(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093166
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】ミネラル用風味マスキング剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20220616BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220616BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L2/52
A23L2/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206300
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 駿介
(72)【発明者】
【氏名】今田 隆文
【テーマコード(参考)】
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B047LB08
4B047LF07
4B047LG01
4B047LG22
4B117LC03
4B117LK02
4B117LK12
(57)【要約】
【課題】ミネラルの風味をマスキングする技術の提供。
【解決手段】ラムノースを含有するミネラル用風味マスキング剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラムノースを含有するミネラル用風味マスキング剤。
【請求項2】
A)ミネラル及びB)ラムノースを含有する経口組成物。
【請求項3】
前記A)が、カルシウム、カリウム、マグネシウム、鉄、及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の経口組成物。
【請求項4】
前記A)としてカルシウムを含有する場合、
カルシウム1質量部に対する、前記B)の含有量が0.1~50質量部であり、
前記A)としてカリウムを含有する場合、
カリウム1質量部に対する、前記B)の含有量が0.05~15質量部であり、
前記A)としてマグネシウムを含有する場合、
マグネシウム1質量部に対する、前記B)の含有量が0.1~30質量部であり、
前記A)として鉄を含有する場合、
鉄1質量部に対する、前記B)の含有量が5~400質量部であり、
前記A)として亜鉛を含有する場合、
亜鉛1質量部に対する、前記B)の含有量が5~400質量部である、
請求項2または3に記載の経口組成物。
【請求項5】
前記経口組成物が飲食品である、請求項2~4のいずれか1項に記載の経口組成物。
【請求項6】
前記経口組成物が飲料である、請求項2~5のいずれか1項に記載の経口組成物。
【請求項7】
ミネラル及びラムノースを混合することを含む、ミネラルの風味をマスキングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミネラル用風味マスキング剤及びミネラルの風味をマスキングする方法に関する。また本発明は、ミネラル及びラムノースを含有する経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ミネラルは、蛋白質、脂質、炭水化物、ビタミンと並び五大栄養素の1つとされている。しかし、カルシウム、鉄、マグネシウムなどのミネラルの多くは、苦みやえぐ味といった特有の呈味を有し、また、舌に粉っぽさが残ったり、刺激感を与えたりする等の欠点があることが知られている。これまでにも当該課題を解決するための検討が行われてきた(特許文献1、2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4181762号公報
【特許文献2】特許第6718212号公報
【特許文献3】特許第4550543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ミネラルの風味をマスキングする技術を提供することを課題とする。より詳細には、第1に、ミネラル用風味マスキング剤を提供することを課題とする。第2に、ミネラル特有の風味がマスキングされたミネラル含有経口組成物を提供することを課題とする。第3に、ミネラル特有の風味をマスキングする方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねていたところ、ラムノースが、カルシウム、カリウム、マグネシウム、鉄、及び亜鉛等のミネラルの風味をマスキングする効果を有することを見出した。本発明はかかる知見に基づいて、さらに研究を重ねて完成したものであり、下記の実施形態を有するものである。
【0006】
項1.
ラムノースを含有するミネラル用風味マスキング剤。
項2.
A)ミネラル、及びB)ラムノースを含有する経口組成物。
項3.
前記A)が、カルシウム、カリウム、マグネシウム、鉄、及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である、項2に記載の経口組成物。
項4.
前記A)としてカルシウムを含有する場合、
カルシウム1質量部に対する、前記B)の含有量が0.1~50質量部であり、
前記A)としてカリウムを含有する場合、
カリウム1質量部に対する、前記B)の含有量が0.05~15質量部であり、
前記A)としてマグネシウムを含有する場合、
マグネシウム1質量部に対する、前記B)の含有量が0.1~30質量部であり、
前記A)として鉄を含有する場合、
鉄1質量部に対する、前記B)の含有量が5~400質量部であり、
前記A)として亜鉛を含有する場合、
亜鉛1質量部に対する、前記B)の含有量が5~400質量部である、
項2または3に記載の経口組成物。
項5.
前記経口組成物が飲食品である、項2~4のいずれか1項に記載の経口組成物。
項6.
前記経口組成物が飲料である、項2~5のいずれか1項に記載の経口組成物。
項7.
ミネラル及びラムノースを混合することを含む、ミネラルの風味をマスキングする方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ミネラルの風味のマスキング剤及びミネラルの風味をマスキングする方法が提供される。また、本発明によれば、ミネラルの風味がマスキングされたミネラル含有経口組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、「風味」とは、味(呈味)だけでなく、口に含んだときの臭いや感覚(粉っぽさ、刺激感、後引き感等)を包含するものである。また、呈味は苦みやえぐ味などの不快な味に限らず、不快でない味をも含む。
より具体的には、例えば、カルシウムの風味としては、カルシウム特有の呈味及び粉っぽさが挙げられる。カリウムの風味としては、カリウム特有の呈味及び後引き感が挙げられる。マグネシウムの風味としては、マグネシウム特有の呈味及び後引き感が挙げられる。鉄の風味としては、鉄特有の呈味及び鉄臭が挙げられる。亜鉛の風味としては、亜鉛特有の呈味及び舌への刺激感が挙げられる。
【0009】
本発明において、「ミネラルの風味のマスキング」とは、ミネラルの風味が消失する場合と、当該風味が消失しないまでも減少する場合の両方が含まれる。
具体的には、例えば、カルシウムの風味のマスキングとしては、呈味及び粉っぽさのいずれか少なくとも一方が減少または消失していればよい。例えば、カリウムの風味のマスキングとしては、呈味及び後引き感のいずれか少なくとも一方が減少または消失していればよい。マグネシウムの風味のマスキングとしては、呈味及び後引き感のいずれか少なくとも一方が減少または消失していればよい。鉄の風味のマスキングとしては、呈味及び鉄臭のいずれか少なくとも一方が減少または消失していればよい。亜鉛の風味のマスキングとしては、呈味及び舌への刺激感のいずれか少なくとも一方が減少または消失していればよい。
【0010】
(1)ミネラル用風味マスキング剤
本発明のミネラル用風味マスキング剤は、ラムノースを含有することを特徴とする。本明細書において、当該マスキング剤を「本発明のマスキング剤」と表記することがある。
【0011】
ラムノースは、天然物であっても合成物であってもよく、天然物から精製したものや商業的に入手可能なものなど、特に限定されない。また、ラムノースそのものであってもよく、例えば水和物などの溶媒和物であってもよい。溶媒和物としては、例えば、シグマ社のL-ラムノース一水和物などがあげられる。また、既存添加物自主規格に掲載されているように、ルチン抽出物などに含まれる配糖体、又は油脂を発酵し濃縮分離して得られたものを加水分解し、分離精製したものを使用することもできる。
【0012】
本発明のマスキング剤に含まれるラムノースの含有量は、特に制限されず、100質量%を限度として適宜設定することができる。
【0013】
本発明のマスキング剤は、ラムノースの他、さらに他の成分を含むことができる。当該他の成分としては、例えば、飲食品又は医薬品に配合可能な担体(基剤)や添加剤(例えば、賦形剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、保存剤、コーティング剤、着色料等)等が挙げられる。賦形剤としては、例えば、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖などのオリゴ糖類;デキストリン、セルロース、アラビアガム、およびでん粉(コーンスターチ等)などの多糖類、乳糖、ブドウ糖、果糖、砂糖、ショ糖、麦芽糖、水飴、蜂蜜、転化糖、シロップ、異性化糖(例えば、高果糖液糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖など)などの糖類;ソルビトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、還元パラチノースなどの糖アルコールを挙げることができる。
【0014】
本発明のマスキング剤の形態は、特に限定されない。例えば、液体状(例えば、溶液状、懸濁液状等)、ペースト状、又は固体状(例えば、粉末状、顆粒状等)等であってもよい。好ましくは固体状であり、より好ましくは粉末状である。
【0015】
本発明のマスキング剤は、ミネラルを含有する組成物に配合することによって、ミネラルの風味をマスキングするために用いることができる。
【0016】
本発明のマスキング剤が対象とするミネラルとしては、本発明の効果が奏される限り、特に限定されない。例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム、鉄、亜鉛、マンガン、銅、ニッケル、カリウム、クロム、ヨウ素等が挙げられる。中でも、カルシウム、カリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛が好ましい。ミネラルは、1種単独であってもよく又は2種以上の組み合わせであってもよい。なお、ミネラルの存在状態は、本発明の効果が奏される限り、特に限定されず、イオンの状態であっても、また塩の状態であってもよい。例えば、塩の状態のカルシウムとしては、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化カルシウム等が例示される。例えば、塩の状態のカリウムとしては、塩化カリウム等が例示される。例えば、塩の状態のマグネシウムとしては、塩化マグネシウム等が例示される。例えば、塩の状態の鉄としては、ピロリン酸第二鉄等が例示される。例えば、塩の状態の亜鉛としては、グルコン酸亜鉛等が例示される。
【0017】
本発明のマスキング剤を、ミネラルを含有する組成物に配合する時期及びその方法は、特に制限されず、適宜選択することができる。
【0018】
ミネラルを含有する組成物に対する本発明のマスキング剤の配合割合は、本発明のマスキング剤中のラムノースの含有量やミネラルの種類等に応じて適宜設定することができる。
【0019】
例えば、本発明のマスキング剤が、カルシウムを含有する組成物に配合される場合、本発明のマスキング剤の配合量は、カルシウム1質量部に対して、ラムノースの配合量として、例えば、0.1~50質量部とすることができる。
当該範囲の下限は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.8、1、1.2、1.5、1.7、2、2.5、3、4又は5であることができ、当該範囲の上限は、例えば、45、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、又は8であることができる。より具体的には、例えば、0.1~45質量部、0.2~45質量部、0.3~40質量部、0.4~40質量部、0.5~30質量部、1~30質量部、1.5~30質量部、2~30質量部、2.5~30質量部、3~30質量部、4~30質量部、5~30質量部、0.6~25質量部、0.8~25質量部、1~25質量部、2~25質量部、3~25質量部、4~25質量部、5~25質量部、0.8~20質量部、0.8~15質量部、1~15質量部、1.5~20質量部、2~20質量部、2.5~20質量部、3~20質量部、4~20質量部、又は5~20質量部であることができ、1~20質量部であることが好ましい。
【0020】
例えば、本発明のマスキング剤が、カリウムを含有する組成物に配合される場合、本発明のマスキング剤の配合量は、カリウム1質量部に対して、ラムノースの配合量として、例えば、0.05~15質量部とすることができる。
当該範囲の下限は、例えば、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、1、1.3、1.5、2、2.5、又は3であることができ、当該範囲の上限は、例えば、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5又は4であることができる。より具体的には、例えば、0.05~14質量部、0.1~13質量部、0.2~12質量部、0.2~10質量部、0.3~10質量部、0.4~10質量部、0.5~9質量部、1~15質量部、1~12質量部、1~10質量部、1~9質量部、1.5~15質量部、1.5~12質量部、1.5~10質量部、1.5~8質量部、1.5~7質量部、2~15質量部、2~12質量部、2~10質量部、2~9質量部、2~8質量部、2.5~15質量部、2.5~12質量部、2.5~10質量部、2.5~9質量部、2.5~8質量部、3~15質量部、3~12質量部、3~10質量部、3~9質量部、又は3~8質量部であることができ、0.6~8質量部であることが好ましい。
【0021】
例えば、本発明のマスキング剤が、マグネシウムを含有する組成物に配合される場合、本発明のマスキング剤の配合量は、マグネシウム1質量部に対して、ラムノースの配合量として、例えば、0.1~30質量部とすることができる。
当該範囲の下限は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.5、2.0、2.3、2.5、2.8又は3.0であることができ、当該範囲の上限は、例えば、30、28、25、22、20、18、16、15、又は14であることができる。より具体的には、例えば、0.1~28質量部、0.1~25質量部、0.2~25質量部、0.3~25質量部、0.5~20質量部、0.5~15質量部、1~20質量部、2~30質量部、2~25質量部、2~20質量部、2~18質量部、2~15質量部、2.2~30質量部、2.2~20質量部、2.2~15質量部、2.5~30質量部、2.5~20質量部、3~30質量部、3~25質量部、3~20質量部、3~18質量部、又は3~15質量部であることができ、1.2~15質量部であることが好ましい。
【0022】
例えば、本発明のマスキング剤が、鉄を含有する組成物に配合される場合、本発明のマスキング剤の配合量は、鉄1質量部に対して、ラムノースの配合量として、例えば、5~400質量部とすることができる。
当該範囲の下限は、例えば、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、22、25、30、35、40、45、又は50であることができ、当該範囲の上限は、例えば、400、350、300、250、230、220、200、180、150、130、120、110、又は100であることができる。より具体的には、例えば、5~350質量部、8~350質量部、8~300質量部、8~250質量部、8~200質量部、10~350質量部、10~300質量部、10~250質量部、10~200質量部、20~400質量部、20~350質量部、20~300質量部、25~400質量部、25~350質量部、25~300質量部、35~300質量部、40~300質量部、40~250質量部、又は40~200質量部であることができ、20~200質量部であることが好ましい。
【0023】
例えば、本発明のマスキング剤が、亜鉛を含有する組成物に配合される場合、本発明のマスキング剤の配合量は、亜鉛1質量部に対して、ラムノースの配合量として、例えば、5~400質量部とすることができる。
当該範囲の下限は、例えば、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、25、30、40、45、50、75、80、又は100であることができ、当該範囲の上限は、例えば、400、380、350、300、280、250、230、220、200、180、150、130、120、110、又は100であることができる。より具体的には、5~350質量部、5~300質量部、8~350質量部、8~300質量部、8~250質量部、8~200質量部、8~150質量部、8~100質量部、15~300質量部、15~250質量部、20~300質量部、20~250質量部、35~300質量部、35~250質量部、50~300質量部、50~250質量部、80~300質量部、80~250質量部、100~300質量部、又は100~250質量部であることができ、20~200質量部であることが好ましい。
【0024】
また、ミネラルを含有する組成物が2種以上のミネラルを含有する場合、本発明のマスキング剤の配合量は、ミネラルの総量1質量部に対して、ラムノースの配合量として、例えば、上述した各ミネラルに対して例示される範囲の総量とすることができる。例えば、ミネラルを含有する組成物が、カルシウム及びカリウムを含有する場合、本発明のマスキング剤の配合量は、カルシウム及びカリウムの総量1質量部に対して、ラムノースの配合量として、例えば、0.15~65質量部とすることができる。
【0025】
風味のマスキングは、後述する実施例に示すように、ミネラルを含有する組成物に風味マスキング剤を添加することにより得られたミネラル含有組成物と、風味マスキング剤を添加する前のミネラルを含有する組成物との、ミネラルの風味を比較することによって評価することができる。具体的には、風味マスキング剤を添加することによって、風味マスキング剤を添加する前のミネラルを含有する組成物と比較して、ミネラルの風味が減少または消失していると感じられる場合には、当該風味マスキング剤は、本発明のマスキング剤に該当すると判断される。
【0026】
(2)ミネラル含有経口組成物
本発明は、ミネラル及びラムノースを含有する経口組成物をも包含する。本明細書において、当該経口組成物を「本発明のミネラル含有経口組成物」と表記することがある。
【0027】
本発明のミネラル含有経口組成物に含まれるラムノースの含有量は、特に制限されず、例えば、0.01~30質量%とすることができる。当該範囲の下限は、例えば、0.01、0.02、0.03、0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、又は9質量%であってもよく、当該範囲の上限は、30、28、25、20、15、13、10、又は9質量%であってもよい。より具体的には、例えば、0.01~20質量%、0.01~10質量%、0.01~5質量%、0.01~1質量%、0.05~30質量%、0.05~20質量%、0.05~10質量%、0.05~5質量%、0.05~1質量%、0.08~30質量%、0.08~20質量%、0.08~10質量%、0.08~5質量%、0.08~1質量%、0.1~30質量%、0.1~20質量%、0.1~10質量%、又は0.1~5質量%であってもよく、好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%、更に好ましくは0.1~1質量%である。
また、ラムノースは甘味を有することから、例えば、本発明のミネラル含有経口組成物に含まれるラムノースの含有量の上限を0.5質量%とすることによって、本発明のミネラル含有経口組成物が、ラムノースによる甘味を呈することなく、ミネラルの風味をマスキングすることもできる。
【0028】
また、本発明のミネラル含有経口組成物に含まれるラムノースの含有量は、1日摂取量として、例えば、10~2000mg、好ましくは100~1000mgであることができる。
【0029】
本発明のミネラル含有経口組成物に含まれるミネラルとしては、上述した「(1)ミネラル用風味マスキング剤」が対象とするミネラルに関する記載を援用することができる。
【0030】
本発明のミネラル含有経口組成物中、ミネラルとラムノースとの含有質量比は、本発明のミネラル含有経口組成物に含まれるミネラルの種類に応じて適宜設定することができる。また、ミネラルとラムノースとの含有質量比については、上述した「(1)ミネラル用風味マスキング剤」について記載した、ミネラルを含有する組成物に対する本発明のマスキング剤の配合割合(より具体的には、ミネラル1質量部に対するラムノースの配合量)についての記載を援用することができる。
【0031】
本発明のミネラル含有経口組成物に含まれるミネラルの含有量は、特に限定されず、配合目的等に応じて適宜設定することができる。
例えば、本発明のミネラル含有経口組成物がカルシウムを含有する場合、本発明のミネラル含有経口組成物中、カルシウムの含有量は、例えば、0.01~30質量%とすることができる。当該範囲の下限は、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、又は0.25質量%であってもよく、当該範囲の上限は、例えば、30、25、20、15、10、8、6、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、又は0.25質量%であることができる。より具体的には、0.01~25質量%、0.01~20質量%、0.01~15質量%、0.01~10質量%、0.01~5質量%、0.01~3質量%、0.01~2質量%、0.01~1質量%、0.01~0.8質量%、0.01~0.5質量%、0.03~1質量%、0.03~0.8質量%、0.03~0.5質量%、0.05~1質量%、0.05~0.8質量%、0.05~0.5質量%、0.08~1質量%、0.08~0.8質量%、0.08~0.5質量%、0.1~1質量%、0.1~0.8質量%、又は0.1~0.5質量%であってもよい。
【0032】
また、本発明のミネラル含有経口組成物に含まれるミネラルの含有量は、例えばカルシウムを含有する場合、カルシウム含有量で、例えば、1日摂取量として、100~2500mgであることができ、好ましくは300~1000mg、より好ましくは650~800mgであることができる。
【0033】
例えば、本発明のミネラル含有経口組成物がカリウムを含有する場合、本発明のミネラル含有経口組成物中、カリウムの含有量は、例えば、0.01~50質量%とすることができる。当該範囲の下限は、例えば、0.01、0.03、0.05、0.07、0.08、0.1、0.12、0.14、0.15、0.2、又は0.25質量%であってもよく、当該範囲の上限は、例えば、50、45、40、30、25、20、15、10、8、6、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、又は0.3質量%であることができる。より具体的には、0.01~25質量%、0.01~20質量%、0.01~15質量%、0.01~10質量%、0.01~5質量%、0.01~3質量%、0.01~2質量%、0.01~1質量%、0.01~0.8質量%、0.01~0.6質量%、0.05~1質量%、0.05~0.8質量%、0.05~0.6質量%、0.08~1質量%、0.08~0.8質量%、0.08~0.6質量%、0.08~0.4質量%、0.1~1質量%、0.1~0.8質量%、0.1~0.6質量%、0.1~0.4質量%、0.15~1質量%、0.15~0.8質量%、0.15~0.6質量%、0.15~0.5質量%、又は0.15~0.4質量%であってもよい。
【0034】
また、本発明のミネラル含有経口組成物に含まれるミネラルの含有量は、例えばカリウムを含有する場合、カリウム含有量で、例えば、1日摂取量として、100~6000mgであることができ、好ましくは200~3000mg、より好ましくは400~2500mgであることができる。
【0035】
例えば、本発明のミネラル含有経口組成物がマグネシウムを含有する場合、本発明のミネラル含有経口組成物中、マグネシウムの含有量は、例えば、0.01~20質量%とすることができる。当該範囲の下限は、例えば、0.01、0.02、0.03、0.05、0.07、0.08、0.1、0.15、0.2、0.25、又は0.3質量%であってもよく、当該範囲の上限は、例えば、20、15、10、8、6、5、4、3、2、1、0.8、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1質量%であることができる。より具体的には、0.01~15質量%、0.01~10質量%、0.01~5質量%、0.01~3質量%、0.01~2質量%、0.01~1質量%、0.01~0.8質量%、0.01~0.6質量%、0.01~0.5質量%、0.01~0.4質量%、0.03~0.5質量%、0.03~0.4質量%、0.05~0.5質量%、0.05~0.4質量%、0.06~0.5質量%、0.06~0.4質量%、0.07~0.5質量%、又は0.07~0.4質量%であってもよい。
【0036】
また、本発明のミネラル含有経口組成物に含まれるミネラルの含有量は、例えばマグネシウムを含有する場合、マグネシウム含有量で、例えば、1日摂取量として、10~1000mgであることができ、好ましくは20~500mg、より好ましくは40~370mgであることができる。
【0037】
例えば、本発明のミネラル含有経口組成物が鉄を含有する場合、本発明のミネラル含有経口組成物中、鉄の含有量は、例えば、0.001~3質量%とすることができる。当該範囲の下限は、例えば、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、又は0.007質量%であってもよく、当該範囲の上限は、3、2、1、0.8、0.5、0.3、0.2、0.1、0.09、0.07、0.05、0.04、0.03、0.02又は0.01質量%であってもよい。より具体的には、例えば、0.002~3質量%、0.002~2質量%、0.002~1質量%、0.002~0.8質量%、0.002~0.5質量%、0.002~0.3質量%、0.002~0.2質量%、0.002~0.1質量%、0.002~0.05質量%、0.002~0.03質量%、0.002~0.02質量%、0.002~0.015質量%、0.002~0.01質量%、0.003~0.1質量%、0.003~0.05質量%、0.003~0.03質量%、0.003~0.02質量%、0.003~0.015質量%、0.003~0.01質量%、0.004~0.1質量%、0.004~0.05質量%、0.004~0.03質量%、0.004~0.02質量%、0.004~0.015質量%、0.004~0.01質量%、0.005~0.1質量%、0.005~0.05質量%、0.005~0.03質量%、0.005~0.02質量%、0.005~0.015質量%、又は0.005~0.01質量%であってもよい。
【0038】
また、本発明のミネラル含有経口組成物に含まれるミネラルの含有量は、例えば鉄を含有する場合、鉄含有量で、例えば、1日摂取量として、1~40mgであることができ、好ましくは2~20mg、より好ましくは5~10mgであることができる。
【0039】
例えば、本発明のミネラル含有経口組成物が亜鉛を含有する場合、本発明のミネラル含有経口組成物中、亜鉛の含有量は、例えば、0.001~1質量%とすることができる。当該範囲の下限は、例えば、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、又は0.007質量%であってもよく、当該範囲の上限は、1、0.8、0.5、0.3、0.2、0.1、0.09、0.07、0.05、0.04、0.03、0.02又は0.01質量%であってもよい。より具体的には、例えば、0.002~0.8質量%、0.002~0.5質量%、0.002~0.3質量%、0.002~0.2質量%、0.002~0.1質量%、0.002~0.05質量%、0.002~0.03質量%、0.002~0.02質量%、0.002~0.015質量%、0.002~0.01質量%、0.003~0.1質量%、0.003~0.05質量%、0.003~0.03質量%、0.003~0.02質量%、0.003~0.015質量%、0.003~0.01質量%、0.004~0.1質量%、0.004~0.05質量%、0.004~0.03質量%、0.004~0.02質量%、0.004~0.015質量%、0.004~0.01質量%、0.005~0.1質量%、0.005~0.05質量%、0.005~0.03質量%、0.005~0.02質量%、0.005~0.015質量%、又は0.005~0.01質量%であってもよい。
【0040】
また、本発明のミネラル含有経口組成物に含まれるミネラルの含有量は、例えば亜鉛を含有する場合、亜鉛含有量で、例えば、1日摂取量として、1~45mgであることができ、好ましくは2~25mg、より好ましくは3~12mgであることができる。
【0041】
本発明のミネラル含有経口組成物は、ミネラル及びラムノース(例えば、前述する本発明のマスキング剤)の他、さらに他の成分を含むことができる。当該他の成分としては、例えば、飲食品又は医薬品に配合可能な担体(基剤)や添加剤(例えば、賦形剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、保存剤、コーティング剤、着色料等)等が挙げられる。賦形剤としては、例えば、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖などのオリゴ糖類;デキストリン、セルロース、アラビアガム、およびでん粉(コーンスターチ等)などの多糖類、乳糖、ブドウ糖、果糖、砂糖、ショ糖、麦芽糖、水飴、蜂蜜、転化糖、シロップ、異性化糖(例えば、高果糖液糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖など)などの糖類;ソルビトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、還元パラチノースなどの糖アルコールを挙げることができる。
【0042】
本発明のミネラル含有経口組成物としては、例えば、飲食品、経口医薬品、経口医薬部外品等が挙げられる。中でも、飲食品が好ましく、飲料がより好ましい。飲料は、組成の大半が水分であることから、他の食品等と比較して、ミネラルの風味を舌や口腔内でより感知しやすい傾向があるが、本発明によれば、ミネラル含有飲料に対しても優れた効果を奏する。
【0043】
ラムノース(例えば、前述する本発明のマスキング剤)は、本発明のミネラル含有経口組成物の製造過程の任意の段階で添加することができ、その添加時期及びその方法は特に限定されない。
【0044】
本発明のミネラル含有経口組成物は、ミネラル及びラムノース(例えば、前述する本発明のマスキング剤)を含有することによって、ミネラルの風味がマスキングされていることを特徴とする。
【0045】
風味のマスキングは、後述する実施例に示すように、ミネラル及びラムノースを含有する組成物と、ラムノースを含有しない以外は同じ組成の組成物とのミネラルの風味を比較することによって評価することができる。具体的には、ラムノースを含有することによって、ラムノースを含有しない以外は同じ組成の組成物と比較して、ミネラルの風味が減少または消失していると感じられる場合には、ミネラルの風味がマスキングされていると判断される。
【0046】
(3)ミネラルの風味をマスキングする方法
本発明は、ミネラル及びラムノースを混合することを含む、ミネラルの風味をマスキングする方法をも包含する。本明細書において、当該方法を「本発明のマスキング方法」と表記することがある。
【0047】
本発明のマスキング方法が対象とするミネラルとしては、上述した「(1)ミネラル用風味マスキング剤」が対象とするミネラルに関する記載を援用することができる。
【0048】
ミネラル及びラムノースの混合割合は、ミネラルの種類に応じて適宜設定することができる。また、ミネラル及びラムノースの混合割合については、上述した「(1)ミネラル用風味マスキング剤」について記載した、ミネラルを含有する組成物に対する本発明のマスキング剤の配合割合(より具体的には、ミネラル1質量部に対するラムノースの配合量)についての記載を援用することができる。
【0049】
ミネラル及びラムノースを混合する方法は特に限定されず、適宜選択することができる。
【0050】
風味のマスキングは、後述する実施例に示すように、ミネラル及びラムノースを混合した組成物と、ラムノースを混合しない以外は同じ組成の組成物とのミネラルの風味を比較することによって評価することができる。具体的には、ラムノースを混合することによって、ラムノースを混合しない以外は同じ組成の組成物と比較して、ミネラルの風味が減少または消失していると感じられる場合には、ミネラルの風味がマスキングされていると判断される。
【0051】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本発明は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0052】
また、上述した本発明の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本発明に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本発明には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0053】
本発明の内容を以下の実験例を用いて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び常温条件下で行っている。また特に言及する場合を除いて、「%」は「質量%」を意味する。
【0054】
実験例1.ラムノースによるカルシウムの風味マスキング効果の評価(乳酸カルシウム)
表1に示す濃度(0.05~0.50%)になるように、乳酸カルシウムを脱イオン水に溶解した。これに表1に示す濃度(0.1~1.0%)になるようにラムノースを溶解し、これを被験試料として、カルシウムに起因する風味に対するラムノースのマスキング効果を評価した。なお、乳酸カルシウムを溶解した水溶液は、金属味やえぐみ、渋みといった特有の呈味(以下、これを「硬い味」と称する)と粉っぽさを有している。また比較対照のため、各濃度の乳酸カルシウム水溶液についてラムノースを添加しない溶液(陽性コントロール)、及び脱イオン水(陰性コントロール)を用意した。なお、乳酸カルシウムとしては、乳酸カルシウム・5水和物を用い、カルシウムの濃度として表中に示す濃度となるように調製した。
【0055】
調製した被験試料の呈味及び粉っぽさを、パネル5名にて、以下の評価基準に従って評価した。なお、評価は、被験試料の呈味(硬い味)及び粉っぽさを、陽性コントロール及び陰性コントロールのそれらと対比することで行った。
呈味についての評価基準
ラムノースを含有しない乳酸カルシウム水溶液(陽性コントロール)と同程度の呈味を感じる場合を「1点」、脱イオン水(陰性コントロール)と同じ場合を「5点」として、パネル間で摺り合わせて規定した5段階で呈味を評価した。
粉っぽさについての評価基準
ラムノースを含有しない乳酸カルシウム水溶液(陽性コントロール)と同程度の粉っぽさを感じる場合を「1点」、脱イオン水(陰性コントロール)と同じ場合を「5点」として、パネル間で摺り合わせて規定した5段階で粉っぽさを評価した。
評価結果を表1にあわせて示す。なお、結果はパネルの平均値を示す。
【0056】
【0057】
表1に示す通り、カルシウム1質量部に対して、ラムノースの配合量を0.2~20質量部とすることによって、カルシウムの風味、特に乳酸カルシウム由来のカルシウムの硬い味や粉っぽさが低減することが確認された。
【0058】
実験例2.ラムノースによるカルシウムの風味マスキング効果の評価(リン酸カルシウム)
表2示す濃度(0.05~0.50%)になるように、リン酸カルシウムを脱イオン水に溶解した。これに表2に示す濃度(0.1~1.0%)になるようにラムノースを溶解し、これを被験試料として、カルシウムに起因する風味に対するラムノースのマスキング効果を評価した。なお、リン酸カルシウムを溶解した水溶液は、乳酸カルシウムと同様に硬い味と粉っぽさを有している。また比較対照のため、各濃度のリン酸カルシウム水溶液についてラムノースを添加しない溶液(陽性コントロール)、及び脱イオン水(陰性コントロール)を用意した。なお、リン酸カルシウムとしては、リン酸一水素カルシウム・2水和物を用い、カルシウムの濃度として表中に示す濃度となるように調製した。
【0059】
調製した被験試料の呈味及び粉っぽさを、パネル5名にて、以下の評価基準に従って評価した。なお、評価は、被験試料の呈味(硬い味)及び粉っぽさを、陽性コントロール及び陰性コントロールのそれらと対比することで行った。
呈味についての評価基準
ラムノースを含有しないリン酸カルシウム水溶液(陽性コントロール)と同程度の呈味を感じる場合を「1点」、脱イオン水(陰性コントロール)と同じ場合を「5点」として、パネル間で摺り合わせて規定した5段階で呈味を評価した。
粉っぽさについての評価基準
ラムノースを含有しないリン酸カルシウム水溶液(陽性コントロール)と同程度の粉っぽさを感じる場合を「1点」、脱イオン水(陰性コントロール)と同じ場合を「5点」として、パネル間で摺り合わせて規定した5段階で粉っぽさを評価した。
評価結果を表2にあわせて示す。なお、結果はパネルの平均値を示す。
【0060】
【0061】
表2に示す通り、カルシウム1質量部に対して、ラムノースの配合量を0.2~20質量部とすることによって、カルシウムの風味、特にリン酸カルシウム由来のカルシウムの硬い味や粉っぽさが低減することが確認された。
【0062】
実験例3.ラムノースによるカルシウムの風味マスキング効果の評価(塩化カルシウム)
表3に示す濃度(0.05~0.50%)になるように、塩化カルシウムを脱イオン水に溶解した。これに表3に示す濃度(0.1~1.0%)になるようにラムノースを溶解し、これを被験試料として、カルシウムに起因する風味に対するラムノースのマスキング効果を評価した。なお、塩化カルシウムを溶解した水溶液は、苦味に加え、金属味や塩味といった特有の呈味(以下、これを「重い苦味」と称する)と粉っぽさを有している。また比較対照のため、各濃度の塩化カルシウム水溶液についてラムノースを添加しない溶液(陽性コントロール)、及び脱イオン水(陰性コントロール)を用意した。なお、塩化カルシウムとしては、塩化カルシウム・2水和物を用い、カルシウムの濃度として表中に示す濃度となるように調製した。
【0063】
調製した被験試料の呈味(重い苦味)及び粉っぽさを、パネルにて、以下の評価基準に従って評価した。なお、評価は、被験試料の呈味及び粉っぽさを、陽性コントロール及び陰性コントロールのそれらと対比することで行った。なお、パネルは、カルシウム濃度0.05%及び0.10%については4名、0.25%及び0.50%については2名で評価した。
呈味についての評価基準
ラムノースを含有しない塩化カルシウム水溶液(陽性コントロール)と同程度の呈味を感じる場合を「1点」、脱イオン水(陰性コントロール)と同じ場合を「5点」として、パネル間で摺り合わせて規定した5段階で呈味を評価した。
粉っぽさについての評価基準
ラムノースを含有しない塩化カルシウム水溶液(陽性コントロール)と同程度の粉っぽさを感じる場合を「1点」、脱イオン水(陰性コントロール)と同じ場合を「5点」として、パネル間で摺り合わせて規定した5段階で粉っぽさを評価した。
評価結果を表3にあわせて示す。なお、結果はパネルの平均値を示す。
【0064】
【0065】
表3に示す通り、カルシウム1質量部に対して、ラムノースの配合量を0.2~20質量部とすることによって、カルシウムの風味、特に塩化カルシウム由来のカルシウムの重い苦味や粉っぽさが低減することが確認された。特に、カルシウム濃度が0.05~0.25%の場合に、カルシウムの呈味、粉っぽさの低減効果が大きいことが確認された。また、カルシウム塩の中でも、塩化カルシウムは特に苦味が強い傾向があるが、本試験例に基づけば、塩化カルシウム由来のカルシウムの呈味もマスキングできることが示された。
【0066】
以上のことから、ラムノースは、カルシウムの風味をマスキングできることが分かった。
【0067】
実験例4.ラムノースによる鉄の風味マスキング効果の評価
表4に示す濃度(0.005~0.01%)になるように、ピロリン酸第二鉄を、脱イオン水で調製した0.1%クエン酸水溶液(以降、「0.1%クエン酸水」と表現する)に80℃で溶解した。これに表4に示す濃度(0.1~1.0%)になるようにラムノースを溶解した後、室温まで放冷し、これを被験試料として、鉄に起因する風味に対するラムノースのマスキング効果を評価した。なお、ピロリン酸第二鉄を溶解した0.1%クエン酸水は、鉄特有の硬い味と鉄臭を有している。また比較対照のため、各濃度のピロリン酸第二鉄水溶液についてラムノースを添加しない溶液(陽性コントロール)、及び0.1%クエン酸水(陰性コントロール)を用意した。なお、鉄の濃度として表中に示す濃度となるように調製した。
【0068】
調製した被験試料の呈味(硬い味)及び鉄臭を、パネル6名にて、以下の評価基準に従って評価した。なお、評価は、被験試料の呈味及び鉄臭を、陽性コントロール及び陰性コントロールのそれらと対比することで行った。
呈味についての評価基準
ラムノースを含有しないピロリン酸第二鉄水溶液(陽性コントロール)と同程度の呈味を感じる場合を「1点」、0.1%クエン酸水(陰性コントロール)と同じ場合を「5点」として、パネル間で摺り合わせて規定した5段階で呈味を評価した。
鉄臭についての評価基準
ラムノースを含有しないピロリン酸第二鉄水溶液(陽性コントロール)と同程度の鉄臭を感じる場合を「1点」、0.1%クエン酸水(陰性コントロール)と同じ場合を「5点」として、パネル間で摺り合わせて規定した5段階で鉄臭を評価した。
評価結果を表4にあわせて示す。なお、結果はパネルの平均値を示す。
【0069】
【0070】
表4に示す通り、鉄1質量部に対して、ラムノースの配合量を10~200質量部とすることによって、鉄の風味、特に鉄特有の硬い味や鉄臭が低減することが確認された。ラムノースは、鉄の風味をマスキングできることが分かった。
【0071】
実験例5.ラムノースによる亜鉛の風味マスキング効果の評価
表5に示す濃度(0.005~0.01%)になるように、グルコン酸亜鉛を脱イオン水に溶解した。これに表5に示す濃度(0.1~1.0%)になるようにラムノースを溶解し、これを被験試料として、亜鉛に起因する風味のマスキング効果を評価した。なお、グルコン酸亜鉛を溶解した水溶液は、亜鉛特有の硬い味と舌への刺激感を有している。また比較対照のため、各濃度のグルコン酸亜鉛水溶液についてラムノースを添加しない溶液(陽性コントロール)、及び脱イオン水(陰性コントロール)を用意した。なお、亜鉛の濃度として表中に示す濃度となるように調製した。
【0072】
調製した被験試料の呈味(硬い味)及び舌への刺激感を、パネル5名にて、以下の評価基準に従って評価した。なお、評価は、被験試料の呈味及び舌への刺激感を、陽性コントロール及び陰性コントロールのそれらと対比することで行った。
呈味についての評価基準
ラムノースを含有しないグルコン酸亜鉛水溶液(陽性コントロール)と同程度の呈味を感じる場合を「1点」、脱イオン水(陰性コントロール)と同じ場合を「5点」として、パネル間で摺り合わせて規定した5段階で呈味を評価した。
舌への刺激感についての評価基準
ラムノースを含有しないグルコン酸亜鉛水溶液(陽性コントロール)と同程度の舌への刺激感を感じる場合を「1点」、脱イオン水(陰性コントロール)と同じ場合を「5点」として、パネル間で摺り合わせて規定した5段階で舌への刺激感を評価した。
評価結果を表5にあわせて示す。なお、結果はパネルの平均値を示す。
【0073】
【0074】
表5に示す通り、亜鉛1質量部に対して、ラムノースの配合量を10~200質量部とすることによって、亜鉛の風味、特に亜鉛特有の硬い味や舌への刺激感が低減することが確認された。ラムノースは、亜鉛の風味をマスキングできることが分かった。
【0075】
実験例6.ラムノースによるカリウムの風味マスキング効果の評価
表6に示す濃度(0.15~0.6%)になるように、塩化カリウムを脱イオン水に溶解した。これに表6に示す濃度(0.1~1.0%)になるようにラムノースを溶解し、これを被験試料として、カリウムに起因する風味のマスキング効果を評価した。なお、塩化カリウムを溶解した水溶液は、苦味に加え、金属味や塩味といったカリウム特有の呈味(以下、これを「重い苦味」と称する)と後引き感を有している。また比較対照のため、各濃度の塩化カリウム水溶液についてラムノースを添加しない溶液(陽性コントロール)、及び脱イオン水(陰性コントロール)を用意した。なお、カリウムの濃度として表中に示す濃度となるように調製した。
【0076】
調製した被験試料の呈味(重い苦味)及び後引き感を、パネル6名にて、以下の評価基準に従って評価した。なお、評価は、被験試料の呈味及び後引き感を、陽性コントロール及び陰性コントロールのそれらと対比することで行った。
呈味についての評価基準
ラムノースを含有しない塩化カリウム水溶液(陽性コントロール)と同程度の呈味を感じる場合を「1点」、脱イオン水(陰性コントロール)と同じ場合を「5点」として、パネル間で摺り合わせて規定した5段階で呈味を評価した。
後引き感についての評価基準
ラムノースを含有しない塩化カリウム水溶液(陽性コントロール)と同程度の後引き感を感じる場合を「1点」、脱イオン水(陰性コントロール)と同じ場合を「5点」として、パネル間で摺り合わせて規定した5段階で後引き感を評価した。
評価結果を表6にあわせて示す。なお、結果はパネルの平均値を示す。
【0077】
【0078】
表6に示す通り、カリウム1質量部に対して、ラムノースの配合量を0.16~6.7質量部とすることによって、カリウムの風味(重い苦味や後引き感)が低減することが確認された。ラムノースは、カリウムの風味をマスキングできることが分かった。
【0079】
実験例7.ラムノースによるマグネシウムの風味マスキング効果の評価
表7に示す濃度(0.074~0.37%)になるように、塩化マグネシウムを脱イオン水に溶解した。これに表7に示す濃度(0.1~1.0%)になるようにラムノースを溶解し、これを被験試料として、マグネシウムに起因する風味のマスキング効果を評価した。なお、塩化マグネシウムを溶解した水溶液は、苦味に加え、金属味や塩味といったマグネシウム特有の呈味(以下、これを「重い苦味」と称する)と後引き感を有している。また比較対照のため、各濃度の塩化マグネシウム水溶液についてラムノースを添加しない溶液(陽性コントロール)、及び脱イオン水(陰性コントロール)を用意した。なお、マグネシウムの濃度として表中に示す濃度となるように調製した。
【0080】
調製した被験試料の呈味(重い苦味)及び後引き感を、パネル5名にて、以下の評価基準に従って評価した。なお、評価は、被験試料の呈味及び後引き感を、陽性コントロール及び陰性コントロールのそれらと対比することで行った。
呈味についての評価基準
ラムノースを含有しない塩化マグネシウム水溶液(陽性コントロール)と同程度の呈味を感じる場合を「1点」、脱イオン水(陰性コントロール)と同じ場合を「5点」として、パネル間で摺り合わせて規定した5段階で呈味を評価した。
後引き感についての評価基準
ラムノースを含有しない塩化マグネシウム水溶液(陽性コントロール)と同程度の後引き感を感じる場合を「1点」、脱イオン水(陰性コントロール)と同じ場合を「5点」として、パネル間で摺り合わせて規定した5段階で後引き感を評価した。
評価結果を表7にあわせて示す。なお、結果はパネルの平均値を示す。
【0081】
【0082】
表7に示す通り、マグネシウム1質量部に対して、ラムノースの配合量を0.27~13.5質量部とすることによって、マグネシウムの呈味や後引き感が低減することが確認された。ラムノースは、マグネシウムの風味をマスキングできることが分かった。
【0083】
以上のことから、ラムノースは、ミネラルの風味をマスキングできることが分かった。