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特開2022-92850色価判定モデル生成方法、色価判定方法、色価判定装置および色価判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092850
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】色価判定モデル生成方法、色価判定方法、色価判定装置および色価判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20220616BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220616BHJP
【FI】
G06N20/00 130
G06T7/00 350C
G06T7/00 610C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205798
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細見 保史
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA03
5L096BA18
5L096CA02
5L096DA02
5L096EA35
5L096GA51
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】ユーザの負担が少ない色素の色価判定技術を提供する。
【解決手段】色素の色価を判定するための色価判定モデルD3を生成する色価判定モデル生成方法であって、一定条件下で撮影された、色価の異なる複数のサンプル色素Sの一定濃度の溶液の画像を取得する第1画像取得ステップS2と、所定の色価測定法により前記複数のサンプル色素Sの色価を測定し、測定結果D1を前記画像に対応付けることにより、教師データD2を生成する生成ステップS5と、教師データD2に基づいて機械学習を行い、色素の溶液の画像を入力した場合に、当該色素の色価を出力する色価判定モデルD3を生成する学習ステップS7と、を備えた色価判定モデル生成方法。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素の色価を判定するための色価判定モデルを生成する色価判定モデル生成方法であって、
一定条件下で撮影された、色価の異なる複数のサンプル色素の一定濃度の溶液の画像を取得する第1画像取得ステップと、
所定の色価測定法により前記複数のサンプル色素の色価を測定し、測定結果を前記画像に対応付けることにより、教師データを生成する生成ステップと、
前記教師データに基づいて機械学習を行い、色素の溶液の画像を入力した場合に、当該色素の色価を出力する色価判定モデルを生成する学習ステップと、
を備えた色価判定モデル生成方法。
【請求項2】
前記色素は食品添加物である、請求項1に記載の色価判定モデル生成方法。
【請求項3】
前記学習ステップでは、ディープラーニングによって前記機械学習を行う、請求項1または2に記載の色価判定モデル生成方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の色価判定モデル生成方法によって生成された色価判定モデルを用いて、色価が未知である対象色素の色価を判定する色価判定方法であって、
前記一定条件下で撮影された、前記対象色素の前記一定濃度の溶液の画像を取得する第2画像取得ステップと、
前記対象色素の溶液の画像を前記色価判定モデルに入力して、前記対象色素の色価を取得する色価取得ステップと、
を備えた色価判定方法。
【請求項5】
前記色価取得ステップにおいて取得された前記色価を提示する色価提示ステップをさらに備えた、請求項4に記載の色価判定方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載の色価判定モデル生成方法によって生成された色価判定モデルを用いて、色価が未知である対象色素の色価を判定する色価判定装置であって、
前記一定条件下で撮影された、前記対象色素の前記一定濃度の溶液の画像を取得する第2画像取得部と、
前記対象色素の溶液の画像を前記色価判定モデルに入力して、前記対象色素の色価を取得する色価取得部と、
を備えた色価判定装置。
【請求項7】
前記色価取得部によって取得された前記色価を提示する色価提示部をさらに備えた、請求項6に記載の色価判定装置。
【請求項8】
請求項4または5に記載の色価判定方法の各ステップをコンピュータに実行させる色価判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素の色価を判定する技術に関し、特に、人工知能を用いて色素の色価を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者庁発行の食品添加物公定書において、食品添加物(着色料)の色価(色素濃度)は、紫外可視吸光度測定法により着色料溶液の可視部での極大吸収波長における吸光度を測定し、10w/v%溶液の吸光度に換算した数値で表すものと定められている(非特許文献1の27~28頁)。現行では、食品添加物の色価は、以下のように測定される。
【0003】
表示された色価により、表1に示される試料の量を精密に量り、メスフラスコに入れ、別に規定する溶媒約10mLを加えて溶かし、更に溶媒を加えて正確に100mLとし、必要な場合には、遠心分離又はろ過し、試料液とする。
【0004】
【表1】
【0005】
この試料液を吸光度測定用の検液とする。ただし、吸光度の測定には、検液の吸光度が、単光束吸光光度法で測定を行う場合には0.2~0.7の範囲、複光束吸光光度法で測定を行う場合には0.4~1.4の範囲に入るように、必要な場合には、表1に示される希釈倍率に従って試料液を正確に希釈し、検液とする。検液を調製した溶媒を対照とし、別に規定する波長で層長1cmでの吸光度Aを測定し、次式により色価を求める。
【0006】
【数1】
【0007】
紫外可視吸光度測定法による検液の吸光度の測定には、例えば日本分光株式会社製の紫外可視近赤外分光光度計を用いることができる(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「第9版 食品添加物公定書」、厚生労働省消費者庁、2018年
【非特許文献2】「紫外可視近赤外分光光度計 V-700 series」、日本分光株式会社、インターネット〈URL:https://www.jasco.co.jp/jpn/product/Indexes/UV_index.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現行の色価測定方法では、試料液の調整、分光光度計による吸光度の測定、データ記録および後片付けといった作業が必要であるが、特に、試料液の調整、データ記録および後片付けに長時間を要するため、ユーザの負担が大きいという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、ユーザの負担が少ない色素の色価判定技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、人工知能を用いて色素の色価を判定することにより、現行の色価測定方法に比べ、ユーザの負担を大幅に軽減できることを見出した。
【0012】
本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の態様を有する。
項1.
色素の色価を判定するための色価判定モデルを生成する色価判定モデル生成方法であって、
一定条件下で撮影された、色価の異なる複数のサンプル色素の一定濃度の溶液の画像を取得する第1画像取得ステップと、
所定の色価測定法により前記複数のサンプル色素の色価を測定し、測定結果を前記画像に対応付けることにより、教師データを生成する生成ステップと、
前記教師データに基づいて機械学習を行い、色素の溶液の画像を入力した場合に、当該色素の色価を出力する色価判定モデルを生成する学習ステップと、
を備えた色価判定モデル生成方法。
項2.
前記色素は食品添加物である、項1に記載の色価判定モデル生成方法。
項3.
前記学習ステップでは、ディープラーニングによって前記機械学習を行う、項1または2に記載の色価判定モデル生成方法。
項4.
項1~3のいずれかに記載の色価判定モデル生成方法によって生成された色価判定モデルを用いて、色価が未知である対象色素の色価を判定する色価判定方法であって、
前記一定条件下で撮影された、前記対象色素の前記一定濃度の溶液の画像を取得する第2画像取得ステップと、
前記対象色素の溶液の画像を前記色価判定モデルに入力して、前記対象色素の色価を取得する色価取得ステップと、
を備えた色価判定方法。
項5.
前記色価取得ステップにおいて取得された前記色価を提示する色価提示ステップをさらに備えた、項4に記載の色価判定方法。
項6.
項1~3のいずれかに記載の色価判定モデル生成方法によって生成された色価判定モデルを用いて、色価が未知である対象色素の色価を判定する色価判定装置であって、
前記一定条件下で撮影された、前記対象色素の前記一定濃度の溶液の画像を取得する第2画像取得部と、
前記対象色素の溶液の画像を前記色価判定モデルに入力して、前記対象色素の色価を取得する色価取得部と、
を備えた色価判定装置。
項7.
前記色価取得部によって取得された前記色価を提示する色価提示部をさらに備えた、項6に記載の色価判定装置。
項8.
項4または5に記載の色価判定方法の各ステップをコンピュータに実行させる色価判定プログラム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザの負担が少ない色素の色価判定技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る色価判定システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】色価判定モデル生成システムの概略構成を示すブロック図である。
図3】カメラによる撮影環境の一例を示す概略図である。
図4】画像の加工例を示す図である。
図5】色価判定装置の機能を示すブロック図である。
図6】本実施形態に係る色価判定モデル生成方法の処理手順を示すフローチャートである。
図7】本実施形態に係る色価判定方法の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
(全体構成)
図1は、本実施形態に係る色価判定システム1の概略構成を示すブロック図である。色価判定システム1は、色価判定モデル生成システム2および色価判定装置3を備えている。色価判定モデル生成システム2は、本実施形態に係る色価判定モデル生成方法によって、色素の色価を判定するための色価判定モデルを生成する。色価判定装置3は、本実施形態に係る色価判定方法によって、色価が未知である対象色素の色価を判定する。本実施形態では、色素は食品添加物(着色料)である。
【0017】
(色価判定モデル生成システム)
図2は、色価判定モデル生成システム2の概略構成を示すブロック図である。色価判定モデル生成システム2は、カメラ4と、教師データ生成装置5と、記憶装置6と、機械学習装置7とを備えている。これらの中で少なくとも記憶装置6および機械学習装置7は、クラウド上に設けてもよい。あるいは、教師データ生成装置5および機械学習装置7を単一の装置で構成してもよく、記憶装置6を教師データ生成装置5および/または機械学習装置7に内蔵させてもよい。
【0018】
カメラ4は、撮影環境光が固定された一定条件下で、色価の異なる複数のサンプル色素Sの一定濃度の溶液を順次撮影する。各溶液の濃度は、サンプル色素S毎に互いに同一であれば、特に限定されない。サンプル色素Sの溶液の画像は、有線通信、無線通信または記録媒体を介してカメラ4から教師データ生成装置5に入力される。
【0019】
図3は、カメラ4による撮影環境の一例を示す概略図である。サンプル色素Sの溶液を収容した容器Cおよびカメラ4が、光遮蔽部材で形成されたボックス8の内部に載置される。容器Cとカメラ4との位置関係は、サンプル色素S毎に同一である。容器Cおよびカメラ4の上方には、照明装置9が設けられており、照明装置9の照度および色度は、時間の経過にかかわらず一定である。これにより、カメラ4は、複数のサンプル色素Sの溶液を一定条件下で撮影することができる。
【0020】
再び図2を参照する。教師データ生成装置5は、汎用のコンピュータで構成することができ、機能ブロックとして、第1画像取得部51と、第1画像処理部52と、教師データ生成部53とを備えている。
【0021】
第1画像取得部51は、カメラ4によって撮影されたサンプル色素Sの溶液の画像を取得する。
【0022】
取得された画像は、第1画像処理部52によって所定の加工が施される。本実施形態では、図4に示すように、画像全体から、サンプル色素Sの溶液部分に含まれる所定の形状および大きさの領域Rがトリミングされる。領域Rの画像は、教師データ生成部53に入力される。なお、第1画像処理部52は任意の構成であり、例えば、第1画像取得部51によって取得された画像が、サンプル色素Sの溶液部分のみからなる場合は、第1画像処理部52を省略してもよい。
【0023】
各サンプル色素Sに対しては、別途、所定の色価測定法により色価が測定される。色価測定法は、特に限定されず、公知の測定法を用いることができる。
【0024】
教師データ生成部53は、前記所定の色価測定法により測定されたサンプル色素Sの測定結果D1(色価の正解値)を、サンプル色素Sの画像に対応付けることにより、教師データD2を作成する。教師データD2は、記憶装置6に格納される。
【0025】
機械学習装置7は、教師データD2に基づいて機械学習を行い、色素の溶液の画像を入力した場合に、当該色素の色価を出力する色価判定モデルD3を生成する。機械学習法は特に限定されないが、本実施形態では、機械学習装置7はディープラーニングによって機械学習を行う。色価判定モデルD3は、記憶装置6に格納され、さらに色価判定装置3に転送される。
【0026】
(色価判定装置)
図5は、色価判定装置3の機能を示すブロック図である。色価判定装置3は、汎用のコンピュータで構成することができ、ハードウェア構成として、CPUやGPUなどのプロセッサ(図示せず)、主記憶装置(図示せず)、補助記憶装置(図示せず)、およびマウス、キーボード、タッチパネルなどの入力装置(図示せず)を備えている。色価判定装置3では、プロセッサが補助記憶装置に記憶された各種プログラムを主記憶装置に読み出して実行することにより、各種演算処理を実行する。なお、色価判定装置3を複数の装置で構成してもよい。
【0027】
色価判定装置3は、色価判定モデルD3を用いて、色価が未知である対象色素Tの色価を判定する機能を有している。この機能を実現するために、色価判定装置3は、機能ブロックとして、第2画像取得部31と、第2画像処理部32と、色価取得部33と、色価提示部34とを備えている。
【0028】
色価判定装置3の上記機能ブロックは、本実施形態に係る色価判定プログラムを色価判定装置3のプロセッサが実行することにより実現される。色価判定プログラムは、通信ネットワークを介して色価判定装置3にダウンロードしてもよいし、色価判定プログラムを記録したCD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体を介して、色価判定プログラムを色価判定装置3に供給してもよい。
【0029】
第2画像取得部31は、カメラ4によって撮影された対象色素Tの溶液の画像を取得する。カメラ4の機種は、図2に示すカメラ4と同一であることが好ましい。対象色素Tの溶液の濃度は、図3に示すサンプル色素Sの溶液の濃度と同一であり、対象色素Tの溶液の撮影条件は、サンプル色素Sの溶液の画像の撮影条件と同一である。
【0030】
第2画像処理部32は、図2に示す第1画像処理部52と同一の機能を有している。すなわち、第2画像処理部32は、第2画像取得部31によって取得された画像から、対象色素Tの溶液部分に含まれる所定の領域をトリミングする。なお、第2画像取得部31によって取得された画像が、対象色素Tの溶液部分のみからなる場合は、第2画像処理部32を省略してもよい。
【0031】
色価取得部33は、対象色素Tの溶液の画像を色価判定モデルD3に入力して、対象色素Tの色価を取得する機能を有している。色価判定モデルD3は、色価判定モデル生成システム2において機械学習により生成された(すなわち、本実施形態に係る色価判定モデル生成方法によって生成された)学習済みモデルである。そのため、適切な機械学習を行うことにより、色価判定モデルD3は、対象色素Tの溶液の画像が入力されると、対象色素Tの正確な色価を出力することができる。
【0032】
色価取得部33によって取得された色価は色価提示部34に入力され、図示しないディスプレイ等に表示される。
【0033】
(処理手順)
図6は、本実施形態に係る色価判定モデル生成方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0034】
ステップS1では、図2に示すカメラ4がサンプル色素Sの溶液を撮影する。続いて、ステップS2(第1画像取得ステップ)では、教師データ生成装置5の第1画像取得部51が、色価の異なる複数のサンプル色素Sの溶液の画像をカメラ4から取得する。なお、図2では、1つのサンプル色素Sの溶液のみ示されている。続いて、ステップS3では、教師データ生成装置5の第1画像処理部52が、第1画像取得部51によって取得された画像に所定の加工を施す。
【0035】
ステップS4では、所定の色価測定法によりサンプル色素Sの色価を測定する。なお、ステップS4において取得される測定値は、所定の換算式により色価に換算される値(例えば、分光光度計の吸光度)であってもよい。本実施形態では「色価」とは、吸光度のような、色価に対応する値をも含むものとする。また、ステップS4を、ステップS1~S3の前に実施してもよい。
【0036】
続いて、ステップS5(教師データ生成ステップ)では、教師データ生成装置5の教師データ生成部53が、ステップS4によって測定されたサンプル色素Sの測定結果D1を、サンプル色素Sの画像に対応付けることにより、教師データD2を作成する。
【0037】
続いて、ステップS6(学習ステップ)では、機械学習装置7が教師データD2に基づいて機械学習を行う。これにより、色価判定モデルD3が生成される(ステップS7)。
【0038】
続いて、ステップS8において、色価判定モデルD3の判定精度を検証する。具体的には、ステップS1におけるものと同一の条件で撮影された、色価が既知である複数の検証用の色素の溶液の画像を入力し、色価判定モデルD3から出力された色価と実際の色価とを比較することにより、判定精度を検証する。判定精度が所定値(例えば、95%)未満である場合(ステップS8においてNO)、異なる種類のサンプル色素Sについて上記のステップS1~S7をさらに実施して、色価判定モデルD3を更新する。ステップS1~S7は、色価判定モデルD3の判定精度が所定値以上になる(ステップS8においてYES)まで繰り返される。
【0039】
図7は、本実施形態に係る色価判定方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0040】
ステップS11では、図5に示すカメラ4が対象色素Tの溶液を撮影する。続いて、ステップS12(第2画像取得ステップ)では、色価判定装置3の第2画像取得部31が、対象色素Tの溶液の画像をカメラ4から取得する。続いて、ステップS13では、色価判定装置3の第2画像処理部32が、第2画像取得部31によって取得された画像に所定の加工を施す。
【0041】
ステップS14では、色価判定装置3の色価取得部33が、対象色素Tの溶液の画像を色価判定モデルD3に入力する。これにより、ステップS15(色価取得ステップ)において、色価取得部33は、対象色素Tの色価を取得する。なお、色価判定モデルD3が、分光光度計の吸光度などの色価に対応する値を出力する場合、色価取得部33は、色価に対応する値を色価に換算することにより、対象色素Tの色価を取得してもよい。ステップS16(色価提示ステップ)では、色価判定装置3の色価提示部34が色価をディスプレイ等に表示する。
【0042】
(実施形態の総括)
以上のように、本実施形態では、機械学習によって生成された色価判定モデルを用いて、色素の溶液の画像から当該色素の色価を判定している。そのため、現行の色価測定法に比べ、大幅にユーザの負担を軽減することができる。
【0043】
例えば、10の対象色素の色価を測定する場合、現行の色価測定法では、対象色素の溶液の調整(約40分)、分光光度計による吸光度の測定(約5分)、データ記録(ノートに手書き)および調整器具(メスフラスコ、スポイト等)の洗浄・後片付け(約60分)に計100分もの時間を要する。
【0044】
これに対し、本実施形態では、対象色素の溶液は、希釈操作を行うことなく、所定量の色素を所定量の溶媒に溶かすだけで準備できるので、対象色素の溶液の調整および撮影に要する時間は約5分である。また、色価判定装置3における色価判定は30秒ほどしかかからず、色価のデータも色価判定装置3に自動的に保存することができる。また、調整器具が現行の色価測定法に用いられるものに比べ少ないため、短時間(約5分)で片付けることができる。このように、本実施形態における色素の色価判定の合計所要時間は約10分であり、現行の色価測定法に比べ約1/10に短縮することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【実施例0046】
以下の実施例では、本発明に係る色価判定方法による色価判定の精度について検証した。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0047】
図2および図5に示すカメラ4として、画素数4000×3000ピクセルのカメラを使用し、図3に示す照明装置9として、スガ試験機株式会社製の標準光源D65AC(https://www.sugatest.co.jp/productlist/%E6%A8%99%E6%BA%96%E5%85%89%E6%BA%90d65ac%E3%80%80d65a/)を使用した。カメラ4のレンズから容器Cまでの距離が28cmとなるように、光遮蔽部材で形成されたボックス8の内部にカメラ4および容器Cを載置した。カメラ4によって、4000のサンプル色素Sの溶液を撮影し、取得された画像を紫外可視近赤外分光光度計による色価測定結果と対応付けることにより、教師データD2を作成し、ディープラーニングによる機械学習を行った。
【0048】
機械学習によって生成された色価判定モデルD3を用いて、色価が既知の色素の色価を判定したところ、±5%以内の精度を達成した。
【符号の説明】
【0049】
1 色価判定システム
2 色価判定モデル生成システム
3 色価判定装置
31 第2画像取得部
32 第2画像処理部
33 色価取得部
34 色価提示部
4 カメラ
5 教師データ生成装置
51 第1画像取得部
52 第1画像処理部
53 教師データ生成部
6 記憶装置
7 機械学習装置
8 ボックス
9 照明装置
D1 測定結果
D2 教師データ
D3 色価判定モデル
S サンプル色素
T 対象色素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7