(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092832
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】劣化制御装置及び劣化制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220616BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20220616BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20220616BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20220616BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220616BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/00 Y
H02J3/32
H02J3/38 110
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H01M10/44 P
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205768
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】513256675
【氏名又は名称】ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】西城 和幸
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G066AE09
5G066HA15
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503DA07
5G503EA08
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
5H030AA09
5H030AS03
5H030AS06
5H030BB21
5H030FF22
5H030FF41
(57)【要約】
【課題】蓄電池の交換により発生するコストを抑制する。
【解決手段】劣化制御装置10は、施設に設置されている複数の蓄電池1のそれぞれの劣化状態を特定する劣化状態特定部132と、劣化状態特定部132が特定した複数の蓄電池1のそれぞれの劣化状態に基づいて、複数の蓄電池1からの出力の合計が所定出力以上となることを条件として、複数の蓄電池1のそれぞれの劣化の進行度合いを制御する劣化制御部134と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設に設置されている複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態を特定する劣化状態特定部と、
前記劣化状態特定部が特定した前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態に基づいて、複数の蓄電池からの出力の合計が所定出力以上となることを条件として、前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化の進行度合いを制御する劣化制御部と、
を有する劣化制御装置。
【請求項2】
前記複数の蓄電池のそれぞれには、前記蓄電池から出力される電流の大きさを調整する調整装置が接続されており、
前記劣化制御部は、前記調整装置に前記電流の大きさを調整させることにより、前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化の進行度合いを制御する、
請求項1に記載の劣化制御装置。
【請求項3】
前記劣化制御部は、前記劣化状態特定部が特定した前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態に基づいて、前記複数の蓄電池の中から優先的に使用する蓄電池を選択する、
請求項1又は2に記載の劣化制御装置。
【請求項4】
前記劣化制御部は、前記劣化状態特定部が特定した前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態に基づいて、前記複数の蓄電池のうち劣化の進行度合いが相対的に大きい蓄電池からの出力を、劣化の進行度合いが相対的に小さい蓄電池からの出力よりも大きくすることにより、前記劣化の進行度合いが相対的に大きい蓄電池の劣化を促進させる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の劣化制御装置。
【請求項5】
前記複数の蓄電池のそれぞれの前記施設における使用期間を特定する使用期間特定部をさらに有し、
前記劣化制御部は、前記劣化状態特定部が特定した前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態と、前記使用期間特定部が特定した前記複数の蓄電池のそれぞれの使用期間とに基づいて、前記複数の蓄電池の中から優先的に使用する蓄電池を選択する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の劣化制御装置。
【請求項6】
前記複数の蓄電池はコンテナに搭載されており、
前記劣化状態特定部は、前記コンテナに設けられている通信部を介して、前記蓄電池から前記劣化状態を示す情報を受信することにより劣化状態を特定する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の劣化制御装置。
【請求項7】
前記蓄電池を識別するための蓄電池識別情報と、前記蓄電池の保管場所の位置を示す蓄電池位置情報とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記劣化状態特定部が特定した前記複数の蓄電池それぞれの劣化状態に基づいて、前記複数の蓄電池のうち交換対象の蓄電池を特定し、前記記憶部を参照し、前記施設に設置されている前記蓄電池の位置と相対的に近い位置に保管されている蓄電池を前記交換対象の蓄電池と交換を行う蓄電池として特定する交換蓄電池特定部と、
前記交換対象の蓄電池の前記蓄電池識別情報及び位置と、前記交換対象の蓄電池と交換を行う蓄電池の前記蓄電池識別情報及び保管場所とを出力する出力部と、
をさらに有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の劣化制御装置。
【請求項8】
前記複数の蓄電池はコンテナに搭載されており、
前記記憶部は、前記施設に設置されている前記コンテナを識別するためのコンテナ識別情報と、前記コンテナの位置を示すコンテナ位置情報と、前記コンテナに設置されている蓄電池の前記蓄電池識別情報とを関連付けて記憶し、
前記交換蓄電池特定部は、前記記憶部を参照し、前記交換対象の蓄電池に関連付けられている前記コンテナ位置情報が示す前記コンテナの位置を、前記蓄電池の位置として特定する、
請求項7に記載の劣化制御装置。
【請求項9】
前記劣化状態特定部は、前記蓄電池の温度を測定する温度測定装置が測定した前記蓄電池の温度を示す温度情報を取得するとともに、前記蓄電池の充放電量を特定し、取得した温度情報と、前記蓄電池の充放電量とに基づいて前記施設に設置されている複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態を特定する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の劣化制御装置。
【請求項10】
前記複数の蓄電池はコンテナに搭載されており、
前記劣化状態特定部は、前記コンテナの温度を測定する温度測定装置から送信された前記コンテナの温度を示す温度情報を、前記蓄電池の温度を示す温度情報として取得する、
請求項9に記載の劣化制御装置。
【請求項11】
施設に設置されている複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態を特定するステップと、
特定された前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態に基づいて、複数の蓄電池からの出力の合計が所定出力以上となることを条件として、前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化の進行度合いを制御するステップと、
を有する劣化制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化制御装置及び劣化制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電池を活用することにより、電力料金を低減させることが行われている。例えば、特許文献1には、施設における電力消費量がピークとなる時間帯に、予め蓄電池に充電した電力を放電させることにより、電力消費量のピークカットを行い、電力料金を低減させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電池を保有する事業者は、ピークカットを行う施設に複数の蓄電池を格納したコンテナ等を設置することにより蓄電池を貸し出し、ピークカットにより施設が得られる利益に対する対価を得ることにより、収益を上げることができる。ところで、施設に蓄電池を貸し出している間に蓄電池が劣化し、蓄電池の容量が予め定められた蓄電容量を下回ると、蓄電池を交換する必要がある。蓄電池を交換する場合、新たに置き換える蓄電池を施設に運び、劣化した蓄電池との交換をするため、コストが発生する。このため、蓄電池の交換により発生するコストを抑制することが求められている。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、蓄電池の交換により発生するコストを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る劣化制御装置は、施設に設置されている複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態を特定する劣化状態特定部と、前記劣化状態特定部が特定した前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態に基づいて、複数の蓄電池からの出力の合計が所定出力以上となることを条件として、前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化の進行度合いを制御する劣化制御部と、を有する。
【0007】
前記複数の蓄電池のそれぞれには、前記蓄電池から出力される電流の大きさを調整する調整装置が接続されており、前記劣化制御部は、前記調整装置に前記電流の大きさを調整させることにより、前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化の進行度合いを制御してもよい。
前記劣化制御部は、前記劣化状態特定部が特定した前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態に基づいて、前記複数の蓄電池の中から優先的に使用する蓄電池を選択してもよい。
【0008】
前記劣化制御部は、前記劣化状態特定部が特定した前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態に基づいて、前記複数の蓄電池のうち劣化の進行度合いが相対的に大きい蓄電池からの出力を、劣化の進行度合いが相対的に小さい蓄電池からの出力よりも大きくすることにより、前記劣化の進行度合いが相対的に大きい蓄電池の劣化を促進させてもよい。
【0009】
前記複数の蓄電池のそれぞれの前記施設における使用期間を特定する使用期間特定部をさらに有し、前記劣化制御部は、前記劣化状態特定部が特定した前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態と、前記使用期間特定部が特定した前記複数の蓄電池のそれぞれの使用期間とに基づいて、前記複数の蓄電池の中から優先的に使用する蓄電池を選択してもよい。
【0010】
前記複数の蓄電池はコンテナに搭載されており、前記劣化状態特定部は、前記コンテナに設けられている通信部を介して、前記蓄電池から前記劣化状態を示す情報を受信することにより劣化状態を特定してもよい。
【0011】
前記蓄電池を識別するための蓄電池識別情報と、前記蓄電池の保管場所の位置を示す蓄電池位置情報とを関連付けて記憶する記憶部と、前記劣化状態特定部が特定した前記複数の蓄電池それぞれの劣化状態に基づいて、前記複数の蓄電池のうち交換対象の蓄電池を特定し、前記記憶部を参照し、前記施設に設置されている前記蓄電池の位置と相対的に近い位置に保管されている蓄電池を前記交換対象の蓄電池と交換を行う蓄電池として特定する交換蓄電池特定部と、前記交換対象の蓄電池の前記蓄電池識別情報及び位置と、前記交換対象の蓄電池と交換を行う蓄電池の前記蓄電池識別情報及び保管場所とを出力する出力部と、をさらに有してもよい。
【0012】
前記複数の蓄電池はコンテナに搭載されており、前記記憶部は、前記施設に設置されている前記コンテナを識別するためのコンテナ識別情報と、前記コンテナの位置を示すコンテナ位置情報と、前記コンテナに設置されている蓄電池の前記蓄電池識別情報とを関連付けて記憶し、前記交換蓄電池特定部は、前記記憶部を参照し、前記交換対象の蓄電池に関連付けられている前記コンテナ位置情報が示す前記コンテナの位置を、前記蓄電池の位置として特定してもよい。
【0013】
前記劣化状態特定部は、前記蓄電池の温度を測定する温度測定装置が測定した前記蓄電池の温度を示す温度情報を取得するとともに、前記蓄電池の充放電量を特定し、取得した温度情報と、前記蓄電池の充放電量とに基づいて前記施設に設置されている複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態を特定してもよい。
【0014】
前記複数の蓄電池はコンテナに搭載されており、前記劣化状態特定部は、前記コンテナの温度を測定する温度測定装置から送信された前記コンテナの温度を示す温度情報を、前記蓄電池の温度を示す温度情報として取得してもよい。
【0015】
本発明の第2の態様に係る劣化制御方法は、施設に設置されている複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態を特定するステップと、特定された前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化状態に基づいて、複数の蓄電池からの出力の合計が所定出力以上となることを条件として、前記複数の蓄電池のそれぞれの劣化の進行度合いを制御するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、蓄電池の交換により発生するコストを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る電力供給システムの概要を示す図である。
【
図2】本実施形態における劣化制御装置の構成を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る劣化制御装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[電力供給システムSの構成]
図1は、本実施形態に係る電力供給システムSの概要を示す図である。電力供給システムSは、施設における電力消費量がピークとなるピーク時期に、蓄電池1に蓄電された電力を施設の負荷Lに供給するシステムである。電力供給システムSは、蓄電池1と、電流調整装置2と、温度センサ3と、通信装置4と、電力制御装置5と、劣化制御装置10とを備える。
【0019】
蓄電池1、電流調整装置2、温度センサ3、及び通信装置4は、コンテナCに積載されている。コンテナCは蓄電装置の一態様である。コンテナCの管理者は、トラック等の移動手段によりコンテナCを、蓄電池1を利用する施設に移設することができる。また、コンテナCに積載されている蓄電池1は個別に交換することができる。施設は、例えば、負荷Lの電力消費量のピーク時期が夏季に発生するテーマパークや、負荷Lの電力消費量のピーク時期が冬季に発生するスキー場等である。
【0020】
蓄電池1は、例えば、リチウムイオン蓄電池である。蓄電池1は、コンテナCに複数搭載される。
図1に示す例では、コンテナCには、蓄電池1としての蓄電池1A、蓄電池1B及び蓄電池1Cが搭載されている。以下の説明において、複数の蓄電池1A、蓄電池1B及び蓄電池1Cを区別しない場合には、単に蓄電池1という。
【0021】
複数の蓄電池1のそれぞれには、電流調整装置2が接続されている。
図1に示す例では、複数の蓄電池1A、蓄電池1B及び蓄電池1Cのそれぞれに対して、電流調整装置2A、電流調整装置2B及び電流調整装置2Cが接続されている。電流調整装置2は、蓄電池1と、電力制御装置5との間に接続されている。電流調整装置2は、例えばDC-DCコンバータであり、蓄電池1から出力される電流又は蓄電池1に入力する電流の大きさを調整する。一例として、電流調整装置2は、蓄電池1から出力された電圧を他の電圧に変換する際に、変換後の電圧を変化させることにより、蓄電池1から出力される電流の大きさを調整する。以下の説明において、複数の電流調整装置2A、電流調整装置2B及び電流調整装置2Cを区別しない場合には、単に電流調整装置2という。
【0022】
温度センサ3は、コンテナの内部の温度を測定する。温度センサ3は、通信装置4を介して、測定した温度を示す測定情報を劣化制御装置10に送信する。
通信装置4は、例えば、電流調整装置2及び温度センサ3と接続されており、電流調整装置2及び温度センサ3が劣化制御装置10と通信を行うための通信インターフェースである。
【0023】
電力制御装置5は、例えばパワーコンディショナーであり、電力系統PとコンテナCとの間に設けられている。電力制御装置5は、例えば、1日において負荷Lの消費電力量が少ない時間帯に電力系統Pから供給される電力を直流電力に変換し、電流調整装置2を介して蓄電池1に蓄電させるとともに、1日において負荷Lの消費電力量が多い時間帯に電流調整装置2を介して蓄電池1から出力される電力を交流電力に変換して負荷Lに供給する。
【0024】
劣化制御装置10は、蓄電池1を管理する管理者が管理するサーバであり、管理者の所在地等の、コンテナCが設置される施設とは異なる場所に設置されている。劣化制御装置10は、インターネット回線や携帯電話回線等の通信ネットワークNを介して、通信装置4と通信可能に接続されている。劣化制御装置10は、施設に設置されている複数の蓄電池1のそれぞれの劣化状態を特定し、複数の蓄電池1のそれぞれの劣化状態に基づいて、複数の蓄電池1からの出力の合計が所定出力以上となることを条件として、複数の蓄電池1の使用態様を変化させることにより、複数の蓄電池のそれぞれの劣化の進行度合いを制御する。
【0025】
このようにすることで、劣化制御装置10は、例えば複数の蓄電池1の交換時期を同じ時期となるように調整することができる。これにより、蓄電池1の管理者は、一度に複数の蓄電池1を交換することができるようになるため、蓄電池1の交換により発生するコストを抑制することができる。
【0026】
[劣化制御装置10の構成]
続いて、劣化制御装置10の構成について説明する。
図2は、本実施形態における劣化制御装置10の構成を示す図である。
図2に示すように、劣化制御装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを備える。
【0027】
通信部11は、例えば、電流調整装置2、温度センサ3、及び電力制御装置5と通信を行うためのインターフェースである。
記憶部12は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を含む記憶媒体である。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶している。例えば、記憶部12は、制御部13を、登録部131、劣化状態特定部132、使用期間特定部133、劣化制御部134、交換蓄電池特定部135、及び出力部136として機能させるプログラムを記憶している。
【0028】
また、記憶部12は、蓄電池1を識別するための蓄電池識別情報としての蓄電池IDと、当該蓄電池1の保管場所の位置を示す蓄電池位置情報とを関連付けた蓄電池保管情報を記憶する。
図3は、蓄電池保管情報の一例を示す図である。
図3に示すように、蓄電池保管情報は、蓄電池IDと、蓄電池位置情報としての保管場所の住所を示す情報とが関連付けられていることが確認できる。蓄電池保管情報は、例えば、蓄電池1を保管場所に保管する際に登録部131により登録され、コンテナに搭載されている蓄電池1と交換されたことに応じて登録部131により更新される。
【0029】
また、記憶部12は、施設に設置されているコンテナを識別するためのコンテナ識別情報としてのコンテナIDと、当該コンテナの設置位置を示すコンテナ位置情報と、当該コンテナに搭載されている蓄電池1の蓄電池IDとを関連付けたコンテナ情報を記憶する。
図4は、コンテナ情報の一例を示す図である。
図4に示すように、コンテナ情報は、コンテナIDと、コンテナ位置情報としての設置位置の住所を示す情報と、コンテナに搭載されている一以上の蓄電池1の蓄電池IDとが関連付けられていることが確認できる。コンテナ情報は、例えば、コンテナを移送する際に登録部131により登録される。また、コンテナ情報は、コンテナに搭載されている蓄電池1が交換されたことに応じて登録部131により更新される。
【0030】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、登録部131、劣化状態特定部132、使用期間特定部133、劣化制御部134、交換蓄電池特定部135、及び出力部136として機能する。
【0031】
登録部131は、蓄電池保管情報の登録及び更新、コンテナ情報の登録及び更新を受け付ける。例えば、登録部131は、蓄電池1の管理者が使用する管理者端末から、蓄電池1の蓄電池IDと、当該蓄電池1が保管されている保管場所の住所を示す蓄電池位置情報とを受け付ける。登録部131は、蓄電池IDと、蓄電池位置情報とを受け付けると、これらの情報を関連付けて蓄電池保管情報として記憶部12に記憶させる。
【0032】
また、登録部131は、蓄電池1の管理者が使用する管理者端末から、施設に設置されるコンテナのコンテナIDと、当該コンテナの設置位置と、当該コンテナに搭載される蓄電池1の蓄電池IDとを受け付ける。登録部131は、コンテナIDと、設置位置と、蓄電池IDとを受け付けると、これらの情報を関連付けてコンテナ情報として記憶部12に記憶させる。
【0033】
劣化状態特定部132は、施設に設置されている複数の蓄電池1のそれぞれの劣化状態を特定する。劣化状態特定部132は、記憶部12に記憶されているコンテナ情報を参照し、施設に設置されているコンテナを特定する。劣化状態特定部132は、特定したコンテナに設けられている通信装置4を介して、複数の蓄電池1のそれぞれから劣化状態を示す情報を受信することにより劣化状態を特定する。劣化状態を示す情報は、例えば、蓄電池における初期の満充電容量に対する劣化時の満充電容量の割合を示すSOH(State of Health)を示す情報である。
【0034】
劣化状態特定部132は、コンテナの温度を測定する温度センサ3から送信されたコンテナの温度を示す温度情報を、蓄電池1の温度を示す温度情報として取得してもよい。そして、劣化状態特定部132は、特定したコンテナに設けられている通信装置4を介して蓄電池1の充放電量を示す情報を取得することにより、蓄電池1の充放電量を特定し、取得した温度情報と、蓄電池1の充放電量とに基づいて施設に設置されている複数の蓄電池1のそれぞれの劣化状態を特定してもよい。
【0035】
使用期間特定部133は、複数の蓄電池1のそれぞれの施設における使用期間を特定する。例えば、記憶部12に、蓄電池1の管理者と、施設との契約を示す契約情報を記憶させておく。契約情報には、施設に設置される複数の蓄電池1の使用開始予定日及び使用終了予定日が含まれている。施設がスキー場の場合、使用開始予定日は、例えば、スキー場が開設される時期の初めであり、使用終了予定日は、スキー場が閉設される時期の終わりである。使用期間特定部133は、記憶部12に記憶されている契約情報に含まれている使用開始日及び使用終了日を参照し、複数の蓄電池1のそれぞれの施設における使用期間を特定する。
【0036】
劣化制御部134は、電流調整装置2に、蓄電池1から出力される電流の大きさを調整させることにより、複数の蓄電池1のそれぞれの劣化の進行度合いを制御する。まず、劣化制御部134は、電力制御装置5から、複数の蓄電池1から出力させる電流の合計値を示す出力指示情報を受信する。劣化制御部134は、劣化状態特定部132が特定した複数の蓄電池1のそれぞれの劣化状態に基づいて、複数の蓄電池1からの出力の合計が、出力指示情報が示す出力である所定出力以上となることを条件として、複数の蓄電池1の使用態様を変化させることにより、複数の蓄電池1のそれぞれの劣化の進行度合いを制御する。蓄電池1の使用態様を変化させることは、例えば、蓄電池1の単位時間当たりの放電量及び充電量を変化させることである。
【0037】
劣化制御部134は、劣化状態特定部132が特定した複数の蓄電池1のそれぞれの劣化状態に基づいて、複数の蓄電池1の中から優先的に使用する蓄電池1を選択する。劣化制御部134は、劣化状態特定部132が特定した複数の蓄電池1のそれぞれの劣化状態に基づいて、複数の蓄電池1のうち、劣化の進行度合いが相対的に大きい蓄電池1からの出力(例えば出力電流)を、劣化の進行度合いが相対的に小さい蓄電池1からの出力よりも大きくすることにより、劣化の進行度合いが相対的に大きい蓄電池1の劣化を促進させる。
【0038】
例えば、劣化制御部134は、劣化の進行度合いが相対的に大きい蓄電池1からの出力を最大出力とする。そして、劣化制御部134は、その他の一以上の蓄電池1からの出力の合計値を、出力指示情報が示す出力から、劣化の進行度合いが相対的に大きい蓄電池1からの出力を減算した値となるように制御する。このように、劣化制御部134が、劣化の進行度合いが相対的に大きい蓄電池1からの出力を大きくしてさらに当該蓄電池1を早期に劣化させることで、例えば近隣で使用されている複数の蓄電池1の交換時期が同時期になるように調整することができる。その結果、複数の場所の蓄電池1を交換する時期がランダムになる場合に比べて、蓄電池1の交換により発生するコストを抑制することができる。
【0039】
また、劣化制御部134は、劣化させることにより交換対象とする蓄電池1を複数とするために、複数の蓄電池1の中から優先的に使用する2つ以上の蓄電池1を選択してもよい。このようにすることで、同時期に交換対象とする蓄電池1を複数とすることができるので、複数の蓄電池1の劣化時期が異なることにより、交換対象の蓄電池1を一つずつ交換する場合に比べて、蓄電池1の交換に掛かるコストを抑制することができる。
【0040】
なお、蓄電池1の使用期間が終了すると、コンテナは別の施設に移送され、移送先の施設で使用される。例えば、イベント会場にコンテナを設置し、夏季にイベント会場で蓄電池1を使用した後、冬季になる前に当該コンテナをスキー場に移送し、冬季にスキー場で蓄電池1を使用することがある。このため、蓄電池1の使用期間の終了タイミングで、コンテナを移送する途中で蓄電池1を交換することが好ましい。
【0041】
これに対し、劣化制御部134は、劣化状態特定部132が特定した複数の蓄電池1のそれぞれの劣化状態と、使用期間特定部133が特定した複数の蓄電池1のそれぞれの使用期間とに基づいて、複数の蓄電池1の中から優先的に使用する蓄電池1を選択してもよい。
【0042】
例えば、劣化制御部134は、劣化状態特定部132が特定した複数の蓄電池1のそれぞれの劣化状態に基づいて、劣化の進行度合いが相対的に大きい蓄電池1の蓄電容量が、使用期間内に交換対象となる蓄電容量よりも下回るまで、劣化の進行度合いが相対的に大きい蓄電池1を選択する。このようにすることで、複数の蓄電池1の施設における使用期間が終了し、コンテナを他の施設に移動させるタイミングで、劣化の進行度合いが相対的に大きい蓄電池1を交換することができるので、蓄電池1の交換に掛かるコストを抑制することができる。
【0043】
交換蓄電池特定部135は、劣化状態特定部132が特定した複数の蓄電池1それぞれの劣化状態に基づいて、複数の蓄電池1のうち交換対象の蓄電池1を特定する。例えば、交換蓄電池特定部135は、所定時間(例えば1日)に、劣化状態特定部132が特定した複数の蓄電池1それぞれの劣化状態に基づいて、交換基準として予め設定されている劣化状態よりも劣化している蓄電池1を特定する。
【0044】
交換蓄電池特定部135は、交換対象の蓄電池1を特定すると、記憶部12のコンテナ情報を参照し、当該交換対象の蓄電池に関連付けられているコンテナ位置情報を特定する。そして、交換蓄電池特定部135は、特定したコンテナ位置情報が示すコンテナの住所を交換対象の蓄電池1の位置として特定する。
【0045】
交換蓄電池特定部135は、記憶部12の蓄電池保管情報を参照し、施設に設置されている蓄電池1の位置と相対的に近い位置に保管されている蓄電池1を交換対象の蓄電池1と交換を行う蓄電池として特定する。例えば、交換蓄電池特定部135は、特定した蓄電池1の位置からの移動時間が最も短い保管場所に保管されている蓄電池1を、交換対象の蓄電池1と交換を行う蓄電池として特定する。このようにすることで、施設にコンテナを設置させた状態で蓄電池1を交換する場合に、交換対象の蓄電池1と交換を行う蓄電池1の施設への輸送コストを軽減することができる。
【0046】
出力部136は、交換対象の蓄電池1の蓄電池ID及び位置情報と、交換対象の蓄電池1と交換を行う蓄電池1の蓄電池ID及び保管場所の位置を示す保管場所情報とを含む交換情報を出力する。例えば、出力部136は、蓄電池1の管理者が使用する管理者端末に交換情報を送信することにより、蓄電池1の交換が必要なことを蓄電池1の管理者に通知する。このようにすることで、蓄電池1の管理者は、蓄電池1の交換が必要なこと及び、当該蓄電池1と交換する蓄電池1の保管場所を把握することができるので、蓄電池1の交換を適切に行うことができる。出力部136により交換情報が出力され、蓄電池1の交換が行われた後、登録部131は、蓄電池1の管理者から、記憶部12に記憶されている蓄電池保管情報及びコンテナ情報の更新を受け付ける。
【0047】
[劣化制御装置10における処理の流れ]
続いて、劣化制御装置10における処理の流れについて説明する。
図5は、本実施形態に係る劣化制御装置10における処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートでは、劣化制御装置10が蓄電池1の劣化の進行度合いを制御する際の処理の流れを説明する。
【0048】
まず、劣化状態特定部132は、施設に設置されている複数の蓄電池1のそれぞれの劣化状態を特定する(S1)。
続いて、劣化制御部134は、電力制御装置5から、複数の蓄電池1から出力させる電流の合計値を示す出力指示情報を受信する(S2)。
【0049】
続いて、劣化制御部134は、S1において特定された複数の蓄電池1のそれぞれの劣化状態に基づいて、相対的に劣化している蓄電池1を選択する(S3)。例えば、劣化制御部134は、相対的に劣化している一つの蓄電池1を選択する。
【0050】
続いて、劣化制御部134は、S3において選択した蓄電池1から優先的に電流を出力させる(S4)。具体的には、劣化制御部134は、複数の蓄電池1のうち、選択した蓄電池1からの電流の出力を、選択していない蓄電池1からの出力よりも大きくする。
【0051】
[本実施形態における効果]
以上説明したように、本実施形態に係る劣化制御装置10は、施設に設置されている複数の蓄電池1のそれぞれの劣化状態を特定する。劣化制御装置10は、特定した複数の蓄電池1のそれぞれの劣化状態に基づいて、複数の蓄電池1からの出力の合計が所定出力以上となることを条件として、複数の蓄電池1の使用態様を変化させることにより、複数の蓄電池1のそれぞれの劣化の進行度合いを制御する。このようにすることで、劣化制御装置10は、例えば複数の蓄電池1の交換時期を同じ時期となるように調整することができる。これにより、一度に複数の蓄電池1を交換することができるようになるため、蓄電池1の交換により発生するコストを抑制することができる。
【0052】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0053】
1・・・蓄電池、2・・・電流調整装置、3・・・温度センサ、4・・・通信装置、5・・・電力制御装置、10・・・劣化制御装置、11・・・通信部、12・・・記憶部、13・・・制御部、131・・・登録部、132・・・劣化状態特定部、133・・・使用期間特定部、134・・・劣化制御部、135・・・交換蓄電池特定部、136・・・出力部、C・・・コンテナ、L・・・負荷、P・・・電力系統