(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092637
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】フッ素樹脂フィルム及びフッ素樹脂フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 7/18 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
C08J7/18 CEW
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205435
(22)【出願日】2020-12-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】羽根 友子
(72)【発明者】
【氏名】金子 紗由美
(72)【発明者】
【氏名】奥村 優香
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 喜晴
【テーマコード(参考)】
4F073
【Fターム(参考)】
4F073AA01
4F073BA15
4F073BB01
4F073CA46
4F073FA08
4F073HA11
(57)【要約】
【課題】高い接着耐久性、特に、ゴム材料に対する高い接着耐久性を発揮できるフッ素樹脂フィルム及びフッ素樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】表面改質されたフッ素樹脂フィルムであって、少なくとも一方の最表面を飛行時間型2次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により分析した際のシラン系化合物に由来するSiOH+フラグメントイオンのシグナル強度が、3×102以上であることを特徴とするフッ素樹脂フィルム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面改質されたフッ素樹脂フィルムであって、
少なくとも一方の最表面を飛行時間型2次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により分析した際のシラン系化合物に由来するSiOH+フラグメントイオンのシグナル強度が、3×102以上であることを特徴とするフッ素樹脂フィルム。
【請求項2】
表面改質される前後でのフッ素樹脂フィルムの前記最表面における色差は、JIS Z8730に基づく測定値で、2以上の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂フィルム。
【請求項3】
前記フッ素樹脂フィルムの前記最表面側領域は、フッ素系化合物が含有されており、含有されるフッ素系化合物の濃度が、前記最表面から厚み方向に向かうに従い増加傾向の濃度勾配を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のフッ素樹脂フィルム。
【請求項4】
前記最表面における水接触角が105°以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフッ素樹脂フィルム。
【請求項5】
前記最表面は、OH基を備える化合物を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のフッ素樹脂フィルム。
【請求項6】
少なくともフッ素樹脂を含有する基材表面を改質するフッ素樹脂フィルム製造方法であって、
前記基材上に、有機ケイ素化合物、紫外線吸収性化合物およびフッ素系界面活性剤を含有する前処理液を付着させる前処理液付着工程と、
前記基材上に付着された前記前処理液を乾燥させる乾燥工程と、
乾燥後の前記基材表面に紫外線レーザー光を照射する工程とを備えており、
前記乾燥工程における前記前処理液の乾燥時間が5分未満であることを特徴とするフッ素樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂フィルム及びフッ素樹脂フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子複写機やレーザービームプリンター等に使用されている各種ローラー、即ち、定着ローラー、帯電ローラー、現像ローラー、転写ローラー、加圧ローラー等が知られている。これら各種ローラは、外周面がゴム材料で被覆された金属製等の円筒状芯体の該被覆層を離型型フィルムで被覆した構造を一般的に有している。
【0003】
ゴム材料で構成された被覆層を被覆するフィルムとしては、種々の樹脂材料から構成することが可能であるが、撥水撥油性、摺動性、防汚性、耐熱性、耐薬品性および電気的特性等が優れていることから特にフッ素樹脂フィルムによって構成することが好ましい。しかしながら、フッ素樹脂フィルムは、その表面が不活性な性質を有することに起因して、接着剤や塗料等の塗布が困難なため、他の材料(ゴム材料で構成された被覆層)との複合化が難しいという問題があった。
【0004】
かかる問題を解消すべく、フッ素樹脂フィルムの表面改質が従来から行われている(例えば特許文献1)。この特許文献1には、PFA製フィルムの表面に有機ケイ素化合物、紫外線吸収剤を含有する処理液を塗布し、エキシマレーザー光を照射することによって表面改質がなされたフッ素樹脂フィルム(多層フッ素樹脂フィルム)が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術を用いてフッ素樹脂フィルムの表面改質を行う場合、ゴム材料で構成された被覆層との接着耐久性は良好になる傾向はあるものの、必ずしも高い接着耐久性を得られるわけではなく、接着性にバラつきが生じ、安定的に良好な接着耐久性を発揮させることが難しいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、高い接着耐久性、特に、ゴム材料に対する高い接着耐久性を発揮できるフッ素樹脂フィルム及びフッ素樹脂フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、表面改質されたフッ素樹脂フィルムであって、少なくとも一方の最表面を飛行時間型2次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により分析した際のシラン系化合物に由来するSiOH+フラグメントイオンのシグナル強度が、3×102以上であることを特徴とするフッ素樹脂フィルムによって達成される。
【0009】
また、このフッ素樹脂フィルムにおいて、表面改質される前後でのフッ素樹脂フィルムの前記最表面における色差は、JIS Z8730に基づく測定値で、2以上の範囲であることが好ましい。
【0010】
また、フッ素樹脂フィルムにおいて、その前記最表面側領域は、フッ素系化合物が含有されており、含有されるフッ素系化合物の濃度が、前記最表面から厚み方向に向かうに従い増加傾向の濃度勾配を有することが好ましい。
【0011】
また、前記最表面における水接触角が105°以上であることが好ましい。
【0012】
また、前記最表面は、OH基を備える化合物を含有することが好ましい。
【0013】
また、本発明の上記目的は、少なくともフッ素樹脂を含有する基材表面を改質するフッ素樹脂フィルム製造方法であって、前記基材上に、有機ケイ素化合物、紫外線吸収性化合物およびフッ素系界面活性剤を含有する前処理液を付着させる前処理液付着工程と、前記基材上に付着された前記前処理液を乾燥させる乾燥工程と、乾燥後の前記基材表面に紫外線レーザー光を照射する工程とを備えており、前記乾燥工程における前記前処理液の乾燥時間が5分未満であることを特徴とするフッ素樹脂フィルムの製造方法により達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い接着耐久性、特に、ゴム材料に対する高い接着耐久性を発揮できるフッ素樹脂フィルム及びフッ素樹脂フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るフッ素樹脂フィルムの実施例1に関して、フッ素樹脂フィルムの表面改質エリアについてのTOF-SIMS分析とスパッタエッチングを併用した方法による各種検出フラグメントのシグナル強度結果を示すグラフである。
【
図2】本発明に係るフッ素樹脂フィルムの比較例1に関して、フッ素樹脂フィルムが備える表面改質エリアについてのTOF-SIMS分析とスパッタエッチングを併用した方法による各種検出フラグメントのシグナル強度結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るフッ素樹脂フィルムについて説明する。本発明に係るフッ素樹脂フィルムは、例えば、電子複写機やレーザービームプリンター等に使用されている各種ローラー(定着ローラー、帯電ローラー、現像ローラー、転写ローラー、加圧ローラー等)の外表面を被覆する離型型フィルムとして好適に用いられるフィルムである。
【0017】
ここで、上記各種ローラは、金属製等の円筒状芯体とその外周面に配置される被覆層とを有するローラ本体を備えて構成されており、フッ素樹脂フィルムは、表面改質され接着性が付与された一方の最表面側を被覆層に対向させて被覆層上に配置される。被覆層を構成する材料としては、例えば、各種の添加剤(例えば、導電性付与剤、加硫剤、加硫助剤、軟化剤等)を配合したゴム材料(例えば、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム等)を好適に挙げることができる。
【0018】
フッ素樹脂フィルムは基材を備えており、当該基材は、含フッ素有機高分子化合物から製造される成形体である。基材の具体的形態は特に限定されず、例えば、シート、フィルム、チューブ、パイプ、多孔質膜およびその他の任意の形状を有する成形体が例示される。また、基材には、摩耗性の改善目的でシリカ、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを、電気伝導性を付与する目的でカーボンブラックなどを適宜加えて良い。また、基材の厚みとしては、例えば、10μm~200μmが好ましく、15μm~100μmがより好ましい。
【0019】
基材は、上記のように、フッ素樹脂を少なくとも含有していればよく、フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロアルコキシエチレン三元共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、トリフルオロクロロエチレン-エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロメトキシエチレン共重合体(MFA)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-フッ化ビニリデン三元共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体等を例示することができる。
【0020】
フッ素樹脂フィルムの最表面側領域は、フッ素系化合物を含有しており、より具体的には、有機ケイ素化合物由来の化合物、紫外線吸収性化合物由来の化合物およびフッ素系界面活性剤由来の化合物を含有して構成することができる。なお、このフッ素樹脂フィルムの最表面は、上述のゴム材料との接着面を構成する面となる。また、上記最表面側領域は、有機ケイ素化合物由来の末端にSiH結合を備えるシラン系化合物を含有することが好ましい。上記最表面側領域中の末端にSiH結合を備えるシラン系化合物は、ゴム中のビニル基とヒドロシリカル反応し、共有結合を形成するためゴム材料に対する高い接着耐久性を発揮する。また、この最表面側領域は、OH基を備える化合物を含有することが好ましい。上記最表面側領域中のOH基を備える化合物は、ゴム中の未反応の架橋剤末端Si-H結合と脱水素反応し、Si-O結合を形成するためゴム材料に対する高い接着耐久性を発揮する。
【0021】
有機ケイ素化合物としては、公知のものを適宜使用すればよいが、特に好適なものとしては、(トリフェニルシリル)アセチレン、フェニルシラン、ジメチルジフェニルシラン、テトラフェノキシシラン、トリフェニルシラン、トリベンジルシラン、アリルトリフェニルシラン、トリフェニルビニルシランおよびフェニルトリエトキシシラン等のシラン系化合物が例示される。このような有機ケイ素化合物は2種以上適宜併用してもよい。
【0022】
また、紫外線吸収性化合物としては、公知のものを適宜使用すればよく、特に限定的ではないが、芳香族系紫外線吸収性化合物、例えば、芳香族炭化水素類、芳香族カルボン酸類およびその塩、芳香族アルデヒド類、芳香族アルコール類、芳香族アミン類およびその塩、芳香族スルホン酸類およびその塩およびフェノール類等が好適である。この種の芳香族系紫外線吸収性化合物としては例えば、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ナフタセン、ピレン、ペリレン、フルオレノン、フルオランテン、9-アセチルアントラセン、9-メチルアントラセン、アントラキノンカルボン酸、アントラセン-9-メタノール、ビフェニル、安息香酸ナトリウム、フタル酸、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、ベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、アントラキノン-2-スルホン酸ナトリウム、フェノール、クレゾール、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシルオキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2-ヒドロキシー4-メトキシ-2'-カルボキシベンゾフェノン、2'-ヒドロキシ-4-クロロベンゾフェノン、2(2'-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、サリチル酸フェニル、サリチル酸p-オクチルフェニル、サリチル酸p-t-ブチルフェニル、サリチル酸カルボキシフェニル、サリチル酸ストロンチウム、サリチル酸メチル、サリチル酸ドデシル、レゾルシノールモノベンゾエート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、Ni-ビスオクチルフェニルスルフィド、[2,2'-チオビス(4-t-オクチルフェノラト)]-n-ブチルアミン-Ni等を例示することができる。
【0023】
また、フッ素系界面活性剤としては、疎水性基としてフルオロカーボン鎖を有する公知の界面活性剤を適宜使用すればよい。この種のフッ素系界面活性剤としては、例えば、アニオン性フッ素系界面活性剤、カチオン性フッ素系界面活性剤、両性フッ素系界面活性剤、ノニオン性フッ素系界面活性剤等を用いることができる。
【0024】
上記の有機ケイ素化合物、紫外線吸収性化合物およびフッ素系界面活性剤は、基材の表面の改質効率および作業性等の観点からは、水または水溶性有機溶剤を溶媒とする溶液、分散液または懸濁液として基材の表面に付着させる。該溶液等の溶媒としては、水と水溶性の有機溶剤、例えば、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノール等)等との混合物を使用してもよい。水溶液として使用する場合には、有機ケイ素化合物、紫外線吸収性化合物およびフッ素系界面活性剤の溶解性を高めるために、水溶性有機溶剤、例えば、イソプロパノール等の低級アルコール等を適宜配合してもよい。
【0025】
水および/または水溶性有機溶剤を溶媒とする有機ケイ素化合物の溶液等の濃度は、該化合物の種類や水等に対する溶解度、被処理フッ素樹脂の種類、および共存する紫外線吸収性化合物とフッ素系界面活性剤の種類や濃度等によって左右され、特に限定的ではないが、例えば0.01~10重量%が好ましく、より好ましくは0.05~5重量%である。
【0026】
また、紫外線吸収性化合物の溶液等の濃度も、該化合物の種類や水等に対する溶解度、被処理フッ素樹脂の種類、および共存する有機ケイ素化合物とフッ素系界面活性剤の種類や濃度等によって左右され、特に限定的ではないが、例えば0.01~10重量%が好ましく、より好ましくは0.05~5重量%である。
【0027】
なた、上記のフッ素系界面活性剤の水溶液等における濃度は、前述の有機ケイ素化合物と紫外線吸収性化合物を基材の表面に十分な濃度で均一に存在させる濃度であればよく、特に限定的ではないが、例えば、0.01~2重量%が好ましく、より好ましくは、0.05~1重量%である。
【0028】
基材の表面に、前述の有機ケイ素化合物、紫外線吸収性化合物およびフッ素系界面活性剤の水溶液等を存在させる方法は、塗布法、噴霧法または浸漬法等のいずれであってもよい。また、該水溶液等を基材の表面に存在させた後、紫外線レーザー光照射前に乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥処理は自然乾燥で十分であるが、所望により、例えば、60~150℃で強制的におこなってもよい。フッ素系界面活性剤の作用により、有機ケイ素化合物と紫外線吸収性化合物は基材の表面に十分な濃度で均一に存在する。また、基材の表面に塗布等される上記水溶液の塗布厚みは、5μm~50μm、より好ましくは7μm~40μmとなるように調整する。また、乾燥時間については、0.5分間以上5分未満が好ましく、0.75分以上4分以下がより好ましい。
【0029】
本発明においては、上記の有機ケイ素化合物、紫外線吸収性化合物およびフッ素系界面活性剤を基材の表面に存在させた条件下において、該基材の表面に、例えば紫外線レーザー光を照射することにより表面改質する。紫外レーザー光としては、波長が400nm以下のものが望ましく、アルゴンレーザー光、クリプトンイオンレーザー光、Nd:YAGレーザー光、N2レーザー光、色素レーザー光、およびエキシマレーザー光等が例示されるが、特に、193~308nmのエキシマレーザー光が好適である。特に、高出力が長時間にわたって安定して得られるKrFエキシマレーザー光(波長:248nm)、ArFエキシマレーザー光(波長:193nm)およびXeClエキシマレーザー光(308nm)が好ましい。エキシマレーザー光照射は、通常、室温、大気中でおこなうが、酸素雰囲気中でおこなってもよい。
【0030】
有機ケイ素化合物、紫外線吸収性化合物およびフッ素系界面活性剤を基材の表面に存在させた条件下において、該基材の表面に、例えば紫外線レーザー光を照射することにより、紫外線吸収性化合物等が直ちに光を吸収し、励起状態となる。この励起体が、フッ素有機高分子化合物を含む基材の表面と衝突すること等により、炭素原子と酸素原子またはフッ素原子との結合を切断して、基材の表面のフッ素樹脂にラジカルを形成する。基材の表面に生成したラジカルと紫外線吸収性化合物成分由来の分子のラジカルが反応し、基材と紫外線吸収性化合物成分由来の分子が反応することにより表面改質がなされる。なお、上記エキシマレーザー等の紫外線レーザー照射処理以外に、プラズマ処理等によりフッ素有機高分子化合物を含む基材の表面の表面改質を行うこともできる。
【0031】
次に本発明を実施例によって説明する。
<実施例1>
フェナントレイン0.1重量%エタノール溶液に、フッ素系界面活性剤(株式会社ネオス製 フタージェント710FM)を0.2重量%の濃度で添加した後、ジメチルジフェニルシランを0.1重量%の濃度で分散させることによって前処理液(助剤)を調製した。アプリケーターを使用して該前処理液をPFA製フィルム(基材;厚さ:30μm)の表面上に塗布し(塗布厚:15μm)、1分間自然乾燥させた塗膜にKrFエキシマレーザー光を照射する(照射量:0.3J/cm2 )ことにより実施例1に係るフッ素樹脂フィルムを作製した。なお、最終的に得られたフッ素樹脂フィルムにおいて、最表面(表面改質された面)から深さ方向に100~150nmの範囲が改質されている。
【0032】
<実施例2>
PFA製フィルム(基材;厚さ:30μm)の表面上に塗布する前処理液の塗布厚を30μmとした以外は上記実施例1と同様の方法で実施例2に係るフッ素樹脂フィルムを作製した。なお、得られたフッ素樹脂フィルムにおいて、フッ素樹脂フィルム最表面から深さ方向の改質範囲は、上記実施例1と略同等であった。
【0033】
<実施例3>
前処理液をPFA製フィルム(基材;厚さ:30μm)の表面上に塗布(塗布厚:15μm)した後の乾燥時間を1.5分間とした以外は上記実施例1と同様の方法で実施例3に係るフッ素樹脂フィルムを作製した。なお、得られたフッ素樹脂フィルムにおいて、フッ素樹脂フィルム最表面から深さ方向の改質範囲は、上記実施例1と略同等であった。
【0034】
<比較例1>
前処理液をPFA製フィルム(基材;厚さ:30μm)の表面上に塗布(塗布厚:15μm)した後の乾燥時間を5分間とした以外は上記実施例1と同様の方法で比較例1に係るフッ素樹脂フィルムを作製した。なお、得られたフッ素樹脂フィルムにおいて、フッ素樹脂フィルム最表面から深さ方向の改質範囲は、上記実施例1と略同等であった。
【0035】
<接着耐久試験>
作製された上記実施例1~3、比較例1に係るフッ素樹脂フィルムを100mm×100mmの形状に切り出し、アルミニウム板(120mm×120mm×1mm)にシリコーンゴムを用いて貼り合わせ、この積層体を無荷重条件下において120℃で10分間加熱することによって接着試験片を調製した。得られた接着試験片を230℃の恒温槽内に放置し、経時的に該接着試験片を恒温槽から取り出してフィルムを剥離させたときにシリコーンゴムがフィルムに付着してかどうかを調べることによって接着耐久能を評価した。接着耐久試験結果を表1に示す。なお、表1におけるゴム剥離率(%)は、フッ素樹脂フィルム側の剥離面の画像をスキャンし、その画像とimageJというソフトを用いて、剥離面の中でシリコーンゴムが付着している、或いは、付着していない部分を色分けし、付着していない面積の割合を算出した。
【0036】
また、表1においては、実施例1~3、比較例1に係る各フッ素樹脂フィルムにおける最表面(表面改質された面)の濡れ性及び水接触角についての測定結果もあわせて示している。フッ素樹脂フィルムにおける最表面の濡れ性については、JIS-K6768に準じて測定した。また、最表面の水接触角については、JIS-K2396に準じて、KRUSS製DSA20により測定した(測定の際、純水の滴下量は1.0μLとした)。
【0037】
【0038】
上記表1から、本発明に係る実施例1~3に関しては、接着耐久試験終了段階である試験開始後600時間を経過した時点で、ゴム剥離率が5%以下という極めて優れた接着耐久性を有していることが分かる。個々について説明すると、実施例1に係るフッ素樹脂フィルムは、接着耐久試験開始直後(0時間:初期)において、実使用に際して問題のないレベル(ゴム剥離率30%以上95%以下)のゴム剥離率(60.1%)を示し、試験時間が経過するに従い、ゴム剥離率が徐々に低下する傾向にあり、試験開始後1時間経過以降は、実使用に際して全く問題が無いと考えられる“ゴム剥離率:30%”という基準値を大きく下回るゴム剥離率を示すことから、良好な接着耐久性を有していることが分かる。また、実施例2は、試験開始後1時間~8時間において、実使用に際して問題のないレベル(ゴム剥離率30%以上95%以下)のゴム剥離率を示し、25時間経過以降は、実施例1と同様にゴム剥離率:30%を大きく下回るゴム剥離率を示すことから、良好な接着耐久性を有していることが分かる。また、実施例3に関しては、試験開始直後(0時間:初期)から試験終了時(試験開始後600時間経過時)において、ゴム剥離率が30%以下を示しており、極めて優れた接着耐久性を有するフッ素樹脂フィルムであることが分かる。一方、比較例1に係るフッ素樹脂フィルムは、接着耐久試験開始後、時間が経過するに従い、ゴム剥離率(シリコーンゴムが付着していない面積の割合)が徐々に低下するものの、25時間~100時間の間でゴム剥離率が増加に転じ、最終的に100%のゴム剥離率を示す結果となり、接着耐久性が劣るものであることがわかる。
【0039】
なお、実施例1~3、比較例1のいずれにおいても、試験開始直後においては接着性が悪く、試験時間経過に伴いゴム剥離率が徐々に低下する傾向にあるが、これは、試験開始直後は、シリコーンゴムの硬化を阻害する物質(前処理液等)がフッ素樹脂フィルムの最表面に存在し、初期接着に悪影響を与えていると考えられる。一方、試験時間の経過に伴い、その阻害物質が230℃の加熱温度によって揮発していくため、試験時間経過に伴って徐々に接着性が向上すると推測される。また、比較例1に関しては、上記のように試験開始後25時間~100時間の間でゴム剥離率が増加に転じ、最終的に100%のゴム剥離率を示すことになることから、ゴム剥離率が増加に転じる何らかの要因が存在するものと推測される。
【0040】
実施例1と比較例1とを比較すると、両者は、前処理液をPFA製フィルム(厚さ:30μm)の表面上に塗布(塗布厚:15μm)した後の乾燥時間において相違している。具体的には、実施例1は、1分間の乾燥時間であるのに対し、比較例1は5分間の乾燥時間である。また、実施例1と同様に接着耐久性に優れる実施例2及び実施例3においては、乾燥時間をそれぞれ1分間、1.5分間としている。このことから、PFA製フィルムの表面上に前処理液を塗布し、エキシマレーザー光を照射するまでの乾燥時間として、5分未満に設定することが、優れた接着耐久性をフッ素樹脂フィルムの最表面に発現させるために重要であることが分かる。
【0041】
また、実施例1~3に係るフッ素樹脂フィルムにおける最表面は、その濡れ性が、40mN/m以上であり、シリコーンゴムとの密着性に優れるものであることが分かる。また、水接触角が、105度以上であることから、優れた防汚性を発揮するものであることが分かる。
【0042】
次に、実施例に係るフッ素樹脂フィルムと、比較例1に係るフッ素樹脂フィルムとにおいて、最表面領域(表面改質エリア)に関する接着耐久性の有意差の原因を確認するために、最表面から深さ方向のSiOH/Si等の検出フラグメントのシグナル強度、および、最表面の状態について、飛行時間型2次イオン質量分析法(TOF-SIMS)とスパッタエッチングを併用した方法にて確認した。なお、実施例1及び比較例1に係るフッ素樹脂フィルムを確認対象とした。
【0043】
<TOF-SIMS分析条件>
・装置:TOF-SIMS アルバック・ファイ社製 型式TRIFT-II
・1次イオン加速電圧:30kV
・1次イオン銃イオン源:Bi3
++
・2次イオン極性:正
・測定真空度(試料導入前):4×10-7Pa以下
・測定領域:100μm×100μm
・帯電中和:あり。
・エッチングイオン:ArGCIB(Arガスクラスターイオンビーム)
・エッチングイオン加速電圧/電流:5kV/5nA
・エッチング領域:500μm×500μm
・測定点1点あたりのエッチング時間:10秒
【0044】
TOF-SIMS分析とスパッタエッチングを併用した方法による各種検出フラグメントのシグナル強度結果を
図1及び
図2に示す。
図1及び
図2は、それぞれ、実施例1及び比較例1に係るフッ素樹脂フィルムについての測定結果であり、スパッタエッチングを行った後、その中心部100μm×100μmをシグナル強度測定した結果である。なお、
図1及び
図2においては、横軸はエッチング時間、縦軸は各種検出フラグメントのシグナル強度を示している。また、フッ素樹脂フィルムの最表面における各種検出フラグメントのシグナル強度結果を表2に示す。この最表面における各種検出フラグメントのシグナル強度結果については、実施例1~実施例3、比較例1に係るフッ素樹脂フィルムを確認対象とした。ここで、フッ素樹脂フィルムの最表面における各種検出フラグメントのシグナル強度の値は、
図1や
図2における横軸の時間が0秒における測定値に対応する。また、表2においては、実施例1~3、比較例1に係る各フッ素樹脂フィルムにおける最表面(表面改質された面)に関する色差についての測定結果もあわせて示している。色差は、JIS Z8730に基づくL*a*b表色系を用いて示される総合指標であり、コニカミノルタジャパン株式会社製分光測色計CM-700dによって測定した。なお、表面改質される前の基材の測定値を基準色としたときの測定値を色差として算出している。より具体的には、表面改質される前の基材(フッ素樹脂フィルム)と、表面改質された後の基材(フッ素樹脂フィルム)のそれぞれのL*値、a*値、及びb*値を求め、L*値、a*値、b*値それぞれの差から、ΔE*=[(ΔL*)
2 +(Δa*)
2+(Δb*)
2]
1/2の式によって算出している。
【0045】
【0046】
上記表2からシリコーンゴムとの接着性に関して、SiOH+フラグメントイオンのシグナル強度との間に強い相関関係が認められ、このSiOH+フラグメントイオンのシグナル強度が、3×102以上であることが、優れた接着耐久性を発現させることがわかる。なお、上記SiOH+フラグメントイオンは、有機ケイ素化合物由来の末端にSiH結合を備えるシラン系化合物に由来するものである。また、実施例1に係るフッ素樹脂フィルムの最表面におけるSiOH+フラグメントイオンのシグナル強度(5×102)は、実施例2における値(3×102)の1.67倍の値を有しており、この差が、上記耐久試験開始後1時間以降においてゴム剥離率が30%以下という極めて優れた接着耐久性を実施例1に係るフッ素樹脂フィルムが発現させる要因であると考えられ、SiOH+フラグメントイオンのシグナル強度が、5×102以上であることが、より一層優れた接着耐久性を発現させるために必要であることがわかる。ここで、上記接着耐久試験において、試験開始直後(0時間:初期)から試験終了時までの全ての段階において、ゴム剥離率が30%以下を示し、極めて優れた接着耐久性を有することが確認された実施例3については、フッ素樹脂フィルムの最表面におけるSiOH+フラグメントイオンのシグナル強度が、5.2×102であった。なお、フッ素樹脂フィルムの最表面におけるSiOH+フラグメントイオンのシグナル強度の下限値は、3×102以上、より好ましくは3.5×102以上、さらに好ましくは4×102である。また、フッ素樹脂フィルムの最表面におけるSiOH+フラグメントイオンのシグナル強度の上限値は、10×102以下、より好ましくは8×102以下、さらに好ましくは6×102以下である。
【0047】
また、実施例1と実施例2とを比較すると、実施例1は、PFA製フィルム(基材)の表面上に塗布される前処理液の塗布厚が15μmであり、実施例2は、塗布厚が30μmである点において相違している。このことから、PFA製フィルムの表面上に前処理液を塗布した後の乾燥時間が同一(共に1分間の乾燥時間)であっても、PFA製フィルムの表面上に塗布される前処理液の塗布厚によって、接着性に差が生じることが確認され、塗布厚として、30μm未満に設定することが好ましいことが分かる。
【0048】
次に、実施例1に関する
図1から、フッ素樹脂フィルムの最表面から厚み方向に向かうに従い、含有されるフッ素系化合物(CF結合フラグメント:CF
3、CF,C
2F
4、C
3F
3)の濃度が増加傾向の濃度勾配を有する状態であることが分かる。フッ素樹脂フィルムの最表面側領域が、このように基材側に向かうに従い含有されるフッ素系化合物の濃度が高くなる構造を有していることにより、基材との良好な接着性を発揮することが可能になっていることが分かる。また、シリコーンゴムとの接着性に影響を与えるSiOH、C
2H
5O、C
2H
3Oの濃度は、フッ素樹脂フィルムの最表面から厚み方向に向かうに従い、減少傾向の濃度勾配を有する状態であることが分かる。換言すると、SiOH、C
2H
5O、C
2H
3Oは、フッ素樹脂フィルムの最表面に近づくほど多く存在し、このことにより、実施例1及び2に関するフッ素樹脂フィルムは、シリコーンゴムとの接着性に優れるものとなることが分かる。これに対し、比較例1については、
図2に示されるように、最表面から厚み方向に向かうに従い、含有されるフッ素系化合物(CF結合フラグメント:CF
3、CF,C
2F
4、C
3F
3)の濃度が増加傾向の濃度勾配を有することから、実施例1と同様に、基材との良好な接着性を発揮しているが、シリコーンゴムとの接着性に影響を与えるSiOH、C
2H
5O、C
2H
3Oの濃度は、フッ素樹脂フィルムの最表面から厚み方向に向かうに従い増加した後、減少傾向の濃度勾配に転じる状態であることが分かる。つまり、比較例1に係るフッ素樹脂フィルムは、SiOH、C
2H
5O、C
2H
3Oの濃度が最表面近傍において高く形成されておらず、特に、シリコーンゴムとの接着性に最も大きな影響を与えるSiOHの濃度については、表面改質エリア全体においても、実施例1よりも低いものとなっており、これらのことが実施例1等に比べて比較例1に係るフッ素樹脂フィルムが接着耐久性に劣る原因であると考えられる。
【0049】
また、表1より、実施例1~実施例3に関し、接着耐久性は、実施例2、実施例1、実施例3の順に高くなっているのに対し、表2より分かるように、色差の値は、実施例1、実施例3、実施例2の順に高くなっている。通常、フッ素樹脂フィルムの改質が進むと色差の値が高くなることから、色差の値が高くなるほど、フッ素樹脂フィルムの表面改質が進み、接着耐久性が向上すると考えられているが、表1及び表2にかかる結果から、フッ素フィルムの改質が進むほど(色差が高くなるほど)、接着耐久性が向上するわけではないことが分かり、良好な接着耐久性を得るためには、表面改質される前後でのフッ素樹脂フィルムの最表面における色差は、JIS Z8730に基づく測定値で、2以上5以下の範囲であることが好ましく、2.2以上3.5以下の範囲であることがより一層好ましいと考えられる。ここで、実施例2は色差が高いにもかかわらず、実施例1,3と比較して接着耐久性が低下しているが、これは末端にSiH結合を備えるシラン系化合物がうまく導入できなかったためであると考えられる。また、比較例1は、実施例1~3に比べて、色差が1.63と低いことから、良好な接着耐久性を得ることができる程度に表面改質が進んでいないものであるいえる。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面改質されたフッ素樹脂フィルムであって、
少なくとも一方の最表面を飛行時間型2次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により分析した際のシラン系化合物に由来するSiOH+フラグメントイオンのシグナル強度が、3×102以上であることを特徴とするフッ素樹脂フィルム。
【請求項2】
表面改質される前後でのフッ素樹脂フィルムの前記最表面における色差は、JIS Z8730に基づく測定値で、2以上の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂フィルム。
【請求項3】
前記フッ素樹脂フィルムの前記最表面側領域は、フッ素系化合物が含有されており、含有されるフッ素系化合物の濃度が、前記最表面から厚み方向に向かうに従い増加傾向の濃度勾配を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のフッ素樹脂フィルム。
【請求項4】
前記最表面における水接触角が105°以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフッ素樹脂フィルム。
【請求項5】
前記最表面は、OH基を備える化合物を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のフッ素樹脂フィルム。
【請求項6】
少なくともフッ素樹脂を含有する基材表面を改質するフッ素樹脂フィルムの製造方法であって、
前記基材上に、有機ケイ素化合物、紫外線吸収性化合物およびフッ素系界面活性剤を含有する前処理液を付着させる前処理液付着工程と、
前記基材上に付着された前記前処理液を乾燥させる乾燥工程と、
乾燥後の前記基材表面に紫外線レーザー光を照射する工程とを備えており、
前記前処理液は、水および/又は水溶性有機溶剤を溶媒とし、前記有機ケイ素化合物を0.05~5重量%、紫外線吸収性化合物を0.05~5重量%、フッ素系界面活性剤を0.05~1重量%の濃度で含有する溶液であり、
前記前処理液の前記基材上への塗布厚みは、7μm~40μmであり、
前記乾燥工程における前記前処理液の乾燥時間が5分未満であり、
表面が改質された前記基材の最表面を飛行時間型2次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により分析した際のシラン系化合物に由来するSiOH+フラグメントイオンのシグナル強度が、3×10
2
以上となるフッ素樹脂フィルムの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
また、本発明の上記目的は、少なくともフッ素樹脂を含有する基材表面を改質するフッ素樹脂フィルムの製造方法であって、前記基材上に、有機ケイ素化合物、紫外線吸収性化合物およびフッ素系界面活性剤を含有する前処理液を付着させる前処理液付着工程と、前記基材上に付着された前記前処理液を乾燥させる乾燥工程と、乾燥後の前記基材表面に紫外線レーザー光を照射する工程とを備えており、前記前処理液は、水および/又は水溶性有機溶剤を溶媒とし、前記有機ケイ素化合物を0.05~5重量%、紫外線吸収性化合物を0.05~5重量%、フッ素系界面活性剤を0.05~1重量%の濃度で含有する溶液であり、前記前処理液の前記基材上への塗布厚みは、7μm~40μmであり、前記乾燥工程における前記前処理液の乾燥時間が5分未満であり、表面が改質された前記基材の最表面を飛行時間型2次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により分析した際のシラン系化合物に由来するSiOH+フラグメントイオンのシグナル強度が、3×10
2
以上となるフッ素樹脂フィルムの製造方法により達成される。