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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092741
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】排水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20220616BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20220616BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
E03C1/22 C
A47K1/14 B
E03C1/23 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205622
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松村 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】藤田 源希
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA01
2D061DA02
2D061DA03
2D061DB03
2D061DE00
2D061DE10
2D061DE11
2D061DE30
(57)【要約】
【課題】
軸部の側面方向より応力が加えられた場合であっても衝撃を緩衝することが可能な排水栓装置を提供する。
【解決手段】
排水栓装置は排水口21が形成された槽体1と、排水口21を閉塞する栓蓋8と、栓蓋8と係合する支持軸7を備え、支持軸7は排水口21に固定されるカバー部75と、操作部の操作に基づいて変位する軸部71を有している。軸部71は円筒状であり、インナーワイヤ62と連結され、基端側を構成する第一軸部72と、端部側を構成し、栓蓋8が係合された第二軸部73と、第一軸部72と第二軸部73を繋ぐ衝撃機構としてのスプリング74から構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口が形成された槽体と、
排水口を閉塞する栓蓋と、
栓蓋を支持する支持軸を備えた排水栓装置において、
支持軸は排水口に固定されるカバー部と、操作部の操作に基づいて変位する軸部を有し、
軸部は側面方向からの応力を緩衝する衝撃緩衝機構を有することを特徴とする排水栓装置。
【請求項2】
前記衝撃緩衝機構は、
スプリングによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項3】
前記衝撃緩衝機構は、
軟質素材によって構成されることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項4】
前記衝撃緩衝機構は、
前記軸部が基端側を構成する第一軸部と、端部側を構成する第二軸部から成り、第一軸部と第二軸部は回動可能に接続されていることによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項5】
前記槽体は、
底壁部及び底壁部の周囲から立設された側面部を有し、
前記排水口は側面部又は底壁部と側面部が交差する角部に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の排水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口を開閉する排水栓装置に関するものである。
【0002】
槽体の排水口を開閉する排水栓装置として、特許文献1に記載のように、排水口を開閉する栓蓋と、栓蓋を支持する支持軸と、支持軸の破損を防止するための衝撃緩衝機構を備えた排水栓装置が知られている。
特許文献1に記載の排水栓装置において、支持軸は排水口に固定されるカバーと、操作部の操作に基づいて変位する軸部を有している。又、軸部は内部に衝撃緩衝機構としてのショックアブソーバスプリングを内蔵しており、栓蓋の上昇時において、軸方向に応力が加わるとショックアブソーバスプリングが収縮することにより、衝撃を緩衝する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-048682号公報
【特許文献2】特開2020-183649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の排水栓装置において、衝撃緩衝機構は軸部の軸方向に加わる応力しか緩衝することができない。従って、例えば槽体が浴槽である場合、浴槽清掃者の足や掃除用具によって、上昇状態にある栓蓋に対し、軸部の側面方向より衝撃が加えられると、軸部が破損する恐れを有している。
又、特許文献2に記載の排水栓装置のように、排水口が槽体の角部に形成されている場合、栓蓋が斜め上方に向けて動作する。この時、栓蓋が上方から踏みつけられると、軸部に対して側面方向より応力が加えられることから、軸部が破損しやすい。
【0005】
本発明は上記問題に鑑み、軸部の側面方向より応力が加えられた場合であっても衝撃を緩衝することが可能な排水栓装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に記載の本発明は、排水口が形成された槽体と、
排水口を閉塞する栓蓋と、
栓蓋を支持する支持軸を備えた排水栓装置において、
支持軸は排水口に固定されるカバー部と、操作部の操作に基づいて変位する軸部を有し、
軸部は側面方向からの応力を緩衝する衝撃緩衝機構を有することを特徴とする排水栓装置である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、前記衝撃緩衝機構は、
スプリングによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置である。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、前記衝撃緩衝機構は、
軟質素材によって構成されることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置である。
【0009】
請求項4に記載の本発明は、前記衝撃緩衝機構は、
前記軸部が端部側を構成する第一軸部と、基端側を構成する第二軸部から成り、第一軸部と第二軸部は回動可能に接続されていることによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置である。
【0010】
請求項5に記載の本発明は、前記槽体は、
底壁部及び底壁部の周囲から立設された側面部を有し、
前記排水口は側面部又は底壁部と側面部が交差する角部に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の排水栓装置である。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明によれば、軸部は側面方向からの応力に対して変形する衝撃緩衝機構を備えることによって、部材の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の施工状態を示す断面図である。
図2】排水栓装置を示す斜視図である。
図3】栓蓋の上昇状態を示す断面図である。
図4】軸部が変形した状態を示す断面図である。
図5】第二実施形態の栓蓋の上昇状態を示す断面図である。
図6】軸部が変形した状態を示す断面図である。
図7】第三実施形態の栓蓋の上昇状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の排水栓装置を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって発明が制限して理解されるものではない。
【0014】
図1乃至図4に示すように、本発明の排水栓装置は、槽体1、排水栓2、ワイヤ受け3、操作部4、ロック機構5、伝達部材6、栓蓋8から構成される。
【0015】
槽体1は浴槽であり、平面視矩形の底壁部11と、底壁部11の四辺から立設された側壁部12を有する箱状であり、側壁部12の下端であって、底壁部11と交差する角部に開口が形成されている。尚、当該開口には排水栓2が取り付けられているとともに、槽体1の縁部には操作部4が取り付けられている。
【0016】
排水栓2は内部に排水流路が形成された中空の筒体であって、上記槽体1の角部に形成された開口に取り付けられ、槽体1内の湯水を排出する排水口21を斜め上方に向けて形成する。又、排水栓2は一端に槽体1の開口周縁と当接するフランジ部を有しているとともに、排水栓2は他端において、下水側へと連続する排水配管22が接続されており、その内側にはワイヤ受け3が取り付けられている。尚、図2に示すように、排水口21は正面視長円形を成しており、垂直方向よりも水平方向の方が長尺となっている。
【0017】
図3に示すように、ワイヤ受け3は後述する伝達部材6の端部を排水栓2内に固定する部材であって、排水栓2の内側面と略同形状を成す環状部31と、伝達部材6を固定する固定部32と、環状部31と固定部32を繋ぐ支承部33から構成されている。
【0018】
操作部4は槽体1の縁部より浴室内に露出するスイッチ部41を有し、当該スイッチ部41に対して押動操作が加えられることによって排水栓装置を作動させ、栓蓋8を昇降させることによって排水口21を開閉する。
【0019】
ロック機構5は上端より延設された軸がスイッチ部41裏面に嵌合されており、スイッチ部41に対する押動操作に伴い内部のギアの噛合及び噛合の解除が繰り返されることによって、操作の都度排水口21の開口状態の保持と、当該保持の解除を切り替えることが可能となる。又、ロック機構5は内部にリターンスプリングが配置されており、後述するインナーワイヤをスイッチ部41側へと付勢している。
【0020】
伝達部材6は樹脂製筒状のアウターチューブ61、及びアウターチューブ61内に配置された金属製のインナーワイヤ62から成るレリースワイヤと、レリースワイヤ端部に形成された支持軸7を有している。当該伝達部材6はレリースワイヤ側の端部がロック機構5に接続されているとともに、支持軸7側の端部は上方を向くように屈曲し、ワイヤ受け3に固定されるとともに先端が栓蓋8に係合されている。
支持軸7は軸部71及びカバー部75から成る筒状体であり、軸部71はインナーワイヤ62に、カバー部75はアウターチューブ61にそれぞれ連結されており、インナーワイヤ62が栓蓋8側に摺動した際に軸部71がカバー部75から突出するように構成されている。
軸部71は円筒状であり、インナーワイヤ62と連結され、基端側を構成する第一軸部72と、端部側を構成し、栓蓋8が係合された第二軸部73と、第一軸部72と第二軸部73を繋ぐ衝撃緩衝機構としてのスプリング74から構成されている。スプリング74は弾性を有しており、軸部71の側面方向から衝撃が加えられた際において、軸部71はスプリング74を起点として折れ曲がるように変形可能となっている。
カバー部75は軸部71を内部に収納する中空の円筒状であり、外側面がワイヤ受け3に固定されている。
【0021】
栓蓋8は排水口21を開閉するパッキンが周囲に嵌着された板状の蓋体であって、操作部4からの操作を受けて斜め方向に向けて変位する。又、栓蓋8は下面に支持軸7が係合されている。尚、栓蓋8は排水口21と略同形であって、栓蓋8の下降時において、嵌着されたパッキンは排水口21の全周に亘り当接する。
【0022】
上記排水栓装置は、以下のように作動する。
図1に示すように、栓蓋8が下降状態にある時において、栓蓋8はパッキンが排水口21周縁に対して全周に亘り当接することによって排水口21を閉塞している。この時、使用者は槽体1内に湯水を貯留することが可能となっている。
ここで、スイッチ部41に対して押動操作が加えられると、スイッチ部41の下降に伴いインナーワイヤ62がアウターチューブ61内を栓蓋8側へと摺動するとともに、支持軸7の軸部71がカバー部75より突出する。この時、軸部71によって押圧された栓蓋8が上昇し、排水口21が開口される。又、スイッチ部41への押動操作によってロック機構5は内部のギアが噛合し、栓蓋8は上昇状態が保持される。
次に、図3に示すように、上記栓蓋8が上昇した状態より再度スイッチ部41に押動操作が加えられると、ロック機構5内のギアの噛合が解除され、ロック機構5内に配置されたリターンスプリングの作用によってインナーワイヤ62がスイッチ部41側へと摺動するとともに、軸部71が下降する。この時、栓蓋8は軸部71の下降に伴い下降し、嵌着されたパッキンが排水口21の周縁に当接することによって、排水口21が閉塞される。
【0023】
上記軸部71は、栓蓋8の上昇時であって、排水口21が開口している状態において、衝撃緩衝機構としてのスプリング74がカバー部75の内側に配置されている。従って、湯水が排出される際の水勢によって軸部71が変形することはない。一方、踏み付けや蹴り込みによって軸部71の側面方向から応力が加えられると、スプリング74がカバー部75から露出する様に引き出される。尚、図3においては衝撃が加わる方向を矢印にて示している。この時、図4に示すように、スプリング74がカバー部75より露出することによって、軸部71は第二軸部73がスプリング74を起点として折れ曲がるように、加えられた応力に対応して変形する。これにより、軸部71の側面方向より加えられた応力は衝撃緩衝機構であるスプリング74によって緩衝され、軸部71の破損が防止される。
尚、加えられていた応力が消滅すると、スプリング74は自身の弾性によって元の形状に復帰し、通常通り作動する。
【0024】
以上のように、本実施形態によれば、軸部71は自身の側面方向からの応力に対して変形する衝撃緩衝機構としてのスプリングを備えることによって、部材の破損を防止することができる。
【0025】
本発明の第一実施形態は以上であるが、本発明の排水栓装置は上記第一実施形態の形状に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えても良い。
【0026】
上記実施形態において、衝撃緩衝機構はスプリングによって構成されていたが、当該スプリングは第一実施形態に記載した種類のものに限られるものでない。即ち、スプリングは板バネやコイルバネであっても良い。又、その他の種類のスプリングであっても良く、何ら限定されるものではない。
【0027】
又、衝撃緩衝機構はスプリングに限定されるものではない。即ち、図5及び図6に示す第二実施形態のように、軸部71がゴムやシリコン等の軟質素材から成る弾性部76から構成されており、軸部71の側面方向より応力が加わった際、当該応力に対して弾性部76が変形することにより衝撃緩衝機構を構成しても良い。
【0028】
又、図7に示す第三実施形態においては、軸部71は第一軸部72と第二軸部73の間に衝撃緩衝機構としての回動部77を備えている。第三実施形態においては、軸部71の側面方向より応力が加わった際、当該応力に対して第一軸部72と第二軸部73が回動部77を中心として回動し、軸部71が変形することによって衝撃を緩衝する。
【0029】
又、衝撃緩衝機構は軸部の一部を構成するに留まるものであっても良く、軸部の全部を構成するものであっても良い。
【0030】
又、軸部は栓蓋と必ずしも別体である必要はなく、栓蓋と軸部は一体に形成されていても良い。
【0031】
又、各実施形態において、軸部は側面からの応力に対して変形する衝撃緩衝機構に加え、従来のショックアブソーバスプリングを内蔵しても良い。当該ショックアブソーバスプリングは、軸方向からの応力に対して収縮変形し、衝撃を緩衝することが可能となっている。
【0032】
又、各実施形態において、槽体は浴槽であったが、洗面ボウルやキッチンシンクその他の槽体であっても良い。
【0033】
又、各実施形態において、排水口は側壁部と底壁部が交差する角部において斜め上方に向けて形成されていたが、排水口が底壁部において、鉛直方向に向けて形成されていても良い。
【0034】
1 槽体
11 底壁部
12 側壁部
2 排水栓
21 排水口
22 排水配管
3 ワイヤ受け
31 環状部
32 固定部
33 支承部
4 操作部
41 スイッチ部
5 ロック機構
6 伝達部材
61 アウターチューブ
62 インナーワイヤ
7 支持軸
71 軸部
72 第一軸部
73 第二軸部
74 スプリング
75 カバー部
76 弾性部
77 回動部
8 栓蓋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-01-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口が形成された槽体と、
前記排水口を閉塞する栓蓋と、
前記栓蓋と係合する支持軸を備えた排水栓装置において、
前記支持軸は前記排水口に固定されるカバー部と、操作部の操作に基づいて変位する軸部を有し、
前記軸部は側面方向からの応力を緩衝する衝撃緩衝機構を有することを特徴とする排水栓装置。
【請求項2】
前記衝撃緩衝機構は、
スプリングによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項3】
前記衝撃緩衝機構は、
軟質素材によって構成されることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項4】
前記衝撃緩衝機構は、
前記軸部が基端側を構成する第一軸部と、端部側を構成する第二軸部から成り、前記第一軸部と前記第二軸部は回動可能に接続されていることによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項5】
前記槽体は、
底壁部及び前記底壁部の周囲から立設された側壁部を有し、
前記排水口は前記側壁部又は前記底壁部と前記側壁部が交差する角部に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の排水栓装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口を開閉する排水栓装置に関するものである。
【0002】
槽体の排水口を開閉する排水栓装置として、特許文献1に記載のように、排水口を開閉する栓蓋と、栓蓋を支持する支持軸と、支持軸の破損を防止するための衝撃緩衝機構を備えた排水栓装置が知られている。
特許文献1に記載の排水栓装置において、支持軸は排水口に固定されるカバーと、操作部の操作に基づいて変位する軸部を有している。又、軸部は内部に衝撃緩衝機構としてのショックアブソーバスプリングを内蔵しており、栓蓋の上昇時において、軸方向に応力が加わるとショックアブソーバスプリングが収縮することにより、衝撃を緩衝する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-048682号公報
【特許文献2】特開2020-183649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の排水栓装置において、衝撃緩衝機構は軸部の軸方向に加わる応力しか緩衝することができない。従って、例えば槽体が浴槽である場合、浴槽清掃者の足や掃除用具によって、上昇状態にある栓蓋に対し、軸部の側面方向より衝撃が加えられると、軸部が破損する恐れを有している。
又、特許文献2に記載の排水栓装置のように、排水口が槽体の角部に形成されている場合、栓蓋が斜め上方に向けて動作する。この時、栓蓋が上方から踏みつけられると、軸部に対して側面方向より応力が加えられることから、軸部が破損しやすい。
【0005】
本発明は上記問題に鑑み、軸部の側面方向より応力が加えられた場合であっても衝撃を緩衝することが可能な排水栓装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に記載の本発明は、排水口が形成された槽体と、
前記排水口を閉塞する栓蓋と、
前記栓蓋と係合する支持軸を備えた排水栓装置において、
前記支持軸は前記排水口に固定されるカバー部と、操作部の操作に基づいて変位する軸部を有し、
前記軸部は側面方向からの応力を緩衝する衝撃緩衝機構を有することを特徴とする排水栓装置である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、前記衝撃緩衝機構は、
スプリングによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置である。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、前記衝撃緩衝機構は、
軟質素材によって構成されることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置である。
【0009】
請求項4に記載の本発明は、前記衝撃緩衝機構は、
前記軸部が基端側を構成する第一軸部と、端部側を構成する第二軸部から成り、前記第一軸部と前記第二軸部は回動可能に接続されていることによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置である。
【0010】
請求項5に記載の本発明は、前記槽体は、
底壁部及び前記底壁部の周囲から立設された側壁部を有し、
前記排水口は前記側壁部又は前記底壁部と前記側壁部が交差する角部に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の排水栓装置である。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明によれば、軸部は側面方向からの応力に対して変形する衝撃緩衝機構を備えることによって、部材の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の施工状態を示す断面図である。
図2】排水栓装置を示す斜視図である。
図3】栓蓋の上昇状態を示す断面図である。
図4】軸部が変形した状態を示す断面図である。
図5】第二実施形態の栓蓋の上昇状態を示す断面図である。
図6】軸部が変形した状態を示す断面図である。
図7】第三実施形態の栓蓋の上昇状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の排水栓装置を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって発明が制限して理解されるものではない。
【0014】
図1乃至図4に示すように、本発明の排水栓装置は、槽体1、排水栓2、ワイヤ受け3、操作部4、ロック機構5、伝達部材6、栓蓋8から構成される。
【0015】
槽体1は浴槽であり、平面視矩形の底壁部11と、底壁部11の四辺から立設された側壁部12を有する箱状であり、側壁部12の下端であって、底壁部11と交差する角部に開口が形成されている。尚、当該開口には排水栓2が取り付けられているとともに、槽体1の縁部には操作部4が取り付けられている。
【0016】
排水栓2は内部に排水流路が形成された中空の筒体であって、上記槽体1の角部に形成された開口に取り付けられ、槽体1内の湯水を排出する排水口21を斜め上方に向けて形成する。又、排水栓2は一端に槽体1の開口周縁と当接するフランジ部を有しているとともに、排水栓2は他端において、下水側へと連続する排水配管22が接続されており、その内側にはワイヤ受け3が取り付けられている。尚、図2に示すように、排水口21は正面視長円形を成しており、垂直方向よりも水平方向の方が長尺となっている。
【0017】
図3に示すように、ワイヤ受け3は後述する伝達部材6の端部を排水栓2内に固定する部材であって、排水栓2の内側面と略同形状を成す環状部31と、伝達部材6を固定する固定部32と、環状部31と固定部32を繋ぐ支承部33から構成されている。
【0018】
操作部4は槽体1の縁部より浴室内に露出するスイッチ部41を有し、当該スイッチ部41に対して押動操作が加えられることによって排水栓装置を作動させ、栓蓋8を昇降させることによって排水口21を開閉する。
【0019】
ロック機構5は上端より延設された軸がスイッチ部41裏面に嵌合されており、スイッチ部41に対する押動操作に伴い内部のギアの噛合及び噛合の解除が繰り返されることによって、操作の都度排水口21の開口状態の保持と、当該保持の解除を切り替えることが可能となる。又、ロック機構5は内部にリターンスプリングが配置されており、後述するインナーワイヤをスイッチ部41側へと付勢している。
【0020】
伝達部材6は樹脂製筒状のアウターチューブ61、及びアウターチューブ61内に配置された金属製のインナーワイヤ62から成るレリースワイヤと、レリースワイヤ端部に形成された支持軸7を有している。当該伝達部材6はレリースワイヤ側の端部がロック機構5に接続されているとともに、支持軸7側の端部は上方を向くように屈曲し、ワイヤ受け3に固定されるとともに先端が栓蓋8に係合されている。
支持軸7は軸部71及びカバー部75から成る筒状体であり、軸部71はインナーワイヤ62に、カバー部75はアウターチューブ61にそれぞれ連結されており、インナーワイヤ62が栓蓋8側に摺動した際に軸部71がカバー部75から突出するように構成されている。
軸部71は円筒状であり、インナーワイヤ62と連結され、基端側を構成する第一軸部72と、端部側を構成し、栓蓋8が係合された第二軸部73と、第一軸部72と第二軸部73を繋ぐ衝撃緩衝機構としてのスプリング74から構成されている。スプリング74は弾性を有しており、軸部71の側面方向から衝撃が加えられた際において、軸部71はスプリング74を起点として折れ曲がるように変形可能となっている。
カバー部75は軸部71を内部に収納する中空の円筒状であり、外側面がワイヤ受け3に固定されている。
【0021】
栓蓋8は排水口21を開閉するパッキンが周囲に嵌着された板状の蓋体であって、操作部4からの操作を受けて斜め方向に向けて変位する。又、栓蓋8は下面に支持軸7が係合されている。尚、栓蓋8は排水口21と略同形であって、栓蓋8の下降時において、嵌着されたパッキンは排水口21の全周に亘り当接する。
【0022】
上記排水栓装置は、以下のように作動する。
図1に示すように、栓蓋8が下降状態にある時において、栓蓋8はパッキンが排水口21周縁に対して全周に亘り当接することによって排水口21を閉塞している。この時、使用者は槽体1内に湯水を貯留することが可能となっている。
ここで、スイッチ部41に対して押動操作が加えられると、スイッチ部41の下降に伴いインナーワイヤ62がアウターチューブ61内を栓蓋8側へと摺動するとともに、支持軸7の軸部71がカバー部75より突出する。この時、軸部71によって押圧された栓蓋8が上昇し、排水口21が開口される。又、スイッチ部41への押動操作によってロック機構5は内部のギアが噛合し、栓蓋8は上昇状態が保持される。
次に、図3に示すように、上記栓蓋8が上昇した状態より再度スイッチ部41に押動操作が加えられると、ロック機構5内のギアの噛合が解除され、ロック機構5内に配置されたリターンスプリングの作用によってインナーワイヤ62がスイッチ部41側へと摺動するとともに、軸部71が下降する。この時、栓蓋8は軸部71の下降に伴い下降し、嵌着されたパッキンが排水口21の周縁に当接することによって、排水口21が閉塞される。
【0023】
上記軸部71は、栓蓋8の上昇時であって、排水口21が開口している状態において、衝撃緩衝機構としてのスプリング74がカバー部75の内側に配置されている。従って、湯水が排出される際の水勢によって軸部71が変形することはない。一方、踏み付けや蹴り込みによって軸部71の側面方向から応力が加えられると、スプリング74がカバー部75から露出する様に引き出される。尚、図3においては衝撃が加わる方向を矢印にて示している。この時、図4に示すように、スプリング74がカバー部75より露出することによって、軸部71は第二軸部73がスプリング74を起点として折れ曲がるように、加えられた応力に対応して変形する。これにより、軸部71の側面方向より加えられた応力は衝撃緩衝機構であるスプリング74によって緩衝され、軸部71の破損が防止される。
尚、加えられていた応力が消滅すると、スプリング74は自身の弾性によって元の形状に復帰し、通常通り作動する。
【0024】
以上のように、本実施形態によれば、軸部71は自身の側面方向からの応力に対して変形する衝撃緩衝機構としてのスプリングを備えることによって、部材の破損を防止することができる。
【0025】
本発明の第一実施形態は以上であるが、本発明の排水栓装置は上記第一実施形態の形状に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えても良い。
【0026】
上記実施形態において、衝撃緩衝機構はスプリングによって構成されていたが、当該スプリングは第一実施形態に記載した種類のものに限られるものでない。即ち、スプリングは板バネやコイルバネであっても良い。又、その他の種類のスプリングであっても良く、何ら限定されるものではない。
【0027】
又、衝撃緩衝機構はスプリングに限定されるものではない。即ち、図5及び図6に示す第二実施形態のように、軸部71がゴムやシリコン等の軟質素材から成る弾性部76から構成されており、軸部71の側面方向より応力が加わった際、当該応力に対して弾性部76が変形することにより衝撃緩衝機構を構成しても良い。
【0028】
又、図7に示す第三実施形態においては、軸部71は第一軸部72と第二軸部73の間に衝撃緩衝機構としての回動部77を備えている。第三実施形態においては、軸部71の側面方向より応力が加わった際、当該応力に対して第一軸部72と第二軸部73が回動部77を中心として回動し、軸部71が変形することによって衝撃を緩衝する。
【0029】
又、衝撃緩衝機構は軸部の一部を構成するに留まるものであっても良く、軸部の全部を構成するものであっても良い。
【0030】
又、軸部は栓蓋と必ずしも別体である必要はなく、栓蓋と軸部は一体に形成されていても良い。
【0031】
又、各実施形態において、軸部は側面からの応力に対して変形する衝撃緩衝機構に加え、従来のショックアブソーバスプリングを内蔵しても良い。当該ショックアブソーバスプリングは、軸方向からの応力に対して収縮変形し、衝撃を緩衝することが可能となっている。
【0032】
又、各実施形態において、槽体は浴槽であったが、洗面ボウルやキッチンシンクその他の槽体であっても良い。
【0033】
又、各実施形態において、排水口は側壁部と底壁部が交差する角部において斜め上方に向けて形成されていたが、排水口が底壁部において、鉛直方向に向けて形成されていても良い。
【0034】
1 槽体
11 底壁部
12 側壁部
2 排水栓
21 排水口
22 排水配管
3 ワイヤ受け
31 環状部
32 固定部
33 支承部
4 操作部
41 スイッチ部
5 ロック機構
6 伝達部材
61 アウターチューブ
62 インナーワイヤ
7 支持軸
71 軸部
72 第一軸部
73 第二軸部
74 スプリング
75 カバー部
76 弾性部
77 回動部
8 栓蓋