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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092662
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】静電容量方式の圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20220616BHJP
   G06F 3/02 20060101ALI20220616BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
G06F3/041 600
G06F3/02 E
G06F3/02 F
G01B7/00 101C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205501
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡津 裕次
【テーマコード(参考)】
2F063
5B020
【Fターム(参考)】
2F063AA16
2F063CA29
2F063HA01
2F063HA18
5B020DD04
(57)【要約】
【課題】 発泡シートからなる弾性体層に対する接着剤層の接着力が十分に得られる静電容量方式の圧力センサを提供する。
【解決手段】 本発明の静電容量方式の圧力センサ1は、第1電極シート2と、第2電極シート3と、平均気泡径2~40μmの気泡41が分散されている発泡シートからなり、第1電極シート2と第2電極シート3との間に挟持された弾性体層4と、弾性体層4の第1電極シート2側の面および第2電極シート3側の面にそれぞれ形成された接着剤層5,5と、を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁シート上に第1電極層が形成された第1電極シートと、
第2絶縁シート上に第2電極層が形成された第2電極シートと、
平均気泡径2~40μmの気泡が分散されている発泡シートからなり、前記第1電極シートと前記第2電極シートとの間に挟持された弾性体層と、
前記弾性体層の前記第1電極シート側の面および前記第2電極シート側の面にそれぞれ形成された接着剤層と、を備え、
前記第1電極シートまたは前記第2電極シートが押圧された際に、前記第1電極層と前記第2電極層との間の距離変化に応じた前記第1電極層と前記第2電極層との間の容量変化に基づいて押圧力を検出する、静電容量方式の圧力センサ
【請求項2】
前記気泡のうち95%以上が、気泡径50μm以下である、請求項1の静電容量方式の圧力センサ。
【請求項3】
前記発泡シートの表面から深さ20μmでの表層領域におけるVg/(Vp+Vg)が、前記発泡シートの表層領域よりも深い内部領域におけるVg/(Vp+Vg)の2分の1より小さい、請求項1または請求項2の静電容量方式の圧力センサ。
Vg:単位体積当たりに含まれる気泡内ガスの体積
Vp:気泡が無い部分における単位体積当たりに含まれるプラスチックの体積
【請求項4】
前記気泡が連続気泡である、請求項1~3の静電容量方式の圧力センサ。
【請求項5】
前記接着剤層に用いる接着剤の硬化前の粘度が10~200PaSである、請求項1~4の静電容量方式の圧力センサ。
【請求項6】
前記接着剤が、熱硬化型接着剤である、請求項1~5の感静電容量方式の圧力センサ。
【請求項7】
前記発泡シートが、シリコーン樹脂からなる、請求項1~6の静電容量方式の圧力センサ。
【請求項8】
前記発泡シートの厚みが、50μm~500μmである、請求項1~7の静電容量方式の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関し、とくに発泡シートからなる弾性体層に対する接着剤層の接着力が十分に得られる静電容量方式の圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話機、ノートブックタイプPC、携帯型ゲーム機、電子辞書、テレビ装置、カーナビゲーションシステム、車載表示パネルなどの各種の電子機器に組み込まれて使用され、操作面に入力された押圧力を検知し、任意の動作を行う圧力センサが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、第1絶縁シート上に第1電極層が形成された第1電極シートと、第2絶縁シート上に第2電極層が形成された第2電極シートと、第1電極シートと第2電極シートとの間に挟持された弾性体層と、を備え、第1電極シートまたは第2電極シートが押圧された際に、第1電極層と第2電極層との間の距離変化に応じた第1電極層と第2電極層との間の容量変化に基づいて押圧力を検出する静電容量方式の圧力センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-22225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成の静電容量方式の圧力センサにおいては、弾性体層の材料として発泡シートを用いた場合には、弾性体層の第1電極シート側の面および第2電極シート側の面にそれぞれ接着剤層を設けても、接着剤層の弾性体層に対する接着力が十分に得られなくなることがあった。
この場合、電極シートが弾性体層から一部剥離し、押圧側の電極シートの電極が弾性体層の変形に沿って一体的な動きをしなくなることがあるため、圧力センサが正確に圧力を検出できなくなる。
【0006】
したがって、本発明は、発泡シートからなる弾性体層に対する接着剤層の接着力が十分に得られる静電容量方式の圧力センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0008】
本発明の静電容量方式の圧力センサは、第1絶縁シート上に第1電極層が形成された第1電極シートと、第2絶縁シート上に第2電極層が形成された第2電極シートと、平均気泡径2~40μmの気泡が分散されている発泡シートからなり、第1電極シートと第2電極シートとの間に挟持された弾性体層と、弾性体層の第1電極シート側の面および第2電極シート側の面にそれぞれ形成された接着剤層と、を備えている。
【0009】
本発明者は、従来技術の接着剤層の弾性体層に対する接着力の低さは、弾性体層を構成する発泡シートの表面に気泡が多数開口することに起因すると考えた。すなわち、弾性体層表面に開口した気泡は、硬化前である接着剤層の接着剤が弾性体層に滲み込む入口であり、この入口から接着剤層の接着剤が弾性体層内に滲み込むことにより、その分だけ接着剤層全体の膜厚が薄くなる。その結果、接着剤層の弾性体層に対する接着力が十分に得られなくなる。
そこで、発泡シートの気泡について、平均気泡径2~40μmの微細な気泡とすることにより、弾性体層表面に気泡が開口したとしても、開口した気泡から弾性体層への接着剤の滲み込みで接着剤層全体の膜厚が薄くならないようにした。したがって、接着剤層の弾性体層に対する接着力が十分に得られる。
そのため、本発明の静電容量方式の圧力センサは、電極シートが弾性体層から一部剥離することもなく、その結果として押圧側の電極シートの電極が弾性体層の変形に沿って一体的な動きをしなくなることがないので、圧力センサが正確に圧力を検出できる。
また、弾性体層への接着剤層の接着剤の滲み込みで弾性体層の発泡構造が変わることもなく、弾性体層が所定の弾性変形を行うため、やはり圧力センサ1が正確に圧力を検出できる。
【0010】
1つの態様として、気泡のうち95%以上が、気泡径50μm以下であると好適である。
【0011】
上記構成により、弾性体層表面に気泡が開口しても、それらの気泡41のうちほとんどが平均気泡径上限より大きい方向に極端にばらつかないから接着剤層全体の膜厚減少をより抑制でき、接着剤層の弾性体層に対する接着力がより確実に得られる。
【0012】
1つの態様として、発泡シートの表面から深さ20μmでの表層領域におけるVg/(Vp+Vg)が、前記発泡シートの表層領域よりも深い内部領域におけるVg/(Vp+Vg)の2分の1より小さいと好適である。
Vg:単位体積当たりに含まれる気泡内ガスの体積
Vp:気泡が無い部分における単位体積当たりに含まれるプラスチックの体積
【0013】
上記構成により、弾性体層が発泡シートの表面を皮膜で覆っているような構造になるので、接着剤の気泡への滲み込み自体が発生しない。
【0014】
また、1つの態様として、気泡が連続気泡であると好適である。
【0015】
気泡が独立気泡であると、押圧入力を行ったときに気泡内の空気に逃げ場がなくなり、気泡が破裂する可能性がある。気泡が破裂した場合、弾性体層における気泡の存在状態が経時的に変化する。すなわち、押圧入力時の弾性体層の変形度合いが変化し、圧力センサの感度が一定とならない。
これに対して、気泡が連続気泡であると、押圧入力を行ったときに気泡内の空気に逃げ場があるため、気泡の破裂を避けることができる。そのため、弾性体層における気泡の存在状態が経時的に変化せず、圧力センサの感度を一定に維持できる。
【0016】
また、1つの態様として、接着剤層に用いる接着剤の硬化前の粘度が10~200PaSであると好適である。
【0017】
上記構成により、弾性体層表面に気泡が開口しても、硬化前の粘度が高いので、開口した気泡から弾性体層への接着剤の滲み込みを抑制できる。したがって、接着剤層の弾性体層に対する接着力が十分に得られる。
【0018】
また、1つの態様として、接着剤が、熱硬化型接着剤であると好適である。
【0019】
上記構成により、電極シートが不透明部分を有していても接着剤層の均一な硬化が得られる。また、接着剤のスクリーン印刷適性にも優れる。
【0020】
また、1つの態様として、発泡シートが、シリコーン樹脂からなると好適である。
【0021】
上記構成により、押圧解除後の弾性体層の復元性が良くなる。また、圧力センサ使用時の温度変化などによって変形度合いにムラが起きにくく、圧力センサの感度を一定に維持できる。
【0022】
1つの態様として、発泡シートの厚みが、50μm~200μmであると好適である。
【0023】
上記構成により、十分な感度の圧力センサが得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の圧力センサは、発泡シートからなる弾性体層に対する接着剤層の接着力が十分に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の圧力センサの一例を示す断面図
図2】本発明の圧力センサの弾性体層表面の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の静電容量方式の圧力センサについて、図面に基づいて説明する。なお、本発明に関して提出した図面は、わかりやすいように模式的に描いている。また、各図の説明の中で先に説明した図と重複する部分は、図を理解しやすくするために一部省略または簡略化している場合がある。
【0027】
(1)圧力センサの基本構造と検出原理
圧力センサ1は、第1絶縁シート21上に第1電極層22が形成された第1電極シート2と、第2絶縁シート31上に第2電極層32が形成された第2電極シート3と、発泡シートからなり、第1電極シート2と第2電極シート3との間に挟持された弾性体層4と、弾性体層4の第1電極シート2側の面および第2電極シート3側の面にそれぞれ形成された接着剤層5,5と、を備えている(図1参照)。
図1に示す圧力センサ1の例では、第2電極シート3の上に、弾性体層4、第1電極シート2の順で積層されている。
【0028】
上記構成からなる圧力センサ1は、例えば、表示装置の表示面を覆うガラス板上に載置して、静電容量式の圧力センサとして用いられる。
その検出原理は以下の通りである。すなわち、前面となる第1電極シート2に垂直に圧力が押圧力として加わると、弾性体層4が垂直方向に変形して第1電極シート2の第1電極層22が第2電極シート3の第2電極層32に近づき、電極間距離が減少する。静電容量は電極間距離に反比例するため、静電容量は増加する。この静電容量の増加量を計測、換算することで圧力センサ1の厚み方向の圧力を検出することができる。
【0029】
また、押圧力は、圧力センサ1の水平面に平行な方向に働くせん断力であってもよい。
例えば、タイヤのせん断力検出用途であれば、圧力センサ1は路面上に直接載置または硬い板を介して間接載置して用いられる。
その検出原理は以下の通りである。すなわち、前面となる第1電極シート2の水平面に平行な方向にせん断力が押圧力として加わると、第1電極シート2が水平方向に移動するように弾性体層4が変形する。その結果、第1電極層22が移動すると、第1電極シート2の第1電極層22と第2電極シート3の第2電極層32の重なる面積が変化する.電極の重なる面積は、せん断力と同じ向きでは増加し、逆向きでは減少する。静電容量は電極の重なる面積に比例するため、静電容量が増減する。この静電容量の増減によりせん断力の方向を判別し、力の方向の電極の静電容量から逆向きの電極の静電容量を減算することで圧力センサ1のせん断力を検出することができる。
【0030】
(2)第1電極シート
第1電極シート2は、前述の通り、第1絶縁シート21上に第1電極層22が形成されている。図1に示す例では、第1絶縁シート21の下面、すなわち弾性体層4側の面が第1電極層22の形成面となる。
【0031】
第1絶縁シート21は、第1電極層22を支持するものである。
第1絶縁シート21の材料は、特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0032】
第1電極層22の材質は、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ロジウム等の金属膜のほか、これらの金属粒子を樹脂バインダーに分散させた導電ペースト膜あるいはポリへキシルチオフェン、ポリジオクチルフルオレン、ペンタセン、テトラベンゾポルフィリンなどの有機半導体などが挙げられる。
第1電極層22の製造方法は、前者の場合、メッキ法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等で導電膜を全面形成した後にエッチングによりパターニングする方法が挙げられ、後者の場合、スクリーン、グラビア、オフセットなどの印刷法等で直接パターン形成する方法が挙げられる。
【0033】
第1電極層22は、一層のみでもよいし二層以上の多層から成り立っていてもよい。
第1電極層22のパターンとしては、丸状、角状、線状などいずれの形状であってもよい。
第1電極層22の厚みは、0.1μm~100μmの範囲内で適宜選択するとよい。
【0034】
第1電極層22の各々からは配線パターンが接続され、外部にあるコントローラと電気接続される。
【0035】
(3)第2電極シート
第2電極シート3は、前述の通り、第2絶縁シート31上に第2電極層32が形成されている。図1に示す例では、第2絶縁シート31の上面、すなわち弾性体層4側の面が第2電極層32の形成面となる。
【0036】
第2絶縁シート31は、第2電極層32を支持するものである。
第2絶縁シート31は、特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0037】
第2電極層32の材質は、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ロジウム等の金属膜のほか、これらの金属粒子を樹脂バインダーに分散させた導電ペースト膜あるいはポリへキシルチオフェン、ポリジオクチルフルオレン、ペンタセン、テトラベンゾポルフィリンなどの有機半導体などが挙げられる。
第2電極層32の製造方法は、前者の場合、メッキ法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等で導電膜を全面形成した後にエッチングによりパターニングする方法が挙げられ、後者の場合、スクリーン、グラビア、オフセットなどの印刷法等で直接パターン形成する方法が挙げられる。
【0038】
第2電極層32は、一層のみでもよいし二層以上の多層から成り立っていてもよい。
第2電極層32のパターンとしては、丸状、角状、線状などいずれの形状であってもよい。なお、垂直方向の圧力検出用途の場合は、第1電極層22と第2電極層32の重なる面積は重要でないので、第1電極層22および第2電極層32の一方または両方が全面的に形成されていても構わない。
第2電極層32の厚みは、0.1μm~100μmの範囲内で適宜選択するとよい。
【0039】
第2電極層32の各々からは配線パターンが接続され、外部にあるコントローラと電気接続される。そして、第1電極層22と第2電極層32との間で発生する静電容量値の変化を検出することにより、圧力センサ1に加わる押圧力を算出できる。
【0040】
(4)弾性体層
本発明の圧力センサ1において、弾性体層4を構成する発泡シートは、平均気泡径2~40μmの気泡41が分散されている。従来の圧力センサが、弾性体層4を構成する発泡シートに平均気泡径100~1000μmの気泡を分散しているのに比べると、かなり微細である。
【0041】
なお、発泡シートの平均気泡径は、断面観察によって得られた断面画像を画像処理等の方法から求めることができる。
断面観察には、サンプルを切ることで断面を開口させて光学顕微鏡や走査電子顕微鏡で観察する方法が一般的である。画像処理ソフトは市販のものが使える。また、断面写真から手作業で気泡径を測り、計算しても構わない。断面が楕円の場合には長径と短径の積の平方根を気泡径として取り扱うとよい。
ここでは、厚み方向に多数箇所で観察した。
【0042】
本発明の圧力センサ1は、弾性体層4を構成する発泡シートの平均気泡径を2~40μmと微細にすることにより、弾性体層4表面に気泡41が開口したとしても、開口した気泡41から弾性体層4への硬化前である接着剤層5,5の接着剤の滲み込みで、接着剤層5,5全体の膜厚が薄くなり過ぎない。したがって、接着剤層5,5の弾性体層4に対する接着力が十分に得られる。
そのため、圧力センサ1は、電極シート2,3が弾性体層4から一部剥離することもなく、その結果として押圧側の電極シート2の電極22が弾性体層4の変形に沿って一体的な動きをしなくなることがないので、正確に圧力を検出できる。
また、弾性体層4への接着剤層5,5の接着剤の滲み込みで弾性体層4の発泡構造が変わることもなく、弾性体層4が所定の弾性変形を行うため、やはり圧力センサ1が正確に圧力を検出できる。
平均気泡径が40μmを超えると、弾性体層4表面に開口した気泡41に接着剤が滲み込んで接着剤層5,5全体の膜厚が薄くなり過ぎ、接着剤層5,5の弾性体層4に対する接着力が十分に得られなくなる。平均気泡径が2μmに満たないと、押圧力に応じた十分な変形が難しくなる。より好ましくは平均気泡径6~25μmであり、さらに好ましくは平均気泡径6~12μmである。
【0043】
なお、上記平均気泡径の気泡41を有する発泡シートにおいて、分散された気泡41のうち95%以上が、気泡径50μm以下であるのが好ましい。
すなわち、弾性体層4表面に気泡41が開口しても、それらの気泡41のうちほとんどが平均気泡径上限より大きい方向に極端にばらつかないから接着剤層5,5全体の膜厚減少をより抑制でき、接着剤層5,5の弾性体層4に対する接着力がより確実に得られる。
【0044】
本発明の圧力センサ1は、弾性体層4を構成する発泡シートの表面から深さ20μmでの表層領域におけるVg/(Vp+Vg)が、発泡シートの表層領域よりも深い内部領域におけるVg/(Vp+Vg)の2分の1より小さい方が好ましい。
なお、Vgは単位体積当たりに含まれる気泡内ガスの体積、Vpは気泡が無い部分における単位体積当たりに含まれるプラスチックの体積である。これらの体積は、断面観察により求めることができる。
【0045】
表層領域が上記関係を満たすことで、弾性体層4が発泡シートの表面を皮膜42で覆っているような構造になるので(図2参照)、接着剤層5,5の接着剤の気泡41への滲み込み自体が発生しない。なお、図中、皮膜42は、弾性体層4表面から破線で示す深さまでの領域であり、皮膜42中の気泡は極めて微細なため、これを省略して描いている。
【0046】
また、本発明の圧力センサ1は、弾性体層4を構成する発泡シートについて、気泡41を独立気泡で形成するもできるし、気泡41を連続気泡で形成することもできる。
しかしながら、独立気泡は、気泡41がそれぞれ樹脂の膜で閉じ込められており、中の空気は逃げ出したり移動したりすることができない。他方、連続気泡は、気泡41は互いに繋がりあっており、中の空気も自由に移動することができる。したがって、圧力センサ1の用途では、連続気泡で形成する方がより好ましい。
なお、図1および図2は、発泡シート4を模式的に描いたもので、独立気泡に限定するものではない。
【0047】
すなわち、気泡41が独立気泡であると、押圧入力を行ったときに気泡41内の空気に逃げ場がなくなり、気泡41が破裂する可能性がある。気泡41が破裂した場合、弾性体層4における気泡41の存在状態が経時的に変化する。すなわち、押圧入力時の弾性体層4の変形度合いが変化し、圧力センサ1の感度が一定とならない。
これに対して、気泡41が連続気泡であると、押圧入力を行ったときに気泡41内の空気に逃げ場があるため、気泡41の破裂を避けることができる。そのため、弾性体層4における気泡41の存在状態が経時的に変化せず、圧力センサ1の感度を一定に維持できる。
【0048】
また、弾性体層4を構成する発泡シートの材料としては、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、その他の天然ゴムや合成ゴムなどの各種ゴムなどを用いることができる。
とくにシリコーン樹脂は、押圧解除後の弾性体層4の復元性が良くなるので好ましい。また、シリコーン樹脂は、圧力センサ1使用時の温度変化などによって弾性体層4の変形度合いにムラが起きにくく、圧力センサ1の感度を一定に維持できるので好ましい。
【0049】
発泡シートの製造方法は、アゾジカーボンアミドや炭酸水素塩などの熱分解型発泡剤やフロンや炭化水素などを熱可塑性樹脂カプセルでくるんだ熱膨張性マイクロカプセル発泡剤を前記した樹脂中に分散させ、熱が加わるビーズ発泡、バッチ発泡、プレス発泡、常圧二次発泡、射出発泡、押出発泡などの成形方法で製造する方法が挙げられる。
上記成形法のうち射出発泡は、金型に接触した部分に気泡41が存在しないソリッドスキン層を形成し、ソリッドスキン層に挟まれる形で発泡コア層を形成できるので、前述の弾性体層4が発泡シートの表面を皮膜42で覆っているような構造をとる場合に適している。
また、本発明の圧力センサ1は、弾性体層4を構成する発泡シートの厚みが、50μm~500μmであるのが好ましい。より好ましくは50μm~200μmである。
【0050】
(5)接着剤層
接着剤層5は、弾性体層4の第1電極シート3側の面および第2電極シート4側の面にそれぞれ設けられ、第1電極シート3および第2電極シート4を弾性体層4に接着する層である。
前述の通り、弾性体層4表面に気泡41が開口したとしても、開口した気泡41から弾性体層4への接着剤の滲み込みで接着剤層5,5全体の膜厚が薄くならないようにすることが、接着剤層5,5の弾性体層4に対する接着力を十分に得るためには必要である。そのため、上記「(4)弾性体層」において、弾性体層4に種々の工夫を凝らしている。
【0051】
接着剤層5には、熱硬化型接着剤のほか、UV硬化型接着剤や湿気硬化型接着剤を用いることができる。とくに、熱硬化型接着剤を用いるのが好ましい。
何故ならば、第1電極シート3および第2電極シート4が電極や電極に接続された配線などに不透明部分を有している場合、UV硬化型接着剤では接着剤層5の硬化にムラが生じるが、熱硬化型接着剤では接着剤層5の均一な硬化が得られるからである。また、熱硬化型接着剤は、他の接着剤と比べて、スクリーン印刷適性にも優れる。
【0052】
なお、熱硬化型接着剤の硬化では加熱を行なうが、従来の発泡シートでは加熱によって、接着剤層と発泡体の間または接着剤層内に新たに気泡が発生し、十分な接着力が得られない。しかしながら、本発明の圧力センサ1のように、弾性体層4を構成する発泡シートが平均気泡径2~40μmの微細な気泡41であると、発泡シート内の気泡の熱膨張の影響が少なく、接着剤層と発泡体の間または接着剤層内に新たな気泡の発生が起こりにくいため、十分な接着力が得られる。
【0053】
また、接着剤層5に用いる接着剤の硬化前の粘度は、10~200PaSであるのが好ましい。
接着剤層5に用いる接着剤の硬化前の粘度が10PaSに満たないと、弾性体層4表面に開口した気泡41から弾性体層4へ接着剤が滲み込み、弾性体層4全体の厚みが薄くなりやすい。また、接着剤層5に用いる接着剤の硬化前の粘度が200PaSを超えると、
接着面に均一に塗布することが難しくなる。より好ましい粘度は30~150PaSである。
【0054】
以上、本発明の圧力センサ1の一例について説明したが、本発明の圧力センサ1は上記した構成に限定されない。
例えば、図1に示す例では、第1電極層22が第1絶縁シート21の弾性体層4側の面に、第2電極層32が第2絶縁シート31の弾性体層4側の面にそれぞれ形成されているが、これに限定されない。第1電極層22および第2電極層32のうち一方または両方が、弾性体層4側とは反対側の面に形成されていてもよい。好ましくは図1に示す構成である。何故ならば、弾性体層4の変形時の第1電極層22と第2電極層32間の静電容量の変化が大きいからである。
【0055】
また、図1に示す例では、圧力センサ1は、第1電極シート2と、第2電極シート3と、第1電極シート2と第2電極シート3との間に挟持された弾性体層4と、弾性体層4の第1電極シート2側の面および第2電極シート3側の面にそれぞれ形成された接着剤層5,5とのみから構成されているが、これに限定されない。
例えば、第1電極シート2と第2電極シート3との間に、弾性体層4以外の層も挟持されていてもよい。例えば、この弾性体層4以外の層として、弾性体層4と発泡倍率の異なる発泡シートや、発泡していないゲルなどの柔軟なシートでも良い。なお、この弾性体層4以外の層の弾性体層4側とは反対側の面に形成された接着剤層については、とくに材料は限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の圧力センサは、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話機、ノートブックタイプPC、携帯型ゲーム機、電子辞書、テレビ装置、カーナビゲーションシステム、車載表示パネルなどの各種の電子機器、ロボットやFA機器に組み込まれて利用可能である。また、本発明の圧力センサは、産業機器、医療、ヘルスケア、自動車、情報端末、エンターテイメントなどあらゆる分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1:圧力センサ
2:第1電極シート
21:第1絶縁シート
22:第1電極
3:第2電極シート
31:第2絶縁シート
32:第2電極
4:弾性体層
41:気泡
42:皮膜
5:接着剤層
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項6
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項6】
前記接着剤層が、熱硬化型接着剤を用いたものである、請求項1~5の感静電容量方式の圧力センサ。