(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092892
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】粉鉱石造粒物製造用添加剤
(51)【国際特許分類】
C22B 1/244 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
C22B1/244
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205869
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】岩本 亮司
(72)【発明者】
【氏名】佐川 桂一郎
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001BA14
4K001CA27
4K001CA29
4K001KA06
(57)【要約】
【課題】粒径が大きく通気性のよい粉鉱石造粒物を製造できる、粉鉱石造粒物製造用添加剤を提供する。
【解決手段】(a)ポリオキシアルキレン部位を有するポリカルボン酸系高分子化合物(鎖状オレフィンを構成単量体として含むものを除く)〔以下、(a)成分という〕と、(b)不飽和カルボン酸と鎖状オレフィンとを構成単量体として含む高分子化合物〔以下、(b)成分という〕とを含有する粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリオキシアルキレン部位を有するポリカルボン酸系高分子化合物(鎖状オレフィンを構成単量体として含むものを除く)〔以下、(a)成分という〕と、(b)不飽和カルボン酸と鎖状オレフィンとを構成単量体として含む高分子化合物〔以下、(b)成分という〕とを含有する粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【請求項2】
(a)成分の含有量と(b)成分の含有量の質量比である、(b)/(a)が、0.01以上0.3以下である、請求項1に記載の粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【請求項3】
(a)成分が、重合度100以上のポリオキシエチレン部位を有する、請求項1又は2に記載の粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【請求項4】
粉鉱石と、(a)ポリオキシアルキレン部位を有するポリカルボン酸系高分子化合物(鎖状オレフィンを構成単量体として含むものを除く)〔以下、(a)成分という〕と、(b)不飽和カルボン酸と鎖状オレフィンとを構成単量体として含む高分子化合物〔以下、(b)成分という〕と、水とを混合して造粒する、粉鉱石造粒物の製造方法。
【請求項5】
粉鉱石と、(a)成分、(b)成分及び水を含有する添加剤組成物と、を混合する、請求項4に記載の粉鉱石造粒物の製造方法。
【請求項6】
請求項1~3の何れか1項記載の粉鉱石造粒物製造用添加剤を用いる、請求項4又は5に記載の粉鉱石造粒物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉鉱石造粒物製造用添加剤、及び粉鉱石造粒物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスでは、高炉に供給する鉄源として、粉鉱石の造粒物を焼結した焼結鉱が用いられる。粉鉱石の造粒物は、例えば、ドラムミキサーなどの混合装置を用いて、粉鉱石と生石灰に、石灰石、粉コークス、水などを供給して混合した後、造粒して製造される。
【0003】
特許文献1には、鉄鉱石およびSiO2、CaO、MgO等成分調整用副原料の粉鉱石と炭材等から成る焼結原料を混合し、ブリケットに成形する焼結用ブリケットの製造方法において、焼結原料にスラリ濃度20~50%の湿ダストを2~7%添加し、混練し、混練後の原料水分を2~7%に調整し、ブリケットに成形する焼結用ブリケットの製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、微粉及び粗粒の各ペレット原料から出発し、水分とバインダとが添加された造粒用原料を得る原料処理工程と、該造粒用原料を用いて造粒を行い生ボールペレットを得る造粒工程と、該生ボールペレットを焼成して鉄鉱石ペレットを得る焼成工程とからなる鉄鉱石ペレット製造法において、前記造粒用原料を得るに際し、転炉吹練で発生する排ガスより捕集した転炉ダストをバインダとして用いることを特徴とする鉄鉱石ペレット製造法における原料処理方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、製鉄用原料をダストと共に造粒処理する工程を含んでなる製鉄用原料の造粒処理方法であって、該製鉄用原料の造粒処理方法は、重量平均分子量が1000~5000000の高分子化合物を必須成分とするダスト処理剤をダストに添加して混合処理する工程の後に、製鉄用原料に添加し、造粒処理する工程を行う、製鉄用原料の造粒処理方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、製鉄用原料を造粒処理する方法において、上記製鉄用原料に、平均粒径200μm以下の微粉のスラリーを添加して造粒処理を行う製鉄用原料の造粒処理方法が開示されており、前記スラリーは、カルボキシ基やアルキレンオキサイド鎖を有する高分子化合物を含み得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1-162729号公報
【特許文献2】特開2000-239752号公報
【特許文献3】特開2004-76130号公報
【特許文献4】特開2003-293044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
粉鉱石の造粒物は、焼結して焼結鉱として高炉に供給される。焼結は、下方吸引式の焼結機で行われることが多い。下方吸引式の焼結機では、粉鉱石の造粒物は、数百mm程度の厚さの焼結ベッドともいわれる堆積層として取り扱われる。下方吸引式の焼結機では、焼結ベッドの下側から吸引することによって焼結に必要な空気を流通させると共に、焼結原料の上側から下側へ向かって凝結材を燃焼させることにより、焼結原料である造粒物を焼結するようになっている。粉鉱石造粒物は、粒径が大きい事が望まれる。造粒時に使用する水の量を増やすことで、粒径は大きくすることが可能であるが、一方で焼結時に水を蒸発させるために熱量が必要となる。
【0009】
本発明は、粒径が大きく通気性のよい粉鉱石造粒物を製造できる、粉鉱石造粒物製造用添加剤、及び粉鉱石造粒物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(a)ポリオキシアルキレン部位を有するポリカルボン酸系高分子化合物(鎖状オレフィンを構成単量体として含むものを除く)と、(b)不飽和カルボン酸と鎖状オレフィンとを構成単量体として含む高分子化合物とを含有する粉鉱石造粒物製造用添加剤(以下、本発明の添加剤という場合もある)に関する。
【0011】
また、本発明は、粉鉱石と、(a)ポリオキシアルキレン部位を有するポリカルボン酸系高分子化合物(鎖状オレフィンを構成単量体として含むものを除く)〔以下、(a)成分という〕と、(b)不飽和カルボン酸と鎖状オレフィンとを構成単量体として含む高分子化合物〔以下、(b)成分という〕と、水とを混合して造粒する、粉鉱石造粒物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、粒径が大きく通気性のよい粉鉱石造粒物を製造できる、粉鉱石造粒物製造用添加剤、及び粉鉱石造粒物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<粉鉱石造粒物製造用添加剤>
粉鉱石造粒物の製造にあたり、粉鉱石や併用するその他の粒子などの原料粒子の凝集粒子間に拘束されている水を解放することで、実質的に使用できる水の量を増やし、粒径を大きくすることが出来る。そのためには、原料粒子の分散性を向上させて凝集を抑制することが望ましい。
本発明では、添加剤として用いる二つの化合物のうち、(a)成分は、粒子に吸着して粒子間に立体斥力を生じさせて粒子の凝集を抑制する効果に寄与すると考えられる。また、添加剤として用いる二つの化合物のうち、(b)成分は、粒子の分散、とりわけ有機粒子の分散に寄与すると考えられる。
粉鉱石造粒物の製造原料には、粉鉱石の他に、種々の無機粒子や有機粒子が含まれる。(a)成分は、有機粒子に吸着すると失活して立体斥力が発現しにくくなるが、本発明では、前記他方の化合物が有機粒子に優先的に吸着して失活を防ぎ、立体斥力の低下を防いでいる。
そのため、本発明では、原料粒子の分散性が向上し、粒子間の水が解放されて造粒物の粒径が大きくなるものと考えられる。
【0014】
(a)成分としては、重合度100以上のポリオキシエチレン部位を有するものが好ましい。ポリオキシエチレン部位の重合度は、200以下が好ましい。
【0015】
(a)成分としては、分散性の観点から、下記一般式(1)で示される単量体(1)を構成単量体として含む共重合体(鎖状オレフィンを構成単量体として含むものを除く)が好ましい。
(a)成分としては、下記一般式(1)で示される単量体(1)と下記一般式(2)で示される単量体(2)とを構成単量体として含む共重合体(鎖状オレフィンを構成単量体として含むものを除く)がより好ましい。
【0016】
【0017】
〔式中、
R1、R2:同一でも異なっていても良く、水素原子又はメチル基
R3:水素原子又は-COO(AO)nX1
X1:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる基
n:AOの平均付加モル数であり、1以上300以下の数
q:0以上2以下の数
p:0又は1の数
を示す。〕
【0018】
【0019】
〔式中、
R4、R5、R6:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM2であり、(CH2)rCOOM2は、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
M1、M2:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
【0020】
一般式(1)中、R1は、重合性の観点から、水素原子が好ましい。
一般式(1)中、R2は、添加剤の保存安定性の観点から、メチル基が好ましい。
一般式(1)中、R3は、重合性の観点から、水素原子が好ましい。
一般式(1)中、X1は、親水性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(1)中、AOは、親水性の観点から、エチレンオキシ基が好ましい。AOはエチレンオキシ基を含むことが好ましい。
一般式(1)中、nは、AOの平均付加モル数であり、分散性の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは50以上、より更に好ましくは100以上、そして、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下、より更に好ましくは130以下である。
一般式(1)中、添加剤の保存安定性の観点から、pは、1が好ましい。
【0021】
一般式(2)中、重合性の観点から、R4は、水素原子が好ましい。
一般式(2)中、添加剤の保存安定性の観点から、R5は、メチル基が好ましい。
一般式(2)中、重合性の観点から、R6は、水素原子が好ましい。
(CH2)rCOOM2については、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
M1とM2は同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルケニル基である。
M1、M2のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びアルケニル基は、それぞれ、炭素数1以上4以下が好ましい。
M1とM2は、同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ類金属(1/2原子)、アンモニウム基、又はアルキルアンモニウム基が好ましく、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、又はアンモニウム基がより好ましく、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属(1/2原子)が更に好ましく、水素原子、又はアルカリ金属がより更に好ましい。
入手性の観点から、一般式(2)中の(CH2)rCOOM2のrは、1が好ましい。
【0022】
単量体(1)を構成単量体として含む共重合体は、分散性の観点から、構成単量体中の単量体(1)の合計量が、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。
【0023】
単量体(1)と単量体(2)とを構成単量体として含む共重合体は、分散性と吸着性の観点から、構成単量体中の単量体(1)と単量体(2)の合計量が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。この合計量は、100質量%であってもよい。
【0024】
単量体(1)と単量体(2)とを構成単量体として含む共重合体は、単量体(1)と単量体(2)の合計中の単量体(2)の割合が、分散性の観点から、好ましくは40モル%以上、そして、好ましくは99モル%以下、より好ましくは97モル%以下、更に好ましくは95モル%以下である。
【0025】
ポリカルボン酸系高分子化合物、更に単量体(1)を構成単量体として含む共重合体、更に単量体(1)と単量体(2)とを構成単量体として含む共重合体の重量平均分子量は、分散性の観点から、好ましくは20,000以上、より好ましくは30,000以上、更に好ましくは40,000以上、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは100,000未満、更に好ましくは80,000以下である。
【0026】
ポリカルボン酸系高分子化合物、更に単量体(1)を構成単量体として含む共重合体、更に単量体(1)と単量体(2)とを構成単量体として含む共重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、それぞれ、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されたものである。
*GPC条件
装置:GPC(HLC-8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(分子量既知の単分散ポリエチレングリコール、分子量87,500、250,000、145,000、46,000、24,000)
【0027】
ポリカルボン酸系高分子化合物は、AOの平均付加モル数や単量体(1)単量体(2)の割合などが異なる高分子化合物を2種以上用いることもできる。
【0028】
(b)成分としては、酸基を含む単量体である不飽和カルボン酸と鎖状オレフィンとを構成単量体として含む共重合体が好ましい。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸またはその塩及びマレイン酸無水物が挙げられ、マレイン酸またはその塩及びマレイン酸無水物が好ましい。鎖状オレフィンの炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。(b)成分は、構成単量体中の不飽和カルボン酸と鎖状オレフィンの合計量が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。(b)成分は、不飽和カルボン酸/鎖状オレフィンのモル比は、好ましくは0.3以上、好ましくは0.5以上、そして、好ましくは4以下、より好ましくは2以下である。(b)成分の重量平均分子量は、低粘性の観点から、好ましくは20,000以下、より好ましくは15,000以下、更に好ましくは10,000以下であり、そして分散性の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは3,000以上である。
【0029】
本発明では、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量の質量比である、(b)/(a)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、そして、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.25以下、更に好ましくは0.2以下である。
【0030】
本発明の添加剤は、(a)成分、(b)成分以外の成分を含有することができる。例えば、本発明の添加剤は、任意に、起泡剤、増粘剤、発泡剤、防水剤、消泡剤などを含有することができる。本発明の添加剤は、(a)成分及び(b)成分の含有量の合計が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、100質量%以下であり、100質量%であってよい。すなわち、本発明の添加剤は、(a)成分及び(b)成分からなるものであってよい。
【0031】
<粉鉱石造粒物の製造方法>
本発明は、粉鉱石と、(a)成分と、(b)成分と、水とを混合して造粒する、粉鉱石造粒物の製造方法を提供する。本発明の添加剤で述べた事項は、本発明の粉鉱石造粒物の製造方法に適宜適用することができる。本発明の製造方法における(a)成分、(b)成分の具体例や好ましい態様などは、本発明の添加剤と同じである。また、本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤における各成分の含有量は、混合量に置き換えて、本発明の製造方法に適用することができる。
【0032】
粉鉱石としては、ヘマタイト鉱石、ピソライト鉱石、マラマンバ鉱石、ゲーサイト鉱石などがあり、これら1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。粉鉱石は、例えば、南米産、豪州産、カナダ産、インド産などのものが使用できる。
【0033】
本発明の粉鉱石造粒物の製造方法では、(a)成分と(b)成分の合計の混合量が、粉鉱石に対して、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.00005質量%以上、更に好ましくは0.0001質量%以上、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下となるように、(a)成分と(b)成分を混合する。本発明の添加剤を用いる場合は、この範囲となるように用いることが好ましい。
【0034】
本発明の粉鉱石の製造方法では、本発明の添加剤を用いることが好ましい。本発明の粉鉱石造粒物の製造方法では、本発明の添加剤を、粉鉱石に対して、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.00005質量%以上、更に好ましくは0.0001質量%以上、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下混合する。
【0035】
本発明の粉鉱石の製造方法では、(a)成分の混合量と(b)成分の混合量の質量比である、(b)/(a)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、そして、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.25以下、更に好ましくは0.2以下である。
【0036】
本発明の粉鉱石造粒物の製造方法では、粉鉱石と、(a)成分、(b)成分及び水を含有する添加剤組成物とを混合することが好ましい。
【0037】
前記添加剤組成物における(a)成分及び(b)成分の合計の含有量は、添加剤組成物の粘度低減の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05%質量以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0038】
本発明の添加剤を用いる場合、前記添加剤組成物における本発明の添加剤の含有量は、添加剤組成物の粘度低減の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05%質量以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0039】
前記添加剤組成物は、燃焼補助の観点から、炭素分を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下含有する。ここで炭素分の割合は、JIS R 1603 に規定する「炭素の定量方法」に準じた方法で測定することができる。
【0040】
前記添加剤組成物は、任意に、起泡剤、増粘剤、発泡剤、防水剤、消泡剤などを含有することができる。
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、エーテル系消泡剤、ポリアルキレンオキシド系消泡剤、アルキルリン酸エステル系消泡剤、及びアセチレングリコール系消泡剤から選ばれる1種以上の消泡剤が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、及びエーテル系消泡剤から選ばれる1種以上の消泡剤が好ましい。
【0041】
前記添加剤組成物は、水を、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下含有する。
【0042】
前記添加剤組成物は、25℃での粘度が0.1mPa以上、好ましくは0.5mPa以上、より好ましくは1mPa以上、そして、500mPa・s以下、好ましくは250mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下である。この粘度は、25℃でレオメータにより測定されたものである。具体的には、以下の方法で測定することができる。
・レオメータによる添加剤組成物の粘度測定方法
回転式レオメータ(アントンパール(株)製MCR301)を用いて温度25℃、剪断速度100s-1での剪断粘度を測定する。その際、測定プレートは、PP50を用いる。
【0043】
前記添加剤組成物は、20℃のpHが、好ましくは7以上、より好ましくは8以上、そして、好ましくは13以下、より好ましくは12以下である。
【0044】
粉鉱石と前記添加剤組成物との混合、造粒に用いられる造粒機としては、一般に焼結鉱プロセスで広く用いられているドラムミキサーや、さらには、ディスクペレタイザーなどの造粒能力が高い造粒機が用いられる。なかでも粉鉱石、その他鉄含有原料、副原料、および、炭材に水や添加剤組成物を添加して1種類の造粒機のみで良好な混合、造粒を行なうためには、ドラムミキサーを用いることが好ましい。
【0045】
粉鉱石造粒物は、造粒後の焼結工程に必要な製鉄用副原料、凝結材等を含んでもよい。製鉄用副原料とは、焼結時の組成を調整するもので、生灰石、石灰石、ドロマイトなどのCa含有原料、蛇紋岩、珪石、スラグなどのSi含有原料、返鉱等が好適である。中でも、生石灰の微粉は造粒の際に粒子同士を結合させるためのバインダとしても好ましい。この生石灰は、水と反応すると水酸化カルシウムの微細粒子を生成し、この水酸化カルシウムの微細粒子が造粒時に粉鉱石の各粒子間間隙に侵入して付着することにより、粉鉱石粒子同士を結び付けて強固な疑似粒子を形成する作用がある。生石灰の添加量は、造粒物の強度の観点から、造粒物に対して、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。また、吸水による焼結時の熱効率低下の観点から5質量%以下が好ましく、2.5質量%以下が更に好ましい。凝結材とは焼結時の熱源となるもので、粉コークス、無煙炭等が最適である。これらの成分は、粉鉱石と前記添加剤組成物とを混合する際に混合することができる。
【0046】
本発明により製造された粉鉱石造粒物は、平均粒径が、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、そして、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下である。ここで、粉鉱石造粒物の平均粒径は、下記の方法で算出することができる。後述の実施例では、下記の方法で粉鉱石造粒物の平均粒径を求めた。下記の方法は、例えば、東北大学の学位論文11301甲第18218号「鉄鉱石の資源の自由度拡大に資する焼結原料予備処理プロセスに関する研究」の5.2.4章などを参考にできる。
<粉鉱石造粒物の平均粒径>
造粒直後の造粒物を篩目0.5mm、1.0mm、2.8mm、4.75mm、8mm、9.5mmのスクリーンによって30秒間篩分けを行い、各篩上の質量を測定する。各篩での代表粒径には目開きの算術平均値を用い、代表粒径と各粒度の質量比率を加重平均して算出する。
【実施例0047】
表に示す粉鉱石、添加剤組成物、水などの成分を用いて下記の造粒方法により粉鉱石造粒物を製造した。得られた粉鉱石造粒物の平均粒径を前記の方法で測定した。結果を表に示す。
【0048】
なお、表で用いた成分は以下のものである。
〔(a)成分〕
・a-1:メタクリル酸と、メタクリル酸とポリエチレングリコールモノメチルエーテルのエステル(ポリエチレングリコール部分の平均重合度120)との、共重合体の中和塩(共重合体中のメタクリル酸比率が90mol%)、重量平均分子量40000、有効分濃度40質量%(残部は水)で使用した。
・a-2:アクリル酸とイソプレノールエチレンオキサイド付加物(エチレンオキシド部分の平均付加モル数50)との共重合体の中和塩(共重合体中のアクリル酸比率が75mol%)、重量平均分子量26000、有効分濃度40質量%(残部は水)で使用した。
〔(b)成分〕
・b-1:マレイン酸と、炭素数8のオレフィンの共重合体の中和塩(共重合体中のマレイン酸比率が50mol%)、重量平均分子量4300、有効分濃度35質量%(残部は水)で使用した。
【0049】
〔(a’)成分(比較成分)〕
・a’-1:ポリアクリル酸、重量平均分子量25000、有効分濃度40質量%(残部は水)で使用した。
【0050】
(1)添加剤組成物の調製
水と添加剤を添加し、ハンドミキサーにて30秒間攪拌して添加剤組成物を得た。
【0051】
(2)粉鉱石の造粒
ドラムミキサーに粉鉱石、生石灰を投入し2分間混合し、更に水を加え2分間混合した。その後水を添加しながら1分30秒造粒した。ドラムミキサーを回転させながら添加剤組成物を1分間で添加し、更に4分間造粒を行い、造粒物を得た。なお、各成分の混合量は表に示す質量部となるように調整した。
【0052】
(3)粉鉱石造粒物の平均粒径
得られた粉鉱石造粒物の平均粒径を前記の方法で測定した。
【0053】
(4)通気性
造粒直後の粉鉱石造粒物を直径42mm高さ300mmの円筒に充填し、下部より差圧20.4mmH2Oで吸引を行い、円筒直下の風量を測定した。稲角著「焼結鉱」(社団法人日本鉄鋼協会、2000年9月)より、通気性JPUをJPU=F/A×(L/ΔP)0.6より算出した。JPUの値が大きいほど通気性がよいことを意味する。
F:風量(m3/min)
A:円筒断面積(m2)
L:円筒高さ(mm)
ΔP:差圧(mmH2O)
【0054】
【0055】
表1の結果から、実施例のように本発明の所定の2つの化合物を組み合わせた添加剤を用いることで、比較例よりも粉鉱石造粒物の平均粒径が大きくなり、通気性も向上することがわかる。