(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093056
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】動作監視システム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20220616BHJP
B66C 23/88 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C23/88 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206127
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】庄福 勝美
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA05
(57)【要約】
【課題】クレーンの動作状態に応じて適切な監視を行うことができる動作監視システムを提供する。
【解決手段】動作監視システム100は、クレーンとの干渉の可能性がある干渉領域を設定する領域設定部52と、領域設定部52で設定された干渉領域を用いてクレーンの動作の監視を行う監視部53と、を備える。これにより、監視部53は、クレーンとの干渉の可能性がある干渉領域に基づいて、クレーンと他のクレーンや障害物と干渉しないかを監視できる。ここで、領域設定部52は、クレーンの動作に応じて干渉領域を調整できる。従って、干渉領域は、クレーンの動作に応じた適切な範囲に設定される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンの動作を監視する動作監視システムであって、
前記クレーンに対し、当該クレーンとの干渉の可能性がある干渉領域を設定し、前記クレーンの動作に応じて前記干渉領域を調整する領域設定部と、
前記領域設定部で設定された前記干渉領域を用いて前記クレーンの動作の監視を行う監視部と、を備える、動作監視システム。
【請求項2】
前記領域設定部は、前記クレーンの移動速度に基づいて前記干渉領域を調整する、請求項1に記載された動作監視システム。
【請求項3】
前記領域設定部は、前記クレーンの移動方向に対する前記干渉領域を、前記移動方向とは反対方向に対する前記干渉領域よりも大きくする、請求項1又は2に記載された動作監視システム。
【請求項4】
前記クレーンはジブクレーンであり、
前記領域設定部は、前記ジブクレーンの上側のワイヤに対しても前記干渉領域を設定する、請求項1~3の何れか一項に記載の動作監視システム。
【請求項5】
前記クレーンは門型クレーンであり、
前記領域設定部は、前記門型クレーンの脚部に対しても前記干渉領域を設定する、請求項1~4の何れか一項に記載の動作監視システム。
【請求項6】
クレーンの動作を監視する動作監視システムであって、
前記クレーンに対し、当該クレーンとの干渉の可能性がある干渉領域を設定する領域設定部と、
前記領域設定部で設定された前記干渉領域を用いて前記クレーンの動作の監視を行う監視部と、を備え、
前記クレーンはジブクレーンであり、
前記領域設定部は、前記ジブクレーンの上側のワイヤに対しても前記干渉領域を設定する、動作監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動作監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、現場に存在する複数のクレーンの動作を監視する動作監視システムが記載されている。この動作監視システムは、クレーンに対して障害物や他のクレーンなどがどの程度近づいたかを監視することによって、各クレーンの動作監視を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、クレーンは、状況に応じて各種動作を行う。また、現場の状況によっては、クレーン同士が近づいた状態で作業を行う場合がある。上述の動作監視システムでは、クレーンの動作状態に応じて適切な監視を行うことができないという問題があった。
【0005】
本開示は、クレーンの動作状態に応じて適切な監視を行うことができる動作監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る動作監視システムは、クレーンの動作を監視する動作監視システムであって、クレーンに対し、当該クレーンとの干渉の可能性がある干渉領域を設定し、クレーンの動作に応じて干渉領域を調整する領域設定部と、領域設定部で設定された干渉領域を用いてクレーンの動作の監視を行う監視部と、を備える。
【0007】
動作監視システムは、クレーンとの干渉の可能性がある干渉領域を設定する領域設定部と、領域設定部で設定された干渉領域を用いてクレーンの動作の監視を行う監視部と、を備える。これにより、監視部は、クレーンとの干渉の可能性がある干渉領域に基づいて、クレーンと他のクレーンや障害物と干渉しないかを監視できる。ここで、領域設定部は、クレーンの動作に応じて干渉領域を調整できる。従って、干渉領域は、クレーンの動作に応じた適切な範囲に設定される。以上より、クレーンの動作状態に応じて適切な監視を行うことができる。
【0008】
領域設定部は、クレーンの移動速度に基づいて干渉領域を調整してよい。これにより、領域設定部は、クレーンの移動速度に応じて適切な範囲の干渉領域を設定することができる。
【0009】
領域設定部は、クレーンの移動方向に対する干渉領域を、移動方向とは反対方向に対する干渉領域よりも大きくしてよい。クレーンの移動方向は干渉の可能性が高いため、干渉領域が大きく設定される。これに対し、反対側は干渉の可能性が低いため、不必要に干渉領域が大きくならないように設定している。
【0010】
クレーンはジブクレーンであり、領域設定部は、ジブクレーンの上側のワイヤに対しても干渉領域を設定してよい。ジブクレーンの上側のワイヤは、運転室から死角になり易いため、当該ワイヤに対して干渉領域を設定することで、ワイヤと他のクレーンや障害物との干渉を回避できる。
【0011】
クレーンは門型クレーンであり、領域設定部は、門型クレーンの脚部に対しても干渉領域を設定してよい。これにより、脚部と他のクレーンや障害物との干渉を回避できる。
【0012】
本開示の一側面に係るクレーンの動作を監視する動作監視システムであって、クレーンに対し、当該クレーンとの干渉の可能性がある干渉領域を設定する領域設定部と、領域設定部で設定された干渉領域を用いて前記クレーンの動作の監視を行う監視部と、を備え、クレーンはジブクレーンであり、領域設定部は、ジブクレーンの上側のワイヤに対しても干渉領域を設定する。
【0013】
ジブクレーンの上側のワイヤは、運転室から死角になり易いため、当該ワイヤに対して干渉領域を設定することで、ワイヤと他のクレーンや障害物との干渉を回避できる。以上より、クレーンの動作状態に応じて適切な監視を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、以上より、クレーンの動作状態に応じて適切な監視を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る動作監視システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1に示す動作監視システムのブロック構成図である。
【
図3】
図3(a)は、ジブクレーンがジブを起こしているときにおける干渉領域を示す概略側面図であり、
図3(b)は、ジブクレーンが
図3(a)の状態から上部旋回体を90度旋回させて、一方側へ走行移動するときにおける干渉領域を示す概略正面図である。
【
図4】
図4(a)は門型クレーンが一方側へ走行移動するときにおける干渉領域を示す概略側面図であり、
図4(b)は概略平面図である。
【
図5】門型クレーン及びジブクレーンが互いに近づくように走行移動しているときの様子を示す概略側面図である。
【
図6】ジブクレーンの走行速度、及び門型クレーンの走行速度と、停止距離の関係を示す図である。
【
図7】クレーン同士の干渉の態様を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照しながら本発明を実施する形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、説明の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る動作監視システム100を示す概略構成図である。
図2は、
図1に示す動作監視システム100のブロック構成図である。
図1に示すように、動作監視システム100は、中央監視部50と、複数のクレーンと、を備える。動作監視システム100は、複数のクレーンが存在する造船所などの現場において、各クレーンの動作を監視するシステムである。動作監視システム100は、クレーン同士が動作中に干渉しないように監視する。本実施形態では、クレーンの例として、ジブクレーン10及び門型クレーン20が例示されている。
【0018】
ジブクレーン10は、吊荷を吊るジブ11と、ジブ11を支持する本体部12と、本体部12を旋回可能に支持する支柱13と、支柱13を支持してレールに沿って走行可能な走行部14と、を備える。支柱13と本体部12との間には、旋回軸受15が配置される。本体部12は、運転室12a、機械室12b、センターポスト12c、バックステー12dを有する。運転室12aは、本体部12の前側の位置においてジブ11の付け根付近と隣り合う位置に設けられる。ジブ11の上側には、ワイヤ16が延びている。ワイヤ16は、ジブ11の先端から下方へ延び、当該ワイヤ16の先端には吊具17が設けられる。なお、ワイヤ16のうち、ジブ11の上側でジブ11の先端からセンターポスト12cの上部に延びる部分を上部ワイヤ16a、センターポスト12cの上部から機械室12bに延びる部分を後部ワイヤ16bと称する場合がある。上部ワイヤ16aは、運転室12aの上方に位置するため死角となりやすい。本体部12は、ジブ11を起伏させることができると共に、ジブ11と共に旋回軸受15を介して支柱13周りに旋回することができる。
【0019】
門型クレーン20は、幅方向の両端側に配置されて上下方向に延びる脚部21,22と、脚部21,22の下端部に設けられる走行部23と、脚部21,22の上端部同士を接続するガーダ24と、ガーダ24に沿って横行して吊具を吊り下げる補トロリ25及び主トロリ26と、を備える。補トロリ25は、主トロリ26の下側を通るように横行する。主トロリ26には、走行方向に飛び出るように運転室27が設けられる。主トロリ26は、例えば2つの吊具を有し、補トロリ25は1つの吊具を有する。大型の構造物を吊り下げる場合、これら合計3つの吊具が用いられる。
【0020】
ここで、運転者にとって死角となる場所は確認が難しくなるため、例えば、次のような動作は、ジブクレーン10と門型クレーン20との干渉の可能性が高くなる。例えば、
図7(a)に示すように、ジブクレーン10が後進しているときに、運転者が前方の吊り荷に気を取られて、死角となる上部ワイヤ16aが門型クレーン20のガーダ24に干渉してしまう可能性がある。あるいは、ジブクレーン10が門型クレーン20の下でジブ11を上げる操作を行っているときに、死角となる上部ワイヤ16aが門型クレーン20のガーダ24に干渉してしまう可能性がある。また、
図7(b)に示すように、ジブクレーン10の後ろに門型クレーン20が存在しているときに、運転者が吊り荷に気を取られてジブ11が旋回しているときに、ジブクレーン10の上方のガーダ24と干渉してしまう可能性がある。このような干渉は、
図7(b)に示すように、ジブクレーン10が運転室12aと反対側に旋回を行う際、運転者からジブ11が影になって門型クレーン20のガーダ24や脚部21が見えにくくなることで起こりやすくなる。なお、
図7で示したような干渉は、一台のジブクレーン10の一つの動作だけで発生するものに限られず、ジブクレーン10と門型クレーン20とが同時に動くことで干渉することもある。また、ジブクレーン10は、走行、旋回、起伏動作が複合することで、門型クレーン20と干渉することがある。本実施形態の動作監視システム100は、これらのような干渉が発生しないように、ジブクレーン10と門型クレーン20の動作を監視する。
【0021】
次に、
図2を参照して、動作監視システム100のブロック構成について説明する。
図2に示すように、動作監視システム100は、中央監視部50と、ジブクレーン10に設けられたジブクレーン演算装置60と、門型クレーン20に設けられた門型クレーン演算装置70と、を備える。なお、
図2は、一台分のジブクレーン10のジブクレーン演算装置60、及び一台分の門型クレーン20の門型クレーン演算装置70のみが示されているが、更に多数のジブクレーン10及び門型クレーン20が存在している場合、それらの演算装置も動作監視システム100に含まれる。
【0022】
ジブクレーン演算装置60は、情報送受信部61と、クレーン間距離演算部62と、情報取得部63と、を備える。情報送受信部61は、中央監視部50及び他のクレーンとの間で、各種情報の送受信を行う。クレーン間距離演算部62は、ジブクレーン10と他のクレーンとの間の距離を演算する。例えば、
図5に示すように、クレーン間距離演算部62は、任意の原点位置OPからのジブクレーン10の距離PL1を情報取得部63で取得した情報に基づいて演算する。また、クレーン間距離演算部62は、ジブクレーン10の近くに存在する他のクレーン、ここでは門型クレーン20の原点位置OPからの距離PL2を取得する。クレーン間距離演算部62は、門型クレーン演算装置70から距離PL2を取得してもよいし、演算によって距離PL2を取得してもよい。これにより、クレーン間距離演算部62は、距離PL1及び距離PL2からクレーン間距離PL3を取得する。なお、クレーン間距離演算部62は、中央監視部50からクレーン間距離PL3を取得してもよい。情報取得部63は、各種情報を取得するセンサなどによって構成される。情報取得部63は、例えば、ジブクレーン10の動作状態、及び位置情報を取得する。動作情報とは、動作の種類(走行、旋回、起伏)、各種動作の向き、各種動作の速度などを含む情報である。
【0023】
門型クレーン演算装置70は、情報送受信部71と、クレーン間距離演算部72と、情報取得部73と、を備える。門型クレーン演算装置70の情報送受信部71、クレーン間距離演算部72、及び情報取得部73は、ジブクレーン演算装置60の情報送受信部61、クレーン間距離演算部62、及び情報取得部63と同趣旨の機能を有する。
【0024】
中央監視部50は、施設内に存在する各クレーンの動作を監視する機能を有する部分である。中央監視部50はクラウドによって構成されていてもよいし、クレーンとは別の位置に設けられた演算装置によって構成されてもよい。中央監視部50は、情報送受信部51と、領域設定部52と、監視部53と、を備える。
【0025】
情報送受信部51は、ジブクレーン10及び門型クレーン20との間で、各種情報を送受信を行う。情報送受信部51は、ジブクレーン10及び門型クレーン20から動作情報及び位置情報を取得する。
【0026】
領域設定部52は、ジブクレーン10及び門型クレーン20に対し、ジブクレーン10及び門型クレーン20との干渉の可能性がある干渉領域を設定する。干渉領域は、ジブクレーン10及び門型クレーン20の周りに仮想的に設定される領域である。領域設定部52は、ジブクレーン10及び門型クレーン20の3Dデータを取得し、当該3Dデータに対して各干渉領域を設定する。なお、各クレーンの3Dデータは、クレーン設計時に既に作成されたものを用いればよい。
【0027】
また、領域設定部52は、ジブクレーン10及び門型クレーン20の動作に応じて干渉領域を調整する。領域設定部52は、ジブクレーン10及び門型クレーン20の動作の種類、各種動作の速度、及び各種動作の向きなどに応じて、干渉領域を調整する。領域設定部52は、動作に応じて、各クレーンのどの箇所に干渉領域を設定するかを調整し、どの向きに干渉領域を設定するかを調整し、どの程度の大きさの干渉領域を設定するかを調整する。領域設定部52は、動作の速度に応じて干渉領域の大きさを調整してよい。例えば、領域設定部52は、動作の速度が大きいほど干渉領域を大きくしてよい。領域設定部52は、クレーンの移動方向に対する干渉領域を、移動方向とは反対方向に対する干渉領域よりも大きくしてよい。すなわち、クレーンの移動方向では、当該クレーンと干渉する可能性が高くなるため、干渉領域を大きく設定する必要がある。その一方、クレーンの移動方向とは反対方向では、当該クレーンと干渉する可能性が低いため、干渉領域を小さく設定してもよい。更に、移動方向と反対側では、速度に応じた設定を行う結果、干渉領域が反対側(マイナス)になってもよい。あるいは、干渉領域はゼロや所定の固定値でもよい。これらのような設定が行われる結果として、移動方向側の干渉領域は反対側よりも大きくなる。
【0028】
次に、
図3を参照して、ジブクレーン10の周囲に設定される干渉領域の一例について説明する。領域設定部52は、ジブクレーン10に対して
図3に示すような干渉領域CE1を設定する。
図3(a)は、ジブクレーン10がジブ11を起こしているときにおける干渉領域CE1を示す概略側面図である。
図3(a)に示すように、領域設定部52は、ジブ11の周囲、本体部12の周囲に干渉領域CE1を設定する。更に、ワイヤ16の上部も死角になって門型クレーン20と干渉しやすい部分である。従って、領域設定部52は、ジブクレーン10の上側のワイヤ16、すなわち上部ワイヤ16aに対しても干渉領域CE1を設定する。なお、領域設定部52は、ジブ11を上側へ起こす動作をしているものであるため、上側に大きな干渉領域CE1を設定する。その一方、ジブ11の下側は、起こす方向とは逆方向であるため、領域設定部52は、ジブ11の下側に小さな干渉領域CE1を設定する。後部ワイヤ16bは、バックステー12dとセンターポスト12cの間に配置される。そのため、領域設定部52は、バックステー12dの周囲に干渉領域CE1を設定すれば、後部ワイヤ16bの周囲には干渉領域CE1を設定しなくてもよい。
【0029】
図3(b)は、ジブクレーン10がジブ11を起こしながら、一方側へ走行移動するときにおける干渉領域CE1を示す概略正面図である。
図3(b)では、ジブクレーンが10が、
図3(a)の状態から上部旋回体を90度旋回させた状態となっている。
図3(b)に示すように、領域設定部52は、ジブ11の先端よりも上側に大きさL1の干渉領域CE1を設定する。領域設定部52は、ジブ11及び本体部12に対し、移動方向に大きさL2の干渉領域CE1を設定する。領域設定部52は、移動方向とは反対方向に小さな干渉領域CE1を設定する。なお、ジブ11及び本体部12が旋回する場合も、走行移動と同趣旨の干渉領域CE1が設定される。
【0030】
領域設定部52は、各時間におけるクレーンの動作状態に応じてリアルタイムで干渉領域CE1,CE2の調整を行ってよい。例えば、クレーンの動作速度が変化した場合、領域設定部52は、新たな動作速度に応じた干渉領域CE1,CE2の大きさに調整している。
【0031】
次に、
図4を参照して、門型クレーン20の周囲に設定される干渉領域の一例について説明する。
図4(a)は門型クレーン20が一方側へ走行移動するときにおける干渉領域CE2を示す概略側面図であり、
図4(b)は概略平面図である。
図4(a)(b)に示すように、領域設定部52は、ガーダ24に対し、移動方向に大きさL3の干渉領域CE2を設定する。領域設定部52は、移動方向とは反対方向に小さな干渉領域CE2を設定する。また、領域設定部52は、門型クレーン20の脚部21,22に対しても干渉領域CE2を設定する。なお、
図4(a)に示すように、脚部21は下方へ真っ直ぐに延びる形状であるため、脚部21に対しては当該形状に応じた干渉領域CE2aが設定される。また、脚部22は下方へ向かって広がるように延びる形状であるため、脚部22に対しては当該形状に応じた干渉領域CE2bが設定される。なお、干渉領域CE2の設定において、運転室27などのように、門型クレーン20の一部の構造に対する設定を省略してもよい。
【0032】
監視部53は、領域設定部52で設定された干渉領域を用いてジブクレーン10及び門型クレーン20の動作の監視を行う。監視部53は、クレーン同士の接触の可能性があると判定した場合、干渉を回避するための運転支援を行う。監視部53は、クレーン同士の位置関係と、クレーンに設定された干渉領域とに基づいて、監視を行う。監視部53は、ジブクレーン10が動作しており、門型クレーン20が停止しているときは、ジブクレーン10に設定された干渉領域CE1と門型クレーン20との位置関係に基づいて、監視を行う。監視部53は、ジブクレーン10の干渉領域CE1の中に門型クレーン20が入った場合、または干渉領域CE1に門型クレーン20が所定距離近づいた場合、運転支援を行う。監視部53は、ジブクレーン10が停止しており、門型クレーン20が動作しているときは、門型クレーン20に設定された干渉領域CE2とジブクレーン10との位置関係に基づいて、監視を行う。監視部53は、門型クレーン20の干渉領域CE2の中にジブクレーン10が入った場合、または干渉領域CE2にジブクレーン10が所定距離近づいた場合、運転支援を行う。監視部53は、ジブクレーン10が動作しており、門型クレーン20も動作しているときは、ジブクレーン10に設定された干渉領域CE1と門型クレーン20に設定された干渉領域CE2との位置関係に基づいて、監視を行う。監視部53は、ジブクレーン10の干渉領域CE1の中に門型クレーン20の干渉領域CE2が入った場合、または干渉領域CE1に門型クレーン20の干渉領域CE2が所定距離近づいた場合、運転支援を行う。
【0033】
監視部53の処理内容の具体例について
図5を参照して説明する。
図5は、門型クレーン20及びジブクレーン10が互いに近づくように走行移動しているときの様子を示す概略側面図である。
図5に示すように、監視部53は、クレーン間距離PL3と、ジブクレーン10に設定された干渉領域CE1と、門型クレーン20に設定された干渉領域CE2と、に基づいて、各クレーンの動作を監視する。
図5に示す例では、監視部53は、ジブクレーン10の干渉領域CE1と門型クレーン20の干渉領域CE2との間の最短距離を干渉回避距離L4を所得する。監視部53は、干渉回避距離L4は、所定の閾値を下回った場合に、クレーンに対して運転支援を行う。なお、運転支援としては、例えば、警告、減速、停止指令などをおこなう。監視部53は、段階的に閾値を設定し、「警告、減速、停止指令」の順で段階的に運転支援を行ってよい。なお、監視部53は、干渉領域CE1,CE2間の干渉回避距離L4に対して複数段階の閾値を設定してもよいが、運転支援の強度に応じて干渉領域CE1,CE2の大きさを段階的に設定してもよい。この場合、干渉領域CE1,CE2が接触したとき、段階に応じたレベルの運転支援が行われてよい。
【0034】
図6は、ジブクレーン10の走行速度、及び門型クレーン20の走行速度と、停止距離の関係を示す図である。例えば、ジブクレーン10の走行速度は四段階に設定されており、それぞれの速度で走行している状態からブレーキを開始して停止するまでの距離は、停止距離L
j1~L
j4となる。従って、領域設定部52は、停止距離L
j1~L
j4を干渉領域CE1の大きさL2に設定できる。門型クレーン20の走行速度は五段階に設定されており、それぞれの速度で走行している状態からブレーキを開始して停止するまでの距離は、停止距離L
g1~L
g5となる。従って、領域設定部52は、停止距離L
g1~L
g5を干渉領域CE2の大きさL3に設定できる。また、両クレーンが走行状態から停止し終わったあとに、両クレーンの間に余裕代を確保できるように、干渉回避距離L4に対して閾値を設定する。なお、
図6は、走行速度と停止距離の関係を示した図であるが、旋回速度、起伏速度が可変である場合には、これらの速度に対しても
図6と同趣旨の設定がなされてよい。
【0035】
次に、本実施形態に係る動作監視システム100の作用・効果について説明する。
【0036】
動作監視システム100は、クレーンとの干渉の可能性がある干渉領域を設定する領域設定部52と、領域設定部52で設定された干渉領域を用いてクレーンの動作の監視を行う監視部53と、を備える。これにより、監視部53は、クレーンとの干渉の可能性がある干渉領域に基づいて、クレーンと他のクレーンや障害物と干渉しないかを監視できる。ここで、領域設定部52は、クレーンの動作に応じて干渉領域を調整できる。従って、干渉領域は、クレーンの動作に応じた適切な範囲に設定される。以上より、クレーンの動作状態に応じて適切な監視を行うことができる。
【0037】
領域設定部52は、クレーンの移動速度に基づいて干渉領域を調整してよい。これにより、領域設定部52は、クレーンの移動速度に応じて適切な範囲の干渉領域を設定することができる。
【0038】
領域設定部52は、クレーンの移動方向に対する干渉領域を、移動方向とは反対方向に対する干渉領域よりも大きくしてよい。クレーンの移動方向は干渉の可能性が高いため、干渉領域が大きく設定される。これに対し、反対側は干渉の可能性が低いため、不必要に干渉領域が大きくならないように設定している。
【0039】
クレーンはジブクレーン10であり、領域設定部52は、上部ワイヤ16aに対しても干渉領域を設定してよい。上部ワイヤ16aは、運転室から死角になり易いため、当該上部ワイヤ16aに対して干渉領域を設定することで、上部ワイヤ16aと他のクレーンや障害物との干渉を回避できる。
【0040】
クレーンは門型クレーン20であり、領域設定部52は、門型クレーン20の脚部21,22に対しても干渉領域を設定してよい。これにより、脚部21,22と他のクレーンや障害物との干渉を回避できる。
【0041】
動作監視システム100は、クレーンの動作を監視する動作監視システム100であって、クレーンに対し、当該クレーンとの干渉の可能性がある干渉領域を設定する領域設定部52と、領域設定部52で設定された干渉領域を用いてクレーンの動作の監視を行う監視部53と、を備え、クレーンはジブクレーン10であり、領域設定部52は、ジブクレーン10の上側のワイヤ16に対しても干渉領域を設定する。
【0042】
上部ワイヤ16aは、運転室から死角になり易いため、当該上部ワイヤ16aに対して干渉領域を設定することで、ワイヤと他のクレーンや障害物との干渉を回避できる。以上より、クレーンの動作状態に応じて適切な監視を行うことができる。
【0043】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0044】
例えば、干渉領域をどのように設定するかは特に限定されず、ジブクレーン10及び門型クレーン20の干渉領域は限定されない。
【0045】
上述の実施形態では、動作監視システム100は、クラウドや中央演算装置などによって構成された中央監視部50を有しているが、各クレーンが有している演算装置が領域設定部52、及び監視部53を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…ジブクレーン、20…門型クレーン、52…領域設定部、53…監視部、100…動作監視システム。