(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092964
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】圧電デバイスの製造方法及び圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 3/007 20060101AFI20220616BHJP
H03H 9/02 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H03H3/007
H03H9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205989
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】100079164
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100193998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 純一
(72)【発明者】
【氏名】植田 貴博
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108DD02
5J108EE07
5J108EE18
5J108GG03
5J108GG16
5J108MM02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】圧電素子の先端の基体への接触を回避しつつ、等価直列抵抗値の低減等の電気的特性の向上を達成し得る圧電デバイスの製造方法及びその製造方法によって得られた圧電デバイスを提供する。
【解決手段】圧電デバイスの製造方法は、融点T1を持つ突起部40を基体30上の突起部形成面41に形成する突起部形成工程と、熱硬化温度T2を持つ接合材54、55によって基端21を基体30上に固定するとともに、基端22よりも先端21側を突起部40上に載置する圧電素子載置工程と、基体30及び圧電素子20を加熱することにより、接合材54、55を硬化させるとともに、突起部40を溶融させて圧電素子20から突起部40を離間させる加熱工程と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子の先端を自由端とし前記圧電素子の基端を固定端とした状態で前記圧電素子を基体に搭載する工程を含む圧電デバイスの製造方法であって、
融点を持つ突起部を前記基体上の突起部形成面に形成する突起部形成工程と、
熱硬化温度を持つ接合材によって前記基端を前記基体上に固定するとともに、前記基端よりも前記先端側を前記突起部上に載置する圧電素子載置工程と、
前記基体及び前記圧電素子を加熱することにより、前記接合材を硬化させるとともに、前記突起部を溶融させて前記圧電素子から前記突起部を離間させる加熱工程と、
を含む圧電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記接合材は導電性接着剤からなり、前記突起部は前記熱硬化温度以下の前記融点を持つ金属からなる、
請求項1記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記基体はセラミックスからなり、前記突起部は金スズ合金からなり、
前記突起部形成面は、メタライズ層に金メッキが施されたものからなり、平面視した面積が前記突起部よりも大きい、
請求項2記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記金スズ合金は金が80重量%かつスズが20重量%であり、前記熱硬化温度は295℃~305℃である、
請求項3記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記接合材は導電性接着剤からなり、前記突起部は前記熱硬化温度よりも高い前記融点を持つ金属からなる、
請求項1記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記突起部と同じ組成の蓋体用接合材を介して前記基体に蓋体を加熱接合することにより、前記圧電素子を気密封止する蓋体接合工程を、
更に含む請求項2乃至5のいずれか一つに記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項7】
セラミックスからなる基体と、
先端を自由端とし基端を固定端とした状態で前記基体に搭載された圧電素子と、
前記圧電素子に対向する前記基体上に位置するとともに、前記圧電素子側を金スズ合金層とするメタライズ部と、
前記基体に接合することにより前記圧電素子を気密封止する蓋体と、
を備えた圧電デバイス。
【請求項8】
前記メタライズ部の周辺の前記基体上に凹部及び凸部の少なくとも一方が位置する、
請求項7記載の圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば水晶振動子などの圧電デバイスの製造方法、及び、その製造方法によって得られた圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な圧電デバイスは、セラミックスなどからなる基体と、先端を自由端とし基端を固定端とした状態で基体上に搭載される圧電素子と、基体に接合することにより圧電素子を気密封止する蓋体と、を備えている。圧電素子は、導電性接着剤などによって、基体に対して所定角度(例えば水平)になるように保持される。このとき、圧電素子の先端が傾いて基体に接触することにより、圧電素子の振動が阻害されることがある。
【0003】
一方、圧電素子の先端の基体への接触を回避する技術が知られている。特許文献1の技術では、圧電素子の先端側に対向する基体上に枕部を設け、圧電素子の先端を枕部に載せる構造を採っている。特許文献2の技術では、導電性接着剤の熱硬化時に膨張し熱硬化後に縮小する合成樹脂を用いて枕部を構成することにより、通常の動作時に圧電素子の先端から枕部が離れるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-139901号公報(段落0025)
【特許文献2】特開2014-93566号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の圧電デバイスでは、圧電素子の先端を枕部に載せることにより、圧電素子の先端が完全な自由端にはならないので、等価直列抵抗値の増大等の電気的特性の低下を招くおそれがある。特許文献2の圧電デバイスでは、通常の動作時における温度上昇によって、枕部が膨張して圧電素子の先端に接触するおそれがある。
【0006】
そこで、本開示の目的は、圧電素子の先端の基体への接触を回避しつつ、等価直列抵抗値の低減等の電気的特性の向上を達成し得る圧電デバイスの製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る圧電デバイスの製造方法は、
圧電素子の先端を自由端とし前記圧電素子の基端を固定端とした状態で前記圧電素子を基体に搭載する工程を含む圧電デバイスの製造方法であって、
融点を持つ突起部を前記基体上の突起部形成面に形成する突起部形成工程と、
熱硬化温度を持つ接合材によって前記基端を前記基体上に固定するとともに、前記基端よりも前記先端側を前記突起部上に載置する圧電素子載置工程と、
前記基体及び前記圧電素子を加熱することにより、前記接合材を硬化させるとともに、前記突起部を溶融させて前記圧電素子から前記突起部を離間させる加熱工程と、
を含む。
【0008】
本開示に係る圧電デバイスは、
セラミックスからなる基体と、
先端を自由端とし基端を固定端とした状態で前記基体に搭載された圧電素子と、
前記圧電素子に対向する前記基体上に位置するとともに、前記圧電素子側を金スズ合金層とするメタライズ部と、
前記基体に接合することにより前記圧電素子を気密封止する蓋体と、
を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、圧電素子の基端側を固定する接合材が加熱によって硬化する際に、圧電素子の先端側を支える突起部が溶融して圧電素子の先端側から離れる。そのため、突起部が溶融するまでは圧電素子の先端を突起部が支えているので、圧電素子の先端が傾いて基体に接触することを回避でき、かつ、最終的には圧電素子の先端側から突起部が離れるので、圧電素子の電気的特性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1[A]は実施形態1の製造方法を示す工程図、
図1[B]は実施形態2の製造方法を示す工程図、
図1[C]は実施形態3の製造方法を示す工程図である。
【
図2】
図2[A]、
図2[B]及び
図2[C]は実施形態1の突起部形成工程における突起部周辺を示す断面図であり、
図2[D]は実施形態1の加熱工程後におけるメタライズ部周辺を示す断面図である。
【
図3】実施形態1の圧電素子載置工程前の圧電デバイスを示す分解斜視図である。
【
図4】実施形態1の圧電素子載置工程後の圧電デバイスを示す断面図である(
図3におけるIV-IV線断面に対応)。
【
図5】実施形態1の加熱工程後の圧電デバイスを示す断面図である(
図2におけるIV-IV線断面に対応)。
【
図6】実施形態1の蓋体接合工程後の圧電デバイスを示す断面図である(
図2におけるIV-IV線断面に対応)。
【
図7】
図7[A]は実施形態1におけるメタライズ部周辺の第一変形例を示す断面図、
図7[B]は実施形態1におけるメタライズ部周辺の第二変形例を示す断面図である。
【
図8】実施形態3の蓋体接合工程前の圧電デバイスを示す断面図である(
図2におけるIV-IV線断面に対応)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本開示を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については同一の符号を用いることにより、重複説明を省略する。図面に描かれた形状は、当業者が理解しやすいように描かれているため、実際の寸法及び比率とは必ずしも一致していない。本明細書では、圧電デバイスの製造方法を単に「製造方法」と略すことがある。
【0012】
以下、
図1[A]及び
図2乃至
図6に基づき、実施形態1の製造方法を説明する。
【0013】
本実施形態1の製造方法は、圧電素子20の先端21を自由端とし圧電素子20の基端22を固定端とした状態で圧電素子20を基体30に搭載する工程を含む圧電デバイス10の製造方法であって、次の工程を含む。
【0014】
・突起部形成工程S11(
図2[A]乃至
図2[C]):融点T1を持つ突起部40を基体30上の突起部形成面41に形成する。
・圧電素子載置工程S12(
図3、
図4):熱硬化温度T2を持つ接合材54,55によって基端22を基体30上に固定するとともに、基端22よりも先端21側を突起部40上に載置する。
・加熱工程S13(
図2[D]及び
図5):基体30及び圧電素子20を加熱することにより、接合材54,55を硬化させるとともに、突起部40を溶融させて圧電素子20から突起部40を離間させる。
【0015】
本実施形態1の製造方法は、更に次の工程を含んでもよい。
・蓋体接合工程S14(
図6):基体30に蓋体60を接合することにより、圧電素子20を気密封止する。
【0016】
本実施形態1の製造方法は、次のように構成してもよい。
・接合材54,55は導電性接着剤からなり、突起部40は熱硬化温度T2以下の融点T1を持つ金属からなる。すなわちT1≦T2である。
・基体30はセラミックスからなり、突起部40は金スズ合金からなる。
図2[C]に示すように、突起部形成面41は、メタライズ層43に金メッキ44が施されたものからなり、平面視した面積が突起部40よりも大きい。
・突起部40を構成する金スズ合金は金が80重量%かつスズが20重量%であり、熱硬化温度T2は295℃~305℃である、
【0017】
次に、本実施形態1の各工程について詳しく説明する。
【0018】
<突起部形成工程S11>
まず、基体30について説明する。基体30は、上面31a及び下面31bを有する矩形状の基板部31と、上面31aの周縁と一体化された枠部32と、上面31aに設けられた電極用パッド34,35と、下面31bの四隅に設けられた外部端子12とを備えている。
【0019】
図3では、枠部32の一部を切除して示している。枠部32は、基板部31の周縁に沿って矩形枠状になっている。基板部31には、電極用パッド34,35と外部端子12とを、電気的に接続する導体(図示せず)が形成されている。基板部31及び枠部32は、例えば積層セラミックスからなる。その場合、複数の四角形状のグリーンシートを重ね、その上に複数の四角枠状のグリーンシートを重ね、全体を焼成することにより、基板部31及び枠部32が得られる。
【0020】
電極用パッド34,35は、例えばタングステン等のメタライズに金メッキ等を施した導体からなり、圧電素子20の引き出し電極24,25に対向する位置に設けられ、接合材54,55によって引き出し電極24,25に電気的に接続される。
【0021】
ここで、
図2[A]乃至
図2[C]を中心に突起部形成工程S11について説明する。まず、
図2[A]に示すように、基板部31の上面31aに例えばタングステン等のメタライズ層43を形成する。続いて、
図2[B]に示すように、メタライズ層43に金メッキ44を施して突起部形成面41を形成する。メタライズ層43及び金メッキ44から突起部用パッド42が構成される。突起部用パッド42を電極用パッド34,35と同時に形成すれば、製造工程を簡略化できる。続いて、
図2[C]に示すように、突起部形成面41に突起部40を形成する。突起部40の形成方法としては、例えば、突起部形成面41の一部に金スズペーストをそのまま載置する、又は、突起部形成面41の一部に部分メッキ法で金スズバンプを形成する、などが挙げられる。
【0022】
なお、突起部40の材料は、一定の融点を持つものであれば何でもよく、例えば、はんだ材若しくはろう材などの金属、又はガラス材などとしてもよい。突起部40の平面形状は、円形に限らず、例えば、楕円形、矩形又は多角形などとしてもよい。突起部40の側面形状は、例えば、半円形、半楕円形又は矩形などとしてもよい。
【0023】
<圧電素子載置工程S12>
まず、圧電素子20について説明する。
図3及び
図4に示すように、圧電素子20は、平面視した形状が矩形状であり、その一辺に引き出し電極24,25が設けられ、引き出し電極24,25が接合材54,55を介して電極用パッド34,35に片持ち梁状に固定される。電極用パッド34,35は、平面視した形状がそれぞれ矩形状である。ここでいう「矩形」には、正方形も含まれる。
【0024】
換言すると、圧電素子20は、水晶振動素子であり、引き出し電極24,25、励振電極26,27及び水晶片23を有する。水晶片23は、例えば矩形状のATカット板からなる。励振電極26,27は、それぞれ水晶片23の両面に設けられ、かつ互いに絶縁されている。励振電極26,27の一部は、それぞれ水晶片23の一方の主面から側面を跨いで他方の主面まで延び、引き出し電極24,25に接続されている。なお、圧電素子20は、厚みすべり振動素子であるが、それに代えて音叉型屈曲振動素子又は輪郭すべり振動素子などを用いることもできる。圧電素子20及び励振電極26,27の平面形状は、矩形に限らず、例えば円形、楕円形、多角形などとしてもよい。
【0025】
接合材54,55は、導電性接着剤であり、例えばシリコーン樹脂等のバインダの中に導電フィラとして導電性粉末を含有するもの(例えば銀ペーストなど)からなり、硬化前は流動性を有する。導電性粉末としては、アルミニウム、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、銀、チタン、ニッケル又はニッケル鉄のうちのいずれか一つ又はこれらの組み合わせを含むものが用いられる。また、バインダとしては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂又はビスマレイミド樹脂が用いられる。
【0026】
ここで、
図3及び
図4を中心に圧電素子載置工程S12を説明する。まず、ディスペンサなどを用いて、接合材54,55としての導電性接着剤を、電極用パッド34,35上に一定量吐出する。すると、接合材54,55が表面張力によって丸くなり電極用パッド34,35に塗布される。続いて、圧電素子20の基端22側すなわち引き出し電極24,25を接合材54,55上に載置するとともに、圧電素子20の先端21側を突起部40上に載置する。このとき、圧電素子20は、接合材54,55の持つ濡れ性によって軽く固定されるとともに、突起部40によって上面31aに対し所定角度(例えば水平)に保たれる。
【0027】
<加熱工程S13>
突起部40が金80重量%かつスズ20重量%の金スズ合金からなる場合、その融点T1は280℃である。一方、接合材54,55の熱硬化温度T2は295℃~305℃である。そこで、295℃~305℃の恒温槽内に、
図4に示す状態の圧電デバイス10を入れる。圧電デバイス10が室温から280℃になるまでは、圧電素子20の先端21側は突起部40上に載っているので所定角度に保たれる。圧電デバイス10が280℃を越えると、
図5に示すように、突起部40が溶融して圧電素子20から離れる。このとき、接合材54,55の硬化がある程度進んでいるので、圧電素子20は突起部40の支えが無くても所定角度に保たれる。圧電デバイス10が295℃~305℃に達してから一定時間が経過すると、接合材54,55の硬化は完了する。
図2[C]及び
図4に示す突起部40は、溶融すると金メッキ44全体に広がって合金化し、
図2[D]及び
図5に示す扁平な金スズ合金層45となる。
図2[D]及び
図5に示すように、加熱工程後のメタライズ層43及び金スズ合金層45部はメタライズ部46を構成する。
【0028】
<蓋体接合工程S14>
図6に示すように、蓋体60は、例えばコバール(Kovar)などの金属からなる矩形の平板であり、基体30の枠部32の上端面に重ねられる。つまり、蓋体60は、基体30へ蓋体用接合材61などにより接合され、気密封止された凹部空間11を形成する。蓋体用接合材61は、ガラス封止材、はんだ材、又は、ろう材などである。凹部空間11は、本実施形態1では基体30側に形成しているが、蓋体60側に形成してもよい。
【0029】
次に、本実施形態1の製造方法によって得られた圧電デバイス10について、
図6を中心に説明する。
【0030】
以上の工程によって、圧電デバイス10は、圧電素子20が基体30に搭載された状態で、基体30と蓋体60とが蓋体用接合材61によって接合され、圧電素子20が凹部空間11内に気密封止された構造になる。すなわち、圧電デバイス10は、セラミックスからなる基体30と、先端21を自由端とし基端22を固定端とした状態で基体30に搭載された圧電素子20と、圧電素子20に対向する基体30上に位置するとともに、圧電素子20側を金スズ合金層45とするメタライズ部46と、基体30に接合することにより圧電素子20を気密封止する蓋体60と、を備えている。
【0031】
換言すると、圧電デバイス10は、圧電素子20、基体30及び蓋体60を備えた水晶振動子である。なお、圧電デバイス10は、半導体ICチップを付設した水晶発振器、電圧制御型水晶発振器(VCXO:Voltage Controlled Crystal Oscillator)、温度補償型水晶発振器(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)又は恒温槽付水晶発振器(OCXO:Oven Controlled Crystal Oscillator)などであってもよい。
【0032】
また、圧電デバイス10は、次のように構成してもよい。
図7[A]に示すように、メタライズ部46の周辺の基体30上(すなわち基板部31の上面31a)に、凹部47が位置する。
図7[B]に示すように、メタライズ部46の周辺の基体30上(すなわち基板部31の上面31a)に、凸部48が位置する。凹部47及び凸部48は、基体30の製造工程においてグリーンシートで形成してもよいし、基体30にレーザ加工などで形成してもよい。また、凹部47及び凸部48の両方が、基体30上に位置するようにしてもよい。
【0033】
次に、本実施形態1の製造方法による作用及び効果について説明する。
【0034】
(1)本実施形態1によれば、圧電素子20の基端22側を固定する接合材54,55が加熱によって硬化する際に、圧電素子20の先端21側を支える突起部40が溶融して圧電素子20の先端21側から離れる。そのため、突起部40が溶融するまでは圧電素子20の先端21を突起部40が支えているので、圧電素子20の先端21が傾いて基体30に接触することを回避でき、かつ、最終的には圧電素子20の先端21側から突起部40が離れるので、圧電素子20の電気的特性を向上できる。また、特許文献2の技術と異なり、通常の動作時に温度上昇により突起部40が復活することもないので、信頼性を向上できる。
【0035】
換言すると、圧電素子20は安定した角度で基体30に固定されることにより、圧電素子20と基体30又は蓋体60との接触の可能性を低減できる。また、圧電素子20の保持角度が安定することにより、圧電素子20の励振電極26,27と蓋体60又は基板部31の配線パターンとの距離を一定にできるので、浮遊容量の変動を低減できる。
【0036】
(2)突起部40の融点T1が接合材54,55の熱硬化温度T2以下(すなわちT1≦T2)の場合、その作用及び効果は次のとおりである。圧電デバイス10が室温から融点T1になるまでは、
図4に示すように、圧電素子20の先端21側を突起部40が支えているので、圧電素子20は所定角度に保たれる。圧電デバイス10が融点T1を越えると、
図5に示すように、突起部40が溶融して圧電素子20から離れる。このとき、接合材54,55の硬化がある程度進んでいるので、圧電素子20は突起部40の支えが無くても所定角度に保たれる。圧電デバイス10が熱硬化温度T2に達してから一定時間が経過すると、接合材54,55の硬化は完了する。この場合、圧電素子20が熱硬化温度T2以上に加熱されないことにより、圧電素子20が不要な高温処理に曝されないので、圧電素子20の電気的特性の劣化を抑制できる。
【0037】
(3)突起部40が金スズ合金からなり、突起部形成面41がメタライズ層43及び金メッキ44からなり(
図2[C])、突起部形成面41の平面視した面積が突起部40よりも大きい場合、その作用及び効果は次のとおりである。突起部40の金スズ合金は、融点T1以上になって溶けると、突起部形成面41の金メッキ44全体に広がる。すると、突起部40の高さが低くなるので、突起部40が圧電素子20から離れる。更に、突起部40の金スズ合金は、金メッキ44の金と合金化することにより、より金の多い金スズ合金層45となる(
図2[D]及び
図5)。金スズ合金は金が多くなるほど融点が高くなるので、金スズ合金層45は突起部40よりも高い融点を持つ。よって、その後の工程での熱処理(例えば金スズ合金による蓋体60の接合など)において、金スズ合金層45が溶けて流れ出すことを抑制できる。
【0038】
(4)突起部40を構成する金スズ合金が金80重量%かつスズ20重量%であり、接合材54,55の熱硬化温度T2が295℃~305℃であるとした場合、突起部40の融点T1が280℃となることから、前述のT1≦T2の関係を実現できる。
【0039】
次に、本実施形態1の製造方法によって得られた圧電デバイス10の作用及び効果について説明する。
【0040】
基板部31の上面31aには電極用パッド34,35の他に突起部用パッド42(加熱工程後はメタライズ部46)が付加されているので、基板部31ひいては基体30の温度差による歪みを均等化できる。基板部31の温度は、電極用パッド34,35の周辺がパッドのない部分よりも高くなる。電極用パッド34,35(金属)の熱伝導率が高いためである。そこで、パッドのない部分に突起部用パッド42(金属)を設けることにより、パッドの有無による温度差を小さくできる。
【0041】
図7[A]及び
図7[B]に示すように、メタライズ部46の周辺の基体30上に凹部47又は凸部48を設けた場合は、金スズ合金層45の広がりを凹部47又は凸部48で抑止できるので、短絡などの不良の発生を低減できる。
【0042】
次に、実施形態2の製造方法について、
図1[B]に基づき説明する。
【0043】
本実施形態2の製造方法は、突起部40の融点T1が接合材54,55の熱硬化温度T2よりも高い(すなわちT1>T2)点だけが実施形態1と異なる。つまり、
図1[B]の突起部形成工程S21、圧電素子載置工程S22及び蓋体接合工程S24は、
図1[A]の突起部形成工程S11、圧電素子載置工程S12及び蓋体接合工程S14と同じである。そして、
図1[B]の加熱工程S23が
図1[A]の加熱工程S13と異なる。したがって、実施形態1の図面(
図2乃至
図6)をそのまま流用して、本実施形態2について説明する。
【0044】
図1[B]の加熱工程S23において、圧電デバイス10が室温から熱硬化温度T2に達してから一定時間が経過すると、接合材54,55の硬化は完了する。このとき、
図4に示すように、圧電素子20の先端21側は突起部40に支えられているので、圧電素子20は所定角度に保たれる。続いて、圧電デバイス10が熱硬化温度T2を越えて融点T1に達すると、
図5に示すように、突起部40が溶融して圧電素子20から離れる。したがって、接合材54,55の硬化が完了するまで圧電素子20の先端21側を突起部40が支えているので、圧電素子20の先端21が基体30に接触することをより確実に回避できる。本実施形態2のその他の構成、作用及び効果は実施形態1のそれらと同様である。
【0045】
次に、実施形態3の製造方法について、
図1[C]に基づき説明する。
【0046】
本実施形態3の製造方法は、蓋体接合工程S34において、突起部40と同じ組成の蓋体用接合材61を介して基体30に蓋体60を加熱接合することにより、圧電素子20を気密封止する点で、実施形態2と異なる。つまり、突起部40の融点と蓋体用接合材61の融点とは等しくT1である。そのため、
図1[C]の突起部形成工程S31及び圧電素子載置工程S32は、
図1[B]の突起部形成工程S21及び圧電素子載置工程S22と同じである。
図1[C]の加熱工程S33及び蓋体接合工程S34が、
図1[B]の加熱工程S23及び蓋体接合工程S24と異なる。したがって、本実施形態3についても、実施形態1の図面(
図2乃至
図6)をそのまま流用するとともに、新たに
図8を加えて説明する。
【0047】
図1[C]の加熱工程S33において、圧電デバイス10が室温から熱硬化温度T2に達してから一定時間が経過すると、接合材54,55の硬化は完了する。このとき、
図4に示すように、圧電素子20の先端21側を突起部40が支えているので、圧電素子20は所定角度に保たれる。加熱工程S33はこれで終わり、続いて蓋体接合工程S34に入る。蓋体接合工程S34では、
図8に示す状態の圧電デバイス10が熱硬化温度T2を越える融点T1に達すると、
図6に示すように、蓋体用接合材61が溶融して基体30に蓋体60が接合されるとともに、突起部40が溶融して圧電素子20から離れる。したがって、突起部40を溶融する工程を別に設けなくてもよいので、製造工程を簡略化できる。本実施形態3のその他の構成、作用及び効果は実施形態1、2のそれらと同様である。なお、突起部40と蓋体用接合材61とは、例えば同じ金スズ合金とすることができるが、同じ組成であればどのようなものでもよい。
【0048】
以上、上記各実施形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記各実施形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本開示には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【符号の説明】
【0049】
10 圧電デバイス
11 凹部空間
12 外部端子
20 圧電素子
21 先端
22 基端
23 水晶片
24,25 引き出し電極
26,27 励振電極
30 基体
31 基板部
31a 上面
31b 下面
32 枠部
34,35 電極用パッド
40 突起部
41 突起部形成面
42 突起部用パッド
43 メタライズ層
44 金メッキ
45 金スズ合金層
46 メタライズ部
47 凹部
48 凸部
54,55 接合材
60 蓋体
61 蓋体用接合材
T1 融点
T2 熱硬化温度
S11,S21,S31 突起部形成工程
S12,S22,S32 圧電素子載置工程
S13,S23,S33 加熱工程
S14,S24,S34 蓋体接合工程