(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093032
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 123/08 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
C09J123/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206095
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】高森 愛
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040BA192
4J040BA202
4J040DA041
4J040DA061
4J040DN032
4J040GA07
4J040KA26
4J040KA28
4J040KA31
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA08
4J040NA07
(57)【要約】
【課題】糸曳を低減でき、熱安定性に優れ、紙への接着性に優れ、さらに、セットタイムの短いホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体、及び(C)粘着付与樹脂を含み、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は(B1)(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量が2~24質量%のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む、ホットメルト接着剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体、及び(C)粘着付与樹脂を含み、
(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は(B1)(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量が2~24質量%のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む、ホットメルト接着剤。
【請求項2】
(B1)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体がエチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体及びエチレン/アクリル酸エチルから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
(C)粘着付与樹脂が(C1)部分水添粘着付与樹脂と、(C2)完全水添粘着付与樹脂を含む、請求項1または2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤を有する紙製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤に関し、さらに詳しくは、種々の基材に対して接着性が良好であり、特にダンボール等の紙基材を組み立てるために好適なホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、無溶剤の接着剤であり、加熱溶融することで被着体に塗工後、冷却することで固化して接着性を発現するので、瞬間接着及び高速接着が可能であるという特徴を有し、例えば、紙加工、木工、衛生材料及び電子分野等の幅広い分野で使用されている。
【0003】
上記ホットメルト接着剤のベースポリマーとして、その用途に応じて、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」ともいう)及びエチレン-エチルアクリレート共重合体(以下、「EEA」ともいう)等のエチレン系共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、無定形ポリアルファオレフィン(以下、「APAO」ともいう)等のオレフィン系樹脂、スチレン系ブロック共重合体(例えば、スチレン-イソプレン-スチレン系ブロックコポリマー(以下、「SIS」ともいう)、スチレン-ブタジエン-スチレン系ブロックコポリマー(以下、「SBS」ともいう)及びそれらの水素添加物等の合成ゴム、及びポリウレタン等が汎用されている。
【0004】
これらのホットメルト接着剤のなかで、エチレン系共重合体をベースポリマーとしたホットメルト接着剤は、製本及び包装等の紙加工分野及び木工分野に利用されることが多い。
ホットメルト接着剤を塗布する場合、ホットメルトアプリケーターという専用の塗布装置が用いられることが多い。ホットメルトアプリケーターは吐出口であるノズルを有しており、ホットメルト接着剤は約120~190℃に加熱され、ノズルの先端から吐出されて被着体に塗布される。ホットメルト接着剤を塗布する際、ノズルの先端から被着体までの間に、ホットメルト接着剤の糸状物が発生することがある。この糸状物は、ホットメルト接着剤の糸曳性に起因するものであり、ノズルや被着体を汚してしまう。従って、糸曳の少ないホットメルト接着剤の開発は、接着剤メーカーにとって重要な責務である。
【0005】
特許文献1~3は、糸曳の低減を目的とするエチレン系共重合体を含むホットメルト接着剤を開示する。
特許文献1のホットメルト接着剤は、エチレン/αオレフィン共重合体と、エチレンカルボン酸エステル共重合体を有する([請求項1][0046]~[0056]参照)。特許文献1のホットメルト接着剤によって、糸状物発生の問題は低減される。しかしながら、特許文献1のホットメルト接着剤の熱安定性は十分ではなく、更に熱安定性を向上させることが求められている。
【0006】
特許文献2は、エチレン-α-オレフィン共重合体、官能化エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むホットメルト接着剤を開示する([請求項1][0053]~[0067]参照)。特許文献2のホットメルト接着剤は、糸曳をある程度低減できるが、熱安定性が充分とは言えない。
特許文献3のホットメルト接着剤も、特許文献2と同様、官能化エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含んでおり([0063]~[0066]参照)、熱安定性が優れているとは言えない。
【0007】
近年、ホットメルト接着剤の糸曳低減に対するユーザーの要望は年々高くなってきており、特許文献1~3のホットメルト接着剤は、糸曳低減及び熱安定性について、ユーザーの高い要求性能を十分に満足しているとは言えない。
ホットメルト接着剤は、紙等の被着体への接着性に優れていることは当然であり、近年では、更に、被着体に塗布された後に短時間で硬化すること、すなわち、セットタイムが短いことが要求される。セットタイムが長いホットメルト接着剤を被着体へ塗布すると、接着剤の固化に時間がかかり、製品の生産性が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-177009号公報
【特許文献2】特開2019-26656号公報
【特許文献3】特開2019-34999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、糸曳を低減でき、熱安定性に優れ、紙への接着性に優れ、さらに、セットタイムの短いホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体、及び(C)粘着付与樹脂を含み、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体について、特定の構成単位の含有量が特定の範囲である場合、上述の課題を解決できるホットメルト接着剤が得られ、そのようなホットメルト接着剤が紙加工分野及び木工分野等に好適であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本明細書は、以下の実施形態を含む。
1.(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体、及び(C)粘着付与樹脂を含み、
(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は、(B1)(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量が2~24質量%のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む、ホットメルト接着剤。
2.(B1)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体が、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体及びエチレン/アクリル酸エチルから選ばれる少なくとも1種を含む、1に記載のホットメルト接着剤。
3.(C)粘着付与樹脂が、(C1)部分水添粘着付与樹脂及び(C2)完全水添粘着付与樹脂を含む、1または2に記載のホットメルト接着剤。
4.(C)粘着付与樹脂が、軟化点120℃未満の炭化水素樹脂及び軟化点120℃以上の炭化水素樹脂を含む、1~3のいずれか1つに記載のホットメルト接着剤。
5.(B1)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体のメルトフローレートが1~35g/10minである、1~4のいずれか1つに記載のホットメルト接着剤。
6.成分(A)~(C)の総量100質量部に対し、(B1)の含有量が1~10質量部である、1~5のいずれか1つに記載のホットメルト接着剤。
7.1~6 のいずれか1つに記載のホットメルト接着剤を有する紙製品。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、糸曳を低減でき、熱安定性及び紙への接着性に優れ、さらに、セットタイムが短く、製品の生産性向上に貢献できる。
本発明の実施形態のホットメルト接着剤をノズルから紙等の被着体へ塗布する際に、糸状物でノズルや被着体を汚すことがない。ホットメルト接着剤を貯蔵タンクに長期間保管しても、炭化物や沈殿物が発生せず、粘度上昇が抑制され、塗布作業に悪影響を及ぼすことがない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体及び(C)粘着付与樹脂を必須成分として含む。
尚、本明細書において「ホットメルト接着剤」とは、常温で固形であるが、加熱して融解することで流動性を有し、例えば、基材、被着体等の対象物に塗工することができ、冷却することで硬化し接着する接着剤をいう。
【0014】
<(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体>
本発明の実施形態において「(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体」とは、エチレンと炭素数3~20のオレフィンとの共重合体をいい、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得られる限り、特に制限されることはない。
「炭素数3~20のオレフィン」としては、具体的に、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、cis-2-ブテン、trans-2-ブテン、イソブチレン、cis-2-ペンテン、trans-2-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン及び2,3-ジメチル-2-ブテン等を例示できる。炭素数3~10のオレフィンが好ましく、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテンであることがより好ましく、プロピレン、ブテン、オクテンであることが更により好ましく、オクテンであることが特に好ましい。
【0015】
(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体は、メタロセン触媒で重合された共重合体であることが好ましい。本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、メタロセン触媒で重合された(A)共重合体(メタロセン系エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体)を含むことで、硬くなり、糸曳が発生し難くなる。
【0016】
(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体として、例えば、エチレンとオクテンとの共重合体(エチレン/オクテン共重合体)、エチレン、プロピレン、1-ブテンとの共重合体(エチレン/プロピレン/ブテン共重合体)、エチレンとプロピレンとの共重合体(エチレン/プロピレン共重合体)、エチレンとブテンとの共重合体(エチレン/ブテン共重合体)、エチレンとヘキセンとの共重合体(エチレン/ヘキセン共重合体)等が挙げられる。
特に、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体は、エチレンとオクテンとの共重合体、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンとブテンとの共重合体、又はエチレンとヘキセンとの共重合体を含むことが好ましく、エチレンとオクテンとの共重合体を含むことがより好ましい。(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体は、市販品を使用することができる。
【0017】
エチレン/オクテン共重合体として、例えば、ダウケミカル社製のアフィニティGA1900(商品名)、アフィニティGA1950(商品名)、アフィニティGA1875(商品名)、アフィニティGA1000R(商品名)、アフィニティEG8185(商品名)、アフィニティEG8200(商品名)、エンゲージ8137(商品名)、エンゲージ8180(商品名)、エンゲージ8400(商品名)等を例示できる。
エチレン/プロピレン/1-ブテン共重合体として、例えば、エボニックデグサ社製のベストプラスト730(商品名)、ベストプラスト708(商品名)等を例示できる。
エチレン/プロピレン共重合体として、例えば、イーストマンケミカル社製のEastoflex E1016PL-1、エクソンモービル社製のビスタマックス(商品名)シリーズ等を例示できる。
【0018】
エチレン/ブテン共重合体として、例えば、三井化学社製のタフマーA4085等を例示できる。
エチレン/ヘキセン共重合体として、例えば、東ソー社製のニポロンZ HM510R等が挙げられる。
このようなエチレンと炭素数3~20のオレフィンとの共重合体は、単独又は組み合わせて使用することができる。
本発明において、糸曳の低減を考慮すると、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体としては、エチレン/オクテン共重合体が好ましい。
【0019】
<(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体>
本発明の実施形態において、「(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体」とは、エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸エステルとの共重合体をいい、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に制限されることはない。
【0020】
本明細書において、「エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル」として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル等の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル及び酢酸アリル等のカルボン酸ビニル及びアリルエステル等を例示することができる。
本明細書では、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの双方を表す。
【0021】
本発明の実施形態において、「エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル」は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル等の(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、又は(メタ)アクリル酸ブチルを含むことがより好ましく、特に、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチルを含むことが望ましい。
【0022】
「(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体」として、例えば、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)、エチレンとカルボン酸ビニルとの共重合体(エチレン/カルボン酸ビニル共重合体)、エチレンとカルボン酸アリルとの共重合体(エチレン/カルボン酸アリル共重合体)が挙げられる。
【0023】
(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)を含むことが好ましく、エチレン/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、及びエチレン/(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル共重合体から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、エチレン/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、及びエチレン/(メタ)アクリル酸ブチル共重合体から選択される少なくとも1種を含むことが更により好ましく、特に、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、及び/又はエチレン/アクリル酸エチル共重合体を含むことが望ましい。
【0024】
本発明の実施形態では、「(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体」は、(B1)(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量が2~24質量%のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む。エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量は、3~24質量%であってよく、5質量%~24質量%であってよい。
成分(B1)の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量が2~24質量%であることによって、本発明の実施形態のホットメルト接着剤は熱安定性が著しく向上する。
【0025】
成分(B1)は、エチレン/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、及びエチレン/(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル共重合体から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体及びエチレン/アクリル酸エチルから選択される少なくとも1種を含むことが更に好ましく、特にエチレン/メタクリル酸メチル共重合体及び/又はエチレン/アクリル酸ブチル共重合体を含むことが好ましく、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体を含むことが最も望ましい。
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、成分(B1)が上記ポリマーの場合、糸曳を低減しつつ、熱安定性がより優れたものとなる。
【0026】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(B1)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むことで、糸曳をより低減することができ、さらに、優れた熱安定性を維持でき、紙への接着性に優れ、短いセットタイムを得ることができる。
【0027】
本明細書において、(B1)の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量とは、(B1)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体の総量に対し、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の質量%を示す。
(B1)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、エチレンに由来する化学構造と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する化学構造を有している。
「(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位」とは、(B1)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体が有する化学構造のうち、(メタ)アクリル酸エステルに由来する化学構造をいう。
例えば、(B1)メチルメタクリル酸メチルの含有量が20質量%のエチレン/メチルメタクリル酸メチル共重合体とは、その(B1)エチレン/メチルメタクリル酸メチル共重合体の100質量部中に、メチルメタクリル酸メチルに由来する化学構造が20質量部含まれることを意味する。
【0028】
本明細書では、(B1)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構成単位の含有量は、成分(B1)のプレスシートを用い、赤外線吸収スペクトル分析法により行われる。
例えば、(メタ)アクリル酸エステルがメタクリル酸メチルの場合、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体中のメタクリル酸メチルに由来する構成単位の含有量はJIS K7192に従い測定することができる。
赤外吸収スペクトルの特性吸収としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体に帰属されるピークを用い、吸光度をプレスシート厚みで補正して、コモノマー含有量を求める。例えば、(メタ)アクリル酸エステルが、メタクリル酸メチルの場合、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体のメタクリル酸メチル単位の含有量は、厚み0.3mmのプレスシートを作成し、赤外分光装置を用いて、赤外線吸収スペクトル分析法により測定することができる。赤外吸収スペクトルの特性吸収としては、メタクリル酸メチルに帰属される3448cm-1のピークを用い、下記式に従い、吸光度を厚みで補正し、含有量を求める。
MMA=4.1×log(I0/I)/t-5.3
〔式中、MMAはメタクリル酸メチル単位の含量(質量%)、Iは周波数3448cm-1での透過光強度、I0は周波数3448cm-1での入射光強度、tは測定試料シートの厚み(cm)を表わす。〕
【0029】
(B1)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の液相重合方法や高圧ラジカル重合方法などを挙げることができる。高圧ラジカル重合方法による成分(B1)の製造方法として、例えば、一般に槽型反応器又は管型反応器を用いて、ラジカル発生剤の存在下、重合圧力140MPa以上300MPa以下、重合温度100℃以上300℃以下の条件下でエチレンと(メタ)アクリル酸エステルを重合する方法があげられる。
また、メルトフローレートを調節するために、分子量調節剤として水素、メタン、及びエタンなどの炭化水素を用いることができる。
【0030】
(B1)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体のメルトフローレートは、ホットメルト接着剤の糸曳を考慮すると、1~35g/10minであることが好ましい。なお、このメルトフローレートは、JIS K7210に準拠して測定される190℃、2.16kg荷重で測定された値を用いる。
【0031】
(B1)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体として、市販品を使用することができる。そのような成分(B1)の市販品として、例えば、住友化学社製のアクリフト WH401-F(商品名)、アクリフト WH206-F(商品名)、アクリフト WD301-F(商品名)、アクリフト WD203-1(商品名)等;
アルケマ社製のロトリル17BA07N(商品名)、ロトリル24MA02N(商品名)、ロタダー4503(商品名)、ロタダー8200(商品名)等;ダウケミカル社製のNUC-6220(商品名);ダウケミカル社製のDPDJ-9169(商品名)等が挙げられる。
【0032】
(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は、(B2)その他のエチレン/カルボン酸エステル共重合体を含んでいても良い。(B2)その他のエチレン/カルボン酸エステル共重合体は、成分(B1)以外のエチレン/カルボン酸エステル共重合体であり、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位が2~24質量%でない(即ち、2質量%未満又は24質量%を超える)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレンと(メタ)アクリル酸エステルを除くエチレン性二重結合を有するカルボン酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸等)との共重合体(例えば、エチレン/イタコン酸エステル共重合体等);エチレンとカルボン酸ビニル(例えば、酢酸ビニル)との共重合体(エチレン/カルボン酸ビニル共重合体、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体);エチレンとカルボン酸アリル(例えば、酢酸アリル)との共重合体(エチレン/カルボン酸アリル共重合体、例えば、エチレン/酢酸アリル共重合体)等が挙げられる。
【0033】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体の他に、その他のエチレン系重合体を含んでも良い。その他のエチレン系重合体として、例えば、エチレン/カルボン酸共重合体、エチレン/カルボン酸無水物共重合体等が挙げられる。
【0034】
本明細書では、「エチレン/カルボン酸共重合体」とは、エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸との共重合体をいう。
「エチレン性二重結合を有するカルボン酸」とは、エチレン性二重結合とカルボキシル基を有する化合物であって、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができれば特に限定されることはない。具体的には、例えば、オレイン酸、リノール酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アクリル酸及びメタクリル酸等を例示できる。
エチレン/カルボン酸共重合体の具体例として、エチレンとアクリル酸との共重合体、エチレンとメタクリル酸との共重合体を挙げられる。
【0035】
「エチレン/カルボン酸無水物共重合体」は、エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物との共重合体をいう。
「エチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物」とは、2つのカルボキシル基が脱水縮合したカルボン酸無水物基を有する化合物であり、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができれば特に限定されることはない。具体的には、例えば、無水マレイン酸等を例示することができる。
エチレン/カルボン酸無水物共重合体の具体例として、エチレンと無水マレイン酸との共重合体が挙げられる。
【0036】
<(C)粘着付与樹脂>
(C)粘着付与樹脂は、ホットメルト接着剤に通常使用され、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば特に限定されることはない。本発明が目的とするホットメルト接着剤を考慮すると、(C1)部分水添粘着付与樹脂と、(C2)完全水添粘着付与樹脂の双方を含むことが好ましい。
本明細書において、(C1)部分水添粘着付与樹脂は粘着付与剤中の二重結合の一部に水素が付加されている粘着付与剤であり、(C2)完全水添粘着付与樹脂は粘着付与剤中の二重結合の全てに水素が付加されている粘着付与剤である。
(C1)部分水添粘着付与樹脂は(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体と相溶性が良く、(C2)完全水添粘着付与樹脂は(A)エチレン/炭素数が3~20のオレフィン共重合体との相溶性が良い。すなわち、(C)粘着付与樹脂が成分(C1)及び(C2)の双方を含むと、ホットメルト接着剤の相溶性が向上し、その結果、熱安定性が著しく向上する。
【0037】
(C)粘着付与樹脂として、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。これらの粘着付与樹脂は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色~淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。
【0038】
(C)粘着付与樹脂は、軟化点120℃未満の炭化水素樹脂と、軟化点120℃以上の炭化水素樹脂の双方を含むことが好ましい。本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、軟化点120℃未満の炭化水素樹脂と、軟化点120℃以上の炭化水素樹脂の双方を有することで、接着性をより向上させつつ、糸曳をより低減することができ、熱安定性もさらに優れたものとなる。尚、(C)粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K2207に準じて測定される。
【0039】
(C)粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として、例えば、エネオス社製のT-REZ HC103(商品名)、T-REZ HA103(商品名)T-REZ HA125(商品名)、エクソンモービル社製のECR5600(商品名)、丸善石油化学社製のマルカクリヤーH(商品名)、ヤスハラケミカル社製のクリアロンK100(商品名)、荒川化学社製のアルコンM100(商品名)、出光石油化学社製のアイマーブS100(商品名)、アイマーブY135(商品名)、アイマーブP125(商品名)、安原化学社製のクリアロンK4090(商品名)及びクリアロンK4100、エクソンモービル社製のECR231C(商品名)、ECR179EX(商品名)、イーストマンケミカル社製のリガライトR7100(商品名)を例示することができる。これらの市販の粘着付与樹脂は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0040】
(C1)部分水添粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として、例えば、エネオス社製のT-REZ HC103(商品名)、荒川化学社製のアルコンM100(商品名)が好ましく、(C2)完全水添粘着付与樹脂として、例えば、T-REZ HA103(商品名)T-REZ HA125(商品名)、出光石油化学社製のアイマーブP125(商品名)が好ましい。
【0041】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体、及び(C)粘着付与樹脂の合計100質量部当たり、(B1)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体は1~10質量部含まれることが好ましく、特に、2~8質量部含まれることが好ましく、2~7質量部含まれることが最も望ましい。
(B1)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体の含有量が上述の範囲である場合、本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、糸曳がより低減され、熱安定性、紙への接着性が高いレベルで向上し、セット性がより短縮される。
【0042】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体、及び(C)粘着付与樹脂の合計100質量部当たり、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体は、25~60質量部含まれることが好ましく、特に30~55質量部含まれることが好ましく、30~50質量部含まれることが最も望ましい。
(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体の含有量が上述の範囲である場合、本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、糸曳がより低減され、熱安定性、紙への接着性が高いいレベルで向上し、セット性がより短縮される。
【0043】
<(D)ワックス>
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、さらに、(D)ワックスを含むことが好ましい。尚、本明細書で「ワックス」とは、常温で固体、加熱すると液体となる重量平均分子量が10000未満の有機物であり、一般的に「ワックス」とされているものをいい、ワックス状の性質を有するものであれば、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に制限されるものではない。
【0044】
ワックスとして、例えば、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等を例示することができる。ワックスとして、市販品を使用することができ、ワックスは単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0045】
本明細書において、(D)ワックスは、フィッシャートロプシュワックスを含むことが好ましい。「フィッシャートロプシュワックス」とは、フィッシャートロプシュ法によって合成され、一般的にフィッシャートロプシュワックスとされているものをいう。フィッシャートロプシュワックスは、成分分子が比較的幅広い炭素数分布を持つワックスから成分分子が狭い炭素数分布を持つようにワックスを分取したものである。代表的なフィッシャートロプシュワックスとして、サゾールH1(商品名)、サゾールC105及びサゾールC80(商品名)を例示することができ、いずれもサゾールワックス社から市販されている。本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、フィッシャートロプシュワックスを含むことによって、熱安定性、さらには高温領域の接着強度により優れる。
【0046】
ワックスの融点は、例えば、60~160℃であってよく、65~150℃であってよい。
フィッシャートロプシュワックスの融点は、70~120℃であることが好ましい。ワックスの融点は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定された値をいう。具体的には、SIIナノテクノロジー社製のDSC6220(商品名)を用い、アルミ容器に試料を10mg秤量し、昇温速度10℃/minで測定して、融解ピークの頂点の温度を融点という。
【0047】
本発明の実施形態において、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体、(C)粘着付与樹脂及び(D)ワックスの合計100質量部当たり、(B1)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体は1~10質量部含まれることが好ましく、特に、2~10質量部含まれることが好ましく、2~6質量部含まれることが最も望ましい。
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(B1)エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体の含有量が上述の範囲である場合、糸曳がより低減され、熱安定性、紙への接着性、セット性が高いレベルで向上する。
【0048】
本発明の実施形態において、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体、(C)粘着付与樹脂及び(D)ワックスの合計100質量部当たり、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体は 20~50質量部含まれることが好ましく、特に、25~45質量部含まれることが好ましく、25~40質量部含まれることが最も望ましい。
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体の含有量が上述の範囲である場合、糸曳がより低減され、熱安定性、紙への接着性、セット性が高いレベルで向上する。
【0049】
本発明の実施形態において、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体、(C)粘着付与樹脂及び(D)ワックスの合計100質量部当たり、(C)粘着付与樹脂は30~60質量部含まれることが好ましく、特に、35~55質量部含まれることが好ましく、40~55質量部含まれることが最も望ましい。
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、(C)粘着付与樹脂の含有量が上述の範囲である場合、糸曳がより低減され、熱安定性、紙への接着性、セット性が高いレベルで向上する。
【0050】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、必要に応じて、更に各種添加剤を含んでもよい。そのような各種添加剤として、例えば、可塑剤、安定化剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤)、微粒子充填剤を例示することができる。
「可塑剤」は、ホットメルト接着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、成分(A)及び(B)と相溶し、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。可塑剤として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイルを挙げることができる。無色、無臭であるパラフィン系オイルが特に好ましい。
【0051】
可塑剤として市販品を用いることができる。例えば、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアS32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)、DNオイルKP-68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エッソ社製のPrimol352(商品名)を例示することができる。これらの可塑剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0052】
「安定化剤」とは、ホットメルト接着剤の熱、空気及び光等による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト接着剤の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。安定化剤として、例えば、酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。
【0053】
「紫外線吸収剤」は、ホットメルト接着剤の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防止するために使用される。酸化防止剤及び紫外線吸収剤は、一般的にホットメルト接着剤に使用されるものであり、後述する目的とする紙製品を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。
【0054】
「酸化防止剤」として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0055】
安定化剤として、市販品を使用することができる。例えば、住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)、スミライザーTPD(商品名)及びスミライザーTPS(商品名)、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガノックス1010(商品名)、イルガノックスHP2225FF(商品名)、イルガフォス168(商品名)及びイルガノックス1520(商品名)、ADEKAのアデカスタブAO-60(商品名)、城北化学社製のJF77(商品名)、JP-650(商品名)を例示することができる。これら安定化剤は、単独でも組み合わせて使用できる。
【0056】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、更に、微粒子充填剤を含むことができる。微粒子充填剤は、一般に使用されているものであれば良く、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に限定されることはない。「微粒子充填剤」として、例えば雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、澱粉等を例示できる。これらの形状は、好ましくは球状であり、その寸法(球状の場合は直径)については特に限定されるものではない。
【0057】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、一般的に知られているホットメルト接着剤の製造方法を用いて、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体、及び(C)粘着付与樹脂、更に必要に応じて(D)ワックス及び/又は上述の各種添加剤を配合して製造することができる。
例えば、上述の成分を所定量配合し、加熱溶融して製造することができる。目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、各成分を加える順序、加熱方法等は、特に制限されるものではない。
【0058】
ホットメルト接着剤を塗工する方法は、目的とする紙製品を得ることができる限り、特に制限されるものではないが、ホットメルトアプリケーターが広く利用される。ホットメルトアプリケーターとして、例えば、ノードソン社製のプロブルーP4メルター(商品名)、プロブルーP10メルター(商品名)等を例示することができる。
【0059】
塗工方法は、例えば、接触塗工、非接触塗工に大別される。「接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗工方法をいい、「非接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗工方法をいう。接触塗工方法として、例えば、スロットコーター塗工及びロールコーター塗工等を例示でき、非接触塗工方法として、例えば、螺旋状に塗工できるスパイラル塗工、波状に塗工できるオメガ塗工やコントロールシーム塗工、面状に塗工できるスロットスプレー塗工やカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工、線状に塗工できるビード塗工等を例示できる。
【0060】
ホットメルトアプリケーターで本発明の実施形態のホットメルト接着剤を塗工する場合(ホットメルトアプリケーターでホットメルト接着剤を地面と水平方向に吐出して、塗工する場合であっても)、ホットメルト接着剤の糸状物が殆ど吐出しなくなる。従って、被着体やアプリケーターが糸状物で汚れることがない。
【0061】
本発明の実施形態のホットメルト接着剤は、例えば、電子部品、木工、建築材料、衛生材料、紙製品等に幅広く利用されるが、紙製品を製造するために好適に使用することができ、紙製品用ホットメルト接着剤として有用である。
【0062】
本発明の実施形態の紙製品とは、上述のホットメルト接着剤を用いて製造された紙製品をいう。紙製品の種類については、上述のホットメルト接着剤を用いて製造される限り、特に限定されることはないが、具体的には、例えば、製本、カレンダー、ダンボール及びカートン等を例示できる。本発明の実施形態のホットメルト接着剤の特性を考慮すると、本発明の実施形態の紙製品として、ダンボール、カートン等の厚紙が特に有効である。
【実施例0063】
以下、本発明を更に詳細に、かつ、より具体的に説明することを目的として、実施例を
用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発
明を何ら制限するものではない。ホットメルト接着剤に配合する成分を以下に示す。
【0064】
(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体
(A1)エチレン/オクテン共重合体(1-オクテン含有量:35~37質量%、メルトフローレート:1000g/10min、ダウケミカル社製のアフィニティGA1900(商品名))
(A2)エチレン/オクテン共重合体(1-オクテン含有量:35~37質量%、メルトフローレート:500g/10min、ダウケミカル社製のアフィニティGA1950(商品名))
(A3)エチレン/オクテン共重合体(1-オクテン含有量:35~37質量%、メルトフローレート:1200g/10min、ダウケミカル社製のアフィニティGA1875(商品名))
(A4)エチレン/オクテン共重合体(1-オクテン含有量:30~40重量%、融点:68℃、メルトフローレート:660g/10min、ダウケミカル社製のアフィニティGA1000R(商品名))
(A5)エチレン/プロピレン共重合体(エチレン含有量:6.0質量%、融点:97℃、190℃溶融粘度:1200mPas、エクソンモービル社製のビスタマックス88880(商品名))
(A6)エチレン/ヘキセン共重合体(東ソー社製のニポロンZ HM510R(商品名))
【0065】
(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体
(B1)(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量が2~24質量%のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体
(B1-1)エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸メチル含有量:20質量%、メルトフローレート:20g/10min、住友化学社製のアクリフト WH401-F(商品名))
(B1-2)エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸メチル含有量:20質量%、メルトフローレート:2g/10min、住友化学社製のアクリフト WH206-F(商品名))
(B1-3)エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸メチル含有量:10質量%、メルトフローレート:7g/10min、住友化学社製のアクリフト WH301-F(商品名))
(B1-4)エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸メチル含有量:5質量%、メルトフローレート:2g/10min、住友化学社製のアクリフト WD203-1(商品名))
(B1-5)エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸メチル含有量:24質量%、メルトフローレート:2g/10min、アルケマ社製のロトリル24MA02N(商品名))
(B1-6)エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸メチル含有量:20質量%、メルトフローレート:8g/10min、アルケマ社製のロタダー4503(商品名))
(B1-7)エチレン/アクリル酸ブチル共重合体(アクリル酸ブチル含有量:17質量%、メルトフローレート:7g/10min、アルケマ社製のロトリル17BA07N(商品名))
(B1-8)エチレン/アクリル酸エチル共重合体(アクリル酸エチル含有量:20質量%、メルトフローレート:20g/10min、ダウケミカル社製のDPDJ-9169(商品名))
(B1-9)エチレン/アクリル酸エチル共重合体(アクリル酸エチル含有量:7質量%、メルトフローレート:4g/10min、ダウケミカル社製のNUC-6220(商品名))
(B1-10)エチレン/アクリル酸エチル共重合体(アクリル酸エチル含有量:6.5質量%、メルトフローレート:200g/10min、アルケマ社製のロタダー8200(商品名))
【0066】
(B2)成分(B1)以外のエチレン/カルボン酸エステル共重合体
(B2-1)エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸メチル含有量:32質量%、メルトフローレート:450g/10min、住友化学社製のアクリフト CM5022(商品名))
(B2-2)エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸メチル含有量:28質量%、メルトフローレート:150g/10min、住友化学社製のアクリフト CM5023(商品名))
(B2-3))エチレン/アクリル酸ブチル共重合体(アクリル酸ブチル含有量:35質量%、メルトフローレート:320g/10min、アルケマ社製のロトリル35BA320(商品名))
(B2-4)エチレン/アクリル酸ブチル共重合体(アクリル酸ブチル含有量:35質量%、メルトフローレート:40g/10min、アルケマ社製のロトリル35BA40(商品名))
(B2-5)エチレン/アクリル酸ブチル共重合体(アクリル酸ブチル含有量:28質量%、メルトフローレート:175g/10min、アルケマ社製のロトリル28BA175(商品名))
【0067】
(C)粘着付与樹脂
(C1)部分水添粘着付与樹脂
(C1-1)水添脂環族/芳香族共重合炭化水素樹脂(軟化点:103℃、エネオス社製のT-REZ HC103(商品名))
(C2)完全水添粘着付与樹脂
(C2-1)水添脂環族系炭化水素樹脂(軟化点:103℃、エネオス社製のT-REZ HA103(商品名))
(C2-2)水添脂環族系炭化水素樹脂(軟化点:125℃、エネオス社製のT-REZ HA125(商品名))
(C2-3)水添脂環族系炭化水素樹脂(軟化点:125℃、出光石油社製のアイマーブP125(商品名))
【0068】
(D)ワックス
(D1)フィッシャートロプシュワックス(融点:108℃、針入度:2、サゾール社製のサゾールH1(商品名))
(D2)フィッシャートロプシュワックス(融点:112℃、針入度:2、サゾール社製のサゾールC105(商品名))
(D3)フィッシャートロプシュワックス(融点:80℃、針入度:2、サゾール社製のサゾールC80(商品名))
(D4)パラフィンワックス(融点:69℃、針入度:12、日本精蝋社製のパラフィン155F(商品名))
(D5)マイクロクリスタンワックス(融点:84℃、針入度:12、日本精蝋社製のハイミック1080(商品名))
(D6)ポリエチレンワックス(融点:109℃、針入度:7、三井化学社製のハイワックス320P(商品名))
(D7)ポリプロピレンワックス(融点:140~148℃、針入度:1以下、三井化学社製のハイワックスNP105(商品名))
【0069】
(E)安定化剤
(E1)フェノール系酸化防止剤(ADEKA社製のアデカスタブAO-60(商品名))
(E2)リン系酸化防止剤(城北化学社製のJP650)
(E3)イオウ系酸化防止剤(住友化学社製のスミライザーTPS)
【0070】
上述の成分を表1~2に示す割合(質量部)で溶融混合した。万能攪拌機を用いて、各成分を約145℃で約1時間かけて溶融混合して、実施例1~13、及び比較例1~5のホットメルト接着剤を製造した。実施例及び比較例のホットメルト接着剤について、接着性、熱安定性、セット性及び糸曳性を、下記の方法を用いて評価した。
接着性は、Kライナーダンボールにホットメルト接着剤を塗布して、もう1枚のKライナーダンボールと張り合わせてサンプルを得た。熱安定性は、ホットメルト接着剤を150℃雰囲気下で1週間(168時間)保管し、粘度変化率及び炭化物の発生を確認した。セット性は、加圧時間を種々変えてサンプルを作製後、剥離試験をして評価した。糸曳性は、180℃条件下でホットメルト接着剤の吐出状態を確認した。以下に各評価の概要について記載する。
【0071】
<接着性>
(サンプル作製)
180℃に溶融させたホットメルト接着剤を、Kライナーダンボールに、塗工量2g/mの割合で塗工し、オープンタイムとして3秒経過後、プレス圧1kg/25cm2、セットタイム(加圧時間)として10秒の条件で、もう一枚のKライナーダンボールと貼り合わせて、サンプルを作製した。各々のホットメルト接着剤について、サンプルを、少なくとも3つ作製した。
(評価方法)
作製したサンプルを、60℃、23℃又は-10℃に設定した恒温槽中で、24時間養生した。その後、その雰囲気下にて、手剥離にて強制剥離した。全接着面積に占めるKライナーダンボールの破壊の割合を材破率(材料が破壊された割合)として定義して、Kライナーダンボールの接着面の状態を評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎ : 材破率が80%より高い
○ : 材破率が60%~80%
△ : 材破率が40%以上で、60%未満
× : 材破率が40%未満
【0072】
<熱安定性>
(サンプル作製)
100ccのガラス瓶に、50gの各々のホットメルト接着剤を入れ、それを150℃恒温槽中で168時間保管して、サンプルを準備した。
(評価方法)
150℃恒温槽中で168時間保管して得たホットメルト接着剤のサンプルを、目視で観察して、炭化物発生の有無、ホットメルト接着剤の分離状態等を確認した。評価基準は以下のとおりである。
炭化物の発生
◎ : 炭化物なし
○ : 炭化物がわずかにあり
△ : 炭化物があり
× : 炭化物が著しい
分離状態
◎ : 沈降物なし
○ : 沈降物がわずかにあり
△ : 炭化物があり
× : 沈降物が著しい
【0073】
<セット性>
(サンプル作製)
180℃に溶融させたホットメルト接着剤を、Kライナーダンボールに塗工量2g/mの割合で塗工後、オープンタイムとして3秒経過後、プレス圧1kg/25cm2で、セットタイム(加圧時間)を種々変えて、もう一枚のKライナーダンボールと貼り合わせて、サンプルを作製した。
(評価方法)
作製したサンプルを直ちに、メック社製のカネボウテスター(商品名)を用いて、垂直方向(90°で)に一定速度で強制剥離し、剥離強度を測定した。更に、剥離後のKライナーダンボールの状態を目視で観察した。剥離強度が6kgf/以上であり、かつ、Kライナー段ボールが材破する(材破率:40%以上)ための最短の時間をセットタイムとして、その時間を記録した。評価基準は以下のとおりである。
◎ : セットタイムが1.0秒未満
○ : セットタイムが1.0~1.5秒
× : セットタイムが1.5秒より長い
【0074】
<糸曳低減性>
ホットメルトガンの先端から20cm離れた被着体へホットメルト接着剤を垂直に間欠塗布した。ホットメルトガンと被着体との間の落下物の状態を目視にて観察し、糸曳性を評価した。
(測定条件)
温度設定:タンク、ホース、及びノズル全て180℃
ノズル径:14/1000インチ
ノズル:4orifice(吐出口の数:4)
塗出圧力:0.3MPa
塗出ショット数: 4つのorificeの各々について180ショット/1分間
評価基準は以下のとおりである。
◎ : 落下物の形状は粒状
○ : 落下物の形状は殆ど粒状であるが、わずかに糸状のものが混在
△ : 落下物の形状は、粒状と糸状が混在
× : 落下物の形状は糸状
【0075】
【0076】
【0077】
表1~2に示すように、実施例1~13のホットメルト接着剤は、(A)エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体、(B1)(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量が2~24質量%のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(C)粘着付与樹脂を含むので、接着性、熱安定性、セット性及び糸曳性の総合的なバランスに優れている。
【0078】
特に、実施例1~3のホットメルト接着剤は、より高いレベルで糸曳を低減しつつ、熱安定性が向上している。実施例のホットメルト接着剤は、紙加工分野、特にダンボールやカートン等の厚紙への塗布に有用である。
【0079】
これに対し、比較例1~5のホットメルト接着剤は、表2に示すように、成分(B1)を含まないため、接着性、熱安定性、糸曳低減性のいずれかの性能が著しく劣る。
本発明は、ホットメルト接着剤、及びそのホットメルト接着剤が塗工された紙製品を提供できる。本発明の実施形態の紙製品は、ダンボールやカートン等の厚紙から製造するものが特に有効である。