(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093033
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】減速機
(51)【国際特許分類】
F16H 57/029 20120101AFI20220616BHJP
F16H 57/031 20120101ALI20220616BHJP
F16J 13/10 20060101ALI20220616BHJP
F16J 15/10 20060101ALN20220616BHJP
【FI】
F16H57/029
F16H57/031
F16J13/10 B
F16J15/10 C
F16J15/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206096
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓造
(72)【発明者】
【氏名】下田 勝海
(72)【発明者】
【氏名】増田 大輝
(72)【発明者】
【氏名】青山 雅
(72)【発明者】
【氏名】橘田 槙
(72)【発明者】
【氏名】蔡 冠華
(72)【発明者】
【氏名】山田 展資
【テーマコード(参考)】
3J040
3J046
3J063
【Fターム(参考)】
3J040AA17
3J040BA02
3J040EA16
3J040FA05
3J040HA23
3J040HA30
3J046AA07
3J046BB10
3J046BC06
3J046BC11
3J063AA01
3J063AA25
3J063AA33
3J063AB02
3J063AC01
3J063BB02
3J063BB46
3J063CA01
3J063CD46
3J063CD52
(57)【要約】
【課題】減速機のハウジングとカバーとの間のシール性を向上させる。
【解決手段】減速機100は、開口部10を有するハウジング11と、ハウジング11の開口部10を封止するカバー12と、ハウジング11とカバー12との間に圧縮して設けられ両者間を封止するシール部材13と、を備え、カバー12は、外周面12fに環状に設けられハウジング11の内周面11bに圧入される圧入部12cを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速機であって、
開口部を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記開口部を封止するカバーと、
前記ハウジングと前記カバーとの間に圧縮して設けられ両者間を封止するシール部材と、を備え、
前記カバーは、外周面に環状に設けられ前記ハウジングの内周面に圧入される圧入部を有することを特徴とする減速機。
【請求項2】
請求項1に記載の減速機であって、
前記圧入部は、前記カバーの前記外周面から突出して設けられる突起であることを特徴とする減速機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の減速機であって、
前記シール部材は、前記カバーの前記外周面と前記ハウジングの前記内周面との間に設けられ、
前記圧入部は、前記シール部材よりも前記開口部側に設けられることを特徴とする減速機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の減速機であって、
前記カバーは、前記圧入部のみにより前記ハウジングに固定されることを特徴とする減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の減速機では、減速機を収容するハウジングに、カバーが複数のボルトにより締結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような減速機では、ハウジングとカバーとをシールするために、Oリング等のシール部材が設けられる。しかしながら、シール部材のみでは、ハウジングとカバーとの間で高いシール性を得られない可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、減速機のハウジングとカバーとの間のシール性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、減速機であって、開口部を有するハウジングと、ハウジングの開口部を封止するカバーと、ハウジングとカバーとの間に圧縮して設けられ両者間を封止するシール部材と、を備え、カバーは、外周面に環状に設けられハウジングの内周面に圧入される圧入部を有することを特徴とする。
【0007】
この発明では、圧入部はハウジングの内周面に圧入されるため、圧入部によってハウジングとカバーとの間がシールされるため、ハウジングとカバーとの間は、シール部材に加えてカバーの圧入部によってもシールされる。よって、ハウジングとカバーとの間のシール性を向上させることができる。
【0008】
本発明は、圧入部は、カバーの外周面から突出して設けられる突起であることを特徴とする。
【0009】
この発明では、圧入部は突起であるため、小さい力で圧入部をハウジングの内周面に圧入することができる。よって、減速機の組み立てを容易にすることができる。
【0010】
本発明は、シール部材は、カバーの外周面とハウジングの内周面との間に設けられ、圧入部は、シール部材よりも開口部側に設けられることを特徴とする。
【0011】
この発明では、カバーの圧入部がハウジングの開口部側に設けられる。これにより、シール部材が異物と接触し劣化することが抑制される。よって、ハウジングとカバーとの間のシール性を向上させることができる。
【0012】
本発明は、カバーは、圧入部のみによりハウジングに固定されることを特徴とする。
【0013】
この発明では、カバーの圧入部によって、ハウジングとカバーとの間がシールされるとともに、ハウジングとカバーとが固定される。そのため、ハウジングとカバーを固定するための締結部材を設ける必要がない。よって、減速機の部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、減速機のハウジングとカバーとの間のシール性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る減速機の部分断面図である。
【
図2】ハウジングとカバーとの固定部の拡大断面図である。
【
図4】変形例に係るカバーの
図3に対応する拡大断面図である。
【
図5】変形例に係るハウジングとカバーとの固定部の
図2に対応する拡大断面図である。
【
図6】変形例に係るハウジングとカバーとの固定部の
図2に対応する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る減速機100について説明する。本実施形態では、減速機100が、電動パワーステアリング装置に用いられる場合について説明する。
【0017】
電動パワーステアリング装置は、ドライバによるハンドルの操舵を補助する回転トルクとして、電動モータ(図示せず)の駆動力を、減速機100によって減速してラック軸(図示せず)に付与する。
【0018】
図1に示すように、減速機100は、電動モータからの駆動力が入力されるウォームシャフト1と、ウォームシャフト1と噛み合うウォームホイール2と、ウォームホイール2と一体に回転するピニオン軸3と、ピニオン軸3に形成されラック軸と噛み合うピニオン4と、ピニオン軸3を回転自在に支持する軸受5,6と、を備える。
【0019】
電動モータからの駆動力は、ウォームシャフト1,ウォームホイール2,ピニオン軸3,及びピニオン4を通じてラック軸に伝達され、ドライバの操舵力をアシストするように作用する。
【0020】
また、減速機100は、開口部10を有するハウジング11と、ハウジング11の開口部10を封止するカバー12と、ハウジング11とカバー12との間に圧縮して設けられ両者間を封止するシール部材13と、を備える。ハウジング11とカバー12とは、締結部材としての複数のボルト14によって固定される。ハウジング11の端面には、ボルト14が締結される締結穴11aが設けられる。ハウジング11は、例えばアルミニウムなどの金属によって形成される。
【0021】
本実施形態では、ハウジング11の開口部10は円状であり、カバー12は、開口部10を封止するように円板状に形成される。カバー12は、例えば樹脂製である。カバー12は、金属製であってもよい。
【0022】
図1,2に示すように、カバー12は、ハウジング11の開口部10に挿入される本体部12aと、本体部12aの外周面12fから径方向に突出して形成される環状のフランジ部12bとを有する。本体部12aの外周面12fには、ハウジング11の内周面11bに圧入される環状の圧入部12c(
図2参照)と、シール部材13が収容される環状の収容溝12dと、が設けられる。フランジ部12bには、ボルト14が挿通する挿通孔12eが形成される。挿通孔12eには、金属製のカラー15(
図2参照)が挿入される。
【0023】
本体部12aは、外径がハウジング11の内周面11bの内径と略同一の円板状に形成される。圧入部12cは、本体部12aの外周面12fから突出して設けられる突起であり、本実施形態では断面は半円状である。圧入部12cは、ハウジング11の内周面11bに対して締め代を有する。そのため、本体部12aがハウジング11の開口部10に挿入されると、圧入部12cはハウジング11の内周面11bによって径方向に潰されて、内周面11bに密着した状態となる。フランジ部12bは、ボルト14の締結力により、ハウジング11の端面に押圧されて固定される。
【0024】
シール部材13は、例えばOリング等の環状の弾性部材であり、ハウジング11の内周面11bとカバー12の収容溝12dとの間に径方向に圧縮して設けられる。つまり、収容溝12dは、シール部材13を収容した状態で、シール部材13が露出する深さに形成される。
【0025】
減速機100では、カバー12の圧入部12cがハウジング11の内周面11bに圧入されるため、圧入部12cが内周面11bに密着し、圧入部12cによってハウジング11とカバー12との間がシールされる。よって、ハウジング11とカバー12との間は、シール部材13に加えてカバー12の圧入部12cによってもシールされる。そのため、ハウジング11とカバー12との間のシール性を向上させることができる。
【0026】
また、圧入部12cは、ハウジング11の内周面11bに圧入されることにより、径方向に力が作用する。つまり、圧入部12cには、周方向の位置によらず、一定の力が作用する。そのため、圧入部12cが全周にわたって均一に潰されて、圧入部12cと内周面11bとが密着する。そのため、ハウジング11とカバー12との間のシール性をより向上させることができる。
【0027】
したがって、例えば、品質試験等で減速機100に塩水を噴霧した場合であっても、ハウジング11とカバー12との間のシール性が高いため、ハウジング11内に塩水が侵入してアルミニウム製のハウジング11が腐食することを防止することができる。
【0028】
また、圧入部12cは、シール部材13よりも開口部10側に設けられる。つまり、ハウジング11とカバー12との間からハウジング11内へ侵入しようとする異物や液体は、シール部材13よりも先に圧入部12cに接触する。これにより、シール部材13が異物や液体と接触し劣化することが抑制される。よって、ハウジング11とカバー12との間のシール性を向上させることができる。
【0029】
さらに、圧入部12cは、カバー12の一部として設けられるため、減速機100に別の部材を設けることなく、ハウジング11とカバー12との間のシール性を向上させることができる。また、カバー12の射出成型時に圧入部12cも一緒に成形することで、圧入部12cのない従来のカバーから製造コストを増やすことなく、カバー12を製造することができる。
【0030】
以上の本実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0031】
減速機100では、カバー12の圧入部12cがハウジング11の内周面11bに圧入されるため、ハウジング11とカバー12との間は、シール部材13に加えてカバー12の圧入部12cによってもシールされる。よって、ハウジング11とカバー12との間のシール性を向上させることができる。
【0032】
圧入部12cは、ハウジング11の内周面11bに圧入されるため、圧入部12cが全周にわたって均一に潰されて、圧入部12cと内周面11bとが密着する。そのため、ハウジング11とカバー12との間のシール性を向上させることができる。
【0033】
圧入部12cは、カバー12の一部として設けられるものであるため、減速機100に別の部材を設けることなく、ハウジング11とカバー12との間のシール性を向上させることができる。また、カバー12の射出成型時に圧入部12cも一緒に成形することで、圧入部12cのない従来のカバーから製造コストを増やすことなく、カバー12を製造することができる。
【0034】
シール部材13は、カバー12の外周面12fとハウジング11の内周面11bとの間に設けられ、圧入部12cは、シール部材13よりも開口部10側に設けられるため、シール部材13が異物と接触し劣化することが抑制される。よって、ハウジング11とカバー12との間のシール性を向上させることができる。
【0035】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0036】
<変形例1>
上記実施形態では、圧入部12cは断面が半円状の突起であり、突起の数は一つである。しかし、圧入部12cの数及び形状は、ハウジング11の開口部10の内径に対して締め代を有する構成であればよい。例えば、
図3に示すように、突起が軸方向に離れて二個や二個以上の複数個設けられてもよい。突起の数が増えることにより、ハウジング11とカバー12との間をシールする箇所が増え、ハウジング11とカバー12との間のシール性を向上させることができる。また、突起の形状は、断面が三角形状であってもよく、突起の数が複数個である場合には、断面が半円状の突起と断面が三角形状の突起の両方が混在してもよい。
【0037】
また、
図4に示すように、圧入部12cは、本体部12aの外周面12fの一部もしくは全体に、ハウジング11の内周面11bに対して傾斜して形成されるテーパ面であってもよい。なお、
図4では、圧入部12cの傾斜を誇張して記載している。これらの構成であっても、ハウジング11とカバー12との間が、シール部材13に加えてカバー12の圧入部12cによってもシールされるため、ハウジング11とカバー12との間のシール性を向上させることができる。しかしながら、圧入部12cがハウジング11の内周面11bに対して傾斜したテーパ面である構成では、圧入部12cとハウジング11の内周面11bとの接触面積が大きい。これに対し、
図1,2に示した上記実施形態では、圧入部12cは突起であるため、圧入部12cがテーパ面である構成と比較して、圧入部12cとハウジング11の内周面11bとの接触面積が小さい。そのため、小さい力で圧入部12cをハウジング11の内周面11bに圧入することができる。よって、減速機100の組み立てを容易にすることができる。さらに、圧入部12cを圧入する力が小さく済むため、減速機100の製造において当該工程を行う装置は、圧入部12cを圧入するために大きな力を必要としない。そのため、当該装置の能力を下げることができるため、減速機100の製造コストを低減することができる。なお、圧入部12cは、ハウジング11の内周面11bに対して傾斜するテーパ面である外周面12fに形成されてもよい。
【0038】
<変形例2>
上記実施形態では、シール部材13はハウジング11の内周面11bとカバー12の収容溝12dとの間に径方向に圧縮して設けられる。しかし、
図5に示すように、シール部材13は、ハウジング11とカバー12との間に軸方向に圧縮して設けられてもよい。具体的には、ハウジング11の端面にはシール部材13を収容する収容溝11eが設けられ、シール部材13は、収容溝11eとフランジ部12bとの間に軸方向に圧縮して設けられる。しかしながら、この構成では、シール部材13は各ボルト14の締結力によって軸方向に圧縮される。そのため、ボルト14の配置や各ボルト14の締結力の違いなどにより、シール部材13に軸方向に作用する力がシール部材13の周方向の位置によって異なり、シール部材13が全周にわたって軸方向に均一に圧縮されず、シール部材13によるシール性が不安定となるおそれがある。これに対し、
図1,2に示した上記実施形態では、シール部材13がハウジング11の内周面11bとカバー12の収容溝12dとの間に径方向に圧縮して設けられるため、ボルト14の配置や各ボルト14の締結力の違いなどに関わらず、シール部材13が全周にわたって径方向に均一に圧縮され、シール部材13によるシール性が安定する。
【0039】
<変形例3>
上記実施形態では、ハウジング11とカバー12とはボルト14によって固定される。しかし、
図6に示すように、ボルト14は設けられなくてもよい。つまり、カバー12は、圧入部12cのみによりハウジング11に固定されてもよい。この場合、カバー12の圧入部12cによって、ハウジング11とカバー12との間がシールされるとともに、ハウジング11とカバー12とが固定される。そのため、ハウジング11とカバー12を固定するためのボルト14等の締結部材を設ける必要がなく、減速機100の部品点数を削減することができる。
【0040】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0041】
減速機100は、開口部10を有するハウジング11と、ハウジング11の開口部10を封止するカバー12と、ハウジング11とカバー12との間に圧縮して設けられ両者間を封止するシール部材13と、を備え、カバー12は、外周面12fに環状に設けられハウジング11の内周面11bに圧入される圧入部12cを有する。
【0042】
この構成では、圧入部12cはハウジング11の内周面11bに圧入されるため、圧入部12cによってハウジング11とカバー12との間がシールされるため、ハウジング11とカバー12との間は、シール部材13に加えてカバー12の圧入部12cによってもシールされる。よって、ハウジング11とカバー12との間のシール性を向上させることができる。
【0043】
また、圧入部12cは、カバー12の外周面12fから突出して設けられる突起である。
【0044】
この構成では、圧入部12cは突起であるため、小さい力で圧入部12cをハウジング11の内周面11bに圧入することができる。よって、減速機100の組み立てを容易にすることができる。
【0045】
また、シール部材13は、カバー12の外周面12fとハウジング11の内周面11bとの間に設けられ、圧入部12cは、シール部材13よりも開口部10側に設けられる。
【0046】
この構成では、カバー12の圧入部12cがハウジング11の開口部10側に設けられる。これにより、シール部材13が異物と接触し劣化することが抑制される。よって、ハウジング11とカバー12との間のシール性を向上させることができる。
【0047】
また、カバー12は、圧入部12cのみによりハウジング11に固定される。
【0048】
この構成では、カバー12の圧入部12cによって、ハウジング11とカバー12との間がシールされるとともに、ハウジング11とカバー12とが固定される。そのため、ハウジング11とカバー12を固定するための締結部材を設ける必要がない。よって、減速機100の部品点数を削減することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0050】
上記実施形態では、電動パワーステアリング装置の減速機100に本発明を適用する例について説明したが、コンベア、ウィンチ、工作機械、建設機械等の種々の機械の減速機に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10・・・開口部、11・・・ハウジング、11b・・・内周面、12・・・カバー、12c・・・圧入部(突起、テーパ面)、12f・・・外周面、13・・・シール部材、100・・・減速機