(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092893
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】粉鉱石造粒物製造用添加剤
(51)【国際特許分類】
C22B 1/244 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
C22B1/244
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205870
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】岩本 亮司
(72)【発明者】
【氏名】佐川 桂一郎
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001BA14
4K001CA27
4K001CA29
4K001KA06
(57)【要約】
【課題】焼結前の強度が高い粉鉱石造粒物を製造できる粉鉱石造粒物製造用添加剤及び粉鉱石造粒物の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオキシアルキレン部位を90質量%を超えて含み、重量平均分子量が10,000以上であるポリオキシアルキレン化合物を含有する、粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレン部位を90質量%を超えて含み、重量平均分子量が10,000以上であるポリオキシアルキレン化合物を含有する、粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【請求項2】
ポリオキシアルキレン化合物の重量平均分子量が100,000以上500,000以下である、請求項1に記載の粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【請求項3】
粉鉱石に対してポリオキシアルキレン化合物が0.00001質量%以上0.1質量%以下となるように用いられる、請求項1又は2に記載の粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【請求項4】
ポリオキシアルキレン部位が、オキシエチレン基を含む、請求項1~3の何れか1項記載の粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【請求項5】
粘度低減剤を含有する、請求項1~4の何れか1項に記載の粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【請求項6】
粘度低減剤が、ナフタレン系高分子化合物、ポリカルボン酸系高分子化合物、メラミン系高分子化合物、リグニン系高分子化合物、及びフェノール系高分子化合物から選ばれる1種以上の粘度低減剤(ポリオキシアルキレン部分を90質量%を超えて含む化合物を除く)である、請求項5に記載の粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【請求項7】
ポリオキシアルキレン化合物と粘度低減剤の質量比が、ポリオキシアルキレン化合物/粘度低減剤で0.0001以上10以下である、請求項5又は6に記載の粉鉱石造粒物製造用添加剤。
【請求項8】
粉鉱石と、ポリオキシアルキレン部位を90質量%を超えて含み、重量平均分子量が10,000以上であるポリオキシアルキレン化合物とを混合して造粒する、粉鉱石造粒物の製造方法。
【請求項9】
ポリオキシアルキレン化合物の重量平均分子量が100,000以上500,000以下である、請求項8に記載の粉鉱石造粒物の製造方法。
【請求項10】
粉鉱石と前記ポリオキシアルキレン化合物と共に粘度低減剤を混合する、請求項8又は9に記載の粉鉱石造粒物の製造方法。
【請求項11】
粉鉱石と、前記ポリオキシアルキレン化合物、粘度低減剤及び水を含有するスラリとを混合する、請求項10に記載の粉鉱石造粒物の製造方法。
【請求項12】
前記ポリオキシアルキレン化合物を、粉鉱石に対して、0.00001質量%以上0.1質量%以下混合する、請求項8~11のいずれか1項に記載の粉鉱石造粒物の製造方法。
【請求項13】
粉鉱石を造粒して粉鉱石造粒物を製造する際に、粉鉱石に、90質量%を超えて含み、重量平均分子量が10,000以上であるポリオキシアルキレン化合物を混合して造粒する、粉鉱石造粒物の強度向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉鉱石造粒物製造用添加剤、及び粉鉱石造粒物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスでは、高炉に供給する鉄源として、粉鉱石の造粒物を焼結した焼結鉱が用いられる。粉鉱石の造粒物は、例えば、ドラムミキサーなどの混合装置を用いて、粉鉱石と生石灰に、石灰石、粉コークス、水などを供給して混合した後、造粒して製造される。
【0003】
特許文献1には、鉄鉱石およびSiO2、CaO、MgO等成分調整用副原料の粉鉱石と炭材等から成る焼結原料を混合し、ブリケットに成形する焼結用ブリケットの製造方法において、焼結原料にスラリ濃度20~50%の湿ダストを2~7%添加し、混練し、混練後の原料水分を2~7%に調整し、ブリケットに成形する焼結用ブリケットの製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、微粉及び粗粒の各ペレット原料から出発し、水分とバインダとが添加された造粒用原料を得る原料処理工程と、該造粒用原料を用いて造粒を行い生ボールペレットを得る造粒工程と、該生ボールペレットを焼成して鉄鉱石ペレットを得る焼成工程とからなる鉄鉱石ペレット製造法において、前記造粒用原料を得るに際し、転炉吹練で発生する排ガスより捕集した転炉ダストをバインダとして用いることを特徴とする鉄鉱石ペレット製造法における原料処理方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、製鉄用原料をダストと共に造粒処理する工程を含んでなる製鉄用原料の造粒処理方法であって、該製鉄用原料の造粒処理方法は、重量平均分子量が1000~5000000の高分子化合物を必須成分とするダスト処理剤をダストに添加して混合処理する工程の後に、製鉄用原料に添加し、造粒処理する工程を行う、製鉄用原料の造粒処理方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、製鉄用原料を造粒処理する方法において、上記製鉄用原料に、平均粒径200μm以下の微粉のスラリーを添加して造粒処理を行う製鉄用原料の造粒処理方法が開示されており、前記スラリーは、カルボキシ基やアルキレンオキサイド鎖を有する高分子化合物を含み得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1-162729号公報
【特許文献2】特開2000-239752号公報
【特許文献3】特開2004-76130号公報
【特許文献4】特開2003-293044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
粉鉱石の造粒物は、焼結して焼結鉱として高炉に供給される。焼結は、下方吸引式の焼結機で行われることが多い。下方吸引式の焼結機では、粉鉱石の造粒物は、数百mm程度の厚さの焼結ベッドともいわれる堆積層として取り扱われる。下方吸引式の焼結機では、焼結ベッドの下側から吸引することによって焼結に必要な空気を流通させると共に、焼結原料の上側から下側へ向かって凝結材を燃焼させることにより、焼結原料である造粒物を焼結するようになっている。焼結前の粉鉱石造粒物は、堆積層での変形や運搬時の変形、破損などを防止するために、強度が高いことが望ましいが、焼結後の粉鉱石造粒物(焼結鉱)の強度とは必ずしも相関がないため、焼結前の粉鉱石造粒物に応じた異なる観点での改良が必要である。
【0009】
本発明は、焼結前の強度が高い粉鉱石造粒物を製造できる、粉鉱石造粒物製造用添加剤、及び粉鉱石造粒物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリオキシアルキレン部位を90質量%を超えて含み、重量平均分子量が10,000以上であるポリオキシアルキレン化合物を含有する、粉鉱石造粒物製造用添加剤に関する。
【0011】
また、本発明は、粉鉱石と、ポリオキシアルキレン部位を90質量%を超えて含み、重量平均分子量が10,000以上であるポリオキシアルキレン化合物とを混合して造粒する、粉鉱石造粒物の製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、粉鉱石を造粒して粉鉱石造粒物を製造する際に、ポリオキシアルキレン部位を90質量%を超えて含み、重量平均分子量が10,000以上であるポリオキシアルキレン化合物(以下、本発明のポリオキシアルキレン化合物という場合もある)を混合して造粒する、粉鉱石造粒物の強度向上方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、焼結前の強度が高い粉鉱石造粒物を製造できる粉鉱石造粒物製造用添加剤及び粉鉱石造粒物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<粉鉱石造粒物製造用添加剤>
本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤は、ポリオキシアルキレン部位を90質量%を超えて含み、重量平均分子量が10,000以上であるポリオキシアルキレン化合物を含有する。
【0015】
本発明のポリオキシアルキレン化合物は、水と親和性の高いポリオキシアルキレン基を多く含み、且つ分子量が造粒の原料粒子間にとどまるのに適切な分子量になっていると考えられる。そのため、本発明のポリオキシアルキレン化合物は、原料粒子間の潤滑性を増やし、造粒物中で原料粒子が密に充填した状態となり、造粒物の強度が向上するものと考えられる。
【0016】
本発明のポリオキシアルキレン化合物において、ポリオキシアルキレン部位の質量%は、当該ポリオキシアルキレン化合物の質量に占めるポリオキシアルキレン部位の質量の割合である。
【0017】
本発明のポリオキシアルキレン化合物におけるポリオキシアルキレン部位(以下、POA部位と表記する)の質量%の算出方法について、当該化合物として、メタクリル酸と、メタクリル酸とポリエチレングリコールモノメチルエーテルのエステル(ポリエチレングリコール部分の平均重合度120)との共重合体の中和塩(重合体中のメタクリル酸比率が65mol%、重量平均分子量60,000)を例に説明する。
この共重合体における構成単位のうち、メタクリル酸を構成単位(I)とし、メタクリル酸とポリエチレングリコールモノメチルエーテルのエステル(ポリエチレングリコール部分の平均重合度120)を構成単位(II)とすると、それぞれの分子量は以下の通りとなる。
構成単位(I)の分子量:86
構成単位(II)の分子量(数平均分子量):5380
構成単位(II)中のPOA部位の分子量(数平均分子量):5280
この共重合体では、構成単位(I)/構成単位(II)のモル比が0.65/0.35であるので、当該共重合体中のPOA部位の1分子あたりの平均質量は、5280×0.35=1848となる。
一方、この共重合体の1分子あたりの平均質量は、(86×0.65)+(5380×0.35)=1938.9となる。
従って、この共重合体の質量に占めるPOA部位の質量の割合(質量%)は、1848/1938.9×100=95.3となる。
なお、構成単位がオキシアルキレンのみである場合は、POA部位の質量の割合は100質量%となる。
【0018】
本発明のポリオキシアルキレン化合物は、ポリオキシアルキレン部位を、90質量%を超えて含み、好ましくは92質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは94質量%以上、そして、100質量%以下含有する。本発明のポリオキシアルキレン化合物は、ポリオキシアルキレン部位を100質量%含有するもの、例えばポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールであってもよい。
【0019】
本発明のポリオキシアルキレン化合物は、重量平均分子量が、10,000以上、更に30,000以上、更に50,000以上、更に100,000以上、そして、例えば10,000,000以下、更に3,000,000以下、更に2,000,000以下、更に500,000以下から選択できる。
【0020】
本発明のポリオキシアルキレン化合物の重量平均分子量及び必要により測定される数平均分子量は、それぞれ、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されたものである。
*GPC条件
装置:GPC(HLC-8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(分子量既知の単分散ポリエチレングリコール、分子量(920,000、510,000、250,000、170,000、95,000、46,000、26,000、126,000、6,450、1,470))
【0021】
本発明のポリオキシアルキレン化合物のポリオキシアルキレン部位としては、炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基からなるポリオキシアルキレン部位が挙げられる。具体的には、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、及びオキシブチレン基から選ばれる1種又は2種以上を含むポリオキシアルキレン部位が挙げられ、オキシエチレン基を含むポリオキシアルキレン部位が好ましい。
【0022】
本発明のポリオキシアルキレン化合物としては、ポリオキシアルキレン部位を有するポリカルボン酸系高分子化合物、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンひまし油、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミドが挙げられる。中でもポリオキシアルキレン部位を有するポリカルボン酸系高分子化合物、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルから選ばれる1種以上の化合物が好ましい。ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールが好ましい。
本発明のポリオキシアルキレン化合物としては、ポリオキシアルキレン部位を有するポリカルボン酸系高分子化合物、及びポリエチレングリコールから選ばれる1種以上の化合物がより好ましく、ポリエチレングリコールから選ばれる1種以上の化合物がより更に好ましい。すなわち、本発明のポリオキシアルキレン化合物は、オキシエチレン基を90質量%を超えて含有する化合物が好ましい。
【0023】
ポリオキシアルキレン部位を有するポリカルボン酸系高分子化合物としては、分散性の観点から、下記一般式(1)で示される単量体(1)を構成単量体として含み、ポリオキシアルキレン部位を90質量%を超えて含む共重合体が好ましい。
ポリオキシアルキレン部位を有するポリカルボン酸系高分子化合物としては、下記一般式(1)で示される単量体(1)と下記一般式(2)で示される単量体(2)とを構成単量体として含み、ポリオキシアルキレン部位を90質量%を超えて含む共重合体がより好ましい。
【0024】
【0025】
〔式中、
R1、R2:同一でも異なっていても良く、水素原子又はメチル基
R3:水素原子又は-COO(AO)nX1
X1:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる基
n:AOの平均付加モル数であり、1以上300以下の数
q:0以上2以下の数
p:0又は1の数
を示す。〕
【0026】
【0027】
〔式中、
R4、R5、R6:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM2であり、(CH2)rCOOM2は、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
M1、M2:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
【0028】
一般式(1)中、R1は、重合性の観点から、水素原子が好ましい。
一般式(1)中、R2は、添加剤の保存安定性の観点から、メチル基が好ましい。
一般式(1)中、R3は、重合性の観点から、水素原子が好ましい。
一般式(1)中、X1は、親水性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(1)中、AOは、親水性の観点から、エチレンオキシ基が好ましい。AOはエチレンオキシ基を含むことが好ましい。
一般式(1)中、nは、AOの平均付加モル数であり、分散性の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上、より更に好ましくは20以上、そして、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下、より更に好ましくは130以下である。
一般式(1)中、添加剤の保存安定性の観点から、pは、1が好ましい。
【0029】
一般式(2)中、重合性の観点から、R4は、水素原子が好ましい。
一般式(2)中、添加剤の保存安定性の観点から、R5は、メチル基が好ましい。
一般式(2)中、重合性の観点から、R6は、水素原子が好ましい。
(CH2)rCOOM2については、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
M1とM2は同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルケニル基である。
M1、M2のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びアルケニル基は、それぞれ、炭素数1以上4以下が好ましい。
M1とM2は、同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ類金属(1/2原子)、アンモニウム基、又はアルキルアンモニウム基が好ましく、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、又はアンモニウム基がより好ましく、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属(1/2原子)が更に好ましく、水素原子、又はアルカリ金属がより更に好ましい。
入手性の観点から、一般式(2)中の(CH2)rCOOM2のrは、1が好ましい。
【0030】
単量体(1)を構成単量体として含む共重合体は、分散性の観点から、構成単量体中の単量体(1)の合計量が、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。
単量体(1)と単量体(2)とを構成単量体として含む共重合体は、分散性と吸着性の観点から、構成単量体中の単量体(1)と単量体(2)の合計量が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。この合計量は、100質量%であってもよい。
【0031】
単量体(1)と単量体(2)とを構成単量体として含む共重合体は、単量体(1)と単量体(2)の合計中の単量体(2)の割合が、分散性の観点から、好ましくは40モル%以上、そして、好ましくは99モル%以下、より好ましくは97モル%以下、更に好ましくは95モル%以下である。
【0032】
ポリカルボン酸系高分子化合物、更に単量体(1)を構成単量体として含む共重合体、更に単量体(1)と単量体(2)とを構成単量体として含む共重合体の重量平均分子量は、分散性の観点から、好ましくは20,000以上、より好ましくは30,000以上、更に好ましくは40,000以上、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは100,000未満、更に好ましくは80,000以下である。
【0033】
ポリカルボン酸系高分子化合物、更に単量体(1)を構成単量体として含む共重合体、更に単量体(1)と単量体(2)とを構成単量体として含む共重合体の重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法は前記の通りである。
【0034】
ポリカルボン酸系高分子化合物は、AOの平均付加モル数や単量体(1)単量体(2)の割合などが異なる高分子化合物を2種以上用いることもできる。
【0035】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテルにおけるアルキルエーテル及びアルケニルエーテルとしては、具体的には、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、デシルエーテル、ラウリルエーテル、ミリスチルエーテル、パルミチルエーテル、ステアリルエーテル、ベヘニルエーテル、イソステアリルエーテル、オレイルエーテルが挙げられ、好ましくはエチルエーテル、メチルエーテルである。
【0036】
本発明のポリオキシアルキレン化合物のうち、ポリカルボン酸系高分子化合物以外の化合物、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルは、それぞれ、重量平均分子量が、10,000以上、好ましくは50,000以上、より好ましくは80,000以上、更に好ましくは100,000以上、そして、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、更に好ましくは200,000以下である。これらの化合物についても重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法は前記の通りである。
【0037】
本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤は、水溶液や水系スラリで用いる場合の粘度低減の観点から、粘度低減剤を含有することが好ましい。
粘度低減剤としては、ナフタレン系高分子化合物、ポリカルボン酸系高分子化合物、メラミン系高分子化合物、リグニン系高分子化合物、及びフェノール系高分子化合物から選ばれる1種以上の粘度低減剤(ポリオキシアルキレン部分を90質量%を超えて含む化合物を除く)が挙げられる。
【0038】
粘度低減剤としては、ナフタレン系高分子化合物及びポリカルボン酸系高分子化合物から選ばれる1種以上の粘度低減剤(ポリオキシアルキレン部分を90質量%を超えて含む化合物を除く)が好ましい。
【0039】
ナフタレン系高分子化合物としては、好ましくはナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩が挙げられる。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、ナフタレンスルホン酸、例えばβ-ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩である。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は、性能を損なわない限り、単量体として、例えばメチルナフタレン、エチルナフタレン、ブチルナフタレン、ヒドロキシナフタレン、ナフタレンカルボン酸、アントラセン、フェノール、クレゾール、クレオソート油、タール、メラミン、尿素、スルファニル酸及び/又はこれらの誘導体などのようなナフタレンスルホン酸と共縮合可能な芳香族化合物と共縮合させても良い。
【0040】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、例えば、スコアロールPD-315M、マイテイ150、デモールN、デモール RN、デモール MS、デモールSN-B、デモール SS-L(いずれも花王株式会社製)、セルフロー 120、ラベリン FD-40、ラベリン FM-45(いずれも第一工業株式会社製)などのような市販品を用いることができる。
【0041】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、低粘性の観点から、重量平均分子量が、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは80,000以下、より更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは30,000以下である。そして、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、分散性の観点から、重量平均分子量が、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは4,000以上、より更に好ましくは5,000以上である。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は酸の状態あるいは中和物であってもよい。
【0042】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩の分子量は下記条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
[GPC条件]
カラム:G4000SWXL+G2000SWXL(東ソー株式会社)
溶離液:30mM CH3COONa/CH3CN=6/4
流量:0.7ml/min
検出:UV280nm
サンプルサイズ:0.2mg/ml
標準物質:西尾工業(株)製 ポリスチレンスルホン酸ソーダ換算(単分散ポリスチレンスルホン酸ナトリウム:分子量、206、1,800、4,000、8,000、18,000、35,000、88,000、780,000)
検出器:東ソー株式会社 UV-8020
【0043】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩の製造方法は、例えば、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとを縮合反応により縮合物を得る方法が挙げられる。前記縮合物の中和を行ってもよい。また、中和で副生する水不溶解物を除去してもよい。具体的には、ナフタレンスルホン酸を得るために、ナフタレン1モルに対して、硫酸1.2~1.4モルを用い、150~165℃で2~5時間反応させてスルホン化物を得る。次いで、該スルホン化物1モルに対して、ホルムアルデヒドとして0.95~0.99モルとなるようにホルマリンを85~95℃で、3~6時間かけて滴下し、滴下後95~105℃で縮合反応を行う。更に、得られる縮合物の水溶液は酸性度が高いので貯槽等の金属腐食を抑制する観点から、得られた縮合物に、水と中和剤を加え、80~95℃で中和工程を行うことができる。中和剤は、ナフタレンスルホン酸と未反応硫酸に対してそれぞれ1.0~1.1モル倍添加することが好ましい。また、中和により生じる水不溶解物を除去することができ、その方法として好ましくは濾過による分離が挙げられる。これらの工程によって、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶性塩の水溶液が得られる。この水溶液は、そのまま当該高分子化合物の水溶液として使用することができる。更に必要に応じて該水溶液を乾燥、粉末化して粉末状のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩を得ることができ、これを粉末状の高分子化合物として使用することができる。乾燥、粉末化は、噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥等により行うことができる。
【0044】
粘度低減剤のポリカルボン酸系高分子化合物としては、不飽和カルボン酸と鎖状オレフィンとを構成単量体として含む高分子化合物(以下、カルボン酸-オレフィン系高分子化合物ともいう)が挙げられる。カルボン酸-オレフィン系高分子化合物としては、酸基を含む単量体である不飽和カルボン酸と鎖状オレフィンとを構成単量体として含む共重合体が好ましい。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸またはその塩及びマレイン酸無水物が挙げられ、マレイン酸またはその塩及びマレイン酸無水物が好ましい。鎖状オレフィンの炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。カルボン酸-オレフィン系高分子化合物は、構成単量体中の不飽和カルボン酸と鎖状オレフィンの合計量が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。カルボン酸-オレフィン系高分子化合物は、不飽和カルボン酸/鎖状オレフィンのモル比は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、そして、好ましくは4以下、より好ましくは2以下である。カルボン酸-オレフィン系高分子化合物の重量平均分子量は、低粘性の観点から、好ましくは20,000以下、より好ましくは15,000以下、更に好ましくは10,000以下であり、そして分散性の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは3,000以上である。
【0045】
また、粘度低減剤のポリカルボン酸系高分子化合物としては、前記一般式(1)で示される単量体(1)を構成単量体として含む共重合体、更に前記一般式(1)で示される単量体(1)と前記一般式(2)で示される単量体(2)とを構成単量体として含む共重合体が挙げられる。単量体(1)、単量体(2)、共重合体の具体例や好ましい態様は、本発明の本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤と同じである。
【0046】
ただし、粘度低減剤としてのポリカルボン酸系高分子化合物は、ポリオキシアルキレン部分を90質量%以下含有する化合物である。
【0047】
メラミン系高分子化合物としては、例えば、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩が挙げられる。メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、メラミンにホルムアルデヒドを反応させて得られたN-メチロール化メラミンに重亜硫酸塩を反応させてメチロール基の一部をスルホメチル化し、次いで酸を加えてメチロール基を脱水縮合させてホルムアルデヒド縮合物とし、アルカリで中和して得られる化合物である(例えば特公昭63-37058号公報参照)。アルカリとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、モノ、ジ、トリアルキル(炭素数2~8)アミン、モノ、ジ、トリアルカノール(炭素数2~8)アミン等を挙げることができる。
【0048】
リグニン系高分子化合物としては、リグニンスルホン酸塩又はその誘導体が挙げられる。リグニンスルホン酸塩又はその誘導体は、市販品を用いることが出来る。例えば、BASFジャパン社のマスターポゾリスNo.70、マスターポリヒード15Sシリーズ、フローリック社のフローリックSシリーズ、フローリックRシリーズ、グレースケミカル社のダーレックスWRDA、日本シーカ社のプラスクリートNC、プラスクリートR、山宗化学社のヤマソー80P、ヤマソー90シリーズ、ヤマソー98シリーズ、ヤマソー02NL-P、ヤマソー02NLR-P、ヤマソー09NL-P、ヤマソーNLR-P、竹本油脂社のチューポールEX60シリーズ、チューポールLS-Aシリーズ、リグエース社のリグエースUAシリーズ、リグエースURシリーズ、リグエースVFシリーズなどが挙げられる。
【0049】
フェノール系高分子化合物としては、例えば、ポリアルキレンオキシ基を有する芳香族化合物とカルボン酸またはスルホン酸などの酸基を有するフェノール化合物とを付加重合または縮合重合させて得られる化合物が挙げられる。
【0050】
本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤が粘度低減剤を含有する場合、本発明のポリオキシアルキレン化合物と粘度低減剤の質量比は、ポリオキシアルキレン化合物/粘度低減剤で、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.01上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは9.5以下、更に好ましくは9以下である。
また、本発明のポリオキシアルキレン化合物が、ポリアルキレングリコール、更にポリエチレングリコールである場合、ポリアルキレングリコール/粘度低減剤の質量比は、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.01上、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.05以下である。
【0051】
本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤は、任意に起泡剤、増粘剤、発泡剤、防水剤、消泡剤などを含有することができる。ただし、これらもポリオキシアルキレン部分を90質量%以下含有する化合物である。
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、エーテル系消泡剤、ポリアルキレンオキシド系消泡剤、アルキルリン酸エステル系消泡剤、及びアセチレングリコール系消泡剤から選ばれる1種以上の消泡剤が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、及びエーテル系消泡剤から選ばれる1種以上の消泡剤が好ましい。
【0052】
本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤は、粉鉱石に対して、本発明のポリオキシアルキレン化合物が、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.00005質量%以上、更に好ましくは0.0001質量%以上、そして、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0.005質量%以下となるように用いられる。
【0053】
<粉鉱石造粒物の製造方法>
本発明の粉鉱石造粒物の製造方法は、粉鉱石と、ポリオキシアルキレン部位を90質量%を超えて含み、重量平均分子量が10,000以上であるポリオキシアルキレン化合物とを混合して造粒する。前記ポリオキシアルキレン化合物は、本発明のポリオキシアルキレン化合物であり、具体例や好ましい態様は、本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤と同じである。本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤で述べた事項は、本発明の粉鉱石造粒物の製造方法に適宜適用することができる。また、本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤における各成分の含有量は、混合量に置き換えて、本発明の製造方法に適用することができる。
【0054】
粉鉱石としては、ヘマタイト鉱石、ピソライト鉱石、マラマンバ鉱石、ゲーサイト鉱石などがあり、これら1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。粉鉱石は、例えば、南米産、豪州産、カナダ産、インド産などのものが使用できる。
【0055】
本発明の粉鉱石造粒物の製造方法では、粉鉱石と本発明のポリオキシアルキレン化合物と共に粘度低減剤を混合することが好ましい。粘度低減剤の具体例や好ましい態様は、本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤と同じである。
【0056】
本発明の粉鉱石造粒物の製造方法では、本発明のポリオキシアルキレン化合物を、粉鉱石に対して、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.00005質量%以上、更に好ましくは0.0001質量%以上、そして、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下、より更に好ましくは0.005質量%以下混合する。
【0057】
本発明の粉鉱石造粒物の製造方法では、粉鉱石と、本発明のポリオキシアルキレン化合物及び水を含有するスラリとを混合することが好ましい。
粘度低減剤を用いる場合、本発明の粉鉱石造粒物の製造方法では、粉鉱石と、本発明のポリオキシアルキレン化合物、粘度低減剤及び水を含有するスラリとを混合することが好ましい。
【0058】
前記スラリは、本発明のポリオキシアルキレン化合物を、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下含有する。
【0059】
前記スラリは、粘度低減剤を、有効分として、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下含有する。
【0060】
前記スラリは、ダスト、スラジ、例えば、製鉄原料、高炉、転炉、コークス炉などの製鉄所や発電所から発生するダスト、スラジを含有することができる。また、前記スラリは、炭酸カルシウム、カオリンクレー、シリカ、珪砂、タルク、ベントナイト、ドロマイト粉末、ドロマイトプラスタ、炭酸マグネシウム、シリカヒューム、無水石膏、セリサイト、モンモリロナイト、シラス、シラスバルーン、珪藻土、焼成珪藻土、シリコンカーバイト、黄色酸化鉄、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、黒鉛、ワラストナイト、クレカスフェアー、カーボンブラック、ベンガラ、粉砕蛇紋岩、活性白土、ポルトランドセメント、粉砕珪石、酸化マグネシウム、焼成ヒル石、脱硫石膏、アスベスト粉塵などを含有することができる。前記スラリは、製鉄ダスト、製鋼ダスト、及びコークスダストから選ばれる成分を含有することが好ましい。前記スラリは、製鉄ダストを、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下含有する。
【0061】
粉鉱石と前記スラリとの混合、造粒するために用いられる造粒機としては、一般に焼結鉱プロセスで広く用いられているドラムミキサーや、さらには、ディスクペレタイザーなどの造粒能力が高い造粒機が用いられる。なかでも粉鉱石、その他鉄含有原料、副原料、および、炭材に水やスラリを添加して1種類の造粒機のみで良好な混合、造粒を行なうためには、ドラムミキサーを用いることが好ましい。
【0062】
粉鉱石造粒物は、造粒後の焼結工程に必要な製鉄用副原料、凝結材等を含んでもよい。製鉄用副原料とは、焼結時の組成を調整するもので、生灰石、石灰石、ドロマイトなどのCa含有原料、蛇紋岩、珪石、スラグなどのSi含有原料、返鉱等が好適である。中でも、生石灰の微粉は造粒の際に粒子同士を結合させるためのバインダとしても好ましい。この生石灰は、水と反応すると水酸化カルシウムの微細粒子を生成し、この水酸化カルシウムの微細粒子が造粒時に粉鉱石の各粒子間間隙に侵入して付着することにより、粉鉱石粒子同士を結び付けて強固な疑似粒子を形成する作用がある。生石灰の添加量は、造粒物の強度の観点から、造粒物に対して、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。また、吸水による焼結時の熱効率低下の観点から5質量%以下が好ましく、2.5質量%以下が更に好ましい。凝結材とは焼結時の熱源となるもので、粉コークス、無煙炭等が最適である。これらの成分は、粉鉱石とスラリとを混合する際に混合することができる。
【0063】
本発明により製造された粉鉱石造粒物は、平均粒径が、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、そして、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下である。ここで、粉鉱石造粒物の平均粒径は、下記の方法で算出することができる。下記の方法は、例えば、東北大学の学位論文11301甲第18218号「鉄鉱石の資源の自由度拡大に資する焼結原料予備処理プロセスに関する研究」の5.2.4章などを参考にできる。
<粉鉱石造粒物の平均粒径>
造粒直後の造粒物を篩目0.5mm、1.0mm、2.8mm、4.75mm、8mm、9.5mmのスクリーンによって30秒間篩分けを行い、各篩上の質量を測定する。各篩での代表粒径には目開きの算術平均値を用い、代表粒径と各粒度の質量比率を加重平均して算出する。
【0064】
<粉鉱石造粒物の強度向上方法>
本発明の粉鉱石造粒物の強度向上方法は、粉鉱石を造粒して粉鉱石造粒物を製造する際に、粉鉱石に、ポリオキシアルキレン部位を90質量%を超えて含み、重量平均分子量が10,000以上であるポリオキシアルキレン化合物を混合して造粒する。
前記ポリオキシアルキレン化合物は、本発明のポリオキシアルキレン化合物であり、具体例や好ましい態様は、本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤と同じである。本発明の粉鉱石造粒物製造用添加剤及び本発明の粉鉱石造粒物の製造方法で述べた事項は、本発明の粉鉱石造粒物の強度向上方法に適宜適用することができる。
本発明のポリオキシアルキレン化合物は、粉鉱石の造粒物の強度を向上させることがわかった。
本発明の粉鉱石造粒物の強度向上方法でも、前記したスラリで本発明のポリオキシアルキレン化合物を混合することが好ましい。
【実施例0065】
表に示す粉鉱石、スラリ、水などの成分を用いて下記の造粒方法により粉鉱石造粒物を製造し、強度を以下方法で評価した。粉鉱石造粒物の組成、強度を表2に示す。
【0066】
なお、表で用いた成分は以下のものである。
<粒子>
・ダスト:平均粒径0.9μmの製銑ダスト
前記ダストの粒径は、平均一次粒径であり、レーザー回折/散乱法を用いた下記の方法で測定した。
・ダストの平均一次粒径の測定方法
レーザー回折/散乱式粒度分布計によって測定した。レーザー回折/散乱式粒度分布計として、粒度分布測定装置「LA-300」(株式会社堀場製作所製)を用いた。測定すべきダストと水とを含むスラリを、粒度分布測定装置「LA-300」に対して試料投入口から投入し、10分間超音波処理後に測定を開始した。粒径は体積基準のメジアン径を意味する。
測定方法:フロー法
分散媒:水
分散方法:攪拌、内蔵超音波照射(15W、28kHz、10分間)
測定時の透過率:70~90%
相対屈折率:1.2
【0067】
<粉鉱石造粒物製造用添加剤>
・ポリカルボン酸系高分子化合物(1):メタクリル酸と、メタクリル酸とポリエチレングリコールモノメチルエーテルのエステル(ポリエチレングリコール部分の平均重合度120)との、共重合体の中和塩(重合体中のメタクリル酸比率が65mol%)、重量平均分子量60,000、有効分濃度40質量%(残部は水)で使用した。
・ポリエチレングリコール(1):有効分濃度30質量%(残部は水)で使用した。
・ポリエチレングリコール(2):有効分濃度10質量%(残部は水)で使用した。
・ポリエチレングリコール(3):有効分濃度10質量%(残部は水)で使用した。
・比較ポリエチレングリコール(1):有効分濃度30質量%(残部は水)で使用した(比較の添加剤)。
・ポリアクリル酸:重量平均分子量25,000(比較の添加剤)、有効分濃度30質量%(残部は水)で使用した。表では、便宜的にポリオキシアルキレン化合物の欄に示した。
・比較ポリカルボン酸系高分子化合物(1):メタクリル酸と、メタクリル酸とポリエチレングリコールモノメチルエーテルのエステル(ポリエチレングリコール部分の平均重合度120)との、共重合体の中和塩(重合体中のメタクリル酸比率が90mol%)、重量平均分子量40000、固形分濃度40質量%(残部は水)で使用した。
【0068】
<粘度低減剤>
・粘度低減剤A:マレイン酸と、炭素数8のオレフィンの共重合体の中和塩(共重合体中のマレイン酸比率が50mol%)、重量平均分子量4,300、有効分濃度35質量%(残部は水)で使用した。
・粘度低減剤B:βナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、有効分濃度40質量%(残部は水)で使用した。
【0069】
(1)スラリの調製
製銑ダストに水とポリオキシアルキレン化合物と粘度低減剤を表に示す量で添加し、ハンドミキサーにて30秒間攪拌してスラリを得た。
【0070】
(2)粉鉱石の造粒
ドラムミキサーに粉鉱石、生石灰を投入し2分間混合し、更に水を加え2分間混合した。その後水を添加しながら1分30秒造粒した。ドラムミキサーを回転させながらスラリを1分間で添加し、更に4分間造粒を行い、造粒物を得た。なお、各成分の混合量は表に示す質量部となるように調整した。
【0071】
(3)粉鉱石造粒物の強度
造粒直後の粉鉱石造粒物のうち5~10mmのものを均等に20個選択し(造粒物の直径をDとした)、レオメータ(アントンパール(株)製MCR301)にて圧縮を行い、破断した際の荷重(Load,L)を測定した。その際、測定プレートは、PP25を用いた。また、降下速度は、0.05mm/sとした。
文献(Transactions of the Institution ofChemical Engineers,1958年vol36,422ページ~)より強度因子kをk=L/D2より算出し、その平均値を粉鉱石造粒物の強度とした。
【0072】
【0073】
【0074】
表中、ポリオキシアルキレン化合物、粘度低減剤のスラリ中の含有量は、有効分換算の質量%である。
表中、POA部位の含有量は、ポリオキシアルキレン部位の含有量(質量%)である。
表中、Mwは、重量平均分子量である。
表中、ポリオキシアルキレン化合物の混合量は、粉鉱石に対する有効分換算の質量%である。
表中、(X)/(Y)は、ポリオキシアルキレン化合物/粘度低減剤の質量比である。
【0075】
表1、2の結果から、粉鉱石造粒物製造用添加剤として、所定の分子量、所定のPOA部位の含有量を満たすポリオキシアルキレン化合物を用いた実施例では、造粒物の強度が向上することがわかる。比較例1-1、比較例1-3、比較例2-1では、造粒物の強度は低く、ポリオキシアルキレン化合物として所定の分子量とPOA含有量を満たすことで、造粒物の強度が向上することがわかる。