(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093077
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】半導体装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20220616BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20220616BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 652K
H01L29/78 658E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206174
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜田 弘文
(57)【要約】
【課題】耐圧低下が抑制された半導体装置を提供する。。
【解決手段】半導体装置1の化合物半導体層は、第1導電型のドリフト領域と23と、前記ドリフト領域23の上方に設けられている第1導電型のJFET領域24と、前記ドリフト領域23の上方に設けられており、前記JFET領域24に隣接する第2導電型のボディ領域25と、前記JFET領域24内に設けられている第2導電型又はi型のJFET埋設領域27と、を備えている。前記JFET領域24は、前記ドリフト領域23側の底面部及び前記ボディ領域25側の側面部に、前記JFET埋設領域27側の内部よりも不純物濃度が濃い高濃度部分24aを有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物半導体層(20)を有する半導体装置(1)であって、
前記化合物半導体層は、
第1導電型のドリフト領域(23)と、
前記ドリフト領域の上方に設けられている第1導電型のJFET領域(24)と、
前記ドリフト領域の上方に設けられており、前記JFET領域に隣接する第2導電型のボディ領域(25)と、
前記JFET領域内に設けられている第2導電型又はi型のJFET埋設領域(27)と、を備えており、
前記JFET領域は、前記ドリフト領域側の底面部及び前記ボディ領域側の側面部に、前記JFET埋設領域側の内部よりも不純物濃度が濃い高濃度部分(24a)を有している、半導体装置。
【請求項2】
前記JFET埋設領域は、ソース電極(34)に電気的に接続されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記JFET領域は、前記化合物半導体層の深部に向けて先細りのテーパ形状である、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記JFET埋設領域も、前記化合物半導体層の深部に向けて先細りのテーパ形状である、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記化合物半導体層は、上面の一部が突出して構成された凸部(20A)を有しており、
前記JFET領域の一部及び前記JFET埋設領域の一部が、前記凸部内にも設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
絶縁ゲート部をさらに備えており、
前記JFET領域と前記ボディ領域のpn接合面は、前記凸部の側方において前記化合物半導体層の前記上面に露出する位置に配置されており、
前記絶縁ゲート部は、前記JFET領域と前記ボディ領域の前記pn接合面に対向するように配置されている、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁ゲート部は、前記凸部の側面にも対向するように配置されており、
前記凸部は、前記化合物半導体層の上方に向けて先細りのテーパ形状である、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記JFET埋設領域は、前記凸部の頂面全体に露出する位置に配置されている、請求項5~7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記化合物半導体層が窒化物半導体層である、請求項1~8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
半導体装置(1)の製造方法であって、
第1導電型のドリフト領域(23)と第2導電型のボディ領域(25)が積層している化合物半導体層(20)の一方の主面から前記ボディ領域を貫通して前記ドリフト領域に達するトレンチ(TR1)を形成するトレンチ形成工程と、
前記トレンチ内に化合物半導体の第1導電型のJFET領域(24)を結晶成長させる工程であって、前記トレンチが完全に充填されるよりも前に前記JFET領域の結晶成長を停止させる、JFET領域形成工程と、
前記トレンチ内の前記JFET領域によって画定される溝内に化合物半導体の第2導電型又はi型のJFET埋設領域(27)を結晶成長させるJFET埋設領域形成工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記トレンチ形成工程において前記トレンチを形成するために形成されたマスク層(42)を残存させた状態で、前記JFET領域形成工程と前記JFET埋設領域形成工程を実施する、請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記化合物半導体層が窒化物半導体層である、請求項10又は11に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、窒化物半導体層を用いて製造された半導体装置を開示する。この半導体装置の窒化物半導体層は、n型のドリフト領域と、そのドリフト領域の上方に設けられているn型のJFET領域と、そのドリフト領域の上方に設けられているとともにJFET領域に隣接するp型のボディ領域と、を有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「ホモエピGaN上ノーマリオフ型MOSFETの開発」 応用物理 第86巻 第5号 p.376(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような半導体装置を製造する場合、n型のドリフト領域とp型のボディ領域が積層している窒化物半導体層の上面からボディ領域を貫通してドリフト領域に達するトレンチを形成し、次に、そのトレンチ内にJFET領域を結晶成長させることが考えられる。JFET領域は、トレンチの底面に露出するドリフト領域及びトレンチの側面に露出するボディ領域の表面から結晶成長して形成される。
【0005】
本発明者らの検討によると、JFET領域を結晶成長するときの初期層に、例えばシリコン、酸素、炭素等の不純物が多く取り込まれることが分かってきた。このため、JFET領域では、ドリフト領域側の底面部及びボディ領域側の側面部に、内部よりも不純物濃度が濃い高濃度部分が形成されることが分かってきた。
【0006】
このような高濃度部分が形成されると、半導体装置がオフのときのJFET領域の空乏化が阻害され、半導体装置の耐圧が低下する。本明細書は、耐圧低下が抑制された半導体装置とその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する半導体装置(1)は、化合物半導体層(20)を有することができる。前記化合物半導体層は、第1導電型のドリフト領域(23)と、前記ドリフト領域の上方に設けられている第1導電型のJFET領域(24)と、前記ドリフト領域の上方に設けられており、前記JFET領域に隣接する第2導電型のボディ領域(25)と、前記JFET領域内に設けられている第2導電型又はi型のJFET埋設領域(27)と、を備えることができる。前記JFET領域は、前記ドリフト領域側の底面部及び前記ボディ領域側の側面部に、前記JFET埋設領域側の内部よりも不純物濃度が濃い高濃度部分(24a)を有することができる。この半導体装置では、前記JFET領域内に第2導電型又はi型の前記JFET埋設領域が設けられている。このため、前記JFET領域が前記高濃度部分を有していても、前記JFET領域の空乏化が促進される。上記半導体装置では、耐圧低下が抑制される。
【0008】
本明細書が開示する半導体装置(1)の製造方法は、第1導電型のドリフト領域(23)と第2導電型のボディ領域(25)が積層している化合物半導体層(20)の一方の主面から前記ボディ領域を貫通して前記ドリフト領域に達するトレンチ(TR1)を形成するトレンチ形成工程と、前記トレンチ内に化合物半導体の第1導電型のJFET領域(24)を結晶成長させる工程であって、前記トレンチが完全に充填されるよりも前に前記JFET領域の結晶成長を停止させる、JFET領域形成工程と、前記トレンチ内の前記JFET領域によって画定される溝内に化合物半導体の第2導電型又はi型のJFET埋設領域(27)を結晶成長させるJFET埋設領域形成工程と、を備えることができる。この製造方法によると、前記JFET領域を結晶成長させるときに、前記JFET領域の初期層に高濃度部分が形成される。しかしながら、この製造方法によると、前記JFET領域内に第2導電型又はi型の前記JFET埋設領域を形成することができる。このため、この製造方法によって製造される前記半導体装置では、前記JFET領域が前記高濃度部分を有していても、前記JFET領域の空乏化が促進される。上記製造方法は、耐圧低下が抑制された前記半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
【
図2】半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
【
図3】半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
【
図4】半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
【
図5】
図1の半導体装置の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図6】
図1の半導体装置の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図7】
図1の半導体装置の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図8】
図1の半導体装置の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図9】
図3の半導体装置の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図10】
図3の半導体装置の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図11】
図3の半導体装置の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図12】
図3の半導体装置の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本明細書が開示する技術が適用された半導体装置及びその製造方法を説明する。以下の説明では、各図を通して実質的に共通する構成要素については共通の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0011】
図1に示されるように、半導体装置1は、n
+型の半導体基板10と、半導体基板10上に設けられている窒化物半導体層の化合物半導体層20、半導体基板10の下面を被覆するドレイン電極32、化合物半導体層20の上面の一部を被覆するソース電極34、及び、化合物半導体層20の上面の一部に設けられている絶縁ゲート部36を備えている。化合物半導体層20は、n型のバッファ領域22、n型のドリフト領域23、n型のJFET領域24、p型のボディ領域25、n
+型のソース領域26、及び、p型のJFET埋設領域27を有している。なお、JFET埋設領域27は、i型であってもよい。この例では、化合物半導体層20として窒化ガリウム(GaN)の窒化物半導体層が用いられているが、この例に代えて、例えば炭化珪素層又は酸化ガリウム層が用いられてもよい。
【0012】
半導体基板10は、その上面から窒化ガリウム(GaN)の化合物半導体層20がエピタキシャル成長可能な下地基板であり、例えば、シリコン基板、炭化珪素基板である。なお、半導体基板10は、窒化ガリウム基板であってもよい。半導体基板10は、ドレイン電極32にオーミック接触している。
【0013】
バッファ領域22は、半導体基板10上に設けられており、半導体基板10と窒化物半導体層20の間に格子歪が発生するのを抑制するための層である。バッファ領域22は、例えばn型不純物を含む窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)である。
【0014】
ドリフト領域23は、バッファ領域22上に設けられており、バッファ領域22とJFET領域24の間、且つ、バッファ領域22とボディ領域25の間に配置されている。ドリフト領域23は、例えばn型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)である。
【0015】
JFET領域24は、ドリフト領域23上に設けられており、ドリフト領域23の上面から化合物半導体層20の上面まで厚み方向に沿って延びており、ドリフト領域23の上面から突出した形態を有している。換言すると、JFET領域24は、化合物半導体層20の上面からボディ領域25を貫通してドリフト領域23に達するまで延びている。JFET領域24は、例えばn型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)である。
【0016】
また、JFET領域24は、n型の不純物濃度(即ち、ドーパント濃度)が濃い高濃度部分24aを有している。
図1では、JFET領域24内にグレーに彩色されている部分が高濃度部分24aである。高濃度部分24aは、JFET領域24のうちのドリフト領域23側の底面部及びボディ領域25側の側面部に配置されており、JFET埋設領域27側の内部よりもn型の不純物濃度が濃い。このような高濃度部分24aは、後述の製造方法で説明するように、エピタキシャル結晶成長技術を利用してJFET領域24を形成するときに形成される。高濃度部分24aは、JFET領域24のうちの不純物濃度が変化する部分として定義される。例えば、高濃度部分24aでは、JFET領域24とドリフト領域23の接合面近傍に不純物濃度のピークがあり、内部に向けて不純物濃度が低下する。同様に、高濃度部分24aでは、JFET領域24とボディ領域25の接合面近傍に不純物濃度のピークがあり、内部に向けて不純物濃度が低下する。JFET領域24のうちの高濃度部分24a以外の部分では、不純物濃度が概ね一定である。
【0017】
ボディ領域25は、ドリフト領域23上に設けられており、JFET領域24を間に置いて対向するようにJFET領域24の側方に配置されている。ボディ領域25は、例えばp型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)である。
【0018】
ソース領域26は、ボディ領域25上に設けられており、化合物半導体層20の上面に露出する位置に配置されている。ソース領域26は、ボディ領域25によってドリフト領域23及びJFET領域24から隔てられている。ソース領域26は、例えばn型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)である。ソース領域26は、ソース電極34にオーミック接触している。
【0019】
JFET埋設領域27は、JFET領域24内に設けられており、化合物半導体層20の上面に露出する位置に配置されている。JFET埋設領域27は、JFET領域24によってドリフト領域23及びボディ領域25から隔てられている。JFET埋設領域27は、高濃度部分24aから離れた位置でJFET領域24に埋設されるように設けられている。JFET埋設領域27は、例えばp型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)である。JFET埋設領域27は、ソース電極34にオーミック接触している。この例に代えて、JFET埋設領域27は、i型であってもよいし、電位がフローティングであってもよい。
【0020】
絶縁ゲート部36は、化合物半導体層20の上面の一部に設けられており、酸化シリコンのゲート絶縁膜36a及びポリシリコンのゲート電極36bを有している。ゲート電極36bは、JFET領域24とソース領域26を隔てる部分のボディ領域25にゲート絶縁膜36aを介して対向している。
【0021】
次に、半導体装置1の動作を説明する。使用時には、例えばドレイン電極32に正電圧が印加され、ソース電極34が接地される。ゲート電極36bにゲート閾値電圧よりも高い正電圧が印加されると、JFET領域24とソース領域26を隔てる部分のボディ領域25に反転層が形成され、半導体装置1がターンオンする。このとき、反転層を経由してソース領域26からJFET領域24に電子が流入する。JFET領域24に流入した電子は、そのJFET領域24を縦方向に流れてドレイン電極32に向かう。これにより、ドレイン電極32とソース電極34が導通する。
【0022】
ゲート電極36bが接地されると、反転層が消失し、半導体装置1がターンオフする。このとき、JFET領域24とボディ領域25のpn接合面からJFET領域24内に空乏層が伸びる。しかしながら、JFET領域24は高濃度部分24aを有しているので、このJFET領域24とボディ領域25のpn接合面からの空乏層の伸展は阻害される。一方、半導体装置1では、JFET領域24内にJFET埋設領域27が設けられている。このため、JFET領域24とJFET埋設領域27のpn接合面からJFET領域24内に空乏層が伸びる。これにより、半導体装置1がオフのときにJFET領域24が実質的に完全空乏化されるので、半導体装置1は高い耐圧を有することができる。また、JFET領域24が実質的に完全空乏化されるので、例えばJFET領域24上のゲート絶縁膜36aの電界集中が緩和される。この点においても、半導体装置1は高い耐圧を有することができる。なお、JFET埋設領域27がi型の場合であっても、JFET埋設領域27が設けられていない場合に比してJFET領域24の空乏化が促進されるので、半導体装置1は高い耐圧を有することができる。また、JFET埋設領域27の電位がフローティングの場合であっても、JFET埋設領域27が設けられていない場合に比してJFET領域24の空乏化が促進されるので、半導体装置1は高い耐圧を有することができる。
【0023】
図2に示す半導体装置2は、JFET領域24が化合物半導体層20の深部に向けて先細りのテーパ形状であることを特徴としている。半導体装置2はさらに、JFET埋設領域27も化合物半導体層20の深部に向けて先細りのテーパ形状であることを特徴としている。このような形状であると、エピタキシャル結晶成長技術を利用してJFET領域24及びJFET埋設領域27を形成するときに、ボイドが形成されるのを抑制することができる。また、JFET埋設領域27もテーパ形状とすることにより、JFET領域24の側面とJFET埋設領域27の側面が概ね平行な関係となり、JFET領域24の幅が概ね一定となる。これにより、JFET領域24の全体が良好に空乏化されるので、半導体装置1は高い耐圧を有することができる。
【0024】
図3に示す半導体装置3は、化合物半導体層20が凸部20Aを有していることを特徴としている。凸部20Aは、化合物半導体層20の上面の一部が突出するように凸状に加工されて構成されている。凸部20Aは、対向するボディ領域25の間の領域、即ち、JFET領域24の上方に設けられている。凸部20A内には、JFET領域24の一部及びJFET埋設領域27の一部が設けられている。
【0025】
凸部20Aは、化合物半導体層20の上面に対して直交する方向から見たときに(即ち、化合物半導体層20を平面視したときに)、対向するボディ領域25の間の領域の内側に位置している。換言すると、対向するボディ領域25を結ぶ方向(紙面左右方向)において、凸部20Aの幅は、対向するボディ領域25間の距離よりも短い。これにより、JFET領域24とボディ領域25のpn接合面が、凸部20Aの側方に位置しており、化合物半導体層20の上面に露出する位置に配置されている。
【0026】
絶縁ゲート部36は、ソース領域26に対向する位置から凸部20Aの側面に対向する位置まで延びて配置されている。特に、絶縁ゲート部36は、化合物半導体層20の上面に露出するJFET領域24とボディ領域25のpn接合面に対向するように配置されている。これにより、JFET領域24とソース領域26の間のボディ領域25に形成される反転層が、JFET領域24に確実に接続することができる。
【0027】
凸部20A内に設けられているJFET埋設領域27の一部は、断面T形状であり、凸部20Aの頂面全体に露出する位置に配置されている。これによりJFET埋設領域27は、凸部20Aの頂面においてソース電極34と大きな面積で接触することができる。JFET埋設領域27とソース電極34は、低い接触抵抗で電気的に接続されている。
【0028】
図4に示す半導体装置4は、凸部20Aが化合物半導体層20の上方に向けて先細りのテーパ形状であることを特徴としている。この形状によると、化合物半導体層20の上面と凸部20Aの側面で構成される角部の角度が大きくなり、この角部を被覆する絶縁ゲート部36の曲率が大きくなる。これにより、この角部を被覆するゲート絶縁膜36aの電界集中が緩和され、半導体装置4の耐圧が改善される。
【0029】
(半導体装置1の製造方法)
次に、
図1に示す半導体装置1の製造方法を説明する。まず、
図5に示されるように、エピタキシャル成長技術を利用して、半導体基板10の表面からバッファ領域22、ドリフト領域23及びボディ領域25をこの順で積層し、化合物半導体層20を準備する。次に、化合物半導体層20の上面にマスク42を成膜する。マスク42の材料は、例えば酸化シリコンである。次に、ドライエッチング技術を利用して、マスク42の開口に露出する化合物半導体層20の表面からボディ領域25を貫通してドリフト領域23に達するトレンチTR1を形成する(トレンチ形成工程)。トレンチTR1は、ドリフト領域23の一部に侵入する深さを有している。トレンチTR1を形成した後に、マスク42を除去する。なお、ドライエッチング条件を調整することで、トレンチTR1をテーパ状に加工することができる。この場合、
図2に示す半導体装置2を製造することができる。
【0030】
次に、
図6に示されるように、エピタキシャル成長技術を利用して、化合物半導体層20の上面及びトレンチTR1の内壁面に、JFET領域24を結晶成長して形成する(JFET領域形成工程)。このJFET領域形成工程では、トレンチTR1が完全に充填されるよりも前にJFET領域24の結晶成長を停止させる。
図6に示されるように、JFET領域24を結晶成長するときの初期層には、例えばシリコン、酸素、炭素等の不純物が多く取り込まれ、高濃度部分24aが形成される。
【0031】
次に、
図7に示されるように、エピタキシャル成長技術を利用して、トレンチTR1内のJFET領域24によって画定される溝が充填されるように、JFET埋設領域27を結晶成長して形成する(JFET埋設領域形成工程)。
【0032】
次に、
図8に示されるように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を利用して、ボディ領域25の上面に成膜されたJFET領域24及びJFET埋設領域27を除去して化合物半導体層20の上面を平坦化する。
【0033】
次に、既知の製造技術を利用して、ソース領域26、ゲート絶縁膜36a、ゲート電極36b、ドレイン電極32及びソース電極34を形成することで、
図1に示す半導体装置1を製造することができる。
【0034】
(半導体装置3の製造方法)
まず、半導体装置3の製造方法において、
図5に示す工程までは半導体装置1と同様である。ただし、半導体装置3の製造方法では、マスク42を除去することなく次の工程に進む。
【0035】
図9に示すように、エピタキシャル成長技術を利用して、トレンチTR1の内壁面に、JFET領域24を結晶成長して形成する(JFET領域形成工程)。このJFET領域形成工程では、トレンチTR1が完全に充填されるよりも前にJFET領域24の結晶成長を停止させる。
図9に示されるように、JFET領域24を結晶成長するときの初期層には、例えばシリコン、酸素、炭素等の不純物が多く取り込まれ、高濃度部分24aが形成される。ここで、マスク42の材料は酸化シリコンであり、窒化ガリウム(GaN)とは異種材料である。このため、マスク42の表面からはJFET領域24が結晶成長しない。したがって、マスク42の上面はJFET領域24によって被覆されていない。さらに、トレンチTR1の上方に位置するマスク42の側面の上部分も、JFET領域24によって被覆されていない。なお、マスク42の側面の下部分を被覆するJFET領域24は、トレンチTR1内のJFET領域24が上方向に結晶成長した部分である。
【0036】
次に、
図10に示されるように、エピタキシャル成長技術を利用して、トレンチTR1内のJFET領域24によって画定される溝が充填されるように、JFET埋設領域27を結晶成長して形成する(JFET埋設領域形成工程)。これにより、トレンチTR1の上方に化合物半導体層20の凸部20Aが形成される。また、上記したように、マスク42の側面の上部分が露出するようにJFET領域24が形成されているので、結晶成長したJFET埋設領域27の一部は断面T形状となるように形成される。
【0037】
次に、
図11に示すように、ウェットエッチング技術を利用して、マスク42を選択的に除去する。さらに、
図12に示すように、TMAH処理により、凸部20Aを含む化合物半導体層20の上面の一部を薄く除去する。これにより、凸部20Aは、その幅が狭くなるように加工される。なお、このTMAH処理条件を調整することにより、凸部20Aをテーパ状に加工することができる。この場合、
図4に示す半導体装置4を製造することができる。
【0038】
次に、既知の製造技術を利用して、ソース領域26、ゲート絶縁膜36a、ゲート電極36b、ドレイン電極32及びソース電極34を形成することで、
図3に示す半導体装置3を製造することができる。
【0039】
この製造方法は、
図1の半導体装置1の製造方法と比較すると、CMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を利用した平坦化工程が不要となるので、製造工程が簡略化される。換言すると、
図3及び
図4に示す半導体装置3、4は、
図1の半導体装置1に比して製造が容易な構造を有している、と言うことができる。
【0040】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0041】
本明細書が開示する半導体装置は、化合物半導体層を有することができる。前記化合物半導体層は、特に限定されるものではないが、例えば窒化物半導体層、炭化珪素層又は酸化ガリウム層であってもよい。前記化合物半導体層は、第1導電型のドリフト領域と、前記ドリフト領域の上方に設けられている第1導電型のJFET領域と、前記ドリフト領域の上方に設けられており、前記JFET領域に隣接する第2導電型のボディ領域と、前記JFET領域内に設けられている第2導電型又はi型のJFET埋設領域と、を備えることができる。前記JFET領域は、前記ドリフト領域に直接的に接するように前記ドリフト領域の上方に配置されていてもよく、他の領域を介して前記ドリフト領域の上方に配置されていてもよい。前記ボディ領域は、前記ドリフト領域に直接的に接するように前記ドリフト領域の上方に配置されていてもよく、他の領域を介して前記ドリフト領域の上方に配置されていてもよい。前記JFET領域は、前記ドリフト領域側の底面部及び前記ボディ領域側の側面部に、前記JFET埋設領域側の内部よりも不純物濃度が濃い高濃度部分を有することができる。
【0042】
上記半導体装置では、前記JFET埋設領域がソース電極に電気的に接続されていてもよい。前記JFET埋設領域と前記JFET領域の接合面から前記JFET領域に向けて空乏化が促進される。
【0043】
上記半導体装置では、前記JFET領域が前記化合物半導体層の深部に向けて先細りのテーパ形状であってもよい。この場合、前記JFET埋設領域も、前記化合物半導体層の深部に向けて先細りのテーパ形状であってもよい。前記JFET領域及び前記JFET埋設領域を結晶成長して形成するときに、ボイドの形成を抑えることができる。
【0044】
上記半導体装置では、前記化合物半導体層は、上面の一部が突出して構成された凸部を有していてもよい。この場合、前記JFET領域の一部及び前記JFET埋設領域の一部が、前記凸部内にも設けられていてもよい。このような凸部を有する上記半導体装置は、製造が容易な構造を有している。
【0045】
上記半導体装置は、絶縁ゲートをさらに備えていてもよい。この場合、前記JFET領域と前記ボディ領域のpn接合面は、前記凸部の側方において前記化合物半導体層の前記上面に露出する位置に配置されていてもよい。前記絶縁ゲートは、前記JFET領域と前記ボディ領域の前記pn接合面に対向するように配置されていてもよい。前記ボディ領域に形成される反転層が、前記JFET領域に確実に接続することができる。
【0046】
上記半導体装置では、前記絶縁ゲートが前記凸部の側面にも対向するように配置されていてもよい。この場合、前記凸部が、前記化合物半導体層の上方に向けて先細りのテーパ形状であってもよい。前記絶縁ゲートの電界集中が緩和される。
【0047】
上記半導体装置では、前記JFET埋設領域が前記凸部の頂面全体に露出する位置に配置されていてもよい。例えば前記JFET埋設領域が前記ソース電極と接続する場合、前記JFET埋設領域と前記ソース電極が低い接触抵抗で電気的に接続することができる。
【0048】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、第1導電型のドリフト領域と第2導電型のボディ領域が積層している化合物半導体層の一方の主面から前記ボディ領域を貫通して前記ドリフト領域に達するトレンチを形成するトレンチ形成工程と、前記トレンチ内に化合物半導体の第1導電型のJFET領域を結晶成長させる工程であって、前記トレンチが完全に充填されるよりも前に前記JFET領域の結晶成長を停止させる、JFET領域形成工程と、前記トレンチ内の前記JFET領域によって画定される溝内に化合物半導体の第2導電型又はi型のJFET埋設領域を結晶成長させるJFET埋設領域形成工程と、を備えることができる。前記化合物半導体層は、特に限定されるものではないが、例えば窒化物半導体層、炭化珪素層又は酸化ガリウム層であってもよい。
【0049】
上記製造方法では、前記トレンチ形成工程において前記トレンチを形成するために形成されたマスク層を残存させた状態で、前記JFET領域形成工程と前記JFET埋設領域形成工程を実施してもよい。この製造方法によると、前記化合物半導体層の上面の一部が凸状に構成された凸部を形成することができる。この製造方法によると、後の平坦化工程を不要とすることができる。
【0050】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0051】
1、2、3、4:半導体装置、 10:半導体基板、 20:化合物半導体層、 22:バッファ領域、 23:ドリフト領域、 24:JFET領域、 24a:高濃度部分、 25:ボディ領域、 26:ソース領域、 27:JFET埋設領域、 32:ドレイン電極、 34:ソース電極、 36:絶縁ゲート部、 36a:ゲート絶縁膜、 36b:ゲート電極