(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092956
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】携帯物落下防止具
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20220616BHJP
B25H 3/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
E04G21/32 Z
B25H3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205978
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】500026485
【氏名又は名称】株式会社ミロク
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 利徳
【テーマコード(参考)】
3C012
【Fターム(参考)】
3C012BG01
(57)【要約】
【課題】
小型化できるように改良された携帯物落下防止具を提供する。
【解決手段】携帯物落下防止具100は、紐巻取構造体1と、紐状体2と、紐引出端2aと、衝撃吸収部材7と、本体装着具8と、携帯物取付部9と、連結具13、14と、を備える。携帯物取付部9には任意の携帯物が取り付けられる。衝撃吸収部材7は、引っ張りに対して弾性伸縮機能を発揮する部材である。衝撃吸収部材7が、根元部7aと中間部7bと先端部7cとを備える。中間部7bは根元部7aと先端部7cとの間に介在する。根元部7aと先端部7cはそれぞれ短冊状弾性部であり、これらの間に細い弾性ロープ状の中間部7bが介在している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体装着具と、
紐状体、前記紐状体を巻き取るリール、前記リールに付勢力を与える付勢部材、および前記リールと前記付勢部材とを収納したケースを有する紐巻取構造体と、
携帯物を取り付けるための携帯物取付部と、
前記紐巻取構造体の外側において、前記本体装着具と前記紐状体との間と、前記本体装着具と前記ケースとの間と、前記紐状体と前記携帯物取付部との間と、前記ケースと前記携帯物取付部との間と、のうちいずれかの位置に設けられた衝撃吸収部材と、
を備える携帯物落下防止具。
【請求項2】
前記衝撃吸収部材は、前記紐状体と前記携帯物取付部との間に設けられた請求項1に記載の携帯物落下防止具。
【請求項3】
前記衝撃吸収部材は、長尺衝撃吸収部材を含む請求項1または2に記載の携帯物落下防止具。
【請求項4】
前記本体装着具を作業者の腰周辺に装着したときに、前記紐状体を前記リールから引き出さずに、前記作業者が腰まわりにおいて前記携帯物取付部に取り付けた携帯物を取り回せる程度の長さを持つように、前記長尺衝撃吸収部材が構築された請求項3に記載の携帯物落下防止具。
【請求項5】
前記紐状体が金属ワイヤであり、
前記衝撃吸収部材は前記紐状体よりも高い伸縮性を持つ請求項1~4のいずれか1項に記載の携帯物落下防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、携帯物落下防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許第4524464号に記載されているように、工具落下時の衝撃を吸収する機構を備えた工具落下防止具が知られている。この公報の段落0004、0005および
図8において、工具の落下による衝撃力や跳ね上がりの問題について説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献にかかる技術では、優れた衝撃吸収機構を実現する目的で、リール周りの付勢部材(バネ)などを含むリール機構が改良されている。しかしながら、衝撃吸収機能を向上させようとすると、付勢部材を含むリール機構が複雑化しやすく、その結果、工具落下防止具が大型化しやすい欠点があった。
【0005】
本開示は、小型化できるように改良された携帯物落下防止具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
携帯物落下防止具の一態様は、本体装着具と、紐状体、前記紐状体を巻き取るリール、前記リールに付勢力を与える付勢部材、および前記リールと前記付勢部材とを収納したケースを有する紐巻取構造体と、携帯物を取り付けるための携帯物取付部と、前記紐巻取構造体の外側において、前記本体装着具と前記紐状体との間と、前記本体装着具と前記ケースとの間と、前記紐状体と前記携帯物取付部との間と、前記ケースと前記携帯物取付部との間と、のうちいずれかの位置に設けられた衝撃吸収部材と、を備える。
【0007】
第一態様として、衝撃吸収部材が、本体装着具と紐状体との間に介在してもよい。第二態様として、衝撃吸収部材が、本体装着具と紐巻取構造体のケースとの間に介在してもよい。第三態様として、衝撃吸収部材が、紐状体と携帯物取付部との間に介在してもよい。第四態様として、衝撃吸収部材は、紐巻取構造体のケースと携帯物取付部との間に介在してもよい。上記の衝撃吸収部材の個数は一つであってもよく、あるいは複数であってもよい。上記の第一~第四態様それぞれにおける複数の設置位置から、一つまたは複数の任意の位置を選択して衝撃吸収部材を設けてもよい。
【発明の効果】
【0008】
紐巻取構造体の外部に衝撃吸収部材を設けることで、紐巻取構造体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】携帯物落下防止具の外観構成を表す斜視図である。
【
図2】携帯物落下防止具の装着方法の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、携帯物落下防止具100の外観構成を表す斜視図である。携帯物落下防止具100は、紐巻取構造体1と、紐引出端2aと、衝撃吸収部材7と、本体装着具8と、携帯物取付部9と、連結具13、14と、を備える。携帯物取付部9には任意の携帯物が取り付けられる。
【0011】
本体装着具8は、紐巻取構造体1の上部に連結具13を介して取り付けられている。作業者が携帯物落下防止具100を身に着けるときには、作業用ベルト等にリングホルダ等の安全ロープ装着部を設けるとともに、この安全ロープ装着部に本体装着具8が装着されてもよい(
図2参照)。
【0012】
紐巻取構造体1は、引出口1aを備える。引出口1aは、紐巻取構造体1の一部に設けられた開口である。実施の形態では、引出口1aは、一例として紐巻取構造体1における本体装着具8とは反対側に設けられている。
【0013】
紐巻取構造体1の内部には、「リール(図示せず)」と、このリールにまかれた紐状体2とが収納されている。紐引出端2aは、紐状体2の先端に接続している。紐引出端2aを矢印Aの方向へ引っ張ることで、紐巻取構造体1の内部から、引出口1aを介して、紐状体2を任意の長さに引き出すことができる。
図1では紐状体2をわずかに引出した状態を例示しているが、紐状体2の全長は
図1に図示した状態に比べて遥かに長い。紐引出端2aは、ちょうど引出口1aで止まるように引出口1aの開口径よりも大きな径を持っている。
【0014】
連結具14は、紐引出端2aと衝撃吸収部材7の根元部7aとを結びつける。
【0015】
実施の形態では、一例として、衝撃吸収部材7が「ガイドロープ」として構築されている。衝撃吸収部材7は、ある程度の長さを持つように構築された「長尺衝撃吸収部材」の一例でもある。実施の形態では、具体的には、衝撃吸収部材7が、根元部7aと中間部7bと先端部7cとを備える。根元部7aと先端部7cはそれぞれ短冊状部分であり、これらの間に相対的に細く且つ伸縮性を持つロープ材である中間部7bが介在している。中間部7bは、根元部7aおよび先端部7cそれぞれよりも相対的に細く、柔軟で、且つ長く構築されている。中間部7bは、任意の角度に曲げることができ、ねじれ方向への変位も可能である。
【0016】
衝撃吸収部材7の先端部7cには、携帯物取付部9が取り付けられている。携帯物取付部9に、落下防止対象の携帯物(
図2の符号T参照)を取り付けることができる。携帯物は、例えば工具であってもよい。
【0017】
本体装着具8および携帯物取付部9は、一例としてナスカンであってもよい。本体装着具8および携帯物取付部9は、公知の構造の金属製または樹脂製の取付具を任意に使用することができる。
【0018】
実施の形態では、携帯物取付部9に取り付けた携帯物を作業者が落下させたとしても、衝撃吸収部材7が落下時の衝撃を吸収できる。これにより、携帯物の跳ね返りが抑制される利点がある。携帯物の落下衝撃に起因する紐状体2の破断を抑制できる利点もある。また、
図1の矢印Aは、携帯物取付部9を紐巻取構造体1から引き離す方向(言い換えると、紐引出し方向)を指しており、落下時にはこの方向に引っ張り荷重が生じる。衝撃吸収部材7は、
図1の矢印A方向への引っ張りに対して伸縮機能を発揮する。
【0019】
以上のように、衝撃吸収部材7がある程度の長さと伸縮性とを持つ「ガイドロープ」として構築されている。これにより、携帯物取付部9に接続した携帯物をユーザが腰袋等に納める際に、紐状体2が引き出されないので、巻き取りのテンションがかからず収納がスムーズであるなどの利点がある。
【0020】
以下、紐巻取構造体1の外部構成および内部構成について、具体例を説明する。紐巻取構造体1は、一例として金属製ケースを備えてもよく、具体例としてアルミダイカストケースを備えてもよい。紐巻取構造体1の外装を金属製ケースとすることで、堅牢な構造とすることができる。紐巻取構造体1は、腰まわりのスペースを取らないコンパクトサイズである。変形例として、紐巻取構造体1は樹脂製ケースを備えてもよく、例えばABSケースを備えてもよい。
【0021】
紐巻取構造体1は、次に述べる内部構成を備える。紐巻取構造体1は、紐状体2と、この紐状体2を巻き取るリールと、リールに付勢力を与える付勢部材とを内蔵している。付勢部材は例えばうず巻きバネでもよい。この種の形状、部材および機構は既に各種のものが公知であり、新規な事項ではないので、本開示では図示を省略する。
【0022】
紐状体2の先端は、紐引出端2aとつながれる。リールは、自動巻き取り型である。リールは、紐巻取構造体1の内部に回転可能に収容され、紐状体2を巻き取る。うず巻きバネは、リールを巻き取り回転方向へ付勢する巻き取り機構である。
【0023】
紐状体2は、例えば各種の金属線でもよく、例えばスチールワイヤやステンレスワイヤなどでもよく、ピアノ線などでもよい。金属製の紐状体は、火や熱に強く、しかも耐摩
擦・耐切断にも優れる利点がある。変形例として、紐状体2は、扁平な織紐からなるものであってもよく、その場合の織紐の素材は例えばナイロンやポリエステルなどの合成繊維でもよい。
【0024】
リールは、リール本体とバネ保持部とを備える。紐巻取構造体1のケース内部には軸が設けられ、リール本体がこの軸を中心として回転することで紐状体2が巻き取られる。バネ保持部は、例えば軸方向一側に同心的に設けられた円筒状の部位である。
【0025】
うず巻きバネは、帯状の鋼材をうず巻き状に巻いた、いわゆるぜんまいバネである。うず巻きバネは、その一端が軸に係止され、その他端がリールにおけるバネ保持部に係止される。紐状体2の引き出しによってリール(バネ保持部)が引き出し方向へ回転するのに伴って、うず巻きバネが軸に巻き付けられる。うず巻きバネは、リールを紐状体2の巻き取り方向へ付勢する付勢力を生じる付勢部材の一種である。実施の形態では、一例として、均一の厚さを持つ一枚のうず巻きバネを用いて、リールの自動巻き取りが可能なリール機構が構築されるものとする。これによりリール機構を簡素化できるので、紐巻取構造体1を飛躍的に小型化できる。
【0026】
以上のように構成された実施の形態の携帯物落下防止具100は、次のように使用される。
図2は、携帯物落下防止具100の装着方法の一例を説明するための模式図である。
図2では、一例として作業者200の作業用ベルト201にリングホルダ等の安全ロープ装着部(図示は省略)を設けるとともに、この安全ロープ装着部に紐巻取構造体1上部の本体装着具8が装着される様子を簡略化して図示している。作業者200は、腰袋202から任意に取り出した携帯物Tを使用する際に、必要に応じて携帯物Tを紐巻取構造体1から引き離すように携帯物Tを引っ張る。携帯物Tは一例として工具である。この引っ張りに応じて、携帯物取付部9、衝撃吸収部材7、連結具14、および紐引出端2aが
図1の矢印Aの方向へと引っ張られる。紐巻取構造体1から矢印Aの方向へ紐状体2が引き出される力がはたらくと、これによってリールは引き出し回転方向へ回転する。リールの回転に伴って、紐引出端2aとつながった紐状体2が紐巻取構造体1から任意の長さだけ引き出される。
【0027】
作業者200がもし携帯物Tをあやまって手から落としてしまった場合に、衝撃吸収部材7が携帯物Tの落下による衝撃を吸収できるので、衝撃が緩和・減衰される。これにより、落下衝撃に起因する携帯物Tの跳ね上がりを抑制できる利点がある。携帯物Tの落下衝撃に起因する紐状体2の破断を抑制できる利点もある。
【0028】
実施の形態において、次に述べる各種の変形が適用されてもよい。下記の変形群から、一種類または複数種類の任意の変形が選択されて、その変形が実施の形態にかかる携帯物落下防止具100に適用されてもよい。
【0029】
(変形例:衝撃吸収部材の設置位置のバリエーション)
実施の形態では、
図1に示すように、衝撃吸収部材7が、紐状体2と携帯物取付部9との間に設けられる。しかしながら、変形例として、衝撃吸収部材7が、携帯物落下防止具100が持つ複数の構成要素の任意の二つの間に介在してもよい。本体装着具8から携帯物取付部9までの各構成要素の途中に衝撃吸収部材7が介在することで、携帯物Tの落下衝撃が緩和される。一例として、衝撃吸収部材7が、本体装着具8と紐状体2との間に介在してもよい。この場合、本体装着具8と、衝撃吸収部材7と、紐状体2と、この紐状体2を巻き取る紐巻取構造体1と、紐巻取構造体1のケースに接続した携帯物取付部9と、がこの順番で直列接続するように、携帯物落下防止具100が構築されてもよい。
【0030】
他の例として、衝撃吸収部材7が、本体装着具8と紐巻取構造体1のケースとの間に介在してもよい。この場合、本体装着具8と、衝撃吸収部材7と、紐巻取構造体1のケースと、紐巻取構造体1から引き出される紐状体2と、紐状体2に接続した携帯物取付部9と、がこの順番で直列接続するように、携帯物落下防止具100が構築されてもよい。
【0031】
さらに他の例として、衝撃吸収部材7は、紐巻取構造体1のケースと携帯物取付部9との間に介在してもよい。この場合、本体装着具8と、紐状体2と、この紐状体2を巻き取る紐巻取構造体1が持つケースと、衝撃吸収部材7と、携帯物取付部9とが、この順番で直列接続するように、携帯物落下防止具100が構築されてもよい。
【0032】
上記の衝撃吸収部材7の個数は一つであってもよく、あるいは複数であってもよい。実施の形態と上記三つの変形例とのそれぞれで衝撃吸収部材7の設置位置が複数個開示されているが、その複数の設置位置のなかから選択した一つまたは複数の任意の設置位置に衝撃吸収部材7を設けることができる。
【0033】
(変形例:衝撃吸収部材の構成のバリエーション)
実施の形態にかかる衝撃吸収部材7の具体的な構造、材質、および形状に限定はない。衝撃吸収部材7は、携帯物取付部9に加わる衝撃を吸収するような機能を持つものであればよく、その構造、材料、形状、弾性または伸縮性などについて、様々なものを適用可能である。
【0034】
衝撃吸収部材7の材料には、引張方向に沿って紐状体2よりも高い弾性伸縮機能を持つような各種材料が適宜に用いられてもよい。衝撃吸収部材7の直径は、紐巻取構造体1で巻き取られる紐状体2よりも太くてもよいが、使用材質に応じて適宜に定めることができ、紐状体2よりも細くともよい。紐状体2が織紐等の比較的太いものである場合にも、衝撃吸収部材7の直径が紐状体2より細くなることは妨げられない。
【0035】
実施の形態では、一例として、中間部7bが伸縮性を持つロープ材で構築されている。衝撃吸収部材7には、任意の公知のロープ材を所定の長さとしたものを用いてもよい。ロープは、「縄」、「綱」、「繊維または鋼線をより合わせた丈夫な綱」、あるいは「索」とも称される。なお、ロープは実施の形態における長尺衝撃吸収部材の一例でもある。公知のロープ材には、例えば化学繊維ロープと天然繊維ロープとガラス繊維ロープとワイヤーロープとがある。化学繊維ロープとして、ナイロンロープと、ポリエステルロープと、ポリプロピレンロープと、ポリエチレンロープと、ビニロンロープと、ビニロンとポリエステルの混紡糸ロープと、のうちいずれか一つが用いられてもよい。天然繊維ロープとして、例えば綿ロープまたは麻ロープが用いられてもよい。ワイヤーロープとして、炭素鋼ロープまたはステンレスロープが用いられてもよい。
【0036】
変形例として、衝撃吸収部材7としてゴムロープが用いられてもよい。衝撃吸収部材7は、ロープ状ではなく他の任意の形状を持つゴム状弾性体でもよい。ゴム材料は合成ゴムでも天然ゴムでもよい。ゴム材料に限定はなく、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロブレンゴム(CR)、アクリロニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、およびシリコーンゴム(Si)などの各種ゴム材料のなかから、衝撃吸収部材7の材料を任意に選択してもよい。例えば耐熱性のニーズが高ければそれに応じて耐熱性の高い材料、例えばシリコーンゴムが選択されてもよい。他にも耐火性や耐候性などのニーズに応じて所望の材料が選定されてもよい。
【0037】
変形例として、衝撃吸収部材7は、金属製バネ(例えばコイルバネ、スプリング)であってもよい。衝撃吸収部材7を金属製とすれば、耐火性、耐熱性、および耐久性等が高いという利点がある。金属製バネに長さを持たせた部材は、実施の形態における長尺衝撃吸収部材の一例でもある。
【0038】
変形例として、衝撃吸収部材7は、ベルトであってもよい。ベルトの素材は各種公知のものを任意に利用でき、例えば、天然皮革でもよく、合成皮革でもよく、上記列挙された各種の化学繊維でもよく、上記列挙された各種のゴム材料でもよい。長さを持つベルトは、実施の形態における長尺衝撃吸収部材の一例でもある。
【0039】
実施の形態の衝撃吸収部材7は、根元部7aおよび先端部7cと中間部7bとで異なる太さを有するが、本開示はこのような構造に限られない。変形例として、衝撃吸収部材7が均一の太さを持ってもよい。他の変形例として、衝撃吸収部材7は、中空のチューブでもよく、カールコードでもよく、これらに長さを持たせたものは実施の形態における長尺衝撃吸収部材の一例に含まれる。カールコードとは、カール状に巻かれたコードであり、伸縮電線とも呼ばれる。他の変形例として、衝撃吸収部材7は、必ずしもロープのような長さを持つ部材でなくともよい。例えば、衝撃吸収部材7は、柱体、錐体、環状体、球体、および楕円体その他の任意の立体形状に構築されてもよい。この場合には、ガイドロープとしての機能が省略されてもよい。
【0040】
なお、実施の形態では、紐巻取構造体1に「ロック機構」が設けられていない。ロック機構が無いので、紐状体2を引っ張る力を開放すると、リールが紐状体2を常に途中停止なく紐引出端2aまで完全に巻き取ろうとするように、紐巻取構造体1の内部構造が構築されている。
【0041】
なお、実施の形態では、落下防止対象の携帯物Tが工具の場合を説明している。しかし変形例として、他の任意の物品を携帯物としてもよい。携帯物Tは、例えば携帯端末、カメラあるいは各種の鍵でもよい。携帯端末はスマートフォン等の携帯通信端末でもよくタブレット端末でもよい。鍵は、例えば玄関ドア用鍵でもよく、自動車用鍵でもよい。
【0042】
以上説明した実施の形態によれば、紐巻取構造体1の外部に衝撃吸収部材7が設けられる。これによりリールの構造や紐状体2の作動機構に制限を受けずに携帯物Tの落下衝撃を緩和することができる。携帯物落下防止具100における紐巻取構造体1の外側にシンプルな衝撃吸収手段を配置するという本開示の技術的アプローチは、既存の技術水準にはみられなかった画期的なものである。
【0043】
また、実施の形態では、衝撃吸収部材7が、紐状体2と携帯物取付部9との間に介在し、ある程度の長さを持つ「長尺衝撃吸収部材」である。長尺衝撃吸収部材がある程度の長さを持つことで、作業者200が携帯物Tを容易に取り回すことができる。長尺衝撃吸収部材は、一例として、「紐状体2をリールから引き出さないか、あるいはわずかに引出した状態で、作業者200が腰まわりで携帯物Tを容易に取り回しできる程度の長さ」に構築されてもよく、例えば「作業者200が腰袋に工具などの携帯物Tを容易に収納できる程度の全長を携帯物落下防止具100に与える程度の長さ」に構築されてもよい。なお、衝撃吸収部材7と紐状体2とを連結する部材は、「より戻し金具」であってもよい。より戻し金具は、互いに回転可能に連結された二つのリング部を有する。より戻し金具により、引き出された紐状体2を絡みにくくすることができる。
【0044】
また、実施の形態では、バネなどの付勢部材を含む自動巻きリール機構がロック機構を備えないことでリール機構をさらに簡素化でき、紐巻取構造体1を小型化あるいは軽量化しやすい利点がある。ロック機構を備えなくとも、衝撃吸収部材7がある程度の長さを持つので、腰袋202の付近において携帯物を取り回しやすい。したがって、紐巻取構造体1をさらに小型化しつつ、携帯物の取り回し利便性も確保できる利点がある。
【0045】
また、実施の形態で衝撃吸収部材7を金属製バネ部材または耐熱性ゴム弾性部材としてもよい。これにより過酷な環境下でも携帯物落下防止具100を使用できる利点がある。
【0046】
また、実施の形態の携帯物落下防止具100は、下記の観点からの利点も有する。近年、建築現場での安全意識の高まりにより工具落下防止対策の義務化が進んでいる。工具落下防止具を使用するユーザ(作業者)には、鳶や足場屋なども多く含まれる。これらのユーザ(作業者)は比較的豪快な作業をすることも多いので、堅牢仕様を持つ製品の要求が高い。この点、実施の形態では、紐巻取構造体1を金属製とすることで堅牢性を満たすことができる。さらに、紐状体2を金属ワイヤとすることで、火や熱に強く耐摩擦・耐切断に優れる利点があるので、比較的過酷な環境下でもニーズを満たすことができる。また、建築現場等の場所で使用するにあたっては、装着時に腰まわりのスペースをとらないコンパクトサイズである利点が大きい。また、実施の形態ではバネによる自動巻取リール式なので、垂れた紐状体(ワイヤ)が引っ掛かる危険がなく移動しやすい利点がある。
【符号の説明】
【0047】
1 紐巻取構造体
1a 引出口
2 紐状体
2a 紐引出端
7 衝撃吸収部材(長尺衝撃吸収部材)
7a 根元部
7b 中間部
7c 先端部
8 本体装着具
9 携帯物取付部
13、14 連結具
100 携帯物落下防止具
A 矢印(紐引出し方向)
T 携帯物