(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093156
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】切削ヘッド本体、工具本体及びヘッド交換式切削工具
(51)【国際特許分類】
B23C 5/10 20060101AFI20220616BHJP
B23C 5/00 20060101ALI20220616BHJP
B23C 5/22 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B23C5/10 D
B23C5/00 A
B23C5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206285
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000233066
【氏名又は名称】株式会社MOLDINO
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 史彦
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022FF01
3C022KK14
3C022MM06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、取付位置精度の高い切削ヘッド本体及び工具本体と、切削ヘッド本体及び工具本体の取付強度を確保することのできるヘッド交換式切削工具とを提供する。
【解決手段】第1の中心軸O1を中心とした円盤状を呈し、前記第1の中心軸O1を中心として軸方向に貫通する貫通孔13と、前記軸方向の先端側に形成された切刃12と、前記軸方向の後端側に形成された1つの凹部16Aと、を有し、前記凹部16Aは、後端側のヘッド側当接面の外周縁上の周方向における一方側を第1端点、他方側を第2端点とした場合に、前記第1端点と前記第1の中心軸O1とを径方向で結ぶ第1仮想線と、前記第2端点と前記第1の中心軸O1とを径方向で結ぶ第2仮想線と、のなす角度θが、30°≦θ≦70°となる大きさを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の中心軸を中心とした円盤状を呈し、
前記第1の中心軸を中心として軸方向に貫通する貫通孔と、
前記軸方向の先端側に形成された切刃と、
前記軸方向の後端側に形成された1つの凹部と、を有し、
前記凹部は、後端側のヘッド側当接面の外周縁上の周方向における一方側を第1端点、他方側を第2端点とした場合に、
前記第1端点と前記第1の中心軸とを径方向で結ぶ第1仮想線と、
前記第2端点と前記第1の中心軸とを径方向で結ぶ第2仮想線と、のなす角度θが、
30°≦θ≦70°となる大きさを有する、
切削ヘッド本体。
【請求項2】
前記凹部は、前記切削ヘッド本体の後端側に向かうに従って周方向に幅広となるように形成されている、
請求項1に記載の切削ヘッド本体。
【請求項3】
前記凹部は、前記貫通孔から径方向の外側に離れた位置に配置される、
請求項1または2に記載の切削ヘッド本体。
【請求項4】
径方向における前記凹部と前記貫通孔との間の距離は、前記凹部の径方向の幅よりも大きい、
請求項1から3のいずれか1項に記載の切削ヘッド本体。
【請求項5】
前記凹部は、前記第1の中心軸に対する径方向の外側に向かうに従って前記周方向に幅広となるように形成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の切削ヘッド本体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の切削ヘッド本体における後端側の前記ヘッド側当接面に当接する本体側当接面と、前記切削ヘッド本体に備わる前記凹部に対応する第1凸部と、を備えることを特徴とする工具本体。
【請求項7】
請求項6に記載の工具本体と、前記切削ヘッド本体とは、ネジによって着脱可能に取り付けられたヘッド交換式切削工具であって、
前記切削ヘッド本体及び前記工具本体は、前記工具本体の先端側の前記本体側当接面が、前記切削ヘッド本体の後端側の前記ヘッド側当接面に当接して密着することによって取り付けられることを特徴とする、
ヘッド交換式切削工具。
【請求項8】
前記本体側当接面と前記ヘッド側当接面とは、前記ヘッド側当接面の外周縁が、前記本体側当接面の外周縁よりも径方向外側に突出している、
請求項7に記載のヘッド交換式切削工具。
【請求項9】
前記工具本体には、前記本体側当接面に開口し、前記第1の中心軸に対して前記凹部に近い第2の中心軸を有する取付穴が形成され、
前記切削ヘッド本体の前記貫通孔の直径は、前記ネジのネジ径と、前記第1の中心軸と前記第2の中心軸との間の距離と、を合わせた寸法よりも大きいことを特徴とする、
請求項7または8に記載のヘッド交換式切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削ヘッド本体、工具本体及びヘッド交換式切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッド交換式切削工具として、例えば特許文献1には、交換刃具(切削ヘッド)の軸心に設けられたねじ挿通穴を貫通させられた取付ねじが、ホルダー(工具本体)の軸心上に設けられたねじ穴に螺合されることにより、該交換刃具が該ホルダーの先端部に着脱可能に一体的に取り付けられる構成が開示されている。また、ホルダーと交換刃具とを相対回転不能に係合させるキーのような係合凸部とキー溝のような係合凹所とから構成される回止め係合部を備えており、交換刃具がホルダーと共に軸心まわりに回転駆動されることにより、交換刃具によって所定の加工を行う工具が記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載されたヘッド交換式切削工具は、前記取付ねじのうち交換刃具とホルダーとに跨がって位置する部分に一体に設けられた円柱形状の嵌合軸部と、交換刃具のねじ挿通穴に設けられ、嵌合軸部に対して隙間嵌めによって嵌合させられることにより、交換刃具と嵌合軸部とを同心に位置決めする円筒形状の刃具側嵌合穴と、ホルダーの先端に開口するネジ孔の開口部分に設けられ、嵌合軸部に対して隙間嵌めによって嵌合させられることにより、ホルダーと嵌合軸部とを同心に位置決めする円筒形状のホルダー側嵌合穴とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1に記載されたヘッド交換式切削工具では、上述したように回止め係合部を構成する係合凸部と係合凹部とが、この特許文献1の
図2および
図3に示されるような長手方向と直角な断面形状が略長方形をなすキーとキー溝であり、工具本体の軸線に対する直径方向に向けて一定の幅で延びるように形成されている。
【0006】
このため、特に切削加工時の切削トルクによって大きな回転モーメントが作用する切削ヘッド本体の外周側において、切削ヘッド本体の取付強度や取付剛性が不足するおそれがある。従って、切削加工時に切削ヘッド本体の切刃に大きな切削負荷が作用すると、切削ヘッド本体にガタつきが生じてしまい、加工精度や加工面粗さの低下を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、このような背景の下になされたもので、取付位置精度の高い切削ヘッド本体及び工具本体と、切削ヘッド本体及び工具本体の取付強度を確保することのできるヘッド交換式切削工具とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る切削ヘッド本体は、第1の中心軸を中心とした円盤状を呈し、前記第1の中心軸を中心として軸方向に貫通する貫通孔と、前記軸方向の先端側に形成された切刃と、前記軸方向の後端側に形成された1つの凹部と、を有し、前記凹部は、後端側のヘッド側当接面の外周縁上の周方向における一方側を第1端点、他方側を第2端点とした場合に、前記第1端点と前記第1の中心軸とを径方向で結ぶ第1仮想線と、前記第2端点と前記第1の中心軸とを径方向で結ぶ第2仮想線と、のなす角度θが、30°≦θ≦70°となる大きさを有する。
【0009】
本発明の一形態に係る切削ヘッド本体において、前記凹部は、前記切削ヘッド本体の後端側に向かうに従って周方向に幅広となるように形成されている構成としてもよい。
【0010】
本発明の一形態に係る切削ヘッド本体において、前記凹部は、前記貫通孔から径方向の外側に離れた位置に配置される構成としてもよい。
【0011】
本発明の一形態に係る切削ヘッド本体において、径方向における前記凹部と前記貫通孔との間の距離は、前記凹部の径方向の幅よりも大きい構成としてもよい。
【0012】
本発明の一形態に係る切削ヘッド本体において、前記凹部は、前記第1の中心軸に対する径方向の外側に向かうに従って前記周方向に幅広となるように形成されている構成としてもよい。
【0013】
本発明の工具本体は、前記切削ヘッド本体における後端側のヘッド側当接面に当接する本体側当接面と、前記切削ヘッド本体に備わる前記凹部に対応する凸部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明のヘッド交換式切削工具は、前記工具本体と、前記切削ヘッド本体とは、ネジによって着脱可能に取り付けられたヘッド交換式切削工具であって、前記切削ヘッド本体及び前記工具本体は、前記工具本体の先端側の前記本体側当接面が、前記切削ヘッド本体の後端側の前記ヘッド側当接面に当接して密着することによって取り付けられることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、工具本体に形成された凸部と、切削ヘッド本体に形成された凹部とが嵌合する構成となっていることから、工具本体に対する切削ヘッド本体の取付位置を確定しやすい。
また、工具本体側の凸部と、これに嵌合する切削ヘッド本体の凹部との嵌合精度を高めておくことによって、工具本体に対する切削ヘッド本体の取り付け位置精度を高めることができる。
さらに、凹部は、周方向の一方側の第1端点と第1の中心軸とを径方向で結ぶ第1仮想線と、周方向の他方側の第2端点と第1の中心軸とを径方向で結ぶ第2仮想線と、のなす角度θが、30°≦θ≦70°となる大きさを有することにより、切削加工時の回転モーメントを受け止めることができ、切削時の撓みによって工具径に変化が生じにくい。また、工具本体に対する切削ヘッド本体の着座面積も十分に確保することができるので、取付強度を高めることができる。
【0016】
このように、切削ヘッド本体を工具本体に対して回り止めして取り付けることができるのは勿論、切削加工時に切削ヘッド本体の切刃に大きな切削負荷が作用しても、切削ヘッド本体にガタつきが生じるのを防ぐことができる。したがって、高い加工精度や優れた加工面粗さを得ることが可能となる。
【0017】
また、切削ヘッド本体の第1凹部が、後端側に向かうに従って周方向に幅広となるように形成されているとともに、前記第1の中心軸に対する径方向の外側に向かうに従って前記周方向に幅広となるように形成されていることから、特に、切削加工時の切削トルクによって大きな回転モーメントが作用する切削ヘッド本体の外周側において、高い取付強度や取付剛性を確保して切削ヘッド本体を工具本体に取り付けることができる。
【0018】
また、切削ヘッド本体の凹部が、貫通孔から径方向外側に離れた位置に配置されていることから、貫通孔内に挿入されるネジに、第1凹部内に挿入される凸部が干渉してしまうのを避けることができる。
【0019】
また、径方向における凹部と貫通孔との間の距離が、凹部の径方向の幅よりも大きい構成となっているため、切削ヘッド本体の貫通孔の周囲にヘッド側当接面の平面が多く存在することになるので、切削ヘッド本体と工具本体とが当接して密着する着座面積が増えることにより、ヘッド交換式切削工具としての耐久性が向上する。
【0020】
本発明の一形態に係るヘッド交換式切削工具において、前記本体側当接面と前記ヘッド側当接面とは、前記ヘッド側当接面の外周縁が、前記本体側当接面の外周縁よりも径方向外側に突出している構成としてもよい。
【0021】
この構成によれば、工具本体に対して切削ヘッドを取り付ける際、切削ヘッド本体の外周縁が工具本体の外周縁から僅かにずれて取り付けられても、このずれ量が切削ヘッド本体の外周縁が突出した範囲内であれば、切削ヘッド本体の外周縁から工具本体の外周縁が径方向の外周側にはみ出ることがないため、工具本体の先端側が傷つくのを防ぐことができる。
【0022】
本発明の一形態に係るヘッド交換式切削工具において、前記工具本体には、前記本体側当接面に開口し、前記第1の中心軸に対して前記凹部に近い第2の中心軸を有する取付穴が形成され、前記切削ヘッドの前記貫通孔の直径は、前記ネジのネジ径と、前記第1の中心軸と前記第2の中心軸の距離(偏心量)と、を合わせた寸法よりも大きい構成としてもよい。
【0023】
この構成によれば、工具本体に切削ヘッド本体を取り付ける際に、切削ヘッド本体に形成された貫通孔を通じて、工具本体に形成された取付穴にネジを締め込むことによって、ネジによって、切削ヘッド本体を径方向外側(凹部側)に押した状態となり、切削ヘッド本体の凹部が、工具本体の凸に径方向で当接して密着することになる。このように、切削ヘッド本体を工具本体の一部に寄せて取り付けることによって、取付位置精度の高いヘッド交換式切削工具が得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、取付位置精度の高い切削ヘッド本体及び工具本体と、切削ヘッド本体及び工具本体の取付強度を確保することのできるヘッド交換式切削工具とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明のヘッド交換式切削工具の第1の実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す実施形態を軸線方向先端側から見た平面図である。
【
図7】工具本体を軸方向先端側から見た平面図である。
【
図8】
図7における矢印D方向視(第1凸部側)の側面図である。
【
図9】切削ヘッドを斜め上方から見た斜視図である。
【
図10】切削ヘッド本体を軸方向後端側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明における一実施形態のヘッド交換式切削工具100の構成について、
図1から
図10を用いて説明する。
【0027】
<ヘッド交換式切削工具>
本実施形態において、
図1に示すように、工具本体1は、鋼材等の金属材料により、回転軸(第1の中心軸)O1を中心とした円柱軸状に形成されている。また、切削ヘッド本体11は、工具本体1よりも硬度の高い超硬合金等により、回転軸O1を中心とした円盤状に形成されている。
【0028】
(工具本体)
ヘッド交換式切削工具100は、切削ヘッド本体11が工具本体1の先端側に取り付けられた上で、工具本体1の後端側が工作機械の主軸に把持され、回転軸O1の軸回りに工具回転方向Tへ回転されつつ、回転軸O1に交差する方向に送り出されることにより、切削ヘッド本体11に形成された複数の切刃12によって被削材に切削加工を施す。
【0029】
工具本体1には、切削ヘッド本体11を取り付けるためのクランプネジ(ネジ)21が挿入される取付穴6(
図4A及び
図5)が形成されている。取付穴6は、工具本体1の先端側の本体側当接面5の中央部に開口して形成され、回転軸O1に沿って延びる。取付穴6は、一定内径の断面円形の挿入孔2と、この挿入孔2の底部から軸方向後端側に延びて挿入孔2よりも小径をなすネジ孔3と、により構成される。
【0030】
本実施形態において取付穴6は、回転軸O1から径方向にズレた位置を中心とする。すなわち本実施形態では、工具本体1の回転軸O1と取付穴6の中心軸(第2の中心軸)O2は一致していない。
図4Aに示すように、回転軸O1に沿う断面において、回転軸O1を介して径方向の一方側の外周面から取付穴6までの距離L1と、径方向他方側の外周面から取付穴6までの距離L2は、僅かに異なる。そのため、当該取付穴6内に挿入されるクランプネジ21は、工具本体1の回転軸O1に対してその中心軸が径方向にズレた状態で取り付けられる。クランプネジ21の中心軸は、工具本体1の取付穴6の中心軸O2に一致する。回転軸O1に沿う工具本体1の断面において、径方向一方側における第1凸部(凸部)4A側の外周面から取付穴6までの距離L1は、径方向他方側であって第1凸部4Aとは径方向で反対側の外周面から取付穴6までの距離L2よりも小さい(L1<L2)。
【0031】
すなわち、本実施形態における取付穴6は、その中心軸O2が、工具本体1の回転軸O1に一致しておらず、回転軸O1対して径方向に偏心している。具体的には、径方向において、回転軸O1よりも後述する第1凸部4A側へ偏った位置に取付穴6が形成されている。そのため、取付穴6に挿入されるクランプネジ21は、その中心軸が、取付穴6の中心軸O2に一致するとともに、回転軸O1よりも第1凸部4A側へ偏った位置に配置されることとなる。
【0032】
図5~
図9に示すように、工具本体1の先端面である本体側当接面5には、本体側当接面5から先端側へ向けて突出する1つの第1凸部4Aが形成されている。第1凸部4Aは、工具本体1の外周縁側に配置され、取付穴6から径方向外側に離れた位置に配置されている。第1凸部4Aの軸方向における高さは、後述する第1凹部(凹部)16Aの軸方向における深さに略等しい。
【0033】
第1凸部4Aは、
図7に示すように工具本体1の軸方向の先端側から見たとき、周方向の幅が、後述する第1凹部16A内に挿入可能な大きさで形成されている。本実施形態では、工具本体1の後端側に向かうにしたがって周方向に幅広となるように形成されている。具体的に、第1凸部4Aの工具回転方向Tを向く側面41cと、工具回転方向Tとは反対側を向く側面41dとは、径方向外側へ向かうに従って互いに周方向へ離れる方向へ一定の角度で傾斜している。側面41c及び側面41dの径方向に対する傾斜角度は互いに等しい。
【0034】
また、第1凸部4Aは、
図8に示すように工具本体1の側方から見たとき、中心軸O1に対する径方向の外側に向かうに従って周方向に幅広となるように形成されている。具体的に、工具回転方向Tを向く側面41cと、工具回転方向Tとは反対側を向く側面41dとは、軸方向後端側に向かうに従い互いに周方向へ離れるように一定の角度で傾斜している。側面41c及び側面41dの回転軸O1に対する傾斜角度は互いに等しい。
【0035】
これにより、
図7及び
図8に示すように、第1凸部4Aは、径方向外側及び軸方向後端側にそれぞれ向かうに従って、周方向へ幅広となるように形成されている。つまり、第1凸部4Aの先端面41bにおける外周側の円弧長さと、第1凸部4Aの底面(工具本体1の本体側当接面5に位置する仮想面)における外周側の円弧長さは、それぞれ、径方向外側に向かうに従って長くなるように形成されている。
【0036】
図7に示すように、工具本体1の本体側当接面5のうち、上述した第1凸部4Aと、取付穴6とを除く部分は、回転軸O1に垂直な平面状とされている。従って、この本体側当接面5の外周縁5aは、回転軸O1を中心とする円周上に位置している。
【0037】
なお、
図7及び
図8に示すように、第1凸部4Aの径方向外側を向く各外面41eは、上記本体側当接面5の外周縁5aに一致し、軸方向において工具本体1の外周面と面一な円筒面状に形成されている。
【0038】
(切削ヘッド本体)
このような工具本体1の先端側に取り付けられる切削ヘッド本体11は、中心軸(第1の中心軸)を中心とした円盤状を呈する。切削ヘッド本体11の中心軸は、工具本体1の回転軸O1に一致する。
切削ヘッド本体11には、
図1、
図2図4A及び
図5に示すように、クランプネジ21を挿入させるための貫通孔13が形成されている。貫通孔13は、切削ヘッド本体11の中心軸(以下、中心軸O1)を中心とする貫通孔13であって、工具本体1の回転軸O1に一致する。貫通孔13は、切削ヘッド本体11の中央において軸方向に貫通して形成されている。
【0039】
貫通孔13は、
図4Aに示すように、挿通孔13a、テーパー孔13b及び頭部収容孔13cからなる。切削ヘッド本体11の後端側に位置する挿通孔13aは、工具本体1の取付穴6の内径よりも大径をなし、軸方向に一定の内径で形成されている。挿通孔13aの上端側に位置するテーパー孔13bは、頭部収容孔13c側へ行くにしたがって径が大きくなるテーパー状をなす。頭部収容孔13cは、貫通孔13内に挿入されるクランプネジ21の頭部22の直径よりも大きく、当該頭部22を収容する。
【0040】
なお、貫通孔13におけるテーパー孔13bは、
図4Aに示すように、回転軸O1に沿った断面において所定の角度でヘッド側当接面17に対して切削ヘッド本体11の内周側に向かうに従い後端側に向かうように傾斜している。
【0041】
図1及び
図2に示すように、切削ヘッド本体11の先端側には、周方向に等しい間隔をあけて複数(6つ)の凹溝状のチップポケット15が形成されている。これら複数のチップポケット15は、中央の貫通孔13から径方向外側に離れた位置に配置されている。
各チップポケット15の工具回転方向Tを向く各壁面の辺稜部に、切刃12がそれぞれ形成されている。本実施形態では、切削ヘッド本体11の周方向に6つの切刃12が形成されている。
【0042】
本実施形態における切刃12は、
図6に示すように側方から見て、切削ヘッド本体11の先端内周側から後端外周側に向けて、略1/4円弧状をなすラジアスエンドミルのコーナ刃状の切刃とされている。切刃12は、切削ヘッド本体11の外周側を向く外周刃12aの部分と、切削ヘッド本体11の先端側を向く底刃12bの部分と、を有する。
【0043】
切削ヘッド本体11の後端部は、後端側に向かうに従い縮径する円錐台状に形成されている。さらに、
図3、
図4A及び
図6に示すように、切削ヘッド本体11の後端面(工具本体1に対向するヘッド側当接面17)には、ヘッド側当接面17に開口し、ヘッド側当接面17から軸方向後端側へ向かって凹む1つの第1凹部16Aが形成されている。
【0044】
図10に示すように、第1凹部16Aは、切削ヘッド本体11の外周縁側に配置され、貫通孔13から径方向外側に離れた位置に配置されている。径方向における第1凹部16Aと貫通孔13との間の距離L3は、第1凹部16Aの径方向の幅Wよりも大きい(W<L3)。
【0045】
切削ヘッド本体11側に形成された第1凹部16Aは、工具本体1側に形成された第1凸部4Aを内側に挿入させるべく、第1凸部4Aよりも僅かに一回り大きく形成されている。
【0046】
図1凹部16Aは、
図10に示すように切削ヘッド本体11の軸方向の後端側から見たとき、周方向の幅が所定の範囲内となる大きさを有している。
具体的に、第1凹部16Aは、ヘッド側当接面17の外周縁上の周方向における一方側を第1端点P11、周方向の他方側を第2端点P12とした場合、第1端点P11と切削ヘッド本体11の中心軸O1とを径方向で結ぶ第1仮想線K11と、第2端点P12と切削ヘッド本体11の中心軸O1とを径方向で結ぶ第2仮想線K12とのなす角度θが、30°≦θ≦70°となる大きさを有する。
【0047】
また、
図3、
図6及び
図9に示すように、第1凹部16Aは、切削ヘッド本体11の側方から見たとき、工具本体1側の第1凸部4Aと同様に、中心軸O1に対する径方向の外側と軸方向の後端側とに向かうに従い周方向に幅広となるように形成される。具体的に、第1凹部16Aのうち、工具回転方向Tを向く側面161dと、工具回転方向Tとは反対側を向く側面161cとは、軸方向後端側へ向かうに従って互いに離れるように一定の角度で傾斜している。側面161d及び側面161cの回転軸O1に対する傾斜角度は互いに等しい。
【0048】
また、第1凹部16Aは、
図10に示すように、切削ヘッド本体11の軸方向の後端側から見たとき、第1凹部16Aは、中心軸O1に対する径方向の外側に向かうに従って周方向に幅広となるように形成されている。具体的に、第1凹部16Aのうち、側面161d及び側面161cは、径方向外側へ向かうに従って互いに離れる方向へ一定の角度で傾斜している。側面161d及び側面161cの径方向に対する傾斜角度は互いに等しい。
【0049】
つまり、第1凹部16Aの底面161bにおける周方向の長さと、第1凹部16Aの先端面(切削ヘッド本体11のヘッド側当接面17に位置する仮想面)における周方向の長さは、それぞれ、回転軸O1に対する径方向外側に向かうに従い長くなるように形成されている。
【0050】
図10に示すように、切削ヘッド本体11の後端面のうち、第1凹部16と貫通孔13の開口部とを除く部分は、回転軸O1に垂直な平面状とされており、本実施形態におけるヘッド側当接面17とされている。切削ヘッド本体11のヘッド側当接面17の外周縁17aは、回転軸O1を中心とする円周上に位置する。
【0051】
切削ヘッド本体11は、超硬合金等の硬質材料により形成され、粉末冶金技術の基本的な工程に沿って製造される。すなわち、切削ヘッド本体11が超硬合金製の場合は、まず炭化タングステン粉末とコバルト粉末を主成分として、必要に応じてクロムやタンタル等を副成分とする顆粒状の造粒粉末を用いて、金型を用いた粉末プレス成形を行う。
【0052】
得られたプレス成形体は、適切な雰囲気と温度に制御された焼結炉内で所定の時間焼結することにより、切削ヘッド本体11となる焼結体を製造することができる。切削ヘッド本体11の基本的形状は前記金型の設計により反映される。さらに、切削ヘッド本体11の貫通孔13の内径や、刃先形状の高精度化を図るために、必要に応じて切削工具や研削砥石を用いた機械加工を施すこともある。
【0053】
このような切削ヘッド本体11は、
図4A及び
図3に示すように、ヘッド側当接面17に、工具本体1の本体側当接面5が当接して密着することにより、回転軸O1に関して同軸に取り付けられる。そして、このように取り付けられた状態で、これら本体側当接面5とヘッド側当接面17とは、
図4Bに示すように、ヘッド側当接面17の外周縁17aが、本体側当接面5の外周縁5aよりも径方向外側に突出している。ここで、本実施形態では、本体側当接面5の外周縁5aに対するヘッド側当接面17の外周縁17aの径方向の突出量Pは、0.05mm~0.8mmの範囲内とされている。
【0054】
工具本体1に対して、切削ヘッド本体11を回転軸O1に同軸に取り付けるために、本実施形態では
図4A、
図5及び
図6に示すようなクランプネジ21が用いられる。このクランプネジ21は、切削ヘッド本体11を形成する超硬合金等よりも硬度が低く、工具本体1と同等または工具本体1よりも硬度の低い鋼材のような金属材料により形成されたものである。クランプネジ21は、円板状の頭部22と、この頭部22の後端側に延びる円柱状の軸部23と、この軸部23のさらに後端側に延びる雄ネジ部24と、を備えている。
【0055】
クランプネジ21は、切削ヘッド本体11の貫通孔13に挿入されて工具本体1に取り付けられる。クランプネジ21の頭部22は、切削ヘッド本体11の貫通孔13における挿通孔13a及びテーパー孔13bよりも大きな外径であるとともに、頭部収容孔13cよりも小さな外径を有する。
【0056】
頭部22の外周面は、中心軸O2を中心とし、先端側に向かうに従い僅かに拡径するテーパー状とされている。
図1に示すように、頭部22の先端面には、レンチ等の作業用工具が係合可能な係合孔22aが形成されている。
【0057】
クランプネジ21の軸部23は、工具本体1の取付穴6に嵌め入れ可能な外径とされ、雄ネジ部24が、工具本体1のネジ孔3にねじ込み可能とされている。
【0058】
切削ヘッド本体11は、上述のように、第1凹部16A内に、工具本体1側の最も大きい第1凸部4Aが挿入されるとともに、ヘッド側当接面17に、工具本体1の本体側当接面5が当接して密着させられた状態で、貫通孔13を通して、工具本体1の回転軸O1に対して偏心した取付穴6にクランプネジ21が挿入されることで、切削ヘッド本体11における第1凹部16Aの内面161a(
図10)が、第1凹部16Aに噛み合う工具本体1における第1凸部4Aの内面41a(
図7)に当接する。
【0059】
この状態で、クランプネジ21の雄ネジ部24が、工具本体1の挿入孔2のネジ孔3にねじ込まれることにより、工具本体1の先端部に切削ヘッド本体11が着脱可能に取り付けられる。
【0060】
このように構成された本実施形態のヘッド交換式切削工具100においては、工具本体1に対して切削ヘッド本体11を取り付ける際、切削ヘッド本体11に形成された第1凹部16Aに、工具本体1に形成された第1凸部4Aを挿入させるようにして取り付けることによって、工具本体1に対する切削ヘッド本体11の径方向における高い位置決め精度が得られる。よって、切削加工時に切削ヘッド本体11の切刃12が摩耗して、新しい切削ヘッド本体11を工具本体1へ取り付ける際には、その都度、径方向の位置決めを安定して行うことができる。
【0061】
また、製造時において、第1凸部4A及び第1凹部16Aどうしの噛み合い精度を高めておけば、工具本体1に対する切削ヘッド本体11の取付精度が高められる。さらに、第1凸部4A及び第1凹部16Aの噛み合い精度を調整することで、切削ヘッド本体11と工具本体1との取付け精度を微調整できる。この際、細かい加工を要するが、第1凸部4Aと、当該第1凸部4Aが挿入される第1凹部16Aだけに加工を施せばよいため、作業が容易であるとともに精度が出しやすく、これら第1凸部4A及び第1凹部16Aの噛み合い精度だけで切削ヘッド本体11と工具本体1と取付精度を高めることができる。
【0062】
また、本実施形態のヘッド交換式切削工具100においては、クランプネジ21によって切削ヘッド本体11が工具本体1に取り付けられた状態、すなわち、クランプネジ21の雄ネジ部24が工具本体1における取付穴6のネジ孔3にねじ込まれた状態において、クランプネジ21は、その中心軸O2が工具本体1の回転軸O1に対して径方向へズレており、第1凸部4Aに近い位置に配置される。切削ヘッド本体11の中心軸(貫通孔13の中心)は、工具本体1の回転軸O1に一致することから、上記貫通孔13に対しても、クランプネジ21はその中心軸O2が径方向で第1凹部16A側にズレた位置に配置されることとなる。
【0063】
さらに、切削ヘッド本体11に形成された貫通孔13は、工具本体1側に形成された取付穴6の直径よりも大径に形成されている。具体的に貫通孔13の直径は、クランプネジ21のネジ径と、第1の中心軸と第2の中心軸との間の距離(偏心量)と、を合わせた寸法よりも大きい。このため、
図2及び
図4Aに示すように、取付穴6内に締め込まれたクランプネジ21は、軸部23の外周面のうち周方向の一部が切削ヘッド本体11の貫通孔13の内周面に当接し、他の部位は前記内周面から離れた状態で取り付けられることとなる。
【0064】
つまり、本実施形態では、
図4Aに示すように、工具本体1の回転軸O1に対して偏心した取付穴6にクランプネジ21を取り付けることで、クランプネジ21によって切削ヘッド本体11を径方向外側(第1凹部16A側)に押した状態となり、切削ヘッド本体11側の第1凹部16Aの内面161aが、工具本体1側の第1凸部4Aの内面41aに径方向に当接して密着する。このように、切削ヘッド本体11を工具本体1の一部に寄せて取り付けることで、切削ヘッド本体11のガタつきが抑えられ、工具本体1に対する切削ヘッド本体11の取付位置精度が高いヘッド交換式切削工具100が得られる。
【0065】
また、切削加工時に切削ヘッド本体11の切刃12に大きな切削負荷が作用しても、周方向に幅の広い第1凹部16Aと、これに嵌合する工具本体1側の第1凸部4Aとによって受け止めることができるので、工具本体1に対する切削ヘッド本体11の取付強度を確保することができる。
【0066】
また、工具本体1において、最も大きく周方向に幅の広い第1凸部4Aと、切削ヘッド本体11において最も大きく周方向に幅の広い第1凹部16Aとが、工具本体1の回転軸O1側から径方向外側に向かうに従い周方向に幅広となるように形成されている。このため、特に切削加工時の切削トルクによって大きな回転モーメントが作用する切削ヘッド本体11の外周側において、高い取付強度や取付剛性を確保して切削ヘッド本体11を工具本体1に取り付けることができる。これにより、切削時の強度を十分に確保することができる。
【0067】
また、互いに噛み合う第1凸部4A及び第1凹部16Aのうち、第1凸部4Aの工具回転方向Tを向く側面41cと、第1凹部16Aの工具回転方向Tとは反対側を向く側面161cとは、切削加工時に切削ヘッド本体11の切刃12に作用する切削トルクによる回転モーメントを受ける受け面となる。
【0068】
従って、これらの側面41c、161cを回転軸O1に対する半径方向に沿って延びるように形成することにより、側面41c、161cを当接させた状態で切削加工を行ったときに切刃12に過大な切削負荷が作用しても、切削ヘッド本体11を回転軸O1に対する径方向外側に引っ張るような引っ張り応力や、逆に回転軸O1に対する径方向内周側に圧縮するような圧縮応力が作用するのを避けることができ、切削ヘッド本体11に破損が生じるのを防止することができる。
【0069】
なお、側面41c、161cが回転軸O1に対する半径方向に沿って延びるとは、側面41c、161cが回転軸O1を含む平面に対して一定の角度で傾斜していて、回転軸O1に垂直ないずれかの断面において側面41c、161cが回転軸O1に対する半径方向に延びる部分を有していればよい。
【0070】
図10に示すように、切削ヘッド本体11の第1凹部16Aは、第1端点P11と切削ヘッド本体11の回転軸O1とを径方向で結ぶ第1仮想線K11と、第2端点P12と切削ヘッド本体11の回転軸O1とを径方向で結ぶ第2仮想線K12とのなす角度θが、30°≦θ≦70°となる大きさを有している。角度θが30°未満の場合は、切削時の撓みによる工具径変化が生じやすい。角度θが70°を超えると、着座面積が小さくなり剛性の大幅な向上は見込めない。
【0071】
よって、切削ヘッド本体11の第1凹部16Aの周方向における大きさ(角度θ)を上記範囲内に設定することによって、工具本体1に対する着座面積を確保しつつ工具剛性を高めることが可能である。つまり、切削加工時に切削ヘッド本体11の切刃12に大きな切削負荷が作用しても、周方向に幅の広い第1凹部16Aとこれに嵌合する第1凸部4Aとによって切削加工時の回転モーメントを受け止めることができる。これにより、第1凸部4A及び第1凹部16Aの破損等を防ぐことができ、工具本体1に対する切削ヘッド本体11の取付強度も確保することができる。
【0072】
なお、上記角度θ、すなわち第1凹部16Aの周方向における大きさは、ヘッド交換式切削工具100の全体的な大きさに応じて決定することができる。
【0073】
このように、切削ヘッド本体11及び工具本体1に凹凸構造を設けることによって、切削ヘッド本体11を工具本体1に回り止めして取り付けることができるのは勿論、切削加工時に切削ヘッド本体11の切刃12に大きな切削負荷が作用しても、切削ヘッド本体11にガタつきが生じるのを防ぐことができる。従って、前記構成のヘッド交換式切削工具、切削ヘッド本体11、および工具本体1によれば、高い加工精度や優れた加工面粗さを得ることが可能となる。
【0074】
また、本実施形態では、切削ヘッド本体11における少なくとも第1凹部16Aが貫通孔13から径方向に間隔をあけて形成されているとともに、工具本体1における少なくとも第1凸部4Aが取付穴6から径方向に間隔をあけて形成されているので、切削時における回転モーメントを多く受ける第1凸部4Aがクランプネジ21に干渉するのを防ぐことができる。
【0075】
また、本実施形態では、ヘッド側当接面17と本体側当接面5とが当接して密着した部分において、切削ヘッド本体11を支持することができる。このため、切削ヘッド本体11の径方向における第1凹部16Aと貫通孔13との間の距離を、第1凹部16Aの径方向の幅よりも大きい構成にしておくことで、貫通孔13の周囲のヘッド側当接面17の平面が多く存在することになるので、切削ヘッド本体11と工具本体1とが当接して密着する着座面積が増えて取付強度や取付剛性が向上する。したがって、切削ヘッド本体11のガタつきが防止されて、切削工具としての耐久性が向上する。
【0076】
本実施形態の切削ヘッド本体11及び工具本体1によれば、切削ヘッド本体11側の第1凹部16Aと、工具本体1側の第1凸部4Aとの噛み合い精度を高めておくことによって、切削ヘッド本体11を工具本体1に取り付ける際に、切削ヘッド本体11側の第1凹部16A内に、工具本体1側の第1凸部4Aを挿入させるだけで、工具本体1に対する切削ヘッド本体11の取り付け位置精度を高めることができる。
【0077】
また、本実施形態において、工具本体1における先端面の本体側当接面5と、切削ヘッド本体11における後端面のヘッド側当接面17とは、ヘッド側当接面17の外周縁が、本体側当接面5の外周縁よりも径方向外側に突出した構成となっている。この構成によれば、本体側当接面5とヘッド側当接面17とにおいて、ヘッド側当接面17の外周縁が、本体側当接面5の外周縁よりも径方向外周側に突出しているので、切削ヘッド本体11のヘッド側当接面17の外周縁が工具本体1の本体側当接面5の外周縁から僅かにずれて取り付けられても、このずれ量がヘッド側当接面17の外周縁が突出した範囲内であれば、ヘッド側当接面17の外周縁から本体側当接面5の外周縁が径方向外周側にはみ出ることがない。
【0078】
上述したように、本体側当接面5の外周縁5aに対するヘッド側当接面17の外周縁17aの回転軸O1に対する半径方向の突出量(本体側当接面5の外周縁5aのヘッド側当接面17の外周縁17aに対する回転軸O1に対する径方向内周側への後退量)Pが、0.05mm~0.8mmの範囲内とされているので、本体側当接面5の外周縁5aを確実にヘッド側当接面17に内包するとともに、本体側当接面5の外周縁5aとヘッド側当接面17の外周縁17aとが一致している場合の工具本体1の撓み量が許容できる範囲となり、このような新しい切削ヘッド本体11の取付精度や取付強度を確実に維持しつつ、高精度で円滑な切削加工を行うことができる。
【0079】
すなわち、この突出量Pが0.05mmを下回ると、切削ヘッド本体11のずれ量によっては、ヘッド側当接面17の外周縁17aの食い込み等によって本体側当接面5が傷付けられるのを防ぐことができなくなるおそれがある。
【0080】
一方、この突出量Pが0.8mmを上回るほど大きいと、切削加工時の切削負荷のうち回転軸O1に垂直な分力による工具本体1の撓み量が過大となり、振動の発生による被削材の加工精度や加工面粗さが低下するおそれがある。さらに、切削加工によって生成された切屑が外周側に大きく突出したヘッド側当接面17の外周縁17aに引っ掛かって、円滑な切削加工が妨げられるおそれがある。
【0081】
さらに、本実施形態では、本体側当接面5の外周縁5aとヘッド側当接面17の外周縁17aとが、ともに回転軸O1を中心とした円周上に位置していて、すなわち同心円周上に配置されており、工具本体1の先端面と切削ヘッド本体11の後端面の全周に亙って上述のような突出量Pが確保されている。このため、ヘッド側当接面17の外周縁17aが回転軸O1に対する径方向のいずれの外周側にずれて取り付けられても、本体側当接面5が傷付けられるのを防ぐことができ、さらに確実に切削ヘッド本体11の取付精度や取付強度を維持することが可能となる。
【0082】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。各実施形態の構成を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、切削ヘッド本体11側の第1凹部16Aと、工具本体1側の第1凸部4Aとの噛み合い精度を高めておくことによって、切削ヘッド本体11を工具本体1に取り付ける際に、切削ヘッド本体11側の第1凹部16A内に工具本体1側の第1凸部4Aを挿入させるだけで、工具本体1に対する切削ヘッド本体11の取り付け位置精度を高めることができる。また、切削加工時に切削ヘッド本体11の切刃12に大きな切削負荷が作用しても、周方向に幅の広い第1凹部16A及び第1凸部4Aによって受け止めることができ、取付強度を確保することができる。
【符号の説明】
【0084】
1…工具本体、4A…第1凸部(凸部)、5…本体側当接面、5a,17a…外周縁、6…取付穴、11…切削ヘッド本体、12…切刃、13…貫通孔、16A…第1凹部(凹部)、17…ヘッド側当接面、21…クランプネジ(ネジ)、100…ヘッド交換式切削工具、K11…第1仮想線、K12…第2仮想線、L1,L2,L3…距離、O1…回転軸(第1の中心軸)、O1…中心軸(第1の中心軸)、O2…中心軸(第2の中心軸)、P11…第1端点、P12…第2端点、W…幅、θ…角度