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特開2022-92881真偽識別方法、真偽識別システム及び端末装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092881
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】真偽識別方法、真偽識別システム及び端末装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/12 20160101AFI20220616BHJP
【FI】
G07D7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205855
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松橋 賢
(72)【発明者】
【氏名】東山 稔
(72)【発明者】
【氏名】上月 敏充
【テーマコード(参考)】
3E041
【Fターム(参考)】
3E041AA01
3E041AA03
3E041AA04
3E041BA11
3E041BA16
3E041BB03
3E041CA00
3E041CB08
3E041DB01
3E041EA02
(57)【要約】
【課題】多種多様な紙幣の真偽を識別できる真偽識別方法、真偽識別システム及び端末装置を提供する。
【解決手段】端末装置が、有価媒体の画像データを生成し、生成した前記画像データから前記有価媒体の種類を判定し、判定結果に応じた情報である判定結果情報を真偽識別装置に送信し、前記真偽識別装置が、前記判定結果情報に応じた処理を実行し、前記有価媒体の真偽を識別することを特徴とする真偽識別方法であり、好ましくは、前記真偽識別装置は、前記有価媒体の真偽識別結果を前記端末装置に送信する真偽識別方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置が、有価媒体の画像データを生成し、生成した前記画像データから前記有価媒体の種類を判定し、判定結果に応じた情報である判定結果情報を真偽識別装置に送信し、
前記真偽識別装置が、前記判定結果情報に応じた処理を実行し、前記有価媒体の真偽を識別する
ことを特徴とする真偽識別方法。
【請求項2】
前記真偽識別装置は、有価媒体の特性を検知する複数のセンサを有し、前記判定結果情報に応じたセンサを起動する
ことを特徴とする請求項1に記載の真偽識別方法。
【請求項3】
前記複数のセンサは、それぞれ、互いに異なる波長帯域の光を発する複数の光源を有し、
起動された前記センサは、前記判定結果情報に応じた光源を発光させる
ことを特徴とする請求項2に記載の真偽識別方法。
【請求項4】
前記真偽識別装置は、前記判定結果情報に応じたタイミングで前記光源を消灯する
ことを特徴とする請求項3に記載の真偽識別方法。
【請求項5】
前記真偽識別装置は、起動された前記センサの出力値を、前記判定結果情報に応じた閾値と対比して、対比結果に基づいて前記有価媒体の真偽を識別する
ことを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の真偽識別方法。
【請求項6】
前記真偽識別装置は、前記判定結果情報に応じた算出式に基づいて、起動された前記センサの出力値から前記有価媒体の真偽を識別するのに用いる評価値を算出する
ことを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載の真偽識別方法。
【請求項7】
前記判定結果情報は、有価媒体の種類に応じて設定されたパラメータを含む
ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の真偽識別方法。
【請求項8】
前記判定結果情報は、前記有価媒体の種類情報を含む
ことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の真偽識別方法。
【請求項9】
前記真偽識別装置は、有価媒体の種類に応じて設定された複数のパラメータを記憶しており、前記種類情報に応じたパラメータを使用する
ことを特徴とする請求項8に記載の真偽識別方法。
【請求項10】
前記真偽識別装置は、前記有価媒体の真偽識別結果を前記端末装置に送信する
ことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の真偽識別方法。
【請求項11】
前記端末装置は、前記真偽識別装置から送信された前記真偽識別結果を報知する
ことを特徴とする請求項10に記載の真偽識別方法。
【請求項12】
サーバが、前記端末装置から前記画像データを取得し、取得した前記画像データから前記有価媒体の記番号のフォントを判定し、判定したフォントに基づいて前記有価媒体の真偽を識別し、真偽識別結果を前記端末装置に送信し、
前記端末装置が、前記サーバから送信された前記真偽識別結果と、前記真偽識別装置から送信された前記真偽識別結果とを統合して前記有価媒体の真偽を識別する
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の真偽識別方法。
【請求項13】
前記サーバは、クラウドサーバである
ことを特徴とする請求項12に記載の真偽識別方法。
【請求項14】
前記端末装置は、携帯端末装置である
ことを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の真偽識別方法。
【請求項15】
端末装置と、有価媒体の真偽を識別する真偽識別装置とを備える真偽識別システムであって、
前記端末装置は、
有価媒体の画像データを生成する画像データ生成手段と、
前記画像データから前記有価媒体の種類を判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果に応じた情報である判定結果情報を前記真偽識別装置に送信する送信手段と、
を有し、
前記真偽識別装置は、
前記判定結果情報に応じた処理を実行し、前記有価媒体の真偽を識別する
ことを特徴とする真偽識別システム。
【請求項16】
前記端末装置から前記画像データを取得し、取得した前記画像データから前記有価媒体の記番号のフォントを判定し、判定したフォントに基づいて前記有価媒体の真偽を識別し、真偽識別結果を前記端末装置に送信するサーバを更に備える
ことを特徴とする請求項15に記載の真偽識別システム。
【請求項17】
前記真偽識別装置は、前記有価媒体の真偽識別結果を前記端末装置に送信し、
前記端末装置は、前記サーバから送信された前記真偽識別結果と、前記真偽識別装置から送信された前記真偽識別結果とを統合して前記有価媒体の真偽を識別する真偽識別手段を有する
ことを特徴とする請求項16に記載の真偽識別システム。
【請求項18】
有価媒体の画像データを生成する画像データ生成手段と、
前記画像データから前記有価媒体の種類を判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果に応じた情報である判定結果情報を真偽識別装置に送信する送信手段と、
前記真偽識別装置から前記有価媒体の真偽識別結果を受信して報知する報知手段と、
を備える
ことを特徴とする端末装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真偽識別方法、真偽識別システム及び端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
偽造紙幣は、それと知らずに受け取る側にデメリットが大きく、両替時、釣銭受取時、商品の販売時等において、受け取った者がその場で受け取った紙幣の真偽を識別し、偽造紙幣の受け取りを防止することが望ましい。そのため、一般消費者や小売店等が、受け取った紙幣の真偽識別を所望の場所で行うことができるよう、種々の簡易的な真偽識別装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、携帯可能な紙幣真偽鑑別機能付き携帯端末において、紫外線を照射する紫外線照射手段と、この紫外線照射手段の照射を行って紙幣の真偽を鑑別する方法を利用者に通知する通知手段とを具え、利用者が通知手段により通知された方法に基づいて紫外線照射手段の照射を行なうことにより、紙幣の真偽を鑑別可能とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-54758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各セキュリティ要素は、様々なセンサを用いて識別される。国又は金種によりどの波長帯域の光を使って識別するか、どのセンサを使って識別するか、センサの出力値をどのように処理するかなど、適切に選択しなければならない。また、セキュリティ要素によっては、単一のセキュリティ要素に対して異なる複数の波長帯域の光を照射する必要がある。
【0006】
特許文献1に開示された紙幣真偽鑑別機能付き携帯端末は、紫外線照射により目視で真偽鑑別可能な紙幣にしか適用することができず、対応可能な紙幣が限られている。そのため、より多くの種類の紙幣に対応する技術が求められている。
【0007】
本開示は、上記現状に鑑みてなされたものであり、多種多様な紙幣の真偽を識別できる真偽識別方法、真偽識別システム及び端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る真偽識別方法は、端末装置が、有価媒体の画像データを生成し、生成した前記画像データから前記有価媒体の種類を判定し、判定結果に応じた情報である判定結果情報を真偽識別装置に送信し、前記真偽識別装置が、前記判定結果情報に応じた処理を実行し、前記有価媒体の真偽を識別する。
【0009】
前記真偽識別装置は、有価媒体の特性を検知する複数のセンサを有していてもよく、前記判定結果情報に応じたセンサを起動してもよい。
【0010】
前記複数のセンサは、それぞれ、互いに異なる波長帯域の光を発する複数の光源を有していてもよく、起動された前記センサは、前記判定結果情報に応じた光源を発光させてもよい。
【0011】
前記真偽識別装置は、前記判定結果情報に応じたタイミングで前記光源を消灯してもよい。
【0012】
前記真偽識別装置は、起動された前記センサの出力値を、前記判定結果情報に応じた閾値と対比してもよく、対比結果に基づいて前記有価媒体の真偽を識別してもよい。
【0013】
前記真偽識別装置は、前記判定結果情報に応じた算出式に基づいて、起動された前記センサの出力値から前記有価媒体の真偽を識別するのに用いる評価値を算出してもよい。
【0014】
前記判定結果情報は、有価媒体の種類に応じて設定されたパラメータを含んでもよい。
【0015】
前記判定結果情報は、前記有価媒体の種類情報を含んでもよい。
【0016】
前記真偽識別装置は、有価媒体の種類に応じて設定された複数のパラメータを記憶していてもよく、前記種類情報に応じたパラメータを使用してもよい。
【0017】
前記真偽識別装置は、前記有価媒体の真偽識別結果を前記端末装置に送信してもよい。
【0018】
前記端末装置は、前記真偽識別装置から送信された前記真偽識別結果を報知してもよい。
【0019】
サーバが、前記端末装置から前記画像データを取得してもよく、取得した前記画像データから前記有価媒体の記番号のフォントを判定してもよく、判定したフォントに基づいて前記有価媒体の真偽を識別してもよく、真偽識別結果を前記端末装置に送信してもよく、前記端末装置が、前記サーバから送信された前記真偽識別結果と、前記真偽識別装置から送信された前記真偽識別結果とを統合して前記有価媒体の真偽を識別してもよい。
【0020】
前記サーバは、クラウドサーバであってもよい。
【0021】
前記端末装置は、携帯端末装置であってもよい。
【0022】
また、本開示に係る真偽識別システムは、端末装置と、有価媒体の真偽を識別する真偽識別装置とを備える真偽識別システムであって、前記端末装置は、有価媒体の画像データを生成する画像データ生成手段と、前記画像データから前記有価媒体の種類を判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果に応じた情報である判定結果情報を前記真偽識別装置に送信する送信手段と、を有し、前記真偽識別装置は、前記判定結果情報に応じた処理を実行し、前記有価媒体の真偽を識別する。
【0023】
前記端末装置から前記画像データを取得し、取得した前記画像データから前記有価媒体の記番号のフォントを判定し、判定したフォントに基づいて前記有価媒体の真偽を識別し、真偽識別結果を前記端末装置に送信するサーバを更に備えてもよい。
【0024】
前記真偽識別装置は、前記有価媒体の真偽識別結果を前記端末装置に送信してもよく、前記端末装置は、前記サーバから送信された前記真偽識別結果と、前記真偽識別装置から送信された前記真偽識別結果とを統合して前記有価媒体の真偽を識別する真偽識別手段を有してもよい。
【0025】
前記端末装置が備える真偽識別手段は、前記真偽識別装置から送信される真偽識別結果と、前記サーバから送信される真偽識別結果とにそれぞれ重み付けをし、合算することによって、前記真偽識別装置から送信される真偽識別結果と前記サーバから送信される真偽識別結果とを統合してもよい。
【0026】
前記端末装置が備える真偽識別手段は、前記サーバから送信される真偽識別結果の重みよりも前記真偽識別装置から送信される真偽識別結果の重みをより大きくしてもよい。
【0027】
前記真偽識別装置は、有価媒体の特性を検知する複数のセンサを有していてもよく、前記判定結果情報に応じたセンサを起動してもよい。
【0028】
前記複数のセンサは、それぞれ、互いに異なる波長帯域の光を発する複数の光源を有していてもよく、起動された前記センサは、前記判定結果情報に応じた光源を発光させてもよい。
【0029】
前記真偽識別装置は、前記判定結果情報に応じたタイミングで前記光源を消灯してもよい。
【0030】
前記真偽識別装置は、起動された前記センサの出力値を、前記判定結果情報に応じた閾値と対比してもよく、対比結果に基づいて前記有価媒体の真偽を識別してもよい。
【0031】
前記真偽識別装置は、前記判定結果情報に応じた算出式に基づいて、起動された前記センサの出力値から前記有価媒体の真偽を識別するのに用いる評価値を算出してもよい。
【0032】
前記判定結果情報は、有価媒体の種類に応じて設定されたパラメータを含んでもよい。
【0033】
前記判定結果情報は、前記有価媒体の種類情報を含んでもよい。
【0034】
前記真偽識別装置は、有価媒体の種類に応じて設定された複数のパラメータを記憶していてもよく、前記種類情報に応じたパラメータを使用してもよい。
【0035】
前記端末装置は、前記サーバから送信された前記真偽識別結果と、前記真偽識別装置から送信された前記真偽識別結果とを統合して識別された前記有価媒体の真偽識別結果を報知してもよい。
【0036】
前記サーバは、クラウドサーバであってもよい。
【0037】
前記端末装置は、携帯端末装置であってもよい。
【0038】
また、本開示に係る端末装置は、有価媒体の画像データを生成する画像データ生成手段と、前記画像データから前記有価媒体の種類を判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果に応じた情報である判定結果情報を真偽識別装置に送信する送信手段と、前記真偽識別装置から前記有価媒体の真偽識別結果を受信して報知する報知手段と、を備える。
【0039】
前記送信手段は、前記画像データをサーバに送信してもよく、前記サーバから前記有価媒体の真偽識別結果を受信する受信手段と、前記サーバから送信された前記識別結果と、前記真偽識別装置から送信された前記識別結果とを統合して前記有価媒体の真偽を識別する真偽識別手段と、を更に備えていてもよい。
【0040】
前記報知手段は、前記サーバから送信された前記真偽識別結果と、前記真偽識別装置から送信された前記真偽識別結果とを統合して識別された前記有価媒体の真偽識別結果を報知してもよい。
【0041】
前記端末装置は、携帯端末装置であってもよい。
【発明の効果】
【0042】
本開示によれば、多種多様な紙幣の真偽を識別できる真偽識別方法、真偽識別システム及び端末装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】第1実施形態に係る真偽識別システムの構成を説明するブロック図である。
図2】第1実施形態に係る真偽識別システムの動作の一例を説明するフローチャートである。
図3】第1実施形態に係る真偽識別システムが備える端末装置の構成を説明するブロック図である。
図4】第1実施形態に係る真偽識別システムが備える真偽識別装置の概要を説明するための図である。
図5】第1実施形態に係る真偽識別システムが備える真偽識別装置の正面側の斜視模式図である。
図6】第1実施形態に係る真偽識別システムが備える真偽識別装置の後面側の斜視模式図である。
図7】第1実施形態に係る真偽識別システムが備える真偽識別装置の長手方向の断面模式図である。
図8】第1実施形態に係る真偽識別システムが備える真偽識別装置の短手方向の断面模式図である。
図9】第1実施形態に係る真偽識別システムが備える真偽識別装置の構成を説明するブロック図である。
図10】第1実施形態に係る真偽識別システムの動作の他の例を説明するフローチャートである。
図11】第2実施形態に係る真偽識別システムの構成を説明するブロック図である。
図12】第2実施形態に係る真偽識別システムが備える端末装置の構成を説明するブロック図である。
図13】第2実施形態に係る真偽識別システムが備えるサーバの構成を説明するブロック図である。
図14】第2実施形態に係る真偽識別システムの動作の一例を説明するフローチャートである。
図15】第2実施形態に係る真偽識別システムの具体例を示す模式図である。
図16】第2実施形態に係る真偽識別システムが備える端末装置に表示される、真偽識別装置の操作方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本開示に係る真偽識別方法、真偽識別システム及び端末装置の実施形態を、図面を参照しながら説明する。本開示の対象となる有価媒体としては、紙幣(銀行券)、小切手、商品券、手形、帳票、有価証券、カード状媒体等の様々な有価媒体が適用可能であるが、以下においては、紙幣を対象とする真偽識別方法、真偽識別システム及び端末装置を例として、本開示の実施形態を説明する。なお、以下の説明において、同一又は同様の機能を有する構成には同一の符号を異なる実施形態及び図面間で共通して適宜用い、その構成についての繰り返しの説明は適宜省略する。
【0045】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る真偽識別システムの構成を説明するブロック図である。図1に示すように、本実施形態の真偽識別システム1は、端末装置2と、紙幣BNの真偽を識別する真偽識別装置3とを備えている。端末装置2と、真偽識別装置3とは、有線通信又は無線通信により、相互に通信可能に接続されている。端末装置2は、紙幣BNの画像データを生成する画像データ生成手段2Aと、画像データから紙幣BNの金種を判定する判定手段2Bと、判定手段2Bによる判定結果に応じた情報である判定結果情報を真偽識別装置3に送信する送信手段2C1と、を有し、真偽識別装置3は、判定結果情報に応じた処理を実行し、紙幣BNの真偽を識別する。このように本実施形態では、端末装置2からの判定結果情報に基づいて真偽識別装置3が紙幣BNの金種に応じた処理を実行するため、多種多様な紙幣BNの真偽を正確かつ簡易に識別することができる。なお、ここで、金種とは、紙幣の種類を意味する。
【0046】
画像データ生成手段2Aは、識別対象の紙幣BNの画像データを生成する機能を有する。生成された画像データからは、当該紙幣の静止画像及び/又は動画像が生成され得る。画像データ生成手段2Aによって取得される画像は、可視光に基づく可視画像であってもよいし、赤外光等の不可視光に基づく不可視画像であってもよい。画像データ生成手段2Aは、単に画像データを生成する手段であればよく、生成された画像データは、例えば端末装置2が備える記憶部に、必ずしも記録される必要はない。画像データ生成手段2Aとしては、例えば、カメラモジュールを使用することが可能である。
【0047】
判定手段2Bは、紙幣BNの画像データから当該紙幣BNの金種を判定する機能を有する。判定手段2Bとしては、例えば、金種判定専用のアプリケーションである物体識別AR(Augmented Reality)が用いられる。
【0048】
物体識別ARは、静止画像を分析して金種等を判別するものではなく、シャッターボタンを押す前のリアルタイムな画像(ライブビュー画像)内で紙幣BNを識別する技術である。物体識別ARは、紙幣の特徴(金種、表裏面の画像、金種に対応するセキュリティとセンサの種別等)が事前に定義(モデル化)されたデータモデルに基づいて判定をするため、全金種の表裏面がモデル化して登録されている。そのため、表裏面(記番号が記載されている面)の判定を同一のモデルを使って実現できる。また、物体識別ARを差し替えることで様々な金種に対応することができ、端末装置2の改修が容易である。物体識別ARは、例えば、汎用的なソフトウェア部品で構成される。
【0049】
物体識別ARのより具体的な金種判定方法の一例を挙げる。
(1)識別対象となる全金種の紙幣BNの表裏面をモデル化して端末装置2に格納する。
(2)紙幣BNのライブビュー画像を上記モデルと照合して金種を判定する。本実施形態では、金種判定に適した紙幣BNの面が認識された場合に画像データを取得するよう制御が行われる。
(3)ライブビュー画像に図や文字を重ね合わせることで、利用者に紙幣BNの表裏面や金種等を通知する。
【0050】
本実施形態では、金種判定に適切な面が判定されたら、画像データを取得するためのシャッターボタンが押せるように制御が行われている。シャッターボタンを押すことがトリガーとなり、真偽識別装置3の制御、スキャン方法の報知等が開始される。
【0051】
シャッターボタンを押して撮影し、取得した紙幣BNの静止画を、上記モデルと照合して金種を判定する方法も考えられる。しかしながら、当該方法では、例えば、上記モデルと照合するのに適した紙幣BNの静止画を取得できなかった場合に、利用者へ通知し、例えば紙幣BNを裏返す等の操作をした後、再度シャッターボタンを押して紙幣BNの静止画を撮影する必要があり、利用者の操作数が増加してしまう。利用者の操作数を減らし、ユーザーエクスペリエンスを向上させるために、本実施形態では物体識別ARを利用している。
【0052】
紙幣BNの画像データをサーバ上のソフトウェアで解析して金種を判定する場合、通信待ちを含む処理時間が長くなるが、本実施形態では端末装置2が備える判定手段2Bが金種を判定するため、紙幣BNの真偽判定にかかる処理時間を短縮することができる。
【0053】
送信手段2C1は、紙幣BNの金種の判定結果情報を真偽識別装置3に送信する機能を有する。送信手段2C1は、無線通信(例えば近距離無線通信)又は有線通信により真偽識別装置3に情報を送信するものであり、例えば、送信機、アンテナ等から構成されている。なお、判定結果情報を含む各種の情報(データ)は、後述する制御部2Vによって送信手段2C1に出力され、送信手段2C1によって送信される。また、送信手段2C1による送信のタイミング、内容(例えば判定結果情報の内容)、範囲(送信先)等の判定ないし決定処理は、制御部2Vにより実行される。例えば、制御部2Vが、紙幣BNの金種の判定結果情報を、送信手段2C1を介して、真偽識別装置3に送信する送信処理を実行する。
【0054】
判定結果情報は、紙幣BNの金種に応じて設定されたパラメータを含んでもよい。すなわち、端末装置2は、紙幣BNの金種に応じてあらかじめ設定された複数のパラメータを記憶していてもよく、送信手段2C1は、複数のパラメータのうち、判定手段2Bによって判定された金種に対応するパラメータを判定結果情報として真偽識別装置3に送信してもよい。これにより、真偽識別装置3自体に紙幣BNの金種に応じた種々のパラメータを記憶させる必要がなく、また、真偽識別装置3自体識別対象の紙幣BNに対応するパラメータを選択する必要が無くなるため、真偽識別装置3の構成をよりシンプルにしつつ、紙幣BNの金種に応じて真偽識別を行うことができる。例えば、本実施形態では、判定手段2Bである物体識別ARが紙幣BNの金種に応じたセンサの種別を判定し、送信手段2C1が判定されたセンサに対応するパラメータを判定結果情報として真偽識別装置3に送信する。
【0055】
真偽識別装置3は、例えば、紙幣をスキャンして紙幣の特徴を取得し、取得した特徴に基づいて、その紙幣の真偽を判定するものであり、端末装置2から送信された判定結果情報に基づいて、その動作や処理を行うことができる。すなわち、端末装置2で判定された金種に応じた動作や処理を実行することができる。そのため、多種多様な紙幣BNの真偽判定に柔軟に対応することが可能である。
【0056】
図2は、第1実施形態に係る真偽識別システムの動作の一例を説明するフローチャートである。図2を用いて、本実施形態に係る真偽識別システム1で行われる真偽識別処理の手順について説明する。まず、端末装置2の画像データ生成手段2Aが、紙幣BNの画像データを生成する(ステップS11)。次に、端末装置2の判定手段2Bが、生成した画像データから紙幣BNの金種を判定する(ステップS12)。次に、端末装置2の判定手段2Bが、判定結果に応じた情報である判定結果情報を真偽識別装置3に送信し(ステップS13)、端末装置2は処理を終了する。
【0057】
次に、判定結果情報を受信した真偽識別装置3が、判定結果情報に応じた処理を実行し、紙幣BNの真偽を識別する(ステップS21)。そして、真偽識別装置3は処理を終了し、真偽識別システム1の動作が終了する。
【0058】
次に、本実施形態に係る端末装置2及び真偽識別装置3のより具体的な実施形態について説明する。
【0059】
端末装置2は、据え置き型の端末装置であってもよいし、携帯端末装置であってもよい。
【0060】
据え置き型の端末装置としては、例えば、レジ釣銭機、ATM(現金自動預払機)、両替機、出納機、窓口キャッシャ、自動精算機、KIOSK、自動販売機、券売機、紙幣計数機、紙幣整理機等の紙幣処理装置が挙げられる。なお、出納機は、入金処理及び出金処理を含む各種の処理を実行するものであり、通常、銀行等の金融機関の営業店舗に設置される。また、窓口キャッシャは、店舗の窓口にて入金処理及び出金処理を行うものであり、通常、金融機関の営業店舗の窓口に設置され、出納機と通信可能に接続される。
【0061】
携帯端末装置としては、例えば、カメラ、外部通信、表示、位置情報等の機能を有した、モバイル端末(例えば、ノートPC、タブレットPC、スマートフォン、携帯電話等)やウェアラブル端末(スマートウォッチ、スマートグラス等)が挙げられる。
【0062】
図3は、第1実施形態に係る真偽識別システムが備える端末装置の構成を説明するブロック図である。図3を用いて、端末装置2について説明する。端末装置2は、有線通信又は無線通信で真偽識別装置3と接続されており、無線通信の方式としては、例えば、Bluetooth(登録商標)が挙げられる。
【0063】
端末装置2は、上述の画像データ生成手段2A、判定手段2B及び送信手段2C1に加えて、報知手段2D、制御部2V、通信部2W及び記憶部2Xを備えている。端末装置2は、LCDパネルや有機ELパネルといった表示手段、タッチパネルや入力ボタンといった入力手段、スピーカ等の音声出力手段、マイク等の音声入力手段、バイブレーションモータ(振動モータ)といった振動発生手段を有していてもよい。
【0064】
画像データ生成手段2Aは、受光素子が二次元配列された個体撮像素子と、個体撮像素子の出力信号が入力されるADコンバータとを備えていてもよい。
【0065】
制御部2Vは、端末装置2の各部を制御するものであり、例えば、各種の処理を実現するためのプログラムと、該プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、該CPUによって制御される各種ハードウェア等によって構成される。
【0066】
制御部2Vは、対応するプログラムを実行することによって、上述の判定手段2B、例えば物体識別ARとして機能し得る。
【0067】
物体識別ARは、例えば、以下のようにして紙幣のライブビュー画像にて紙幣BNを識別してもよい。すなわち、シャッターボタンを半押しにするか、撮影モードにすると、画像データ生成手段2Aは、受光素子からADコンバータへ画像データを送る。ADコンバータから出力された画像データは、必要に応じて画像処理用のプロセッサにより適宜画像処理が行われた上で、物体識別AR、及び表示手段のドライバICへ送られる。そして、物体識別ARが、上記モデルに基づいて画像データから紙幣BNの金種を判定し、制御部2Vが画像データと金種判定結果とを重ね合わせた合成画像を生成し、ドライバICが、表示手段の表示パネルを駆動して当該合成画像を表示する。
【0068】
通信部2Wは、無線通信又は有線通信により外部装置と通信するものであり、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット等の通信網を介して、又は、近距離通信を介して、外部装置とデータを送受信する機能を有する。通信部2Wは、例えば、通信モジュールから構成されてもよいし、ネットワークカードから構成されてもよい。通信部2Wは、データを送信する送信手段2C1と、データを受信する受信手段2C2とを備えている。
【0069】
記憶部2Xは、制御部2Vの動作に必要なプログラムやデータを記憶する機能を有する。記憶部2Xは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置から構成され、データ及びプログラムを書き込み及び読み出し可能に構成されている。
【0070】
記憶部2Xは、紙幣BNの金種に応じてあらかじめ設定された複数のパラメータ、紙幣BNの真偽識別結果の履歴(例えば、真偽識別が行われた日時、紙幣BNの画像データ、紙幣BNの記番号、紙幣BNの金種)等を記憶している。
【0071】
紙幣BNの金種に応じてあらかじめ設定された複数のパラメータとは、真偽識別装置3内で用いられるパラメータ(例えば数値)であり、例えば、紙幣BNの金種に応じて真偽識別装置3で起動させるセンサ(後述の光学センサ)の種類ごとに設定されたパラメータ(以下、センサ種別パラメータという。)、紙幣BNの金種に応じた閾値、紙幣BNの金種に応じた算出式ごとに設定されたパラメータ(以下、算出式パラメータという。)等である。本実施形態では、光学センサの種類及び光源の種類を指定するのに、同じセンサ種別パラメータを使用しているが、光学センサの種類及び光源の種類を指定するのに、互いに異なるパラメータを使用してもよい。
【0072】
送信手段2C1は、判定結果情報として、判定手段2Bによって判定された紙幣BNの金種に応じたパラメータを真偽識別装置3に送信してもよい。すなわち、制御部2Vが、判定結果情報として、判定手段2Bによって判定された紙幣BNの金種に応じたパラメータを、送信手段2C1を介して、真偽識別装置3に送信する送信処理を実行してもよい。
【0073】
受信手段2C2は、真偽識別装置3から紙幣BNの真偽識別結果を受信する機能を有する。受信手段2C2は、無線通信(例えば近距離無線通信)又は有線通信により真偽識別装置3から情報を受信するものであり、例えば、受信機、アンテナ等から構成されている。なお、受信手段2C2によって受信された各種の情報(データ)は、例えば、制御部2Vによる制御の下、記憶部2Xに記憶される。
【0074】
送信手段2C1及び受信手段2C2は、例えば、通信モジュールにより、通信部2Wとして一体的に構成されていてもよい。
【0075】
報知手段2Dは、真偽識別装置3から受信した真偽識別結果を操作者(利用者)に報知する機能を有する。このような態様とすることにより、真偽識別システム1の操作者は、端末装置2により紙幣BNの真偽を知ることができる。報知手段2Dとしては、例えば、端末装置2の表示手段、音声発生手段、振動発生手段等を利用することができる。
【0076】
図4図9を用いて、真偽識別装置3について説明する。まず、図4を用いて、本実施形態の概要について説明する。図4は、第1実施形態に係る真偽識別システムが備える真偽識別装置の概要を説明するための図である。本実施形態の真偽識別装置3は、光学センサの検出結果に基づき紙幣BNの真偽を識別する、片手又は片手の指で把持可能な大きさの携帯型の装置である。図4に示すように、真偽識別装置3は、光学センサ(図4では図示せず)を備えた本体10と、本体10に対向して配置されたアタッチメント20との間に設けられたスリット部(隙間)30に紙幣BNを挿入し、手動により紙幣BNを走査することにより紙幣BNから到来する光を光学センサが受光し、信号として出力する。そして、紙幣BNから到来する光に係る信号から当該光の特性(例えば、燐光の強度や燐光の時定数)を取得し、取得した光の特性に基づいて紙幣BNの真偽を判定する。
【0077】
図5は、第1実施形態に係る真偽識別システムが備える真偽識別装置の正面側の斜視模式図である。図6は、第1実施形態に係る真偽識別システムが備える真偽識別装置の後面側の斜視模式図である。図7は、第1実施形態に係る真偽識別システムが備える真偽識別装置の長手方向の断面模式図である。図8は、第1実施形態に係る真偽識別システムが備える真偽識別装置の短手方向の断面模式図である。図5に示すように、真偽識別装置3は、略直方体の形状を有する本体10と、本体10が挿入可能な開口部が設けられ、当該開口部に挿入されることによって本体10に取り付けられた着脱可能なアタッチメント20とを有する。
【0078】
本体10は、底面(下面)110、上面120、長手方向の側面である第一の側面130(以下、単に「側面130」ということがある)及び第二の側面140(以下、単に「側面140」ということがある)、並びに長手方向の端面である前面150及び後面160から構成される筐体100を備えている。なお、これらの上下や前後といった方向は、あくまで説明の便宜のために用いるものであり、真偽識別装置3の配置は、それらの方向に限定されず、使用状況に応じて適宜変更可能である。
【0079】
また、筐体100は、下部10A1及び上部10A2からなる上方が開口した箱状部10Aと、箱状部10Aの開口を覆う蓋部10Bとを備える。
【0080】
図6に示すように、本体10の後面160は、電源スイッチ161と発光窓162とを有する。なお、電源スイッチ161と発光窓162とは一体となっていてもよく、電源スイッチ161の押圧される部分が発光窓162となっていてもよい。
【0081】
図5及び図6に示したように、アタッチメント20は、本体10の長手方向にスライド可能な状態で本体10に接続固定されている。アタッチメント20は、矩形状の平板部210と、平板部210の長辺部分からそれぞれ筐体100側に突出した規制部220と、本体10が挿入される空間を平板部210と形成するU字状部230とを有している。
【0082】
アタッチメント20の平板部210の底面110側の一部は、第一のガイド部211として機能し、第一のガイド部211に対向する筐体100の底面110の平らな部分は、第二のガイド部111として機能する。第一のガイド部211と第二のガイド部111とによって、真偽識別装置3の前面150側から紙幣BNの一部が挿入されるスリット部30が形成されている。スリット部30は、少なくとも3方向に開口しており、側面視略U字状の形状を有する。第一のガイド部211及び第二のガイド部111は、紙幣BNが走査される方向(走査方向)に紙幣を案内する。具体的には、第一のガイド部211及び第二のガイド部111は、第一の側面130及び第二の側面140のいずれか一方から他方に向かう方向に紙幣BNが走査されるよう紙幣BNを案内する。また、第一のガイド部211及び第二のガイド部111は、紙幣BNがスリット部30内で真偽識別装置3に対して紙幣BNの走査方向に相対的に移動されるように紙幣BNを案内する。
【0083】
図7に示すように、規制部220は、スリット部30に挿入される紙幣BNを当接させて、紙幣BNの挿入量を規制する。規制部220は、位置調整が可能であり、スリット部30に挿入した紙幣BNが規制部220に当接するまでの距離であるスリット深さDは、規制部220の位置に応じて変更可能である。
【0084】
図7及び図8に示すように、筐体100の内部には、底面110及び上面120に沿って設けられた制御基板101と、制御基板101の底面110側に配置された2種の光学センサ102A及び102Bと、制御基板101の上面120側に配置された、電源としてのバッテリー103と、が設けられている。なお、バッテリー103は、箱状部10Aから蓋部10Bを取り外すことにより交換される。
【0085】
光学センサ102Aは、光源1021A及び受光素子1022を備え、光学センサ102Bは、光源1021B及び受光素子1022を備える。光源1021A及び光源1021Bは、互いに異なる波長帯域の光を照射する。2種の光学センサ102A及び102Bは、互いに異なる光源1021A及び1021Bを備えるが、受光素子1022は共通して用いられる。
【0086】
複数の光学センサ102A及び102Bは、互いに異なる波長帯域の光を紙幣BNに照射する光源1021A及び1021Bを備える。このような態様とすることにより、紙幣BNの金種に応じた光源1021を発光させることが可能となり、多種多様な紙幣BNの真偽を識別することができる。例えば、紙幣に用いられている燐光インクを燐光発光させる励起光の種類は、通常、各国によって異なるため、真偽識別装置がより多くの国に対応できるようになる。なお、本実施形態の真偽識別装置3は2種の光源を備えるが、光源の種類はこれに限定されず、3種以上の光源を備えていてもよい。すなわち、互いに異なる波長帯域の光を紙幣BNに照射する3種以上の光学センサを備えていてもよい。
【0087】
光源1021からの励起光は、底面110に設けられた窓部113を通過して、スリット部30に挿入された紙幣BNに照射される。窓部113は、光源1021から照射される励起光及び紙幣BNから発せられた燐光が透過する透明な部材から構成されている。
【0088】
次に、図9を用いて、本実施形態に係る真偽識別装置3の機能的な構成について説明する。図9は、第1実施形態に係る真偽識別システムが備える真偽識別装置の構成を説明するブロック図である。図9に示すように、本実施形態の真偽識別装置3は、制御部3V、通信部3W、記憶部3X、検出部3Y及び報知手段3Dを備えている。
【0089】
制御部3Vは、真偽識別装置3の各部を制御するとともに、紙幣BNの真偽識別処理を行う機能を有する。制御部3Vは、例えば、各種の処理を実現するためのプログラムと、該プログラムを実行するCPUと、該CPUによって制御される各種ハードウェア等によって構成され、CPU及びその他のハードウェアは、制御基板101上に設けられている。制御部3Vは、対応するプログラムを実行することによって、真偽識別手段3Aして機能し得る。
【0090】
通信部3Wは、無線通信(例えば近距離無線通信)又は有線通信により外部装置と通信するものであり、例えば、近距離通信を介して、端末装置2とデータを送受信する機能を有する。通信部3Wは、送信手段3C1及び受信手段3C2を備えている。
【0091】
記憶部3Xは、制御部3Vの動作に必要なプログラムやデータを記憶する機能を有する。記憶部3Xは、RAM等の揮発性メモリ、ROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリといった記憶装置から構成され、制御基板101上に設けられている。
【0092】
記憶部3Xの不揮発性メモリは、光学センサ102の出力値から紙幣の真偽を識別するのに用いる評価値を算出するための算出式を記憶している。算出式は、紙幣BNの金種ごとに設定されている。また、端末装置2から送信された判定結果情報、例えばパラメータは、記憶部3Xの揮発性メモリに記憶される。
【0093】
検出部3Yは、紙幣BNが備える各種の性質を検出する機能を有する。検出部3Yは、紙幣BNに光を照射し、その紙幣から到来する光を受光し、信号として出力する複数の光学センサ102A及び102Bを備えている。
【0094】
真偽識別手段3Aは、光学センサ102の出力に基づき紙幣BNの真偽を識別する機能を有する。真偽識別手段3Aによる真偽識別結果は、紙幣BNが真券か偽券かを示すものであってもよいし、紙幣BNが真券である可能性を示す値(例えば、所定の数値範囲内の値)であってもよい。真券である可能性を示す値は、例えば、燐光インクの励起特性を分析して、真正インクの持つ特徴を総合的に判定した値であってもよい。
【0095】
真偽識別装置3は、端末装置2から送信された判定結果情報に応じた処理を実行し、紙幣BNの真偽を識別する。具体的には、例えば、真偽識別装置3が、判定結果情報に応じて光学センサ102を起動してもよい。すなわち、制御部3Vが、端末装置2から送信されたセンサ種別パラメータに対応する光学センサ102を起動してもよい。また、起動された光学センサ102が、判定結果情報に応じた光源1021を発光させてもよい。すなわち、起動された光学センサ102が、端末装置2から送信されたセンサ種別パラメータに対応する光源1021を発光させてもよい。また、真偽識別装置3が、起動された光学センサ102の出力値を判定結果情報に応じた閾値と対比してもよい。すなわち、真偽識別手段3Aが、起動された光学センサ102の出力値を、端末装置2から送信された閾値と対比してもよい。また、真偽識別装置3が、判定結果情報に応じた算出式に基づいて起動された光学センサ102の出力値から紙幣BNの真偽を識別するのに用いる評価値を算出してもよい。すなわち、真偽識別手段3Aが、端末装置2から送信された算出式パラメータに対応する算出式を用いて、起動された光学センサ102の出力値から紙幣BNの真偽を識別するのに用いる評価値を算出してもよい。このように、真偽識別装置3は、端末装置2からの金種の情報に応じた処理(例えば、紙幣BNの金種に応じて使用するセンサ(例えば光源)の選択、センサの起動、キャリブレーション、スキャンの制御等の処理)を実行する。このような構成によれば、例えば、操作者が金種に応じて処理条件を自ら変更しなくてもよいため、多種多様な紙幣の真偽を正確かつ簡易に識別することができる。
【0096】
真偽識別手段3Aは、例えば、光学センサ102の出力値を判定結果情報に応じた閾値と対比して、出力値が閾値以上である場合は紙幣BNが真券であると判定し、閾値未満である場合は紙幣BNが偽券であると判定してもよい。また、真偽識別手段3Aは、光学センサ102の出力値から算出した評価値に基づいて、紙幣BNが真券である可能性を示す値を算出し、その値を真偽識別結果として出力してもよい。
【0097】
上記パラメータは、上記判定結果情報に応じて設定された光源1021を消灯するタイミングに関するパラメータ(以下、消灯パラメータという。)を含んでもよい。消灯パラメータは、光源1021が点灯されてから一定時間経過したときに光源1021を消灯するタイミングに関するパラメータ、すなわち、上記一定時間を指定するパラメータであり、具体的には上記一定時間を示す時間である。
【0098】
本実施形態では、紙幣BNの真偽識別を行うにあたり、待機中は光源1021を消灯し、紙幣BNの走査を開始する時に光源1021を点灯し、紙幣BNの走査終了後に再び光源1021を消灯する。走査開始後、一定時間内に紙幣BNの真偽が正常に判断できなかった場合はタイムアウト処理を行ってもよいが、走査開始からタイムアウト処理をするまでの時間が短すぎると、紙幣BNの特性によっては操作者が時間内に操作を終えられないことも想定される。一方、本実施形態では、消灯パラメータにより、走査が開始されて光源1021が点灯されてから光源1021が消灯されるまでの時間を、紙幣BNの特性に基づいて金種に応じて設定することができる。具体的には、例えば、真偽識別に通常よりも時間を要する金種において、上記一定時間を長く設定することができる。このように、本実施形態では、光源1021の消灯時間を金種に応じて適切に制御することができるため、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、かつ、消費電力を抑えることができる。
【0099】
また、上記パラメータは、真偽識別装置3がある一定時間以上操作されなければ真偽識別装置3の電源を切るタイミングに関するパラメータを含んでもよい。すなわち、このパラメータは、上記一定時間を指定するパラメータであり、具体的には上記一定時間を示す時間であってもよい。このような態様とすることにより、真偽識別装置3の消費電力を抑えることができる。上記一定時間は、任意に設定することができる。
【0100】
送信手段3C1は、紙幣BNの真偽識別結果を端末装置2に送信する機能を有する。送信手段3C1は、無線通信(例えば近距離無線通信)又は有線通信により端末装置2に情報を送信するものであり、例えば、送信機、アンテナ等から構成されている。なお、真偽識別結果を含む各種の情報(データ)は、制御部3Vによって送信手段3C1に出力され、送信手段3C1によって送信される。また、送信手段3C1による送信のタイミング、内容(例えば真偽識別結果の内容)、範囲(送信先)等の判定ないし決定処理は、制御部3Vにより実行される。例えば、制御部3Vが、紙幣BNの真偽識別結果を、送信手段3C1を介して、端末装置2に送信する送信処理を実行する。
【0101】
受信手段3C2は、端末装置2から紙幣BNの金種の判定結果情報を受信する機能を有する。受信手段3C2は、無線通信(例えば近距離無線通信)又は有線通信により端末装置2から情報を受信するものであり、例えば、受信機、アンテナ等から構成されている。送信手段3C1及び受信手段3C2は、例えば、通信モジュールにより、通信部3Wとして一体的に構成され、端末装置2との間でBluetooth(登録商標)等にて無線接続してもよい。なお、受信手段3C2によって受信された各種の情報(データ)は、例えば、制御部3Vによる制御の下、記憶部3Xに記憶される。
【0102】
報知手段3Dは、真偽識別装置3のステータス、及び真偽識別手段3Aによる識別処理の結果を操作者に報知する機能を有する。本実施形態では、報知手段3Dは、発光窓162から構成されており、電源がオフである場合は消灯し、電源がオンである場合は点灯する。また、発光窓162は、真偽識別手段3Aによる真偽識別処理の結果に応じて異なる色で点灯することによって、その結果を操作者に報知する。
【0103】
図10は、第1実施形態に係る真偽識別システムの動作の他の例を説明するフローチャートである。図10を用いて、本実施形態に係る真偽識別システム1で行われる真偽識別処理の手順について説明する。まず、端末装置2の画像データ生成手段2Aが、紙幣BNの画像データを生成する(ステップS11)。次に、端末装置2の判定手段2Bが、生成した画像データから紙幣BNの金種を判定する(ステップS12)。次に、端末装置2の送信手段2C1が、判定結果に応じた情報である判定結果情報を真偽識別装置3に送信する(ステップS13)。判定結果情報は、紙幣BNの金種に応じてあらかじめ設定されたパラメータを含む。パラメータとしては、例えば、センサ種別パラメータ、紙幣BNの金種に応じた閾値、算出式パラメータ、消灯パラメータ等である。
【0104】
次に、真偽識別装置3の真偽識別手段3Aが、判定結果情報に応じた光学センサ102によるスキャンを行う(ステップS21)。具体的には、センサ種別パラメータに応じて光学センサ102を起動し、起動した光学センサ102がセンサ種別パラメータに応じた光源1021を発光させて紙幣BNをスキャンし燐光を受光する。また、端末装置2から送信される消灯パラメータに基づいて光源1021を消灯し、真偽識別装置3は燐光の受光を所定のタイミングで終了する。次に、真偽識別装置3の真偽識別手段3Aが、紙幣BNの真偽を識別する(ステップS22)。具体的には、起動された光学センサ102の出力値を紙幣の金種に応じた閾値と対比する、算出式パラメータに応じた算出式に基づいて、起動された光学センサ102の出力値から紙幣BNの真偽を識別するのに用いる評価値を算出する、等の処理を行う。次に、真偽識別装置3の送信手段3C1が、紙幣BNの真偽識別結果を端末装置2に送信する(ステップS23)。次に、真偽識別装置3の報知手段3Dが、紙幣BNの真偽識別結果を報知し(ステップ24)、真偽識別装置3は処理を終了する。
【0105】
次に、端末装置2が、紙幣BNの真偽識別結果を報知して(ステップS14)、端末装置2は処理を終了し、真偽識別システム1の動作が終了する。
【0106】
(第2実施形態)
本実施形態は、サーバにおいても画像データに基づいて紙幣の真偽を識別し、その結果と真偽識別装置による真偽識別結果とを統合することを除いて、実質的に第1実施形態と同じである。本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、第1実施形態と重複する内容についての詳細な説明は省略する。
【0107】
図11は、第2実施形態に係る真偽識別システムの構成を説明するブロック図である。図11に示すように、本実施形態の真偽識別システム1は、端末装置2と、紙幣BNの真偽を識別する真偽識別装置3と、サーバ4と、を備え、サーバ4は、端末装置2から画像データを取得し、取得した画像データから紙幣BNの記番号のフォントを判定し、判定したフォントに基づいて紙幣BNの真偽を識別し、真偽識別結果を端末装置2に送信する。このような態様とすることにより、複数の観点から紙幣BNの真偽を識別することができる。その結果、紙幣BNの真偽識別の精度を向上させることができる。
【0108】
端末装置2とサーバ4とは、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット等の通信網を介して、相互に通信可能に接続されている。
【0109】
サーバ4は、クラウド型であってもよいし、オンプレミス型であってもよいし、両者のハイブリッド型であってもよい。
【0110】
図12は、第2実施形態に係る真偽識別システムが備える端末装置の構成を説明するブロック図である。図12に示すように、端末装置2が備える送信手段2C1は、紙幣BNの金種の判定結果情報を真偽識別装置3に送信する機能に加えて、紙幣BNの画像データをサーバ4に送信する機能を有する。送信手段2C1は、通信網を介して、サーバ4へ情報を送信するものである。
【0111】
端末装置2が備える受信手段2C2は、真偽識別装置3から紙幣BNの真偽識別結果を受信する機能に加えて、サーバ4から紙幣BNの真偽識別結果を受信する機能を有する。受信手段2C2は、通信網を介して、サーバ4から情報を受信するものである。
【0112】
端末装置2が備える制御部2Vは、対応するプログラムを実行することによって、上述の判定手段2Bに加えて、真偽識別手段2Eとしても機能し得る。真偽識別手段2Eは、真偽識別装置3から送信された真偽識別結果と、サーバ4から送信された真偽識別結果とを統合して紙幣BNの真偽を識別する機能を有する。このような態様とすることにより、複数の観点から紙幣BNの真偽を識別することができ、真偽識別の精度を向上させることができる。
【0113】
端末装置2が備える報知手段2Dは、真偽識別装置3の真偽識別結果及びサーバ4の真偽識別結果を統合した真偽識別結果を操作者に報知する機能を有する。第1実施形態では、真偽識別装置3の真偽識別結果が報知手段2Dにより報知される態様について説明したが、本実施形態では真偽識別装置3の真偽識別結果はいずれの装置からも報知されず、統合された真偽識別結果が報知手段2Dにより報知される。
【0114】
図13は、第2実施形態に係る真偽識別システムが備えるサーバの構成を説明するブロック図である。図13に示すように、サーバ4は、制御部4Vと通信部4Wと記憶部4Xとを備える。
【0115】
制御部4Vは、サーバ4の各部を制御するとともに、紙幣BNの真偽識別処理を行う機能を有する。制御部4Vは、例えば、各種の処理を実現するためのプログラムと、該プログラムを実行するCPUと、該CPUによって制御される各種ハードウェア等によって構成されている。制御部4Vは、対応するプログラムを実行することによって、フォント判定手段4Aと真偽識別手段4Bとして機能し得る。
【0116】
通信部4Wは、無線通信又は有線通信により端末装置2を含む外部装置と通信するものであり、LAN、WAN、インターネット等の通信網を介して外部装置とデータを送受信する機能を有する。通信部4Wは、データを送信する送信手段4C1と、データを受信する受信手段4C2とを備えている。送信手段4C1及び受信手段4C2は、例えば、ネットワークカードにより、通信部4Wとして一体的に構成されていてもよい。
【0117】
記憶部4Xは、制御部4Vの動作に必要なプログラムやデータを記憶する機能を有する。記憶部4Xは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、HDD、SSD等の記憶装置から構成され、データ及びプログラムを書き込み及び読み出し可能に構成されている。
【0118】
フォント判定手段4Aは、端末装置2から送信された画像データから紙幣BNの記番号のフォントを判定する機能を有する。フォントの判定は、記番号のフォントの形状(種類やサイズ)や文字間のギャップ等の条件に基づいて行われる。
【0119】
真偽識別手段4Bは、判定したフォントに基づいて紙幣BNの真偽を識別する機能を有する。
【0120】
送信手段4C1は、紙幣BNの真偽識別結果を端末装置2に送信する機能を有する。送信手段4C1は、通信網を介して、端末装置2へ情報を送信するものである。なお、真偽識別結果を含む各種の情報(データ)は、制御部4Vによって送信手段4C1に出力され、送信手段4C1によって送信される。また、送信手段4C1による送信のタイミング、内容(例えば真偽識別結果の内容)、範囲(送信先)等の判定ないし決定処理は、制御部4Vにより実行される。例えば、制御部4Vが、紙幣BNの真偽識別結果を、送信手段4C1を介して、端末装置2に送信する送信処理を実行する。
【0121】
受信手段4C2は、端末装置2から紙幣BNの画像データを受信する機能を有する。受信手段4C2は、通信網を介して、端末装置2から情報を受信するものである。なお、受信手段4C2によって受信された各種の情報(データ)は、例えば、制御部4Vによる制御の下、記憶部4Xに記憶される。
【0122】
また、サーバ4は、記番号を読み取る機能、すなわち紙幣に記載された記番号が何であるかを認識する機能を有する記番号読み取り手段を有している。
【0123】
また、サーバ4は、端末装置2の各種パラメータを更新したり、端末装置2を経由して真偽識別装置3のファームウェアのアップデートを行ったりしてもよい。
【0124】
真偽識別装置3から送信される真偽識別結果及びサーバ4から送信される真偽識別結果は、真偽識別手段2Eによって統合される。例えば、真偽識別手段2Eは、真偽識別装置3から送信される真偽識別結果及びサーバ4から送信される真偽識別結果の少なくとも一方の真偽識別結果が偽券である場合、紙幣BNを偽券であると判定し、真偽識別装置3から送信される真偽識別結果及びサーバ4から送信される真偽識別結果の両方が真券である場合、紙幣BNを真券であると判定してもよい。
【0125】
また、真偽識別手段2Eは、例えば、真偽識別装置3から送信される真偽識別結果と、サーバ4から送信される真偽識別結果とにそれぞれ重み付けをし、合算することによって統合してもよい。より具体的には、例えば、以下のような処理を行うことによって真偽識別手段2Eにより統合されてもよい。真偽識別装置3から送信される真偽識別結果をA、サーバ4から送信される真偽識別結果をBとしたとき、それぞれの真偽識別結果に、下記(式1)を適用して、統合後の真偽識別結果Cを得ることができる。
【0126】
【数1】
(上記(式1)中、A、B及びCは0以上1以下の実数であり、Z1及びZ2は重みを表す実数であり、0<Z1<1、及び、Z1+Z2=1を満たす。)
【0127】
上記(式1)において、例えば、Z1は0.8であり、Z2は、0.2である。
【0128】
真偽識別結果A及びBは、それぞれ、紙幣が真券である可能性を示す値(例えば、所定の数値範囲内の値)である。真偽識別結果Aとしては、例えば、燐光インクの励起特性を分析して、真正インクの持つ特徴を総合的に判定した値が考えられる。真偽識別結果Bとしては、例えば、記番号のフォントの形状(種類やサイズ)や文字間のギャップを基準に判定した値が考えられる。フォントによる判定は外乱も多く、単体で真偽が判定できるほどの性能が期待できないことも想定されるため、補助的なものである。このため、例えば、上記(式1)に示すように各真偽識別結果A及びBに重み付けをして、具体的には、Z1>Z2となるようZ1及びZ2を設定して利用することができる。このような態様とすることにより、真偽識別装置3の真偽識別結果を主たる結果として利用しつつ、サーバ4の真偽識別結果を補助的に利用することができる。
【0129】
本システムの操作者には、端末装置2の表示手段において、上記真偽識別結果Cの割合をゲージで表示する、75%以上であれば緑色のチェックを表示する、等して判定結果を通知することができる。
【0130】
図14は、第2実施形態に係る真偽識別システムの動作の一例を説明するフローチャートである。次に、図14を用いて、真偽識別システム1による処理について説明する。まず、端末装置2の画像データ生成手段2Aが、紙幣BNの画像データを生成し(ステップS11)、端末装置2の送信手段2C1が、生成した紙幣BNの画像データをサーバ4に送信する。次に、端末装置2は、第1実施形態の場合と同様に、ステップS12~13の処理を実行する。
【0131】
次に、サーバ4の受信手段4C2が、送信された紙幣BNの画像データを取得する(ステップS31)。ここでは、例えば、端末装置2のシャッターボタンが押されると、そのタイミングで取得された画像データがサーバ4へ送信される。次に、サーバ4のフォント判定手段4Aが、取得した画像データから紙幣BNの記番号のフォントを判定する(ステップS32)。次に、サーバ4の真偽識別手段4Bが、判定したフォントに基づいて紙幣BNの真偽を識別する(ステップS33)。次に、サーバ4の送信手段4C1が、紙幣BNの真偽識別結果を端末装置2に送信して(ステップS34)、サーバ4は処理を終了する。
【0132】
次に、真偽識別装置3が、第1実施形態の場合と同様に、ステップS21~23の処理を実行する。ただし、本実施形態では、第1実施形態と異なり、真偽識別装置3は、その後、報知手段3Dによる真偽識別結果の報知(ステップS24)を実行せずに、真偽識別装置3は処理を終了する。本実施形態では真偽識別装置3の真偽識別結果とサーバ4の真偽識別結果とを統合するので、真偽識別装置3は真偽識別結果を報知しない。
【0133】
次に、端末装置2の真偽識別手段2Eが、サーバ4から送信された真偽識別結果と、真偽識別装置3から送信された真偽識別結果とを統合して紙幣BNの真偽を識別する(ステップS14)。次に、端末装置2の報知手段2Dが、統合された紙幣BNの真偽識別結果を報知して(ステップS15)、端末装置2は処理を終了し、真偽識別システム1の動作が終了する。
【0134】
図15は、第2実施形態に係る真偽識別システムの具体例を示す模式図である。端末装置2としては、例えば、図15に示す携帯端末装置2Pが挙げられる。携帯端末装置2Pは、例えば、カメラ、外部通信、表示、位置情報等の機能を有した、モバイル端末(例えば、ノートPC、タブレットPC、スマートフォン、携帯電話等)やウェアラブル端末(スマートウォッチ、スマートグラス等)であってもよい。サーバ4としては、例えば、図15に示すクラウドサーバ4Pが挙げられる。
【0135】
まず、携帯端末装置2Pのカメラで紙幣BNの画像データを取得し、当該紙幣BNの画像データが、携帯端末装置2Pからクラウドサーバ4Pへ送信される。また、携帯端末装置2Pにて物体識別ARを用いて紙幣BNの金種及びセキュリティ要素が判定され、当該判定に基づく判定結果情報が携帯端末装置2Pから真偽識別装置3へ送信される。
【0136】
センサ種別パラメータに基づいて起動された光学センサ102を用いて紙幣BNをスキャンして紙幣BNの真偽識別を行う。真偽識別装置3の真偽識別結果は、携帯端末装置2Pに送信される。
【0137】
クラウドサーバ4Pは、画像データからフォントを判定し、判定したフォントに基づいて紙幣BNの真偽識別処理を行う。クラウドサーバ4Pの真偽識別結果は、携帯端末装置2Pに送信される。また、クラウドサーバ4Pは、紙幣BNの記番号のテキスト情報取得、記番号のテキスト情報を用いた履歴情報の保存等を行う。上記履歴情報には、携帯端末装置2Pで取得した位置情報等が含まれる。
【0138】
携帯端末装置2Pは、真偽識別装置3から送信された真偽識別結果と、クラウドサーバ4Pから送信された真偽識別結果とを統合して、当該統合された真偽識別結果を表示パネルに表示する。
【0139】
図16は、第2実施形態に係る真偽識別システムが備える端末装置に表示される、真偽識別装置の操作方法の一例を示す模式図である。画像データから判定した紙幣BNの金種に基づいて、携帯端末装置2Pの表示パネルには、図16に示すように、ライブビュー画像として表示された紙幣BNの画像データ上に、当該紙幣BNを真偽識別装置3でスキャンする際の方法が表示される。ここで、紙幣のセキュリティ性を向上させるために、近年、紙幣のどの位置にどのようなセキュリティ要素が存在するかを公にしない手法が取られているが、本実施形態では、紙幣BNを真偽識別装置3でスキャンする際の方法が表示されるので、紙幣BNの真偽識別を行うことができる。また、特許文献1では、特許文献1の図4のように紫外線照射位置が具体的に示されているため、紙幣のどの位置にセキュリティ要素が存在するのかが操作者によって特定されてしまうが、本実施形態ではスキャンする場所を表示するのみでセキュリティ要素の場所を特定して表示するものではないため、特許文献1よりもセキュリティ要素の位置を操作者に特定されにくい。
【0140】
以下、各実施形態における変形例について説明する。
【0141】
上記実施形態では、上記判定結果情報が紙幣の種類に応じてあらかじめ設定されたパラメータを含む態様について説明したが、判定結果情報は、紙幣の種類情報を含むものであってもよい。このような態様とすることにより、端末装置が、紙幣の種類に応じて設定された複数のパラメータを記憶する必要がなくなり、端末装置の構成をよりシンプルにすることが可能となる。また、端末装置が、紙幣の種類に応じて設定された複数のパラメータから識別対象の紙幣に対応するパラメータを選択する必要が無くなり、端末装置の構成をよりシンプルにすることが可能となる。
【0142】
判定結果情報が紙幣の種類情報を含むものである場合、真偽識別装置は、紙幣の種類に応じて設定された複数のパラメータ(センサ種別パラメータ、紙幣の種類に応じた閾値、算出式パラメータ、消灯パラメータ等)を記憶しており、種類情報に応じたパラメータを使用する。このような態様とすることにより、端末装置から紙幣の種類に応じてあらかじめ設定されたパラメータを取得せずとも、真偽識別装置は、紙幣の種類情報に応じた処理を実行し、紙幣の真偽を識別することができる。
【0143】
上記実施形態では、上記判定結果情報が紙幣の種類に応じてあらかじめ設定されたパラメータを含む態様を説明し、上記変形例では、判定結果情報が紙幣の種類情報を含む態様について説明したが、判定結果情報は、紙幣の種類に応じてあらかじめ設定されたパラメータ及び紙幣の種類情報の両者を含むものであってもよい。このような態様とすることにより、紙幣の金種に応じたパラメータの全てを端末装置及び真偽識別装置のいずれか一方に記憶させる必要がなく、端末装置及び真偽識別装置で補完し合って記憶することが可能となるため、両者の構成を複雑にすることなく、紙幣の金種に応じて真偽識別を行うことができる。
【0144】
上記実施形態では、真偽識別装置について、光源が紙幣に対して紫外光を照射し、受光素子が紙幣から発せられる燐光を受光する場合について説明したが、光源が照射する光は紫外光に限定されず、例えば、可視光、赤外光等であってもよい。また、受光素子が受光する光は燐光に限定されず、紙幣から発せられる蛍光、光源から照射された光が紙幣で反射した反射光、光源から照射された光が紙幣を透過した透過光であってもよい。
【0145】
上記実施形態では、互いに異なる光源を備えると共に、互いに共通する受光素子を備える複数の光学センサについて説明したが、複数の光学センサは、光源だけでなく、受光素子についても互いに異なるものを備えていてもよい。
【0146】
上記実施形態では、複数の光学センサが受光素子を共通して備える態様について説明したが、複数の光学センサは、互いに異なる受光素子を備えていてもよい。
【0147】
上記実施形態では各金種に対して1種類の光学センサを選択して真偽識別を行うが、1つの金種に対して2種類以上のセンサを用いてもよい。例えば、1つの金種に対して2種類の光学センサ(第一の光学センサ及び第二の光学センサ)を用いる場合、第一の光学センサに搭載された光源及び第二の光学センサに搭載された光源を交互に点灯させて第一の光学センサの光源の反射光、及び、第二の光学センサの光源の反射光を検出する。または、検出する光が反射光ではなく燐光である場合は、各センサの光源から光を照射して一定時間経過した後に燐光の出力を検出する。第一の光源に基づいて検出される光及び第二の光源に基づいて検出される光は、共に反射光であっても、共に燐光であっても、いずれか一方が反射光であり、他方が燐光であってもよい。
【0148】
上記実施形態では複数のセンサとして光学センサを用いたが、複数のセンサの種類はこれに限定されず、複数のセンサは、磁気センサ等の他のセンサを含んでいてもよい。この場合、光学センサとは別に磁気センサ等他のセンサの回路を真偽識別装置に実装する。光学センサと磁気センサとが干渉しなければ、光学センサと磁気センサとを同時に検出することもできる。
【0149】
上記実施形態では、操作者が、一方の手で紙幣を把持し、他方の手で真偽識別装置を把持し、紙幣を把持した側の手を動かして紙幣と真偽識別装置とを相対的に移動させる場合について説明したが、真偽識別装置を把持した側の手を動かして紙幣と真偽識別装置とを相対的に移動させてもよく、紙幣を把持した側の手及び真偽識別装置を把持した側の手の両者を動かして紙幣と真偽識別装置とを相対的に移動させてもよい。
【0150】
上記実施形態では、操作者が、一方の手で紙幣を把持し、他方の手で真偽識別装置を把持した状態で紙幣の真偽判定を行う場合について説明したが、真偽識別装置を把持せずに所定の場所(例えば、レジ釣銭機の横等)に設置して、設置した装置に対して手動で紙幣をスライドさせてもよい。
【0151】
上記実施形態では、本体にアタッチメントを取り付け、本体とアタッチメントとの間に設けられたスリット部に紙幣を挿入してスライドさせる場合について説明したが、本体にアタッチメントを取り付けなくてもよい。この場合、例えば、平らな台や手のひらの上に載置した紙幣上を手動により真偽識別装置をスライドさせてもよい。
【0152】
上記実施形態では、真偽識別装置と紙幣とを相対的に移動(スライド)させながら光学センサによる燐光発光(燐光インク)の検出を行う場合について説明したが、真偽識別装置と紙幣とを相対的に静止した状態で光学センサによる燐光発光(燐光インク)の検出を行ってもよい。
【0153】
上記実施形態では、判定手段が紙幣の画像データから当該紙幣の種類を判定するが、判定手段が紙幣の種類を判定する前に、対象金種の候補を絞り込み、判定手段による種類判定に初期条件を与え、処理の高速化を図ってもよい。
【0154】
上記実施形態のサーバのデータベースに蓄積された情報等を組み合わせて、真偽識別システムの高度化や精緻化を行ってもよい。
【0155】
以上、図面を参照しながら本開示の実施形態を説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。また、各実施形態の構成は、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0156】
以上のように、本開示は、多種多様な紙幣の真偽を識別するのに有用な技術である。
【符号の説明】
【0157】
1:真偽識別システム
2:端末装置
2A:画像データ生成手段
2B:判定手段
2C1、3C1、4C1:送信手段
2C2、3C2、4C2:受信手段
2D、3D:報知手段
2E、3A、4B:真偽識別手段
2P:携帯端末装置
2V、3V、4V:制御部
2W、3W、4W:通信部
2X、3X、4X:記憶部
3:真偽識別装置
3Y:検出部
4:サーバ
4A:フォント判定手段
4P:クラウドサーバ
10:本体
10A:箱状部
10A1:下部
10A2:上部
10B:蓋部
20:アタッチメント
30:スリット部
100:筐体
101:制御基板
102、102A、102B:光学センサ
103:バッテリー
110:底面
111:第二のガイド部
113:窓部
120:上面
130、140:側面
131、141:凸部
150:前面
160:後面
161:電源スイッチ
162:発光窓
210:平板部
211:第一のガイド部
220:規制部
230:U字状部
1021、1021A、1021B:光源
1022:受光素子
BN:紙幣
D:スリット深さ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16