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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092756
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】樹脂成形部材およびスプリングガイド
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
B29C45/14
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205642
(22)【出願日】2020-12-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】594062879
【氏名又は名称】株式会社シンセイ
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋爾
(72)【発明者】
【氏名】栗原 健太
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AB25
4F206AD05
4F206AD16
4F206AD20
4F206AD27
4F206AD35
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F206JM04
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】連続繊維による樹脂成形部材の補強効果を高める。
【解決手段】樹脂歯車1およびスプリングガイド30はインサート成形により製造される。インサート部材10およびインサート部材50は、3Dプリンタによりベース樹脂および連続繊維を積層して製造される。樹脂歯車1を射出成形する際、インサート部材10は樹脂圧によってセンターピン23の外周面および歯型部25の内周面に密着する。これにより、インサート部材10に型面の形状が転写され、ウエルド部が連続繊維により補強される。スプリングガイド30は、コイルスプリング43を支持するスプリングキャッチャー部32、ショックアブソーバ41に対する回転を規制する回転規制リブ36、ショックアブソーバ41が圧入固定される円筒部31の表面にインサート部材50が配置され、これらの部位が連続繊維により補強される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dプリンタによって連続繊維およびベース樹脂を積層してインサート部材を成形し、
射出成形用金型のキャビティに前記インサート部材を位置決めし、
前記キャビティに射出成形用樹脂を充填して前記インサート部材と一体化させた樹脂部を成形することを特徴とする樹脂成形部材の製造方法。
【請求項2】
前記キャビティに前記射出成形用樹脂を充填する際の樹脂圧により、前記射出成形用金型の型面の形状を前記インサート部材に転写することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形部材の製造方法。
【請求項3】
3Dプリンタによって連続繊維およびベース樹脂を積層して成形されるインサート部材と、射出成形により成形され前記インサート部材と一体化した樹脂部と、を備えることを特徴とする樹脂成形部材。
【請求項4】
前記インサート部材は前記樹脂部の表面に配置され、前記樹脂部を成形する射出成形用金型の型面の形状が転写されていることを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形部材。
【請求項5】
前記インサート部材は、前記樹脂部に形成されるウエルド部の表面に配置され、
前記連続繊維は、前記ウエルド部をまたぐ方向に配向していることを特徴とする請求項3または4に記載の樹脂成形部材。
【請求項6】
前記ベース樹脂は、前記樹脂部と同一の樹脂、前記樹脂部と相溶性がある樹脂、または、前記樹脂部よりも融点が低い樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項3から5の何れか一項に記載の樹脂成形部材。
【請求項7】
前記樹脂部は、短繊維を含むことを特徴とする請求項3から6の何れか一項に記載の樹脂成形部材。
【請求項8】
前記インサート部材は、第1インサート部材および第2インサート部材を備え、
前記第1インサート部材に含まれる前記連続繊維と、前記第2インサート部材に含まれる前記連続繊維が異なることを特徴とする請求項3から7の何れか一項に記載の樹脂成形部材。
【請求項9】
前記第1インサート部材は、アラミド連続繊維を含有し、
前記第2インサート部材は、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維を含有することを特徴とする請求項8に記載の樹脂成形部材。
【請求項10】
前記インサート部材は、第1層と、前記第1層に重なる第2層を備え、
前記第1層と前記第2層は、前記連続繊維の配向が異なることを特徴とする請求項3から9の何れか一項に記載の樹脂成形部材。
【請求項11】
コイルスプリングを支持するスプリングガイドであることを特徴とする請求項3から10の何れか一項に記載の樹脂成形部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続繊維入りの樹脂で成形された樹脂成形部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形部材を製造するための材料として、各種の繊維を混入した樹脂材料が用いられている。例えば、射出成形用の樹脂にガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維などを添加し、金型内に射出充填して硬化させることにより、強度や耐摩耗性を高めた樹脂成形部材が製造されている。
【0003】
補強用の繊維として連続繊維を用いる場合、射出成形装置では、連続繊維を混入した樹脂材料をスクリューで混錬するときに連続繊維が破損する。また、ノズルおよびゲートを通過させて樹脂材料をキャビティに充填するときに樹脂材料に加わるせん断応力によって連続繊維が破損する。そのため、連続繊維の繊維長を保つことができず、補強効果が低下するという問題がある。
【0004】
また、相手部材と摺動する摺動部を備えた成形品に補強用の繊維としてガラス繊維やバサルト繊維を混入すると、摺動相手の部材を摩耗させてしまう。そこで、耐摩耗性を高める繊維(例えば、カーボン繊維やアラミド繊維)を一緒に混入することが考えられるが、異なる繊維を一緒に混入すると、混錬時や充填時に一方の繊維がもう一方の繊維にアタックして相互の特性をなくしてしまい、強度も耐摩耗性も低下してしまう。
【0005】
特許文献1には、金型内に予め連続繊維を配置してから樹脂を充填する樹脂成形部材の製造方法が記載される。特許文献1では、連続強化繊維に樹脂を含浸させた複合材料を作製しておき、金型内に複合材料をインサートして閉鎖することにより、金型キャビティ形状に複合材料を追従させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-104138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、連続繊維入りの複合材料をインサート部材として用いており、インサート部材の両側に射出成形用の熱可塑性樹脂を充填して一体化させる。これにより、樹脂材料の混錬や射出充填の際の連続繊維の破損や繊維同士の相互作用をなくすことができる。しかしながら、特許文献1のインサート部材は、柔軟性があるシート状または布状の部材である。そのため、配向を揃えた連続繊維を補強箇所に精度良く配置することは難しい。特に、複雑な形状の部位や精密な形状の部位に連続繊維を配置することは難しい。
【0008】
上記の点に鑑みて、本発明の課題は、連続繊維を備えたインサート部材を用いて樹脂成形部材を補強する際の補強効果を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の樹脂成形部材の製造方法は、3Dプリンタによって連続繊維およびベース樹脂を積層してインサート部材を成形し、射出成形用金型のキャビティに前記インサート部材を位置決めし、前記キャビティに射出成形用樹脂を充填し
て前記インサート部材と一体化させた樹脂部を成形することを特徴とする。
【0010】
また、上記の課題を解決するために、本発明の樹脂成形部材は、3Dプリンタによって連続繊維およびベース樹脂を積層して成形されるインサート部材と、射出成形により成形され前記インサート部材と一体化した樹脂部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、3Dプリンタによってインサート部材を製造するので、インサート部品の形状精度を高めることができ、インサート部材の内部で連続繊維の配向を揃えることができる。従って、インサート部材をキャビティ内に配置することによって、樹脂成形部材の補強箇所に、連続繊維を配向が揃った状態で精度良く配置することができる。よって、連続繊維による補強効果を高めることができる。
【0012】
また、本発明によれば、キャビティに射出成形用樹脂を充填する際の樹脂圧により、3Dプリンタによるインサート部材の製造の際に連続繊維およびベース樹脂の層間に入り込んだ空気を押し出して脱気することができる。従って、インサート部材によって構成される部分の機械的強度の低下を抑制できる。
【0013】
さらに、本発明によれば、3Dプリンタによるインサート部材の製造の際に連続繊維およびベース樹脂の層間にできた隙間を利用して、ゲートからキャビティに流入する射出成形用樹脂とインサート部材との間の空気をエアベント側に逃がすことができる。従って、射出充填の際に射出成形用樹脂の流れをスムーズにすることができ、成形不良を抑制できる。
【0014】
本発明の樹脂成形部材の製造方法において、前記キャビティに前記射出成形用樹脂を充填する際の樹脂圧により、前記射出成形用金型の型面の形状を前記インサート部材に転写することが好ましい。
【0015】
また、本発明の樹脂成形部材において、前記インサート部材は前記樹脂部の表面に配置され、前記樹脂部を成形する射出成形用金型の型面の形状が転写されていることが好ましい。
【0016】
このようにすると、樹脂成形部材の表面がインサート部材で覆われて補強される。従って、樹脂成形部材の強度を高めることができる。特に、衝撃による樹脂成形部材の表面の破断を抑制できる。また、射出充填時の樹脂圧によってインサート部材に型面の形状を転写するので、連続繊維を破損させることなく、配向が揃った状態で成形品の表面に配置できる。従って、連続繊維による補強効果を高めることができる。
【0017】
例えば、本発明において、前記インサート部材は、前記樹脂部に形成されるウエルド部の表面に配置され、前記連続繊維は、前記ウエルド部をまたぐ方向に配向していることが好ましい。このようにすると、連続繊維によってウエルド部の表面を補強できる。従って、ウエルド部の発生による樹脂成形部材の強度低下を抑制できる。
【0018】
本発明の樹脂成形部材において、前記ベース樹脂は、前記樹脂部と同一の樹脂、前記樹脂部と相溶性がある樹脂、または、前記樹脂部よりも融点が低い樹脂のいずれかであることが好ましい。インサート部材のベース樹脂と射出成形により成形される樹脂部が同一の樹脂、もしくは相溶性のある樹脂であれば、インサート部材と樹脂部の一体性を高めることができる。また、インサート部材のベース樹脂が樹脂部よりも融点が低い樹脂であれば、射出充填の際にインサート部材が熱で変形しやすい。従って、射出成形用金型の型面の形状をインサート部材に転写させやすい。
【0019】
本発明において、前記樹脂部は、短繊維を含むことが好ましい。本発明では、連続繊維を射出成形用樹脂に含有させずにインサート部材の形態でキャビティ内に配置するため、射出成形用樹脂に短繊維が添加されていても連続繊維との相互干渉を回避できる。従って、インサート部材に添加した連続繊維と、射出成形用樹脂に添加した短繊維の両方の特性を利用できる。
【0020】
本発明において、前記インサート部材は、第1インサート部材および第2インサート部材を備え、前記第1インサート部材に含まれる前記連続繊維と、前記第2インサート部材に含まれる前記連続繊維が異なることが好ましい。このようにすると、補強箇所に応じて連続繊維の種類を変えることができるので、補強効果を高めることができる。また、異なる連続繊維が同じ位置で混在することがないので、相互作用により各連続繊維の特性をなくしてしまうことを回避できる。
【0021】
この場合に、前記第1インサート部材は、アラミド連続繊維を含有し、前記第2インサート部材は、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維を含有することが好ましい。このようにすると、第1インサート部材を配置した部位では、アラミド連続繊維によって耐衝撃性を高めることができる。また、第2インサート部材を配置した部位では、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維によって剛性を高めることができる。
【0022】
本発明において、前記インサート部材は、第1層と、前記第1層に重なる第2層を備え、前記第1層と前記第2層は、前記連続繊維の配向が異なることが好ましい。このように、異なる方向に配向が揃った連続繊維の層を備えていれば、複数の方向の応力に対して補強効果が得られる。従って、樹脂成形部材の強度を高めることができる。
【0023】
本発明の樹脂成形部材は、コイルスプリングを支持するスプリングガイドである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の樹脂成形部材およびその製造方法によれば、3Dプリンタによってインサート部材を製造するので、インサート部品の形状精度を高めることができ、インサート部材の内部で連続繊維の配向を揃えることができる。従って、インサート部材をキャビティ内に配置することによって、樹脂成形部材の補強箇所に、連続繊維を配向が揃った状態で精度良く配置することができる。よって、連続繊維による補強効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明を適用した樹脂歯車の斜視図である。
図2図1の樹脂歯車の平面図および断面図である。
図3】インサート部材の平面図および側面図である。
図4図1の樹脂歯車の製造に用いる射出成形用金型の断面図である。
図5】射出成形用金型のキャビティの平面図、および、キャビティにおけるインサート部材の配置を示す平面図である。
図6】樹脂圧によって内側インサートスリーブをセンターピンに密着させる工程の説明図である。
図7】樹脂圧によって外側インサートスリーブを歯型部に密着させる工程の説明図である。
図8】本発明を適用したスプリングガイドを備えるサスペンション装置の部分断面図である。
図9図8のスプリングガイドの平面図である。
図10図8のスプリングガイドの製造に用いる射出成形用金型の断面図である。
図11図8のスプリングガイドにおけるインサート部材の配置を示す平面図である。
図12図8のスプリングガイドにおけるインサート部材の配置を示す断面図である。
図13】インサート部材が配置された部位の部分拡大断面図である。
図14】回転規制リブの斜視図である。
図15】インサート部材の隙間を利用した排気方法を模式的に示す説明図である。
図16図8のスプリングガイドにおけるインサート部材の別の構成例を示す断面図である。
図17】別の構成例のインサート部材が配置された部位の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の樹脂成形部材は、金型を用いて射出成形により製造される成形品である。以下に説明する樹脂成形部材の第1実施形態は、中央に回転軸を通す穴部が設けられ、外周面に歯部が設けられた樹脂歯車である。また、樹脂成形部材の第2実施形態は、車両の車体と車輪との間に設けられるサスペンション装置のスプリングガイドである。
【0027】
なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。例えば、以下に説明する第1実施形態では、穴部は貫通孔であるが、穴部は貫通していなくてもよく、凹部であってもよい。また、以下に説明する第1実施形態では、歯部は全周に設けられているが、歯部は周方向の一部のみに設けられていてもよい。また、以下に説明する第1実施形態では、樹脂成形部材は穴部と歯部の両方を備えているが、穴部と歯部の一方のみを備えていてもよい。歯部を備えていない場合には、樹脂成形部材は歯車でなくてもよい。すなわち、本発明は、穴部を備えた任意の樹脂成形部材に適用可能である。例えば、プーリに適用可能である。
【0028】
<第1実施形態>
(樹脂歯車の構成)
図1は、本発明を適用した樹脂歯車1の斜視図である。図2(a)は、図1の樹脂歯車の平面図であり、図2(b)は、図1の樹脂歯車の断面図である。図1図2に示すように、樹脂歯車1は、筒状のボス部2と、ボス部2から外周側へ拡がる環状の接続部3と、接続部3の先端に設けられた筒状の外周部4を備える。外周部4は、ボス部2と同軸に配置される。第1実施形態において、樹脂歯車1の中心軸線をLとし、中心軸線Lに沿う方向を軸線方向とする。
【0029】
樹脂歯車1は、ボス部2を軸線方向に貫通する穴部5を備えており、穴部5の内周面には、樹脂歯車1を回転軸に連結する際に回り止め部となる凸部6が形成されている。また、樹脂歯車1は、外周部4の外周面に形成された歯部を備えている。歯部は、周方向に並ぶ複数の歯7を備えている。樹脂歯車1はハスバ歯車であり、歯7は、軸線方向に対して傾斜した方向に延びている。なお、樹脂歯車1は平歯車でもよく、歯7は軸線方向に対して平行に延びていてもよい。また、樹脂歯車1は、歯部が周方向の一部のみに設けられた欠歯歯車であってもよい。また、穴部5の内周面に設けられる回り止め部の形状は、第1実施形態と異なっていてもよい。例えば、Dカット形状としてもよい。
【0030】
樹脂歯車1のように穴形状を備えた成形品を射出成形により製造する場合には、金型への樹脂の充填時に穴を形成するピンの周囲を流れる樹脂が合流する位置にウエルド部ができるが、ウエルド部は樹脂と樹脂の対流部であるため、射出成形用樹脂に連続繊維を添加してもウエルド部では連続繊維の配向が不均一になってしまう。また、樹脂歯車1のように精密な凹凸形状を備える場合や、成形品が複雑な形状を備える場合には、射出成形用樹脂に連続繊維を添加しても金型形状に繊維を均一に沿わせることができないため、補強効果が低下する。第1実施形態の樹脂歯車1は、これらの課題に対し、3Dプリンタにより製造したインサート部材10による補強を行ったものである。
【0031】
(樹脂歯車の製造方法)
樹脂歯車1は、樹脂製のインサート部材10(図3(a)~図3(d)参照)を金型内に配置して樹脂を充填するインサート成形により製造される。従って、樹脂歯車1は、インサート部材10と、インサート部材10に一体化された樹脂部9を備える。後述するように、インサート部材10は、射出成形用樹脂を充填する際にその熱および樹脂圧によって変形して射出成形用金型20の型面に密着させられており、型面の形状が転写されている。従って、インサート部材10は、完成した樹脂歯車1の表面部分を構成している。
【0032】
後述するように、樹脂歯車1において、射出成形用樹脂によって構成される樹脂部9は、第1ウエルド部W1および第2ウエルド部W2を備えている。第1ウエルド部W1は、穴部5から径方向に延びるウエルドラインである(図2(a)、図6(c)参照)。また、第2ウエルド部W2は、外周部4に設けられた歯部の歯元8の位置に形成される(図7(c)参照)。第1実施形態では、樹脂歯車1の表面部分に配置されるインサート部材10によって第1ウエルド部W1および第2ウエルド部W2が補強される。
【0033】
(インサート部材)
図3は、インサート部材10の平面図および側面図である。第1実施形態では、インサート部材10として、第1インサート部材および第2インサート部材の2部材を用いる。第1インサート部材は、内側インサートスリーブ11であり、第2インサート部材は、外側インサートスリーブ12である。内側インサートスリーブ11および外側インサートスリーブ12の2部材を用いる。図3(a)は外側インサートスリーブ12の平面図であり、図3(b)は外側インサートスリーブ12の側面図である。図3(c)は内側インサートスリーブ11の平面図であり、図3(d)は内側インサートスリーブ11の側面図である。内側インサートスリーブ11は円筒状であり、樹脂歯車1の穴部5よりもわずかに大径である。内側インサートスリーブ11の軸線方向の高さは、ボス部2と略同一である。外側インサートスリーブ12は円筒状であり、樹脂歯車1の歯底円よりもわずかに小径である。内側インサートスリーブ11の軸線方向の高さは、外周部4と略同一である。
【0034】
インサート部材10は、3Dプリンタにより製造される。インサート部材10は、連続繊維およびベース樹脂を積層して製造される。インサート部材10を製造する3Dプリンタは、連続繊維およびベース樹脂を含む成形材料が積層される支持台と、支持台に向けて成形材料を射出する射出部を備える。支持台および射出部は、インサート部材10の3次元形状のデータに基づいて相対移動しながら成形材料を射出するように制御される。これにより、成形材料の射出位置を制御して、インサート部材10の3次元形状に成形材料を積層する。積層された成形材料を硬化させることにより、インサート部材10が完成する。
【0035】
ベース樹脂は熱可塑性樹脂である。インサート部材10は、ベース樹脂としてポリアミド樹脂を用いて製造される。なお、ベース樹脂として、他の熱可塑性樹脂を用いてもよい。連続繊維は、例えば、アラミド繊維、カーボン繊維、チタン酸カリウム繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などの連続繊維である。内側インサートスリーブ11は、ポリアミド樹脂およびカーボン連続繊維を含む成形材料から成形される。また、外側インサートスリーブ12は、ポリアミド樹脂およびアラミド連続繊維を含む成形材料から成形される。すなわち、内側インサートスリーブ11と外側インサートスリーブ12は、ベース樹脂が同一の樹脂であり、且つ、異なる連続繊維を含んでいる。
【0036】
3Dプリンタは、インサート部材10を製造する際、連続繊維の配向を制御することが可能である。成形材料を積層する際、支持台に対する射出部の移動経路に沿う方向に連続繊維が配向する。従って、インサート部材10の3次元形状およびインサート部材10の各部における連続繊維の配向データに基づいてノズルを移動させることにより、所望の方向に連続繊維が配向したインサート部材10を製造することが可能である。内側インサー
トスリーブ11および外側インサートスリーブ12はいずれも円筒形であり、連続繊維の配向は周方向に揃えられている。
【0037】
(射出成形用金型)
図4は、図1の樹脂歯車1の製造に用いる射出成形用金型20の断面図である。図4に示すように、射出成形用金型20は、可動型に設けられた第1型部材21と、固定型に設けられた第2型部材22を備えており、第1型部材21と第2型部材22とを当接させることによってキャビティCを形成する。射出成形用金型20は、キャビティCの中央に配置されるセンターピン23を備える。センターピン23は、樹脂歯車1の穴部5の反転形状であり、センターピン23の外周面の軸線方向の一部には、軸線方向に延びる凹部24が設けられている。また、射出成形用金型20は、樹脂歯車1の外周部4に歯部を成形するための歯型部25を備える。歯型部25は第1型部材21に形成されている。歯型部25の内周面には、歯7の反転形状が周方向に並んでいる。
【0038】
なお、第1型部材21および第2型部材22は、それぞれ、複数の型部材によって構成されていてもよい。例えば、第1型部材21のセンターピン23は軸線方向にスライド可能な構成であってもよい。また、歯型部25は周方向に分割可能な構成であってもよい。
【0039】
図5(a)は、射出成形用金型20のキャビティCの平面図であり、図5(b)は、キャビティCにおけるインサート部材10の配置を示す平面図である。図4図5に示すように、キャビティCは、樹脂歯車1のボス部2を成形する筒状の第1キャビティ部分C1と、樹脂歯車1の接続部3を成形する第2キャビティ部分C2と、樹脂歯車1の外周部4を成形する筒状の第3キャビティ部分C3を備える。第1キャビティ部分C1と第3キャビティ部分C3は、第2キャビティ部分C2を介して接続される。図5(b)に示すように、内側インサートスリーブ11は、第1キャビティ部分C1に配置され、センターピン23を全周で囲むように位置決めされる。また、外側インサートスリーブ12は第3キャビティ部分C3に配置され、歯型部25の内周側に位置決めされる。
【0040】
図4に示すように、射出成形用金型20は、キャビティCに射出成形用樹脂(樹脂材料)を充填するためのゲート26を備える。ゲート26は第2キャビティ部分C2に設けられており、ゲート26から供給される射出成形用樹脂は、第2キャビティ部分C2を通って第1キャビティ部分C1および第3キャビティ部分C3へ充填される。図5(a)に示すように、第1実施形態では、第2キャビティ部分C2に周方向に等間隔で6箇所のゲート26が設けられている。このようなゲート26の配置では、周方向で隣り合うゲート26の中間位置に径方向に延びる6本のウエルドライン(第1ウエルド部W1)が形成される。
【0041】
また、樹脂歯車1の製造時には、第3キャビティ部分C3に射出成形用樹脂が充填される際、隣り合う歯7と歯7の間の歯元の位置にウエルド(第2ウエルド部W2)が形成される。また、図示を省略するが、各歯7の歯面にも、歯数やねじれ角等の形状によって樹脂の流れが乱れることによるウエルド部が形成される。
【0042】
樹脂歯車1の樹脂部9の成形に用いる射出成形用樹脂は、熱可塑性樹脂である。樹脂部9は、射出成形用樹脂としてポリアミド樹脂を用いて製造される。なお、射出成形用樹脂として、他の熱可塑性樹脂を用いてもよい。上記のように、インサート部材10を構成するベース樹脂はポリアミド樹脂である。従って、射出成形用樹脂とベース樹脂とは同一の樹脂である。
【0043】
(内側インサートスリーブによる第1ウエルド部の補強)
図6は、樹脂圧によって内側インサートスリーブ11をセンターピン23に密着させる
工程の説明図である。図6(a)は、第1キャビティ部分C1に射出成形用樹脂が充填される途中の状態を示す。図6(b)は、内側インサートスリーブ11が射出成形用樹脂の熱および樹脂圧によって変形してセンターピン23に密着した状態を示す。図6(c)は、離型後の樹脂歯車1のボス部2の構造を示す説明図である。
【0044】
図5(b)に示すように、内側インサートスリーブ11はゲート26の内周側に位置決めされる。従って、ゲート26から射出成形用樹脂を充填すると、図6(a)に示すように、内側インサートスリーブ11は樹脂圧によって内周側に押圧される。その結果、内側インサートスリーブ11は射出成形用樹脂の熱および樹脂圧によって変形し、図6(b)に示すように、センターピン23の外周面に密着させられる。従って、離型後の樹脂歯車1では、図6(c)に示すように、穴部5の内周面は、熱によって延ばされてセンターピン23の形状が転写された内側インサートスリーブ11によって構成されている。
【0045】
内側インサートスリーブ11に含まれる連続繊維は周方向に配向している。従って、センターピン23の外周面には、周方向に配向した状態で連続繊維が配置され、径方向に延びるウエルドライン(第1ウエルド部W1)をまたぐように連続繊維が配置される。射出成形用金型20から樹脂歯車1を離型させると、穴部5の内周面には、周方向に配向した連続繊維が全周に配置されている。従って、6箇所のウエルドラインの全ての箇所にウエルドラインをまたぐように連続繊維が配置されるので、6箇所のウエルドライン(第1ウエルド部W1)は、全て連続繊維によって補強される。
【0046】
(外側インサートスリーブによる第2ウエルド部の補強)
図7は、樹脂圧によって外側インサートスリーブ12を歯型部25に密着させる工程の説明図である。図7(a)は、第3キャビティ部分C3に射出成形用樹脂が充填される途中の状態を示しており、図7(b)は、外側インサートスリーブ12が射出成形用樹脂の熱によって変形して歯型部25に密着した状態を示す。図7(c)は、離型後の樹脂歯車1の外周部4の構造を示す説明図である。
【0047】
図5(b)に示すように、外側インサートスリーブ12はゲート26の外周側に位置決めされる。従って、キャビティCに射出成形用樹脂を充填すると、図7(a)に示すように、外側インサートスリーブ12は樹脂圧によって外周側に押圧される。その結果、外側インサートスリーブ12は射出成形用樹脂の熱および樹脂圧によって変形し、図7(b)に示すように、歯型部25の内周面に密着させられる。従って、離型後の樹脂歯車1では、図7(c)に示すように、歯部の表面は、熱によって延ばされて歯型部25の形状が転写された外側インサートスリーブ12によって構成される。
【0048】
外側インサートスリーブ12に含まれる連続繊維は周方向に配向している。従って、歯型部25の内周面には、周方向に配向した状態で連続繊維が配置され、歯元8の位置に形成される第2ウエルド部W2をまたぐように連続繊維が配置される。射出成形用金型20から樹脂歯車1を離型させると、歯部の外周面には、周方向に配向した連続繊維が配置される。従って、歯元8に形成される第2ウエルド部W2をまたぐように連続繊維が配置されるので、第2ウエルド部W2が連続繊維によって補強される。
【0049】
内側インサートスリーブ11および外側インサートスリーブ12を3Dプリンタで製造する際、周方向の所定箇所に連続繊維の切れ目となる接続面ができる場合は、キャビティCに内側インサートスリーブ11を配置する際、第1ウエルド部W1の周方向の位置と、内側インサートスリーブ11における連続繊維の切れ目の位置とを1度以上ずらすように位置決めする。同様に、第2ウエルド部W2周方向の位置と、外側インサートスリーブ12における連続繊維の切れ目の位置とを1度以上ずらすように位置決めする。これにより、補強効果が低下することを回避できる。
【0050】
(第1実施形態の主な作用効果)
以上のように、第1実施形態の樹脂歯車1の製造方法では、3Dプリンタによって連続繊維を含むベース樹脂を積層してインサート部材10を成形し、射出成形用金型20のキャビティC内にインサート部材10を位置決めし、キャビティCに射出成形用樹脂を充填してインサート部材10と一体化させた樹脂部9を成形する。
【0051】
また、第1実施形態の樹脂歯車1は、3Dプリンタによって連続繊維を含むベース樹脂を積層して成形されるインサート部材10と、射出成形により成形されインサート部材10と一体化した樹脂部9を備える。
【0052】
第1実施形態では、3Dプリンタによってインサート部材10を製造するので、インサート部材10の形状精度を高めることができ、インサート部材10の内部で連続繊維の配向を揃えることができる。従って、インサート部材10をキャビティC内に配置することによって、樹脂歯車1の補強箇所に、連続繊維を配向が揃った状態で配置することができる。よって、連続繊維による補強効果を高めることができる。
【0053】
また、第1実施形態では、キャビティCに射出成形用樹脂を充填する際の樹脂圧により、3Dプリンタによるインサート部材10の製造の際に連続繊維およびベース樹脂の層間に入り込んだ空気を押し出して脱気することができる。従って、インサート部材10によって構成される部分の機械的強度の低下を抑制できる。
【0054】
さらに、第1実施形態では、3Dプリンタによるインサート部材10の製造の際に連続繊維およびベース樹脂の層間にできた隙間を利用して、ゲート26からキャビティCに流入する射出成形用樹脂とインサート部材10との間の空気をエアベント(図示省略)側に逃がすことができる。従って、射出充填の際に射出成形用樹脂の流れをスムーズにすることができるので、成形不良を抑制できる。
【0055】
第1実施形態では、キャビティCに射出成形用樹脂を充填する際の樹脂圧により、射出成形用樹脂の合流部を成形する型面にインサート部材10を密着させる。そのため、樹脂歯車1は、樹脂部9を成形する射出成形用金型20の型面の形状がインサート部材10に転写されている。また、樹脂部9に形成されるウエルド部の表面に、射出成形用金型20の形状が転写されたインサート部材10が配置されている。従って、連続繊維を破損させることなく、ウエルド部において樹脂が合流する際のスキン層とスキン層をまたがるように、配向が揃った状態で連続繊維を配置できる。従って、連続繊維によってウエルド部の表面部分を補強することができ、ウエルド部の発生による樹脂歯車1の強度低下を抑制できる。よって、樹脂歯車1の強度を高めることができる。
【0056】
第1実施形態の製造方法では、射出成形用金型20は、キャビティC内に配置されるセンターピン23を備えており、インサート部材10は、ゲート26の内周側に配置され且つセンターピン23を囲むように位置決めされる内側インサートスリーブ11を備える。射出成形工程では、ゲート26から流入する射出成形用樹脂の樹脂圧により、センターピン23の外周面に内側インサートスリーブ11を密着させて、センターピン23から外周側へ延びる第1ウエルド部W1を補強する。すなわち、第1実施形態では、内側インサートスリーブ11が密着させられる型面は、センターピン23の外周面である。
【0057】
第1実施形態の樹脂歯車1は、穴部5を備えており、インサート部材10は、穴部5の形状が転写された内側インサートスリーブ11を備える。このように、樹脂歯車1がセンターピン23によって形成される穴部5を備えている場合には、内側インサートスリーブ11をセンターピン23の外周面に密着させることにより、穴部5の周りに形成される第
1ウエルド部W1を内側インサートスリーブ11に含まれる連続繊維によって補強することができる。従って、ウエルド部の発生による樹脂歯車1の強度低下を抑制できる。
【0058】
また、第1実施形態の製造方法では、射出成形用金型20は、樹脂歯車1の外周部に歯部を形成する歯型部25を備えており、インサート部材10は、ゲート26の外周側に配置され且つ歯型部25の内周側に位置決めされる外側インサートスリーブ12を備える。射出成形工程では、ゲート26から流入する射出成形用樹脂の樹脂圧により、歯型部25の内周面にインサート部材10を密着させて、歯部における歯元8の位置に形成される第2ウエルド部W2を補強する。すなわち、第1実施形態では、外側インサートスリーブ12が密着させられる型面は、歯型部25の内周面である。
【0059】
第1実施形態の樹脂歯車1は、外周面に歯部を備えており、インサート部材10は、歯部の形状が転写された外側インサートスリーブ12を備える。このように、樹脂歯車1の外周部に歯部が設けられている場合には、外側インサートスリーブ12を歯型部25の内周面に密着させることにより、歯元8に形成される第2ウエルド部W2を連続繊維によって補強することができる。従って、ウエルド部の発生による樹脂歯車1の強度低下を抑制できる。
【0060】
第1実施形態では、インサート部材10として内側インサートスリーブ11と外側インサートスリーブ12の2部材を用いており、内側インサートスリーブ11に含まれる連続繊維と、外側インサートスリーブ12に含まれる連続繊維が異なっている。従って、内周面と外周面で異なる特性を持つ樹脂成形部材を製造できる。第1実施形態では、内周側の補強箇所と、外周側の補強箇所で、それぞれ、適切な連続繊維を使用できるので、補強効果を高めることができる。また、異なる連続繊維が混在することによって相互作用により各連続繊維の特性をなくしてしまうことを回避できる。例えば、ガラス連続繊維やバサルト連続繊維などの相手部品を摩耗させる繊維と、摺動性を上げるためのカーボン連続繊維やアラミド連続繊維とを混在させずに配置できるので、相互作用により各連続繊維の特性をなくしてしまうことを回避できる。
【0061】
例えば、第1実施形態では、内側インサートスリーブ11にはカーボン連続繊維が含まれ、外側インサートスリーブ12にはアラミド連続繊維が含まれる。従って、穴部5が形成されたボス部2は、カーボン連続繊維によりクリープ特性および曲げ強度を高めることができるので、ウエルド部を補強できるとともに、摺動性を高めることができる。また、歯部が形成された外周部4は、アラミド連続繊維によりウエルド部を補強できるとともに、各歯7の耐衝撃性を高めることができる。また、カーボン連続繊維とアラミド連続繊維との相互作用により各連続繊維の特性をなくしてしまうことを回避できる。
【0062】
例えば、内側インサートスリーブ11がカーボン連続繊維を含むことにより、穴部5の周囲に形成される第1ウエルド部W1の曲げ弾性率が35GPa以上640GPa以下の樹脂歯車1を製造することができる。
【0063】
また、外側インサートスリーブ12がアラミド連続繊維を含むことにより、歯元8の位置に形成される第2ウエルド部W2の引張り弾性率が54GPa以上140GPa以下の樹脂歯車1を製造することができる。
【0064】
第1実施形態では、ベース樹脂と射出成形用樹脂が同一の樹脂であるため、インサート部材10と射出成形により形成される樹脂部9の一体性が高い。従って、樹脂歯車1の強度を高めることができる。
【0065】
(第1実施形態の変形例)
(1)第1実施形態では、ベース樹脂と射出成形用樹脂が同一の樹脂であるが、ベース樹脂と射出成形用樹脂は、同一の樹脂でなくてもよい。この場合には、ベース樹脂は、射出成形用樹脂よりも融点が低いことが好ましい。ベース樹脂の融点が低ければ、射出充填される樹脂と接触したインサート部材10が熱で変形しやすい。従って、ウエルド部を成形する型面の形状をインサート部材10に転写させやすい。
【0066】
また、ベース樹脂と射出成形用樹脂が同一の樹脂でない場合には、ベース樹脂は、射出成形用樹脂と相溶性があることが好ましい。相溶性があれば、インサート部材10と射出成形により形成される樹脂部9の一体性を高めることができる。従って、樹脂歯車1の強度を高めることができる。
【0067】
(2)第1実施形態では、射出成形用樹脂には繊維やフィラーを添加していないが、添加してもよい。例えば、射出成形用樹脂およびベース樹脂の一方もしくは両方にガラス繊維、カーボン繊維、チタン酸カリウム繊維、バサルト繊維などの短繊維を添加することができる。上記形態では、ウエルド部を補強する連続繊維は、インサート部材10に添加された状態でキャビティC内に配置されるので、射出成形用樹脂に連続繊維とは異なる繊維が添加されていても、連続繊維との相互干渉を回避できる。従って、インサート部材10に添加した連続繊維と、射出成形用樹脂に添加した短繊維の両方の特性を利用できる。
【0068】
(3)3Dプリンタによるインサート部材10の成形方法は、連続繊維を配向が揃った状態でベース樹脂とともに積層して3次元形状に成形できる方法であればよい。例えば、成形材料としてUDシートを用いる方法であってもよい。UDシートは、一方向に配向した連続繊維に熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含浸させたシート状の一方向繊維強化材である。UDシートは、配向が揃った連続繊維を多く含んでいるので、樹脂歯車1の表面には、配向が揃った連続繊維が高密度に配置される。従って、連続繊維による補強効果が高い。
【0069】
例えば、熱融解積層方式の3Dプリンタにおいて、成形材料を射出する供給部に線状あるいは帯状のUDシートおよびベース樹脂を供給する。線状あるいは帯状のUDシートには、配向が揃った連続繊維の繊維束が含まれる。UDシートは、加熱溶融させたベース樹脂と共に射出部から押し出され、支持台上に積層される。例えば、円筒状のインサート部材10を製造する場合には、線状あるいは帯状のUDシートをベース樹脂とともに螺旋状に積層することにより、インサート部材10を成形する。これにより、連続繊維が周方向に配向したインサート部材10を成形することができる。
【0070】
<第2実施形態>
(サスペンション装置の構成)
図8は、本発明を適用したスプリングガイド30を備えるサスペンション装置40の部分断面図である。図9は、図8のスプリングガイド30の平面図である。まず、図8を参照して、サスペンション装置40の構成およびその機能を説明する。サスペンション装置40は、車両の車体と車輪との間に取り付けられ、車輪を位置決めするとともに車両走行中に路面から受ける衝撃や振動を吸収する装置である。
【0071】
図8に示すように、サスペンション装置40は、シリンダ41aおよびピストンロッド41bを備えるショックアブソーバ41と、ピストンロッド41bの先端に取り付けられるアッパーマウント42と、シリンダ41aの外周に取り付けられるスプリングガイド30と、スプリングガイド30とアッパーマウント42との間に配置されるコイルスプリング43を備える。ピストンロッド41bは図示しない筒状のバンプキャップにより保護される。第2実施形態において、シリンダ41aの中心軸線をL1とし、中心軸線L1に沿う方向を軸線方向とする。アッパーマウント42は、ショックアブソーバ41の軸線方向
の一方側L1aに配置される。スプリングガイド30は、コイルスプリング43を軸線方向の他方側L1bから支持する。
【0072】
アッパーマウント42は車体に連結され、シリンダ41aは図示しないブラケットを介して車輪を保持するハブキャリアに連結される。ショックアブソーバ41は、ピストンロッド41bがシリンダ41aの軸線方向に移動するときに減衰力を発生させる。サスペンション装置40は、ショックアブソーバ41の減衰力によって車体の振動を減衰させる。コイルスプリング43は、スプリングガイド30とアッパーマウント42との間に圧縮状態で配置され、ショックアブソーバ41を伸長方向に付勢する。コイルスプリング43とアッパーマウント42との間には、円弧状のラバーシート44が配置される。また、コイルスプリング43とスプリングガイド30との間には、円弧状のラバーシート45が配置される。
【0073】
(スプリングガイド)
図9は、図8のスプリングガイド30の平面図である。図8図9に示すように、スプリングガイド30は、シリンダ41aに固定される円筒部31と、コイルスプリング43を支持する皿状のスプリングキャッチャー部32を備える。スプリングキャッチャー部32は、円筒部31から外周側に拡がる円形の載置部33と、載置部33の外周縁から一方側L1aに立ち上がる円環状の外縁部34を備える。スプリングキャッチャー部32は、中心軸線L1に対して車体側が他方L1bに向かう方向に傾斜し、中心軸線L1に対して車輪側が一方側L1aに向かう方向に傾斜している。円筒部31は、スプリングキャッチャー部32の中心に対して車体側に偏心した位置に配置される。なお、スプリングキャッチャー部32は、載置部33が中心軸線Lと直交する方向に対して傾いていない形状であってもよい。また、スプリングキャッチャー部32の中央に円筒部31が配置されていてもよい。スプリングキャッチャー部32の内周部には、載置部33から一方側L1a側に突出し円筒部31の車輪側を円弧状に囲む突出部35が設けられている。突出部35の周囲には、コイルスプリング43とスプリングガイド30との間に介在するラバーシート45が配置される。
【0074】
スプリングガイド30は、円筒部31の内側にシリンダ41aを圧入することによりショックアブソーバ41に固定される。スプリングガイド30は、シリンダ41aの外周面に固定される支持リング46によって他方側L1bから支持される。円筒部31は、シリンダ41aに対するスプリングガイド30の相対回転を規制する回転規制リブ36を備える。回転規制リブ36は、円筒部31の他方側L1bの端面から突出する。支持リング46は、スプリングガイド30の回転規制リブ36と周方向に当接する当接部を備える。また、スプリングガイド30は、スプリングキャッチャー部32の他方側L1bの面に形成された補強用のリブ37を備える。
【0075】
サスペンション装置用のスプリングガイドは、軽量化を目的として金属から樹脂への材料置換が行われてきたが、射出成形用樹脂に補強用の繊維を添加するだけでは繊維の配向の制御が困難であるため、コイルスプリング43の折損時の衝撃、およびコイルスプリング43からの荷重に対する疲労破壊に対して必要な補強効果を得ることができないという課題があった。また、ショックアブソーバ41に対して溶接により固定できないため、回転規制リブ36が必要となり、回転規制リブ36が受ける荷重に対する強度を確保する必要があった。さらに、ショックアブソーバ41に対しての組み付けは車両走行時の異音防止および操舵応答性向上のため圧入による固定が望ましく、圧入割れ対策および時間経過に伴う圧入力の低下への対策が必要であった。第2実施形態のスプリングガイド30は、これらの課題に対し、3Dプリンタにより製造したインサート部材50による補強を行ったものである。
【0076】
(スプリングガイドの製造方法)
図10は、図8のスプリングガイド30の製造に用いる射出成形用金型60の断面図である。スプリングガイド30は、樹脂製のインサート部材50を射出成形用金型60の内部に配置して樹脂を充填するインサート成形により製造される。従って、スプリングガイド30は、インサート部材50と、インサート部材50に一体化された樹脂部39を備える(図11図12参照)。
【0077】
図10に示すように、インサート部材50は、射出成形用金型60のキャビティC10に配置され、型面に吸着される。この状態で、ゲート63からキャビティC10に射出成形用樹脂を充填して硬化させる。インサート部材50は、完成したスプリングガイド30の表面に配置される。また、インサート部材50は、射出成形用樹脂を充填する際にその熱および樹脂圧によって射出成形用金型60の型面に密着させられる。従って、インサート部材50には型面の形状が転写される。
【0078】
射出成形用樹脂は熱可塑性樹脂である。スプリングガイド30は、射出成形用樹脂としてポリアミド樹脂を用いて製造される。なお、他の熱可塑性樹脂を用いてもよい。第2実施形態では、ポリアミド樹脂に短繊維を添加した射出成形用樹脂を用いて射出成形を行う。短繊維は、アラミド繊維、カーボン繊維、チタン酸カリウム繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などの短繊維を使用可能である。例えば、後述するインサート部材50に含有される連続繊維と同じ材質の短繊維であってもよいし、異なる材質の短繊維であってもよい。
【0079】
図10に示すように、射出成形用金型60は、固定型に設けられた第1型部材61と、可動型に設けられた第2型部材62を備えており、第1型部材61と第2型部材62とを当接させることによってキャビティC10を形成する。なお、第1型部材61および第2型部材62は、それぞれ、複数の型部材によって構成されていてもよい。射出成形用金型60のキャビティC10は、円筒部31を成形する第1キャビティ部分C11と、スプリングキャッチャー部32を成形する第2キャビティ部分C12を備える。
【0080】
射出成形用金型60は、キャビティC10に射出成形用樹脂(樹脂材料)を充填するためのゲート63を備える。ゲート63は第1キャビティ部分C11の一方側L1aの端部に設けられており、ゲート63から供給される射出成形用樹脂は、第1キャビティ部分C11を通って第2キャビティ部分C12へ充填される。ゲート63は周方向に所定間隔で配列されている。従って、射出成形用樹脂は多点のゲート63から放射状に供給されるので、円筒部31およびスプリングキャッチャー部32は、周方向で隣り合うゲート63の中間の角度位置に形成されるウエルド部(図示省略)を備えている。
【0081】
(インサート部材)
図11は、図8のスプリングガイド30におけるインサート部材50の配置を示す平面図である。図12(a)~図12(c)は、図8のスプリングガイド30におけるインサート部材50の配置を示す断面図である。図12(a)は、図11のA-A位置で切断した断面図である。図12(b)は、図11のB-B位置で切断した断面図であり、図12(c)は、図11のC-C位置で切断した断面図である。
【0082】
図11図12に示すように、スプリングガイド30は、インサート部材50によって4箇所が補強される。インサート部材50は、第1インサート部材51、第2インサート部材52、第3インサート部材53、および第4インサート部材54を備える。第1インサート部材51は、スプリングキャッチャー部32の外周部分に配置される。第2インサート部材52は、円筒部31の他方側L1bの端部に配置される。第3インサート部材53は、円筒部31の一方側L1aの端部に配置される。第4インサート部材54は、円筒部31とスプリングキャッチャー部32との接続部に円弧状に配置される。
【0083】
スプリングガイド30において、射出成形用樹脂によって構成される樹脂部39は、円筒部31を構成する樹脂部第1部分391と、スプリングキャッチャー部32を構成する樹脂部第2部分392を備える。第1インサート部材51は、樹脂部第2部分392と一体化されている。第2インサート部材52および第3インサート部材53は、樹脂部第1部分391と一体化されている。第4インサート部材54は、樹脂部第1部分391および樹脂部第2部分392と一体化されている。
【0084】
インサート部材50は、3Dプリンタにより製造される。インサート部材50は、第1実施形態と同様に、連続繊維およびベース樹脂含む成形材料を積層して製造される。ベース樹脂は熱可塑性樹脂である。インサート部材50は、ベース樹脂としてポリアミド樹脂を用いて製造される。なお、ベース樹脂として、他の熱可塑性樹脂を用いてもよい。連続繊維は、例えば、アラミド繊維、カーボン繊維、チタン酸カリウム繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などの連続繊維を用いることができる。
【0085】
インサート部材50は、連続繊維の配向が1方向に揃えられていてもよいし、成形材料の層ごとに連続繊維の配向が異なる方向に揃えられていてもよい。例えば、3Dプリンタにより、第1層と、第1層に重なる第2層を備え、第1層と第2層は、連続繊維の配向が異なる構成のインサート部材50を製造することができる。配向が異なる連続繊維の層を備えたインサート部材50を用いることにより、複数の方向の応力に対して補強効果が得られる。なお、第1実施形態のインサート部材10においても、連続繊維の配向が異なる第1層と第2層を設けることができる。
【0086】
(第1インサート部材によるスプリングキャッチャー部の補強)
図13は、インサート部材50が配置された部位の部分拡大断面図であり、図12(a)の領域Dの拡大図である。図11に示すように、第1インサート部材51は、スプリングキャッチャー部32の外周部分に全周にわたって配置される円環状の部材である。図13に示すように、第1インサート部材51は、スプリングキャッチャー部32の載置部33の外周部分および外縁部34に配置され、外縁部34の先端部まで延びている。第1インサート部材51は、スプリングキャッチャー部32の一方側L1aの表面に配置される。すなわち、第1インサート部材51は、コイルスプリング43が折損した場合にコイルスプリング43の落下が想定される部位に配置されており、コイルスプリング43の落下衝撃を受ける座面側の表面に配置される。第1インサート部材51の他方側L1bは、樹脂部第2部分392によって覆われている。
【0087】
第1インサート部材51は、2層構造の樹脂部材であり、第1補強部511と、第1補強部511の他方側L1bに重なる第2補強部512を備える。第1インサート部材51は、3Dプリンタにより第1補強部511と第2補強部512を積層して製造されており、第1補強部511と第2補強部512は一体化されている。第1補強部511と第2補強部512は、含有する連続繊維が異なる。第1補強部511はアラミド連続繊維を含み、第2補強部512はカーボン連続繊維またはガラス連続繊維を含む。
【0088】
第1補強部511および第2補強部512は、それぞれ、ベース樹脂および連続繊維を含む成形材料の層を複数層備えており、各層は、連続繊維の配向が揃っている。第1補強部511および第2補強部512は、連続繊維が周方向に配向した層を備える。また、第1補強部511および第2補強部512は、連続繊維が周方向とは異なる方向に配向した層を備えていてもよい。すなわち、第1補強部511および第2補強部512は、連続繊維が周方向に配向した第1層と、連続繊維が周方向とは異なる方向に配向した第2層を備えていてもよい。
【0089】
第1インサート部材51は、アラミド連続繊維を含む第1補強部511がコイルスプリング43の落下が想定される部分の表面を形成するように配置される。従って、スプリングキャッチャー部32は、コイルスプリング43の落下衝撃を受ける面がアラミド連続繊維によって補強される。これにより、コイルスプリング43の落下衝撃によるスプリングキャッチャー部32の破断が抑制される。
【0090】
また、第1インサート部材51は、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維を含むことにより剛性が高められた第2補強部512が第1補強部511の背面側に配置される。従って、コイルスプリング43の落下が想定される部分の剛性が第1補強部511によって高められるので、衝撃によるスプリングキャッチャー部32の変形が抑制される。これにより、スプリングキャッチャー部32の破断およびクラックの伝播が抑制される。
【0091】
(第2インサート部材による回転規制リブの補強)
図14は、回転規制リブ36の斜視図であり、円筒部31の他方側L1bの端部を他方側L1bから見た斜視図である。図14に示すように、第2インサート部材52は、円筒部31の他方側L1bの端部に配置され、射出成形用樹脂からなる樹脂部第1部分391と一体化されている。回転規制リブ36は、樹脂部第1部分391の他方側L1bの端面から突出する凸部393と、凸部393の周方向の両側および他方側L1bを覆う補強部521によって構成されている。
【0092】
第2インサート部材52は、樹脂部第1部分391の他方側L1bの端面に固定される円環部522と、円環部522から他方側L1bに突出する補強部521と、補強部521の一方側L1aの部分を他方側L1bへ切り欠いた切欠き部523を備える。円筒部31を成形する際、第1キャビティ部分C11の他方側L1bの端部に位置決めした第2インサート部材52の一方側L1aから射出成形用樹脂を充填して硬化させる。これにより、切欠き部523に射出成形用樹脂が充填されて凸部393が成形され、凸部393に補強部521が一体化される。
【0093】
第2インサート部材52は、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維を含む。第2インサート部材52は、連続繊維が周方向に配向するように円環部522が製造される。また、補強部521と円環部522との境界をまたぐように連続繊維が配置される。従って、円筒部31は、他方側L1bの端部全周がカーボン連続繊維またはガラス連続繊維によって補強される。また、回転規制リブ36と円筒部31との境界がカーボン連続繊維またはガラス連続繊維によって補強される。これにより、回転規制リブ36に回転方向の荷重か加わったときに発生するせん断応力による破壊が抑制される。
【0094】
(第3インサート部材による円筒部の補強)
図11図13に示すように、第3インサート部材53は円筒形状であり、円筒部31の一方側L1aの端部に配置される。従って、円筒部31の一方側L1aの端部は、外周部が第3インサート部材53からなり、内周部が樹脂部第1部分391からなる。射出成形用金型60のゲート63は、円筒部31を成形する第1キャビティ部分C1の一方側L1aの端部に設けられている。従って、第3インサート部材53は、円筒部31のゲート63側の端部を補強する位置に配置されている。
【0095】
第3インサート部材53は、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維を含む。第3インサート部材53は、連続繊維が周方向に配向するように製造されている。従って、連続繊維は円筒部31の全周にわたって配置され、周方向に隣り合うゲート63の中間の角度位置に形成されるウエルド部をまたぐように配置される。これにより、円筒部31にショックアブソーバ41のシリンダ41aを圧入するときに発生する応力による円筒部31の割れを抑制できる。また、円筒部31のゲート63側の端部のみに第3インサート部材53
を配置することにより、ウエルド部に対する補強効果が最も高い位置に連続繊維を配置できる。従って、ウエルド部を効率的に補強できる。
【0096】
また、第3インサート部材53は円筒部31の外周部分を構成しており、シリンダ41aに接触する内周部分は射出成形用樹脂によって構成されている。従って、第3インサート部材53による補強を行ったことで円筒部31へのシリンダ41aの圧入が困難になることはない。さらに、シリンダ41aの圧入後には、第3インサート部材53によって円筒部31のクリープおよび応力緩和が抑制されるので、時間経過に伴ってシリンダ41aに対する円筒部31の緊縛力が低下することを抑制できる。
【0097】
(第4インサート部材による円筒部とスプリングキャッチャー部との接続部の補強)
図11図13に示すように、第4インサート部材54は、円筒部31とスプリングキャッチャー部32との接続部に配置される。図11に示すように、第4インサート部材54は、円筒部31に対して車体側の範囲に円弧状に配置されており、突出部35が設けられていない角度範囲に配置される。図13に示すように、第4インサート部材54は、円筒部31に配置される第1部分541と、スプリングキャッチャー部32の載置部33に配置される第2部分542を備えている。第1部分541は軸線方向に延びており、円筒部31の外周側の表層部分を構成している。第2部分542は第1部分541の他方側L1bの端部から外周側へ延びており、載置部33の一方側L1aの表面部分を構成している。従って、第2部分542は、コイルスプリング43を支持する座面側の表面に配置される。
【0098】
第4インサート部材54は、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維を含む。これにより、円筒部31とスプリングキャッチャー部32との接続部の表層部分の剛性を高めることができるので、コイルスプリング43から付加される荷重による撓みを抑制でき、疲労耐久性を向上させることができる。また、円筒部31とスプリングキャッチャー部32との接続部は樹脂の流れが複雑になりやすく、ウエルド部ができやすい。従って、この位置に連続繊維を配置することにより、ウエルド部を効果的に補強することができる。
【0099】
第4インサート部材54は、第1部分541と第2部分542の境界をまたぐ方向に配向する連続繊維を含む。また、第4インサート部材54は、周方向に配向する連続繊維を含んでいてもよい。この場合には、第4インサート部材54を製造する際、第1部分541と第2部分542をまたぐ方向に連続繊維が配向する層と、周方向に連続繊維が配向する層を積層すればよい。
【0100】
(インサート部材の隙間を利用した射出充填時の排気方法)
図15は、インサート部材50の隙間を利用した排気方法を模式的に示す説明図である。射出成形用金型60は、射出成形用樹脂を充填する際に金型内の空気を外部に排気するエアベント64を備えている。図15は、エアベント64、インサート部材50、およびゲート63から流入する射出成形用樹脂65を模式的に示す図である。3Dプリンタにより連続樹脂およびベース樹脂を積層した成形品を製造する際、成形材料の層間にわずかな隙間が形成される。そのため、インサート部材50は内部に隙間56を備えている。
【0101】
図15に示すように、インサート部材50を射出成形用金型60の型面に沿って配置して型面とは反対側に配置されるゲート63から射出成形用樹脂65を充填する場合に、インサート部材50と射出成形用樹脂65との間の空気をインサート部材50の隙間56から型面の側に逃がすことができる。従って、エアベント64からスムーズに排気することができ、インサート部材50を配置した部位に射出成形用樹脂65をスムーズに充填することができる。これにより、射出充填の際の射出成形用樹脂65の流れがスムーズになるので、成形不良を抑制できる。
【0102】
インサート部材50には、射出充填の際に樹脂圧が加わるので、インサート部材50の隙間56が樹脂圧によって潰され、連続繊維およびベース樹脂の層間に入り込んだ空気が脱気される。従って、スプリングガイド30は、インサート部材50によって構成される部分の機械的強度の低下が抑制される。
【0103】
(第2実施形態の主な作用効果)
第2実施形態のスプリングガイド30の製造方法では、3Dプリンタによって連続繊維およびベース樹脂を積層してインサート部材50を成形し、射出成形用金型のキャビティC10にインサート部材50を位置決めし、キャビティC10に射出成形用樹脂を充填してインサート部材50と一体化させた樹脂部39を成形する。
【0104】
また、第2実施形態のスプリングガイド30は、3Dプリンタによって連続繊維およびベース樹脂を積層して成形されるインサート部材50と、射出成形により成形されインサート部材50と一体化した樹脂部39を備える。
【0105】
第2実施形態では、3Dプリンタによってインサート部材50を製造するので、インサート部材50の形状精度を高めることができ、インサート部材50の内部で連続繊維の配向を揃えることができる。従って、インサート部材50をキャビティC10内に配置することによって、スプリングガイド30の補強箇所に、連続繊維を配向が揃った状態で精度良く配置することができる。よって、連続繊維による補強効果を高めることができる。
【0106】
また、第2実施形態では、キャビティC10に射出成形用樹脂を充填する際の樹脂圧により、3Dプリンタによるインサート部材50の製造の際に連続繊維およびベース樹脂の層間に入り込んだ空気を押し出して脱気することができる。従って、インサート部材50によって構成される部分の機械的強度の低下を抑制できる。
【0107】
さらに、第2実施形態では、3Dプリンタによるインサート部材50の製造の際に連続繊維およびベース樹脂の層間にできた隙間56を利用して、ゲート63からキャビティC10に流入する射出成形用樹脂とインサート部材50との間の空気をエアベント64側に逃がすことができる。従って、射出充填の際に射出成形用樹脂の流れをスムーズにすることができ、成形不良を抑制できる。
【0108】
第2実施形態では、キャビティC10に射出成形用樹脂を充填する際の樹脂圧により、射出成形用金型60の型面の形状をインサート部材50に転写する。そのため、スプリングガイド30は、インサート部材50が樹脂部39の表面に配置されており、樹脂部39を成形する射出成形用金型60の型面の形状がインサート部材50に転写されている。
【0109】
このように、スプリングガイド30の表面をインサート部材50で覆って補強することにより、スプリングガイド30の強度を高めることができる。特に、衝撃によるスプリングガイド30の表面の破断を抑制できる。また、樹脂圧によってインサート部材50に型面の形状を転写するので、連続繊維を破損させることなく、配向が揃った状態で成形品の表面に配置できる。従って、連続繊維による補強効果を高めることができる。
【0110】
スプリングガイド30は、樹脂部39を射出成形により製造する際に周方向に配列された多点のゲート63から樹脂を射出充填する。従って、射出充填用樹脂の合流部にウエルド部が形成される。また、円筒部31にスプリングキャッチャー部32が接続される形状であるため、樹脂の流れが複雑になりウエルド部などの成形不良が発生する。インサート部材50は樹脂部39に形成されるウエルド部の表面に配置され、連続繊維は、ウエルド部をまたぐ方向に配向している。従って、連続繊維によってウエルド部の表面を補強でき
るので、ウエルド部の発生によるスプリングガイド30の強度低下を抑制できる。
【0111】
スプリングガイド30は、インサート部材50の成形材料であるベース樹脂がポリアミド樹脂であり、樹脂部39の成形材料である射出成形用樹脂もポリアミド樹脂である。従って、樹脂部39と同一の樹脂をベース樹脂として用いてインサート部材50が製造されているので、インサート部材50と樹脂部39の一体性が高い。
【0112】
スプリングガイド30は、樹脂部39に短繊維が含まれている。スプリングガイド30の製造の際には、連続繊維を射出成形用樹脂に含有させずにインサート部材50の形態でキャビティC10内に配置するため、射出成形用樹脂に短繊維が添加されていても連続繊維との相互干渉を回避できる。従って、インサート部材50に添加した連続繊維と、射出成形用樹脂に添加した短繊維の両方の特性を利用できる。なお、第2実施形態において、射出成形用樹脂に短繊維を添加しない構成を採用してもよい。
【0113】
スプリングガイド30は、複数のインサート部材50を備えており、第1インサート部材51と第2インサート部材52は、異なる連続繊維を含む。すなわち、第1インサート部材51はアラミド連続繊維を含み、第2インサート部材52はカーボン連続繊維もしくはガラス連続繊維を含む。第1インサート部材51と第2インサート部材52は異なる補強箇所に配置される。従って、補強箇所に応じて連続繊維の種類を変えることができるので、補強効果を高めることができる。また、異なる連続繊維が混在することがないので、相互作用により各連続繊維の特性をなくしてしまうことを回避できる。
【0114】
(第2実施形態の変形例)
(1)第2実施形態では、ベース樹脂と射出成形用樹脂が同一の樹脂であるが、第1実施形態と同様に、ベース樹脂と射出成形用樹脂は、同一の樹脂でなくてもよい。この場合には、ベース樹脂は、射出成形用樹脂と相溶性があることが好ましい。また、ベース樹脂と射出成形用樹脂が同一の樹脂でない場合には、ベース樹脂は、射出成形用樹脂よりも融点が低いことが好ましい。
【0115】
(2)第2実施形態のスプリングガイド30は、インサート部材50が4箇所に配置されているが、4箇所のうちの1箇所ないし3箇所にはインサート部材50を配置せず、4箇所のうちの一部のみをインサート部材50によって補強する構成を採用してもよい。第1インサート部材51、第2インサート部材52、第3インサート部材53、および第4インサート部材54は、それぞれ、個別に補強効果を得ることができる。従って、4箇所のうちの一部のみを補強した構成を採用することができる。
【0116】
(3)第2実施形態では、第1インサート部材51が第1補強部511と第2補強部512を積層した2層構造になっているが、アラミド連続繊維を含む第1補強部511のみで構成された第1インサート部材51を用いてスプリングキャッチャー部32を補強する構成を採用してもよい。
【0117】
(4)第2実施形態では、第2インサート部材52は円環部522を備えており円筒部31の他方側L1bの端部に連続繊維を全周に配置するものであったが、第2インサート部材52を周方向に分割し、回転規制リブ36とその近傍のみに第2インサート部材52が配置される構成を採用してもよい。
【0118】
(5)第2実施形態では、第3インサート部材53は円筒部31の一方側L1aの端部のみに配置されているが、第3インサート部材53の軸線方向の長さを円筒部31の長さと同一にしてもよい。この場合には、第3インサート部材53は第4インサート部材54と干渉するため、第3インサート部材53と第4インサート部材54を一体化させるか、も
しくは、第4インサート部材54を配置しない構成を採用することができる。第3インサート部材53の軸線方向の長さを円筒部31の長さと同一にすることにより、円筒部31の軸線方向の剛性変化を少なくすることができる。また、樹脂部39の径方向の厚さの局部的な変化が少ないので、成形不良を抑制できる。
【0119】
(6)第2実施形態では、第3インサート部材53は円筒部31の外周部に配置されているが、円筒部31の内周部に配置してもよい。円筒部31の内周部に円筒形の第3インサート部材53を配置する場合は、第3インサート部材53を径方向に貫通する貫通穴を設け、射出充填時に貫通穴から内周側に射出成形用樹脂を供給して、第3インサート部材53の内周面から内周側に突出する圧入用のリブを形成することができる。これにより、シリンダ41aを圧入により固定できる。また、円筒部31の内周部を第3インサート部材53によって構成することで、射出成形用樹脂の冷却による円筒部内径の寸法変化を抑制できる。
【0120】
(スプリングガイドを補強するインサート部材の別の構成例)
図16(a)~図16(c)は、図8のスプリングガイド30におけるインサート部材50の別の構成例を示す断面図であり、図12(a)~図12(c)と同じ断面位置でスプリングガイド30を切断した断面図である。図17は、別の構成例のインサート部材が配置された部位の部分拡大断面図であり、図16(a)の領域Eの拡大図である。図16に示すスプリングガイド30は、上記形態の第1インサート部材51に代えて、2つの第1インサート部材51A、51Bを備える。また、第3インサート部材53は上記形態と同一であり、第2インサート部材52、第4インサート部材54に代えて、第2インサート部材52A、第4インサート部材54Aを備える。さらに、円筒部31の内周部に配置される第5インサート部材55を備える。
【0121】
図17に示すように、第1インサート部材51Aは、アラミド連続繊維を含み、スプリングキャッチャー部32の載置部33の外周部分および外縁部34の一方側L1aの表面に配置される。第1インサート部材51Bは、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維を含み、スプリングキャッチャー部32の載置部33の外周部分および外縁部34の他方側L1bの表面に配置される。従って、スプリングキャッチャー部32の外周部分は、第1インサート部材51A、51Bの間に樹脂部第2部分392が挟まれた構造である。この構造では、コイルスプリング43の落下衝撃を受けたときに樹脂部第2部分392が潰れて変形するので、衝撃を緩和できる。従って、コイルスプリング43の落下衝撃に対する破断抑制効果が高い。
【0122】
図16図17に示す形態では、円筒部31は、ゲート63に近い一方側L1aの端部の外周部が第3インサート部材53によって補強される。第5インサート部材55はベース樹脂に短繊維を添加した成形材料から成形されており、円筒部31の内周部に配置される。第5インサート部材55の軸線方向の長さ(高さ)は、円筒部31の軸線方向の長さと同一である。円筒部31の内周部を第5インサート部材55によって補強することにより、円筒部31の内周部を射出成形によって製造する場合と比較して、射出成形用樹脂が冷却される際の変形による円筒部31の内径寸法の変化を抑制できる。従って、シリンダ41aに対する円筒部31の固定強度の低下を抑制できる。
【0123】
回転規制リブ36と円筒部31との接続部を補強する第2インサート部材52Aは、上記形態の第2インサート部材52よりも径方向の厚さが薄く、円筒部31の他方側L1bの端部の外周部分に配置される。これにより、円筒部31の他方側L1bの端部まで延びる第5インサート部材55と第2インサート部材52Aとの干渉を避けることができる。
【0124】
第4インサート部材54Aは、軸線方向に延びる第1部分541Aと、第1部分541
Aの軸線方向の途中位置から外周側へ延びる第2部分542を備えている。第4インサート部材54Aは、第1部分541Aの他方側L1bの端部が第2部分542よりも他方側L1bまで延びている。第4インサート部材54Aは、第1部分541Aが円筒部31の表層部に配置され、第2部分542がコイルスプリング43の落下衝撃を受ける座面側の表面に配置される。この形態では、第1部分541Aが第2部分542に対して軸線方向の両側へ延びているので、第2部分542が配置される載置部33の撓みを効果的に抑制できる。
【0125】
(他の形態)
(1)3Dプリンタにより製造したインサート部材を備える樹脂成形部材の形状が、板厚が局部的に変化する形状である場合には、板厚が局部的に変化する部分にインサート部材を配置することにより、樹脂部の厚さの変化を少なくすることができる。これにより、樹脂部を射出成形する際に成形不良が発生することを抑制できる。
【0126】
(2)上記各実施形態およびその変形例は、樹脂成形部材の表面に3Dプリンタにより製造したインサート部材が配置されるものであったが、本発明は、インサート部材が樹脂成形部材の表面に露出しない構成を含む。例えば、第2実施形態のスプリングガイド30において、第4インサート部材54は、第1部分541が円筒部31の内部に埋設されるとともに、第2部分542がスプリングキャッチャー部32の内部に埋設され、表面が全て射出成形用樹脂によって覆われていてもよい。
【符号の説明】
【0127】
1…樹脂歯車、2…ボス部、3…接続部、4…外周部、5…穴部、6…凸部、7…歯、8…歯元、9…樹脂部、10…インサート部材、11…内側インサートスリーブ(第1インサートスリーブ)、12…外側インサートスリーブ(第2インサートスリーブ)、20…射出成形用金型、21…第1型部材、22…第2型部材、23…センターピン、24…凹部、25…歯型部、26…ゲート、30…スプリングガイド、31…円筒部、32…スプリングキャッチャー部、33…載置部、34…外縁部、35…突出部、36…回転規制リブ、37…リブ、39…樹脂部、40…サスペンション装置、41…ショックアブソーバ、41a…シリンダ、41b…ピストンロッド、42…アッパーマウント、43…コイルスプリング、44、45…ラバーシート、46…支持リング、50…インサート部材、51、51A、51B…第1インサート部材、511…第1補強部、512…第2補強部、52、52A…第2インサート部材、53…第3インサート部材、54、54A…第4インサート部材、55…第5インサート部材、56…隙間、60…射出成形用金型、61…第1型部材、62…第2型部材、63…ゲート、64…エアベント、65…射出成形用樹脂、391…樹脂部第1部分、392…樹脂部第2部分、393…凸部、521…補強部、522…円環部、523…切欠き部、541、541A…第1部分、542…第2部分、C、C10…キャビティ、C1、C11…第1キャビティ部分、C2、C12…第2キャビティ部分、C3…第3キャビティ部分、L…樹脂歯車の中心軸線、L1…シリンダの中心軸線、L1a…軸線方向の一方側、L1b…軸線方向の他方側、W1…第1ウエルド部、W2…第2ウエルド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2021-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続繊維を含むベース樹脂の層が積層されたインサート部材と、前記インサート部材一体化された樹脂部と、を備え、
前記インサート部材は、第1インサート部材および第2インサート部材を備え、
前記第1インサート部材に含まれる前記連続繊維と、前記第2インサート部材に含まれる前記連続繊維が異なることを特徴とする樹脂成形部材。
【請求項2】
前記第1インサート部材と前記第2インサート部材の一方は、アラミド連続繊維を含有し、
前記第インサート部材と前記第2インサート部材の他方は、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維を含有することを特徴とする請求項に記載の樹脂成形部材。
【請求項3】
コイルスプリングを支持するスプリングガイドであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形部材。
【請求項4】
中央に回転軸を通す穴部が設けられるとともに、外周面に歯部が設けられた樹脂歯車であって、
前記穴部の内周面は、前記第1インサート部材によって構成されるとともに、前記歯部の表面は、前記第2インサート部材によって構成され、
前記第1インサート部材は、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維を含有し、
前記第2インサート部材は、アラミド連続繊維を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形部材。
【請求項5】
連続繊維を含むベース樹脂の層が積層されたインサート部材と、前記インサート部材に一体化された樹脂部と、を備えるスプリングガイドであって、
円筒部と、円筒部から外周側に拡がる皿状のスプリングキャッチャー部と、を有し、
前記インサート部材は、前記スプリングキャッチャー部の外周部分に全周にわたって配置されることを特徴とするスプリングガイド。
【請求項6】
前記インサート部材は、アラミド連続繊維を含有することを特徴とする請求項5に記載のスプリングガイド。
【請求項7】
前記インサート部材は、ガラス連続繊維またはカーボン連続繊維を含有することを特徴とする請求項5に記載のスプリングガイド。
【請求項8】
連続繊維を含むベース樹脂の層が積層されたインサート部材と、前記インサート部材に一体化された樹脂部と、を備えるスプリングガイドであって、
円筒部と、円筒部から外周側に拡がる皿状のスプリングキャッチャー部と、を有し、
前記インサート部材は、前記円筒部と前記スプリングキャッチャー部との接続部に配置されることを特徴とするスプリングガイド。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の樹脂成形部材は、連続繊維を含むベース樹脂の層が積層されたインサート部材と、前記インサート部材に一体化された樹脂部と、を備え、前記インサート部材は、第1インサート部材および第2インサート部材を備え、前記第1インサート部材に含まれる前記連続繊維と、前記第2インサート部材に含まれる前記連続繊維が異なることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明によれば、インサート部材をキャビティ内に配置することによって、樹脂成形部材の補強箇所に、連続繊維を配向が揃った状態で精度良く配置することができる。よって、連続繊維による補強効果を高めることができる。また、補強箇所に応じて連続繊維の種類を変えることができるので、補強効果を高めることができる。また、異なる連続繊維が同じ位置で混在することがないので、相互作用により各連続繊維の特性をなくしてしまうことを回避できる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明において、前記第1インサート部材と前記第2インサート部材の一方は、アラミド連続繊維を含有し、前記第1インサート部材と前記第2インサート部材の他方は、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維を含有することが好ましい。このようにすると、アラミド連続繊維によって耐衝撃性を高めることができる。また、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維によって剛性を高めることができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明の樹脂成形部材は、コイルスプリングを支持するスプリングガイドである。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明の樹脂成形部材は、中央に回転軸を通す穴部が設けられるとともに、外周面に歯部が設けられた樹脂歯車であって、前記穴部の内周面は、前記第1インサート部材によって構成されるとともに、前記歯部の表面は、前記第2インサート部材によって構成され、前記第1インサート部材は、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維を含有し、前記第2インサート部材は、アラミド連続繊維を含有する。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本発明は、連続繊維を含むベース樹脂の層が積層されたインサート部材と、前記インサート部材に一体化された樹脂部と、を備えるスプリングガイドであって、円筒部と、円筒部から外周側に拡がる皿状のスプリングキャッチャー部と、を有し、前記インサート部材は、前記スプリングキャッチャー部の外周部分に全周にわたって配置されることを特徴とする。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
本発明のスプリングガイドにおいて、前記インサート部材は、アラミド連続繊維を含有する。あるいは、本発明のスプリングガイドにおいて、前記インサート部材は、ガラス連続繊維またはカーボン連続繊維を含有する。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
本発明は、連続繊維を含むベース樹脂の層が積層されたインサート部材と、前記インサート部材に一体化された樹脂部と、を備えるスプリングガイドであって、円筒部と、円筒部から外周側に拡がる皿状のスプリングキャッチャー部と、を有し、前記インサート部材は、前記円筒部と前記スプリングキャッチャー部との接続部に配置されることを特徴とする。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
本発明の樹脂成形部材によれば、樹脂成形部材の補強箇所に、連続繊維を配向が揃った状態で精度良く配置することができる。よって、連続繊維による補強効果を高めることができる。また、補強箇所に応じて連続繊維の種類を変えることができるので、補強効果を高めることができる。また、異なる連続繊維が同じ位置で混在することがないので、相互作用により各連続繊維の特性をなくしてしまうことを回避できる。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続繊維を含むベース樹脂の層が積層されたインサート部材と、前記インサート部材に一体化された樹脂部と、を備え、
前記インサート部材は、前記樹脂部に形成されるウエルド部の表面に配置され、
前記連続繊維の配向は、1方向に、あるいは、前記層ごとに揃っており、且つ、前記ウエルド部をまたぐ方向に配向しており、
前記インサート部材は、第1インサート部材および第2インサート部材を備え、
前記第1インサート部材に含まれる前記連続繊維と、前記第2インサート部材に含まれる前記連続繊維が異なることを特徴とする樹脂成形部材。
【請求項2】
前記第1インサート部材と前記第2インサート部材の一方は、アラミド連続繊維を含有し、
前記第1インサート部材と前記第2インサート部材の他方は、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維を含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形部材。
【請求項3】
コイルスプリングを支持するスプリングガイドであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形部材。
【請求項4】
中央に回転軸を通す穴部が設けられるとともに、外周面に歯部が設けられた樹脂歯車であることを特徴とする樹脂成形部材であって、
前記穴部の内周面は、前記第1インサート部材によって構成されるとともに、前記歯部の表面は、前記第2インサート部材によって構成され、
前記第1インサート部材は、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維を含有し、
前記第2インサート部材は、アラミド連続繊維を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形部材。
【請求項5】
連続繊維を含むベース樹脂の層が積層されたインサート部材と、前記インサート部材に一体化された樹脂部と、を備えるスプリングガイドであって、
円筒部と、円筒部から外周側に拡がる皿状のスプリングキャッチャー部と、を有し、
前記インサート部材は、前記スプリングキャッチャー部の外周部分に全周にわたって配置され、且つ、前記外周部分において前記樹脂部に形成されるウエルド部の表面に配置され、
前記連続繊維の配向は、1方向に、あるいは、前記層ごとに揃っており、且つ、前記ウエルド部をまたぐ方向に配向していることを特徴とするスプリングガイド。
【請求項6】
前記インサート部材は、アラミド連続繊維を含有することを特徴とする請求項5に記載のスプリングガイド。
【請求項7】
前記インサート部材は、ガラス連続繊維またはカーボン連続繊維を含有することを特徴とする請求項5に記載のスプリングガイド。
【請求項8】
連続繊維を含むベース樹脂の層が積層されたインサート部材と、前記インサート部材に一体化された樹脂部と、を備えるスプリングガイドであって、
円筒部と、円筒部から外周側に拡がる皿状のスプリングキャッチャー部と、を有し、
前記インサート部材は、前記円筒部と前記スプリングキャッチャー部との接続部に配置され、且つ、前記接続部において前記樹脂部に形成されるウエルド部の表面に配置され、
前記連続繊維の配向は、1方向に、あるいは、前記層ごとに揃っており、且つ、前記ウエルド部をまたぐ方向に配向していることを特徴とするスプリングガイド。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の樹脂成形部材は、連続繊維を含むベース樹脂の層が積層されたインサート部材と、前記インサート部材に一体化された樹脂部と、を備え、前記インサート部材は、前記樹脂部に形成されるウエルド部の表面に配置され、前記連続繊維の配向は、1方向に、あるいは、前記層ごとに揃っており、且つ、前記ウエルド部をまたぐ方向に配向しており、前記インサート部材は、第1インサート部材および第2インサート部材を備え、前記第1インサート部材に含まれる前記連続繊維と、前記第2インサート部材に含まれる前記連続繊維が異なることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明は、中央に回転軸を通す穴部が設けられるとともに、外周面に歯部が設けられた樹脂歯車であることを特徴とする樹脂成形部材であって、前記穴部の内周面は、前記第1インサート部材によって構成されるとともに、前記歯部の表面は、前記第2インサート部材によって構成され、前記第1インサート部材は、カーボン連続繊維またはガラス連続繊維を含有し、前記第2インサート部材は、アラミド連続繊維を含有する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本発明は、連続繊維を含むベース樹脂の層が積層されたインサート部材と、前記インサート部材に一体化された樹脂部と、を備えるスプリングガイドであって、円筒部と、円筒部から外周側に拡がる皿状のスプリングキャッチャー部と、を有し、前記インサート部材は、前記スプリングキャッチャー部の外周部分に全周にわたって配置され、且つ、前記外周部分において前記樹脂部に形成されるウエルド部の表面に配置され、前記連続繊維の配向は、1方向に、あるいは、前記層ごとに揃っており、且つ、前記ウエルド部をまたぐ方向に配向していることを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
本発明は、連続繊維を含むベース樹脂の層が積層されたインサート部材と、前記インサート部材に一体化された樹脂部と、を備えるスプリングガイドであって、円筒部と、円筒部から外周側に拡がる皿状のスプリングキャッチャー部と、を有し、前記インサート部材は、前記円筒部と前記スプリングキャッチャー部との接続部に配置され、且つ、前記接続部において前記樹脂部に形成されるウエルド部の表面に配置され、前記連続繊維の配向は、1方向に、あるいは、前記層ごとに揃っており、且つ、前記ウエルド部をまたぐ方向に配向していることを特徴とする。