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特開2022-9298整形外科用プロテーゼ向けの熱処理デバイス、および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009298
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】整形外科用プロテーゼ向けの熱処理デバイス、および使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/30 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
A61F2/30
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171632
(22)【出願日】2021-10-20
(62)【分割の表示】P 2019508202の分割
【原出願日】2017-08-11
(31)【優先権主張番号】15/239,189
(32)【優先日】2016-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518344634
【氏名又は名称】ジョイント イノベーション テクノロジー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 成則
(74)【代理人】
【識別番号】100102761
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 元也
(72)【発明者】
【氏名】ターマニーニ、ゼーファー
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA04
4C097AA07
4C097AA11
4C097AA13
4C097CC11
4C097CC18
4C097MM05
4C097MM09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】整形外科用プロテーゼ向けの熱処理デバイス、および使用方法に関し、特に、モジュール式整形外科用プロテーゼの構成要素(またはその一部)に好適な熱処理を提供するために発表された熱処理デバイスおよび熱処理デバイスを利用する方法を提供する。
【解決手段】熱処理のための固定デバイスは、加熱された部分をその周囲環境から遮蔽する耐熱部分または領域を含み、固定デバイスは、整形外科用プロテーゼの構成要素を保持するのに有用であり、さらに、モジュール式整形外科用プロテーゼの構成要素(またはその一部)に好適な熱処理を提供するために発表された熱処理デバイスを備え、また、モジュール式整形外科用プロテーゼの外科的移植中に固定デバイスおよび熱処理デバイスを利用する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュール式整形外科用プロテーゼの一部またはコンポーネントに熱膨張を与えるように適合された熱処理デバイス。
【請求項2】
筐体と、
加熱要素に接続された1次電磁コイルおよび2次電磁コイルを有する電磁ユニットと、
前記電磁ユニットが動作しているときに、前記筐体内に存在する前記モジュール式整形外科用プロテーゼの一部または構成要素を高温に加熱し、これにより熱膨張を与えるパーツまたはコンポーネントと、
を具備する請求項1に記載の熱処理デバイス。
【請求項3】
前記1次電磁コイルおよび2次電磁コイルは、共通の鉄心の周りに巻き付けられ、励磁されると前記加熱要素に伝達される高誘導電気出力を生成し、前記モジュール式整形外科用プロテーゼの一部または構成要素を加熱する請求項2に記載の熱処理デバイス。
【請求項4】
前記加熱要素がモールステーパの形態である、請求項2または請求項3に記載の熱処理デバイス。
【請求項5】
前記加熱要素が、150~300℃の範囲内の熱を生成する、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の熱処理デバイス。
【請求項6】
1気圧を超えて加圧可能であり、ガスまたは真空を収容するためのチャンバを更に含む請求項1乃至5ののいずれか一項に記載の熱処理デバイス。
【請求項7】
前記チャンバが1気圧を超えて加圧可能である、請求項6に記載の熱処理デバイス。
【請求項8】
内部に、電気抵抗型ヒーター、または電気加熱コイル、または前記モジュール式整形外科用プロテーゼの一部または構成要素を加熱して熱膨張を与えるために使用されるサーミスタを含む、請求項1又は請求項4乃至7のいずれか一項に記載の熱処理デバイス。
【請求項9】
高温に加熱された前記モジュール式整形外科用プロテーゼの一部または構成要素が、先細になっており、好ましくはモールス先細になっているオス部分である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の熱処理デバイス。
【請求項10】
高温に加熱されたモジュール式整形外科用プロテーゼの一部または構成要素が、冷却時に前記オス部分を受け入れるように対応する寸法のボアまたは空洞を含むシュリンクフィットジョイントが形成されている請求項9に記載の熱処理デバイス。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の熱処理デバイスを使用して、前記モジュール式整形外科用プロテーゼのメス部分を熱処理して、その少なくとも1つの寸法を増加させ、その熱処理されたメス部分を前記モジュール式整形外科用プロテーゼの非熱処理されたオス部分に接合し、その後冷却して前記メス部分と前記オス部分との間に焼きばめ関節を形成する熱処理デバイスの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科用プロテーゼ向けの熱処理デバイス、および使用方法に関し、特に、モジュール式整形外科用プロテーゼの構成要素(またはその一部)に好適な熱処理を提供するために発表された熱処理デバイスおよび熱処理デバイスを利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モジュール式整形外科用プロテーゼの構成要素を、そのメス部分をオス部分へ、特にモジュール式構成要素内に存在するオス部分を、そのさらなるモジュール式構成要素内に存在する相応に構成されたメス部分(すなわち、孔または凹部)内へ、ともに固定することによって、ともに堅固に接合するデバイスが提案されており、このデバイスにおいて、好ましくは、オス部分は先細りしており、メス部分は孔または凹部であり、オス部分との精密公差の嵌合を提供するように相応に構成される。
【0003】
好ましい実施形態では、構成要素を接合するために固定デバイスが使用され、固定デバイスは、加熱された部分または構成要素をその周囲環境から遮蔽する耐熱部分または領域を含み、固定デバイスは、整形外科用プロテーゼの構成要素を保持するのに有用である。
【0004】
本発明は、複数の構成要素から整形外科用プロテーゼを組み立てる際に使用される装置および方法に関し、特にこれらの装置および方法は、外科的処置を介して肩関節、肘関節、股関節、または膝関節を少なくとも部分的に置き換えるために人体内に移植されたプロテーゼとともに使用するのに特によく適合される。
【0005】
そのような整形外科用プロテーゼは、典型的には、2つ以上の構成要素および部分、たとえば骨に取り付けられる移植可能なステム、およびやはり骨に移植されまたは取り付けられる相応にサイズ設定された移植可能なカップから組み立てられる。これら2つの構成要素は、単独で、またはさらなる構成要素とともに、治療を受ける患者のための交換用関節として動作することができる。
【0006】
先細りした部分を組み込んでいるそのような整形外科用プロテーゼの例は広く知られており、とりわけ、「Interlocking Reverse Hip Pro sthesis」という名称の米国特許第8313531(B2)号、「Modified Reverse Joint and Revision Prosthesis」という名称の米国特許出願公開第2014/0156011(A1)号、「Lined Femoral Cup」という名称の米国特許出願公開第2014/0200675(A1)号が含まれる。
【0007】
これらは、先細り部分、すなわちモールス・テーパを備える複数の部分からなる移植可能な整形外科用プロテーゼを示す。これらから容易に見られるように、移植可能な整形外科用プロテーゼの構成要素および部分のいくつかは、典型的には、生体適合性があり、長いサービス寿命を有することが予期される、耐久性のある材料、すなわち金属および/または金属合金(以下、集合的に「金属」と呼ぶ)から構築される。
【0008】
移植可能な整形外科用プロテーゼのそのような構成要素は、典型的には、非常に厳しい寸法および公差に合わせて形成または機械加工される。いくつかの実施形態では、金属/金属合金から形成される構成要素の表面領域または部分はまた、腐食の低減またはそのような部分の表面上への骨の成長の改善などを1つまたは複数の形で支援することができる特有の表面処理を有することができる。
【0009】
モジュール式整形外科用プロテーゼ法は、多くの場合、「オス」部分(または要素)を有する構成要素を含み、「オス」部分は、さらなる構成要素の相応に寸法設定された空洞または孔部分(「メス」部分または要素)内に挿入されるように寸法設定される。典型的には、手術室内で、複数の個別の構成要素(「キット」の形態とすることができる)が外科医に提供され、外科医は、外科的処置中、利用可能な個別の構成要素の中から選択することができる。
【0010】
これらの構成要素は、たとえば、それらの機能に応じて個々の寸法または構成を変更することができ、これらの中から外科医は、患者の体内に移植されることとなる好適に構成された整形外科用インプラントを組み立てることができる。しかし、外科医によって組み立てられる複数の構成要素を提供するそのような「モジュール式」は、多くの場合、後に患者の体内に金属摩耗破片が解放される原因となり、これは、組み立てられたモジュール式構成要素からの整形外科用インプラントの移植後、数週間、数か月、または数年の期間にわたって生じる。
【0011】
そのような金属摩耗破片は、局所的炎症反応の原因となり、最終的に骨溶解を招く可能性がある。その結果、痛みおよび機能的障害が生じ、多くの場合、組み立てられたモジュール式構成要素から形成されている以前移植された整形外科用プロテーゼを後に場合により広範に外科的に修正することが必要となり、ならびに/または患者には著しい臨床的および機能的制限がかかる。
【0012】
また、当技術分野では、生体内ならびに生体外の両方の状態で、先細りしたオス部分と相応に寸法設定されたメス部分との間の微動は、どちらの部分も典型的には非常に厳しい公差で製作された機械加工金属部分であるにもかかわらず、「フレッティング腐食」の主な原因になることが知られている。フレッティング腐食は、典型的には金属の表面で生じ、移植された整形外科用プロテーゼ法の構成要素の損傷は、通常、負荷を受けて運動が繰り返されたとき、および/または振動によって誘起される。特に、相応に寸法設定されたメス部分内にオス部分が位置しまたは取り付けられる境界接触面またはその付近で生じるそのようなフレッティング腐食は回避することが望ましい。
【0013】
そのようなフレッティング腐食は、これらの部分間の境界接触面に他の方法で形成または存在することができる保護用酸化物層を損傷する可能性があり、そのような損傷は、腐食性のカスケード効果を生じさせる可能性があり、これにより、不純物および局所的組織液の存在下で、移植されたモジュール式整形外科用プロテーゼの領域では、オス部分が相応に寸法設定されたメス部分内に位置しまたは取り付けられる境界接触面またはその付近でpHの低下によってガルバニック腐食が生じ、金属水酸化物イオンの解放が誘起され、それによって境界接触面のさらに損傷が生じる。
【0014】
移植可能なモジュール式整形外科用プロテーゼの構成要素の組立て中、ハンマを使用する手動衝撃が知られているが、そのようなやり方が常に十分であるとは限らない。患者の通常の歩行および他の日常的な活動が周期的に負荷を与えることで、これらの構成要素は片持ち梁のように突出して動くため、構成要素の手動衝撃は、多くの場合、構成要素間の微動を低減または除去するのに不十分であることが報告されている。
【0015】
さらに、先細りしたオス部分および相応に寸法設定されたメス部分の境界接触面の一方または両方で、嵌合するねじ山、スプライン、または他の平滑でない機械加工された特徴などの追加の対応する機械加工された特徴を使用することが、対応策として考えられる可能性もあるが、そのようなやり方は、追加の機械加工を必要とし、表面積を本質的に増大させ、それにより境界接触面またはその付近で、pHの低下によってガルバニック腐食が生じる確率および程度が増大する。そのような欠点があること、ならびにそのような追加の対応する機械加工された特徴を有するモジュール式構成要素から整形外科用プロテーゼを製作し、適切に組み立てることがますます複雑になることで、そのオス部分および相応に寸法設定されたメス部分の境界表面領域または境界接触面で、平滑でない表面を有するそのようなモジュール式構成要素を使用することは躊躇される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第8313531(B2)号
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0156011(A1)号
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/0200675(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、従来技術における上記の欠点に対処して克服した整形外科用プロテーゼ向けの熱処理デバイス、および使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
一態様では、本発明は、モジュール式構成要素から組み立てられた改善された整形外科用プロテーゼを提供し、整形外科用プロテーゼは、移植された整形外科用プロテーゼ内で誘起される微動の影響によるフレッティング腐食をまったくまたは実質上わずかにしか示さないことが予期される。
【0019】
別の態様では、本発明は、モジュール式構成要素から組み立てられた改善された整形外科用プロテーゼを提供し、整形外科用プロテーゼは、その組み立てられたオス部分とメス部分との間の微動をまったくまたは実質上わずかにしか示さないことが予期される。
【0020】
別の態様では、本発明は、そのような改善された整形外科用プロテーゼを個別のモジュール式構成要素から組み立てる方法を提供し、少なくとも1つの構成要素は、オス部分を有し、少なくとも1つの構成要素は、オス部分を受け取って保持するように適合されている相応に寸法設定されたメス構成要素を有し、組み立てられたプロテーゼは、移植された整形外科用プロテーゼ内で誘起される微動の影響によるフレッティング腐食をまったくまたはわずかにしか示さない。
【0021】
別の態様では、本発明は、そのような改善された整形外科用プロテーゼを個別のモジュール式構成要素から組み立てる方法を提供し、少なくとも1つの構成要素は、オス部分を有し、少なくとも1つの構成要素は、オス部分を受け取って保持するように適合されている相応に寸法設定されたメス構成要素を有し、組み立てられたプロテーゼは、組み立てられたオス部分とメス部分との間の微動をまったくまたはわずかにしか示さない。
【0022】
さらなる態様では、本明細書に記載するそのような改善された整形外科用プロテーゼを組み立てる装置および装置の使用方法が提供される。
【0023】
本発明のさらなる態様は、人間の患者の体内でモジュール式整形外科用プロテーゼを生体内形成する構成要素を堅固に接合するステップを含む外科的方法である。
【0024】
本発明のこれらの態様およびさらなる態様は、以下の明細書および添付の図面を考慮することからより明らかになるであろう。
【0025】
金属(および/または金属合金)の本質的な特性は、熱伝達による温度の変化に応答して形状および体積を変化させる傾向があることである。熱による構成要素の膨張および収縮は、建築物内の構造用鋼構成要素の熱間リベットなど、金属部分を互いに嵌合させるために広く使用されていた。
【0026】
他の機械的適用分野では、金属ブッシングの普通より小さい孔の直径を加熱により増大させて、直径を増大させることができ、次いでこのブッシングを円形シャフトに嵌合させることを可能にすることができ、次に冷却により、「焼き嵌め」を実現することができる。
【0027】
機械類における機械的構成要素のそのような「焼き嵌め」は知られており、典型的には、金属構成要素は、後に組立体の形成、すなわち加熱された金属構成要素と別の要素または構成要素との挿入または取外しを可能にするのに十分な金属構成要素の膨張を引き起こすために、十分な加熱期間を必要とする。
【0028】
本発明者は、モジュール式の移植可能な整形外科用プロテーゼの構成要素の平滑な表面のオス部分と、モジュール式の移植可能な整形外科用プロテーゼの構成要素の相応に寸法設定されたメス部分との間の微動の実質的または完全な除去を達成することができ、それによりこれらの接触部分の接触面の腐食が著しく低減することを見出した。これは、装置の使用およびその対応する使用方法によって実現可能である。そのような結果は、まずモジュール式の移植可能な整形外科用プロテーゼの1つまたは複数の構成要素または部分を熱処理してから、モジュール式の移植可能な整形外科用プロテーゼの1つまたは複数のさらなる構成要素または部分と組み立てることによって得ることができる。
【0029】
しかしそのような組立ては、組立て中に、熱処理された部分または構成要素の収縮が生じるほど、熱処理された部分または構成要素が、さらなる熱処理されていない構成要素に比べて高い温度であるときに生じる。そのような熱処理は、プロテーゼの構成要素の2つ以上の組み立てられたオス部分とメス部分との間の「微動」を実質上または完全に除去することによって、生体外、特に生体内で、組み立てられたモジュール式の移植可能な整形外科用プロテーゼの要素の境界接触面間のフレッティング腐食の著しい低減を提供する。
【0030】
2つ以上の構成要素、たとえばモジュール式構成要素からの移植可能な整形外科用プロテーゼの組立て中、その構成要素および/または部分のうちの少なくとも1つの予備熱処理、ならびにその結果生じる熱膨張により、その予備熱処理された構成要素および/または部分が、予備熱処理ステップによって与えられたその前の高い温度から周囲温度に冷却されたとき、これらの部分および/または構成要素と、予備熱処理されていない部分または構成要素との間に機械的に安全な「焼き嵌め」型の接合を後に形成することが可能である。
【0031】
そのような周囲温度は、約50°F~100°F(約10℃~38℃)とすることができ、後者は「正常」な人間の体温をわずかに超える。その事前に予備熱処理された構成要素または部分内のそのような熱収縮は、その構成要素または部分の収縮を提供し、そのため、これらの間で機械的に安全な「焼き嵌め」型の接合が可能になり、したがって、これらの間の境界接触面に相当な接触圧力が提供され、この接触圧力は、典型的には、移植可能な整形外科用プロテーゼの手動衝撃、たとえば嵌合するモジュール式構成要素または部分をともに軽打または槌打することのみに起因して境界接触面で典型的に生成される接触圧力を上回る。
【0032】
そのような結果は、移植可能な整形外科用プロテーゼのモジュール式構成要素の嵌合部分間の接合が、先細りしたオス部分と、相応に寸法設定されたメス部分、すなわち先細りしたオス構成要素を受け入れる孔または空洞との間に形成されるとき、特に明白である。
【0033】
そのような結果はまた、移植可能な整形外科用プロテーゼのモジュール式構成要素の嵌合部分間の接合が、先細りしていないオス部分と、相応に寸法設定されたメス部分、すなわち先細りしていないオス構成要素を受け入れる孔または空洞との間に形成されるとき、特に明白である。
【0034】
好ましい実施形態では、先細りしたオス部分は、円錐台形の要素、または先細りしたシャンクとすることができる。先細りの構成は、相応に寸法設定されたメス部分、好ましくは先細りしたオス構成要素を受け入れる孔または空洞の寸法に相補形の任意の構成とすることができ、それによって「焼き嵌め」接合が形成される。
【0035】
シャンクまたはオス部分の中心軸に対する先細りの角度は、変更することができるが、有利には、弧の約0.5~5度、好ましくは約1~3度の角度を有する。そのような先細りの従来の構成が好ましく、モールス・テーパ、ヤコブ・テーパ、ブラウン&シャープ・テーパ、ジャーノ・テーパのうちの1つまたは複数を含み、モールス・テーパ、特に弧の約1~5度の角度を有するモールス・テーパが特に好ましい。
【0036】
先細りまたはオス部分の外側壁面は、平滑な表面とすることができるが、任意選択で、先細りしたオス構成要素を受け入れる孔または空洞との境界接触を容易にすることができる被覆または粗面を含むことができる。好ましくは、先細りの外側壁面により、スプラインまたはねじ山要素を外側壁面に機械加工することが考慮から除かれる。
【0037】
本発明の好ましい方法では、オス部分への組立て前に、そのメス構成要素または部分は、まず熱処理ステップを受け、オス部分を受け入れるように寸法設定された孔または空洞の少なくとも1つの寸法、好ましくは幅寸法が、室温、すなわち68°F(20℃)での同じ孔または空洞と比較すると少なくともわずかに拡大するのに十分なエネルギー、好ましくは熱エネルギーが、メス構成要素または部分に供給される。少なくとも1つの寸法(たとえば、好ましくはオス部分を受け取るように適合されたメス構成要素の幅、または他のサイズ設定された部分)の増大する相対的な量または割合は、特に大きい必要はなく、寸法のわずか0.00001%から多くても5%の相対的な増大(またはそれ以上)とすることができる。
【0038】
熱処理ステップのために、たとえば加熱ステップによって、メス部分、すなわち孔または空洞の少なくとも1つの寸法を増大させて、この寸法を可逆的に拡大させ、したがってこの熱処理ステップ後、メス構成要素が室温に戻るとき、メス構成要素は実質上(すなわち、99.99%~100%の範囲内)で、その元の寸法に戻ることだけが必要とされる。非限定的な例として、メス構成要素の少なくとも1つの寸法は、オス部分が挿入されるその入口もしくは縁などのその1つもしくは複数の部分における孔もしくは空洞の一部の直径とすることができ、またはその端部間、その開端間、もしくはその1つの開端と閉端との間のうちどれでも適当な位置にある孔もしくは空洞の一部に直交する点における直径もしくは横断寸法の長さとすることができる。
【0039】
熱処理は、任意の手段によって供給することができるが、好ましくは後述する熱処理デバイスによって供給される。その熱処理されていない構成要素または部分と結合した後、滅菌食塩水組成物である液体または滅菌水で洗浄または浸漬することによって、その熱処理された構成要素または部分を冷却し、低い温度に戻すことができる。理論上、熱処理された部分または構成要素は、組立て中に構成要素を形成するために使用される熱処理されていない部分または構成要素に対して高い温度で保持され、その結果、熱処理された部分または構成要素を後に冷却したとき、熱による「焼き嵌め」が生じる。好ましい実施形態では、熱処理された部分または構成要素は、それらが接合される熱処理されていない部分または構成要素より、少なくとも約10℃、より好ましくは(好ましさが増大する順に)少なくとも20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、120℃、140℃、160℃、180℃、200℃、220℃、240℃温かい。好ましい実施形態では、熱処理された部分または構成要素は、約220℃~275℃、より好ましくは約240℃~260℃の範囲内、特に好ましくは約250℃の温度まで加熱される。
【0040】
また、孔または空洞は、孔または空洞が円形、円筒形、または円錐台形の横断面である場合のように中心軸に関して対称の幾何形状を有する必要はないこともはっきりと理解されたい。メス構成要素は、幾何形状が対称でない孔または空洞も同様に含むことができ、したがってこれらとともに使用することができ、そのオス構成要素および部分もまた、対称でない幾何形状を同様に有することができることを認識されたい。
【0041】
そのような幾何形状には、長円形、楕円形、および他の空洞が含まれる。孔はまっすぐな壁で囲むことができ、すなわち横断面の幾何形状は、孔の開端からそのさらなる末端またはさらなる遠位開口まで一定のままである。しかし、孔はまた、対称でない幾何形状を有することができ、すなわち横断面の幾何形状は、孔の開端または空洞の開端からそのさらなる末端、さらなる遠位開口へ変わることもできる。そのような孔および空洞は、平坦な遠位端を有することができ、またはこの遠位端は平坦でなくてもよいが、これは必ずしも当てはまるとは限らない。実際には、他の不規則な幾何形状が存在することもできる。
【0042】
上述したように、熱処理ステップでその構成要素または部分へ供給される熱エネルギーの量は、そのモジュール式構成要素または部分の十分な熱膨張を引き起こし、したがってその前記構成要素または部分の可逆性の熱膨張を引き起こし、それによって構成要素のオス部分と構成要素のメス部分との間に圧縮による焼き嵌め型の接合を引き起こすのに十分であることが必要である。
【0043】
これを実現するために必要なエネルギーの量は、それだけに限定されるものではないが、処理される部分または構成要素の金属の性質、金属の熱膨張係数、処理されるその構成要素または部分の質量、その構成要素および/または部分の寸法および幾何構成、ならびに熱処理ステップを受ける構成要素または部分上の表面被覆または表面処理の存在を含むいくつかの要因に依存する。容易に理解されるように、これらの要因は、それを配置することを可能にするために満足のいく程度の熱膨張をもたらすように、処理されるそのモジュール式構成要素または部分内へ導入される必要のあるエネルギーの量を判定することに関与し、好ましくは、物理的な圧縮または衝撃などの物理的な力をその対応する構成要素または部分に加えると同時に、特に処理される構成要素および/または部分とともに変わるが、そのような要因は、日々の実験的または経験的な技法による方法によって判定することができる。
【0044】
たとえば、その構成要素または部分は、上述した加熱の時間およびエネルギーで加熱することができ、この時間およびエネルギーは、上述した満足のいく量の熱膨張をもたらすのに満足のいくものである。その後、類似の満足のいく程度の熱膨張をもたらすように、類似または同様の構成要素または部分を同じ熱処理方法にかけることができる。構成要素または部分が所望のまたは満足のいく量の熱膨張にかけられたとき、この構成要素または部分を、熱処理ステップを受けていない対応する構成要素または部分に結合または接合することができ、したがって熱処理された構成要素または部分を冷却することで、焼き嵌めを形成する。
【0045】
この場合も、熱処理された構成要素または部分を好適なエネルギー源に露出させることなどの任意の手段によって、熱処理を供給することができる。非限定的な例には、電気誘導加熱、沸騰水もしくは他の滅菌溶液などの加熱された液体槽への浸漬、十分な温度への炉内での加熱、オートクレーブなどの圧力上昇下での加熱、加熱された粒状もしくは粒子状の材料床への浸漬、または本明細書に明示的に示されていない他の手段もしくは他のデバイスの使用が含まれる。しかし有利には、熱処理は、後述するように熱処理デバイスによって供給される。この場合も、そのさらなる構成要素または部分と接合した後、その接合された構成要素および/または部分に低温の滅菌洗浄液を提供することによって、冷却を容易にすることができ、これは手術室で容易に利用可能である。
【0046】
本発明は、モジュール式整形外科用プロテーゼの2つ以上の構成要素を、そのオス構成要素およびメス構成要素を固定することによって、ともに堅固に接合する組立てデバイスおよび方法に特に適合され、特にモジュール式整形外科用プロテーゼは、人間の患者の体内の肩関節、肘関節、膝関節、特に股関節の交換用に使用される。そのようなプロテーゼの非限定的な例には、次のものが含まれる。
【0047】
1)外科的に移植可能な股関節プロテーゼ。大腿骨インプラントがステムまたはシャフトを含み、その一部が大腿骨内に埋め込まれており、そこからボール(または同様に構成された3次元の幾何形状面)が延びる。股関節プロテーゼはまた、大腿骨インプラントのステムまたはシャフトから延びるボール(または他の3次元の幾何形状の本体。ボールの一部に対応する凹面を含むこともできる)の一部に接触する骨盤内に移植可能な相補形の寛骨臼カップを含む。寛骨臼カップは、空洞またはソケットを備える。ボールと寛骨臼カップとの間には、互いに接触したときに境界面が画定される。大腿骨ボールは、本発明の装置および方法を使用して、オス部分を介してメス部分(孔および/または空洞)内へ取り付けることができる。そのような移植可能な股関節プロテーゼでは、メス部分を含む移植可能な大腿骨ステムと、延びているオス部分を有する大腿骨ボールとが提供されることが一般的であり、まず本発明の装置を使用して大腿骨ボールが処理され、これを患者の大腿骨内に移植されていた大腿骨ステムに取り付けることができる。そのような股関節プロテーゼの非限定的な例は、たとえば米国特許第5462563号、米国特許第8323346号、および米国特許第9005306号から、当技術分野には知られている。
【0048】
2)「逆カップ」タイプと呼ばれることもある改善されたタイプの移植可能な股関節プロテーゼ。そのようなタイプでは、大腿骨インプラントがステムまたはシャフトを含み、その一部が大腿骨内に埋め込まれており、そこから大腿骨カップが延びる。大腿骨カップは、空洞またはソケットを備える。股関節プロテーゼはまた、骨盤内に移植可能な相補形の寛骨臼カップを含み、寛骨臼カップは、その中に少なくとも部分的に存在するボール(または同様に構成された3次元の幾何形状面)を含む。大腿骨カップの空洞またはソケットと寛骨臼カップのボールとの間には、互いに接触したときに境界面が画定される。非限定的な例はまた、たとえば米国特許第8313531号、米国特許第8845743号、米国特許第8992627号、米国特許第9119724号から、当技術分野には知られている。
【0049】
さらなる態様では、本明細書に記載するそのような改善された整形外科用プロテーゼを組み立てる装置および装置の使用方法が提供される。
【0050】
本発明によれば、そのモジュール式構成要素または部分の熱膨張は、人間の患者の位置内またはその付近で生じる。これを容易にするために、加熱器要素と、人間の患者の位置内またはその付近で人間の組織から加熱器要素を遮蔽する耐熱部分または領域とを含む固定デバイスが提供される。さらに、固定デバイスは、保持しながら、同時に熱を整形外科用プロテーゼの一部またはモジュール式構成要素に提供するのに有用であり、加熱された部分またはモジュール式構成要素を人間の患者の体内に配置するのを助けることができる。例示的な固定デバイスについて、図面を参照して開示および説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】モジュール式構成要素を内部で保持または取外し可能に保持し、保持されたモジュール式構成要素の衝撃を容易にするために使用することができる固定デバイスの横断面図である。
図2図1の固定デバイスの斜視図である。
図3】固定デバイスのさらなる実施形態の横断面図である。
図4】固定デバイスの別の実施形態の横断面図である。
図5】固定デバイスのさらなる実施形態の横断面図である。
図6】固定デバイスのさらなる実施形態の図である。
図7】モジュール式構成要素、すなわちボール内に存在する先細りした空洞を直接加熱する際のその使用を示す、好ましい実施形態による熱処理デバイスの横断面図である。
図8】実質上図3に示すとおりであるが延長部分をさらに含み、モジュール式構成要素、すなわち整形外科用先細り構成要素内に存在する先細りした空洞を加熱する際のその使用を示す、好ましい実施形態による熱処理デバイスの横断面図である。
図9】モジュール式構成要素、すなわちボール内の先細りした空洞の直接加熱を示す、固定デバイスのさらなる実施形態と手持ち式の熱処理デバイスとの両方の部分横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の様々な他の目標、特徴、および付随する利点は、添付の図面とともに考慮してよりよく理解されたとき、完全に評価されよう。添付の図面では、いくつかの図全体にわたって、同様の参照文字が同じまたは類似の部分を指す。
【0053】
いくつかの図全体にわたって類似の参照文字が類似の要素を示す図面を次に説明により参照すると、添付の図は、本発明の特定の好ましい実施形態を示す。
【0054】
図1および図2で、好ましい固定デバイスAが示されており、固定デバイスAはインパクタ・ハンドル1を備え、インパクタ・ハンドル1は、その遠位部分1aで円筒形の耐熱インパクタ本体2に取り付けられている。インパクタ・ハンドルは、近位端1bと、遠位端1aへ延びる中間シャフト1cとを有し、遠位端1aは、ねじ付き端部1eを含み、ハンドル1は、ねじ付き端部1eを介し、1組の嵌合ねじ山28を介してインパクタ本体2に固定される。図示しないが、インパクタ・ハンドル1は、任意の他の好適な構成または手段によって、すなわちねじ付き端部1eの代わりに好適にサイズ設定されたソケット内へ嵌合可能である摩擦嵌合式遠位部分1aによって、インパクタ本体2に取り付けることができ、または他の構成を使用することもできる。
【0055】
インパクタ本体2は、ねじ付き端部1eからさらに遠位へ延び、保護用の円形の熱スカート6を形成し、熱スカート6は基部6aまで延びて終端する。基部6aとねじ山28との間のインパクタ本体2は、空洞31を内部で画定し、空洞31は、前述したように熱処理にかけられたそのモジュール式構成要素または部分を取外し可能に保持するように構成される。
【0056】
図示の実施形態では、特定の実施形態は金属の関節ボール4をモジュール式構成要素として収容するように設計されるため、空洞31は略半球の形状である。同様にそのような金属の関節ボール4を収容するため、基部6aは略円形の構成である。また図1および図2の両方から見ることができるように、金属の関節ボール4は、先細りした空洞5をメス部分として備え、先細りした空洞5は、対応するオス部分、すなわちモールス・テーパ(図示せず)を受け取るように構成される。
【0057】
インパクタ本体2およびその延ばしたスカート6は、変形または溶解することなく、少なくとも、しかし好ましくは275℃を超える温度に耐えるのに効果的な耐熱材料から製作される。そのような材料の非限定的な例には、樹脂、複合物、セラミック、ポリマー、ガラス繊維、またはこれらの組合せを含むことができる。異なる材料(すなわち、ファイバ、粗糸、ワイア、粒子)で補強することができる耐衝撃性材料が好ましく、それによりインパクタ・ハンドル1の近位端1bに打撃力を加えることが可能になり、この打撃力は、ハンマもしくは他の手動で動作可能な打撃機具、または駆動式(すなわち、電気、油圧、および/もしくは空圧)源(すなわち、電気駆動式の衝撃ハンマもしくは類似のツール)などによって供給することができる。
【0058】
図示の実施形態では、加熱後にボール4をインパクタ空洞31内に固定された状態で維持するために、爪先端29を有するレバー3も提供される。レバー3は、スカート6の一部に位置し、爪先端29はスカート6を通って延びる開口7を通って延び、したがって爪先端29はボール4の一部に接触する。レバー3は、ピン30の周りで旋回可能であり、ピン30とレバー3の近位端3aとの中間には、円筒形の空洞9内にばね8が位置する。ばね8は、レバー3の一部に逆らって外方へ延びるように付勢された膨張ばねであり、それによって爪先端29を内方へボール4に押し付ける。
【0059】
図1および図2には示されていないが、有利には、1つまたは複数のさらなる類似のレバー3および対応する開口7、ピン30、空洞9内のばね8を設けて、ボール4の追加の支持および保持を提供することができる追加のレバーを提供することができることが、当業者には容易に理解されよう。そのような実施形態が図3に示されており、図3は、さらなる固定デバイスAを横断面図に示し、さらなる固定デバイスAはインパクタ・ハンドル1を有し、インパクタ・ハンドル1は、その遠位部分1aで円筒形の耐熱インパクタ本体2に取り付けられ、遠位部分1aは先細りしており、インパクタ本体2内に存在する対応する先細りした空洞2aと干渉嵌合を形成する。
【0060】
それにより、インパクタ・ハンドル1とインパクタ本体2との間のいかなる回転も必要とすることなく、インパクタ・ハンドル1をインパクタ本体2から分離することが可能になる。この図では、板ばね8aが示されており、板ばね8aは図1のばね8と同様に機能するが、板ばね8aはインパクタ本体2の外側壁2aに対して付勢されていることが異なる。図示のように、2つのそのようなレバー3が直径方向に正反対に位置決めされたとき、レバー3の2つの端部3aをともに、たとえばばね8aに対して押し付けることによって、ボール4を解放することが容易になる。複数のレバー3を設けることで、空洞31内でボール4(または他の構成要素)の改善された保持を提供することができる。
【0061】
やはり図1および図2には示されていないが、レバー3を省略することができ、その代わりにコレットを設けることができ、コレットが第1の位置にあるとき、コレットの要素は、ボール4の1つまたは複数の部分を把持するように延ばされているはずであり、第2の位置で、コレットの要素は、ボール4を解放するように後退させられているはずであることが、当業者には容易に理解されよう。
【0062】
そのような実施形態は、さらなる固定デバイスAを示す図4の横断面図に示されている。見られるように、ハンドルの遠位端1a(示されている部分のみ)は、1組の中間嵌合ねじ山28を介して、円筒形の耐熱インパクタ本体2の一部に結合される。ここで、延びたスカート6は省略され、旋回板40に部分的に置き換えられており、各旋回板40は、下端40aおよび上端40bを有し、旋回板40をインパクタ本体2に対して定位置で保持する環状リング41の周りで旋回可能である。
【0063】
コレット・リング50が、インパクタ本体2の円周に及び、内側嵌合ねじ山50aを有し、内側嵌合ねじ山50aはインパクタ本体2上に位置する表面ねじ山2cに相応に係合し、したがってコレット・リング50が回転させられると、コレット・リング50の傾斜部分50cが上端40bに向かう方または上端40bから離れる方へ動き、それに対応して下端40aが空洞31内に存在するボール4に向かう方またはボール4から離れる方へ旋回する。そのような回転によってコレット・リング50を選択的に配置することで、制御可能な程度の把持圧力をボール4の部分にかけることが可能になり、これは特定の状況で望ましい。図4に示すそのような組立体の使用は、好都合な説明のために示されているボール4以外の他の熱処理された構成要素に適合させることもできることを理解されたい。
【0064】
やはり図1および図2には示されていないが、レバー3を省略することができ、その代わりに空洞31の一部を、空洞31内にボール4(または他の熱処理された構成要素)を取外し可能に保持するように構成および/または寸法設定された弾性の圧縮性材料で覆うことができるが、ボール4をさらなる熱処理されていない構成要素に結合した後、インパクタ本体2を引き抜き、ボール4(または他の熱処理された構成要素)が空洞31内から解放されるのに十分な弾性の圧縮性材料の変形を引き起こすことができることが、当業者には容易に理解されよう。
【0065】
非限定的な例として、そのような弾性の圧縮性材料のリングまたは円環体を、空洞31内で基部6aに隣接または一致して嵌合させることができる。そのような固定デバイスAの一実施形態が、図5の横断面図に示されている。この実施形態では、ハンドル1(示されている部分のみ)は、インパクタ本体を貫通するインパクタ本体孔2dによって取り囲まれ、それによりインパクタ本体2をシャフト1cに沿って摺動可能に変位させることが可能になり、それによって、先細りした(または他の形状の)遠位端1aを先細りした空洞5内へ係合させることが容易になり、先細りした空洞5は、熱処理された構成要素の対応するオス部分(すなわち、モールス・テーパ)を受け取るように構成され、熱処理された構成要素はここでは、骨、たとえば人体の大腿骨、脛骨、または他の骨への移植のために使用することができるステム4aとして示されている。
【0066】
インパクタ本体2の空洞31は、少なくとも部分的に圧縮可能および/または弾性的に変形可能とすることができる変形可能な弾性材料の内部ライニング60を含み、そのような状態で、インパクタ本体2内での熱処理された構成要素の保持を容易にすることができる。図示の実施形態の範囲内では任意選択である(が好ましい実施形態では含まれる)ことが理解されるが、遠位端1aは、少なくとも部分的に圧縮可能および/または弾性的に変形可能とすることができる変形可能な弾性材料の表面ライニング61をその表面に含み、そのような状態で、その空洞5内での熱処理された構成要素の保持を容易にすることができる。内部ライニング60および表面ライニング61は、同じまたは異なる変形可能な弾性材料とすることができる。
【0067】
図5の実施形態では、ステム4aの非球形の形状が、少なくとも変形可能な弾性材料の内部ライニング60および空洞5(メス部分)内に係合されたハンドル1によって、固定デバイスAに確実に保持される。インパクタ本体孔2dは、外科的処置中、すなわちステム4aの最初の挿入中に、インパクタ本体2およびスカート6を選択的に配置することを可能にし、これは患者の体内の近くの組織からステム4aの熱処理された部分を遮蔽するための位置でスカート6を維持するのに有利であるが、所望される場合または必要とされる場合は、スカート6を持ち上げてステム4aを妨げられずに観察することを可能にすることができ、観察後はスカート6を以前の位置へ戻すことができる。
【0068】
図1および図2には示されていないが、以下の説明から当業者には容易に理解されるさらに別の構成では、空洞31の開口6b(図2)の寸法は、ボール4(または他の熱処理された構成要素)の最も大きいまたは最も広い寸法よりわずかに小さく、したがってボール4(または他の熱処理された構成要素)は空洞内に保持される。しかしインパクタ本体2は、スカート6を通って延びる少なくとも1つの可動部分を有し、したがってインパクタ本体2は、開口6bの寸法を増大させて、ボール4(または他の熱処理された構成要素)を空洞内から解放することを可能にするように構成することができる。
【0069】
たとえば、インパクタ本体2は、2つ以上の構成要素部分から形成することができ、これらの構成要素部分は、組み立てられたときはボール4(または他の熱処理された構成要素)を保持するが、ボール4(または他の熱処理された構成要素)がその熱処理されていない構成要素または部分に接合された後、部分的に分解されたときは、開口31を通ってボール4(または他の熱処理された構成要素)の解放を可能にする。
【0070】
簡単な実施形態では、図6の部分的に破線の部分横断面図に示すように、インパクタ本体は2つの半体から形成され、これらの半体は「開」位置と「閉」位置との間で動かすことができる。そこに見ることができるように、インパクタ本体2は、2つの半体2’、2”から形成され、2つの半体2’、2”は、図示のように閉位置にあるとき、熱処理された構成要素をその少なくとも熱処理された部分、ここではステム4aの一部で捕捉し、ステム4aの一部は、相補形の少なくとも部分的に圧縮可能および/または弾性的に変形可能な材料によって把持され、そのような状態で、インパクタ本体2が閉位置にあるときに空洞31をともに画定する相補形の空洞部分31’、31”内での熱処理された構成要素の保持を容易にすることができる。
【0071】
圧縮性材料60から形成された相補形の空洞部分31’、31”は、少なくともステム4aの熱処理された部分を把持するように動作する。そのような位置で、インパクタ本体2を使用して、構成要素、ここではステム4aを人体内に配置することができ、その後、2つの半体2’、2”をピン30の周りなどでヒンジ式に開いて、ステム4aをインパクタ本体2内から解放することができる。
【0072】
図6の実施形態を参照すると、圧縮性材料60は、良好な熱特性を呈するが圧縮性がほとんどない材料とすることができる。別法として、圧縮性材料60は、構成要素部分が相補形の空洞部分31’、31”内に把持されたまま、ハンドル1を介して伝達されて作用されまたは他の形でインパクタ本体2に伝えられる衝撃力を構成要素部分へ伝達することができるのに十分な程度の耐衝撃性を有することができる剛性の熱絶縁性材料に置き換えることができる。
【0073】
別の態様では、本発明は熱処理デバイスBを提供し、その実施形態が図7および図8に示されている。熱処理デバイスは、その構成要素または部分に熱膨張を与える。図7を参照すると、熱処理は、関節ボール・インプラント4の空洞5内で提供されている。電磁ユニット(全体として「E」と識別する)によって、電気誘導加熱が提供され、これは、いかなる液体または気体の熱伝達媒体も必要としない「乾熱」である。電磁ユニットEは、筐体27に入っている。鉄心19に巻き付けられた1次電磁コイル17が、2次コイル18内に強い電流を生成し、この電流は、低抵抗および/または大型の電気導管15によって運ばれ、電気導管15は、加熱要素16に電気的に接続されている。
【0074】
前記加熱要素16は、加熱コア14内に位置し、加熱コア14はここでは、オス・テーパの構成を有する。低抵抗および/または大型の電気導管15は、加熱コア14およびボール4を1次電磁コイル17から絶縁する熱ベース11を通過する。加熱コア14は、熱透過性(または伝導性)の材料から形成されるが、この材料は、必ずしもそれ自体が熱伝導性を有する必要はなく、加熱要素16から加熱コア14の外面14aへ熱を伝達するのに効果的であれば十分である。加熱コア14は、関節ボール・インプラント4の先細りした空洞5内に摺動式に挿入可能になるように構成される。しかし好ましくは、2つの構成要素間の結合を避けるために、加熱コア14の寸法は先細りした空洞5の寸法に対してわずかに小さい。
【0075】
図示の熱処理デバイスBは、可変閉回路サーモスタット12をさらに備え、可変閉回路サーモスタット12は、必要とされる温度に到達するために必要とされる持続時間を制御することによって温度を制御するように動作し、かつ/または加熱コア14の最大動作温度を制限することもできる。容易に認識されるように、異なる構成および質量を有する異なるモジュール式構成要素に対して、異なる加熱パラメータが必要とされ、したがって制御回路20および/または可変閉回路サーモスタット12を使用して、特定のモジュール式構成要素に適した所望の加熱パラメータを確立することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では任意選択とすることができるが、やはり図示されているように、加熱プロセスが所望の温度に到達したことを操作者に警報し、関節ボール4(または他のモジュール式構成要素)が所望の量の熱膨張に到達し、デバイスBから取り外す準備ができたことを示すために、点灯して可聴信号(たとえば、「ビープ」)を放出するライト22などの視聴覚支援が示されている。そのような条件の状態に到達したとき、制御回路20はまた、1次コイルへの電流を自動的に止めるようにプログラムすることができ、またはデバイスの操作者が、単にスイッチ24の位置を「オフ」位置へ変化させて、1次コイルへの電流を止めることができる。
【0077】
使用の際、関節ボール4が加熱コア14上へ挿入された後、望ましくない熱損失を避け、関節ボール4へ十分な熱を提供するために必要とされる時間がそれに伴って延びるのを避けるために、加熱チャンバ10は蓋9で覆われる。電磁ユニットEの動作は、電源を介してユニットに給電することによって開始され、たとえば、従来のプラグ20aを介して供給される壁電流(たとえば、110~130vACまたは220~230vAC)によって、電磁ユニットEに給電することができる。加熱は、スイッチ24を動作位置へ動かして制御ユニット20を起動することによって開始され、制御ユニット20はその後、1次電磁コイル17を起動する。それによって、2次コイル18を通って加熱コア14へ電流が流れ、加熱コア14は、好適な温度に到達して、ボール4の空洞5内に所望の量の熱膨張を引き起こす。有利には、加熱コアは、約200°F~500°F(93℃~260℃)、好ましくは約250°F~400°F(120℃~205℃)の温度に到達するように動作する。
【0078】
ボール4(またはその他のモジュール式構成要素または部分)の加熱は、熱処理デバイスB内に真空を確立することによって強化することができ、これはたとえば、熱処理デバイスBのチャンバ10の内部へ延びるチューブ32aを有する真空バルブ32を提供することによって実現することができる。真空バルブ32を開き、好適な真空源(図示せず)に接続することができ、したがって電磁ユニットEの励磁中、好ましくは電磁ユニットEの励磁前に、チューブ32aおよび真空バルブ32を介してチャンバ10から外へ空気を抜くことができる。これは、図8に示すように、比較的大きいサイズおよび/または大きい質量のモジュール式構成要素が熱処理デバイスB内で処理されるときに特に有用である。
【0079】
別法として、ボール4(またはその他のモジュール式構成要素または部分)の加熱は、まず熱処理デバイスB内に真空を確立し、その後チャンバ10を不活性ガスまたは希ガスで満たすことによって強化することができ、これはたとえば、熱処理デバイスBのチャンバ10の内部へ延びるチューブ32aを有する真空バルブ32を提供することによって実現することができる。真空バルブ32を開き、好適な真空源(図示せず)に接続することができ、したがってチューブ32aおよび真空バルブ32を介して内部10から外へ空気を抜くことができる。その後、電磁ユニットEの励磁中、好ましくは電磁ユニットEの励磁前に、不活性ガスまたは希ガスがチャンバ10内へ導入される。不活性ガスまたは希ガスの量は、1気圧以下(101000Pa以下)の低い圧力または1気圧を超える(101000Paを超える)高い圧力で提供することができる。これは、図8に示すように、比較的大きいサイズおよび/または大きい質量のモジュール式構成要素が熱処理デバイスB内で処理されるときに特に有用である。
【0080】
鉄心19に巻き付けられた1次電磁コイル17が、2次コイル18内に強い電流を生成し、この電流が低抵抗および/または大型の電気導管15によって運ばれ、電気導管15が加熱要素16に電気的に接続されている、電磁ユニット(図7図8で全体として「E」と識別する)を含む電気誘導加熱装置の代わりに、図7および図8に示すように静止式の構成であるか、それとも図9を参照して後に論じる熱処理デバイスの手持ち式の構成であるかにかかわらず、本発明の熱処理デバイスBの任意の実施形態では、「乾熱」を提供する他の装置およびデバイスを代わりに使用することができることをはっきりと理解されたい。これは、好ましくは、電流源または電源によって給電され、いかなる化学的燃焼手段の使用も必要としない。化学的燃焼手段は、特に危険な火災のリスクをもたらすからである。たとえば、電気抵抗型の加熱器、電気加熱コイル、および/またはサーミスタを代わりに使用することができる。
【0081】
そのような電気抵抗型の加熱器、電気加熱コイル、および/またはサーミスタは、本明細書に概して記載するように、加熱コア14内へ組み込むことができる。また、そのような電気抵抗型の加熱器、電気加熱コイル、および/またはサーミスタへの電流の制御は、サーモスタット12を介して行うことができ、サーモスタット12は、加熱コア14の所望の温度に到達したとき、そのような電気抵抗型の加熱器、電気加熱コイル、および/またはサーミスタへの電流の流れを遮断するように動作する。有利には、そのようなサーモスタット12を使用して電流の流れを制御することで、制御回路20を簡略化することができ、制御回路20は、電源、電気抵抗型の加熱器、電気加熱コイル、および/またはサーミスタが、所望の温度に到達したときに電気抵抗型の加熱器、電気加熱コイル、および/またはサーミスタの動作を遮断するように動作するサーモスタット12に直列接続されたものに縮小することができる。
【0082】
ボール4(またはその他のモジュール式構成要素または部分)が所望の温度に到達し、十分な熱膨張を受けたとき、固定デバイスA(図1~6)などの固定デバイスを利用して、ボール4を熱処理デバイスBから取り外すことができ、固定デバイスを使用して、加熱されたボール4(または他のモジュール式構成要素)をそのさらなるモジュール式構成要素または部分に接合することができ、さらなるモジュール式構成要素または部分は、人体の外に位置することができるが、好ましくは既に人体内に移植されている。ボール4を取り外すために、保護蓋23を持ち上げて取り外し、チャンバ10を露出させる。
【0083】
固定デバイスAは、熱処理されたボール4が空洞31内に十分に挿入されて保持されるように挿入される。これは、レバー3の爪先端29の係合によって行うことができる。熱処理されたボール4はすぐに取り外されて、手術医に対して、開いている手術創傷の側に提供され、その後、外科医は、熱処理されたボール41(またはその他の熱処理されたモジュール式構成要素または部分)を、開いている手術創傷内に既に存在しているそのさらなる熱処理されていないモジュール式構成要素または部分に接合する。
【0084】
接合は、単にモジュール式構成要素の対応するオス部分およびメス部分を、これらの部分の一方が熱膨張した状態でともに挿入し、レバーを解放して固定デバイスAを抜き取ることを必要とするが、任意選択で、多くの場合好ましくは、固定デバイスAがその熱処理されたモジュール式構成要素または部分(ここでは、ボール4)から解放される前に、外科医のハンマまたは駆動式デバイスなどを介した衝撃力を使用して、その熱処理されたモジュール式構成要素または部分を、開いている手術創傷内に既に存在しているその熱処理されていないモジュール式構成要素または部分の上または中へ動かし、これらの要素のより高い圧縮度を提供することができ、その結果、その熱処理されたモジュール式構成要素または部分の冷却およびその熱収縮後、衝撃力がない場合より高い圧縮度が実現される。この配置中、ボール4を越えて延びる耐熱スカート6が、周辺組織が加熱された関節ボール4に接触するのを防ぐ。
【0085】
任意選択であるが好ましくは、上述したように、その熱処理されていないモジュール式構成要素または部分の上または中へのその熱処理されたモジュール式構成要素または部分の接合を完了した後、固定デバイスA、または少なくとも所望される場合はインパクタ・ハンドル1から分離することができるインパクタ本体2は、接合された構成要素に近接している手術創傷内の組織に持続的な熱保護を提供するために定位置で維持される。接合された構成要素間の「焼き嵌め」は、接合された構成要素を冷却させ、その熱処理された構成要素または部分の熱収縮および少なくとも1つの寸法の低減を引き起こすことによって実現される。その後、インパクタおよび/またはインパクタ本体2を取り外すことができ、所望される場合、さらなる洗浄液を使用して、その接合された構成要素および部分のさらなる冷却が継続される。
【0086】
特に熱処理の温度が十分に高いことを考慮すると、熱処理された構成要素または部分ならびにチャンバ10は、細菌およびウイルスなどのあらゆる生体物質および病原体から滅菌される。
【0087】
図8は、本発明の代替実施形態および図3の熱処理デバイスBの代替構成を示す。図8で、関節ボール4の代わりに、モジュール式構成要素は、修正近位大腿骨インプラントであり、このインプラントは、先細りした空洞(モールス・テーパ空洞)を含む。より大きいサイズの修正近位大腿骨インプラントを収容するために、加熱チャンバ10は、延長部26を使用することによって拡大されている。したがって、修正近位大腿骨インプラント(略球形ではない)の質量がより大きく、構成が異なることを考慮すると、熱処理デバイスBは、修正近位大腿骨インプラントの先細りした空洞の所望の程度の熱膨張を実現するために、必然的に異なるプロトコル(すなわち、異なる熱設定および/または加熱時間)に従って動作することが予測される。
【0088】
図9は、固定デバイスAのさらなる実施形態と手持ち式の熱処理デバイスBとの両方の部分横断面図であり、モジュール式構成要素、すなわち関節ボール・インプラント4内の先細りした空洞5の直接加熱を示す。しかし、手持ち式の熱処理デバイスBを利用して、異なるモジュール式構成要素も同様に熱処理することができることを理解されたい。図9に示す手持ち式の熱処理デバイスBは、図7図8に示す熱処理デバイスに比べていくつかの利点を提供する。1つのそのような利点は、手持ち式の熱処理デバイスBによって提供される携帯性であり、なぜなら手持ち式の熱処理デバイスBは、開いている手術創傷のすぐ近くまで動かすことができ、満足のいく程度の熱膨張を提供するためにモジュール式構成要素に最初の熱処理を提供することを考えただけでなく、モジュール式構成要素の配置が追加の時間を必要とする場合、またはさらなる嵌合モジュール式構成要素に取り付ける前に熱膨張の程度が望ましくなく減少した場合、手持ち式の熱処理デバイスは、モジュール式構成要素の再加熱を可能にするからである。
【0089】
第2に、手持ち式の熱処理デバイスBはまた、固定デバイスA内に既に挿入されて保持されているモジュール式構成要素の熱処理を可能にする。これにより、モジュール式構成要素の所望の程度の熱膨張を実現するために、見過ごされたまたは事前に熱処理されていないモジュール式構成要素をまず固定デバイスA内へ配置し、その後熱処理することが可能になり、これは固定デバイスAの一部で行うことができる。したがって、静止式の熱処理デバイスB(図7図8など)内からの熱処理されたモジュール式構成要素の移送を必要とするステップを省略することができる。
【0090】
しかし、静止式の熱処理デバイスB(図7図8など)の利益を見落とすべきではない。なぜなら特にこれらの図示の実施形態によれば、モジュール式構成要素の処理は、閉じた空洞内で行われ、この空洞はまた、特有のガスで満たすことができ、かつ/または低圧にかけることができるからである。これにより、手持ち式の熱処理デバイスBの使用によって普通なら実現される場合より速い加熱を提供することができる。
【0091】
図9に示すように、固定デバイスAでは、インパクタ・ハンドル1(部分的に示す)が1組の嵌合ねじ山28によって、中に入っているインパクタ本体2に取り付けられている。この実施形態では、インパクタ本体2は外部筐体70内に存在し、外部筐体70内でインパクタ本体2および熱スカート6が嵌合される。インパクタ本体2および熱スカート6は、他の実施形態を参照して前述したように、変形または溶解することなく、少なくとも、しかし好ましくは275℃を超える温度に耐えるのに効果的な耐熱材料から形成される。また好ましくは、筐体70の構造の材料は、任意の耐熱材料から形成され、金属、樹脂、複合物、セラミック、ポリマー、ガラス繊維、またはこれらの組合せが考慮され、任意選択であるが場合により好ましくは、繊維、粗糸、ワイア、粒子などの補強材料を含むことができる。しかし、インパクタ本体2および熱スカート6の熱絶縁特性は、筐体70の構造の材料も等しくまたはそれ以上に耐熱性であることを必要としないことに留意されたい。
【0092】
この実施形態では、固定デバイスAは、1つまたは複数の内側ばね8bを含み、内側ばね8bは、内側空洞31内に位置決めされ、中心線の方へ、または空洞31内に存在するときのモジュール式構成要素の位置の方へ付勢される。好ましくは、図9に示すように2つ以上の内側ばね8bが存在し、図9は、内側ばね8bが空洞31内で互いから離れて直径方向に配置されることを示し、したがって内側ばね8bはそれぞれ、モジュール式構成要素の反対の表面に接触することができ、それらのばね力により、空洞31およびインパクタ本体2内にモジュール式構成要素を保持する。
【0093】
任意選択であるが好ましくは、対応するチャネル6cも存在し、1つのチャネル6cが対応する内側ばね8bの下に存在する。これらの対応するチャネル6cは、インパクタ本体2の一部の中へ凹んで空間を提供し、空洞31内へのモジュール式構成要素の挿入および空洞31内からの取外しを可能にするのに十分なほど、この空間内にばね8bを後退させることができる。有利には、図示のように、内側ばね8bのプロファイルは、モジュール式構成要素の表面の対応する部分に近似し、したがってその部分と良好に境界接触する部分、好ましくは輪郭部分を含み、したがってモジュール式構成要素の改善された保持を提供するようになっている。当然ながら、2つの内側ばね8bが示されているが、所望される場合または必要とされる場合、1、2、3、または任意の他の数も同様に提供することができることも理解されたい。
【0094】
図示の固定デバイスAの特徴は、区別なく使用することができ、ならびに単一の固定デバイスA内で組み合わせることができることを理解されたい。したがって、固定デバイスAの図示の実施形態は、例示的であるが非限定的な例として提供される。
【0095】
図9はまた、モジュール式構成要素内の先細りした空洞5の直接加熱を提供するのに有用な手持ち式の熱処理デバイスBを示す。そのような手持ち式の熱処理デバイスBはバレル14bを含み、バレル14bはその端部に、関節ボール・インプラント4の空洞5内に挿入可能な加熱コア14を有する。バレル14bはハウジング14cへ延び、ハウジング14cは、外科医または他の人物によって保持されるように適合された把持部14dを有する。把持部14dからスイッチ24が延び、デバイスの操作者は、単に「オン」位置と「オフ」位置との間でスイッチの位置を変化させて、手持ち式の熱処理デバイスBを作動させ、加熱コア14を励磁し、モジュール式構成要素の空洞5に熱処理を提供することができる。
【0096】
図7図8のデバイスと同様に、加熱コア14は、モジュール式構成要素、すなわちボール4の一部に間接的に物理的に接触することができ、またはそこからわずかな空気間隙だけ分離することができる。手持ち式の熱処理デバイスBは、加熱プロセスが所望の温度に到達したことを操作者に警報し、関節ボール4(または他のモジュール式構成要素)が所望の量の熱膨張に到達し、加熱コア14を空洞5から取り外す準備ができたことを示すために、点灯して可聴信号(たとえば、「ビープ」)を放出することができるライト22などの1つまたは複数の視聴覚支援を含むことができる。そのような条件の状態に到達したとき、バレル14b内の可変閉回路サーモスタット12が加熱コア14のすぐ近くに位置するという条件に応答して、サーモスタット12は、必要とされる温度に到達するために必要とされる持続時間を制御することによって温度を制御するように動作し、かつ/または加熱コア14の最大動作温度を制限することもできる。
【0097】
さらに、制御回路(図示しないが、ハウジング14cおよび/または電源/制御ユニット20b内へ組み込むことができる)はまた、加熱コア14への電力を自動的に止めるようにプログラムすることができ、またはデバイスの操作者が、単にスイッチ24を解放してスイッチ24を「オフ」位置へ動かし、したがって加熱コア14の加熱を終了することができる。
【0098】
図9には示されていないが、それにもかかわらず、制御回路20の要素は、ハウジング14cおよび/またはハウジング14cが電気的に接続された電源/制御ユニット20b内に存在することができることを理解されたい。やはり図9には示されていないが、それにもかかわらず、すべての動作要素をハウジング14c内へ組み込むことができ、その場合、電気ケーブルは、好適な電源に接続することができるプラグ20a内で終端することができることを理解されたい。
【0099】
本発明の使用および動作の様態についてのさらなる議論に関しては、上記の説明から同じ内容が明らかになるはずである。そのとき上記の説明に対して、サイズ、材料、形状、形態、動作の機能および様態、組立て、ならびに使用の変動を含む本発明の部分に対する最適の寸法関係は、当業者には容易に明らかかつ明白であり、図面に示し本明細書に記載するものに対するあらゆる均等関係が、本発明によって包含されることが意図されることを理解されたい。したがって、上記は、本発明の原理の例示のみを目的とすると見なされる。
【0100】
さらに、多数の修正形態および変形形態が当業者には容易に想到されるため、図示および記載される厳密な構造および動作に本発明を限定することが意図されるものではなく、したがってすべての好適な修正形態および均等物は、本発明の範囲内に入るように再分類することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9