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特開2022-93062自転車および自転車用のクランクアーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093062
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】自転車および自転車用のクランクアーム
(51)【国際特許分類】
   B62M 3/06 20060101AFI20220616BHJP
   B62M 3/04 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B62M3/06
B62M3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206147
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】竹田 祐一
(57)【要約】
【課題】上り坂においても楽に漕ぎ進むことができる自転車およびそのような自転車用のクランクアームを提供する。
【解決手段】自転車(100)は、クランク軸(13)と、クランク軸の両端部に取り付けられた一対のクランクアーム(20)と、一対のクランクアームの先端部に取り付けられた一対のペダル(30)とを有する。各クランクアームは、一端部(21a)がクランク軸に連結された第1アーム部材(21)と、一端部(22a)が第1アーム部材の他端部(21b)に回動可能に支持された第2アーム部材(22)であって、他端部(22b)が一対のペダルのうちの対応するペダルを支持する第2アーム部材と、クランクアームがクランク軸の順回転方向(D1)に屈曲するように第1アーム部材および第2アーム部材を付勢する弾性部材(23)とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸と、
前記クランク軸の両端部に取り付けられた一対のクランクアームと、
前記一対のクランクアームの先端部に取り付けられた一対のペダルと、
を有し、
前記一対のクランクアームのそれぞれは、
一端部が前記クランク軸に連結された第1アーム部材と、
一端部が前記第1アーム部材の他端部に回動可能に支持された第2アーム部材であって、他端部が前記一対のペダルのうちの対応するペダルを支持する第2アーム部材と、
当該クランクアームが前記クランク軸の順回転方向に屈曲するように前記第1アーム部材および前記第2アーム部材を付勢する弾性部材と、
を有する、自転車。
【請求項2】
ペダル上死点の位相角を0°とすると、
前記一対のクランクアームのそれぞれは、前記一対のペダルに荷重が加えられたときに90°から180°までの範囲の少なくとも一部において当該クランクアームが屈曲角を小さくしながら回転するように構成されている請求項1に記載の自転車。
【請求項3】
ペダル上死点の位相角を0°とすると、
前記一対のクランクアームのそれぞれは、前記一対のペダルに荷重が加えられたときに120°から180°までの範囲の少なくとも一部において当該クランクアームが屈曲角を小さくしながら回転するように構成されている請求項1に記載の自転車。
【請求項4】
ペダル上死点の位相角を0°とすると、
前記一対のクランクアームのそれぞれは、前記一対のペダルに荷重が加えられたときに180°から270°までの範囲の少なくとも一部において当該クランクアームが屈曲角を大きくしながら回転するように構成されている請求項1から3のいずれかに記載の自転車。
【請求項5】
ペダル上死点の位相角を0°とすると、
前記一対のクランクアームのそれぞれは、前記一対のペダルに荷重が加えられたときに270°から90°までの範囲の少なくとも一部において当該クランクアームが屈曲角を一定のままで回転するように構成されている請求項1から4のいずれかに記載の自転車。
【請求項6】
前記一対のクランクアームのそれぞれは、
前記一対のペダルに荷重が加えられて前記一対のペダルのうちの一方のペダルがペダル下死点に到達した時に他方のペダルがペダル上死点よりも車体前側に位置しているように構成されている、請求項1から5のいずれかに記載の自転車。
【請求項7】
前記一対のペダルに荷重が加えられていないとき、
前記一対のクランクアームのそれぞれの屈曲角は30°以上120°以下である、請求項1から6のいずれかに記載の自転車。
【請求項8】
前記第2アーム部材の長さは、前記第1アーム部材の長さの50%以上200%以下である、請求項1から7のいずれかに記載の自転車。
【請求項9】
前記弾性部材は、引張バネまたはねじりバネである、請求項1から8のいずれかに記載の自転車。
【請求項10】
前記弾性部材は、前記引張バネであり、
前記引張バネは、前記第1アーム部材および前記第2アーム部材に接続されており、
前記引張バネと前記第1アーム部材との接続箇所は、前記第1アーム部材の長手方向の中心軸から前記クランク軸の順回転方向側にずれた位置にあり、
前記引張バネと前記第2アーム部材との接続箇所は、前記第2アーム部材の長手方向の中心軸から前記クランク軸の順回転方向側にずれた位置にある、請求項9に記載の自転車。
【請求項11】
前記弾性部材は、車幅方向において前記第1アーム部材および前記第2アーム部材よりも外側に位置していない、請求項1から10のいずれかに記載の自転車。
【請求項12】
前記クランク軸の順回転方向を第1方向と呼び、前記クランク軸の逆回転方向を第2方向と呼ぶとき、
前記一対のクランクアームのそれぞれは、前記第2アーム部材の回動範囲の第1方向側端を規定する第1ストッパ部を有する、請求項1から11のいずれかに記載の自転車。
【請求項13】
前記一対のクランクアームのそれぞれは、前記第2アーム部材の回動範囲の第2方向側端を規定する第2ストッパ部を有する、請求項12に記載の自転車。
【請求項14】
自転車用のクランクアームであって、
一端部がクランク軸に連結された第1アーム部材と、
一端部が前記第1アーム部材の他端部に回動可能に支持された第2アーム部材であって、他端部がペダルを支持する第2アーム部材と、
前記クランクアームが前記クランク軸の順回転方向に屈曲するように前記第1アーム部材および前記第2アーム部材を付勢する弾性部材と、
を備える、クランクアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自転車および自転車用のクランクアームに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車は、手軽に利用できる交通手段として、老若男女を問わず、広く普及している。また、近年では、運転者のペダル踏力をモータの駆動力で補助する電動補助自転車の普及も進んでいる。電動補助自転車は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-196080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自転車を上り坂においてより楽に漕ぎ進めたいという要望がある。勾配の急な(つまり負荷の高い)上り坂においては、自転車が思うように進まずにふらつくので、自転車を押して歩くことを強いられる場合もある。
【0005】
本発明の実施形態は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、上り坂においても楽に漕ぎ進むことができる自転車およびそのような自転車用のクランクアームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、以下の項目に記載の自転車および自転車用クランクアームを開示している。
【0007】
[項目1]
クランク軸と、
前記クランク軸の両端部に取り付けられた一対のクランクアームと、
前記一対のクランクアームの先端部に取り付けられた一対のペダルと、
を有し、
前記一対のクランクアームのそれぞれは、
一端部が前記クランク軸に連結された第1アーム部材と、
一端部が前記第1アーム部材の他端部に回動可能に支持された第2アーム部材であって、他端部が前記一対のペダルのうちの対応するペダルを支持する第2アーム部材と、
当該クランクアームが前記クランク軸の順回転方向に屈曲するように前記第1アーム部材および前記第2アーム部材を付勢する弾性部材と、
を有する、自転車。
【0008】
本発明の実施形態による自転車では、各クランクアームが、第1アーム部材と、第2アーム部材と、弾性部材とを有する。第1アーム部材の一端部は、クランク軸に連結されており、第2アーム部材の一端部は、第1アーム部材の他端部に回動可能に支持されている。そして、第1アーム部材および第2アーム部材は、クランクアームがクランク軸の順回転方向に屈曲するように弾性部材によって付勢されている。各クランクアームが弾性部材の付勢力によって屈曲しているので、運転者は、一方のペダルがペダル下死点に到達しようとする際、そのペダルをクランクアームが伸びるように(つまり屈曲角が小さくなるように)重力方向にさらに踏み込むことができる。これにより、ペダル下死点近傍において重力方向の踏力を推進力(回転力)に変換することが可能となる。また、クランクアームはクランク軸の順回転方向に屈曲しているので、一方のペダルがペダル下死点に到達した時、他方のペダルは既にペダル上死点を通過してペダル上死点よりも車体前側に位置している。そのため、運転者は、ペダル上死点よりも前側に位置しているそのペダルを重力方向に踏み込むことで推進力を得ることができる。このように、本発明の実施形態による自転車では、一対のペダルが同時にペダル上死点およびペダル下死点に位置することがないので、ペダルの位相によらず、重力方向の踏み込みにより推進力を得ることができる。そのため、本発明の実施形態による自転車によれば、負荷の高い(つまり勾配の大きい)上り坂であっても楽に漕ぎ進むことが可能になる。さらに、クランクアームが屈曲していることにより、ペダル上死点付近ではクランクアームの回転半径が小さくなるので、運転者は足を上げる高さを従来よりも低くできる。そのため、運転者の姿勢が安定するという利点も得られる。
【0009】
[項目2]
ペダル上死点の位相角を0°とすると、
前記一対のクランクアームのそれぞれは、前記一対のペダルに荷重が加えられたときに90°から180°までの範囲の少なくとも一部において当該クランクアームが屈曲角を小さくしながら回転するように構成されている項目1に記載の自転車。
【0010】
[項目3]
ペダル上死点の位相角を0°とすると、
前記一対のクランクアームのそれぞれは、前記一対のペダルに荷重が加えられたときに120°から180°までの範囲の少なくとも一部において当該クランクアームが屈曲角を小さくしながら回転するように構成されている項目1に記載の自転車。
【0011】
[項目4]
ペダル上死点の位相角を0°とすると、
前記一対のクランクアームのそれぞれは、前記一対のペダルに荷重が加えられたときに180°から270°までの範囲の少なくとも一部において当該クランクアームが屈曲角を大きくしながら回転するように構成されている項目1から3のいずれかに記載の自転車。
【0012】
[項目5]
ペダル上死点の位相角を0°とすると、
前記一対のクランクアームのそれぞれは、前記一対のペダルに荷重が加えられたときに270°から90°までの範囲の少なくとも一部において当該クランクアームが屈曲角を一定のままで回転するように構成されている項目1から4のいずれかに記載の自転車。
【0013】
[項目6]
前記一対のクランクアームのそれぞれは、
前記一対のペダルに荷重が加えられて前記一対のペダルのうちの一方のペダルがペダル下死点に到達した時に他方のペダルがペダル上死点よりも車体前側に位置しているように構成されている、項目1から5のいずれかに記載の自転車。
【0014】
[項目7]
前記一対のペダルに荷重が加えられていないとき、
前記一対のクランクアームのそれぞれの屈曲角は30°以上120°以下である、項目1から6のいずれかに記載の自転車。
【0015】
楽に漕ぎ進むことができるという効果および運転者の姿勢が安定するという効果をより確実に得る(あるいはより高くする)観点からは、クランクアームの屈曲角はある程度以上大きいことが好ましい。具体的には、ペダルに荷重が加えられていないときの屈曲角が30°以上であることが好ましく、50°以上であることがより好ましい。ただし、クランクアームの屈曲角が大きすぎると、ペダル上死点近傍において第1アーム部材と第2アーム部材との結合部分(関節部)がペダルを超えて運転者に近づいてしまうおそれがあるので、クランクアームの屈曲角は大きすぎないことが好ましい。具体的には、ペダルに荷重が加えられていないときの屈曲角は120°以下であることが好ましく、100°以下であることがより好ましい。
【0016】
[項目8]
前記第2アーム部材の長さは、前記第1アーム部材の長さの50%以上200%以下である、項目1から7のいずれかに記載の自転車。
【0017】
第2アーム部材が長すぎても短すぎても、踏み込んだときにペダルが重くて(つまり漕ぎ難くて)進みにくいおそれがある。そのため、第2アーム部材の長さは、第1アーム部材の長さの50%以上200%以下であることが好ましい。
【0018】
[項目9]
前記弾性部材は、引張バネまたはねじりバネである、項目1から8のいずれかに記載の自転車。
【0019】
弾性部材としては、例えば、引張バネまたはねじりバネを好適に用いることができる。
【0020】
[項目10]
前記弾性部材は、前記引張バネであり、
前記引張バネは、前記第1アーム部材および前記第2アーム部材に接続されており、
前記引張バネと前記第1アーム部材との接続箇所は、前記第1アーム部材の長手方向の中心軸から前記クランク軸の順回転方向側にずれた位置にあり、
前記引張バネと前記第2アーム部材との接続箇所は、前記第2アーム部材の長手方向の中心軸から前記クランク軸の順回転方向側にずれた位置にある、項目9に記載の自転車。
【0021】
弾性部材が引張バネである場合、引張バネと第1アーム部材との接続箇所が第1アーム部材の長手方向の中心軸からクランク軸の順回転方向側にずれた位置にあり、且つ、引張バネと第2アーム部材との接続箇所が第2アーム部材の長手方向の中心軸からクランク軸の順回転方向側にずれた位置にあると、いったん伸びきったクランクアームを順回転方向に屈曲した状態に戻すことが容易となる。
【0022】
[項目11]
前記弾性部材は、車幅方向において前記第1アーム部材および前記第2アーム部材よりも外側に位置していない、項目1から10のいずれかに記載の自転車。
【0023】
弾性部材が、車幅方向において第1アーム部材および第2アーム部材よりも(つまりクランクアームよりも)外側に位置していないことにより、弾性部材が運転者の足にとって邪魔にならない。弾性部材は、車幅方向において第1アーム部材および第2アーム部材よりも内側に位置していてもよいし、車幅方向において第1アーム部材および第2アーム部材に重なっていてもよい。
【0024】
[項目12]
前記クランク軸の順回転方向を第1方向と呼び、前記クランク軸の逆回転方向を第2方向と呼ぶとき、
前記一対のクランクアームのそれぞれは、前記第2アーム部材の回動範囲の第1方向側端を規定する第1ストッパ部を有する、項目1から11のいずれかに記載の自転車。
【0025】
クランク軸の順回転方向を「第1方向」、逆回転方向を「第2方向」と呼ぶとき、各クランクアームが、第2アーム部材の回動範囲の第1方向側端を規定する第1ストッパ部を有していると、回動範囲の一方の端(第1方向側端)を一意に定めることができる。
【0026】
[項目13]
前記一対のクランクアームのそれぞれは、前記第2アーム部材の回動範囲の第2方向側端を規定する第2ストッパ部を有する、項目12に記載の自転車。
【0027】
各クランクアームが、第2アーム部材の回動範囲の第2方向側端を規定する第2ストッパ部を有していると、第2アーム部材の回動範囲の他方の端(第2方向側端)を一意に定めることができ、例えば、クランクアームがクランク軸の逆回転方向に屈曲しないようにすることができる。
【0028】
[項目14]
自転車用のクランクアームであって、
一端部がクランク軸に連結された第1アーム部材と、
一端部が前記第1アーム部材の他端部に回動可能に支持された第2アーム部材であって、他端部がペダルを支持する第2アーム部材と、
前記クランクアームが前記クランク軸の順回転方向に屈曲するように前記第1アーム部材および前記第2アーム部材を付勢する弾性部材と、
を備える、クランクアーム。
【発明の効果】
【0029】
本発明の実施形態によると、上り坂においても楽に漕ぎ進むことができる自転車およびそのような自転車用のクランクアームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態による自転車100を模式的に示す右側面図である。
図2】自転車100のクランク軸13、クランクアーム20およびペダル30を示す側面図である。
図3】従来の自転車において一対のペダル930のうちの一方がペダル上死点に位置し、他方がペダル下死点に位置している状態を示す図である。
図4】自転車100において一対のペダル30のうちの一方(左ペダル30B)がペダル上死点に位置している状態を示す図である。
図5】自転車100において一対のペダル30のうちの他方(右ペダル30A)がペダル下死点に位置している状態を示す図である。
図6】クランクアーム20の屈曲角αの変化を模式的に示す図である。
図7】クランクアーム20の他の構成を示す図である。
図8】左クランクアーム20Bの第2アーム部材22が回動範囲の第1方向側端にある状態を示す図であり、左クランクアーム20Bが完全に伸びた状態(屈曲角αが0°の状態)を仮想的に点線で示している。
図9】完全に伸びた状態の左クランクアーム20Bを図8中の矢印Wの方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0032】
図1を参照しながら、本発明の実施形態による自転車100を説明する。図1は、自転車100を模式的に示す右側面図である。以下の説明において、前、後、左、右、上、下は、サドル10に着座した運転者から見た前、後、左、右、上、下を意味する。
【0033】
ここで例示している自転車100は、いわゆる軽快車(「シティサイクル」とも呼ばれる)である。自転車100は、図1に示すように、車体フレーム1、前輪11および後輪12を備える。
【0034】
車体フレーム1は、ヘッドチューブ2、ダウンチューブ3、シートチューブ4、一対のチェーンステー5、一対のシートステー6およびボトムブラケット7を有する。
【0035】
ダウンチューブ3は、ヘッドチューブ2から後方斜め下向きに延びる。シートチューブ4は、ダウンチューブ3の後端から後方斜め上向きに延びる。一対のチェーンステー5は、シートチューブ4の下端付近から後方に延びる。一対のシートステー6は、一対のチェーンステー5の後端部とシートチューブ4の上部とを結合する。ボトムブラケット(ハンガー)7は、シートチューブ4の下端に設けられている。
【0036】
ヘッドチューブ2の下端には、前方斜め下向きに延びるフロントフォーク8が設けられている。フロントフォーク8の下端部には、前輪11が回転自在に支持されている。ヘッドチューブ2の上端には、ハンドル9が取り付けられている。シートチューブ4の上端には、サドル10が取り付けられている。一対のチェーンステー5の後端部には、後輪12が回転自在に支持されている。
【0037】
自転車100は、ボトムブラケット7に回転可能に支持された(つまり車体フレーム1に支持された)クランク軸13と、クランク軸13の両端部に取り付けられた一対のクランクアーム20と、一対のクランクアーム20の先端部に取り付けられた一対のペダル30とを有する。
【0038】
図2を参照しながら、自転車100のクランクアーム20の構成を説明する。図2は、自転車100のクランク軸13、クランクアーム20およびペダル30を示す側面図である。図2中には、クランク軸13の順回転方向D1を併せて示している。クランク軸13の順回転方向D1は、自転車100が前進するときにクランク軸13が回転する方向である。
【0039】
一対のクランクアーム20は、車体の右側に配置される右クランクアーム20Aと、車体の左側に配置される左クランクアーム20Bとを含む。右クランクアーム20Aと左クランクアーム20Bとは、位相が略180°ずれている。
【0040】
右クランクアーム20Aおよび左クランクアーム20Bのそれぞれは、図2に示すように、第1アーム部材21と、第2アーム部材22とを有する。つまり、右クランクアーム20Aおよび左クランクアーム20Bのそれぞれは、その本体部が2つの部材(第1アーム部材21および第2アーム部材22)に分割されている。右クランクアーム20Aおよび左クランクアーム20Bのそれぞれは、さらに弾性部材を有する。図示しているクランクアーム20は、弾性部材として引張バネ23を有している。引張バネ23は、バネが伸張する方向に荷重を受けたときに反発力が生じるバネである。
【0041】
第1アーム部材21の一端部(基端部)21aは、クランク軸13に連結されている。具体的には、右クランクアーム20Aの第1アーム部材21の基端部21aは、クランク軸13の右端部に連結されており、左クランクアーム20Bの第1アーム部材21の基端部21aは、クランク軸13の左端部に連結されている。
【0042】
第2アーム部材22の一端部(基端部)22aは、第1アーム部材21の他端部(先端部)21bに回動可能に支持されている。図示している例では、第2アーム部材22の基端部22aと第1アーム部材21の先端部21bとは、ピン24によって結合されている。第1アーム部材21と第2アーム部材22との結合部を、以下では「関節部」と呼ぶこともある。なお、関節部の具体的な構造は、ここで例示している構造には限定されない。
【0043】
第2アーム部材22の他端部(先端部)22bは、一対のペダル30のうちの対応するペダル30を支持する。具体的には、右クランクアーム20Aの第2アーム部材22の先端部22bは、右ペダル30Aを支持しており、左クランクアーム20Bの第2アーム部材22の先端部22bは、左ペダル30Bを支持している。右ペダル30Aおよび左ペダル30Bのそれぞれは、第2アーム部材22の先端部22bに取り付けられるペダル軸31と、ペダル軸31に回転可能に支持されるペダル本体32とを含む。ペダル軸31には、雄ねじ部が形成されており、第2アーム部材22の先端部22bには、ペダル軸31の雄ねじ部が係合する雌ねじ部が形成されている。
【0044】
引張バネ23は、第1アーム部材21および第2アーム部材22に接続されている。引張バネ23と第1アーム部材21との接続箇所cp1は、第1アーム部材21の長手方向の中心軸ax1からクランク軸13の順回転方向D1側にずれた位置にある。引張バネ23と第2アーム部材22との接続箇所cp2は、第2アーム部材22の長手方向の中心軸ax2からクランク軸13の順回転方向D1側にずれた位置にある。
【0045】
引張バネ23は、図2に示すように、クランクアーム20がクランク軸13の順回転方向D1に屈曲するように第1アーム部材21および第2アーム部材22を付勢する。ここで、第1アーム部材21の長手方向の中心軸ax1と第2アーム部材22の長手方向の中心軸ax2とのなす角αを、クランクアーム20の「屈曲角」と呼ぶ。クランクアーム20の屈曲角αは、クランクアーム20が屈曲していないとき(つまりクランクアーム20が完全に伸びているとき)に0°である。
【0046】
各クランクアーム20は、第2アーム部材22の回動範囲の一方の端(具体的にはクランク軸13の順回転方向D1側の端)を規定する部分(以下では「第1ストッパ部」とも呼ぶ)を有している。第1ストッパ部の具体的な構成については後に詳述する。
【0047】
本発明の実施形態による自転車100では、クランクアーム20が上述したような構成を有していることにより、上り坂において楽に漕ぎ進むことが可能となる。以下、この理由を説明する。以下の説明において、「ペダル上死点」および「ペダル下死点」に言及することがある。「ペダル上死点」は、ペダルがもっとも高い位置にあって推進力が得られない点であり、「ペダル下死点」は、ペダルがもっとも低い位置にあって推進力が得られない点である。
【0048】
図3は、従来の自転車におけるクランク軸913、クランクアーム920およびペダル930を示す図である。
【0049】
従来の自転車では、右クランクアーム920Aおよび左クランクアーム920Bのそれぞれは、分割されておらず、また、屈曲していない。そのため、図3に示すように、一対のペダル930のうちの一方(ここでは左ペダル930B)がペダル上死点に位置しているとき、他方(ここでは右ペダル930A)はペダル下死点に位置している。従って、この状態で運転者がどちらのペダル930を重力方向に踏み込んでも推進力は得られない。そのため、上り坂を楽に漕ぎ進むことができない。
【0050】
図4は、本発明の実施形態による自転車100において、一対のペダル30のうちの一方(具体的には左ペダル30B)がペダル上死点に位置している状態を示している。図4に示す状態において、左ペダル30Bはペダル上死点に位置しているが、このとき、右ペダル30Aはペダル下死点には位置していない。右クランクアーム20Aは引張バネ23の付勢力によって屈曲しており、この状態において右ペダル30Aを、右クランクアーム20Aが伸びるように(つまり屈曲角αが小さくなるように)重力方向にさらに踏み込むことができるからである。
【0051】
図5は、図4に示した状態から右ペダル30Aをさらに踏み込むことによって、右ペダル30Aがペダル下死点に到達した状態を示している。左クランクアーム20Bはクランク軸13の順回転方向D1に屈曲しているので、図5に示すように、右ペダル30Aがペダル下死点に到達した時、左ペダル30Bは既にペダル上死点を通過してペダル上死点よりも車体前側に位置している。そのため、運転者は、ペダル上死点よりも車体前側に位置している左ペダル30Bを重力方向に踏み込むことで推進力を得ることができる。
【0052】
図6を参照しながら、自転車100においてペダル30に踏力(荷重)を加えてクランクアーム20を回転させたときの屈曲角αの変化(推移)を説明する。図6は、クランクアーム20の屈曲角αの変化を模式的に示す図であり、クランクアーム20を簡略化して示している。なお、以下の説明においては、ペダル上死点の位相角を0°とする。
【0053】
図6の右下部に示すように、90°から180°までの範囲(あるいは120°から180°までの範囲)の一部または全部において、クランクアーム20はその屈曲角αを小さくしながら回転する。つまり、各クランクアーム20は、ペダル30に荷重(踏力)が加えられたときに90°から180°までの範囲(あるいは120°から180°までの範囲)の少なくとも一部においてクランクアーム20が屈曲角αを小さくしながら(つまりクランクアーム20が伸びながら)回転するように構成されている。
【0054】
図6の中央下部に示すように、クランクアーム20の屈曲角αは、180°付近においてもっとも小さくなる。ここでは、屈曲角αが180°においてほぼ0°となる場合を例示しているが、屈曲角αは必ずしもいったん0°になる(つまりクランクアーム20が完全に伸びる)必要はない。
【0055】
図6の左下部に示すように、180°から270°までの範囲の一部または全部において、クランクアーム20はその屈曲角αを大きくしながら回転する。つまり、各クランクアーム20は、ペダル30に荷重が加えられたときに180°から270°までの範囲の少なくとも一部においてクランクアーム20が屈曲角αを大きくしながら回転するように構成されている。
【0056】
図6の上部に示すように、270°から90°までの範囲の一部または全部において、クランクアーム20はその屈曲角αを一定のままで回転する。つまり、各クランクアーム20は、ペダル30に荷重が加えられたときに270°から90°までの範囲の少なくとも一部においてクランクアーム20が屈曲角αを一定のままで回転するように構成されている。
【0057】
上述したように、本発明の実施形態による自転車100では、各クランクアーム20が、第1アーム部材21と、第2アーム部材22と、引張バネ(弾性部材)23とを有する。第1アーム部材21の一端部21aは、クランク軸13に連結されており、第2アーム部材22の一端部22aは、第1アーム部材21の他端部21bに回動可能に支持されている。そして、第1アーム部材21および第2アーム部材22は、クランクアーム20がクランク軸13の順回転方向D1に屈曲するように引張バネ23によって付勢されている。各クランクアーム20が引張バネ23の付勢力によって屈曲しているので、運転者は、一方のペダル30がペダル下死点に到達しようとする際、そのペダル30をクランクアーム20が伸びるように(つまり屈曲角αが小さくなるように)重力方向にさらに踏み込むことができる。これにより、ペダル下死点近傍において重力方向の踏力を推進力(回転力)に変換することが可能となる。また、クランクアーム20はクランク軸13の順回転方向D1に屈曲しているので、一方のペダル30がペダル下死点に到達した時、他方のペダル30は既にペダル上死点を通過してペダル上死点よりも車体前側に位置している。そのため、運転者は、ペダル上死点よりも車体前側に位置しているそのペダル30を重力方向に踏み込むことで推進力を得ることができる。このように、本発明の実施形態による自転車100では、一対のペダル30が同時にペダル上死点およびペダル下死点に位置することがないので、ペダル30の位相によらず、重力方向の踏み込みにより推進力を得ることができる。そのため、本発明の実施形態による自転車100によれば、負荷の高い(つまり勾配の大きい)上り坂であっても楽に漕ぎ進むことが可能になる。さらに、クランクアーム20が屈曲していることにより、ペダル上死点付近ではクランクアーム20の回転半径が小さくなるので、運転者は足を上げる高さを従来よりも低くできる。そのため、運転者の姿勢が安定するという利点も得られる。
【0058】
楽に漕ぎ進むことができるという効果および運転者の姿勢が安定するという効果をより確実に得る(あるいはより高くする)観点からは、クランクアーム20の屈曲角αはある程度以上大きいことが好ましい。具体的には、ペダル30に荷重が加えられていないときの屈曲角αが30°以上であることが好ましく、50°以上であることがより好ましい。ただし、クランクアーム20の屈曲角αが大きすぎると、ペダル上死点近傍において関節部がペダル30を超えて運転者に近づいてしまうおそれがあるので、クランクアーム20の屈曲角αは大きすぎないことが好ましい。具体的には、ペダル30に荷重が加えられていないときの屈曲角αは120°以下であることが好ましく、100°以下であることがより好ましい。また、ペダル30がペダル上死点にあるときに関節部の高さがペダル30の高さを超えないことが好ましいということもできる。
【0059】
楽に漕ぎ進むことができるという効果をより確実に得る(あるいはより高くする)観点からは、クランク軸13とペダル軸31とを結ぶ直線と、クランクアーム20の関節部との距離がある程度以上大きいことが好ましい。第2アーム部材22が長すぎる場合や短すぎる場合、上述した距離(クランク軸13とペダル軸31とを結ぶ直線と、クランクアーム20の関節部との距離)が比較的小さくなり、踏み込んだときにペダル30が重くて(つまり漕ぎ難くて)進みにくいおそれがある。そのため、第2アーム部材22の長さは、例えば第1アーム部材21の長さの50%以上200%以下であることが好ましい。
【0060】
第1アーム部材21および第2アーム部材22を付勢する弾性部材としては、例示した引張バネ23を好適に用いることができる。ただし、弾性部材は引張バネ23に限定されるものではなく、引張バネ23以外の弾性部材を用いてもよい。例えば、図7に示すように、各クランクアーム20は、弾性部材としてねじりバネ25を有していてもよい。ねじりバネ25は、バネが中心軸周りにねじりモーメントを受けたときに反発力が生じるバネである。ねじりバネ25も、クランクアーム20の弾性部材として好適に用いられる。
【0061】
弾性部材が引張バネ23である場合、図2に例示したように、引張バネ23と第1アーム部材21との接続箇所cp1が第1アーム部材21の長手方向の中心軸ax1からクランク軸13の順回転方向D1側にずれた位置にあり、且つ、引張バネ23と第2アーム部材22との接続箇所cp2が第2アーム部材22の長手方向の中心軸ax2からクランク軸13の順回転方向D1側にずれた位置にあると、いったん伸びきったクランクアーム20を順回転方向D1に屈曲した状態に戻すことが容易となる。
【0062】
なお、引張バネ23は、第1アーム部材21および第2アーム部材22に直接接続されてもよいし、他の部材を介して接続されてもよい。例えば、引張バネ23は、第1アーム部材21および第2アーム部材22のそれぞれに取り付けられたフック状の部材を介して第1アーム部材21および第2アーム部材22に接続されてもよい。
【0063】
弾性部材は、車幅方向において第1アーム部材21および第2アーム部材22よりも外側に位置していないことが好ましい。弾性部材が、車幅方向において第1アーム部材21および第2アーム部材22よりも(つまりクランクアーム20よりも)外側に位置していないことにより、弾性部材が運転者の足にとって邪魔にならない。弾性部材は、車幅方向において第1アーム部材21および第2アーム部材22よりも内側に位置していてもよいし、車幅方向において第1アーム部材21および第2アーム部材22に重なっていてもよい。
【0064】
既に説明したように、本実施形態のクランクアーム20は、第2アーム部材22の回動範囲の一方の端(クランク軸13の順回転方向D1側の端)を規定する部分(第1ストッパ部)を有している。図8および図9を参照しながら、第1ストッパ部の具体的な構成の例を説明する。以下の説明では、表記の簡単さのために、クランク軸13の順回転方向D1を「第1方向」と呼び、順回転方向D1の反対方向、すなわち、クランク軸13の逆回転方向D2(図8参照)を「第2方向」と呼ぶ。
【0065】
図8には、左クランクアーム20Bの第2アーム部材22が回動範囲の第1方向側端にある状態を示している。また、図8中には、左クランクアーム20Bが完全に伸びた状態(屈曲角αが0°の状態)を仮想的に点線で示している。図9は、完全に伸びた状態の左クランクアーム20Bを図8中の矢印Wの方向から見た図であり、引張バネ23の図示は省略している。
【0066】
図9に示すように、第1アーム部材21の先端部21bには、厚さ方向における中央に切り欠き部21nが形成されており、第2アーム部材22の基端部22aは、この切り欠き部21nに差し込まれている。この例では、第2アーム部材22を第1方向側に回動させていくと、図8に示すように、切り欠き部21nの底面の第1方向側のエッジneに第2アーム部材22が当接することにより、第2アーム部材22はそれ以上第1方向側に回動できなくなる。つまり、切り欠き部21nの底面の第1方向側のエッジneが、第1ストッパ部として機能する。
【0067】
各クランクアーム20が、第2アーム部材22の回動範囲の第1方向側端を規定する第1ストッパ部を有していると、回動範囲の一方の端(第1方向側端)を一意に定めることができる。
【0068】
なお、第1ストッパ部の具体的な構成は、ここで例示したものに限定されない。例えば、第1アーム部材21および/または第2アーム部材22に、第1ストッパ部として機能する部材を取り付けてもよい。
【0069】
また、各クランクアーム20は、第2アーム部材22の回動範囲の第2方向側端を規定する部分(「第2ストッパ部」と呼ぶ)を有していてもよい。クランクアーム20がこのような第2ストッパ部を有していると、第2アーム部材22の回動範囲の他方の端(第2方向側端)を一意に定めることができ、例えば、クランクアーム20が第2方向(クランク軸13の逆回転方向D2)に屈曲しないようにすることができる。第2ストッパ部の具体的な構成の説明をここでは省略するが、第1アーム部材21の一部が第2ストッパ部として機能してもよいし、第1アーム部材21および/または第2アーム部材22に、第2ストッパ部として機能する部材を取り付けてもよい。
【0070】
典型的には、右クランクアーム20Aと左クランクアーム20Bとは、自転車100に取り付けられていない状態においても区別され得る。例えば、右クランクアーム20Aの先端部には雌ねじ部として右ねじ(正ねじ)が形成されるのに対し、左クランクアーム20Bの先端部には雌ねじ部として左ねじ(逆ねじ)が形成される。このように、右クランクアーム20Aと左クランクアーム20Bとを自転車100に取り付けられていない状態において区別し得るので、クランクアーム20単体を見たときに、クランクアーム20の屈曲方向と、クランク軸13の順回転方向D1との関係が特定され得る。
【0071】
ここでは軽快車である自転車100を例示したが、本発明の実施形態による自転車は、軽快車以外であってもよい。例えば、本発明の実施形態による自転車は、ロードバイク等のスポーツ自転車であってもよい。なお、スポーツ自転車に乗る人と、普段スポーツ自転車に乗らない人とでは、ペダリングの仕方が異なる傾向がある。前者はペダル位置が90°を過ぎると踏む力を弱めることを意識するのに対し、後者はそうではなく、120°から180°の位置でも比較的大きな力で踏み込んでしまう傾向がある。本発明の実施形態によれば、120°から180°の位置における踏力を有効に推進力(回転力)に変えることができるので、本発明の実施形態は、スポーツ自転車よりも軽快車においていっそう適用する意義が大きいといえる。
【0072】
また、ここでは電動補助自転車ではない自転車100を例示したが、本発明の実施形態による自転車は、電動補助自転車であってもよい。電動補助自転車は、駆動ユニットを備える。駆動ユニットは、車体フレームに取り付けられ、車輪に伝達される駆動力を発生させる。駆動ユニットは、モータ(電動機)を有する。
【0073】
また、ここでは2つの車輪(1つの前輪11および1つの後輪12)を備える自転車100を例示したが、本発明の実施形態による自転車は、3つ以上の車輪を備える自転車であってもよい。
【0074】
上述したように、本発明の実施形態による自転車100は、クランク軸13と、前記クランク軸13の両端部に取り付けられた一対のクランクアーム20と、前記一対のクランクアーム20の先端部に取り付けられた一対のペダル30と、を有する。前記一対のクランクアーム20のそれぞれは、一端部21aが前記クランク軸13に連結された第1アーム部材21と、一端部22aが前記第1アーム部材21の他端部21bに回動可能に支持された第2アーム部材22であって、他端部22bが前記一対のペダル30のうちの対応するペダル30を支持する第2アーム部材22と、当該クランクアーム20が前記クランク軸13の順回転方向D1に屈曲するように前記第1アーム部材21および前記第2アーム部材22を付勢する弾性部材23、25と、を有する。
【0075】
本発明の実施形態による自転車100では、各クランクアーム20が、第1アーム部材21と、第2アーム部材22と、弾性部材23、25とを有する。第1アーム部材21の一端部21aは、クランク軸13に連結されており、第2アーム部材22の一端部22aは、第1アーム部材21の他端部21bに回動可能に支持されている。そして、第1アーム部材21および第2アーム部材22は、クランクアーム20がクランク軸13の順回転方向D1に屈曲するように弾性部材23、25によって付勢されている。各クランクアーム20が弾性部材23、25の付勢力によって屈曲しているので、運転者は、一方のペダル30がペダル下死点に到達しようとする際、そのペダル30をクランクアーム20が伸びるように(つまり屈曲角αが小さくなるように)重力方向にさらに踏み込むことができる。これにより、ペダル下死点近傍において重力方向の踏力を推進力(回転力)に変換することが可能となる。また、クランクアーム20はクランク軸13の順回転方向D1に屈曲しているので、一方のペダル30がペダル下死点に到達した時、他方のペダル30は既にペダル上死点を通過してペダル上死点よりも車体前側に位置している。そのため、運転者は、ペダル上死点よりも前側に位置しているそのペダル30を重力方向に踏み込むことで推進力を得ることができる。このように、本発明の実施形態による自転車100では、一対のペダル30が同時にペダル上死点およびペダル下死点に位置することがないので、ペダル30の位相によらず、重力方向の踏み込みにより推進力を得ることができる。そのため、本発明の実施形態による自転車100によれば、負荷の高い(つまり勾配の大きい)上り坂であっても楽に漕ぎ進むことが可能になる。さらに、クランクアーム20が屈曲していることにより、ペダル上死点付近ではクランクアーム20の回転半径が小さくなるので、運転者は足を上げる高さを従来よりも低くできる。そのため、運転者の姿勢が安定するという利点も得られる。
【0076】
ある実施形態において、ペダル上死点の位相角を0°とすると、前記一対のクランクアーム20のそれぞれは、前記一対のペダル30に荷重が加えられたときに90°から180°までの範囲の少なくとも一部において当該クランクアーム20が屈曲角αを小さくしながら回転するように構成されている。
【0077】
ある実施形態において、ペダル上死点の位相角を0°とすると、前記一対のクランクアーム20のそれぞれは、前記一対のペダル30に荷重が加えられたときに120°から180°までの範囲の少なくとも一部において当該クランクアーム20が屈曲角αを小さくしながら回転するように構成されている。
【0078】
ある実施形態において、ペダル上死点の位相角を0°とすると、前記一対のクランクアーム20のそれぞれは、前記一対のペダル30に荷重が加えられたときに180°から270°までの範囲の少なくとも一部において当該クランクアーム20が屈曲角αを大きくしながら回転するように構成されている。
【0079】
ある実施形態において、ペダル上死点の位相角を0°とすると、前記一対のクランクアーム20のそれぞれは、前記一対のペダル30に荷重が加えられたときに270°から90°までの範囲の少なくとも一部において当該クランクアーム20が屈曲角αを一定のままで回転するように構成されている。
【0080】
ある実施形態において、前記一対のクランクアーム20のそれぞれは、前記一対のペダル30に荷重が加えられて前記一対のペダル30のうちの一方のペダル30がペダル下死点に到達した時に他方のペダル30がペダル上死点よりも車体前側に位置しているように構成されている。
【0081】
ある実施形態において、前記一対のペダル30に荷重が加えられていないとき、前記一対のクランクアーム20のそれぞれの屈曲角αは30°以上120°以下である。
【0082】
楽に漕ぎ進むことができるという効果および運転者の姿勢が安定するという効果をより確実に得る(あるいはより高くする)観点からは、クランクアーム20の屈曲角αはある程度以上大きいことが好ましい。具体的には、ペダル30に荷重が加えられていないときの屈曲角αが30°以上であることが好ましく、50°以上であることがより好ましい。ただし、クランクアーム20の屈曲角αが大きすぎると、ペダル上死点近傍において第1アーム部材21と第2アーム部材22との結合部分(関節部)がペダル30を超えて運転者に近づいてしまうおそれがあるので、クランクアーム20の屈曲角αは大きすぎないことが好ましい。具体的には、ペダル30に荷重が加えられていないときの屈曲角αは120°以下であることが好ましく、100°以下であることがより好ましい。
【0083】
ある実施形態において、前記第2アーム部材22の長さは、前記第1アーム部材21の長さの50%以上200%以下である。
【0084】
第2アーム部材22が長すぎても短すぎても、踏み込んだときにペダル30が重くて(つまり漕ぎ難くて)進みにくいおそれがある。そのため、第2アーム部材22の長さは、第1アーム部材21の長さの50%以上200%以下であることが好ましい。
【0085】
ある実施形態において、前記弾性部材23、25は、引張バネ23またはねじりバネ25である。
【0086】
弾性部材23、25としては、例えば、引張バネ23またはねじりバネ25を好適に用いることができる。
【0087】
ある実施形態において、前記弾性部材23、25は、前記引張バネ23であり、前記引張バネ23は、前記第1アーム部材21および前記第2アーム部材22に接続されている。前記引張バネ23と前記第1アーム部材21との接続箇所cp1は、前記第1アーム部材21の長手方向の中心軸ax1から前記クランク軸13の順回転方向D1側にずれた位置にあり、前記引張バネ23と前記第2アーム部材22との接続箇所cp2は、前記第2アーム部材22の長手方向の中心軸ax2から前記クランク軸13の順回転方向D1側にずれた位置にある。
【0088】
弾性部材23、25が引張バネ23である場合、引張バネ23と第1アーム部材21との接続箇所cp1が第1アーム部材21の長手方向の中心軸ax1からクランク軸13の順回転方向D1側にずれた位置にあり、且つ、引張バネ23と第2アーム部材22との接続箇所cp2が第2アーム部材22の長手方向の中心軸ax2からクランク軸13の順回転方向D1側にずれた位置にあると、いったん伸びきったクランクアーム20を順回転方向D1に屈曲した状態に戻すことが容易となる。
【0089】
ある実施形態において、前記弾性部材23、25は、車幅方向において前記第1アーム部材21および前記第2アーム部材22よりも外側に位置していない。
【0090】
弾性部材23、25が、車幅方向において第1アーム部材21および第2アーム部材22よりも(つまりクランクアーム20よりも)外側に位置していないことにより、弾性部材23、25が運転者の足にとって邪魔にならない。弾性部材23、25は、車幅方向において第1アーム部材21および第2アーム部材22よりも内側に位置していてもよいし、車幅方向において第1アーム部材21および第2アーム部材22に重なっていてもよい。
【0091】
ある実施形態において、前記クランク軸13の順回転方向D1を第1方向と呼び、前記クランク軸13の逆回転方向D2を第2方向と呼ぶとき、前記一対のクランクアーム20のそれぞれは、前記第2アーム部材22の回動範囲の第1方向側端を規定する第1ストッパ部を有する。
【0092】
クランク軸13の順回転方向D1を「第1方向」、逆回転方向D2を「第2方向」と呼ぶとき、各クランクアーム20が、第2アーム部材22の回動範囲の第1方向側端を規定する第1ストッパ部を有していると、回動範囲の一方の端(第1方向側端)を一意に定めることができる。
【0093】
ある実施形態において、前記一対のクランクアーム20のそれぞれは、前記第2アーム部材22の回動範囲の第2方向側端を規定する第2ストッパ部を有する。
【0094】
各クランクアーム20が、第2アーム部材22の回動範囲の第2方向側端を規定する第2ストッパ部を有していると、第2アーム部材22の回動範囲の他方の端(第2方向側端)を一意に定めることができ、例えば、クランクアーム20がクランク軸13の逆回転方向D2に屈曲しないようにすることができる。
【0095】
本発明の実施形態による自転車用のクランクアーム20は、一端部21aがクランク軸13に連結された第1アーム部材21と、一端部22aが前記第1アーム部材21の他端部21bに回動可能に支持された第2アーム部材22であって、他端部22bがペダル30を支持する第2アーム部材22と、前記クランクアーム20が前記クランク軸13の順回転方向D1に屈曲するように前記第1アーム部材21および前記第2アーム部材22を付勢する弾性部材23、25と、を備える。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の実施形態によると、上り坂においても楽に漕ぎ進むことができる自転車およびそのような自転車用のクランクアームを提供することができる。本発明の実施形態は、種々の自転車に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1:車体フレーム、2:ヘッドチューブ、3:ダウンチューブ、4:シートチューブ、5:チェーンステー、6:シートステー、7:ボトムブラケット、8:フロントフォーク、9:ハンドル、10:サドル、11:前輪、12:後輪、13:クランク軸、20:クランクアーム、20A:右クランクアーム、20B:左クランクアーム、21:第1アーム部材、21a:第1アーム部材の一端部(基端部)、21b:第1アーム部材の他端部(先端部)、21n:第1アーム部材の切り欠き部、22:第2アーム部材、22a:第2アーム部材の一端部(基端部)、22b:第2アーム部材の他端部(先端部)23:引張バネ、24:ピン、25:ねじりバネ、30:ペダル、30A:右ペダル、30B:左ペダル、31:ペダル軸、32:ペダル本体、100:自転車、α:クランクアームの屈曲角、ax1:第1アーム部材の長手方向の中心軸、ax2:第2アーム部材の長手方向の中心軸、cp1:引張バネと第1アーム部材との接続箇所、cp2:引張バネと第2アーム部材との接続箇所、D1:クランク軸の順回転方向、D2:クランク軸の逆回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9