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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092990
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】弁装置とこれを用いた減圧弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/00 20060101AFI20220616BHJP
   F16K 17/30 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
F16K1/00 R
F16K17/30 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206028
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】北邑 有希雄
【テーマコード(参考)】
3H052
3H060
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA03
3H052BA31
3H052BA35
3H052CC01
3H052CD09
3H052EA05
3H060AA02
3H060BB10
3H060CC35
3H060CC40
3H060DC05
3H060DD05
3H060DD17
3H060DF08
3H060HH08
(57)【要約】
【課題】装置を分解することなく、バルブのメンテナンスを行うことができる弁装置とこれを用いた減圧弁を提供する。
【解決手段】弁装置34は、流体Sの流入路62と流出路68との間を開閉する弁体32と、弁体32をばね力によって弁シート40に着座させる第1のばね体44と、弁体32を開弁方向に押圧して弁シート40から離間させるシャフト部材42と、使用中の弁体32を排出するとともに新しい弁体32Aを設置するバルブ交換機構80とを備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入路と流出路との間を開閉する弁体と、
前記弁体をばね力によって弁シートに着座させる第1のばね体と、
前記弁体を開弁方向に押圧して前記弁シートから離間させるシャフト部材と、
使用中の弁体を排出するとともに、新しい弁体を設置するバルブ交換機構とを備えた弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置において、前記バルブ交換機構が、内部に前記弁体を収納し前記シャフト部材の軸方向にスライド自在な筒状のスライド部材を備え、
前記スライド部材の外周壁に、使用中の前記弁体を排出する排出孔と、新しい前記弁体を投入する投入孔とが形成されている弁装置。
【請求項3】
請求項2に記載の弁装置において、前記排出孔と前記投入孔が、前記スライド部材の軸心を挟んで反対側に形成されている弁装置。
【請求項4】
請求項3に記載の弁装置において、前記排出孔が前記スライド部材の下面に開口し、前記投入孔が前記スライド部材の上面に開口している弁装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載の弁装置において、前記スライド部材が、前記第1のばね体に係止してスライド動作により前記弁体に対するばね力の付加および遮断を行う係止部を有している弁装置。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか一項に記載の弁装置において、前記バルブ交換機構が、前記スライド部材を前記軸方向に移動させるスライド機構と、前記スライド機構を操作する操作部とを有している弁装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の弁装置において、前記バルブ交換機構が、交換用の複数の弁体を収納する予備弁体収納部を有している弁装置。
【請求項8】
流体の主通路に配置されて一次側の圧力を二次側の圧力に減圧する減圧弁であって、
前記主通路を開閉する主弁体と、
前記主弁体を開閉させるパイロット弁ユニットと、を備え、
前記パイロット弁ユニットが、請求項1から7のいずれか一項に記載の弁装置と、
前記弁装置の前記シャフト部材を開弁方向に押圧して前記弁体を前記弁シートから離間させる第1の弁駆動部とを有し、
前記第1の弁駆動部は、前進して前記シャフト部材を開弁方向に押圧する第2のばね体と、前記二次側の圧力を受けて前記第2のばね体を、そのばね力に抗して閉弁方向に後退させる閉弁力付加部材とを有し、
さらに、前記流出路の圧力を受けて前記主弁体を開弁させる第2の弁駆動部が設けられ、
前記弁装置の前記流入路が前記主通路の一次側に連通している減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の通路に設けられて通路の開閉により通路の圧力を調節する弁装置とこれを用いた減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の通路には、通路内の圧力を調節するために種々の弁装置が配置される(例えば、特許文献1)。特許文献1のような直動型の減圧弁では1つのメインバルブで開閉が行われており、パイロット作動型の減圧弁では1つのメインバルブと1つのパイロットバルブで開閉が行われている。そのため、定期的に分解してバルブの交換、清掃等のメンテナンスを行う必要がある。定期的にメンテナンスを行わないと、バルブにスケールが堆積して蒸気漏れが発生する恐れがあり、2次側の圧力調整ができなくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-029872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、メンテナンスには装置を分解する必要があるから、装置を停止することになる。そのため、機会損失につながり、好ましくない。
【0005】
本発明は、装置を分解することなく、バルブのメンテナンスを行うことができる弁装置とこれを用いた減圧弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の弁装置は、流体の流入路と流出路との間を開閉する弁体と、前記弁体をばね力によって弁シートに着座させる第1のばね体と、前記弁体を開弁方向に押圧して前記弁シートから離間させるシャフト部材と、使用中の弁体を排出するとともに、新しい弁体を設置するバルブ交換機構とを備えている。
【0007】
この構成によれば、バルブ交換機構により、使用中の弁体を排出するとともに、新しい弁体を設置することができる。これにより、装置を分解することなく、弁体の交換、清掃等のメンテナンスを行うことができる。
【0008】
本発明において、前記バルブ交換機構が、内部に前記弁体を収納し前記シャフト部材の軸方向にスライド自在な筒状のスライド部材を備え、前記スライド部材の外周壁に、使用中の前記弁体を排出する排出孔と、新しい前記弁体を投入する投入孔とが形成されていてもよい。この構成によれば、スライド部材を軸方向にスライドさせることで、使用中の弁体を排出孔から排出するとともに、新しい弁体を投入孔から投入することができる。
【0009】
前記バルブ交換機構が前記スライド部材を有する場合、前記排出孔と前記投入孔が、前記スライド部材の軸心を挟んで反対側に形成されていてもよい。この場合、前記排出孔が前記スライド部材の下面に開口し、前記投入孔が前記スライド部材の上面に開口していてもよい。この構成によれば、使用中の弁体の排出および新しい弁体の投入がスムーズに行われる。
【0010】
前記バルブ交換機構が前記スライド部材を有する場合、前記スライド部材が、前記第1のばね体に係止してスライド動作により前記弁体に対するばね力の付加および遮断を行う係止部を有していてもよい。この構成によれば、係止部により第1のばね体の付勢力を受けることができるので、使用中の弁体の排出および新しい弁体の投入がスムーズに行われる。
【0011】
前記バルブ交換機構が前記スライド部材を有する場合、前記バルブ交換機構が、前記スライド部材を前記軸方向に移動させるスライド機構と、前記スライド機構を操作する操作部とを有していてもよい。この構成によれば、ユーザが操作部を操作することで、スライド機構を介してスライド部材を容易に移動させることができる。したがって、弁体の交換が容易である。
【0012】
本発明において、前記バルブ交換機構が、交換用の複数の弁体を収納する予備弁体収納部を有していてもよい。この構成によれば、交換用の複数の弁体が予備弁体収納部にストックできるので、メンテナンスを行う度に弁体を用意する必要がなく、作業性がよい。
【0013】
本発明の減圧弁は、流体の主通路に配置されて一次側の圧力を二次側の圧力に減圧する減圧弁であって、前記主通路を開閉する主弁体と、前記主弁体を開閉させるパイロット弁ユニットとを備えている。前記パイロット弁ユニットが、本発明の弁装置と、前記弁装置の前記シャフト部材を開弁方向に押圧して前記弁体を前記弁シートから離間させる第1の弁駆動部とを有している。前記第1の弁駆動部は、前進して前記シャフト部材を開弁方向に押圧する第2のばね体と、前記二次側の圧力を受けて前記第2のばね体を、そのばね力に抗して閉弁方向に後退させる閉弁力付加部材とを有している。さらに、前記流出路の圧力を受けて前記主弁体を開弁させる第2の弁駆動部が設けられ、前記弁装置の前記流入路が前記主通路の一次側に連通している。
【0014】
この構成によれば、バルブ交換機構により、使用中の弁体を排出するとともに、新しい弁体を設置することができるから、装置を分解することなく、弁体のメンテナンスを行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の弁装置および減圧弁によれば、装置を分解することなく、弁体のメンテナンスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の対象である減圧弁の基本構成を示す縦断面図である。
図2】同減圧弁の減圧前の状態を模式的に示す縦断面図である。
図3】同減圧弁の圧力調整状態を模式的に示す縦断面図である。
図4】同減圧弁の減圧保持状態を模式的に示す縦断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る弁装置の要部を示す縦断面図である。
図6】同弁装置における弁体を排出した状態を示す縦断面図である。
図7】同弁装置における弁体を投入した状態を示す縦断面図である。
図8】同弁装置を後方から見た背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を説明するのに先立って、蒸気通路に用いる減圧弁について説明する。様々な産業において、コスト、利便性、安全性の観点から、蒸気は、熱媒体として用いられている。その最大のメリットとして、単位重量当たりの潜熱量が大きいこと、圧力をコントロールすれば温度も一定に保持できることがあげられる。
【0018】
蒸気を使用する場合、必要な圧力ごとに蒸気を発生させるのではなく、ボイラーで高圧の蒸気を発生させておいて、その蒸気を生産物や用途に応じて必要な圧力に下げて使用する。その場合、蒸気の圧力をほぼ一定に保つ自動弁が減圧弁である。圧力を下げる目的は、蒸気温度を下げて所望の加熱温度に保つためである。
【0019】
減圧の基本原理は、絞り現象と呼ばれるもので、蒸気が管内を流れるとき、蒸気が流れる通路を絞ると、絞られた箇所よりも下流側の蒸気圧力が低くなる。これが蒸気の減圧である。単に絞るだけであれば、バルブを中間開度に固定したり、オリフィスプレートを設けたりする方法があるが、この方法では、流量が変化した際に圧力も変わるという問題がある。そこで、流量や、一次側の圧力(絞り箇所の上流側の圧力)が変わっても、二次側の圧力(絞り箇所の下流側の圧力)が変動しないように、弁を通過する流体のエネルギーを直接利用して自動的に弁開度が変化するように設定されたバルブが減圧弁である。
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の対象である弁装置を用いた減圧弁の一種であるパイロット作動式の減圧弁の基本構成を示す。図1において、減圧弁は流体の一種である蒸気Sが流れる主通路1に配置されている。減圧弁PRVのケーシング2は、本体ケース4と、上ケース6と下ケース8とを連結してなる。本体ケース4の内部に、一次側通路10と、二次側通路12と、その間にある弁室14とが形成されている。一次側通路10および二次側通路12が、蒸気Sが流れる主通路1の一部を形成する。弁室14には、弁ホルダ16と、その内部を摺動する主弁体18とが配置されている。弁ホルダ16は、その上部が本体ケース4にねじ連結により支持されている。
【0021】
主弁体18は、コイルスプリングからなる主ばね体20により、弁ホルダ16に形成された主弁シート22に接触して閉弁する方向にばね力が付加されている。弁室14の上方には、主弁体18を駆動する主弁駆動部24が配置されている。この主弁駆動部24は、主弁体18に当接するピストン26が、本体ケース4に支持されたシリンダ28に摺動自在に挿入されている。ピストン26の上方が、後述する主弁体駆動室27となっている。ピストン26には主弁体駆動室27の圧力を逃がす逃がし孔29が設けられている。
【0022】
上ケース6の上部に、パイロット弁ユニット30が配置されている。つまり、上ケース6が、パイロット弁ユニット30のケーシングを形成する。このパイロット弁ユニット30は、弁体32を含む弁装置34と、この弁装置34を開閉させるパイロット弁駆動部36とを有する。本実施形態では、弁体32は、ボール形(球体)であるが、これに限定されない。弁装置34は、弁座ブロック37を有し、その先端部(図1の左端部)に弁シート40が形成されている。弁シート40の中央部に、弁体32により開閉される弁口41が開口している。
【0023】
弁座ブロック37に、シャフト部材42が前後方向(図1の左右方向)に貫通して挿入されている。シャフト部材42の先端部42aが弁体32に接触し、後端部42bがパイロット弁駆動部36の後述する先端板38に対向している。弁体32は、コイルスプリングからなる第1のばね体44によって弁シート40に押し付けられている。第1のばね体44は、上ケース6に設けた第1のばね受け48との間に介装されている。
【0024】
パイロット弁駆動部36は、先端(図1の左端)の先端板38が、後方(図1の右方)から前方(図1の左方)へ向かって、コイルスプリングからなる第2のばね体54によって押圧されている。第2のばね体54は、先端板38に接触する先端部材56と、カバー部材50の内側に配置された第2のばね受け58との間に介装されている。カバー部材50は、上ケース6(ケーシング)にねじ連結されている。カバー部材50と先端部材56との間にプッシュロッド60が配置され、このプッシュロッド60は第2のばね体54の内側空間を通っている。
【0025】
パイロット弁駆動部36は、圧力調整手段49を有している。圧力調整手段49は、前記先端板38とベローズ43とを有し、第2のばね体54を閉弁方向(右方向)に後退させる。つまり、圧力調整手段49は、第2のばね体54をそのばね力に抗して閉弁方向に後退させる閉弁力付加部材を構成する。
【0026】
先端板38にベローズ43の先端部43aが接続されており、ベローズ43の基端部43bが、上ケース6とカバー部材50との間で固定支持されている。カバー部材50に、圧力調整用の調整ハンドル52が回動自在にねじ連結されている。
【0027】
弁装置34の前側(左側)には第1のばね体44を収納するパイロット室62が配置されている。このパイロット室62に、一次導通路64を介して一次側通路10が連通している。パイロット室62には、異物除去用のスクリーン66が配置されている。また、弁装置34における弁体32の下流側に、弁口41に連通する貫通路68が形成されている。これらパイロット室62と貫通路68とが、パイロット弁ユニット30に対する流入路と流出路をそれぞれ形成している。他方、圧力付加手段49が収納されている圧力導入室70には、二次導通路72を介して二次側通路12が連通している。
【0028】
つぎに上記構成の作動を説明する。
[減圧前]
図2は減圧動作の開始前を示し、主弁体18が閉弁状態にある。この減圧弁に蒸気Sが通気されると、蒸気Sは一次側通路10から一次導通路64を通ってパイロット室62に達する。
【0029】
[圧力調整]
調整ハンドル52を減圧方向(左回り)に回転させると、図3に示すように、圧力付加手段49のプッシュロッド60が前方(左方向)へ移動する。これに伴い、ベローズ43が伸長して先端板38によりシャフト部材42を前方(左方向)へ移動させ、弁体32を開く。これにより、流出路(貫通路)68に蒸気Sが流れ、ピストン26を押し下げて主弁体18を開弁させる。このとき、圧力付加手段49の先端の押圧板38と弁座ブロック37の背面との間には若干の隙間Gが存在する。主弁体18の開弁により、一次側通路10内の蒸気Sが二次側通路12に流入して減圧される。
【0030】
[減圧の保持]
二次側通路12に流入した蒸気Sの一部が、図4に示すように、二次導通路72を通って圧力導入室70に達する。圧力導入室70内の蒸気圧力によって圧力付加手段49のベローズ43が押し縮められ、先端板38が右方向へ後退する。これにより、シャフト部材42の後方(右方向)への移動を許容して弁体32を閉弁方向に移動させる。このようにして主弁体駆動室27の圧力が調整されることで、主弁体18の開度が調整され、二次側通路12の圧力が一定に保たれる。
【0031】
つぎに、本発明の第1実施形態の要部である弁装置34について図5~8により説明する。本実施形態の弁装置34はバルブ交換機構80を備えている。バルブ交換機構80は、使用中の弁体32を排出するとともに、新しい弁体32Aを設置する。なお、図5~8における符号Scは、ボール32に付着したスケール(水垢)であり、説明の便宜上、実際よりも大きく描かれている。
【0032】
バルブ交換機構80は、スライド部材82と、スライド部材82を軸方向AXに移動させるスライド機構84と、スライド機構84を操作する操作部86と、交換用の弁体32Aが収納される予備弁体収納部88とを有している。スライド部材82は、筒形状であり、弁座ブロック37に軸方向AX(図5の左右方向)にスライド自在に支持されている。また、筒形状のスライド部材82の内部に、弁体が位置している。つまり、弁体32はスライド部材82の外周壁により覆われている。
【0033】
スライド部材82の外周面(外周壁)に、使用中の弁体32を使用済みとして排出する排出孔90と、新しい弁体32Aを投入する投入孔92とが形成されている。排出孔90と投入孔92は、スライド部材82の軸心AXを挟んで反対側に形成されている。本実施形態では、排出孔90がスライド部材82の下面(下壁)に形成され、投入孔92がスライド部材82の上面(上壁)に形成されている。ただし、排出孔90および投入孔92の位置はこれに限定されない。
【0034】
本実施形態では、排出孔90と投入孔92のサイズ、形状は同じに形成されている。排出孔90および投入孔92の孔径は、弁体32の直径よりも若干大きく形成されている。また、排出孔90の軸心A1と投入孔92の軸心A2は、スライド部材82の軸心AX方向にずれて設けられている。詳細には、排出孔90の軸心A1が、投入孔92の軸心A2よりも前方(図5の左側)に位置している。ただし、排出孔90と投入孔92のサイズ、形状は異なっていてもよく、両者90,92の軸心A1,A2が一致していてもよい。
【0035】
スライド部材82の前端部(図5の左端部)に、係止部94が形成されている。係止部94は、スライド部材82の前端部から径方向内側に突出して形成され、第1のばね体44に係止可能に形成されている。本実施形態では、係止部94は、スライド部材82の前端部の上側部分に形成されている。
【0036】
排出孔90の下方に、弁体排出通路96が形成されている。弁体排出通路96は、図8に示すように、下方に延びたのち、左右方向(図8の右側)に湾曲して延び、装置の外部に開口している。弁体排出通路96の開口は蓋部材98により閉塞されており、蓋部材98を取り外すことで、弁体32を取り出すことが可能となっている。
【0037】
図5に示す投入孔92の上方に、予備弁体収納部88が設けられている。予備弁体収納部88の内部に、交換用の複数の弁体32Aが収納されている。本実施形態では、交換用の弁体32Aが5つ収納されている。弁体32Aの収納数はこれに限定されない。
【0038】
本実施形態の予備弁体収納部88は、上下方向に延びる煙突形状を有しており、交換用の複数の弁体32Aが上下方向に並んで収納されている。予備弁体収納部88の上端は、着脱可能な閉止部材99により閉止されている。閉止部材99を取り外すことで、予備弁体収納部88の上端開口から交換用の弁体32Aを補給できる。
【0039】
予備弁体収納部88の下端部は、スライド部材82の軸方向、本実施形態では、図5の右側である後方に屈曲している。詳細には、予備弁体収納部88に収納される複数の交換用弁体32Aのうち、最も下方の弁体32Aが、上方の他の弁体32Aよりもスライド部材82の軸方向にずれた位置に配置されている。これにより、1つずつ弁体32Aを投入し易くなる。
【0040】
操作部86は、スライド機構84を介してスライド部材82を操作する。操作部86は、装置の外部に露出しており、ユーザが操作する部位である。操作部86は、ユーザが操作する押しボタン85を有している。押しボタン85は、ばね体87により上方にばね力が付与されている。押しボタン85の下面には、スライド機構84が連結される連結部85aが形成されている。
【0041】
スライド機構84は、スライド部材82を軸方向に移動させるもので、第1のリンク片100と、第2のリンク片102とを有している。第1のリンク片100は、スライド部材82と第2のリンク片102とを連結する。一方、第2のリンク片101は、第2のリンク片102と操作部86とを連結する。詳細には、第1のリンク片100の一端部が、スライド部材82の後端部(図5の右端部)に連結されている。より詳細には、第1のリンク片100の一端部は、左右方向(図5の紙面に直交する方向)に延びる連結ピンのような第1軸支部材104により、第1軸支部材104周りに回動自在にスライド部材82に連結されている。
【0042】
また、第1のリンク片100の他端部が、上下方向の延びる第2のリンク片102の下端部に連結されている。詳細には、第1のリンク片100の他端部は、左右方向(図5の紙面に直交する方向)に延びる連結ピンのような第2軸支部材106により、第2軸支部材106周りに回動自在に第2のリンク片102の下端部に連結されている。
【0043】
さらに、第2のリンク片102の上端部が、操作部86の押しボタン85の連結部85aに連結されている。詳細には、第2のリンク片102の上端部は、左右方向(図5の紙面に直交する方向)に延びる連結ピンのような第3軸支部材108により、第3軸支部材108周りに回動自在に押しボタン85の連結部85aに連結されている。第1のリンク片100および第2のリンク片102の下部は貫通路68内に配置されており、貫通路68の後面(図5の左端面)により後方(図5の右方向)への移動が規制されている。
【0044】
つぎに、本実施形態の弁装置34の弁体32の交換手順を説明する。図5の稼働状態において、弁体32にスケールScが付着すると誤作動の要因となり得るので、定期的に弁体32のメンテナンス(交換、清掃)が必要である。図5の状態では、使用中の弁体32の中心P1と排出孔90の軸心A1が軸方向AXにずれており、同様に、交換用の弁体32Aの中心P2と投入孔92の軸心A2が軸方向AXにずれているので、各弁体32,32Aは、排出孔90および投入孔92を通過しない。
【0045】
弁体32をメンテナンスするには、まず、図6に示す矢印AR1の方向(下方)に押しボタン85を押す。この押しボタン85の押圧力が、押しボタン85に連結されたスライド機構84を介してスライド部材82に伝達される。詳細には、押しボタン85の押圧力によりスライド機構84の第2のリンク片102が下方に移動する。貫通路68の後面により第2のリンク片102の後方への移動が規制されているので、第2のリンク片102は弁座ブロック37の前端面に沿って下方に移動する。
【0046】
このとき、第1のリンク片100は、第1および第2軸支部材104,106周りに回動し、前後方向(図6の左右方向)に延びる姿勢をとる。これにより、スライド部材82が矢印AR2の方向(前方)に移動する。このとき、スライド部材82の係止部94により、第1のばね体44も矢印AR3の方向(前方)に押される。これにより、第1のばね体44のばね力が弁体32に付与されなくなり、弁体32が移動可能となる。
【0047】
スライド部材82が前方に移動すると、最初に、使用中の弁体32の中心P1(図5)と排出孔90の軸心A1(図5)が一致し、自重により弁体32が排出孔90から弁体排出通路96に排出される(矢印AR4)。さらに、スライド部材82が前方に移動すると、交換用の弁体32Aの中心P2と投入孔92の軸心A2が一致し、自重により弁体32Aが投入孔92から弁室内に投入される(矢印AR5)。
【0048】
押しボタン85を離すと、ばね体87のばね力により、図7の矢印AR6の方向(上方)に押しボタン85が復帰する。これにより、スライド機構84の第2のリンク片102が上方に移動するとともに、第1のリンク片100が第1および第2軸支部材104,106周りに回動しながら、スライド部材82を矢印AR7の方向(後方)に移動させる。その結果、第1のばね体44のばね力が矢印AR8の方向(後方)に付与され、弁体32が弁シート41に押し付けられる。以上により、弁体32の交換が完了する。
【0049】
弁体排出通路96から排出された弁体32Bは、図8に示す蓋部材98を取り外すことで、装置外に取り出すことができる。取り出された弁体32Bは清掃された後、予備弁体収納部88に補給される。汚れや損傷がひどく清掃が困難な場合は、新しい弁体32が予備弁体収納部88に補給される。予備弁体収納部88への補給は、閉止部材99を取り外すことで行われる。
【0050】
上記構成によれば、図5に示すバルブ交換機構80により、使用中の弁体32を排出するとともに、新しい弁体32Aを設置することができる。これにより、装置を分解することなく、弁体32の交換、清掃等のメンテナンスを行うことができる。
【0051】
また、スライド部材82を移動させて、自重により使用中の弁体32の排出および交換用の弁体32Aの投入ができるので、使用中の弁体32の排出および新しい弁体32Aの投入がスムーズで、構造も簡単である。さらに、スライド部材82を移動させることで、これに設けられた係止部94により第1のばね体44の付勢力が弁体32に付与されるのを阻止できるので、使用中の弁体32の排出および新しい弁体32Aの投入がスムーズに行われる。
【0052】
ユーザは、装置外部に設けられた押しボタン85を押すだけであるから、弁体32の交換が容易である。交換用の複数の弁体32Aを収納する予備弁体収納部88が設けられているので、メンテナンスを行う度に弁体32を用意する必要がなく、作業性がよい。
【0053】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。バルブ交換機構80は、装置を分解することなく弁体32を交換できればよく、上記実施形態の構造に限定されない。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1 主通路
18 主弁体
24 主弁駆動部(第2の弁駆動部)
30 パイロット弁ユニット
32 弁体
34 弁装置
36 パイロット弁駆動部(第1の弁駆動部)
37 弁座ブロック
40 弁シート
42 シャフト部材
44 第1のばね体
49 圧力調整手段(閉弁力付加部材)
54 第2のばね体
62 パイロット室(流入路)
68 貫通路(流出路)
80 バルブ交換機構
82 スライド部材
84 スライド機構
86 操作部
88 予備弁体収納部
90 排出孔
92 投入孔
94 係止部
PRV 減圧弁
S 蒸気(流体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8