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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092863
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】分離システム
(51)【国際特許分類】
   B04C 11/00 20060101AFI20220616BHJP
   B04C 5/04 20060101ALI20220616BHJP
   B04C 5/081 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B04C11/00
B04C5/04
B04C5/081
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205825
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000226002
【氏名又は名称】株式会社ニクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】大崎 荘一郎
(72)【発明者】
【氏名】武石 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】入澤 勇人
【テーマコード(参考)】
4D053
【Fターム(参考)】
4D053AA03
4D053AB04
4D053BA01
4D053BB02
4D053BC01
4D053BD04
4D053CA01
4D053CG01
4D053CG09
(57)【要約】
【課題】運用性を向上することができる分離システムを提供する。
【解決手段】分離システム100は、集合物形成容器全体の容積が集合物で満たされた場合、運用できなくなる。そのため、集合物形成容器の容積の中で、既に形成された集合物がどの程度の割合を占めているかを把握できることが重要となる。これに対し、システム稼働中の集合物形成容器3は液成分の中に固形分が舞い上がっている状態もあるため、集合物50の容積を検出することは難しい。前述のように、分離システム100は、検出部4にて集合物の大きさを示すパラメータとして集合物50の質量を正確に検出する。このように検出部4によって検出された集合物50の質量は、分離システム100の運用を行う上での有効な情報として利用することが可能となる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を液体と固形分とに分離する分離部と、
前記分離部にて分離された前記固形分を堆積させることによって前記固形分の集合物を形成する集合物形成容器と、
前記集合物形成容器で形成された前記集合物の質量を検出する検出部と、を備える、分離システム。
【請求項2】
前記集合物の質量が所定の判定値を超えたか否かを判定する判定部と、を更に備える、請求項1に記載の分離システム。
【請求項3】
前記判定部は、液成分の比重、及び集合物成分の比重に基づいて設定された前記判定値を用いて、判定を行う、請求項2に記載の分離システム。
【請求項4】
前記判定部は、上限判定値、及び当該上限判定値よりも大きい過上限判定値を用いて、判定を行う、請求項2又は3に記載の分離システム。
【請求項5】
前記検出部での検出結果は、所定の処理部へフィードバックされる、請求項1~4の何れか一項に記載の分離システム。
【請求項6】
前記検出部での検出結果は、情報蓄積される、請求項1~5の何れか一項に記載の分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、処理液を液体と固形分とに分離する分離部を備えた分離システムが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の分離システムは、分離部に供給された処理液を遠心力によって液体と固形分とで分離し、分離された固形分を多く含む濃縮液を外部へ排出し、固形分が除去された液体を清澄液として外部へ排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-189985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、分離システムでは、分離部にて分離された固形分を堆積させることによって固形分の集合物を容器内で形成する場合がある。このような固形分の集合物は、ある程度の大きさになったら容器から外部へ出す必要があるものである。その一方、集合物は、フロート式のセンサなどを用いて液面を検出するような物とは異なり、容易に界面を検出できるようなものではない。従って、作業者が容器内の集合物の様子を見て監視するか、監視を行わずにおおよその時間間隔で作業者が集合物を取り出すような運用が採用される。しかしながら、作業者が監視を行う場合は手間が増えてしまい、監視を行わない場合はシステムの管理性が低下する場合があった。従って、分離システムの運用性を向上させることが求められていた。
【0005】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、運用性を向上することができる分離システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る分離システムは、処理液を液体と固形分とに分離する分離部と、分離部にて分離された固形分を堆積させることによって固形分の集合物を形成する集合物形成容器と、集合物形成容器で形成された集合物の質量を検出する検出部と、を備える。
【0007】
分離システムは、分離部にて分離された固形分を堆積させることによって固形分の集合物を形成する集合物形成容器を備えている。従って、集合物形成容器は、固形分を堆積させて集合させることで集合物を形成することができる。ここで、分離システムは、集合物形成容器全体の容積が集合物で満たされた場合、運用できなくなる。そのため、集合物形成容器の容積の中で、既に形成された集合物がどの程度の割合を占めているかを把握できることが重要となる。これに対し、システム稼働中の集合物形成容器は液成分の中に固形分が舞い上がっている状態もあるため、集合物の容積を検出することは難しい。従って、本発明の分離システムは、集合物形成容器で形成された集合物の質量を検出する検出部を備えている。これにより、分離システムは、検出部にて集合物の大きさを示すパラメータとして集合物の質量を正確に検出する。このように検出部によって検出された集合物の質量は、分離システムの運用を行う上での有効な情報として利用することが可能となる。以上より、分離システムの運用性を向上することができる。
【0008】
分離システムは、集合物の質量が所定の判定値を超えたか否かを判定する判定部と、を更に備えてよい。これにより、判定部の判定結果に基づいて、分離システムの適切な運用のための措置を図ることができる。
【0009】
判定部は、液成分の比重、及び集合物成分の比重に基づいて設定された判定値を用いて、判定を行ってよい。これにより、判定部は、集合物の容積を質量に換算した状態で、検出結果と判定値との比較を行うことができる。従って、判定部は、分離システムの分離性能を正確に判定することができる。
【0010】
判定部は、上限判定値、及び当該上限判定値よりも大きい過上限判定値を用いて、判定を行ってよい。これにより、集合物形成容器内の集合物が増えてきたときに、段階的に注意喚起や警告等を行うことが可能となる。
【0011】
検出部での検出結果は、所定の処理部へフィードバックされてよい。これにより、検出部での検出結果を所定の処理部において有効に活用することができる。
【0012】
検出部での検出結果は、情報蓄積されてよい。これにより、蓄積しておいた検出部での検出結果を有効に活用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、運用性を向上することができる分離システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る分離システムのシステム構成を示すブロック図である。
図2】(a)~(c)は液体中の固形分の様子を示す模式図であり、(d),(e)は大気中での集合物の様子を示す模式図である。
図3】分離システムの詳細な構成の一例を示す概略構成図である。
図4】(a)は、集合物形成容器の断面図であり、(b)は、集合物形成容器に設けられた排出機構の一例を示す図である。
図5】演算装置の構成を示すブロック構成図である。
図6】集合物形成容器の液成分と集合物成分の容積の割合を示すモデルである。
図7】分離システムの制御処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る分離システム100のシステム構成を示すブロック図である。分離システム100は、供給源1と、分離部2と、集合物形成容器3と、検出部4と、を備える。
【0017】
供給源1は、分離対象となる処理液を分離部2へ供給する。処理液は、所定濃度以上の固形分を含む液体である。供給源1は、このような処理液の発生源、又は当該処理液を貯留する槽などによって構成される。また、供給源1は、処理液を圧送するポンプ等を備える。供給源1は、ラインL1を介して分離部2へ処理液を供給する。
【0018】
分離部2は、処理液を液体と固形分とに分離する。分離部2は、固形分を除去された液体を清澄液としてラインL2へ流す。清澄液は、少なくとも処理液よりも固形分の濃度が低い液体である。清澄液は、所定の用途で用いられる。分離部2は、分離された固形分をラインL3を介して集合物形成容器3へ供給する。
【0019】
集合物形成容器3は、分離部2にて分離された固形分を堆積させることによって固形分の集合物50を形成する。集合物形成容器3は、ラインL3から順次供給される固形分を容器内で堆積させてゆくことで、固形分を集合させることで、集合物50を形成する。集合物50は、所定の大きさになった段階で、集合物形成容器3から外部へ取り出される。
【0020】
検出部4は、集合物形成容器3で形成された集合物50の大きさを検出する。検出部4は、所定の情報を計測することによって、集合物50がどの程度の大きさとなったかを検出するものである。検出部4は、集合物50の質量を計測する。
【0021】
具体的に、検出部4は、演算装置5及び計測器6によって構成される。演算装置5は、分離システム100内における各種情報処理を行う装置である。計測器6は、集合物形成容器3内で形成されている集合物50の大きさを検出するための情報を計測する機器である。なお、図1では便宜上、計測器6が集合物形成容器3に設けられている様子が示されているが、計測器6が設けられる位置は特に限定されない。演算装置5は、計測器6の計測結果を用いて、集合物形成容器3内の集合物50の大きさがどの程度の大きさであるかを演算する。
【0022】
図2を参照して、本明細書で用いられる「固形分」及び「集合物」について更に詳細に説明する。図2(a)~(c)は液体52中の固形分51の様子を示す模式図であり、図2(d),(e)は大気中での集合物50の様子を示す模式図である。
【0023】
図2(a)に示すように、本明細書において、固形分51とは、処理液54の中で固体として存在している成分のことである。処理液54の中で液体成分として存在しているものが液体52に該当する。液体52の中を漂っている粉体、粒子、繊維状物又はそれらが凝集したものなどの微少な固体が、固形分51に該当する。固形分51は、液体52中に拡散された状態で存在している。処理液54が配管を流れる時や後述のサイクロン分離器15で旋回する時は、固形分51は、液体52の流れと共に配管内やサイクロン分離器15内を流れる。なお、図2(b)に示すように、分離部2で分離された後のラインL3や集合物形成容器3の内部では、液体52の中に固形分51が処理液54に比して多く存在している。このような状態の液を濃縮液55と称する場合がある。処理液54の具体的な例として、工作機械で用いられる液、洗浄装置の循環(洗浄)液などが挙げられる。液体52として、水、クーラント液、洗浄液などが挙げられる。固形分51として、金属、セラミック、樹脂などが挙げられる。
【0024】
図2(c)に示すように、本明細書において、集合物50とは、固形分51が集合物形成容器3に堆積して集合することで、堆積物が所定の大きさを有する塊として形成されたものである。集合物50の中の各固形分51には、他の固形分51の重みや濃縮液55の圧力による圧縮力が作用する。これにより、集合物50では、各固形分51が互いに結合した状態となっている。図2(d)に示すように、集合物形成容器3から集合物50を外部へ排出した場合、集合物50は、大気中で形状を保つことができるように固化した状態のものであってもよい。または、図2(e)に示すように、集合物50は、大気中では流動性を有することで不定形な状態となったものであってもよい。すなわち、集合物50は、集合物形成容器3の中では、当該集合物形成容器3の形状に対応するような塊として存在しているが、集合物形成容器3から排出された後は、塊としての形状が崩れることなく形状保持されていてもよいし、集合物形成容器3内の形状が崩れてシャーベット状の塊となっていてもよい。集合物50が、排出時にどのような状態となるかは、集合物50を構成する固形分51や、集合物50に含まれる液体成分の量などによって変わってよく、特に限定されるものではない。なお、液体成分を含む集合物50は、集合物形成容器3の外部へ排出したときには、塊として固形分51が密集した状態が維持される。それに対し、濃縮液55内の固形分51は、集合物形成容器3から外部へ排出すると、液体52と共に拡散されて散らばってしまう。このように、液体成分を多く含む集合物50は、濃縮液55とは異なるものである。
【0025】
図3を参照して、分離システム100の詳細な構成について説明する。図3は、分離システム100の詳細な構成の一例を示す概略構成図である。図3に示すように、分離システム100は、分離部2及び集合物形成容器3がユニット化された分離ユニット10を有している。また、図3に示す分離システム100では、分離部2としてサイクロン分離器15が採用されている。分離ユニット10では、サイクロン分離器15が、筐体13の上端部によって支持されている。サイクロン分離器15の下端部は、筐体13の内部に収容されており、当該下端部にラインL3を構成する配管11A,11Bが接続されている。配管11Aと配管11Bとの間にはバルブ12が設けられる。下側の配管11Bの下端部には、集合物形成容器3が設けられている。
【0026】
筐体13は、サイクロン分離器15の下端部付近、配管11A,11B、バルブ12、及び集合物形成容器3を収容する箱体、又はフレーム体である。筐体13は、天井部13a、底部13b、及び側部13cを備えている。サイクロン分離器15、配管11A,11B、バルブ12、及び集合物形成容器3による構造物(以降、単に「構造物」と称した場合は、これらの構成要素の組み合わせに係る構造物を示すものとする)は、天井部13aによって支持されており、底部13b及び側部13cからは離間しており、且つ、支持部材などによって支持されていない。すなわち、構造物は、サイクロン分離器15の一部において天井部13aで支持されている以外の箇所では、宙に浮いた状態となっている。従って、構造物の質量によって発生する荷重は、天井部13aによる支持部に作用する。ただし、後述の重量センサ14Aによる計測を妨げない範囲の支持力であれば、構造物が底部13bや側部13cから延びる部材で支持されていてもよい。
【0027】
サイクロン分離器15は、処理液を旋回させながら、液体中から固形分を遠心分離して、分離された固形分を集合物形成容器3へ向かって沈殿させるものである。サイクロン分離器15として、公知のサイクロン式の分離器が採用されてよい。具体的に、サイクロン分離器15は、分離器本体15aと、内筒体15bと、を備える。分離器本体15aは、円筒形部の下側に逆円錐形部を一体形成したケーシングである。分離器本体15aの円筒形部には、ラインL1を構成する配管を接線方向に接続した入口部15cが形成されている。分離器本体15aの逆円錐形部の下端は開口しており、配管11Aに接続される。内筒体15bは、分離器本体15aの内部空間の中央位置に同心に配置された筒体である。内筒体15bの上端には、ラインL3を構成する配管を上下方向に接続した出口部15dが形成されている。
【0028】
サイクロン分離器15では、入口部15cから供給された処理液が、分離器本体15aの外周壁と内筒体15bとの間の空間を旋回する。旋回によって発生する遠心力により、固形分は液体中で分離が進み、外周側へ向かうことで逆円錐形部に沈殿し、当該逆円錐部に沿って下方へ進んで配管11Aへ導入される。バルブ12が開状態となっているときは、固形分は配管11A,11B内を沈殿して下方へ進み、集合物形成容器3へ導入される。一方、固形分を除去された液体は、清澄液として内筒体15b内へ案内され、出口部15dからラインL2へ供給される。
【0029】
集合物形成容器3の構成について、図4を参照して詳細に説明する。図4(a)は、集合物形成容器3の断面図である。図4(b)は、集合物形成容器3に設けられた排出機構35の一例を示す図である。図4(a)に示すように、集合物形成容器3は、内部空間を有する筒状の容器である。集合物形成容器3の形状は特に限定されず、円筒状の容器であってもよく、四角形等の多角形筒状の容器であってもよい。集合物形成容器3は、上端で内部空間を封止する上壁部31と、全周にわたって内部空間を取り囲む側壁部32と、下端で内部空間を封止する底壁部33と、を備える。側壁部32は、一定の断面形状で上下方向に真っ直ぐに延びる筒状の形状を有する。上壁部31及び底壁部33は、水平方向に平板状に広がる形状を有している。なお、少なくとも側壁部32は透明な材質によって構成されることで、内部空間の様子を外部から視覚的に確認できるような構造としてよい。
【0030】
上壁部31の中央位置には、貫通孔が形成され、当該貫通孔に配管11Bが同心状に接続されている。これにより、サイクロン分離器15の下端の開口部と、集合物形成容器3の内部空間とが、配管11A,11B及び上壁部31を介して上下方向に連通される。上壁部31は、配管11Bから着脱可能な態様で、当該配管11Bに取り付けられている。これにより、作業者は、集合物形成容器3を配管11Bから取り外すことができる。上壁部31には、配管11Bが接続された貫通孔以外の箇所には、集合物形成容器3の外部と連通する貫通孔は形成されておらず閉鎖された状態となっており、内部空間を封止する構造を有している。また、側壁部32及び底壁部33にも、集合物形成容器3の外部と連通する貫通孔は形成されておらず閉鎖された状態となっており、内部空間を封止する構造を有している。すなわち、集合物形成容器3には、濃縮液55を循環させるような循環系の配管や、濃縮液55を外部に排出させる排出系の配管などが接続されていない。なお、システムによってはサイクロン分離器の下方に、循環系や排出系の配管が接続されたスラッジポッドが設けられる場合はあるが、当該スラッジポッドは集合物を形成するという機能ではなく(仮に集合物を形成し、固化するような機能を有すると、詰まりが発生する為、濃縮を短時間的に行う)、集合物形成容器3とは異なるものである。
【0031】
集合物形成容器3の大きさについて説明する。集合物形成容器3の大きさは、内部に液体や集合物50が入っている状態でも、作業者が手で取り外して、手で持つことができる程度の大きさに設定されることが好ましい。従って、集合物形成容器3の内部空間の容積は、例えば1~2L程度であってよい。また、集合物形成容器3の内部空間の幅寸法D2(円筒の場合は内)は、配管11Bの内部空間の幅寸法D1よりも大きく設定されている。特に、集合物形成容器3の内部空間の幅寸法D2は、配管11Bの内部空間を拡大することで、集合物形成容器3に入り込んだ固形分51の流れの旋回成分を減少させることができるような大きさに設定されている。当該作用を得るための幅寸法D1,D2の大きさは、固形分及び液体の種類、流量などの各種条件によって適宜変更されるものであるため、特段限定されるものではないが、例えば、幅寸法D1は上部の接続口径と同じかそれ以上の径に設定されてよい。幅寸法D2は、旋回成分を減少させ、且つ、手で持てるサイズとするために100~120mm程度に設定されてよい。幅寸法D2の大きさは作業者が容易に清掃工具を使用して清掃できる内径サイズであることが好ましい。
【0032】
上述の様な構成を有する集合物形成容器3が集合物50を形成する様子について説明する。分離システム100を起動させると、集合物形成容器3の内部空間は液体で満たされた状態となる。そして、サイクロン分離器15で分離された固形分51は、配管11B内において濃縮液55中を沈殿しながら下降する。このとき、固形分51の流れには、サイクロン分離器15で作用した遠心力による旋回成分が残っている場合がある。配管11B内を沈殿した固形分51は、上壁部31の貫通孔を介して集合物形成容器3の内部空間に入る。このとき、固形分51が存在する内部空間の幅寸法が急激に拡大することで、固形分51の流れの旋回成分が減少する。これにより、集合物形成容器3内の濃縮液55が過度に旋回することを抑制できるため、集合物50の成長を促進できる。固形分51は、集合物形成容器3の内部空間内の濃縮液55中を沈殿しながら下降する。そして、固形分51が底壁部33の上面から順次堆積してゆく。これにより、集合物50が形成され、時間の経過と共に集合物50の大きさが増加する。なお、集合物形成容器3の内部空間のうち、集合物50の界面BLよりも上側の領域は濃縮液55で満たされた状態となっているが、当該濃縮液55は高濃度で固形分51が液体中に拡散されたものである。従って、濃縮液55と集合物50を区別することが難しく、レーザーセンサで界面BLを検出したり、容器外部から画像処理を行って界面BLを検出するなど、光学的な手段によっては、界面BLを検出することが困難である。
【0033】
図4(b)に示すように、集合物形成容器3には、当該集合物形成容器3から集合物50を排出する排出機構35が設けられている。排出機構35は、底壁部33を開放することで、集合物50を落下させる機構を備えている。例えば、排出機構35は、底壁部33と側壁部32との間の固定を解除する解除部36と、側壁部32に対して底壁部33を回動可能に支持するヒンジ部37と、を備える。これにより、底壁部33は、解除部36での固定を解除されることで、ヒンジ部37周りに回動する。従って、側壁部32の下端が開放されて、集合物50が集合物形成容器3から排出される。落下した集合物50は、容器60で受容される。
【0034】
図3を参照して、検出部4について説明する。本実施形態において、検出部4は、集合物50の質量の増加を計測することによって、集合物50の大きさを検出する。具体的には、検出部4は、計測器6として重量センサ14Aを備えている。そして、演算装置5は、重量センサ14Aの計測値に基づいて演算を行うことによって、集合物50の質量の増加を計測し、当該計測結果に基づいて、集合物50の大きさがどの程度であるかを検出する。
【0035】
重量センサ14Aは、筐体13の天井部13aと、サイクロン分離器15に設けられたフランジ部16との間に配置されている。前述のように、分離ユニット10の構造物の質量によって発生する荷重は、天井部13aによる支持部に作用する。従って、フランジ部16と天井部13aとの間に配置された重量センサ14Aは、分離ユニット10の構造物の質量を計測することができる。ここで、分離システム100の運転時間の経過に従って、構造物自体の質量は変化しないが、集合物50の質量は順次大きくなる。従って、重量センサ14Aによって計測される質量は、集合物50の質量の増加を反映した値となる。重量センサ14Aは、当該重量センサ14Aに作用する荷重に応じて変形し、当該変形量に応じた信号を出力するセンサである。なお、本明細書において「重量センサ」とは、特定の検出方式に係るセンサを限定したものではなく、質量を検出することができるセンサが広く含まれる語として用いられるものである。
【0036】
演算装置5は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを備え、一般的なコンピュータや、一般的なPLCなどとして構成されている。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などの演算器である。メモリは、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。通信インターフェースは、データ通信を実現する通信機器である。プロセッサは、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを統括し、後述する機能を実現する。演算装置5では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。演算装置5は、複数のコンピュータから構成されていてもよい。具体的に、演算装置5は、情報処理部20と、出力部24と、入力部25と、記憶部26と、を備える。
【0037】
次に、図5を参照して、演算装置5の構成について更に詳細に説明する。図5は、演算装置5の構成を示すブロック構成図である。
【0038】
出力部24は、作業者に対して各種情報を出力するインターフェースである。出力部24は、モニタに視覚的に情報を表示するものであってよく、警報ランプなどの光で作業者に報知するものであってもよく、音声で情報を出力するものであってもよい。あるいは、出力部24は、通信によって、作業者が保有するスマートフォンなどの携帯端末に情報を出力するものであってもよい。
【0039】
入力部25は、演算装置5に各種情報を入力するインターフェースである。作業者は、入力部25を操作することで、装置の設置時や運転開始時などに、運転条件や、処理液に含まれる液体及び固形分の種類などの情報を入力してよい。記憶部26は、各種情報を記憶する。記憶部26は、入力部25で入力された各種情報を記憶しておき、所定のタイミングで情報処理部20へ出力する。
【0040】
情報処理部20は、演算装置5の各種情報処理を行う部分である。ここで、遠心式のシステムを正しく使用するには、集合物50によって集合物形成容器3内が完全に詰まっていない事が条件となる。従って、情報処理部20にとって、集合物形成容器3に対しての集合物50の大きさ(体積)、または堆積した集合物50の界面の位置を把握することが必要となる。本実施形態では、計測器6として、界面計測用のセンサではなく、重量センサが採用されているため、集合物50の大きさ(容積)を把握する方法が採用される。情報処理部20は、集合物形成容器3内における集合物50限界割合をパラメータとして決め、集合物50で溜めてよい量(容積)を判定値とする。ここで、情報処理部20は、重量センサで取得された計測値と比較可能とするために、判定値の単位を集合物50の質量に換算する。また、情報処理部20は、計測によって得られた増加質量を、集合物50自体の質量に換算する。情報処理部20は、判定値と計測で得られた質量を比較判定することによって、処理を行う。
【0041】
情報処理部20は、演算部21と、判定部22と、制御部23と、を備える。演算部21は、集合物形成容器3中の集合物50がどの程度の大きさになっているかを演算する。演算部21は、計測質量換算部61と、計測質量補正部62と、質量演算部63と、を備える。
【0042】
計測質量換算部61は、重量センサ14Aから入力されるセンサ値を質量に換算する。計測質量換算部61は、換算した計測質量値を計測質量補正部62へ出力する。
【0043】
計測質量補正部62は、計測質量値を補正する。すなわち、重量センサ14Aは、設備質量を全体的に計測するものであるため、集合物50以外の質量の他、所定の原因で発生する荷重も検出する。具体的に、重量センサ14Aの設置による特有な現象として、遠心処理の際の送液圧力によって、配管類にかかるテンションによって荷重が生じる場合がある。そのため、重量センサ14Aに一定の質量値が増減されることがあるため、計測質量補正部62は、計測質量値に対してポンプ運転補正設定値PCVを入れて補正する。なお、計測質量補正部62は、供給源1から、ポンプ運転信号の入力を検出し、遠心式のろ過設備への送液(濾過の開始)の有無を判断する。これにより、計測質量補正部62は、配管内にテンションがかかっているか否かの判断を行い、かかっていると判断した場合は、ポンプ運転補正設定値PCVで補正を行う。また、計測質量補正部62は、実際の質量に合わせるために、センサ取付調整値SEPを用いて計測質量値を補正する。これらの補正値、すなわち、ポンプ運転補正設定値PCV、及びセンサ取付調整値SEPは、予め設定された設定値であり、記憶部26に記憶されている。計測質量補正部62は、計測質量値、及び補正後の質量値を質量演算部63へ出力する。
【0044】
質量演算部63は、重量センサ14Aの計測結果から、集合物50の質量を演算する。質量演算部63は、増加質量演算部64と、集合物質量演算部66と、を備える。増加質量演算部64は、濾過開始時から増加した質量を演算する。集合物質量演算部66は、集合物50の質量を演算する。
【0045】
ここで、質量を演算するためのモデルについて、図6を参照しながら説明する。図6に示すように、一定容積の集合物形成容器3内に、液成分(容積V1)及び集合物成分(容積V2)の二成分が存在していると仮定する。すなわち、集合物形成容器3の全容積Duは式(1)で示される。集合物形成容器3内がすべて液成分の場合、質量は式(2)で示される。集合物形成容器3内がすべて集合物成分の場合、質量は式(3)で示される。増加質量は、式(4)で示される。なお、増加質量(表示質量)は、計測質量値から、集合物形成容器3内の全てが液成分の場合の全体質量(表示用ゼロ点初期値dzd)で差し引いた値を使用する。集合物成分の容積の判定には、集合物形成容器3内に液が入っていない場合の全体質量(計算用ゼロ点初期値)を使用するものとする。なお、初期値に関しては式(5)の関係が成り立つ。


全容積Du=液成分の容積V1+集合物成分の容積V2 …(1)

液成分の質量=全容積Du×液成分の比重CSG …(2)

集合物成分の質量=全容積Du×集合物成分の比重SSG …(3)

増加質量=集合物成分の容積V2×比重差(集合物成分の比重SSG-液成分の比重CSG) …(4)

(表示用ゼロ点初期値dzd-計算用ゼロ点初期値Czd) × センサ取付調整値SEP = 液成分の質量 …(5)
【0046】
なお、全容積Du、液成分の比重CSG、集合物成分の比重SSG、表示用ゼロ点初期値、計算用ゼロ点初期値は、いずれも予め設定された設定値であり、記憶部26に記憶されている。全容積Duは、装置にセットされた集合物形成容器3の固有の値である。液成分の比重CSGは、使用者がどのような液を用いるかによって把握可能な値である。集合物成分の比重SSGは、使用者がどのような処理液を処理しようとするかによって把握可能な値である。計算用ゼロ点初期値は、集合物形成容器3や分離部2など、の固有の値である。表示用ゼロ点初期値dzdは、計算用ゼロ点初期値に対して、使用者がどのような液を用いるかによって把握可能な液成分の質量を足し合わせることで把握可能な値である。従って、各設定値は、予め入力部25で入力されることで、記憶部26に記憶させておくことができる。
【0047】
前述のようなモデルを考慮して、増加質量演算部64は、式(6)を用いて増加質量を演算する。ここでは、重量センサによる計測質量値を用い、必要パラメータを利用して質量値の精度を向上させることができる。増加質量演算部64は、増加質量を演算したら、出力部24へ送信し、当該出力部24を介して使用者へ増加質量を出力してよい。例えば、モニタに増加質量が表示されてよい。なお、式(6A)は、ポンプが運転しており供給源1の入力がある場合の式である。ポンプが運転していない場合は、式(6B)となる。

増加質量=(重量センサによる計測質量値-表示用ゼロ点初期値dzd+ポンプ運転補正設定値PCV)×センサ取付調整値SEP …(6A)

増加質量=(重量センサによる計測質量値-表示用ゼロ点初期値dzd)×センサ取付調整値SEP …(6B)

【0048】
判定質量は、式(7)によって演算される。式(7A)は、ポンプが運転しており供給源1の入力がある場合の式である。ポンプが運転していない場合は、式(7B)となる。上述のようなモデルを考慮し、前述の式を用いることにより、集合物50の質量は、以下の式(8)で求められる。従って、集合物質量演算部66は、式(8)を用いて集合物50の質量を演算する。

判定質量=(重量センサによる計測質量値-計算用ゼロ点初期値czd+ポンプ運転補正設定値PCV)×センサ取付調整値SEP …(7A)

判定質量=(重量センサによる計測質量値-計算用ゼロ点初期値czd)×センサ取付調整値SEP …(7B)

集合物50の質量=((判定質量-(全容積Du×液成分の比重CSG))/(集合物成分の比重SSG-液成分の比重CSG))×集合物成分の比重SSG …(8)

【0049】
判定部22は、集合物形成容器3内における集合物50の大きさの割合が、所定の判定値を超えたか否かを判定する。ここでは、集合物50の容積を質量に換算して処理を行っているので、判定部22は、集合物50の質量が所定の判定値を超えたか否かを判定する。判定部22は、複数段階の判定値を有している。これによって、段階的な注意喚起、警告、対処などが可能となる。具体的に、判定部22は、上限判定値及び過上限判定値の二段階の判定値にて判定を行う。なお、「上限判定値<過上限判定値」の関係が成り立つ。上限設定値は、集合物50を回収して廃棄することを促す目的で設定される。過上限設定値は、遠心のシステム運用をできなくなる手前の警告を行う目的で設定される。
【0050】
上限判定値は、以下の式(9)によって得られる。過上限判定値は、以下の式(10)によって得られる。なお、上限判定値及び過上限判定値は、集合物形成容器3の全容積に対する、集合物50の容積が占める割合の上限値及び過上限値を質量に換算した値である。なお、容積の割合の上限値及び過上限値が記憶部26に記憶され、判定部22が上限判定値及び過上限判定値を演算してもよいし、上限判定値及び過上限判定値自体が記憶部26に記憶されてもよい。

上限判定値=全容積Du×集合物成分の比重SSG×集合物50の割合の上限値(%) …(9)

過上限判定値=全容積Du×集合物成分の比重SSG×集合物50の割合の過上限値(%) …(10)
【0051】
なお、上述の集合物50の割合の上限値・過上限値は、液成分の比重CSG及び集合物成分の比重SSGに依存しない固定値として設定されていてもよいし、液成分の比重CSG及び集合物成分の比重SSGによって変更される値として設定されてもよい。また、判定部22は、上述のように集合物50の容器内の割合を考慮した上限値及び過上限値を設定していた。これに加え、判定部22は、集合物形成容器3及び周辺構造の機械的強度などを考慮して、許容質量をもう一つの過上限判定値として設定してよい。この場合の過上限判定値は、液成分や集合物成分の比重によらずに、一定の判定値となる。例えば、比重が非常に高い集合物成分であった場合に、集合物50の質量が式(10)による過上限判定値まで達していない場合であっても、許容質量を超えた場合、判定部22は許容質量に基づく判定値を超えたと判定してよい。
【0052】
制御部23は、判定部22が上限判定値または過上限設定値を超えたと判定した場合に、出力部24を制御して表示灯の警告やブザー等の警報を行ってよい。また、制御部23は、分離システム100内における各種の被制御機構70を制御してよい。例えば、制御部23は、排出機構35(図3参照)を制御して、強制的に集合物50を排出してよい。また、制御部23は、バルブ12を制御して閉状態としてよい。なお、バルブ12は、制御部23によって制御されなくともよく、警告を受けた作業者の手動による開閉が行われるものであってもよい。また、制御部23は、供給源1からの供給自体を停止するように制御してよい。
【0053】
次に、図7を参照して、分離システム100の制御処理内容について説明する。図7は、分離システム100の制御処理内容を示すフローチャートである。図7の制御処理は、演算装置5にて実行される。図7に示すように、演算部21は、重量センサ14Aの計測値を取得する(ステップS10)。次に、質量演算部63は、増加質量を演算する(ステップS20)。ステップS20にて増加質量の演算が完了したら、質量演算部63は、モニタなどに当該値を表示する。次に、質量演算部63は、集合物50の質量を演算する(ステップS30)。
【0054】
次に、判定部22は、ステップS30で演算された集合物50の質量が上限判定値を超えたか否かを判定する(ステップS40)。ステップS40において、集合物50の質量が上限判定値を超えていないと判定された場合、図7に示す制御処理が終了し、再びステップS10から処理が開始される。
【0055】
一方、ステップS40において、集合物50の質量が上限判定値を超えていると判定された場合、判定部22は、集合物50の質量が過上限判定値を超えたか否かを判定する(ステップS50)。ステップS50において、集合物50の質量が過上限判定値を超えていないと判定された場合、制御部23は、上限判定値を超えた場合の上限用制御処理を行う(ステップS60)。ステップS60の処理が完了すると、図7に示す制御処理が終了する。
【0056】
一方、ステップS50において、集合物50の質量が過上限判定値を超えていると判定された場合、制御部23は、過上限判定値を超えた場合の過上限用制御処理を行う(ステップS70)。ステップS70の処理が完了すると、図7に示す制御処理が終了する。
【0057】
次に、本実施形態に係る分離システム100の作用・効果について説明する。
【0058】
分離システム100は、分離部2にて分離された固形分を堆積させることによって固形分の集合物50を形成する集合物形成容器3を備えている。従って、集合物形成容器3は、固形分を堆積させて集合させることで集合物を形成することができる。固形分の集合物50は、ある程度の大きさになったら集合物形成容器3から外部へ出す必要があるものである。その一方、集合物50は、フロート式のセンサなどを用いて液面を検出するようなものとは異なり、容易に界面BLを検出できるようなものではない。従って、作業者は、集合物50の大きさを自動的に検出しようという着想すら持つことなく、作業者が集合物形成容器3内の集合物の様子を見て監視するか、監視を行わずにおおよその時間間隔で作業者が集合物50を取り出すような運用を採用していた。しかしながら、作業者が監視を行う場合は作業者の手間が増えてしまう。また、分離システム100の運転中は、集合物形成容器3内の濃縮液が濁り過ぎて界面BLを作業者が目視で確認し難い場合がある。従って、作業者は分離システム100が休止して濁りが落ち着くタイミングでなくては、集合物50の大きさを確認できないことがある。一方、監視を行わない場合はシステムの管理性が低下する場合があった。例えば、集合物50を集合物形成容器3から取り出す周期が長すぎる場合は、集合物形成容器3内の集合物50が大きくなりすぎて、ラインL2の清澄液に固形分が含まれるようになる可能性がある。集合物50を集合物形成容器3から取り出す周期が短すぎる場合は、集合物形成容器3の大きさに比して集合物50が十分に大きくなっていない状態で、集合物50を取り出す事になるため、取り出し回数が増えてしまい手間となる。
【0059】
本発明者らは、このような状況を鑑みて鋭意研究を行った結果、集合物50の大きさを自動的に検出することでシステムの運用性を大幅に向上できることを見出し、本実施形態に係る分離システム100を見出すに至った。すなわち、分離システム100は、集合物形成容器3で形成された集合物50の大きさを検出する検出部4を備えている。従って、分離システム100は、検出部4にて自動的に、集合物50の大きさを正確に検出した上で、システムの運用を図ることが可能となる。例えば、検出部4による検出結果を用いることで、上述で説明したような作業者の手間は低減され、集合物形成容器3から適切なタイミングで集合物50を取り出すことが可能となる。以上より、分離システム100の運用性を向上することができる。
【0060】
検出部4は、集合物50の質量の増加を計測することによって、集合物50の大きさを検出する。集合物50の質量は、集合物50が大きくなるに従って順次増加していくものであり、集合物形成容器3内の液体が濁っていても、当該濁りによる影響を受けることなく、正確に計測できるパラメータである。従って、検出部4は、集合物の大きさを正確に検出することができる。特に、質量を計測する重量センサ14Aは、集合物形成容器3の外部において、濃縮液や集合物50と接触せずに計測を行うことができるセンサである。従って、集合物形成容器3に加工を施す必要性を無くすことができ、且つ、濃縮液や集合物50との接触による劣化などの影響を無くすことができる。また、重量センサ14Aは、サイクロン分離器15の支持部に設けられているが、当該箇所は構造物の振動の支点となる箇所であるため、集合物形成容器3や配管11A,11Bなどに比して振動が少ない。従って、重量センサ14Aの計測値に振動によるノイズなどが含まれることを抑制できる。また、界面BL付近の液体の流れが乱れたときは、界面BLがどの位置に存在するかが曖昧になる可能性があるが、集合物形成容器3の質量は、界面BL付近の乱れによらず、時間の経過とともに単調に増加する。従って、重量センサ14Aは、液体の流れの乱れによらない、安定した計測値を出力することができる。
【0061】
ここで、分離システム100は、集合物形成容器全体の容積が集合物で満たされた場合、運用できなくなる。分離システム100が運用出来ないというのは、清澄液の分離レベル・分離性能が極端に悪くなること、分離部が異常摩耗となることである。そのため、集合物形成容器の容積の中で、既に形成された集合物がどの程度の割合を占めているかを把握できることが重要となる。例えば、集合物形成容器3全体の容積が集合物50で完全に満たされない容量にて管理することが可能になる。この場合、分離システム100が運用できるだけでなく、判定値の変更、質量というパラメータで分離システム100前後の設備の負担状況を把握できるなどが可能になる。これに対し、システム稼働中の集合物形成容器3は液成分の中に固形分が舞い上がっている状態もあるため、集合物50の容積を検出することは難しい。前述のように、分離システム100は、検出部4にて集合物の大きさを示すパラメータとして集合物50の質量を正確に検出する。このように検出部4によって検出された集合物50の質量は、分離システム100の運用を行う上での有効な情報として利用することが可能となる。以上より、分離システム100の運用性を向上することができる。
【0062】
分離システム100は、集合物50の質量が所定の判定値を超えたか否かを判定する判定部22と、を更に備えてよい。これにより、判定部22の判定結果に基づいて、分離システム100の適切な運用のための措置(例えば、注意喚起、警告、停止など)を図ることができる。
【0063】
判定部22は、液成分の比重、及び集合物成分の比重に基づいて設定された判定値を用いて、判定を行ってよい。これにより、判定部22は、集合物50の容積を質量に換算した状態で、検出結果と判定値との比較を行うことができる。従って、判定部22は、分離システム100の分離性能を正確に判定することができる。
【0064】
判定部22は、上限判定値、及び当該上限判定値よりも大きい過上限判定値を用いて、判定を行う。これにより、集合物形成容器3内の集合物50が増えてきたときに、段階的に注意喚起や警告等を行うことが可能となる。
【0065】
検出部4での検出結果は、所定の処理部(例えば、前後の濾過設備など)へフィードバックされてよい。これにより、検出部4での検出結果を所定の処理部において有効に活用することができる。
【0066】
検出部4での検出結果は、情報蓄積されてよい。これにより、蓄積しておいた検出部4での検出結果を有効に活用することができる。
【0067】
分離システム100の運用において、ソフトの集合物質量を計測できることと、閾値による信号により先進の上流プロセスなどで柔軟に活用を行ってよい。これは、実測の質量の値が変化していく特性を利用するものである。例えば、工作機械業界等の加工機でワークの材質や形状が決まったものが長年生産された場合、加工プログラムの情報とリンクさせて、重さというパラメータで情報蓄積できる。濾過機を通して何が変わったか、各ユーザーの改善活動などの一つの測定指標となりうる可能性がある。または、一定のワーク材質の集合物だけでなく、刃物の減耗具合なども判断できる可能性を有する。加工機側のプログラム等から濾過設備の連動や質量値から何か情報をフィードバックして別の設備の運用などにつなげられる。
【0068】
質量計測の利点としては、分離システム100の運用面の管理ができることに加え、分離システム100の前後のフローで他の濾過設備の処理量(負荷量)を把握できるという点が挙げられる。例えば、前段に濾過設備があり、分離システムが後段にある場合、前段の濾過設備の過負荷量を把握することができる。この場合、過剰処理量が分離システム100の質量となって数値で把握することが可能となる。また、前段の濾過設備で処理できない量を把握できる。従って、前段の濾過対象物以外で回収できたものを質量で把握することができる。また、後段に濾過設備があり、分離システムに前段がある場合、後段の濾過設備の処理量の軽減分が把握できる。これにより、処理量の余裕を把握することができる。上述のように、濾過設備は単一処理だけでなく、複数の処理を行う事が多い。濾過の処理は処理量を数値で表すことは困難なことが多く、本実施形態の分離システム100において、処理量としての数値を有効活用できることに優位性がある。
【0069】
分離システム100の設置先の工作機械設備は、工作物が決まって生産している場合や、工作物が多種になる場合もあるが、加工工程を何度も変え、生産効率向上に努めている。最終形状までの良否で加工プログラムや刃物の種類、使用液など変更する因子が多岐にわたるが、その指標が時間軸や製品検査などに至っている。そこで他の判断指標としてこの分離システム100において集合物50の質量(処理量)が把握できることで一工程の変化を濾過した数値ではあるが、利用できる。分離システム100が濾過の処理量を把握できるということは、逆から見れば機械の稼働率を把握でき、機械側のメンテナンス周期・タイミングも計画できることを意味する。このように、集合物50の質量を指標として利用することで、加工の中央管理等で状態量を把握でき、日々の工程管理や、情報蓄積、工程変更へのフィードバックの一情報として活躍できると考えている。
【0070】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0071】
例えば、検出部4の計測器6として重量センサ14Aを例示したが、重量センサの取り付け位置は特に限定されるものではない。例えば、計測器6として、配管11Aに設けられた重量センサを採用してもよい。計測器6として、底壁部33に設けられた重量センサを採用してもよい。計測器6として、筐体13の底部13bの下端に設けられた重量センサを採用してもよい。集合物形成容器3は、質量計に載せられてもよい。
【0072】
排出機構の例として、図4(b)に示したような機構を例示したが、排出機構はこのような機構に限定されない。また、排出機構が設けられていなくともよい。この場合、作業者が、出力部24の情報を参照して、集合物形成容器3を配管11Bから取り外して、集合物50を集合物形成容器3から取り出せばよい。なお、この場合、集合物50の大きさが所定の閾値に達したら、出力部24が作業者にその旨を通知し、作業者は、手動で集合物形成容器3から集合物50を取り出す。
【0073】
分離部2として、サイクロン分離器15を例示したが、分離方式は特に限定されず、例えば、遠心分離器と同趣旨の原理による分離方式を採用したものが用いられてよい。
【0074】
集合物形成容器3の構成は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、断面形状が円形状ではなく、楕円状、長円状、多角形状、その他あらゆる形状を有する集合物形成容器が採用されてもよい。また、横方向から見た時の形状も、図4のように一定の断面形状で上下方向に真っ直ぐに延びる形状でなくともよく、上下方向における形状が変化するような集合物形成容器を採用してもよい。ただし、集合物形成容器の形状は、集合物を排出するときに詰まりにくい形状であることが好ましい。
【符号の説明】
【0075】
2…分離部、3…集合物形成容器、4…検出部、5…演算装置(検出部)、6…計測器(検出部)、14A…重量センサ(検出部)、22…判定部、100…分離システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7