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特開2022-92853浸水対策構造、浸水対策方法および浸水対策構造の設置方法
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  • 特開-浸水対策構造、浸水対策方法および浸水対策構造の設置方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092853
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】浸水対策構造、浸水対策方法および浸水対策構造の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20220616BHJP
   E04B 1/64 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E04B1/64 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205805
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】前川 敏晴
【テーマコード(参考)】
2E001
2E139
【Fターム(参考)】
2E001DA02
2E139AA07
2E139AC19
(57)【要約】
【課題】簡便で容易に設置できる構造で浸水被害を抑えることができる浸水対策構造、浸水対策方法および浸水対策構造の設置方法を提供する。
【解決手段】浸水対策構造1は、建物11の開口部151の下方または建物11の内部12における開口部151と隣接する位置に設けられ、建物11の内部12と連通し集水可能な集水部2と、集水部2に集水された水を汲み上げて建物11の外部13に排出する排水部3と、を有する。浸水対策方法は、建物11の開口部151の下方または建物11の内部12における開口部151と隣接する位置に集水可能な集水部2を設け、建物11の内部12に浸水した水を集水部2に集水して、集水部2に集水された水を汲み上げて建物11の外部13に排出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部の下方または前記建物の内部における前記開口部と隣接する位置に設けられ、前記建物の内部と連通し集水可能な集水部と、
前記集水部に集水された水を汲み上げて前記建物の外部に排出する排水部と、を有する浸水対策構造。
【請求項2】
前記排水部は、前記集水部に集水された水の水位が所定の高さに達すると前記集水部に集水された水を排出し、所定の高さよりも低くなると前記集水部に集水された水の排出を停止する請求項1に記載の浸水対策構造。
【請求項3】
前記排水部は、前記集水部に集水された水の水位が前記集水部の上端に達すると前記集水部に集水された水を排出し、前記集水部の上端よりも低くなると前記集水部に集水された水の排出を停止する請求項2に記載の浸水対策構造。
【請求項4】
前記集水部は、前記建物の内部の床に設けられた集水部用孔部に設けられ、
前記集水部用孔部および前記集水部は、上下方向に延びる円筒状である請求項1~3のいずれか一項に記載の浸水対策構造。
【請求項5】
前記集水部の上端部に着脱可能な蓋を有する請求項1~4のいずれか一項に記載の浸水対策構造。
【請求項6】
前記集水部は、前記建物の1階床面より下方の土間である請求項1~3のいずれか一項に記載の浸水対策構造。
【請求項7】
建物の開口部の下方または前記建物の内部における前記開口部と隣接する位置に集水可能な集水部を設け、
前記建物の内部に浸水した水を前記集水部に集水して、前記集水部に集水された水を汲み上げて前記建物の外部に排出する浸水対策方法。
【請求項8】
既存の建物の内部における前記建物の開口部と隣接する位置に前記建物の内部と連通する集水部用孔部を形成する孔部形成工程と、
前記集水部用孔部に前記建物の内部と連通し集水可能な集水部を設置する集水部設置工程と、
前記集水部に集水された水を汲み上げて前記建物の外部に排出するための排水管を前記建物の外部に引き出すための排水管用孔部を前記建物の壁に形成する排水管用孔部形成工程と、を有する浸水対策構造の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸水対策構造、浸水対策方法および浸水対策構造の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
豪雨による浸水対策として、床下にポンプを設置し、床下浸水により床下に集水された水をポンプで排出する浸水対策が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、開口部に止水性の高い建具を設けて床上浸水を防止する浸水対策も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-32126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、床下にポンプを設置する浸水対策では、床下の構造が複雑になるとともに、既存の建物への設置が煩雑な工事となる。また、止水性の高い建具であっても、長時間にわたって完全に止水することは困難である。
【0005】
そこで、本発明は、簡便で容易に設置できる構造で浸水被害を抑えることができる浸水対策構造、浸水対策方法および浸水対策構造の設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る浸水対策構造は、建物の開口部の下方または前記建物の内部における前記開口部と隣接する位置に設けられ、前記建物の内部と連通し集水可能な集水部と、前記集水部に集水された水を汲み上げて前記建物の外部に排出する排水部と、を有する。
【0007】
本発明に係る浸水対策方法は、建物の開口部の下方または前記建物の内部における前記開口部と隣接する位置に集水可能な集水部を設け、前記建物の内部に浸水した水を前記集水部に集水して、前記集水部に集水された水を汲み上げて前記建物の外部に排出する。
【0008】
本発明では、豪雨などにより、例えば、建物の開口部と開口部に設けられた建具の隙間から建物の内部への浸水が生じたとしても、浸水した水を集水部に集水して、排水部によって建物の外部に排出することができる。本発明では、このような簡便な構造で浸水被害を抑えることができる。また、集水部が開口部と隣接する位置に設けられていることにより、浸水した水をすぐに外部に排出することができる。このため、浸水が建物の中心部分に達することを抑えることができる。更に、本発明に係る浸水対策構造は、簡便な構造であるため、容易に設置することができる。
【0009】
また、本発明に係る浸水対策構造では、前記排水部は、前記集水部に集水された水の水位が所定の高さに達すると前記集水部に集水された水を排出し、所定の高さよりも低くなると前記集水部に集水された水の排出を停止するようにしてもよい。
【0010】
このような構成とすることにより、排水部を常に稼働させる必要が無く、電力の消費を抑えることができる。例えば、停電時にバッテリーなどによって排水部を稼働させる場合に、電力の消費を抑えて効率的に排水を行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る浸水対策構造では、前記排水部は、前記集水部に集水された水の水位が前記集水部の上端に達すると前記集水部に集水された水を排出し、前記集水部の上端よりも低くなると前記集水部に集水された水の排出を停止するようにしてもよい。
【0012】
このような構成とすることにより、集水部から水が溢れることを防止できる。
【0013】
また、本発明に係る浸水対策構造では、前記集水部は、前記建物の内部の床に設けられた集水部用孔部に設けられ、前記集水部用孔部および前記集水部は、上下方向に延びる円筒状であってもよい。
【0014】
集水部用孔部が円筒状であることにより、角筒状の孔部と比べて、建物の内部の床に集水部用孔部を形成しやすい。特に、既存の床に集水部用孔部を設けるために穿孔を行う場合に、集水部用孔部を形成しやすい。
【0015】
また、本発明に係る浸水対策構造では、前記集水部の上端部に着脱可能な蓋を有していてもよい。
【0016】
このような構成とすることにより、通常時には集水部を塞ぐことができる。集水部が建物の床に設けられている場合は、蓋の上も床と同等に使用することができる。
【0017】
また、本発明に係る浸水対策構造では、前記集水部は、前記建物の1階床面より下方の土間であってもよい。
【0018】
このようにすることで、集水部用孔部が不要となり、簡易な構成とすることができる。
【0019】
本発明に係る浸水対策構造の設置方法では、既存の建物の内部における前記建物の開口部と隣接する位置に前記建物の内部と連通する集水部用孔部を形成する孔部形成工程と、前記集水部用孔部に前記建物の内部と連通し集水可能な集水部を設置する集水部設置工程と、前記集水部に集水された水を汲み上げて前記建物の外部に排出するための排水管を前記建物の外部に引き出すための排水管用孔部を前記建物の壁に形成する排水管用孔部形成工程と、を有する。
【0020】
本発明では、既存の建物に対して集水部用孔部を形成して集水部を設置し、排水管用孔部を形成することにより、既存の建物に対して浸水対策構造を容易に設置することができ、浸水被害を抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡便で容易に設置できる構造で浸水被害を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態による浸水対策構造の斜視図である。
図2図1の縦断面図である。
図3】集水部および排水部の斜視図である。
図4】第2実施形態による浸水対策構造の斜視図である。
図5】第3実施形態による浸水対策構造の斜視図である。
図6】第4実施形態による浸水対策構造の斜視図である。
図7】第5実施形態による浸水対策構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による浸水対策構造1、浸水対策方法および浸水対策構造の設置方法について、図1図3に基づいて説明する。
【0024】
(浸水対策構造1)
図1および図2に示すように、第1実施形態による浸水対策構造1は、豪雨などで建物11の内部12に浸水した水を建物11の外部13に排出するように構成されている。浸水対策構造1は、建物11の内部12の床153に設けられ集水可能な集水部2と、集水部2に集水された水を汲み上げて建物11の外部13に排出する排水部3と、を有している。
【0025】
集水部2は、建物11の1階にある玄関15の開口部151に隣接して設けられている。玄関15の開口部151とは、玄関15の出入口で、玄関ドア152(建具)が設けられている。玄関15の床153は、コンクリートなどで形成されている。玄関15の床153は、居室16の床163よりも低い位置に設けられている。集水部2は、円筒状のピットで、玄関15の床153に形成された円筒状の集水部用孔部4にはめ込まれている。集水部2には、例えば、円筒状の容器が用いられる。集水部用孔部4は、上方に開口する凹部である。集水部2の上端部21は、玄関15の床153の高さに位置している。集水部2の寸法は、例えば、径が100mmで、深さが100mmから300mmである。なお、集水部2の寸法は、上記に限定されない。集水部2の上端部21には、蓋(不図示)を着脱可能である。蓋は、例えば、目皿のように孔部や溝部が形成されていてもよいし、孔部や溝部のない形態であってもよい。
【0026】
図1図3に示すように、排水部3は、集水部2に集水された水を汲み上げるポンプ31と、一方の端部がポンプ31に接続され他方の端部が建物11の外部13に引き出される排水管32と、を有している。ポンプ31は、集水部2の内部または玄関15の床153に設置される。図1図2では、ポンプ31は、集水部2の内部に設置されている。排水管32は、玄関15の壁154に形成された排水管用孔部5を通って外部に引き出されている。排水管用孔部5は、玄関15の天井155付近の高さに設けられている(図2参照)。排水管32は、ポンプ31から玄関15の壁154を沿って排水管用孔部5まで上方に延びて他方の端部が排水管用孔部5を通って建物11の外部13に引き出されている。ポンプ31は、電動式であり、バッテリーで稼働させることも可能である。
【0027】
排水部3は、集水部2の水を排水する使用時に集水部2および排水管用孔部5に設置し、不使用時(通常時)には、別の場所に収納できるように構成されていてもよい。排水管用孔部5には、不使用時に蓋が設けられていてもよい。
【0028】
(浸水対策方法)
本実施形態による浸水対策方法について説明する。豪雨などにより、例えば、玄関ドア152と開口部151との隙間から建物11の内部12への浸水が生じた場合、浸水した水を集水部2に溜める。集水部2を塞ぐように蓋が設置されている場合には、蓋を外して集水部2に水を溜める。続いて、集水部2にポンプ31を設置するとともに、排水管32を設置して排水管32を排水管用孔部5から外部に引き出す。ポンプ31を稼働させて集水部2に集水された水を排水管32から建物11の外部13に排出する。
【0029】
ポンプ31は、集水部2に集水された水の水位が所定の高さを超えると稼働し、所定の高さ以下となると停止するように設定されていてもよい。例えば、集水部2に集水された水の水位が集水部2の上端部21の高さに達すると稼働し、集水部2の上端部21の高さよりも低くなると停止するように設定されていてもよい。ポンプ31がこのように設定されていると、集水部2に集水された水が集水部2から溢れそうになるとポンプ31によって建物11の外部13に排出される。
【0030】
(浸水対策構造の設置方法)
本実施形態による浸水対策構造1を既存の建物11に設置する浸水対策構造の設置方法について説明する。まず、玄関15の床153に集水部2を設置するための集水部用孔部4を形成する(集水部用孔部形成工程)。孔部形成工程では、上方に開口する円筒状の孔部を、玄関15の開口部151に隣接して形成する。続いて、孔部に集水部2を設置する(集水部設置工程)。孔部形成工程および集水部設置工程と前後して、玄関15の壁に排水管用孔部5を形成する(排水管用孔部形成工程)。
【0031】
なお、本実施形態による浸水対策構造1を建物11の構築時に合わせて設置する場合には、玄関15の床153の施工時に集水部用孔部4を形成し、壁の製作時または施工時に排水管用孔部5を形成する。
【0032】
第1実施形態による浸水対策構造1および浸水対策方法では、豪雨などにより、例えば、建物11の開口部151と開口部151に設けられた玄関ドア152の隙間から建物11の内部12への浸水が生じたとしても、浸水した水を集水部2に集水して、排水部3によって建物11の外部13に排出することができる。本実施形態では、このような簡便な構造で浸水被害を抑えることができる。また、集水部2が開口部151と隣接する位置に設けられていることにより、浸水した水をすぐに外部に排出することができる。このため、浸水が建物11の中心部分に達することを抑えることができる。更に、本実施形態による浸水対策構造1は、簡便な構造であるため、容易に設置することができる。
【0033】
また、第1実施形態による浸水対策構造1では、排水部3のポンプ31は、集水部2に集水された水の水位が集水部2の上端部21に達すると集水部2に集水された水を排出し、集水部2の上端部21よりも低くなると集水部2に集水された水の排出を停止している。このような構成とすることにより、集水部2から水が溢れることを防止できる。また、ポンプ31を常に稼働させる必要が無く、電力の消費を抑えることができる。例えば、停電時にバッテリーなどによってポンプ31を稼働させる場合に、電力の消費を抑えて効率的に排水を行うことができる。このような構成とすることにより、ポンプ31を常に稼働させる必要が無く、電力の消費を抑えることができる。例えば、停電時にバッテリーなどによってポンプ31を稼働させる場合に、電力の消費を抑えて効率的に排水を行うことができる。
【0034】
また、第1実施形態による浸水対策構造1では、集水部用孔部4が円筒状であることにより、角筒状の孔部と比べて、建物11の内部12の床153に集水部用孔部4を形成しやすい。特に、既存の床に集水部用孔部4を設けるために穿孔を行う場合に、集水部用孔部4を形成しやすい。
【0035】
また、第1実施形態による浸水対策構造1では、集水部2の上端部21に着脱可能な蓋が設けられている。このような構成とすることにより、通常時には集水部2を塞ぐことができる。本実施形態では、集水部2が玄関15の床153に設けられているため、通常時には蓋の上も床153と同等に使用することができる。
【0036】
また、第1実施形態による浸水対策構造の設置方法は、既存の建物11に対して集水部用孔部4を形成して集水部2を設置し、排水管用孔部5を形成することにより既存の建物11に対して浸水対策構造1を容易に設置することができる。
【0037】
(他の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0038】
(第2実施形態)
図4に示すように、第2実施形態による浸水対策構造1Bは、第1実施形態と同様に建物11の内部12の床163に設けられ集水可能な集水部2Bと、集水部2Bに集水された水を汲み上げて建物11の外部13に排出する排水部3と、を有している。
【0039】
集水部2Bは、建物11の1階にある居室16の開口部161に隣接して設けられている。居室16の開口部161には、下端部が居室16の床163の高さとなるサッシ162(掃き出しサッシ、建具)が設けられている。集水部2Bは、円筒状の容器で、居室16の床163に形成された円筒状の集水部用孔部4Bにはめ込まれている。サッシ162の下枠9には、室内側で集水部用孔部4Bと隣接する部分に切り欠き部91が形成されている。下枠9に形成された溝部92の内部と集水部用孔部4Bとは、切り欠き部91を介して連通している。集水部用孔部4は、溝部92の底部93よりも下方に延びている。集水部用孔部4Bに設置された集水部2Bは、切り欠き部91を介して溝部92の内部と連通している。集水部2Bの上端部21は、居室16の床163の高さに位置している。集水部2Bの上端部21は、溝部92の底部93よりも下方に位置している。第2実施形態においても集水部2Bの上端部21には、蓋6を着脱可能である。第2実施形態では、排水管用孔部(不図示)は、居室16の天井付近の高さに位置している。
【0040】
第2実施形態では、豪雨などにより、建物11の内部12への浸水が生じた場合、浸水した水がサッシ162の溝部92に流れ込み、切り欠き部91を介して集水部2に流れ込む。続いて、集水部2Bにポンプ31を設置するとともに、排水管32を設置して排水管32を排水管用孔部5から外部に引き出す。ポンプ31を稼働させて集水部2Bに集水された水を排水管32から建物11の外部13に排出する。
【0041】
第2実施形態による浸水対策構造1Bでは、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第2実施形態による浸水対策構造1Bでは、サッシ162の下枠9の溝部92に集水された水が集水部2Bに流れるため、溝部92に溜まった水が居室16の床163に直接流れることを防止できる。
【0042】
(第3実施形態)
図5に示すように、第3実施形態による浸水対策構造1Cは、第2実施形態と同様の建物11の内部12の床163に設けられ集水可能な集水部2Cと、集水部2Cに集水された水を汲み上げて建物11の外部13に排出する排水部3と、を有している。第3実施形態では、サッシ162の下枠9と集水部2Cとの間に集水用溝部23を有する集水用溝部材24が設けられている。集水用溝部材24は、断面形状がU字形状の長尺の部材である。集水用溝部材24は、集水用溝部23が上方に開口しサッシ162の下枠9と同じ方向に延びる向きで、サッシ162の下枠9に隣接して設けられている。集水用溝部23の上端部231は、サッシ162の下枠9の上端部94と同じ高さに配置されている。第3実施形態では、サッシ162の下枠9に切り欠き部が形成されていない。集水用溝部材24には、室内側で集水部用孔部4と隣接する部分に切り欠き部241が形成されている。集水用溝部23の内部と集水部用孔部4とは、切り欠き部241を介して連通している。集水用溝部23の上部には、例えばグレーチングのような多数の溝部が形成された蓋232が設けられている。
【0043】
第3実施形態では、豪雨などにより、建物11の内部12への浸水が生じた場合、浸水した水がサッシ162の溝部92に流れ込み、サッシ162の溝部92から溢れると、集水用溝部23に流れ込む。集水用溝部23に流れ込んだ水は、切り欠き部241を介して集水部2Cに流れ込む。続いて、集水部2Cにポンプ31を設置するとともに、排水管32を設置して排水管32を排水管用孔部5から外部に引き出す。ポンプ31を稼働させて集水部2Cに集水された水を排水管32から建物11の外部13に排出する。
【0044】
第3実施形態による浸水対策構造1Cでは、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第3実施形態による浸水対策構造1Cでは、サッシ162の下枠9の溝部92に集水された水が集水用溝部23に流れ、集水用溝部23から集水部2Cに流れるため、サッシ162の下枠9の溝部92に溜まった水が居室16の床163に直接流れることを防止できる。
【0045】
(第4実施形態)
図6に示すように、第4実施形態による浸水対策構造1Dは、上記の実施形態と同様に建物11の内部12の床163に設けられ集水可能な集水部2Dと、集水部2Dに集水された水を汲み上げて建物11の外部13に排出する排水部3と、を有している。
【0046】
集水部2Dは、建物11の1階にある居室16の開口部161に隣接して設けられている。居室16の開口部161には、下端部が居室16の床163の高さとなるサッシ162(掃き出しサッシ)が設けられている。集水部2Dは、居室16の床163の上に設けられている。第4実施形態では、使用時に集水部形成部材7を設置することにより、集水部2Dを設けることができる。通常時には、集水部形成部材7は、収納することができる。以下では、集水部形成部材7が使用時に設置される姿勢であるものとする。
【0047】
集水部形成部材7は、サッシ162の下枠9の上に下枠9が延びる方向(幅方向とする)に間隔をあけて設けられる第1板部71および第2板部72と、第1板部71と第2板部72との間に設けられるU字形部73と、を有している。
【0048】
第1板部71および第2板部72は平板状に形成され、板面がサッシ162に対向する向きに配置される。第1板部71および第2板部72は、サッシ162の下枠9の溝部92を形成する室内側の側板部95に沿って配置されている。第1板部71および第2板部72の居室16側の面は、側板部95のサッシ162側の面と接触している。第1板部71および第2板部72の下端部は、側板部95の上端部よりも下方に配置されている。第1板部71と第2板部72とは、第1板部71が幅方向の一方側に配置され、第2板部72が幅方向の他方側に配置されている。第1板部71の幅方向の他方側の端部712と、第2板部72の幅方向の一方側の端部712とは、幅方向に間隔をあけて配置されている。第1板部71は、幅方向の一方側の端部711がサッシ162の一対の縦枠のうちの幅方向の一方側の縦枠96と接触するように配置される。第2板部72は、幅方向の他方側の端部がサッシ162の一対の縦枠のうちの幅方向の他方側の縦枠と接触するように配置される。
【0049】
U字形部73は、断面形状がU字形状の部材で、U字形の開口が室外側を向く姿勢で第1板部71と第2板部72との間に配置される。U字形部73の下端部731は、床163と接している。U字形部73の一方側の端部732は、第1板部71の幅方向の他方側の端部712と接続されている。U字形部73の幅方向の他方側の端部733は、第2板部72の幅方向の一方側の端部721と接続されている。集水部形成部材7とサッシ162との間の空部が集水部2Dとなっている。
【0050】
第4実施形態では、豪雨などにより、建物11の内部12への浸水が生じる場合には、集水部形成部材7をサッシ162に隣接して設置するとともに、集水部形成部材7とサッシ162との間の空部(集水部2D)に排水部3を設置する。建物11の内部12へ浸水した水がサッシ162の溝部92に流れ込み、その水位が床163の高さとなると、集水部2Dに水が溜まる。集水部2Dに水が溜まったら、ポンプ31を稼働させて集水部2Dに集水された水を排水管32から建物11の外部13に排出する。
【0051】
第4実施形態による浸水対策構造1Dでは、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第4実施形態による浸水対策構造1Dでは、床163に集水部2Dを設置するための集水部用孔部を設ける必要がないため、既存の建物11にも容易に設置することができる。
【0052】
(第5実施形態)
図7に示すように、第5実施形態による浸水対策構造1Eは、建物11の内部12の床下に設けられ集水可能な集水部2Eと、集水部2Eに集水された水を汲み上げて建物11の外部13に排出する排水部3と、を有している。
【0053】
集水部2Eは、建物11の1階にある居室16の開口部161の下方に設けられている。居室16の開口部161には、下端部が居室16の床163の高さとなるサッシ162(掃き出しサッシ)が設けられている。集水部2Eは、サッシ162の下枠9の下方に設けられている。サッシ162の下枠9には、集水部2Eの上方となる位置に孔部が形成されている。集水部2Eは、床下に設置され、サッシ162の下枠9に形成された孔部97に接続される接続ホース8を流れた水が流れ込むように構成されている。孔部97は、サッシ162の下枠9における溝部92の底部93に設けられている。通常時には孔部97に蓋が設けられていてもよい。
【0054】
第5実施形態では、豪雨などにより、建物11の内部12への浸水が生じた場合、浸水した水がサッシ162の溝部92に流れ込み、接続ホース8を介して集水部2Eに流れ込む。続いて、集水部2Eにポンプ31を設置するとともに、排水管32を設置して排水管32を床下から外部に引き出す。ポンプ31を稼働させて集水部2Eに集水された水を排水管32から建物11の外部13に排出する。
【0055】
第5実施形態による浸水対策構造1Eでは、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第5実施形態による浸水対策構造1Eでは、床下に設置するため、通常に露出せず居室16の意匠性を損ねることが無い。
【0056】
以上、本発明による浸水対策構造、浸水対策方法および浸水対策構造の設置方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記の第1実施形態では、玄関15の床153に集水部2を設けているが、第1実施形態と同様の集水部2を居室16の床163に設けてもよい。その際に、サッシ162の下枠9に切り欠き部91を設けたり、サッシ162の下枠9に隣接して集水用溝部23を設けたりしなくてもよい。また、第2~5実施形態と同様の集水部2を、玄関15の床153に設けてもよい。また、浸水対策構造1は、既設の建物11および新設の建物11のいずれに設けてもよい。
【0057】
また、上記の実施形態では、排水部3のポンプ31は、集水部2に集水された水の水位が集水部2の上端に達すると集水部2に集水された水を排出し、集水部2の上端よりも低くなると集水部2に集水された水の排出を停止している。これに対し、ポンプ31は、集水部2に集水された水の水位が所定の高さに達すると集水部2に集水された水を排出し、所定の高さよりも低くなると集水部2に集水された水の排出を停止するようにしてもよい。また、ポンプ31は、使用者の任意のタイミングで稼働、停止できるようにしてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、集水部用孔部4および集水部2が円筒状である。これに対し、集水部用孔部4および集水部2は、箱状など円筒以外の形状であってもよい。
【0059】
また、上記の実施形態では、集水部2の上端部21に着脱可能な蓋6が設けられている。集水部2の上端部21には蓋6が設けられなくてもよいし、蓋6が設けられる場合は、蓋6の形態は、上記以外であってもよい。
【0060】
また、上記の実施形態では、集水部2は、例えば円筒状の容器などで、建物11の1階にある玄関15の床153に形成された円筒状の集水部用孔部4にはめ込まれている。これに対して、玄関15など1階床面より下方に土間を有する場合には、集水部用孔部4を設けず、土間部分を集水するための集水部2としてもよい。このような場合は、例えば、土間床面に直接ポンプ31(排水部3)を設置して、土間部分から水が溢れないように汲み上げるようにする。このようにすることで、集水部用孔部4が不要となり、簡易な構成とすることができる。
【符号の説明】
【0061】
1,1B-1E 浸水対策構造
2,2B-2E 集水部
3 排水部
4,4B 集水部用孔部
5 排水管用孔部
6 蓋
11 建物
12 内部
13 外部
21 上端部
32 排水管
151,161 開口部
153,163 床
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7