E2)の摂取により、糞便中の腐敗産物であるインドールおよびp-クレゾールの各濃度は、摂取前よりも低下することが確認された。比較例2のプラセボ製剤(C2)摂取では、インドールおよびp-クレゾールの各濃度は、平均的な低下作用を確認できなかった。
【0141】
(評価5:便臭低減作用の確認試験(ヒト試験))
20代から50代までの健常成人18名(男性:11名、女性:7名)を被験者とし、この被験者を対象に、実施例2で得られた経口固形製剤(E2)および比較例2で得られたプラセボ製剤(C2)を用いたヒト試験により、便臭低減作用を確認した。
【0142】
上記のヒト試験は、被験者がいずれの製剤を摂取しているか分からない単盲検試験にて行われ、1日あたりの摂取量は5粒(経口固形製剤(E2)の場合、酢酸量:17.5mg/5粒)とした。ヒト試験の期間中、被験者は経口固形製剤(E2)およびプラセボ製剤(C2)の両方を摂取したが、経口固形製剤(E2)の摂取期間はプラセボ製剤(C2)を摂取せず、逆にプラセボ製剤(C2)の摂取期間は経口固形製剤(E2)を摂取しないこととした。また、ヒト試験を開始する際、経口固形製剤(E2)と、プラセボ製剤(C2)とのいずれを先に摂取するかは、被験者毎にランダムに割り付けた。試験期間を8週間に設定し、各製剤の摂取期間をそれぞれ2週間とした。
【0143】
ここで、試験期間の始め2週間を前観察期間とした。さらに、先の摂取期間で摂取した製剤を十分に排出させるため、両摂取期間の間に2週間のインターバル期間を設け、このインターバル期間をウォッシュアウト期間とした。被験者は、試験期間中、排便日誌にて排便時の便臭スコアを5段階(1:非常に弱い、2:弱い、3:普段通り、4:強い、5:非常に強い)で毎日評価した。試験終了後、各被験者の1週間毎の便臭スコアの平均値を算出した。
【0144】
各被験者(健常成人)の摂取2週目の便臭スコアの平均値を比較したところ、
図8の(a)に示すように、プラセボ製剤(C2)摂取時より経口固形製剤(E2)摂取時のほうが便臭スコアの平均値が下がった被験者は10名、経口固形製剤(E2)摂取時のほうが便臭スコアの平均値が上がった被験者は2名であった。またプラセボ製剤(C2)摂取時と経口固形製剤(E2)摂取時の便臭スコアが同値であった被験者は6名であった。
【0145】
図8の(a)において、便臭スコアに変化のあった被験者12名のうち10名で、プラセボ製剤(C2)の摂取期間と比較して、経口固形製剤(E2)摂取期間の便臭スコアが低下していた。このことから、経口固形製剤(E2)の摂取により、便臭低減作用が得られることがわかる。
【0146】
一方、便秘傾向者12名を被験者として同様の試験を実施したところ、12名のうち8名で、プラセボ製剤(C2)の摂取期間と比較して、経口固形製剤(E2)摂取期間の便臭スコアが低下していた(
図8の(b))。このことから、経口固形製剤(E2)の摂取による便臭低減作用は、健常成人だけでなく便秘傾向者に対しても同様に得られることがわかる。
【0147】
(評価6:便性状改善作用の確認試験(ヒト試験))
20代から50代までの健常成人18名(男性:11名、女性:7名)を被験者とし、この被験者を対象に、実施例2で得られた経口固形製剤(E2)および比較例2で得られたプラセボ製剤(C2)を用いたヒト試験により、便性状改善作用を確認することとした。
【0148】
上記のヒト試験は、被験者がいずれの製剤を摂取しているか分からない単盲検試験にて行われ、1日あたりの摂取量は5粒(経口固形製剤(E2)の場合、酢酸量:17.5mg/5粒)とした。ヒト試験の期間中、被験者は経口固形製剤(E2)およびプラセボ製剤(C2)の両方を摂取したが、経口固形製剤(E2)の摂取期間はプラセボ製剤(C2)を摂取せず、逆にプラセボ製剤(C2)の摂取期間は経口固形製剤(E2)を摂取しないこととした。また、ヒト試験を開始する際、経口固形製剤(E2)と、プラセボ製剤(C2)とのいずれを先に摂取するかは、被験者毎にランダムに割り付けた。試験期間を8週間に設定し、各製剤の摂取期間をそれぞれ2週間とした。
【0149】
ここで、試験期間の始め2週間を前観察期間とした。さらに、先の摂取期間で摂取した製剤を十分に排出させるため、両摂取期間の間に2週間のインターバル期間を設け、このインターバル期間をウォッシュアウト期間とした。被験者は、試験期間中、排便日誌にて便性状スコアを7段階(1:コロコロ、2:硬い、3:やや硬い、4:バナナ状、5:やや柔らかい、6:泥状、7:水様)で評価した。試験終了後、各被験者の、1週間毎の便性状スコアの平均値を算出した。
【0150】
摂取2週目の便性状スコアの平均値を被験者毎に
図9に示す。
図9に示すように、被験者(健常成人)が比較例2のプラセボ製剤(C2)摂取した場合(グラフ左側)よりも実施例2の経口固形製剤(E2)摂取した場合(グラフ右側)の方が、硬い便性状(スコア1~3)の被験者および柔らかい便性状(スコア5~7)の被験者のいずれについても、バナナ状(スコア4)に近づく傾向が確認された。このことから、実施例2で得られた経口固形製剤(E2)を摂取することにより、便性状を改善できることがわかる。
【0151】
一方、便秘傾向者12名を被験者として同様の試験を実施したところ、
図10に示すように、便秘傾向者においても便性状がバナナ状(スコア4)に近づく傾向が確認された。このことから、実施例2で得られた経口固形製剤(E2)の摂取による便性状改善作用は、健常者だけでなく便秘傾向者に対しても同様に得られることがわかる。
【0152】
(評価7:ストレス軽減作用および疲労感軽減作用の確認試験(ヒト試験))
20代から50代までの健常成人19名(男性:9名、女性:10名)を被験者とし、この被験者を対象に、実施例2で得られた経口固形製剤(E2)および比較例2で得られたプラセボ製剤(C2)を用いたヒト試験により、ストレス軽減作用および疲労感軽減作用を確認することとした。
【0153】
上記のヒト試験は、被験者がいずれの製剤を摂取しているか分からない単盲検試験にて行われ、1日あたりの摂取量は5粒(経口固形製剤(E2)の場合、酢酸量:17.5mg/5粒)とした。被験者はランダムに2群(9名の群と、10名の群)に分けられ、一方の群は経口固形製剤(E2)を摂取し、もう一方の群はプラセボ製剤(C2)を摂取した。試験期間は、両群とも、前観察期間を2週間、製剤の摂取期間を8週間の計10週間に設定した。なお、前観察期間と製剤の摂取期間は連続した期間で行われた。
【0154】
被験者の協力により、前観察期間の終了直前(摂取期間開始前)、および製剤の摂取期間終了直前の計2回唾液を採取し、この唾液を-80℃で保管した。その後、唾液中のコルチゾール濃度を測定した。
【0155】
経口固形製剤(E2)摂取群における、製剤摂取前後の唾液中コルチゾール濃度の測定結果を被験者毎に
図11に示し、プラセボ製剤(C2)摂取群における、製剤摂取前後の唾液中コルチゾール濃度の測定結果を被験者毎に
図12に示す。
【0156】
図11に示すように、実施例2で得られた経口固形製剤(E2)の摂取により、ストレスマーカーおよび疲労マーカーである唾液中コルチゾール濃度が、摂取前よりも低下することがわかる。一方、
図12に示すように、比較例2で得られたプラセボ製剤(C2)の摂取では、唾液中コルチゾール濃度は個人差が見られ、一様な低下作用は確認されなかった。
【0157】
(実施例3:ビフィズス菌製剤(B1)を含む経口組成物(E3)の作製)
粉末酢Bをビフィズス菌末に変更したこと以外は、実施例2と同様に核用の液、中間層用の液、および最外層用の液を各々作製した。
【0158】
上記核用の液、中間層用の液および最外層用の液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、直径約6.2mmのビフィズス菌製剤(B1)を得た。その後、このビフィズス菌製剤(B1)と、実施例2で得られた経口固形製剤(E2)とを所定の割合で混合することにより、経口組成物(E3)を作製した。
【0159】
(実施例4:ハードカプセル型の経口固形製剤(E4)の作製)
実施例2と同様にして調製液で構成される液(核用の液)を作製した。次いで、この液をバット内に注いだ後、4℃で十分に冷却して固化物を得た。その後、得られた固化物をドライアイスとともに粉砕機内で粉砕して粉末状にした。この粉末状の固化物を市販のハードカプセル(白十字株式会社製FCカプセルNo.1)内に充填して、ハードカプセル型の経口固形製剤(E4)を得た。
【0160】
(実施例5:調製液の固化物のみで構成される経口固形製剤(E5)の作製)
実施例2と同様にして調製液で構成される液(核用の液)を作製した。次いで、この液を成形型のキャビティ内に注入した後、4℃で十分に冷却して固化物を得た。この固化物をそのまま経口固形製剤(E5)とした。
【0161】
(実施例6:錠剤の作製)
(1)素錠の作製
30質量%の上記粉末酢Bと、68質量%の結晶セルロースと、1質量%の微粒二酸化ケイ素と、1質量%のステアリン酸カルシウムとを混合した。この混合物を打錠機にて成形することで素錠を得た。
【0162】
(2)下地層の形成
まず、18質量%の精製水と9質量%のエタノールとの混合液中で8質量%のカルボキシメチルエチルセルロースを分散させた。この分散液を撹拌しながら65質量%のエタノールを添加し、カルボキシメチルエチルセルロースを溶解させた。これにより、コーティング液を得た。
【0163】
次に、コーティング液の固形分質量が素錠の質量に対して2質量%となるように、素錠の表面にコーティング液を塗布し、乾燥して、素錠の表面に下地層形成した。
【0164】
(3)大腸崩壊性コート層の形成
2質量%のキトサン(カニ由来キトサン、アセチル化度:80以上)と、2質量%のリンゴ酸と、96質量%の精製水とを混合かつ溶解してキトサンコーティング液を調製した。次いで、キトサンの質量が素錠質量に対して2質量%となるように、上記で得られた下地層を有する素錠に当該キトサンコーティング液を塗布し、乾燥することにより下地層上に大腸崩壊性コート層を形成した。
【0165】
(4)腸溶性コーティング層の形成
水性セラック(フロイント産業株式会社製)を腸溶性コーティング液として用い、当該セラックの質量が素錠質量に対して4質量%となるように、上記大腸崩壊性コート層の外表面に腸溶性コーティング液を塗布し、乾燥させることにより大腸崩壊性コート層上に腸溶性コーティング層を形成した。
上記(1)~(4)の操作により、素錠表面に、下地層、大腸崩壊性コーティング層および腸溶性コーティング層がこの順で積層されてなる錠剤(経口固形製剤)を得た。
【0166】
(実施例7:固化物(E7)の作製)
粉末酢Bの代わりに、酢酸ナトリウムを用い、かつその含有量を30質量%にしたこと以外は、実施例2と同様にして調製液を作製した。次いで、この液をバット内に注いだ後、4℃で十分に冷却して固化物を得た。その後、得られた固化物を粉砕機内で粉砕して粉末状にした。そして、この粉末状の固化物のうち、目開き1.4mmの篩を通過し、かつ目開き0.5mmの篩を通過しない固化物(E7)を得た。
【0167】
(比較例3:固化物(C3)の作製)
比較例2と同様にして調製液を作製した。次いで、この調製液を用いて実施例7と同様の手順で固化物を得、その後目開き1.4mmの篩を通過し、かつ目開き0.5mmの篩を通過しない固化物(C3)を得た。
【0168】
このようにして得られた実施例7の固化物(E7)、および比較例3の固化物(C3)を用いて下記の評価を行った。
【0169】
(評価8:血中ケトン体増加作用、血中中性脂肪および血中尿酸低減作用の確認試験(動物試験))
公知文献(若狭麻未・三浦紀称嗣・宮田富弘, 川崎医療福祉学会誌, 2016, 26(1), pp.49-57)に記載された回腸瘻孔手術法に基づき、回腸瘻孔ラットを作成した。この回腸瘻孔ラットでは、瘻孔部より管(外径約5mm)を盲腸に通すことで、この管を通った成分は、ラットの大腸に直接投与されることとなる。本評価8において、上記の回腸瘻孔ラット16匹を8匹ずつ2群に分け、一方は比較例3で得られた固化物(C3)を投与するコントロール群、もう一方は実施例7で得られた固化物(E7)を投与する酢酸投与群とした。なお、コントロール群のうち、2匹の回腸瘻孔ラットは、固化物(C3)の投与とは関係なく途中除外となったため、コントロール群6匹、酢酸投与群8匹を本評価8に用いた。
【0170】
コントロール群の回腸瘻孔ラットに対しては、上記管を介して比較例3の固化物(C3)を含む1.5%メチルセルロース水溶液を投与した。メチルセルロース水溶液の作製において、信越化学工業株式会社製メトローズMC400をメチルセルロースとして用いた。また、固化物(C3)の投与は1日1回行い、固化物(C3)の投与量は、1回あたり3.0mgとした。
【0171】
酢酸投与群の回腸瘻孔ラットに対しては、上記管を介して固化物(E7)を含む1.5%メチルセルロース水溶液を投与した。メチルセルロース水溶液の作製において、信越化学工業株式会社製メトローズMC400をメチルセルロースとして用いた。また、固化物(E7)の投与は1日1回行い、固化物(E7)の投与量は、1回あたり3.0mg(0.9mgの酢酸ナトリウムに相当)とした。
【0172】
コントロール群および酢酸投与群のいずれの回腸瘻孔ラットにも、ラードを使用した60kcal%の高脂肪食を自由摂餌させ、飲料水は水道水を自由摂水させた。ここで「kcal%」は、高脂肪食の熱量に対する脂肪の熱量の割合を示す単位である。
【0173】
コントロール群および酢酸投与群のいずれの回腸瘻孔ラットにも、上記固化物の投与を14回(14日間)行った。
【0174】
本評価8において、コントロール群および酢酸投与群の各ラットに対し、投与開始前と投与13日目とのそれぞれで、メスで尾静脈に切れ目を入れ、この切れ目から血液を採取した。そして、投与前後の血液中のケトン体濃度を測定した。ケトン体濃度の測定にあたり、乾式臨床化学分析装置(ニプロ株式会社社製ニプロスタッドストリップXP3)を用いた。
【0175】
コントロール群のラットにおける投与開始前の血液中ケトン体濃度(平均値)と投与13日目の血液中ケトン体濃度(平均値)とを直線でつないだ結果、および、酢酸投与群のラットにおける、投与開始前の血液中ケトン体濃度(平均値)と投与13日目の血液中のケトン体濃度(平均値)とを直線でつないだ結果を
図13に示す。
【0176】
図13に示すように、実施例7の固化物(E7)を大腸に直接投与することによって、血液中ケトン体濃度が上昇することが確認された。しかし、比較例3で得られた固化物(C3)を大腸に直接投与しても、投与前後の比較において、血液中ケトン体濃度には変化が無かった。言い換えると、固化物(C3)を大腸に直接投与した場合との比較において、固化物(E7)を大腸に直接投与することで、血液中のケトン体が増加することが示唆された。
【0177】
次いで、コントロール群および酢酸投与群ともに、固化物投与14日目の翌日に、回腸瘻孔ラットを12時間以上絶食させた後、安楽死させた。その後、各ラットから全血を採取し、血液中の中性脂肪の濃度、および血液中の尿酸の濃度を測定した。
【0178】
まず、比較例3の固化物(C3)を投与したコントロール群のラットおよび実施例7の固化物(E7)を投与した酢酸投与群のラットにおける、血液中の中性脂肪濃度の測定結果の平均値を
図14に示す。
【0179】
図14に示すように、実施例7で得られた固化物(E7)を大腸に直接投与することより、ラットの血液中の中性脂肪濃度を低減できることが確認された。具体的には、比較例3で得られた固化物(C3)を大腸に直接投与する場合との比較において、当該固化物(E7)を大腸に直接投与することにより、ラットの血液中の中性脂肪の濃度が低減することが示唆された。また、血液中の中性脂肪の濃度の低減は、上記の血液中ケトン体濃度を上昇させる一要因であると考えられる。
【0180】
次に比較例3の固化物(C3)を投与したコントロール群のラットおよび実施例7の固化物(E7)を投与した酢酸投与群のラットにおける、血液中の尿酸濃度の測定結果の平均値を
図15に示す。
【0181】
図15に示すように、実施例7で得られた固化物(E7)を大腸に直接投与することにより、ラットの血液中の尿酸濃度を低減できることが確認された。具体的には、比較例3の固化物(C3)を大腸に直接投与する場合との比較において、当該固化物(E7)を大腸に直接投与することにより、ラットの血液中の尿酸の濃度が低減することが示唆された。
【0182】
(実施例8:固化物(E8)の作製)
実施例2と同様にして調製液を作製した。次いで、この液を内径3mmのシリコンチューブに注入し、4℃で十分に冷却した。シリコンチューブを約1cmの長さに切り、固化した調製液を取り出すことにより固化物(E8)を得た。
【0183】
(実施例9:固化物(E9)の作製)
粉末酢Bの代わりに、酢酸ナトリウムを用い、かつその含有量を30質量%にしたこと以外は、実施例2と同様にして調製液を作製した。次いで、この液を内径3mmのシリコンチューブに注入し、4℃で十分に冷却した。シリコンチューブを約1cmの長さに切り、固化した調製液を取り出すことにより固化物(E9)を得た。
【0184】
(実施例10:固化物(E10)の作製)
粉末酢Bの代わりに、プロピオン酸ナトリウムを用い、かつその含有量を30質量%にしたこと以外は、実施例2と同様にして調製液を作製した。次いで、この液を内径3mmのシリコンチューブに注入し4℃で十分に冷却した。シリコンチューブを約1cmの長さに切り、固化した調製液を取り出すことにより固化物(E10)を得た。
【0185】
(実施例11:固化物(E11)の作製)
粉末酢Bの代わりに、酪酸ナトリウムを用い、かつその含有量を10質量%にしたこと以外は、実施例2と同様にして調製液を作製した。次いで、この液を内径3mmのシリコンチューブに注入し4℃で十分に冷却した。シリコンチューブを約1cmの長さに切り、固化した調製液を取り出すことにより固化物(E11)を得た。
【0186】
(実施例12:固化物(E12)の作製)
粉末酢Bの代わりに、10質量%の酢酸ナトリウム、5質量%のプロピオン酸ナトリウム、5質量%の酪酸ナトリウムを用いてこれらの粉末の合計を20質量%にしたこと以外は、実施例2と同様にして調製液を作製した。次いで、この液を内径3mmのシリコンチューブに注入し4℃で十分に冷却した。シリコンチューブを約1cmの長さに切り、固化した調製液を取り出すことにより固化物(E12)を得た。
【0187】
(実施例13:固化物(E13)の作製)
粉末酢Bの代わりに、ヘキサン酸ナトリウムを用い、かつその含有量を10質量%にしたこと以外は、実施例2と同様にして調製液を作製した。次いで、この液を内径3mmのシリコンチューブに注入し4℃で十分に冷却した。シリコンチューブを約1cmの長さに切り、固化した調製液を取り出すことにより固化物(E13)を得た。
【0188】
(実施例14:固化物(E14)の作製)
粉末酢Bの代わりに、L-乳酸ナトリウムを用い、かつその含有量を20質量%にしたこと以外は、実施例2と同様にして調製液を作製した。次いで、この液を内径3mmのシリコンチューブに注入し4℃で十分に冷却した。シリコンチューブを約1cmの長さに切り、固化した調製液を取り出すことにより固化物(E14)を得た。
【0189】
(実施例15:固化物(E15)の作製)
粉末酢Bの代わりに、コハク酸を用い、かつその含有量を30質量%にしたこと以外は、実施例2と同様にして調製液を作製した。次いで、この液を内径3mmのシリコンチューブに注入し4℃で十分に冷却した。シリコンチューブを約1cmの長さに切り、固化した調製液を取り出すことにより固化物(E15)を得た。
【0190】
(実施例16:固化物(E16)の作製)
粉末酢Bの代わりに、クエン酸を用い、その含有量を30質量%にしたこと以外は、実施例2と同様にして調製液を作製した。次いで、この液を内径3mmのシリコンチューブに注入し4℃で十分に冷却した。シリコンチューブを約1cmの長さに切り、固化した調製液を取り出すことにより固化物(E16)を得た。
【0191】
このようにして得られた固化物(E8)~(E16)を用いて下記の評価を行った。
【0192】
(評価8:各有機酸の崩壊性評価試験)
第十八改正日本薬局方の崩壊試験法に基づき、腸溶性の製剤を評価する際に用いられる崩壊試験第1液、および崩壊試験第2液による試験を行った。
【0193】
(1)崩壊試験第1液による試験:
崩壊試験の試験器の6本のガラス管にそれぞれ実施例8から16で得られた固化物(E8)~(E16)のいずれかで構成される試料を1個入れた。その後、各固化物の崩壊性の評価を、1試験器(試料6個)で行った。試験液に第1液を用いて、37℃±2℃で試験器を作動させた。120分後、全ての試料が崩壊しない場合、適合であると判断とした。
【0194】
固化物(E8)~(E16)の各々を試料として用いた崩壊試験第1液による崩壊試験において、全ての試料が120分後に崩壊していなかったことを確認した。
【0195】
(2)崩壊試験第2液による試験:
崩壊試験の試験器の6本のガラス管にそれぞれ実施例8から16で得られた固化物(E8)~(E16)のいずれかで構成される試料を1個入れた。その後、各固化物の崩壊性の評価を、1試験器(試料6個)で行った。試験液に第2液を用いて、37℃±2℃で試験器を作動させた。60分後、試料の残留物がガラス管内に全く認めないか、または認めても明らかに原形をとどめない軟質の物質である場合に当該試料は崩壊したと見做した。
【0196】
固化物(E8)~(E16)の各々を試料として用いた崩壊試験第2液による崩壊試験において、全ての試料が60分後に崩壊していたことを確認した。
【0197】
異なる有機酸またはその塩を用いて得られた固化物を用いた場合において、崩壊試験第1液による崩壊試験では崩壊せず、崩壊試験第2液による崩壊試験にて全て60分で崩壊したことから、上記固化物(E8)~(E16)の崩壊性が互いに同等であったことを確認した。すなわち、粉末酢B以外の有機酸またはその塩を配合した経口固形製剤を摂取した場合でも、体内での崩壊挙動に大差は無く、いずれも大腸内で崩壊するものと考えられた。
【0198】
(実施例17:ハードカプセル型の経口固形製剤(E17)の作製)
キトサン(ヤヱガキ醗酵技研株式会社製)を酢酸に2質量%濃度になるように溶解させ、キトサンコーティング液を得た。次に、粉末酢Bを市販のハードカプセル(株式会社松屋製HFカプセル#4)内に充填して仕掛品を作製した。そして、この仕掛品の質量に対するキトサン質量の割合が1.5質量%になるようにキトサンコーティング液を塗布し、乾燥させることにより大腸崩壊性コート層を形成した。
【0199】
水性セラック(フロイント産業株式会社製)を腸溶性コーティング液として用い、仕掛品の質量に対する当該セラックの質量の割合が6質量%となるように、上記大腸崩壊性コート層の外表面に腸溶性コーティング液を塗布し、乾燥させることにより大腸崩壊性コート層上に腸溶性コーティング層を形成した。
【0200】
上記操作により、ハードカプセル表面に、大腸崩壊性コーティング層および腸溶性コーティング層がこの順で積層されてなる経口固形製剤(E17)を得た。