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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092995
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220616BHJP
   B08B 3/12 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H01L21/304 642E
B08B3/12 B
H01L21/304 642D
H01L21/304 642A
H01L21/304 651J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206034
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000134028
【氏名又は名称】株式会社SCREEN SPE テック
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】松田 将平
【テーマコード(参考)】
3B201
5F157
【Fターム(参考)】
3B201AA01
3B201AB03
3B201AB38
3B201AB44
3B201BB02
3B201BB84
3B201BB85
3B201BB87
3B201BB93
3B201BB95
3B201CC01
3B201CC12
5F157AA09
5F157AB03
5F157AB13
5F157AB34
5F157AB96
5F157BB04
5F157BB09
5F157BB73
5F157CB01
5F157CB15
5F157CB23
5F157CF04
5F157CF10
5F157CF60
5F157CF74
5F157DA21
5F157DB02
5F157DB37
5F157DC86
(57)【要約】
【課題】より適切に複数の基板に対して一括して処理を行うことができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置10は、複数の基板に対して一括して処理を行う。基板処理装置10は貯留槽2と供給管31と載置部材41と振動子5とを備える。貯留槽2は処理液を貯留する。供給管31は貯留槽2内に処理液を供給する。載置部材41には、複数の基板Wを収容したキャリアCが貯留槽2内の処理液に浸漬した状態で載置される。振動子5は載置部材41に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板に対して一括して処理を行う基板処理装置であって、
処理液を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽内に処理液を供給する供給管と、
複数の基板を収容したキャリアが前記貯留槽内の処理液に浸漬した状態で載置される載置部材と、
前記載置部材に設けられる振動子と
を備える、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記振動子は、1MHz以上かつ3MHz以下の周波数で振動する、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記キャリアは一対の支持脚を有し、
前記振動子は複数設けられており、
当該複数の振動子のうち第1振動子は前記一対の支持脚の一方の近傍で前記載置部材に設けられており、当該複数の振動子のうち第2振動子は前記一対の支持脚の他方の近傍で前記載置部材に設けられている、基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の基板処理装置であって、
前記載置部材および前記キャリアの少なくとも一方は石英によって形成される、基板処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の基板処理装置であって、
前記載置部材を揺動させる揺動機構をさらに備える、基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記揺動機構は、前記複数の基板の厚み方向に沿って前記載置部材を揺動させる、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板を洗浄液に浸漬させた上で洗浄液を超音波振動させることで、基板を洗浄する基板洗浄装置が提案されている(例えば特許文献1)。この基板洗浄装置では、洗浄液を貯留する洗浄槽内に超音波振動子が設けられている。超音波振動子は洗浄液に浸漬されており、洗浄液中において、基板と離れて設けられる。超音波振動子は洗浄液を振動させてキャビテーションを発生させ、当該キャビテーションを基板に作用させる。これにより、基板に対する洗浄効果を高めることができる。
【0003】
ところで、近年、複雑な3次元構造を有する基板が登場している。例えば、MEMS(微小電気機械システム)デバイスは高性能化に伴って、デバイスの微細化、積層化および3次元化が進行している。当該デバイスの製造途中の基板の表面には3次元構造が形成され、当該3次元構造の内部には空間が形成され得る。
【0004】
このような基板に対して特許文献1の基板洗浄装置を適用すると、キャビテーションにより3次元構造が倒壊するおそれがある。
【0005】
これに対して、キャビテーションを利用しない基板処理装置も提案されている(例えば特許文献2)。特許文献2には、複数の基板に対して一括して処理を行うバッチ式の基板処理装置が開示されている。この基板処理装置は、処理液が貯留される貯留槽を含む。貯留槽には、複数の基板を収容したキャリアが搬入される。キャリが処理液に浸漬することにより、処理液が複数の基板に作用し、処理液に応じた処理が複数の基板に対して一括して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-107710号公報
【特許文献2】特開2012-199371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、基板の3次元構造の内部空間に処理液が入り込むと、内部空間が狭いために処理液が内部空間に滞留しやすい。よって、内部空間において古い処理液が新しい処理液に置換されにくく、基板に対する処理が不十分になるおそれがある。
【0008】
そこで、本願は、より適切に複数の基板に対して一括して処理を行うことができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
基板処理装置の第1の態様は、複数の基板に対して一括して処理を行う基板処理装置であって、処理液を貯留する貯留槽と、前記貯留槽内に処理液を供給する供給管と、複数の基板を収容したキャリアが前記貯留槽内の処理液に浸漬した状態で載置される載置部材と、前記載置部材に設けられる振動子とを備える。
【0010】
基板処理装置の第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理装置であって、前記振動子は、1MHz以上かつ3MHz以下の周波数で振動する。
【0011】
基板処理装置の第3の態様は、第1または第2の態様にかかる基板処理装置であって、前記キャリアは一対の支持脚を有し、前記振動子は複数設けられており、当該複数の振動子のうち第1振動子は前記一対の支持脚の一方の近傍で前記載置部材に設けられており、当該複数の振動子のうち第2振動子は前記一対の支持脚の他方の近傍で前記載置部材に設けられている。
【0012】
基板処理装置の第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記載置部材および前記キャリアの少なくとも一方は石英によって形成される。
【0013】
基板処理装置の第5の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記載置部材を揺動させる揺動機構をさらに備える。
【0014】
基板処理装置の第6の態様は、第5の態様にかかる基板処理装置であって、前記揺動機構は、前記複数の基板の厚み方向に沿って前記載置部材を揺動させる。
【発明の効果】
【0015】
基板処理装置の第1の態様によれば、振動子の振動が載置部材を介してキャリアおよび複数の基板に伝達される。つまり、振動は固体のみを通じて複数の基板に伝達される。これによれば、振動をあまり劣化させずに基板に伝達することができる。したがって、所望の周波数および振幅で基板を振動させることができる。
【0016】
そして、基板が処理液内で振動することにより、処理液を基板に対してより効果的に作用させることができる。例えば基板に3次元構造が形成されていても、処理液はその3次元構造の内部空間に出入りしやすいので、当該内部空間において古い処理液が新しい処理液に置換され、基板に対して適切に処理を行うことができる。
【0017】
基板処理装置の第2の態様によれば、キャビテーションが発生しにくいので、キャビテーションに起因した基板の3次元構造物の倒壊またはパターン倒壊等の不具合を抑制できる。
【0018】
基板処理装置の第3の態様によれば、振動をより均一に基板に伝達することができる。
【0019】
基板処理装置の第4の態様によれば、振動をあまり劣化させずに速やかに基板に伝達することができる。
【0020】
基板処理装置の第5の態様によれば、基板の3次元構造内の処理液の置換をさらに促進することができる。
【0021】
基板処理装置の第6の態様によれば、厚み方向の揺動によって基板の主面が処理液に対して高い圧力で押圧するので、基板の3次元構造内の処理液の置換をさらに促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施の形態にかかる基板処理装置の構成の一例を概略的に示す側断面図である。
図2】キャリアCおよび載置部材の構成の一例を概略的に示す図である。
図3】載置部材の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図4】制御部の内部構成の一例を概略的に示す図である。
図5】第2の実施の形態にかかる基板処理装置の構成の一例を概略的に示す側断面図である。
図6】揺動機構の構成の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略および構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また各図において、構成要素の位置関係を明確にするため、Z軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。以下では、Z軸方向の一方側(ここでは鉛直上側)を+Z側と呼び、Z軸方向の他方側(ここでは鉛直下側)を-Z側とも呼ぶ。X軸およびY軸も同様である。
【0024】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0025】
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0026】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0027】
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態にかかる基板処理装置10の構成の一例を概略的に示す側断面図である。この基板処理装置10は、複数の基板Wに対して一括して処理を行うバッチ式の処理装置である。
【0028】
処理対象となる基板Wは平板状の形状を有しており、基板Wの厚み方向に沿って見て、例えば略円形状を有する。基板Wは例えば半導体基板である。半導体基板としては、例えばシリコン基板または炭化ケイ素基板等の基板を採用できる。基板Wの主面には種々の3次元構造が形成され得る。基板Wは、例えばMEMSデバイスの製造途中の基板である。この3次元構造の内部には、液体が入り込むことが可能な空間が形成され得る。
【0029】
複数の基板Wはキャリア(基板収容器)Cに収容された状態で基板処理装置10内に搬送される。図2は、キャリアCの構成の一例を概略的に示す正面図である。以下では、まず、キャリアCの一例について述べる。
【0030】
<キャリア>
キャリアCは、+Z側および-Z側に開口する箱型形状を有している。以下では、キャリアCの+Z側の開口および-Z側の開口をそれぞれ上側開口9aおよび下側開口9bとも呼ぶ。複数の基板Wの各々は起立姿勢で、キャリアCの上側開口9aからキャリアCの内部に挿入される。ここでいう起立姿勢とは、基板Wの厚み方向が水平方向に沿う姿勢である。複数の基板Wはその厚み方向に沿って並んだ状態で、キャリアCの内部に収容される。
【0031】
図1および図2の例では、キャリアCは前壁91と後壁92と側壁93と側壁94と一対の支持脚95,96とを含む。前壁91および後壁92は基板Wの厚み方向(ここではY方向)において、間隔を空けて互いに向かい合う。ここでは、前壁91は後壁92よりも-Y側に設けられる。側壁93および側壁94は、基板Wの厚み方向に垂直かつ水平な方向(ここではX方向)において、間隔を空けて互いに向かい合う。ここでは、側壁93は側壁94よりも-X側に設けられる。側壁94は前壁91の+X側の端部および後壁92の+X側の端部を連結し、側壁93は前壁91の-X側の端部および後壁92の-X側の端部を連結する。これにより、前壁91、後壁92、側壁93および側壁94はキャリアCの内部空間を形成する。前壁91、後壁92、側壁93および側壁94によって囲まれたキャリアCの内部空間は、その上部において開口して上側開口9aを形成し、その下部において開口して下側開口9bを形成する。
【0032】
側壁93および側壁94の内面は、-Z側の端部(下部)において、-Z側に向かうにつれて互いに近づくように傾斜している。複数の基板Wは側壁93,94の内面のうち-Z側の部分に当接し、これによって、キャリアC内で支持される。
【0033】
側壁93の内面および側壁94の内面には、各基板Wを厚み方向に沿って挟むための突部(不図示)が形成される。より具体的には、側壁93の内面には、複数の突部が基板Wの厚み方向に沿って並んで形成され、側壁94の内面には、複数の突部が基板Wの厚み方向に沿って並んで形成される。これによれば、側壁93,94の各々において、隣り合う2つの突部の間に溝が形成される。各基板Wの周縁部のうち-X側の部分は側壁93の溝に挿入され、各基板Wの周縁部のうち+X側の部分は側壁94の溝に挿入される。これにより、各基板WはキャリアCの突部とも当接し、起立姿勢でキャリアC内に収容される。
【0034】
支持脚95は側壁93の-Z側の端(下端)に設けられ、支持脚96は側壁94の-Z側の端(下端)に設けられる。支持脚95および支持脚96はX方向において互いに間隔を空けて向かい合う。
【0035】
<基板処理装置>
基板処理装置10は貯留槽2と処理液供給部3と載置部材41と振動子5と制御部6とを含んでいる。以下では、各構成を概説した後に、その具体的な一例について詳述する。
【0036】
貯留槽2は処理液を貯留する。処理液は、複数の基板Wに対する処理を行うための液体である。処理液としては、例えば、純水およびイソプロピルアルコール等のリンス液またはフッ酸等の薬液が採用され得る。ここでは、一例として薬液を採用する。
【0037】
処理液供給部3は制御部6によって制御され、貯留槽2に処理液を供給する。処理液供給部3は供給管31を含んでおり、供給管31は吐出口31aを有している。供給管31の吐出口31aは貯留槽2内において開口し、吐出口31aから貯留槽2の内部に処理液が吐出される。これにより、貯留槽2内に処理液が貯留される。
【0038】
載置部材41は、キャリアCを載置する部材である。載置部材41は貯留槽2の内部に設けられており、キャリアCを支持する。具体的には、載置部材41の+Z側の面(上面)には、キャリアCの-Z側の端(下端)が当接する。キャリアCが載置部材41の上に載置された状態で、キャリアCおよび複数の基板Wは貯留槽2内の処理液に浸漬する。
【0039】
振動子5は載置部材41に設けられている。振動子5は制御部6の制御下で振動する。振動子5は載置部材41に接触しており、具体的な一例として、振動子5は載置部材41に埋設される。
【0040】
振動子5の振動は載置部材41およびキャリアCを介して複数の基板Wに伝達される。振動子5は載置部材41に接触しており、載置部材41はキャリアCの下端(図では支持脚95,96の下端)に接触しており、キャリアCはその内部で複数の基板Wに接触しているので、振動子5からの振動を載置部材41およびキャリアCの固体のみを介して基板Wに伝達することができる。言い換えれば、この振動伝達経路には処理液は介在していない。
【0041】
制御部6は、基板処理装置10を統括的に制御する。具体的には、制御部6は処理液供給部3および振動子5を制御する。
【0042】
具体的には、まず、制御部6は処理液供給部3を制御して貯留槽2の内部に処理液を供給させる。これにより、貯留槽2に処理液が貯留される。そして、キャリアCが不図示の搬送装置によって載置部材41の上に搬送される。これにより、キャリアCおよび複数の基板Wは貯留槽2内の処理液に浸漬する。制御部6はこの状態で振動子5を振動させる。
【0043】
振動子5の振動は上記の振動伝達経路を経由して複数の基板Wに伝達されるので、複数の基板Wが処理液に対して振動する。しかも、上記の振動伝達経路は固体のみによって構成されるので、振動の劣化を抑制して基板Wに伝達することができる。つまり、周波数および振幅の低下を抑制しつつ振動を基板Wに速やかに伝達することができる。
【0044】
基板Wは処理液に対して所定の周波数かつ振幅で振動するので、処理液は基板Wの3次元構造の内部空間に出入りしやすくなる。つまり、3次元構造の内部空間での処理液の滞留を抑制することができ、当該内部空間において古い処理液から新しい処理液への置換を促進させることができる。よって、当該内部空間における基板Wに対する処理不足を抑制または回避することができる。言い換えれば、基板Wに対する処理を適切に行うことができる。
【0045】
以下、基板処理装置10の各構成の具体的な一例について詳述する。
【0046】
<貯留槽>
図1の例では、貯留槽2は、内槽空間2aと外槽空間2bとを含む二重構造を有する。図1の例では、貯留槽2は底部21と周壁22と仕切部材23とを含む。底部21は板状の形状を有しており、その厚み方向がZ方向に沿う姿勢で設けられる。周壁22は底部21の周縁に立設されており、+Z側に沿って延在する。
【0047】
仕切部材23は、底部21および周壁22によって囲まれた貯留槽2の内部空間を、内槽空間2aと外槽空間2bとに仕切る。仕切部材23は貯留槽2の内部空間においてZ方向に沿って延在しており、その-Z側の端(下端)が底部21に連結される。図1の例では、仕切部材23よりも-X側の空間が内槽空間2aに相当し、+X側の空間が外槽空間2bに相当する。仕切部材23の+Z側の端(上端)は周壁22の+Z側の端(上端)よりも-Z側に位置している。つまり、仕切部材23は周壁22よりも低い。処理液は、その液面が仕切部材23の+Z側の端よりも高くなるまで、貯留槽2内に供給される。つまり、処理液は内槽空間2aおよび外槽空間2bの両方に貯留される。
【0048】
<処理液供給部>
図1の例では、処理液供給部3は供給管31とバルブ32とを含む。図1の例では、供給管31の下流部分が貯留槽2の内槽空間2aにおいて、底部21の近傍に設けられている。図1の例では、載置部材41も貯留槽2の内槽空間2aに設けられており、供給管31の下流部分は載置部材41よりも-Z側に設けられている。供給管31の下流部分は例えばY方向に沿って延在しており、その外周面に複数の吐出口31aが形成されている。複数の吐出口31aはY方向に並んで形成されており、各吐出口31aから処理液が吐出される。
【0049】
供給管31はその上流端において処理液供給源33に接続されている。処理液供給源33は処理液を供給管31の上流端に供給する。
【0050】
バルブ32は供給管31の上流部分に介装されている。バルブ32は制御部6によって制御され、バルブ32が開くことにより、処理液供給源33から供給管31を通じて貯留槽2の内部に処理液が供給される。具体的には、処理液が内槽空間2aに供給される。これにより、処理液の液面は内槽空間2aにおいて徐々に上昇し、仕切部材23の+Z側の端を超える。これにより、処理液が外槽空間2bに溢れ出る。そして、外槽空間2bにおいても処理液の液面が徐々に上昇し、いずれ仕切部材23の+Z側の端を超える。
【0051】
なお、貯留槽2には適宜に不図示の排液管が接続され、排液管に介装されたバルブが開くことにより、貯留槽2内の処理液は外部に排出可能となっている。
【0052】
<循環部>
図1の例では、基板処理装置10には、循環部7が設けられている。循環部7は循環配管71とポンプ72とフィルタ73とを含む。循環配管71の上流端は外槽空間2bにおいて底部21に接続され、循環配管71の下流端は内槽空間2aにおいて底部21に接続される。フィルタ73は循環配管71に介装されており、循環配管71内の処理液の不純物を捕捉する。ポンプ72は循環配管71に介装される。ポンプ72は制御部6によって制御され、循環配管71内の処理液を上流端から下流端に向かって送液する。
【0053】
これにより、貯留槽2内の処理液は循環配管71を通じて再び貯留槽2内に戻る。つまり、処理液は貯留槽2および循環配管71を循環する。
【0054】
<載置部材>
図3は、載置部材41の構成の一例を概略的に示す平面図である。図3の例では、載置部材41には開口41aが形成されている。開口41aは載置部材41をZ方向に沿って貫通している。
【0055】
図3の例では、載置部材41は枠体411と4つの当接部材412とを含んでいる。枠体411は平面視において(つまり、Z方向に沿って見て)、矩形の枠形状を有している。枠体411は、その一辺がX方向に沿う姿勢で設けられている。
【0056】
4つの当接部材412は枠体411の4つの頂点付近にそれぞれ設けられ、より具体的には、枠体411の頂点部の内側面にそれぞれ連結されている。図3の例では、各当接部材412は平面視において矩形形状を有しており、各当接部材412の互いに直交する2辺が枠体411の内側面に連結されている。これらの当接部材412は枠体411の内側面から内側に突出する。
【0057】
4つの当接部材412をそれぞれ当接部材412a~412dとも呼ぶ。当接部材412a,412bはY方向において間隔を空けて設けられ、当接部材412aは当接部材412bよりも+Y側に位置している。当接部材412c,412dはY方向において間隔を空けて設けられ、当接部材412cは当接部材412dよりも+Y側に設けられている。当接部材412a,412cはX方向において間隔を空けて設けられ、当接部材412aは当接部材412cよりも-X側に位置している。当接部材412b,412dはX方向において間隔を空けて設けられ、当接部材412bは当接部材412dよりも-X側に位置している。
【0058】
このような載置部材41において、枠体411および4つの当接部材412からなる構造体が囲む空間が開口41aに相当する。
【0059】
キャリアCの支持脚95,96は当接部材412の上に載置される。具体的には、支持脚95の+Y側の部分および-Y側の部分がそれぞれ当接部材412a,412bに接触し、支持脚96の+Y側の部分および-Y側の部分がそれぞれ当接部材412c,412dに接触する。
【0060】
図1の例では、載置部材41は吊り部材42によって支持される。吊り部材42はZ方向に延在しており、その-Z側の端(下端)が載置部材41の+Y側の端部に連結されている。吊り部材42は貯留槽2よりも+Z側に突出しており、基板処理装置10内で固定される。例えば、貯留槽2を収容するチャンバが設けられる場合には、吊り部材42はチャンバに固定される。
【0061】
なお、載置部材41には、キャリアCの水平方向の位置を決定するための位置決め構造、または、キャリアCを保持する保持機構が適宜に設けられていてもよい。
【0062】
<振動子>
振動子5は超音波振動子であって、例えば圧電素子を含む。具体的な一例として、振動子5は、圧電セラミックス等の圧電体と、当該圧電体に設けられた一対の電極とを含む。一対の電極は圧電体に接触しており、一対の電極間に駆動電圧が印加されることで、圧電体に駆動電圧が印加される。圧電体は当該駆動電圧に応じて、収縮したり、膨張したりする。図1の例では、一対の電極は発振器51に電気的に接続されている。発振器51は制御部6によって制御され、振動子5の電極間に駆動電圧を印加する。発振器51は駆動電圧として例えば高周波電圧を振動子5に出力する。振動子5の圧電体は発振器51からの駆動電圧に応じて収縮と膨張とを交互に繰り返すことで振動する。
【0063】
振動子5は例えば載置部材41の内部に埋設され、その少なくとも一部が載置部材41に接触する。これにより、圧電体の振動をその接触箇所を介して載置部材41に直接に伝達することができる。
【0064】
また、載置部材41は処理液に対する耐薬品性を有する材料で構成されているので、振動子5が載置部材41に埋設されている場合には、載置部材41は振動子5を処理液から保護することができる。耐薬品性を有する材料としては、例えば、塩化ビニル樹脂またはフッ素系樹脂などの樹脂あるいは石英を採用することができる。
【0065】
振動子5が載置部材41に埋設されない場合、振動子5は、圧電体および一対の電極を囲んで封止するための保護部材(パッケージ)をさらに含んでいるとよい。当該保護部材の材料としては、処理液に対する耐薬品性を有する材料を採用することができ、例えば、塩化ビニル樹脂またはフッ素系樹脂などの樹脂あるいは石英を採用することができる。保護部材は圧電体および一対の電極の少なくともいずれか一方に接触する。このような振動子5は載置部材41の表面に取り付けられ、振動子5のパッケージの少なくとも一部が載置部材41の表面に接触する。これにより、圧電体の振動がパッケージを介して載置部材41へと伝達される。つまり、圧電体の振動を固体のみを介して載置部材41へ伝達させることができる。
【0066】
図3の例では、振動子5として複数(図の例では4つ)の振動子5a~5dが設けられている。4つの振動子5a~5dは、それぞれ、4つの当接部材412に設けられている。これによれば、4つの振動子5a~5dをキャリアCの支持脚95,96の近傍に設けることができる。具体的には、振動子5a,5b(第1振動子に相当)はキャリアCの支持脚95の近傍に設けられ、振動子5c,5d(第2振動子に相当)はキャリアCの支持脚96の近傍に設けられる。言い換えれば、振動子5a,5bは支持脚96よりも支持脚95に近い位置に設けられ、振動子5c,5dは支持脚95よりも支持脚96に近い位置に設けられる。
【0067】
また、振動子5aは支持脚95の+Y側の端部の近傍に設けられ、振動子5bは支持脚95の-Y側の端部の近傍に設けられる。言い換えれば、振動子5aは支持脚95の-Y側の端部よりも+Y側の端部に近い位置に設けられ、振動子5bは支持脚95の+Y側の端部よりも-Y側の端部に近い位置に設けられる。振動子5cは支持脚96の+Y側の端部の近傍に設けられ、振動子5dは支持脚96の-Y側の端部の近傍に設けられる。言い換えれば、振動子5cは支持脚96の-Y側の端部よりも+Y側の端部に近い位置に設けられ、振動子5dは支持脚96の+Y側の端部よりも-Y側の端部に近い位置に設けられる。
【0068】
このような配置によれば、4つの振動子5a~5dがキャリアCに対してより均等に振動を伝達させることができる。したがって、複数の基板Wをより均等に振動させることができ、基板Wに対する処理の均一性を向上させることができる。
【0069】
<制御部>
図4は、制御部6の構成の一例を概略的に示すブロック図である。制御部6は電子回路機器であって、例えばデータ処理装置61および記憶媒体62を有していてもよい。データ処理装置61は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶媒体62は非一時的な記憶媒体621(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)および一時的な記憶媒体622(例えばRAM(Random Access Memory))を有していてもよい。非一時的な記憶媒体621には、例えば制御部6が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。データ処理装置61がこのプログラムを実行することにより、制御部6が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部6が実行する処理の一部または全部が、論理回路などのハードウェア回路によって実行されてもよい。
【0070】
<基板処理装置の動作>
次に基板処理装置10の動作の具体的な一例について改めて説明する。まず、処理液供給部3が貯留槽2内に処理液を供給する。具体的には、制御部6がバルブ32を開くことで、処理液が供給管31の吐出口31aから吐出される。処理液の液面が仕切部材23よりも高くなると、制御部6がバルブ32を閉じる。これにより、処理液の供給が停止し、処理液は内槽空間2aおよび外槽空間2bの両方に貯留されることとなる。
【0071】
次に、不図示の搬送装置がキャリアCを貯留槽2の内部に進入させ、キャリアCを載置部材41に載置させる。これにより、キャリアCおよび複数の基板Wが貯留槽2内の処理液に浸漬する。次に、制御部6はポンプ72を作動させる。これにより、処理液は循環配管71を通じて循環する。なお、ポンプ72はキャリアCの搬入前から作動していてもよい。
【0072】
次に、制御部6は振動子5を振動させる。具体的には、制御部6は発振器51に駆動電圧を出力させる。これにより、振動子5が当該駆動電圧に応じた周波数で振動する。ここでは、振動子5が発振する振動の周波数は1MHz以上かつ3MHz以下に設定される。言い換えれば、制御部6は振動子5が1MHz以上かつ3MHz以下の周波数で振動するように、発振器51の出力電圧を調整する。
【0073】
このような基板処理において、ポンプ72が作動しているので、循環配管71の下流端から貯留槽2の内槽空間2aに流入した処理液は、載置部材41の開口41aおよびキャリアCの下側開口9bを順次に経由して、複数の基板Wの相互間を+Z側に流れる。処理液は基板Wの相互間の通過中に基板Wの表面に作用する。これにより、処理液の種類に応じた処理が基板Wに対して行われる。
【0074】
処理液はキャリアCの上側開口9aから流出し、仕切部材23を超えて外槽空間2bに流入する。そして、処理液は外槽空間2bを-Z側に流れて循環配管71の上流端に流入する。処理液は循環配管71内のフィルタ73によって不純物が除去された上で、再び内槽空間2aに流入する。これにより、より清浄な処理液を複数の基板Wに向けて流すことができる。
【0075】
また、上述の動作において、振動子5が振動する。この振動は載置部材41およびキャリアCを介して複数の基板Wに伝達される。これにより、各基板Wが処理液に対して振動するので、処理液は基板Wの3次元構造の内部空間に出入りしやすくなる。つまり、当該内部空間において基板Wに作用した古い処理液が新しい処理液に置換されやすくなる。したがって、内部空間における処理不足を抑制または回避でき、当該内部空間においても基板Wに対する処理を適切に行うことができる。
【0076】
複数の基板Wに対する処理が十分に行われると、制御部6は振動子5の振動およびポンプ72の作動を停止させる。次に、搬送装置がキャリアCを貯留槽2から搬出する。
【0077】
以上のようにして、複数の基板Wに対して一括して処理を行うことができる。
【0078】
ところで、処理液としてフッ酸等の薬液を採用する場合には、基板Wに付着した薬液を洗い流す必要がある。そこで、基板処理装置10にリンス槽(不図示)が設けられてもよい。この場合、搬送装置は貯留槽2による薬液処理の後に、キャリアCを貯留槽2からリンス槽へと搬送する。リンス槽には純水等のリンス液が貯留されており、キャリアCおよび複数の基板Wがリンス液に浸漬することにより、キャリアCおよび複数の基板Wに付着した薬液が洗い流される(リンス処理)。
【0079】
あるいは、貯留槽2をリンス槽として利用してもよい。具体的には、基板処理装置10は貯留槽2内の処理液を排出した後に、貯留槽2内にリンス液を供給してもよい。これによっても、キャリアCおよび複数の基板Wをリンス液に浸漬させることができ、キャリアCおよび複数の基板Wに付着した薬液を洗い流すことができる。
【0080】
リンス処理後には、キャリアCおよび複数の基板Wに対する乾燥処理が行われる。例えば、基板処理装置10には、高温の不活性ガスを吐出するガス供給部が設けられる。そして、搬送装置がキャリアCを上昇させてリンス液から引き上げたり、あるいは、基板処理装置10がリンス液を排出した後に、ガス供給部が高温の不活性ガスをキャリアCおよび複数の基板Wに供給する。これによって、キャリアCおよび複数の基板Wが乾燥する。
【0081】
以上のように、基板処理装置10によれば、一括して複数の基板Wを処理して乾燥させることができる。
【0082】
しかも、基板処理装置10によれば、振動子5の振動により基板Wが振動するので、基板Wの3次元構造の内部空間における処理液の置換を促進させることができる。言い換えれば、内部空間における処理液の滞留を抑制することができる。さらに、振動子5の振動は載置部材41およびキャリアCを介して複数の基板Wに伝達される。つまり、固体を通じて複数の基板Wに振動を伝達することができる。固体における振動の劣化(減衰)は液体における振動の劣化よりも小さいので、振動子5の振動をあまり劣化させずに、基板Wに伝達することができる。よって、基板Wを所望の周波数および振幅で振動させることができる。
【0083】
また上述の例では、振動子5は1MHz以上かつ3MHz以下の高周波数で振動する。これによれば、貯留槽2に貯留された処理液にキャビテーションを生じさせずに、基板Wを振動させることができる。したがって、キャビテーションに起因した基板Wの3次元構造の倒壊もしくはパターンの倒壊を抑制または回避することができる。
【0084】
また上述の例では、4つの振動子5は、それぞれ、各キャリアCの支持脚95,96と載置部材41との接触箇所の近傍に設けられている。よって、キャリアCにより均等に振動を伝達することができ、ひいては、複数の基板Wにより均等に振動を伝達することができる。よって、複数の基板Wをより均等に処理できる。
【0085】
<載置部材の材料>
振動伝達の観点を考慮すると、載置部材41の材料として、超音波の伝搬速度が高い材料を採用するとよい。より具体的には、石英を採用するとよい。石英における伝搬速度は4400m/secであり、水の4倍近い。載置部材41が石英によって構成される場合には、載置部材41は振動子5からの振動をあまり劣化させずにキャリアCに伝達することができる。つまり、周波数の低下および振幅の低下を抑制して振動をキャリアCに速やかに伝達できる。
【0086】
なお、必ずしも載置部材41の全てが石英で構成される必要はなく、載置部材41のうち、少なくとも、振動子5との接触部からキャリアCとの接触部までの間の部分が石英で形成されていればよい。例えば当接部材412のみが石英によって形成されてもよい。
【0087】
<キャリアの材質>
キャリアCの材料としては、処理液に対する耐薬品性を有する材料を採用するとよい。例えば、塩化ビニル樹脂またはフッ素系樹脂などの樹脂、あるいは、石英を採用することができる。振動伝達の観点からは、超音波の伝搬速度が高い材料を採用するとよく、具体的には、石英を採用するとよい。キャリアCが石英によって形成される場合、キャリアCは振動をあまり劣化させずに複数の基板Wに伝達することができる。
【0088】
なお、必ずしもキャリアCの全てが石英で形成される必要はなく、キャリアCのうち、少なくとも、載置部材41との接触部から複数の基板Wの各々との接触部までの間の部分が石英で形成されていればよい。例えば、キャリアCの支持脚95,96および側壁93,94のみが石英によって形成されてもよい。
【0089】
なお、基板処理装置10にリンス槽が設けられる場合には、当該リンス槽の内部にも載置部材41および振動子5と同様の載置部材および振動子を設けるとよい。当該振動子が振動することにより、リンス液が基板Wの3次元構造の内部空間に出入りしやすいので、3次元構造内の薬液を適切にリンス液に置換することができる。
【0090】
<第2の実施の形態>
図5は、第2の実施の形態にかかる基板処理装置10Aの構成の一例を概略的に示す側断面図である。基板処理装置10Aは揺動機構4の有無を除いて、基板処理装置10と同様の構成を有している。
【0091】
揺動機構4は載置部材41を揺動させる。図5の例では、揺動機構4は吊り部材42と昇降機構43を含む。昇降機構43は制御部6によって制御され、吊り部材42をZ方向に往復移動させる。これにより、吊り部材42に連結された載置部材41もZ方向に往復移動する。つまり、昇降機構43は載置部材41を昇降させる。昇降機構43例えばエアシリンダまたはボールねじ機構などの機構を有する。
【0092】
揺動機構4は、キャリアCおよび複数の基板Wが処理液に浸漬した状態で、載置部材41を揺動させる。ここでいう揺動とは、振動子5の振動よりも大きな振幅(距離)での往復移動であり、振動子5の振動の周波数よりも低い、例えば百Hz以下の周波数での往復移動である。
【0093】
揺動機構4は載置部材41、キャリアCおよび複数の基板Wを処理液に対して比較的にゆっくりと大きくZ方向に沿って往復移動させる。この揺動により、さらに処理液の基板Wの内部空間への出入りをさらに促進できる。
【0094】
なお、揺動機構4による揺動の周波数は非常に低いので、キャビテーションはほとんど生じない。よって、キャビテーションに起因した基板Wの3次元構造物の倒壊またはパターンの倒壊は抑制または回避される。
【0095】
図6は、揺動機構4の構成の他の一例を概略的に示す図である。図6の揺動機構4は、基板Wの厚み方向に沿って載置部材41を揺動させる。図6の例では、揺動機構4は吊り部材42とシャフト44と回動機構45とを含む。図6の例では、吊り部材42の-Z側の端部は載置部材41のY方向の中央部に連結されている。吊り部材42はZ方向に長い長尺状の形状を有しており、図6の例では、その+Z側の端部は貯留槽2よりも高い位置に設けられる。吊り部材42はその+Z側の端部においてシャフト44に連結されている。シャフト44は、その中心軸である回動軸線Q1のまわりで回動可能に設けられる。回動軸線Q1はX方向に沿う軸である。このシャフト44は不図示の軸受を介してチャンバに固定される。
【0096】
回動機構45は制御部6によって制御され、シャフト44を回動軸線Q1のまわりで回動させる。ここで、載置部材41が水平姿勢となる状態での回動角度をゼロとする。回動機構45は、例えば、ゼロを中心として所定の角度範囲でシャフト44を交互に反対に回動させる。これにより、載置部材41は回動軸線Q1についての周方向に沿って所定の角度範囲で往復移動する。このときの載置部材41の移動方向はおおよそY方向であるといえる。
【0097】
図6の例では、回動機構45はリンク機構451と移動機構452とを含んでいる。リンク機構451はシャフト44と移動機構452との間に設けられており、移動機構452によるY方向の移動をシャフト44の回転方向の移動に変換し、シャフト44を回動軸線Q1のまわりで回動させる。移動機構452は例えばエアシリンダなどの直動機構であって、制御部6によって制御される。
【0098】
このような揺動機構4は載置部材41を厚み方向(Y方向)に沿って揺動させるので、載置部材41に載置されたキャリアCおよび複数の基板Wも厚み方向に沿って揺動する。これによれば、基板Wが処理液に対して大きな面積で往復移動するので、基板Wの主面が高い圧力で処理液を押圧する。よって、処理液の基板Wの3次元構造の内部空間への出入りをさらに促進することができる。
【0099】
以上のように、基板処理装置10,10Aは詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、基板処理装置10,10Aがそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【0100】
例えば、循環部7は設けられていなくてもよい。また、上述の例では、貯留槽2は内槽空間2aおよび外槽空間2bの二重構造を有しているものの、一重構造を有していてもよい。
【0101】
また、図6の例では、揺動機構4は回動機構45によって載置部材41を回動軸線Q1についての周方向に沿って往復移動させている。しかるに、揺動機構4は回動機構45に替えて、載置部材41をY方向に沿って移動させる直動機構を有していてもよい。
【符号の説明】
【0102】
10,10A 基板処理装置
2 貯留槽
31 供給管
4 揺動機構
41 載置部材
5 振動子
5a,5b 第1振動子(振動子)
5c,5d 第2振動子(振動子)
95,96 支持脚
C キャリア
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6