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特開2022-92910認知症の危険性判定システムおよび認知症の危険性判定用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092910
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】認知症の危険性判定システムおよび認知症の危険性判定用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20180101AFI20220616BHJP
【FI】
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205899
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】510108858
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】島田 裕之
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】より高精度な認知症の危険性判定システムおよび認知症の危険性判定用プログラムを提供する。
【解決手段】認知症の危険性の被判定者の年齢情報、一人暮らしか否かの情報、歩数情報、定期的な運動情報、体重減少情報、転倒経験情報、記憶問題情報およびうつ傾向情報を取得する判定情報取得手段41と、判定情報取得手段41により取得した年齢情報、一人暮らしか否かの情報、歩数情報、定期的な運動情報、体重減少情報、転倒経験情報、記憶問題情報およびうつ傾向情報を使用して前記被判定者の認知症の危険性を判定する判定手段42と、判定手段42により判定された被判定者の認知症の危険性を表示する判定結果表示手段43と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
認知症の危険性の被判定者の年齢情報、一人暮らしか否かの情報、歩数情報、定期的な運動情報、体重減少情報、転倒経験情報、記憶問題情報およびうつ傾向情報を取得する判定情報取得手段と、
前記判定情報取得手段により取得した年齢情報、一人暮らしか否かの情報、歩数情報、定期的な運動情報、体重減少情報、転倒経験情報、記憶問題情報およびうつ傾向情報を使用して前記被判定者の認知症の危険性を判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された前記被判定者の認知症の危険性を表示する判定結果表示手段と、を備える認知症の危険性判定装置。
【請求項2】
前記歩数情報は、1日当たりの平均歩数であり、前記定期的な運動情報は、定期的な運動またはスポーツを1週間に何日しているかの情報であり、前記体重減少情報は、認知症の危険性判定の直近の6カ月間で2kg以上の体重減少があったか否かの情報であり、前記転倒経験情報は、認知症の危険性判定の直近の1年間での転倒経験有無情報であり、前記記憶問題情報は、記憶に関して問題をかかえているか否かの情報であり、前記うつ傾向情報は、自分の人生はむなしいものと感じるか否かの情報である請求項1に記載の認知症の危険性判定装置。
【請求項3】
被判定者の年齢の値を、年齢情報の値としての「B1」とし、
被判定者が一人暮らしか否かにつき、「否」の場合は「0」、「一人暮らし」の場合は「1」を、一人暮らしか否かの情報の値としての「B2」とし、
被判定者の1日当たりの平均歩数を、歩数情報の値としての「B3」とし、
被判定者の定期的な運動またはスポーツを1週間に何日しているかにつき、「毎日」の場合は「1」、「5~6日」の場合は「2」、「2~4日」の場合は「3」、「1日以下」の場合は「4」、「していない」の場合は「5」を、定期的な運動情報の値としての「B4」とし、
被判定者が認知症の危険性判定の直近の6カ月間で2kg以上の体重減少があったか否かにつき、「否」の場合は、「0」、「あった」場合は、「1」を体重減少情報の値としての「B5」とし、
被判定者が認知症の危険性判定の直近の1年間で転倒経験が「ある」場合は「1」、「ない」場合は「0」を、転倒経験情報の値としての「B6」とし、
被判定者が記憶に関して問題を「かかえている」場合は「1」、「かかえていない」場合は「0」を記憶問題情報の値としての「B7」とし、
被判定者が自分の人生はむなしいものと「感じる」場合は「1」、「感じない」場合は、「0」をうつ傾向情報の値としての「B8」として、
前記判定手段は、次式(1)
Probability = 1/(1+e-a) (1)
(ここで、a=((A1×B1)+(A2×B2)+(A3×B3)+(A4×B4)+(A5×B5)+(A6×B6)+(A7×B7)+(A8×B8)+(A9))であり、
A1は0.05以上、0.06以下、A2は、0.2以上、0.4以下、A3は、-0.0003以上、-0.0001以下、A4は、0.1以上、0.2以下、A5は、0.5以上、0.8以下、A6は、0.5以上、0.8以下、A7は、0.8以上、1.2以下、A8は、1.1以上、1.5以下、A9は、-8以上、-7以下である)
により、Probabilityの値を算出し、算出したProbabilityの分位数に応じて、認知症の危険性を判定する請求項2記載の認知症の危険性判定装置。
【請求項4】
コンピュータを、
認知症の危険性の被判定者の年齢情報、一人暮らしか否かの情報、歩数情報、定期的な運動情報、体重減少情報、転倒経験情報、記憶問題情報およびうつ傾向情報を取得する判定情報取得手段と、
前記判定情報取得手段により取得した年齢情報、一人暮らしか否かの情報、歩数情報、定期的な運動情報、体重減少情報、転倒経験情報、記憶問題情報およびうつ傾向情報を使用して前記被判定者の認知症の危険性を判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された前記被判定者の認知症の危険性を表示する判定結果表示手段と、
して機能させる認知症の危険性判定用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知症の危険性判定システムおよび認知症の危険性判定用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
年齢、教育年数、歩行速度、血液検査情報、認知機能障害情報、日常生活機能障害情報等の認知症の判定指標を利用した種々の認知症判定システムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、年齢、教育年数、最大歩行速度及びTMTAテストのスコアを利用することが開示され、特許文献2には、年齢と血液検査情報を利用することが開示され、特許文献3には、認知機能障害情報と日常生活機能障害情報を利用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-218628号公報
【特許文献2】特開2018-55333号公報
【特許文献3】特開2017-121460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような判定システムは、多岐にわたる認知症の判定指標のうちのごく少数の判定指標を使用しているので認知症の判定精度が不十分であり、より高精度な認知症の危険性判定システムが求められている。
【0006】
本開示の主な目的は、より高精度な認知症の危険性判定システムおよび認知症の危険性判定用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、
認知症の危険性の被判定者の年齢情報、一人暮らしか否かの情報、歩数情報、定期的な運動情報、体重減少情報、転倒経験情報、記憶問題情報およびうつ傾向情報を取得する判定情報取得手段と、
前記判定情報取得手段により取得した年齢情報、一人暮らしか否かの情報、歩数情報、定期的な運動情報、体重減少情報、転倒経験情報、記憶問題情報およびうつ傾向情報を使用して前記被判定者の認知症の危険性を判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された前記被判定者の認知症の危険性を表示する判定結果表示手段と、を備える認知症の危険性判定装置が提供される。
【0008】
また、本開示によれば、
コンピュータを、
認知症の危険性の被判定者の年齢情報、一人暮らしか否かの情報、歩数情報、定期的な運動情報、体重減少情報、転倒経験情報、記憶問題情報およびうつ傾向情報を取得する判定情報取得手段と、
前記判定情報取得手段により取得した年齢情報、一人暮らしか否かの情報、歩数情報、定期的な運動情報、体重減少情報、転倒経験情報、記憶問題情報およびうつ傾向情報を使用して前記被判定者の認知症の危険性を判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された前記被判定者の認知症の危険性を表示する判定結果表示手段と、
して機能させる認知症の危険性判定用プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、より高精度な認知症の危険性判定システムおよび認知症の危険性判定用プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムのハードウエア構成を説明するための図である。
図2図2は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムの機能構成を説明するための図である。
図3図3は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムの処理を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムの処理における判定情報取得ステップS10を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムの年齢情報入力画面を説明するための図である。
図6図6は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムの一人暮らしか否かの情報入力画面を説明するための図である。
図7図7は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムの歩数情報入力画面を説明するための図である。
図8図8は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムの定期的な運動情報入力画面を説明するための図である。
図9図9は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムの体重減少情報入力画面を説明するための図である。
図10図10は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムの転倒経験情報入力画面を説明するための図である。
図11図11は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムの記憶問題情報入力画面を説明するための図である。
図12図12は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムのうつ傾向情報入力画面を説明するための図である。
図13図13は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムの判定結果表示画面を説明するための図である。
図14図14は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムの他のハードウエア構成を説明するための図である。
図15図15は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムのさらに他のハードウエア構成を説明するための図である。
図16図16は、本開示の好ましい実施の形態の認知症の危険性判定システムのさらに他のハードウエア構成の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
認知症に関連する因子は、年齢、糖尿病、高血圧、脂質異常、肥満、うつ、食生活、服薬、喫煙、運動習慣、教育水準、知的活動、社会参加等多岐にわたり、単一またはごく少数の判定指標で認知症の危険性を判定することは難しい。
【0012】
認知症の危険性を高精度で判定するためには、多くの判定指標を組み合わせて認知症の危険性を判定することが好ましいが、関連性の少ない判定指標の数を増やしても認知症の危険性判定システムの精度は向上しないだけでなく、用いる判定指標の数が増加して現実的には利用することが難しいシステムになってしまう。
【0013】
この問題を回避するためには、認知症の危険性判定システムに使用するアルゴリズムに投入する判定指標を選別し、なるべく少ない項目数の判定指標を利用して認知症の危険性を判定するモデルを構築することが好ましい。
【0014】
本開示の認知症の危険性判定システムは、コホート研究データベースから認知症発症に強く関連する因子を選択し、なるべく少ない項目数の判定指標を利用して認知症の危険性を高精度に判定するアルゴリズムを利用したシステムであり、簡便かつ高精度に認知症の危険性を判定することができるシステムである。
【0015】
以下、本開示の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1を参照すれば、本開示の認知症の危険性判定システム1は、CPU11、RAM12、記憶装置13、入力及び表示装置14、並びに加速度センサー15を備えている。RAM12、記憶装置13、入力及び表示装置14、並びに加速度センサー15は内部バス16を介して、CPU11とデータ交換可能なように構成されている。CPU11、RAM12、記憶装置13、入力及び表示装置14、並びに加速度センサー15は単一の筐体内に設けられている。認知症の危険性判定システム1は、例えば、スマートフォンとして構成されている。なお、加速度センサー15として、ウエアラブルウォッチ(スマートウォッチ)等のウエアラブルデバイス(図示せず)に内蔵された加速度センサー(図示せず)を使用することもできる。
【0017】
記憶装置13は、例えば、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブで構成されている。記憶装置13は、インストールされたプログラムを格納すると共に、種々のデータ等を格納する。RAM12は、CPU11よって読み出されたプログラムやデータ等を一時的に格納する。
【0018】
CPU11は、RAM12に一時的に格納されたプログラムを実行して、認知症の危険性判定システム1の機能を実現する。CPU11は、RAM12に一時的に格納されたプログラムの内容に沿うように、入力及び表示装置14並びに加速度センサー15を制御する。入力及び表示装置14は、プログラムの内容に従い、CPU11による指令を受けて、認知症の危険性判定のための判定情報入力用画面を表示し被判定者による画面の操作による判定情報の入力を受け付け、また、認知症の危険性の判定結果を画面に表示する。入力及び表示装置14は、例えば、タッチパネル141(図5図13参照)を備えている。被判定者が認知症の危険性判定システム1を携帯して、歩行による振動が発生すると、CPU11はプログラムの内容に従い、加速度センサー15から送られてくる加速度値から歩数を算出し、記憶装置13内に格納する。
【0019】
図2を参照すれば、認知症の危険性判定システム1は、判定情報取得手段41と、判定手段42と、判定結果表示手段43とを備えている。判定情報取得手段41は、加速度センサー15から送られてくる加速度値から算出され、記憶装置13内に格納された歩数情報と、被判定者が入力及び表示装置14から入力した年齢情報、一人暮らし情報、定期的な運動情報等の判定情報を取得する。判定手段42は、判定情報取得手段41によって取得した歩数情報、年齢情報、一人暮らし情報、定期的な運動情報等の判定情報を用いて被判定者の認知症の危険性を判定する。判定結果表示手段43は、判定手段42によって判定された被判定者の認知症の危険性を入力及び表示装置14に表示する。
【0020】
図14を参照すれば、本開示の認知症の危険性判定システム2は、CPU11、RAM12、記憶装置13、並びに入力及び表示装置14を備えている。RAM12、記憶装置13、並びに入力及び表示装置14は内部バス16を介して、CPU11とデータ交換可能なように構成されている。CPU11、RAM12、記憶装置13、並びに入力及び表示装置14は単一の筐体内に設けられている。入力及び表示装置14は、例えば、タッチパネル141(図5図13参照)を備えている。認知症の危険性判定システム2は、例えば、タブレット端末として構成されている。
【0021】
認知症の危険性判定システム1(図1参照)は、加速度センサー15を備えているのに対して、認知症の危険性判定システム2は加速度センサーを備えていない点で認知症の危険性判定システム1と異なる。認知症の危険性判定システム2は、図2に示すように、認知症の危険性判定システム1と同じく、判定情報取得手段41と、判定手段42と、判定結果表示手段43とを備えている。
【0022】
認知症の危険性判定システム1では、判定情報取得手段41は、加速度センサー15から送られてくる加速度値から算出され、記憶装置13内に格納された歩数情報を取得したが、認知症の危険性判定システム2では、判定情報取得手段41は、被判定者が入力及び表示装置14から入力した歩数情報を取得する。
【0023】
判定情報取得手段41が、被判定者が入力及び表示装置14から入力した年齢情報、一人暮らし情報、定期的な運動情報等の判定情報を取得する点や、判定手段42が、判定情報取得手段41によって取得した歩数情報、年齢情報、一人暮らし情報、定期的な運動情報等の判定情報を用いて被判定者の認知症の危険性を判定する点や、判定結果表示手段43が、判定手段42によって判定された被判定者の認知症の危険性を入力及び表示装置14に表示する点は、認知症の危険性判定システム1と同じである。
【0024】
図15を参照すれば、本開示の認知症の危険性判定システム3は、システム本体31と入力及び表示装置14とを備えている。システム本体31は、CPU11、RAM12と、記憶装置13とを備えている。RAM12、記憶装置13、入力及び表示装置14はバス16を介して、CPU11とデータ交換可能なように構成されている。CPU11、RAM12および記憶装置13は、単一の筐体内に設けられている。システム本体31は、例えば、パーソナルコンピュータ本体として構成され、入力及び表示装置14は、例えば、タッチパネル141(図5図13参照)を備えている。
【0025】
入力及び表示装置14は一体ではなく、図16に示すように、入力装置141と表示装置142が別々になっていてもよく、この場合、例えば、入力装置141はキーボードを表示装置142はモニターをそれぞれ備えていてもよい。この場合は、モニターの画面は、タッチパネル141(図5図13参照)の画面と同様の構成である。
【0026】
認知症の危険性判定システム2(図14参照)は、CPU11、RAM12、記憶装置13、並びに入力及び表示装置14は単一の筐体内に設けられているのに対して、認知症の危険性判定システム3は、CPU11、RAM12および記憶装置13が単一の筐体内に設けられ、入力及び表示装置14はその筐体の外部に設けられている点が認知症の危険性判定システム2と異なるが、他の点は同様である。
【0027】
認知症の危険性判定システム3においても、判定情報取得手段41が、被判定者が入力及び表示装置14から入力した歩数情報、年齢情報、一人暮らし情報、定期的な運動情報等の判定情報を取得する点や、判定手段42が、判定情報取得手段41によって取得した歩数情報、年齢情報、一人暮らし情報、定期的な運動情報等の判定情報を用いて被判定者の認知症の危険性を判定する点や、判定結果表示手段43が、判定手段42によって判定された被判定者の認知症の危険性を入力及び表示装置14に表示する点は、認知症の危険性判定システム2と同じである。
【0028】
図2を再び参照すれば、認知症の危険性判定システム1(2、3)は、判定情報取得手段41と、判定手段42と、判定結果表示手段43とを備えている。判定情報取得手段41は、認知症の危険性判定システム1の場合は、加速度センサー15から送られてくる加速度値から算出され、記憶装置13内に格納された歩数情報(認知症の危険性判定システム2、3の場合は、被判定者が入力及び表示装置14から入力した歩数情報)と、被判定者が入力及び表示装置14から入力した年齢情報、一人暮らし情報、定期的な運動情報等の判定情報を取得する。判定手段42は、判定情報取得手段41によって取得した歩数情報、年齢情報、一人暮らし情報、定期的な運動情報等の判定情報を用いて被判定者の認知症の危険性を判定する。判定結果表示手段43は、判定手段42によって判定された被判定者の認知症の危険性を入力及び表示装置14に表示する。
【0029】
図3を参照すれば、認知症の危険性判定システム1(2、3)は、まず、判定情報取得手段41が、判定情報を取得し(ステップS10)、判定手段42が、判定情報取得手段41によって取得した判定情報を用いて被判定者の認知症の危険性を判定し(ステップS20)、判定結果表示手段43が、判定手段42によって判定された被判定者の認知症の危険性についての判定結果を表示する(ステップS30)。
【0030】
次に、図4を参照して、判定情報取得ステップS10についてさらに説明する。判定情報取得ステップS10は、被判定者の年齢情報を取得する年齢情報取得ステップS101、被判定者が一人暮らしか否かの情報を取得する一人暮らし情報取得ステップS102、被判定者の1日当たりの平均歩数の情報を取得する歩数情報取得ステップS103、被判定者が定期的な運動またはスポーツを1週間に何日しているかの情報を取得する定期的な運動情報取得ステップS104、被判定者が認知症の危険性判定の直近の6カ月間で2kg以上の体重減少があったか否かの情報を取得する体重減少情報取得ステップS105、被判定者が認知症の危険性判定の直近の1年間で転倒経験があったか否かの情報を取得する転倒経験情報取得ステップS106、被判定者が記憶に関する問題をかかえているか否かの情報を取得する記憶問題情報取得ステップS107、および被判定者が自分の人生はむなしいものと感じるか否かの情報を取得するうつ傾向情報取得ステップS108を備えている。
【0031】
ここで用いられている年齢情報、一人暮らしか否かの情報、歩数情報、定期的な運動情報、体重減少情報、転倒経験情報、記憶問題情報およびうつ傾向情報は、本発明者によって、コホート研究データベースから認知症発症に強く関連する因子を選択し、数百項目の大規模調査から関連の強い因子を統計的に特定したものであり、これらの因子に係る判定情報を使用することにより、なるべく少ない項目数で認知症の危険性を高精度に判定することができるものである。
【0032】
歩数情報取得ステップS103については、認知症の危険性判定システム1と、認知症の危険性判定システム2、3とでは、判定情報取得手段41が歩数情報を取得する方法は異なるが、年齢情報取得ステップS101、一人暮らし情報取得ステップS102、定期的な運動情報取得ステップS104~うつ傾向情報取得ステップS108については、判定情報取得手段41が各判定情報を取得する方法は、認知症の危険性判定システム1、2、3間で同じである。
【0033】
まず、ステップS101では、判定情報取得手段41は年齢情報を取得する。判定情報取得手段41が、年齢情報を入手するための年齢情報入力画面SC101をタッチパネル141に表示する。年齢情報入力画面SC101は、図5にその一例を示すように、「年齢を入力して下さい」という表示と、年齢入力欄W101と、次へボタンB101とを備えている。被判定者により、年齢情報入力欄W101に年齢が入力され、次へボタンB101が押されると、判定情報取得手段41は年齢情報をRAM12に格納する。この年齢情報の値としての年齢の値を、後述するProbabilityを求める式(1)では「B1」とする。
【0034】
次に、ステップS102では、判定情報取得手段41は一人暮らし情報を取得する。判定情報取得手段41が、一人暮らし情報を入手するための一人暮らし情報入力画面SC102をタッチパネル141に表示する。一人暮らし情報入力画面SC102は、図6にその一例を示すように、「現在、一人暮らしですか?」「0:いいえ 1:はい」という表示と、一人暮らし情報入力欄W102と、次へボタンB102とを備えている。被判定者により、一人暮らし情報入力欄W102に一人暮らし情報としての「0」か「1」が入力され、次へボタンB102が押されると、判定情報取得手段41は要介護認定情報をRAM12に格納する。この要介護認定情報の値としての「0」か「1」を、後述するProbabilityを求める式(1)では「B2」とする。
【0035】
次に、ステップS103では、判定情報取得手段41は歩数情報を取得する。
認知症の危険性判定システム1の場合は、判定情報取得手段41が、加速度センサー15から送られてくる加速度値から算出され、記憶装置13内に格納された歩数情報を取得する。判定情報取得手段41は、取得した歩数情報から、1日当たりの平均歩数を求め、求めた歩数情報をRAM12に格納する。この歩数の値を後述するProbabilityを求める式(1)では「B3」とする。
【0036】
認知症の危険性判定システム2、3の場合は、判定情報取得手段41が、歩数情報を入手するための歩数情報入力画面SC103をタッチパネル141に表示する。歩数情報入力画面は、図7にその一例を示すように、「1日当たりの平均歩数を入力して下さい」という表示と、歩数入力欄W103と、次へボタンB103とを備えている。被判定者により、歩数情報入力欄W103に歩数情報が入力され、次へボタンB103が押されると、判定情報取得手段41は歩数情報をRAM12に格納する。この歩数の値を、後述するProbabilityを求める式(1)では「B3」とする。
【0037】
次に、ステップS104では、判定情報取得手段41は定期的な運動情報を取得する。判定情報取得手段41が、定期的な運動情報を入手するための定期的な運動情報入力画面SC104をタッチパネル141に表示する。定期的な運動情報入力画面SC104は、図8にその一例を示すように、「定期的な運動・スポーツを、1週間に何日くらいしていますか?」「1:毎日 2:5~6日、3:2~4日、4:1日以下、5:していない」いう表示と、定期的な運動情報入力欄W104と、次へボタンB104とを備えている。被判定者により、定期的な運動情報入力欄W104に定期的な運動情報としての「1」か「2」か「3」か「4」か「5」かが入力され、次へボタンB104が押されると、判定情報取得手段41は定期的な運動情報をRAM12に格納する。この運動習慣情報の値としての「1」か「2」か「3」か「4」か「5」を、後述するProbabilityを求める式(1)では「B4」とする。
【0038】
次に、ステップS105では、判定情報取得手段41は体重減少情報を取得する。判定情報取得手段41が、体重減少情報を入手するための体重減少情報入力画面SC105をタッチパネル141に表示する。体重減少情報入力画面SC105は、図9にその一例を示すように、「この6カ月で2kg以上の体重減少はありましたか?」「0:なし 1:あり」という表示と、体重減少情報入力欄W105と、次へボタンB105とを備えている。被判定者により、体重減少情報入力欄W105に体重減少情報としての「0」か「1」が入力され、次へボタンB105が押されると、判定情報取得手段41は体重減少情報をRAM12に格納する。この体重減少情報の値としての「0」か「1」を、後述するProbabilityを求める式(1)では「B5」とする。
【0039】
次に、ステップS106では、判定情報取得手段41は転倒経験情報を取得する。判定情報取得手段41が、転倒経験情報を入手するための転倒経験情報入力画面SC106をタッチパネル141に表示する。転倒経験情報入力画面SC106は、図10にその一例を示すように、「この1年間に転んだ経験がありますか?」「0:いいえ 1:はい」「※転ぶとは、体のバランスを崩して足以外の体の一部(手、膝など)が地面に触れることです」という表示と、転倒経験情報入力欄W106と、次へボタンB106とを備えている。被判定者により、転倒経験情報入力欄W106に転倒経験情報としての「0」か「1」が入力され、次へボタンB106が押されると、判定情報取得手段41は転倒経験情報をRAM12に格納する。この転倒経験情報の値としての「0」か「1」を、後述するProbabilityを求める式(1)では「B6」とする。
【0040】
次に、ステップS107では、判定情報取得手段41は記憶問題情報を取得する。判定情報取得手段41が、記憶問題情報を入手するための記憶問題情報入力画面SC107をタッチパネル141に表示する。記憶問題情報入力画面SC107は、図11にその一例を示すように、「記憶に関して問題をかかえていますか?」「0:なし 1:あり」いう表示と、記憶問題情報入力欄W107と、次へボタンB107とを備えている。被判定者により、記憶問題情報入力欄W107に記憶に関しての問題の有無情報としての「0」か「1」が入力され、次へボタンB107が押されると、判定情報取得手段41は記憶問題情報をRAM12に格納する。この記憶問題情報の値としての「0」か「1」を、後述するProbabilityを求める式(1)では「B7」とする。
【0041】
次に、ステップS108では、判定情報取得手段41はうつ傾向情報を取得する。判定情報取得手段41が、うつ傾向情報を入手するためのうつ傾向情報入力画面SC108をタッチパネル141に表示する。うつ傾向情報入力画面SC108は、図12にその一例を示すように、「自分の人生はむなしいものと感じますか?」という表示と、うつ傾向情報入力欄W108と、次へボタンB108とを備えている。被判定者により、うつ傾向情報力欄W108に自分の人生はむなしいものと感じるか否かが入力され、次へボタンB108が押されると、判定情報取得手段41はうつ傾向情報をRAM12に格納する。このうつ傾向情報の値としての「0」か「1」を、後述するProbabilityを求める式(1)では「B8」とする。
【0042】
次に、認知度危険性判定ステップS20(図3参照)についてさらに説明する。認知度危険性判定ステップS20では、上述した判定情報取得ステップS10で判定情報取得手段41によって取得し、RAM12に格納した判定情報を使用して、判定手段42が、次の予測モデル式(1)を使用して、認知度の危険性の判定に使用するProbabilityを算出し、RAM12に格納する。
【0043】
Probability = 1/(1+e-a) (1)
ここで、a=((A1×B1)+(A2×B2)+(A3×B3)+(A4×B4)+(A5×B5)+(A6×B6)+(A7×B7)+(A8×B8)+(A9))である。
【0044】
B1~B8は、判定情報としての年齢情報、一人暮らし情報、歩数情報、定期的な運動情報、体重減少情報、転倒経験情報、記憶問題情報、うつ傾向情報を上述したようにそれぞれ数値化した値である。
【0045】
A1は好ましくは0.05以上、0.06以下、A2は好ましくは、0.2以上、0.4以下、A3は、好ましくは、-0.0003以上、-0.0001以下、A4は好ましくは、0.1以上、0.2以下、A5は好ましくは、0.5以上、0.8以下、A6は好ましくは、0.5以上、0.8以下、A7は好ましくは、0.8以上、1.2以下、A8は、好ましくは、1.1以上、1.5以下、A9は好ましくは、-8以上、-7以下である。
【0046】
この予測モデル式は、ロジスティック回帰分析を用いて求めたものであり、アウトカムは、レセプト上で認知症の診断ありとされている場合を用いたものである。
【0047】
次に、このようにして求めたProbabilityを使用して、判定手段42が、被判定者の認知症の危険性を判定する。
【0048】
例えば、Probabilityの5分位数を用いて、Probabilityの値に応じて、「認知症の危険性なし」、「認知症の危険性ほとんどなし」、「認知症の危険性は平均的」、「認知症の危険性ややあり」、「認知症の危険性あり」のいずれかであると判定し、その判定結果をRAM12に格納する。
【0049】
或いは、例えば、Probabilityの4分位数を用いて、Probabilityの値に応じて、「認知症の危険性なし」、「認知症の危険性ほとんどなし」、「認知症の危険性ややあり」、「認知症の危険性あり」のいずれかであると判定し、その判定結果をRAM12に格納する。
【0050】
次に、判定結果表示ステップS30(図3参照)についてさらに説明する。判定結果表示ステップS30では、判定結果表示手段43が、上述した認知度危険性判定ステップS20で判定手段42が判定した被判定者の認知度危険性の判定結果を表示するための判定結果表示画面SC109をタッチパネル141に表示する。判定結果表示画面SC109は、図13にその一例を示すように、「あなたの現在の認知症の危険性の判定結果は次のとおりです」という表示と、判定結果を表示する判定結果表示欄W109とを備えている。判定結果表示手段43は、RAM12に格納された判定結果を判定結果表示欄W109に表示する。例えば、判定結果が「認知症の危険性あり」の場合は、図13に示すように、判定結果表示欄W109に、「認知症の危険性あり」と表示する。
【0051】
さらに、図13に示すように、判定結果表示画面SC109は、「もし、ご希望であれば、あなたが加齢した場合や、1日当たりの歩数や定期的な運動・スポーツを行う日数等を変えた場合の認知症の危険性を判定できますが、続けますか?続ける場合は、「続ける」を、続けない場合は、「終了」を押してください」という表示と、続けるボタンB109と、終了ボタンB110とを備えていてもよい。
【0052】
被判定者により、終了ボタンB110が押されると、認知症の危険性判定は終了する。
【0053】
被判定者により、続けるボタンB109が押されると、認知症の危険性判定システム1、2、3のいずれの認知症の危険性判定システムにおいても、判定情報取得手段41は、年齢情報取得ステップ(ステップS101)~うつ傾向情報ステップ(ステップS108)を実行して、新たな判定情報を取得し(ステップS10)、取得した新たな判定情報を用いて判定手段42が、被判定者の認知症の危険性を新たに判定し(ステップS20)、判定結果表示手段43が、判定手段42によって新たに判定された被判定者の認知症の危険性についての判定結果を新たに表示する(ステップS30)。例えば、被判定者が、新たな歩数情報、新たな定期的な運動情報等を入力して、判定情報取得手段41が新たな判定情報を取得し、この新たな判定情報を用いて判定手段42によって新たに判定された被判定者の認知症の危険性が、「認知症の危険性ややあり」である場合には、判定結果表示手段43は、判定結果表示欄W109(図13参照)に、「認知症の危険性ややあり」と表示する。
【0054】
このように、被判定者が、新たな判定情報を入力することによって、認知症の危険性判定結果が改善すれば、被判定者の行動変容が期待できることになり、認知症の危険性判定システム1、2、3の有用性が増加する。
【0055】
以上説明した本開示の認知症の危険性判定システムは、コホート研究データベースから認知症発症に強く関連する因子を選択し、数百項目の大規模調査から関連の強い要因を統計的に特定したものであり、上述の因子に係る判定情報を使用することにより、なるべく少ない項目数の判定指標を利用して、簡便かつ高精度に認知症の危険性を判定することができるシステムである。
【0056】
このシステムを公開し多くの高齢者が使用することで、認知症予防等の健康増進に寄与できる。安価で導入可能なシステムが公開され、介護予防に対して効果を発揮することができれば、社会保障費の適正化にも有効性を発揮しうる可能性がある。
【0057】
以上、本開示の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本開示はこれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0058】
1、2、3…認知症の危険性判定システム
41…判定情報取得手段
42…判定手段
43…判定結果表示手段
図1
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