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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093036
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】ろ過装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/12 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
C12M1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206100
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤司 昭
(72)【発明者】
【氏名】井土 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】榎本 周一
(72)【発明者】
【氏名】竹▲崎▼ 潤
(72)【発明者】
【氏名】多田 千佳
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雅也
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA09
4B029BB02
4B029CC02
4B029DA04
4B029DB10
4B029DF05
4B029DG06
4B029GB05
4B029HA05
(57)【要約】
【課題】微生物培養液のろ過液を微生物培養槽外へ排出するために使用されるポンプの動力を小さくするとともに、微生物培養液に含まれる懸濁物質がろ過体の表面に強固に付着することを抑制し、洗浄の負担や頻度を低減することができるろ過装置を提供する。
【解決手段】微生物培養液11を収容した微生物培養槽10内に設置されるろ過装置1であって、微生物培養液11をろ過する平均孔径が1μm以上1mm以下の複数の細孔を有するろ過体であって、ろ過された微生物培養液11のろ過液を収容するろ過体2と、ろ過体2に収容された前記ろ過液を前記微生物培養槽10外に排出するろ過液排出部3と、を備え、ろ過体2は、その上端部2aが前記微生物培養液11の液面よりも上方に位置するように、微生物培養液11に浸漬される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物培養液を収容した微生物培養槽内に設置されるろ過装置であって、
前記微生物培養液をろ過する平均孔径が1μm以上1mm以下の複数の細孔を有するろ過体であって、ろ過された前記微生物培養液のろ過液を収容するろ過体と、
前記ろ過体に収容された前記ろ過液を前記微生物培養槽外に排出するろ過液排出部と、
を備え、
前記ろ過体は、その上端部が前記微生物培養液の液面よりも上方に位置するように、前記微生物培養液に浸漬されることを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
請求項1に記載のろ過装置において、
前記ろ過体は、鉛直方向を軸として回転することを特徴とするろ過装置。
【請求項3】
請求項2に記載のろ過装置において、
前記ろ過体は、前記上端部に開口部を有する有底円筒形状に形成されており、
前記ろ過液排出部は、前記開口部に非接触で挿通されたろ過液排出管を有することを特徴とするろ過装置。
【請求項4】
請求項3に記載のろ過装置において、
前記ろ過体の側面及び/又は底面に沿って配置されたスクレーパーを前記ろ過体の外側位置及び/又は内側位置に有することを特徴とするろ過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物培養液のろ過に用いられるろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リグノセルロース系バイオマスは、植物細胞の細胞壁、即ち植物繊維の主成分であり、地球上に多く存在する有機炭素源であることから、石油などの化学燃料に代わるエネルギー資源として注目されている。リグノセルロース系バイオマスを原料としてメタンを生成する過程において、メタン発酵の前処理として、牛の第一胃液(ルーメン液)に存在するルーメン微生物(リグノセルロース分解細菌)の微生物培養液を利用してリグノセルロースを分解し、メタン発酵の基質となる揮発性脂肪酸(VFA:Volatile Fatty Acid)を生産することが知られている。微生物培養槽内において、リグノセルロース系バイオマスの分解を行うリグノセルロース分解細菌の増殖を促進させるために、固形物滞留時間(SRT:Solids Retention Time)と水理学的滞留時間(HRT:Hydraulic Retention Time)を制御する必要がある。SRTとHRTの制御は、微生物培養液からろ過液を分離し、ろ過液の排出量と懸濁液の排出量とを個別に調整することにより行うことができる。微生物培養液からろ過液を分離するために、例えば、廃水処理の活性汚泥と水とを分離する膜分離活性汚泥法(MBR:Membrane Bioreactor)に使用される分離膜を用いることができる(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1、2には、活性汚泥を膜分離により固液分離する際に分離膜の膜表面に付着して堆積する汚濁物質を、曝気により除去し、詰まり(ファウリング)を抑制する膜分離活性汚泥装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-62646号公報
【特許文献2】特開2020-89831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2の膜分離活性汚泥装置において、分離膜全体が液槽に浸漬した状態で設置されることから、分離膜内部が密閉状態となり、ろ過液をポンプで系外に排出する際、分離膜内部が陰圧となるため、ポンプの動力が大きくなるという問題があった。また、曝気に関わる電力消費量が大きいという問題があった。さらに、曝気では除去することのできない強固に付着した汚れ等については、詰まり(ファウリング)対策として、薬品を使用して洗浄したり、分離膜を装置から取り外して洗浄したりする等の操作を比較的頻繁に行う必要があり、また、その洗浄の操作が煩雑であるといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、微生物培養液のろ過液を微生物培養槽外へ排出するために使用されるポンプの動力を小さくするとともに、微生物培養液に含まれる懸濁物質がろ過体の表面に強固に付着することを抑制し、洗浄の負担や頻度を低減することができるろ過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のろ過装置は、微生物培養液を収容した微生物培養槽内に設置されるろ過装置であって、前記微生物培養液をろ過する平均孔径が1μm以上1mm以下の複数の細孔を有するろ過体であって、ろ過された前記微生物培養液のろ過液を収容するろ過体と、前記ろ過体に収容された前記ろ過液を前記微生物培養槽外に排出するろ過液排出部と、を備え、前記ろ過体は、その上端部が前記微生物培養液の液面よりも上方に位置するように、前記微生物培養液に浸漬されることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、ろ過体の上端部が微生物培養液の液面の上方に位置されているため、ろ過体の内部が外部に対して開放状態であり、ろ過体の内外が等圧になっている。これにより、ろ過体の内部に収容された微生物培養液のろ過液をろ過液排出部により微生物培養槽外に排出すると、ろ過体に収容されたろ過液の液面の高さ位置が、微生物培養槽内の微生物培養液の液面の高さ位置よりも低くなり、液面の高低差に起因した圧力差によって、微生物培養液がろ過体を通過してろ過され、ろ過液となってろ過体の内部に収容される。そのため、ろ過体全体を微生物培養液に浸漬した状態でろ過液を外部に排出する場合のように、ろ過体の内部を減圧するよりも、ろ過液が高い圧力でろ過されないことから、ろ過液を微生物培養槽外へ排出するためのポンプの動力を小さくすることができる。また、微生物培養液中に含まれる懸濁物質が、ろ過体に強固に付着しにくく、付着しても除去されやすいため、目詰まりを防ぐことができる。その結果、ろ過装置を微生物培養槽外に取り出して洗浄するなどの大掛かりな洗浄の負担やその頻度を低減することができ、ろ過装置を大規模な微生物培養槽に適用した場合であっても、ランニングコストを削減することができる。
【0009】
また、本発明は、上記ろ過装置において、前記ろ過体は、鉛直方向を軸として回転することを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、ろ過体の回転による遠心力により、微生物培養液に含まれる懸濁物質が、ろ過体に強固に付着するのを抑制することができ、付着しても除去されやすいため、目詰まりを防ぐことができる。また、ろ過体を回転することで、微生物培養液を攪拌することができるため、微生物の培養効率が向上し、微生物培養液中に含まれる被処理物の分解反応をより促進させることができる。
【0011】
また、本発明は、上記ろ過装置において、前記ろ過体は、前記上端部に開口部を有する有底円筒形状に形成されており、前記ろ過液排出部は、前記開口部に非接触で挿通されたろ過液排出管を有することを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、ろ過体の開口部に非接触でろ過液排出管を挿通させることによって、ろ過体とろ過液排出管とを連結させる必要がないため、ろ過液排出管を固定した状態で、ろ過体のみを回転させることができる。また、ろ過体を有底円筒形状とすることにより、ろ過体が回転しやすくなるとともに、ろ過体の側面にかかる圧力が均等となるため、ろ過体の破損や劣化を低減することができる。
【0013】
また、本発明は、上記ろ過装置において、前記ろ過体の側面及び/又は底面に沿って配置されたスクレーパーを前記ろ過体の外側位置及び/又は内側位置に有することを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、ろ過体に付着した固形物をスクレーパーによって掻き出して除去することができるため、ろ過体の目詰まりを防ぐことができる。その結果、ろ過装置を微生物培養槽外に取り出して洗浄するなどの大掛かりな洗浄の負担やその頻度をより低減することができ、ろ過装置を大規模な微生物培養槽に適用した場合であっても、ランニングコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】微生物培養槽内に設置された本実施形態に係るろ過装置を示す概略図である。
図2図1に示すろ過体、及びろ過体にスクレーパーを配置した例を示す概略図である。
図3】本実施形態に係るろ過装置が設置された微生物培養槽をリグノセルロース分解システムに使用した例を示す概略図である。図3(a)は3相型のプロセスにより構成されるリグノセルロース分解システム、図3(b)は2相型のプロセスにより構成されるリグノセルロース分解システムを示す。
図4】微生物培養槽に設置された本実施形態に係るろ過装置の例を示す図である。図4(a)は、図3(a)に示す3相型のリグノセルロース分解システムを構成する微生物培養槽に設置されたろ過装置を示す図である。図4(b)は、図3(b)に示す2相型のリグノセルロース分解システムを構成する微生物培養槽兼分解槽に設置されたろ過装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るろ過装置に関する実施形態や図面について、以下に具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載されている構成に限定されることを意図しない。
【0017】
(ろ過装置の構成)
図1を参照しつつ、微生物培養槽10内に設置された本実施形態に係るろ過装置1について説明する。図1に示すように、ろ過装置1は、微生物培養液11を収容する微生物培養槽10内に設置される。微生物培養槽10は、微生物の培養が行われるほか、微生物の培養と被処理物の分解とが一槽内で行われる微生物培養槽兼分解槽110であってもよい。ろ過装置1は、微生物培養液11のろ過液を収容するろ過体2と、ろ過体2に収容されたろ過液を槽外に排出するろ過液排出部3とを備えている。ろ過体2は、平均孔径が1μm以上1mm以下の複数の細孔を有するろ過体である。ろ過体2は、その上端部2aが、微生物培養液11の液面よりも上方に位置するように、微生物培養液11に浸漬される。ろ過体2の上端部2aは、ろ過体2を回転させたり、攪拌翼60で微生物培養液11を攪拌したりしても、ろ過体2の上面から微生物培養液11がろ過体2の内部に流入しない程度に、微生物培養液11の液面より上方に位置していればよい。ろ過体2は、その鉛直方向を軸として回転させる場合、モーターMにより1~60rpmの緩速回転で回転させることが好ましい。また、攪拌翼60を使用する場合、ろ過体2と攪拌翼60とが同期して回転してもよく、夫々が逆方向に回転してもよいが、微生物培養液11に対流を生じさせ、ろ過体2への固形物の付着をより抑制させるためには、夫々が逆方向に回転することが好ましい。
【0018】
微生物培養液11には懸濁物質(SS:Suspended Solid)が含まれており、懸濁物質には増殖速度が緩やかな微生物が多く付着している。微生物培養槽10から、ろ過液がろ過液排出部3により排出される量と懸濁液が懸濁液排出部5により排出される量とを適宜調整し、固形物滞留時間(SRT:Solids Retention Time)と水理学的滞留時間(HRT:Hydraulic Retention Time)を制御することで、被処理物の分解を行う微生物の増殖を促進させることができる。また、微生物培養液11には被処理物と微生物との反応により生産される分解物が含まれるが、分解反応が進行し、その分解物の濃度が上昇すると、微生物培養液11のpHが変化したり、浸透圧が上昇したりすることにより、微生物の存在数量や機能が変化する虞がある。そのため、微生物培養液11のろ過液を槽外に排出し、緩衝剤として人工培地を微生物培養液11に添加することにより、微生物培養液11のpHや浸透圧を調整することができる。
【0019】
(ろ過体)
図2は、図1に示すろ過体、及びろ過体にスクレーパーを配置した例を示す概略図である。ろ過体2において、複数の細孔を有する部分は破線で示される。ろ過体2は、懸濁物質を多く含む微生物培養液11から分離されたろ過液をその内部に収容する。ろ過体2は、図2のNo.1、3~6に示すように、ろ過体2の側面のみが複数の細孔を有してもよく、図2のNo.2、7~14に示すように、ろ過体2の側面と底面、つまり全体が複数の細孔を有してもよい。ろ過体2は、ろ過液を収容するために、その内部が空洞の構造となっている。ろ過体2の形状は有底のものであればよく、スクレーパー4をろ過体2に配置しないNo.1及び2については、円筒形状、六角柱、四角柱、三角柱、円錐形状、三角錐形状、球状のような定形のものであってもよく、袋状のような不定形のものであってもよい。スクレーパー4をろ過体2に配置するNo.3~14については、ろ過体2の形状を円筒形状とすることが好ましい。また、ろ過体2の上面は、ろ過液排出管3aがろ過体2と非接触で挿通されるように開口部2bが設けられていることが好ましい。
【0020】
ろ過体2の有する複数の細孔の平均孔径は、好ましくは1μm以上1mm以下であり、より好ましくは5μm以上1mm以下であり、さらに好ましくは10μm以上1mm以下である。また、ろ過体2の基材として、例えば、網のような糸状の材料を織って形成されるものを使用してもよく、この場合、16メッシュ以上(目開き1.00mm以下)の網目を有するものを使用することが好ましい。ろ過体2の有する複数の細孔の平均孔径が1μm未満であると、ろ過液がろ過体2の内部に一定量収容されるまでに時間を要したり、高い圧力をかけてろ過液を吸引したりする必要があり、ポンプPの動力が大きくなってコストがかかるのみならず、目詰まりが生じる虞がある。一方で、ろ過体2の有する複数の細孔の平均孔径が1mmを超えると、微生物培養液11に含まれる懸濁物質がろ過体2の内部に流入するため、固液分離が不十分となり、SRTとHRTの制御ができなくなる虞がある。そのため、微生物が多く付着している懸濁物質が槽外へ排出され、微生物培養槽10内において、被処理物の分解を行う微生物の増殖を促進させることが困難となる虞がある。
【0021】
複数の細孔を有するろ過体2の素材としては、PVDF、塩素化ポリエチレン、PP、PTFEのような有機系材料、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等のセラミック、ステンレスのような無機系材料を使用してもよく、耐久性に優れた素材であれば上記の素材に限定しない。ろ過体は、単層構造で構成されていてもよく、二層、三層以上の多層構造となるように構成されていてもよい。また、ろ過体2を二層構造とする場合、外側のろ過体2の有する複数の細孔の平均孔径と内側のろ過体2の有する複数の細孔の平均孔径とを異なる大きさとしてもよい。
【0022】
(ろ過液排出部)
図1に示すように、ろ過液排出部3は、ろ過体2の内部に収容されたろ過液を槽外に排出するほか、ろ過液の一部を人工培地と混合するために還流する。ろ過液排出管3aは、ろ過体2の開口部2bに非接触で挿通されていることが好ましい。ろ過液排出管3aがろ過体2と非接触であれば、ろ過液排出管3aを固定したまま、ろ過体2を回転させることが可能となる。
【0023】
(スクレーパー)
スクレーパー4は、ろ過体2に付着した固形物を掻き出して除去し、ろ過体2の目詰まりを防ぐために配置される。スクレーパー4の配置位置については、特に限定しないが、図2のNo.3~14に示すように、ろ過体2の側面や底面に沿って、外側位置や内側位置に配置してもよい。表1及び図1に、ろ過体2の構造とスクレーパー4の配置位置の例を示す。表1におけるNo.1~14は、図2におけるNo.1~14に対応する。
【0024】
【表1】
【0025】
スクレーパー4の配置位置と形状については、No.3、7に示すように、ろ過体2の一端の外側側面の鉛直方向に沿うI字型のスクレーパー4を1ヶ所配置していてもよく、No.4、8に示すように、ろ過体2の左右両端の外側側面の鉛直方向に沿うI字型のスクレーパー4を2ヶ所配置してもよい。No.5、9のように、ろ過体2の一端の外側側面と他端の内側側面の鉛直方向に沿うI字型のスクレーパー4を2ヶ所配置してもよく、No.6、10のように、ろ過体2側面の一端の外側側面と内側側面の鉛直方向に沿うI字型のスクレーパー4を2ヶ所配置してもよい。No.11に示すように、ろ過体2の一端の外側側面の鉛直方向と外側底面の水平方向に沿うL字型のスクレーパー4を配置してもよく、No.12に示すように、ろ過体2の一端の内側側面の鉛直方向と内側底面の水平方向に沿うL字型のスクレーパーを配置してもよい。No.13に示すように、ろ過体の左右両端の外側側面の鉛直方向と外側底面の水平方向に沿うU字型のスクレーパー4を配置してもよく、No.14に示すように、ろ過体2の左右両端の内側側面の鉛直方向と内側底面の水平方向に沿うU字型のスクレーパー4を配置してもよい。
【0026】
スクレーパー4の素材としては、鉄、真鍮、ステンレスなどの合金のほか、強化プラスチックやセラミック等を使用してもよく、ろ過体2に付着した固形物をスクレーパー4によって掻き出して除去する機能を阻害するものでなければ、上記の素材に限定しない。また、スクレーパー4の形状は、例えば、平板、円柱、三角柱又は四角柱以上の多角柱を採用することができる。
【0027】
No.1、2においては、ろ過体2を回転体とすることができ、No.3~14においては、ろ過体2、スクレーパー4の何れか、又は両方を回転体とすることができる。ろ過体2とスクレーパー4の両方を回転体とする場合は、微生物培養液11に対流を生じさせ、ろ過体2への固形物の付着をより抑制させるために、夫々の回転方向が逆の方向になるように回転させることが好ましい。スクレーパー4は、ろ過体2の側面の外周を移動するように回転してもよく、スクレーパー4の鉛直方向を軸として回転してもよい。さらに、ろ過体2またはスクレーパー4の回転方向は運転中に変更してもよく、例えば一定間隔で回転方向を逆転させてもよい。
【0028】
[リグノセルロース分解システム]
図3は、本実施形態に係るろ過装置1が設置された微生物培養槽10をリグノセルロース分解システムに使用した例を示す概略図である。図3(a)は3相型のプロセスにより構成されるリグノセルロース分解システム100、図3(b)は2相型のプロセスにより構成されるリグノセルロース分解システム101を示す。
【0029】
本発明に係るろ過装置1は、微生物培養槽10に設置することにより、槽内の固形物滞留時間(SRT:Solids Retention Time)と水理学的滞留時間(HRT:Hydraulic Retention Time)を任意に制御することができる。つまり、微生物培養槽10において、リグノセルロース系バイオマスを分解するリグノセルロース分解細菌の増殖促進をろ過装置1により制御することができる。リグノセルロース分解は、リグノセルロース系バイオマスを原料としてメタン発酵を行うための前処理として行われる。リグノセルロース系バイオマスは、牛の第一胃液(ルーメン液)に存在するルーメン微生物(リグノセルロース分解細菌)により、セルロースやヘミセルロースに分解され、グルコース等のヘキソース(六単糖)に変換される。さらに、グルコース等のヘキソース(六単糖)から、ピルビン酸等が生成され、さらに反応が進むと酢酸、プロピオン酸、酪酸、ギ酸等の揮発性脂肪酸(VFA)が生産される。酢酸や水素、二酸化炭素は、メタン発酵の基材(原料)となるため、リグノセルロースの分解促進に伴い、酢酸や水素、二酸化炭素の生産量が増加すると、メタンの生成量も増加する。
【0030】
まず、本発明に係るろ過装置1が設置された微生物培養槽10を使用したリグノセルロース分解システム100について説明する。図3(a)に示すように、リグノセルロース分解システム100は、ルーメン微生物を培養する微生物培養槽10、培養したルーメン微生物を用いてリグノセルロース系バイオマスを後段のメタン発酵槽30で利用されやすい形に変換(分解)する分解槽20、及びメタン発酵槽30により構成される。微生物培養槽10には、牛などから採取されたルーメン液、緩衝剤として反芻動物のだ液を模した人工培地(人工だ液)、及び必要に応じて粉砕機40などによって破砕・粉砕されたリグノセルロース系バイオマスが供給されると、ルーメン液に存在するリグノセルロース分解細菌がリグノセルロースを分解代謝することにより増殖すると共にリグノセルロース分解物(リグノセルロースの部分分解物や酢酸等の揮発性脂肪酸(VFA:Volatile Fatty Acid))が生産される。また、図4(a)に示すように、微生物培養槽10において、ろ過装置1により固液分離されたろ過液及び未分解もしくは部分分解されたリグノセルロース系バイオマスを含む懸濁液が、夫々ろ過液排出部3及び懸濁液排出部5により、下流の分解槽20(前処理槽ともいう)に送られる。また、ろ過液は、分解槽20に送られるほか、その一部は人工培地(人工だ液)と混合される。微生物培養液11のろ過液と懸濁液が微生物培養槽10から引き抜かれて分解槽20に送られる量を適宜調整することによって、微生物培養槽10内における水理学的滞留時間(HRT:Hydraulic retention time)及び固形物滞留時間(SRT:Sludge retention time)を制御することができる。微生物培養液11のろ過液と懸濁液には多数のリグノセルロース分解細菌が含まれるので、分解槽20にリグノセルロース系バイオマスを供給すると、リグノセルロース分解細菌のはたらきによりリグノセルロース分解反応が進行し、酢酸等の揮発性脂肪酸(VFA)やリグノセルロース部分分解物を含む反応液が生産される。分解槽20からメタン発酵槽30に、リグノセルロース分解物を多く含む反応液が供給されると、メタン発酵槽30内に収容されているメタン発酵液中において、リグノセルロース分解物を基質(原料)とするメタン発酵が進行し、メタンが生成する。その後、メタン発酵槽30内のメタン発酵残渣は脱水機50に送られる。脱水機50から排出される脱水離脱液には、窒素源やリン源となる物質が含まれているので、微生物培養槽10に還流して添加しても良い。脱水機50から排出される濃縮汚泥は肥料や建築資材等として利用してもよい。図3(a)に示す3相型のプロセスにより構成されるリグノセルロース分解システム100は、(1)ルーメン微生物の培養、(2)リグノセルロースの分解(前処理)、及び(3)メタン発酵、と各工程の役割が分かれているので、運転制御が行いやすいという利点がある。
【0031】
次に、本発明に係るろ過装置1が設置された微生物培養槽兼分解槽110を使用したリグノセルロース分解システム101について説明する。図3(b)に示すように、リグノセルロース分解システム101は、ルーメン微生物の培養とリグノセルロース系バイオマスの分解(前処理)とを兼ねた微生物培養槽兼分解槽110、及びメタン発酵槽30により構成される。微生物培養槽兼分解槽110に、牛などから採取されたルーメン液、緩衝剤として反芻動物のだ液を模した人工培地(人工だ液)、及び必要に応じて粉砕機40などによって破砕・粉砕されたリグノセルロース系バイオマスが供給されると、ルーメン液に存在するリグノセルロース分解細菌がリグノセルロースを分解代謝することにより増殖すると共にリグノセルロース分解細菌のはたらきによりリグノセルロース分解反応が進行し、酢酸等の揮発性脂肪酸(VFA)やリグノセルロース部分分解物を含む反応液が生産される。また、図4(b)に示すように、微生物培養槽兼分解槽110において、ろ過装置1で固液分離されたろ過液及び未分解もしくは部分分解されたリグノセルロース系バイオマスを含む懸濁液が、夫々ろ過液排出部3及び懸濁液排出部5により、下流のメタン発酵槽30に送られる。また、ろ過液は、メタン発酵槽30に送られるほか、その一部は人工培地(人工だ液)と混合される。分解反応液111のろ過液と懸濁液が微生物培養槽兼分解槽110から引き抜かれてメタン発酵槽30に送られる量を適宜調整することによって、微生物培養槽兼分解槽110内における水理学的滞留時間(HRT)及び固形物滞留時間(SRT)を制御することができる。メタン発酵槽30に、リグノセルロース分解物を含む分解反応液111が供給されると、メタン発酵槽30内に収容されているメタン発酵液中において、リグノセルロース分解物を基質(原料)とするメタン発酵が進行し、メタンが生成する。その後、メタン発酵槽30内のメタン発酵残渣は脱水機50に送られる。脱水機50から排出される脱水離脱液には、窒素源やリン源となる物質が含まれているので、微生物培養槽兼分解槽110に還流して添加しても良い。また、脱水機50から排出される濃縮汚泥は肥料や建築資材等として利用してもよい。図3(b)に示す2相型のプロセスは、ルーメン微生物の培養とリグノセルロース分解(前処理)とを一槽(微生物培養槽兼分解槽110)で行うことができるプロセスであり、RUDAD(Rumen Derived Anaerobic Digestion)プロセスとして知られている(非特許文献 Huub J.Gijzen他、Biotechnology and Bioengineering,Vol.31,pp.418-425(1988))。本プロセスは3相型プロセスより槽が少ないので、より安価に建設することができるとともに、設備をコンパクト化することができる。
【0032】
[リグノセルロース系バイオマス]
原料となるリグノセルロース系バイオマスとしては、森林間伐材、稲藁、籾殻、バガス、茅等の未利用農林産廃棄物のほか、野菜屑、茶殻、コーヒー滓、おから、焼酎滓、建築廃材、古紙・廃紙、都市ゴミ等のリグノセルロース系産業廃棄物、またはエリアンサスやジャイアントミスカンサス等のバイオマス資源作物が挙げられる。また、シュレッダーにより裁断化された紙は、繊維が壊れ、リサイクルし難いものとして焼却されているが、このような裁断化された紙についても原料として利用することができる。リグノセルロース系バイオマスのリグノセルロース分解が進行し、酢酸等の揮発性脂肪酸が生産されると、メタン発酵の基質(原料)とすることができるため、メタンを効率的に製造することが可能である。また、揮発性脂肪酸まで発酵が進まなくとも、リグノセルロースがセロビオース等の分子量が小さな形状まで分解される、またはグルコース等の構成糖まで分解されると、メタン発酵の基質(原料)とすることができるため、メタンを効率的に製造することが可能である。
【0033】
[ルーメン液]
ルーメン液は、反芻動物の第一胃(ルーメン)に存在する消化液である。反芻動物としては、牛、羊、山羊、鹿、ラクダ、ラマ等が挙げられる。例えば、成牛の第一胃は、150~200Lの容量があり、ルーメン液にはルーメン微生物と呼ばれる、リグノセルロース分解細菌、ヘミセルロース分解細菌、リグニン分解細菌、デンプン分解細菌、メタン生成細菌等が多く生息している。リグノセルロース分解細菌は、リグノセルロース(繊維質)を分解するセルラーゼ等の酵素を産生することができる。そのため、反芻動物により、草などの繊維質が摂取されると、リグノセルロース分解細菌がリグノセルロースを分解し、反芻動物にとってのエネルギー源となる酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等の揮発性脂肪酸(VFA:Volatile Fatty Acid)が生産される。また、ルーメン液に含まれるメタン生成細菌は、リグノセルロース分解細菌によって生産された酢酸を基質として、あるいは水素と二酸化炭素を基質としてメタンを生成することができる。ルーメン液は、反芻動物の第一胃からカテーテル等の管を用いて採取したものを使用してもよく、食肉加工工場等から発生したものを使用してもよい。
【0034】
図3(a)(b)に示すように、リグノセルロース系バイオマスの分解には、反芻動物から得られたルーメン液を微生物培養槽10又は微生物培養槽兼分解槽110に投入して使用するほか、培養されたルーメン微生物が使用される。培養されたルーメン微生物は、ルーメン液に培地の濃縮液を添加して培養したものでもよく、ルーメン液を遠心分離して得られた沈殿物(菌体)に液体培地を添加して培養したものであってもよい。ルーメン微生物の培養において、特にリグノセルロース分解活性の高いルーメン微生物であるフィブロバクター・サクシノゲネス(Fibrobacter succinogenes)、ルミノコッカス・アルブス(Ruminococcus albus)、及びプレボテラ・ルミニコラ(Prevotella ruminicola)の3種類の少なくとも一種以上の細菌の存在数量を指標として、温度、酸化還元電位(ORP:Oxidation‐Reduction Potential)、水理学的滞留時間(HRT)又は固形物滞留時間(SRT)、及び培地のアンモニウム態窒素濃度を調整することができる。これらの細菌の菌数の定量は、特に限定されないが、特定の細菌の菌数を迅速かつ正確に測定することが可能な、定量PCR法により行うことが好ましい。定量PCR法を用いてリグノセルロース分解細菌の菌数の定量を行う場合、微生物培養液11又は分解反応液111からゲノムDNAを抽出して精製したものを使用する。ルーメン微生物は、大量に培養したり、継代培養したりすることもできるため、細菌の菌数を調整したルーメン微生物の培養液を、必要に応じてリグノセルロース分解に利用することができる。
【0035】
[人工培地]
ルーメン微生物の培養に使用する培地としては、培地の基材が天然物に由来する天然培地を使用してもよく、ルーメン微生物の増殖に必要な各種栄養素がすべて化学薬品で構成されている合成培地を使用してもよい。特に、ルーメン微生物にとって有用な栄養源であるアンモニウム塩のような窒素源、リン酸塩のようなリン源等の他、セルロース、ヘミセルロース等の炭素源を含むことが好ましい。また、図3(a)(b)に示すように、栄養源として、脱水機50から排出される脱水脱離液には、窒素源やリン源となる物質が含まれているため、脱水脱離液を還流して添加してもよい。また、リグノセルロースの分解反応において、酢酸等の揮発性脂肪酸(VFA)が生産されると、反応液中のpHが低下したり、浸透圧が上昇したりすることにより、リグノセルロース分解細菌の存在数量や機能が変化してしまうことから、pHの変化や浸透圧の上昇を和らげるために、培地に緩衝剤を添加することが好ましい。緩衝剤としては、反芻動物のだ液は緩衝能力が高いので、それを模した人工だ液を使用することが好ましい。緩衝剤としては、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸塩、及び塩化カリウム等が挙げられる。また、図3、4に示すように、微生物培養液11や分解反応液111のろ過液の一部を人工培地に混合してもよい。培地のpHは、6.0~7.5、好ましくは6.5~7.0に必要に応じ酸・アルカリを添加して調整する。また、培地に使用する水は、水道水や地下水を使用することが好ましい。また、培地のアンモニウム態窒素濃度は、50~2,000mg/L、より好ましくは60~500mg/Lとなるように、加水、または脱水脱離液を供給して制御する。
【0036】
[微生物培養槽]
図3(a)に示す微生物培養槽10において、ルーメン内の環境と同様、嫌気性状態とするために、ルーメン微生物の培養液の酸化還元電位は、-100mv以下、より好ましくは-200mv以下、さらに好ましくは-250mv程度に調整する。ルーメン微生物(リグノセルロース分解細菌)は嫌気性細菌であるため所定のORPより高くなった場合(好気状態に近づいた場合)は、窒素ガスや二酸化炭素ガスなどの不活性ガスを注入したり、システインやL-アスコルビン酸、硫化ナトリウム、アスコルビン酸、メチオニン、チオグリコール、DTTなどの還元物質を投入したり、あるいは有機物を投入して通性嫌気性菌の作用により酸素を消費させる等の処置を施してもよい。また、微生物の培養は、窒素又は二酸化炭素雰囲気下での閉鎖系で行ってもよい。
【0037】
微生物培養槽10におけるルーメン微生物の培養は、固形物滞留時間(SRT)が水理学的滞留時間(HRT)より長いことが重要とされる。即ち、リグノセルロース分解細菌は固形物(リグノセルロース系バイオマス)の表面に付着して増殖するため、SRTが短いと固形物と共に系外に排出される。一方、HRTが必要以上に長いと、生産された揮発性脂肪酸(VFA)によるpHの低下や微生物の増殖の阻害などの負の要因となる。具体的には、HRTは8~36時間、好ましくは10~24時間、SRTは24時間以上、好ましくは、48~72時間に制御する。HRTとSRTの制御は、ろ過液の排出量と懸濁液の排出量とを個別に調整することにより行われる。また、ルーメン微生物の培養、及びリグノセルロース分解反応における反応系の温度は、35~42℃、より好ましくは37~40℃になるよう温度センサー等を利用して制御する。なお、微生物培養槽10に投入されるリグノセルロース系バイオマスの固形物濃度は、0.05~20重量%、より好ましくは0.1~5重量%である。
【0038】
[分解槽]
図3(a)に示す分解槽20(前処理槽ともいう)において、リグノセルロース系バイオマスは、リグノセルロース分解細菌が生産するリグニン分解酵素により、リグニンの一部が分解されリグノセルロースの強固な構造が緩んだ後、エンドグルカナーゼやエキソグルカナーゼ、あるいはキシラナーゼ等により、それぞれセルロースやヘミセルロースに分解され、グルコース等のヘキソース(六単糖)に変換される。さらに、グルコース等のヘキソース(六単糖)から、ピルビン酸等が生成され、さらに反応が進むと酢酸、プロピオン酸、酪酸、ギ酸等の揮発性脂肪酸(VFA)が生産される。また、代謝過程で水素や二酸化炭素も生産される。酢酸や水素、二酸化炭素は、メタン発酵の基材(原料)となるため、リグノセルロースの分解促進に伴い、酢酸や水素、二酸化炭素の生産量が増加すると、メタンの生成量も増加する。リグノセルロース分解反応(前処理)において、リグノセルロースはヘキソース(六単糖)や揮発性脂肪酸(VFA)まで分解・代謝される必要はなく、難分解であるリグノセルロースがメタン発酵で利用されやすい形状、例えば、オリゴ糖程度まで分解されれば十分である。リグノセルロース分解(前処理)において、反応液中に含まれるリグノセルロース系バイオマスは、0.5~30重量%、より好ましくは0.5~10重量%である。
【0039】
図3(a)に示す分解槽20は、その上流の微生物培養槽10においてHRTとSRTとが個別に制御されているので、分解槽20内においてHRTとSRTとが個別に制御される必要はなく、反応液の攪拌が行われる完全混合系としてもよい。この場合、分解槽20内の反応液はろ過液と懸濁液に分離されないためHRTとSRTが同じとなる。分解槽20のHRTとSRTとはいずれも4~36時間とすることが好ましい。また、分解槽20内における反応系の温度は、35~42℃、より好ましくは37~40℃になるよう温度センサー等を利用して制御する。分解槽20内における反応は、静置して行っても、攪拌して行ってもよく、リグノセルロース分解反応の進行をより早めるためには、攪拌して行うことが好ましい。
【0040】
[微生物培養槽兼分解槽]
図3(b)に示す微生物培養槽兼分解槽110において、ルーメン内の環境と同様、嫌気性状態とするために、ルーメン微生物の培養液の酸化還元電位は、-100mv以下、より好ましくは-200mv以下、さらに好ましくは-250mv程度に調整する。ルーメン微生物(リグノセルロース分解細菌)は嫌気性細菌であるため所定のORPより高くなった場合(好気状態に近づいた場合)は、窒素ガスや二酸化炭素ガスなどの不活性ガスを注入したり、システインやL-アスコルビン酸、硫化ナトリウム、アスコルビン酸、メチオニン、チオグリコール、DTTなどの還元物質を投入したり、あるいは有機物を投入して通性嫌気性菌の作用により酸素を消費させる等の処置を施してもよい。また、微生物の培養とリグノセルロース分解反応は、窒素又は二酸化炭素雰囲気下での閉鎖系で行ってもよい。
【0041】
微生物培養槽兼分解槽110におけるルーメン微生物の培養とリグノセルロース分解反応は、固形物滞留時間(SRT)が水理学的滞留時間(HRT)より長いことが重要とされる。即ち、リグノセルロース分解細菌は固形物(リグノセルロース系バイオマス)の表面に付着して増殖するため、SRTが短いと固形物と共に系外に排出される。一方、HRTが必要以上に長いと、生産された揮発性脂肪酸(VFA)によるpHの低下や微生物の増殖の阻害などの負の要因となる。具体的には、HRTは8~36時間、好ましくは10~24時間、SRTは24時間以上、好ましくは、48~72時間に制御する。HRTとSRTの制御は、ろ過液の排出量と懸濁液の排出量とを個別に調整することにより行われる。また、ルーメン微生物の培養、及びリグノセルロース分解反応における反応系の温度は、35~42℃、より好ましくは37~40℃になるよう温度センサー等を利用して制御する。なお、微生物培養槽兼分解槽110に投入されるリグノセルロース系バイオマスの固形物濃度は、0.05~20重量%、より好ましくは0.1~5重量%である。
【0042】
上述のとおり、微生物の培養とリグノセルロース分解反応は、図3(a)に示すように、微生物培養槽10と分解槽20においてそれぞれ独立して行われてもよく、図3(b)に示すように、微生物培養槽兼分解槽110において一槽で行われてもよい。
【0043】
[メタン発酵槽]
図3(a)(b)に示すメタン発酵槽30において、前処理槽(分解槽20、微生物培養槽兼分解槽110)から送られる反応液に含まれるリグノセルロース分解物を基質としてメタン発酵が行われる。メタン発酵では、難分解であるリグノセルロースがメタン発酵で利用されやすい形状、例えば、オリゴ糖程度まで分解されたリグノセルロース系バイオマス、あるいは分解反応(前処理)において生産した酢酸等の揮発性脂肪酸(リグノセルロース分解物)や水素と二酸化炭素を基質として、メタン発酵が行われる。メタン発酵は、メタン生成細菌によって行われ、リグノセルロース分解細菌による分解反応と同等、嫌気性条件下で行われる。なお、リグノセルロース分解細菌の活性が高まると、メタン生成細菌の活性も高まることは理論上予測することができる。
【0044】
メタン発酵は、湿式メタン発酵、乾式メタン発酵何れでも構わない。また、中温メタン発酵、高温メタン発酵何れでも良い。中温メタン発酵の場合、20~30日間、より好ましくは23~27日間、さらに好ましくは25日間程度、高温メタン発酵の場合、10~20日間、より好ましくは13~17日間、さらに好ましくは15日間程度行われることが好ましい。また、メタン発酵の温度は、中温発酵の場合、20℃を超えて40℃以下、より好ましくは30℃以上37℃以下、さらに好ましくは37℃程度であり、高温発酵の場合、40℃を超えて60℃、より好ましくは50~55℃、さらに好ましくは55℃程度である。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のろ過装置は、微生物培養液の固液分離の他、微生物を用いた廃水処理の用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 ろ過装置
2 ろ過体
2a 上端部
2b 開口部
3 ろ過液排出部
3a ろ過液排出管
4 スクレーパー
5 懸濁液排出部
10 微生物培養槽
11 微生物培養液
20 分解槽
30 メタン発酵槽
40 粉砕機
50 脱水機
60 攪拌翼
100、101 リグノセルロース分解システム
110 微生物培養槽兼分解槽
111 分解反応液
P ポンプ
M モーター
図1
図2
図3
図4