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特開2022-93167電子部品の製造方法、電子部品製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093167
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法、電子部品製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220616BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/66 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206301
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】林下 英司
【テーマコード(参考)】
4M106
5F131
【Fターム(参考)】
4M106AA02
4M106BA01
4M106BA14
4M106CA27
4M106DD10
4M106DH44
5F131AA02
5F131AA04
5F131BA39
5F131CA32
5F131DA13
5F131EA07
5F131EB01
5F131EC32
5F131EC53
5F131EC64
(57)【要約】
【課題】加熱環境下における保持フィルムの弛みシワの発生を抑制することができる電子部品の製造方法及び電子部品製造装置を提供する。
【解決手段】電子部品の製造方法は、保持フィルム10に保持された電子部品30の露出部301、及び/又は、保持フィルム10の保持面13の露出部131、の位置関係を固定する固定工程と、位置関係が固定された保持フィルム10を、非保持面14側から、加熱された吸着面521へ吸着する吸着工程と、を備え、電子部品製造装置50は、下方へ開放された吸着面511を有する第1チャックテーブル51と、上方へ開放された吸着面521を有し、且つ、加熱機構を有する第2チャックテーブル52と、第1チャックテーブル51及び第2チャックテーブル52の吸着面同士を対面させた状態で近接させて対象物の受け渡しを可能にする受渡機構54と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持フィルムに保持された電子部品の露出部、及び/又は、前記保持フィルムの保持面の露出部、の位置関係を固定する固定工程と、
前記位置関係が固定された前記保持フィルムを、非保持面側から、加熱された吸着面へ吸着する吸着工程と、を備えることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記吸着工程後に、前記位置関係の固定を解除する解除工程を備え、
前記解除工程後に、前記保持面側へ露出された前記電子部品の電極に対して、外部から通電を行う通電工程を備える請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記固定工程は、前記保持面が上方へ向くように配置された前記保持フィルムを、吸着面が下方へ向いたチャックテーブルへ吸着する工程である請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記固定工程は、前記保持フィルムの前記保持面側に、固定フィルムを張り付ける工程である請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記保持フィルムは、前記電子部品を保持するための保持層と、前記保持層を支持する基層と、を有し、
前記基層は、160℃における弾性率E’(160)と、25℃における弾性率E’(25)と、の比R(=E’(160)/E’(25))が0.001以上0.6以下であり、且つ、E’(25)が400MPa以下である請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記基層は、線膨張係数が100ppm/K以上である請求項5に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
対象物を上面側から吸着できるように、下方へ開放された吸着面を有する第1チャックテーブルと、
対象物を下面側から吸着できるように、上方へ開放された吸着面を有し、且つ、固定された前記対象物を加熱する加熱機構を有する第2チャックテーブルと、
前記第1チャックテーブル及び前記第2チャックテーブルの吸着面同士を対面させた状態で近接させ、前記第1チャックテーブルに固定した前記対象物を、前記第2チャックテーブルへ受け渡すことができる受渡機構と、を備えることを特徴とする電子部品製造装置。
【請求項8】
前記対象物が、電子部品をその上面側に保持した保持フィルムである請求項7に記載の電子部品製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電子部品を保持する保持フィルムを使用し、該電子部品を該保持フィルムに保持させた状態のまま、取り扱うことができる電子部品の製造方法と電子部品製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品(パッケージ部品、半導体チップ等)は、複数の工程を経て製造されるが、各工程では、それぞれに応じたキャリアやソケット等を複数種類の中から使い分け、これらキャリアやソケット等に電子部品を保持している。こうしたキャリアやソケット等の使い分けは、各工程間における電子部品の乗せ換えを必要とし、煩雑且つコスト増となる。故に、キャリアやソケット等に代わって電子部品を保持するものとして、異なる工程間で共用できる保持フィルムが提案された(特許文献1参照)。
上述の保持フィルムは、合成樹脂による基層と、粘着剤による保持層と、を備えており、電子部品となる半導体ウエハを保持層に貼着することで、これを保持することができる。また、保持フィルムは、電子部品となる半導体ウエハを保持したままの状態で、チャックテーブルに吸着させて固定することができる。この保持フィルムは、半導体ウエハを個片化して半導体部品を得る個片化工程、半導体部品の評価を行う評価工程、及び、半導体部品を粘着剤層から離間するピックアップ工程で共用される。
上述の評価工程では、加温環境下での作動確認、熱ストレス負荷を用いた加速評価等のような、加熱環境下における評価を行う場合がある。上述の保持フィルムは、基層の材料として、ピックアップ工程で使用可能な程度に柔軟な材料を選択すると、加熱環境下における評価の際、チャックテーブルに固定できなくなる場合がある。そこで、異なる工程間で共用できる汎用性を有しながら、加熱環境下においてチャックテーブルに確実に吸着できる保持フィルムが提案された(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2017/002610
【特許文献2】WO2018/139612
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の評価工程では製造効率向上のため、可能な限り多くの電子部品を一括して同時に検査する多数個同時測定が課題とされる場合がある。また、上述の加熱環境下では、チャックテーブルに対する保持フィルムの吸着不良の解決が課題とされる場合もある。 本発明者らは、加温環境下における保持フィルムの使用について検討したところ、保持フィルムは、加熱された吸着面に接近する際、吸着面で生じる熱対流、保持した電子部品の重量による撓み、保持フィルムの基層の熱膨張等により、弛みシワを発生させることを知見した。弛みシワの発生は、チャックテーブルに対する保持フィルムの吸着異常を生じさせる、弛みシワで保持フィルムが伸びて電子部品の位置関係が変化し、多数個同時測定の効率が悪化してしまう等の不具合を生じさせるため、こうした弛みシワの発生を抑制する必要がある。
そこで、本発明者らは、より多くの要求特性を満たすべく試験を繰り返し、加熱された吸着面に対し、保持フィルムを、弛みシワを発生させることなく吸着させる方法を検討した。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、加熱環境下における保持フィルムの弛みシワの発生を抑制することができる電子部品の製造方法及び電子部品製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題点を解決する手段として、本発明は以下の通りである。
[1]本発明の電子部品の製造方法は、保持フィルムに保持された電子部品の露出部、及び/又は、前記保持フィルムの保持面の露出部、の位置関係を固定する固定工程と、
前記位置関係が固定された前記保持フィルムを、非保持面側から、加熱された吸着面へ吸着する吸着工程と、を備えることを要旨とする。
[2]本発明の電子部品の製造方法では、前記吸着工程後に、前記位置関係の固定を解除する解除工程を備え、
前記解除工程後に、前記保持面側へ露出された前記電子部品の電極に対して、外部から通電を行う通電工程を備えることができる。
[3]本発明の電子部品の製造方法では、前記固定工程は、前記保持面が上方へ向くように配置された前記保持フィルムを、吸着面が下方へ向いたチャックテーブルへ吸着する工程にすることができる。
[4]本発明の電子部品の製造方法では、前記固定工程は、前記保持フィルムの前記保持面側に、固定フィルムを張り付ける工程にすることができる。
[5]本発明の電子部品の製造方法では、前記保持フィルムは、前記電子部品を保持するための保持層と、前記保持層を支持する基層と、を有し、
前記基層は、160℃における弾性率E’(160)と、25℃における弾性率E’(25)と、の比R(=E’(160)/E’(25))が0.001以上0.6以下であり、且つ、E’(25)が400MPa以下であるものとすることができる。
[6]本発明の電子部品の製造方法では、前記基層は、線膨張係数が100ppm/K以上であるものとすることができる。
[7]本発明の電子部品製造装置は、対象物を上面側から吸着できるように、下方へ開放された吸着面を有する第1チャックテーブルと、
対象物を下面側から吸着できるように、上方へ開放された吸着面を有し、且つ、固定された前記対象物を加熱する加熱機構を有する第2チャックテーブルと、
前記第1チャックテーブル及び前記第2チャックテーブルの吸着面同士を対面させた状態で近接させ、前記第1チャックテーブルに固定した前記対象物を、前記第2チャックテーブルへ受け渡すことができる受渡機構と、を備えることを要旨とする。
[8]本発明の電子部品製造装置では、前記対象物が、電子部品をその上面側に保持した保持フィルムであるものとすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電子部品の製造方法、及び、電子部品製造装置によれば、加熱環境下における保持フィルムの弛みシワの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明における(a)は固定工程を説明する説明図、(b)は吸着工程を説明する説明図である。
図2】本発明における実施例の固定工程を説明する説明図である。
図3】本発明における変更例の固定工程を説明する説明図である。
図4】本発明における変更例の固定工程を説明する説明図である。
図5】本発明における変更例の固定工程を説明する説明図である。
図6】本発明における保護フィルムと電子部品の位置関係の固定を説明する(a)は平面図、(b)は側面図である。
図7】本発明における実施例の吸着工程を説明する説明図である。
図8】本発明における実施例の解除工程を説明する説明図である。
図9】本発明における実施例の通電工程を説明する説明図である。
図10】本発明における保護フィルムを説明する断面図である。
図11】本発明における実施例の電子部品製造装置を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、図面を参照しながら説明する。ここで示す事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要で、ある程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
[1]電子部品の製造方法
本発明の電子部品の製造方法は、保持フィルム10に保持された電子部品30の露出部301、及び/又は、前記保持フィルム10の保持面13の露出部131、の位置関係を固定する固定工程と(図1(a)参照)、
前記位置関係が固定された前記保持フィルム10を、非保持面14側から、加熱された吸着面521へ吸着する吸着工程と(図1(b)参照)、を備える。
【0011】
(1)固定工程
固定工程は、保持フィルム10に保持された電子部品30の露出部301、及び/又は、保持フィルム10の保持面13の露出部131、の位置関係を固定する工程である(図2図5参照)。
即ち、固定工程において、保持フィルム10は、電子部品30の露出部301、及び/又は、保持面13の露出部131の位置関係を固定されることで、固定工程の後工程における弛みシワの発生を抑制される。
【0012】
固定工程は、上述の位置関係を固定できればよく、具体的な方法等について、特に限定されない。
固定工程の具体例として、以下を挙げることができる。
即ち、固定工程を実行する方法として、吸着面511が下方へ向いたチャックテーブル51(以下、「第1チャックテーブル51」とも記載する)を用いる方法が挙げられる。
また、固定工程を実行する方法として、電子部品30を保持する保持フィルム10とは別の、固定フィルム11を用いる方法が挙げられる。
【0013】
固定工程は、第1チャックテーブル51を用いる方法の場合、図2に示すように、保持フィルム10に保持された電子部品30について、その露出部301を、第1チャックテーブル51へ吸着させることで実行することができる。
即ち、この固定工程では、第1チャックテーブル51によって、電子部品30の露出部301の位置関係が固定される。
また、この固定工程において、保持フィルム10は、周縁部等の一部が第1チャックテーブル51へ吸着される。
このため、この固定工程では、保持フィルム10の露出部131のうち、周縁部等の第1チャックテーブル51に吸着された部位についても、位置関係が固定される。
【0014】
固定工程は、固定フィルム11を用いる方法の場合、図3に示すように、保持フィルム10の保持面13の露出部131に、固定フィルム11を張り付けることで実行することができる。
この固定工程では、電子部品30の露出部301にもまた、固定フィルム11を張り付けることもできる。
即ち、この固定工程では、固定フィルム11によって、保持フィルム10の保持面13の露出部131の位置関係、あるいは、電子部品30の露出部301及び保持フィルム10の保持面13の露出部131の位置関係が固定される。
【0015】
なお、第1チャックテーブル51を用いる固定工程については、図4に示すように、電子部品30の露出部301と、保持フィルム10の保持面13の露出部131と、を、第1チャックテーブル51へ吸着させることで実行することもできる。
この固定工程では、第1チャックテーブル51として、吸着面511に凹部513が設けられたものが使用される。この凹部513は、内部で電子部品30を吸着することができるように、電子部品30の厚さと同等の深さで形成されている。
即ち、この固定工程では、第1チャックテーブル51によって、凹部513に収容された電子部品30の露出部301と、吸着面511に接触した保持フィルム10の保持面13の露出部131と、の位置関係が固定される。
【0016】
他に、第1チャックテーブル51を用いる固定工程については、図5に示すように、保持フィルム10の保持面13の露出部131を、第1チャックテーブル51へ吸着させることで実行することもできる。
この固定工程では、第1チャックテーブル51として、吸着面511に凹部513が設けられたものが使用される。この凹部513は、深さが、電子部品30の厚さを超えて大きくなるように形成されており、内部で電子部品30を吸着することができない。
即ち、この固定工程では、第1チャックテーブル51によって、吸着面511に接触した保持フィルム10の保持面13の露出部131の位置関係が固定される。
【0017】
(1-1)位置関係の固定
本発明の固定工程において、保持フィルムに保持された電子部品の露出部、及び/又は、保持フィルムの保持面の露出部、の位置関係の固定は、下記形態〈1〉~〈3〉のうち、少なくとも何れか1つを含む。
〈1〉保持フィルム10の保持面13に保持された電子部品30同士の位置関係を固定する形態。
〈2〉保持フィルム10の保持面13の露出部131のうち、電子部品30同士の間に形成される間隙露出部131Bを固定する形態。
〈3〉保持フィルム10の保持面13の露出部131のうち、該保持フィルム10の周縁部の周縁露出部131Aを固定する形態。
【0018】
具体例として、図6(a),(b)に示すように、固定工程において、電子部品30は、保持フィルム10の保持面13上で、複数が縦横方向で等間隔おきに並べられ、保持されている。
なお、保持フィルム10の保持面13上における電子部品30の保持数は、図6(a),(b)中で4としたが、該保持数は、特に限定されない。この保持数は、例えば、2以上(通常、10万以下)にすることができ、更には10以上にすることができ、更には100以上にすることもできる。
【0019】
電子部品30は、保持フィルム10の保持面13上において、電極31が外部と電気的接続が可能となるように、該電極31を外部へ露出した状態で並べられている。
即ち、電子部品30は、通常、電極31が保持層102に保持されないようにして、並べられている。
図6(a),(b)中で、電極31は、電子部品30の上面に複数設けられている。これら電極31が保持層102に保持されないように、電子部品30は、保持フィルム10の保持面13に対して、それぞれの下面で接合されている。
つまり、電子部品30は、下面を除く上面及び周面が外部に露出されており、これらが露出部301となる。
【0020】
なお、電子部品30は、電極31が上面に限らず、周面で露出されるように並べられてもよいが、プローブカード等の接針による通電評価を利用できることが好ましい。このため、電子部品30は、電極31が上向きになるように、つまり電極31が上面で露出されるように、並べられることが好ましい。
また、電子部品30の露出部301には、実質的に「電極が外部に露出された部位」が含まれる。即ち、図6(a),(b)中で、電極31が外部に露出された部位は、電子部品30の上面のみであり、以下の説明では、露出部301として、電子部品30の上面のみを指す場合についても、便宜的に露出部301であると換言される。
【0021】
保持フィルム10は、保持面13上で電子部品30が保持されていない部位が外部に露出されており、該部位が露出部131となる。
この露出部131は、保持フィルム10の周縁部に形成された周縁露出部131Aと、電子部品30同士の間に形成された間隙露出部131Bと、を有している。
【0022】
保持フィルム10は、吸着工程において、加熱された吸着面521による加熱環境下では、該吸着面521からの熱対流、電子部品30の重量による撓み、熱膨張等の影響が及ぶことで、弛みシワを発生させ得る状態にある。
保持フィルム10において、保持面13上に電子部品30を保持する部位は、該電子部品30と接合されている。該部位では、接合された電子部品30が、所謂「添え木」として機能する。
【0023】
一方、保持フィルム10の露出部131は、電子部品30が接合されておらず、所謂「添え木」として機能するものがない。
このため、保持フィルム10において、電子部品30を保持する部位と、露出部131と、を比較した場合、電子部品30を保持する部位では弛みシワが発生し難く、露出部131では弛みシワが発生しやすい傾向がある。
また、保持フィルム10の露出部131については、周縁露出部131Aと、間隙露出部131Bとを比較した場合、サイズ(平面積)が大きい分、周縁露出部131Aで弛みシワが発生しやすい傾向がある。
【0024】
上述の〈1〉の形態について、該形態では、電子部品30の露出部301が固定されることにより、電子部品30同士の位置関係が固定される。
即ち、上述の〈1〉の形態は、電子部品30の露出部301を吸着面511へ吸着させたり、該露出部301に固定フィルム11を張り付けたり等して、電子部品30同士の位置関係を固定する形態である。
つまり、電子部品30同士の位置関係が変化すると、プローブカード等の接針と、電極31との相対位置がずれ、通電工程等で多数個同時測定の効率悪化等が発生し得る。こうした相対位置のずれは、電子部品30の保持数が増すに従い、大きくなる。
この〈1〉の形態は、電子部品30同士の位置関係を固定することにより、該電子部品30の電極31と、プローブカード等の接針との相対位置がずれることを防止することができる。
【0025】
加えて、上述の〈1〉の形態では、保持フィルム10について、電子部品30を介することで、該電子部品30を保持する部位の複数箇所で位置関係が固定される。
即ち、上述の〈1〉の形態は、保持フィルム10の電子部品30を保持する部位について、複数箇所にわたって該部位同士の位置関係を固定する形態でもある。
この〈1〉の形態は、保持フィルム10の複数箇所で位置関係を固定する、つまり、保持フィルム10に位置関係が固定された部位を複数設けることで、各部位間の伸びや弛みを規制することにより、弛みシワの発生を抑制することができる。
【0026】
上記のように、〈1〉の形態は、電極31とプローブカード等の接針との相対位置がずれることを防止することができ、保持フィルム10の弛みシワの発生を抑制することができる。
このため、〈1〉の形態は、吸着工程の後工程での不具合の防止について、特に効果を発揮する。
なお、この〈1〉の形態は、上述の固定工程において、具体例として図2図4に示した方法等が該当する。
【0027】
上述の〈2〉の形態について、該形態では、保持フィルム10の露出部131のうち、間隙露出部131Bの位置関係が固定される。
即ち、上述の〈2〉の形態は、保持フィルム10の露出部131で間隙露出部131Bを吸着面511へ吸着させたり、該間隙露出部131Bに固定フィルム11を張り付けたり等して、吸着面511や固定フィルム11を所謂「添え木」として機能させることで、間隙露出部131Bを形状固定する形態である。
つまり、間隙露出部131Bに弛みシワが発生すると、電子部品30同士の間隔が変化することにより、電子部品30同士の位置関係も変化し、後述する通電工程等で多数個同時測定の効率悪化等が発生し得る。
この〈2〉の形態は、間隙露出部131Bを形状固定することで、電子部品30同士の間隔、つまり幅長W131Bの変化を防止することができる。このため、〈2〉の形態は、吸着工程の後工程での不具合の防止について、特に効果を発揮する。
なお、この〈2〉の形態は、上述の固定工程において、具体例として図3、4、5に示した方法等が該当する。
【0028】
上述の〈3〉の形態について、該形態では、保持フィルム10の露出部131のうち、周縁露出部131Aの位置関係が固定される。
即ち、上述の〈3〉の形態は、保持フィルム10の露出部131で周縁露出部131Aを吸着面511へ吸着させたり、該周縁露出部131Aに固定フィルム11を張り付けたり等して、吸着面511や固定フィルム11を所謂「添え木」として機能させることで、周縁露出部131Aを形状固定する形態である。
つまり、周縁露出部131Aに弛みシワが発生すると、吸着工程で第2チャックテーブル52への保持フィルム10の吸着不良、通電工程で電子部品30同士の位置関係の変化による多数個同時測定の効率悪化等が発生し得る。
この〈3〉の形態は、周縁露出部131Aを形状固定することで、該周縁露出部131Aにおける弛みシワの発生を防止することができる。このため、〈3〉の形態は、吸着工程及び該吸着工程の後工程での不具合の防止について、特に効果を発揮する。
なお、この〈3〉の形態は、上述の固定工程において、具体例として図2図5に示した方法等が該当する。
【0029】
以上の通り、本方法で、電子部品30を保持する保持フィルム10は、固定工程において、保持フィルム10に保持された電子部品30の露出部301、及び/又は、保持フィルム10の保持面13の露出部131、の位置関係が固定される。
また、保持フィルム10は、固定工程と、吸着工程と、更には通電工程等の吸着工程の後工程で共用される。
固定工程における上述の位置関係の固定は、吸着工程における加熱環境下でも維持されて、保持フィルム10における弛みシワの発生を抑制することができる。
従って、保持フィルム10を共用する各工程において、弛みシワの発生を抑制することができ、チャックテーブルへの保持フィルム10の吸着不良や電子部品30の多数個同時測定の効率悪化等といった不具合の発生を防止することができる。
【0030】
(2)吸着工程
吸着工程は、固定工程で電子部品30の露出部301、及び/又は、保持面13の露出部131の位置関係が固定された保持フィルム10を、非保持面14側から、加熱された吸着面521へ吸着する工程である(図7参照)。
即ち、吸着工程において、保持フィルム10は、上述の位置関係の固定を維持したまま、加熱された吸着面521へ吸着させることができる。
また、この吸着工程で吸着面521へ吸着された後の保持フィルム10は、第1チャックテーブル51等による固定工程での位置関係の固定に依拠せずに、吸着面521への吸着のみでも該位置関係を固定される。
【0031】
吸着工程は、保持フィルム10を加熱された吸着面521へ吸着できればよく、具体的な装置等について、特に限定されない。
吸着工程を実行する装置には、通常、チャックテーブル52(以下、「第2チャックテーブル52」とも記載する)が使用される。
第2チャックテーブル52は、上方へ開放された吸着面521を有している。更に、第2チャックテーブル52は、加熱機構(図示略)を有している。この加熱機構により、第2チャックテーブル52の吸着面521は、加熱された状態となっている。
【0032】
吸着工程は、保持フィルム10を第2チャックテーブル52の吸着面521へ吸着できればよく、具体的な方法等について、特に限定されない。
具体例として、吸着工程は、以下の工程を実行することで、達成することができる。
第1工程:保持フィルム10を吸着した第1チャックテーブル51を、第2チャックテーブル52の上方位置へ移動させる。
第2工程:第1工程の後、第1チャックテーブル51と、第2チャックテーブル52とを近接させる。
第3工程:第2工程の後、保持フィルム10の非保持面14を第2チャックテーブル52に接触させる。
【0033】
吸着工程は、第2チャックテーブル52の加熱された吸着面521によって、加熱環境下で実行される。
加熱環境下の温度域は、特に限定されないが、通常、吸着工程の後工程である通電工程に応じた温度域に設定することができる。即ち、製造効率及びコスト抑制の観点から、吸着工程で第2チャックテーブル52に保持フィルム10及び電子部品30を吸着させた後は、そのまま、吸着工程の後工程として通電工程を実行することができる。
具体的に温度域の下限は、例えば、50℃以上、更に100℃以上、更には150℃以上としても好ましく適用できる。また、温度域の上限は、通常、250℃以下である。
【0034】
また、吸着工程は、吸着面521へ吸着する前の加熱環境下における保持フィルム10への熱の影響を低減する観点で、第1チャックテーブル51に吸着された保持フィルム10を、好ましくは常温域、例えば、15~30℃、更に15~25℃、更に20~25℃、に保つことが好ましい。
保持フィルム10を常温域に保つには、例えば、第1チャックテーブル51が冷却機構を有するものとする、保持フィルム10を空冷するための送風機構を設ける等して、達成することができる。
【0035】
(3)その他の工程
本方法では、上述の固定工程と吸着工程以外の他の工程を備えることができる。
本方法は、例えば、吸着工程の後工程として、解除工程や通電工程を備えることができる。
また、本方法は、解除工程や通電工程の他に、固定工程の前工程として、保持フィルム10の保持面13上に複数の電子部品30を、電極31が露出した状態で並べる配置工程、通電工程の後工程として、保持フィルム10の保持面13上から電子部品30を離間させるピックアップ工程等を備えることができる。
以下、解除工程及び通電工程について説明する。
【0036】
(3-1)解除工程
解除工程は、固定工程における上述した位置関係の固定を解除する工程である(図8参照)。
解除工程は、吸着工程の前工程として実行することもできるが、吸着工程の後工程として実行されることが好ましい。
即ち、保持フィルム10は、吸着工程で第2チャックテーブル52の吸着面521へ吸着された後、上述の位置関係を固定される。このため、吸着工程の後工程であれば、第1チャックテーブル51による上述の位置関係の固定を解除しても、該位置関係は、固定されたままの状態に保持することができる。
【0037】
なお、解除工程を吸着工程の前工程とするには、例えば、第1チャックテーブル51が第2チャックテーブル52の上方位置に配された状態で、保持フィルム10の非保持面14を第2チャックテーブル52に接触させずに解除工程を実行し、該保持フィルム10を第2チャックテーブル52へ落下させ、吸着工程を実行することで、達成することができる。
【0038】
解除工程は、固定工程による上述の位置関係の固定を解除できればよく、具体的な方法等について、特に限定されない。
具体例として、解除工程は、固定工程における上述の位置関係の固定に第1チャックテーブル51を使用した場合、第1チャックテーブル51による保持フィルム10の吸着を解除することで、達成することができる。
また、解除工程は、固定工程における上述の位置関係の固定に固定フィルム11を使用した場合、保持フィルム10及び電子部品30から、固定フィルム11を剥離することで、達成することができる。
【0039】
(3-2)通電工程
通電工程は、保持フィルム10の保持面13側(つまり、上方側)へ露出された電子部品30の電極31に対して、外部から通電を行う工程である。
即ち、通電工程は、電子部品30の電極31に対して、外部から通電を行うことで、電子部品30の電気特性を通電評価する工程である(図9参照)。
通電評価は、保持フィルム10に保持された各電子部品30について、それぞれの外部に露出した電極31を利用して行われる。
1つの電子部品30について、外部に露出した電極31の数は、単数の場合もあるが、通常は複数である。通電評価は、露出した複数の電極31のうち、一部のみを利用して行うことができ、全部を利用して行うこともできる。
【0040】
通電評価の内容や目的等は限定されず、例えば、動作確認や、加速耐久試験等の内容や目的が挙げられる。
より具体的には、例えば、断線や短絡の有無の評価、入力電圧、出力電圧及び出力電流等の評価を行うことができる直流通電テスト、出力波形の評価を行うことができる交流通電テスト、書き込み読み込み演算の可否・速度等の評価、保持時間の評価、相互干渉の評価等の機能テスト等が含まれる。
即ち、パッケージ部品におけるファイナルテスト、構造化テスト、スキャンテスト、アダプティブテスト等や、半導体部品におけるウエハテスト、バーンインテスト等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0041】
また、通電評価では、通常、プローブ(探針)又は複数のプローブを備えたプローブカード(探針付き基板)が利用される。
具体的に、プローブ又はプローブカードを利用した通電評価は、複数の電子部品30が保持フィルム10の保持面13上に並べられた状態で、プローブを電極31に接針させ、該プローブから電極31へ通電することで行われる。
この通電評価において、評価される電子部品30は、保持面13上に並べられた一部の電子部品30であってもよいし、全部の電子部品30であってもよい。
通電評価する電子部品30を一部とするか又は全部とするかは、必要性に応じて選択することができるが、製造効率及びコスト抑制の観点から、より多くの電子部品30を同時に通電評価することが好ましい。
即ち、例えば、本方法では、同時に通電評価できる電子部品の個数を、2個以上(通常、10万個以下)にすることができ、更には10個以上にすることができ、更には100個以上にすることができる。
【0042】
図9に示すように、通電評価では、複数のプローブ531が形成されたプローブカード53を、電子部品30の対応箇所へ接触させて電気的接続を行い、プローブ531と電子部品30上に形成された回路との間で、例えば、信号の正否判定を行う(プローブテスト)ことができる。
プローブカード53は、特に限定されず、同時に評価する電子部品30の個数や、保持フィルム10の保持面13上における電子部品30の配置に応じた設計のものを使用することができる。
特に、本発明では、複数の電子部品の複数の電極と同時に接続が可能な多数のプローブを備えた大型のプローブカードを使用することができる。
【0043】
通電工程は、第2チャックテーブル52の加熱された吸着面521によって、加熱環境下で電子部品30を通電評価することができる。
通電工程における加熱環境下の温度域は、電子部品30の用途に応じて異なり、特に限定されない。
具体的に温度域の下限は、例えば、50℃以上、更に100℃以上、更には150℃以上としても好ましく適用できる。また、温度域の上限は、通常、250℃以下である。
【0044】
(4)保持フィルム
本発明に供される保持フィルム10は、可能な限り多くの電子部品をまとめて保持し、且つ、異なる工程間で共用するために利用されるものである。
保持フィルム10は、図10に示すように、電子部品30を保持するための保持層102と、保持層102を支持する基層101と、を有している。
この保持フィルム10は、保持層102側となる上面を、電子部品30を保持する保持面13とし、基層101側となる下面を、第2チャックテーブル52に吸着される非保持面14として、使用される。
保持フィルム10の全体の厚みは、特に限定されないが、例えば、50μm以上300μm以下とすることができ、55μm以上250μm以下が好ましく、100μm以上200μm以下がより好ましい。
【0045】
なお、保持フィルム10は、通常、平板状の枠体12に貼着して張られた状態で利用される(図1図5、及び、図7~9参照)。
この枠体12は、具体例として、リングフレーム、グリップリング等が挙げられる。
枠体12は、搬送時等において、保持フィルム10を取り扱いやすくすることを目的として利用されるものである。
即ち、枠体12は、保持フィルム10に保持された電子部品30の露出部301、及び/又は、保持フィルム10の保持面13の露出部131、の位置関係を固定する機能を有していない。
【0046】
以下、保持フィルム10の各層及び物性について説明する。
(4-1)保持層
保持層102は、電子部品30を複数並べて保持するための層であり、粘着剤によって形成される。
保持層102の厚みは、特に限定されないが、例えば、5μm以上50μm以下とすることができる。更に、保持層102の厚みは、5μm以上40μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましい。
保持層102の厚みが上記範囲である場合、保持フィルム10は、電子部品30の良好な保持性能を確保できる。
【0047】
保持層102は、電子部品30を好適にピックアップするという観点から、熱付加又はエネルギー線照射により保持力が低下される特性を有することが好ましい。
保持層102に使用される粘着剤は、特に限定されないが、上記特性を有するものとして、熱付加によって粘着力が低下又は喪失する発泡型粘着剤、エネルギー線照射によって粘着力が低下又は喪失するエネルギー硬化型粘着剤が挙げられる。
【0048】
発泡型粘着剤及びエネルギー硬化型粘着剤は、両者共に、少なくとも粘着主剤を含む。この粘着主剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0049】
アクリル系粘着剤としては、アクリル酸エステル化合物の単独重合体、アクリル酸エステル化合物とコモノマーとの共重合体等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、アクリル酸エステル化合物としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、コモノマーとしては、酢酸ビニル、アクリルニトリル、アクリルアマイド、スチレン、メチル(メタ)クリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0050】
粘着剤は、上述の粘着主剤以外に、架橋剤を含むことができる。
架橋剤としては、エポキシ系架橋剤(ペンタエリストールポリグリシジルエーテルなど)、イソシアネート系架橋剤(ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネートなど)が挙げられる。これら架橋剤は、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
粘着剤に架橋剤が含まれる場合、架橋剤の含有量は、粘着剤全体を100質量部として10質量部以下とすることが好ましい。また、粘着剤の粘着力は、架橋剤の含有量によって調整できる。具体的には、特開2004-115591号公報に記載の方法を利用できる。
【0051】
発泡型粘着剤は、熱付加により発泡することで、保持面13における電子部品30との粘着面積を減少させて、粘着力を低下させることができる。
この発泡型粘着剤は、上述の粘着主剤以外に、発泡剤を含む。発泡剤は、マイクロカプセルに封入された状態で粘着主剤に添加されていてもよく、そのままの状態で粘着主剤に添加されていてもよく、粘着主剤と結合した状態で添加されていてもよい。
なお、マイクロカプセルについては、その材料として、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等が挙げられる。
【0052】
発泡剤としては、無機系発泡剤、有機系発泡剤が挙げられる。
無機系発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水酸化ホウ素ナトリウム、各種アジド類等が挙げられる。
有機系発泡剤としては、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタンなどの塩フッ化アルカン系化合物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ系化合物、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのヒドラジン系化合物、p-トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのセミカルバジド系化合物、5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾールなどのトリアゾール系化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミドなどのN-ニトロソ系化合物等が挙げられる。
【0053】
エネルギー硬化型粘着剤は、粘着剤に対しエネルギー線照射を行うことで、該粘着剤を硬化させて、粘着力を低下させることができる。
エネルギー線としては、紫外線、電子線、赤外線等が挙げられる。これらのエネルギー線は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。具体的には、紫外線によって硬化される紫外線硬化型粘着剤が挙げられる。
【0054】
このエネルギー硬化型粘着剤は、上述の粘着主剤以外に、分子内に炭素-炭素二重結合を有する化合物(以下、単に「硬化性化合物」という)と、エネルギー線に反応して硬化性化合物の重合を開始させることができる光重合開始剤を含むことができる。この硬化性化合物は、分子中に炭素-炭素二重結合を有し、ラジカル重合により硬化可能なモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーが好ましい。
具体的には、硬化性化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
粘着剤に硬化性化合物が含まれる場合、硬化性化合物の含有量は、粘着剤100質量部に対して0.1~20重量部が好ましい。
【0055】
尚、分子内の炭素-炭素二重結合は、上述の粘着主剤が分子内に有することによって含まれてもよい。即ち、例えば、粘着主剤は、側鎖に炭素-炭素二重結合を有するエネルギー硬化型ポリマー等とすることができる。このように、粘着主剤が分子内に硬化性構造を有する場合には、上述の硬化性化合物は配合してもよく、配合しなくてもよい。
【0056】
光重合開始剤としては、エネルギー線の照射によりラジカルを生成できる化合物が好ましい。
具体的には、アセトフェノン系光重合開始剤{メトキシアセトフェノンなど}、α-ケトール化合物{4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなど}、ケタール系化合物{ベンジルジメチルケタールなど}、ベンゾイン系光重合開始剤{ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル類(ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル)など}、ベンゾフェノン系光重合開始剤{ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸など}、芳香族ケタール類{ベンジルジメチルケタールなど}等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
粘着剤に光重合開始剤が含まれる場合、光重合開始剤の含有量は、粘着剤100質量部に対して5~15質量部とすることが好ましい。
【0057】
(4-2)基層
基層101は、保持フィルム10の取り扱い性や機械的特性等を向上させることを目的として設けられる層である。
基層101の厚みは、特に限定されないが、例えば、50μm以上200μm以下とすることができ、65μm以上175μm以下が好ましく、80μm以上150μm以下がより好ましい。
【0058】
基層101に使用される材料は、特に限定されないが、吸着工程における加熱環境下の環境に耐え得る機械的強度を有するもの、特には加温状態での熱膨張や伸張を抑制可能なものが好ましい。通常、基層101の材料にはエラストマー性を有する樹脂を利用できる。
【0059】
エラストマー性を有する樹脂としては、熱可塑性エラストマー及びシリコーン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのうちでは、熱可塑性を有するものが好ましいため、熱可塑性エラストマーが好ましい。
熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント及びソフトセグメントを有したブロック共重合体からなってもよく、ハードポリマーとソフトポリマーとのポリマーアロイからなってもよく、これらの両方の特性を有したものであってもよい。
【0060】
具体的に、熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフイン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリイミド系熱可塑性エラストマー(ポリイミドエステル系、ポリイミドウレタン系等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのうちでは、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリイミド系熱可塑性エラストマーが好ましく、更には、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及び/又はポリアミド系熱可塑性エラストマーが特に好ましい。
【0061】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ポリエステル成分をハードセグメントとする以外、どのような構成であってもよい。ソフトセグメントとしては、ポリエステル、ポリエーテル及びポリエーテルエステル等を利用できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
即ち、例えば、ハードセグメントを構成するポリエステル成分としては、テレフタル酸ジメチル等のモノマーに由来する構成単位を含むことができる。一方、ソフトセグメントを構成する成分としては、1,4-ブタンジオール及びポリ(オキシテトラメチレン)グリコール等のモノマーに由来する構成単位を含むことができる。
より具体的には、PBT-PE-PBT型ポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0062】
ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ポリアミド成分をハードセグメントとする以外、どのような構成であってもよい。ソフトセグメントとしては、ポリエステル、ポリエーテル及びポリエーテルエステル等を利用できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
即ち、例えば、ハードセグメントを構成するポリアミド成分としては、ポリアミド6、ポリアミド11及びポリアミド12等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのポリアミド成分には、各種のラクタム等をモノマーとして利用できる。
【0063】
一方、ソフトセグメントを構成する成分としては、ジカルボン酸等のモノマーやポリエーテルポリオールに由来する構成単位を含むことができる。このうち、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエーテルジオールが好ましく、例えば、ポリ(テトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
より具体的には、ポリエーテルアミド型ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステルアミド型ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエーテルエステルアミド型ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0064】
また、基層101は、エラストマー性を有する樹脂以外の樹脂を含むこともできる。このような樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのなかでは、ポリエステル及び/又はポリアミドが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン12等のポリアミドが挙げられる。
【0065】
更に、基層101に使用される樹脂中には、添加剤として、可塑剤及び軟化剤(鉱油等)、充填剤(炭酸塩、硫酸塩、チタン酸塩、珪酸塩、酸化物(酸化チタン、酸化マグネシウム)、シリカ、タルク、マイカ、クレー、繊維フィラー等)、酸化防止剤、光安定化剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤等を添加することができる。
これら添加剤は、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0066】
基層101の材料に使用されるフィルムは、延伸の有無を問わず、無延伸フィルム、一軸延伸フィルムや二軸延伸フィルム等の延伸フィルムの何れも使用することができる。
また、上述のフィルムは、単層フィルム、複数の層を有する多層フィルムの何れも使用することができる。
基層101には、保持層102との接着性向上という観点から、表面処理されたフィルムを使用することが好ましい。表面処理の具体例として、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を挙げることができる。
【0067】
(4-3)その他の層
保持フィルム10は、基層101と保持層102とのみからなってもよいが、他層を有することができる。
他層としては、例えば、粘着剤との界面強度を向上する界面強度向上層、基層101から保持層102への低分子量成分の移行を抑制する移行防止層等が挙げられる。
これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0068】
(4-4)物性
保持層102を有する保持フィルム10の粘着力は、特に限定されない。この粘着力は、保持フィルム10をシリコンミラーウエハの表面に貼着して60分間放置した後、180度剥離強度試験で測定される粘着力が0.1N/25mm以上10N/25mm以下であることが好ましい。粘着力が上記範囲である場合、保持フィルム10は、電子部品30との良好な接着性を確保できる。
粘着力は、更に、0.2N/25mm以上9N/25mm以下がより好ましく、0.3N/25mm以上8N/25mm以下が更に好ましい。
なお、180度剥離強度試験の測定方法は、測定条件について、保持フィルム10を貼着させる対象をシリコンミラーウエハとし、剥離速度を300mm/分とした他は、JIS Z0237:2009に準拠するものとする。
【0069】
基層101を有する保持フィルム10は、160℃における弾性率をE’101(160)とし、25℃における弾性率をE’101(25)とした場合、これらの比RE101(=E’101(160)/E’101(25))が、比較的大きい値であることが好ましい。
具体的に、比RE101(=E’101(160)/E’101(25))は、0.001以上0.6以下であることが好ましく、0.02≦RE101≦0.45がより好ましく、0.05≦RE101≦0.3が更に好ましい。
【0070】
尚、上記弾性率は、引張弾性率(単位はMPaである)を表わす。
また、比RE101は、保持フィルム10の弾性率E’101から得られた値、つまり、基層101のみならず他の層(例えば、保持層102等)も有する保持フィルム10から得られた値である。但し、基層101以外の他の層が、比RE101に及ぼす影響は、一般的に極めて些少であるから、この比RE101は、基層101のみの弾性率E’101から得られた値と、実質的に同等の値になると考えられる。
上述した基層101に使用される材料のうち、上記の比RE101の範囲を満たすものとしては、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマーであるPBT-PE-PBT型ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーであるポリエーテルアミド型ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステルアミド型ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエーテルエステルアミド型ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられ、中でも、PBT-PE-PBT型ポリエステル系熱可塑性エラストマー(比RE101≒0.17)は、特に好ましい。
【0071】
0.001≦RE101≦0.6の範囲内において、E’101(25)は、3500MPa以下(E’101(25)≦3500MPa)であることが好ましい。
E’101(25)の下限値は限定されないが、通常、35MPa≦E’101(25)である。
E’101(25)は、更に、40MPa≦E’101(25)≦1000MPaが好ましく、45MPa≦E’101(25)≦500MPaがより好ましく、45MPa≦E’101(25)≦300MPaが更に好ましい。
E’101(25)の値は、基層101のMD方向及びTD方向で異なってもよいが、両方向において上述範囲であることが好ましい。
【0072】
E’101(160)は、特に限定されないが、0.1MPa≦E’101(160)≦600MPaが好ましく、0.15MPa≦E’101(160)≦300MPaがより好ましく、0.2MPa≦E’101(160)≦100MPaが更に好ましく、1MPa≦E’101(160)≦50MPaが特に好ましい。
E’101(160)の値は、基層101のMD方向及びTD方向で異なってもよいが、両方向において上述範囲であることが好ましい。
【0073】
上述の各弾性率E’は、動的粘弾性測定装置(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)により測定される。
具体的に、サンプルサイズを幅10mm、チャック間の長さ20mmとし、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の測定条件で-50℃から200℃まで引張弾性率を測定して得られたデータから各温度のデータを読み取ることで得られる。
即ち、引張弾性率の測定データから25℃で読み取られた値を弾性率E’(25)とし、160℃で読み取られた値を弾性率E’(160)とする。
【0074】
基層101を有する保持フィルム10の線熱膨張係数(α10)は、限定されないものの、弛みシワの発生を抑制する観点から、300ppm/K以下(α10≦300ppm/K)であることが好ましい。線熱膨張係数は、更に、280ppm/K以下(α10≦280ppm/K)が好ましく、250ppm/K以下(α10≦250ppm/K)がより好ましい。保持フィルム10の線熱膨張係数は、通常、100ppm/K以上(100ppm/K≦α10)である。このような線熱膨張係数の保持フィルム10に使用される基層101の材料としては、上述したような熱可塑性エラストマーが挙げられる。
尚、線熱膨張係数は、JIS K7197に準じて測定され、温度25℃から150℃までの間における熱膨張係数である。
【0075】
(5)固定フィルム
本発明に供される固定フィルム11は、保持フィルム10に保持された電子部品30の露出部301、及び/又は、保持フィルム10の保持面13の露出部131、の位置関係を固定するために利用されるものである(図3参照)。
固定フィルム11には、基層を有するものを用いることができる。
固定フィルム11の全体の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上110μm以下とすることができ、15μm以上100μm以下が好ましく、20μm以上90μm以下がより好ましい。
【0076】
以下、固定フィルム11の各層及び物性について説明する。
(5-1)基層
基層は、固定フィルム11の取り扱い性や機械的特性等を向上させることを目的として設けられる層である。
基層の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上100μm以下とすることができ、15μm以上90μm以下が好ましく、20μm以上80μm以下がより好ましい。
【0077】
固定フィルム11に使用される基層の材料は、特に限定されないが、加熱環境下の環境に耐え得る機械的強度を有するもの、特には加温状態での熱膨張や伸張を抑制可能なものが好ましい。
【0078】
通常、基層の材料には、樹脂によるフィルムを利用することができる。
この樹脂としては、熱可塑性樹脂、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、半芳香族ポリイミド、芳香族ポリイミド等のポリイミド系樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド系樹脂などから選択される1種または2種以上を挙げることができる。
【0079】
基層の材料に使用されるフィルムは、延伸の有無を問わず、無延伸フィルム、一軸延伸フィルムや二軸延伸フィルム等の延伸フィルムの何れも使用することができる。
なお、固定フィルム11として、その材料に使用されるフィルムには、基層のみを有する単層フィルム、基層を含めた複数の層を有する多層フィルムの何れも使用することができる。
【0080】
(5-2)その他の層
固定フィルム11は、基層のみからなってもよいが、他層を有することができる。
固定フィルム11は、他層として、例えば、保持フィルム10と接触する接触面に離型層を有することができる。
離型層は、特に限定されないが、通常は、離型剤によって形成される。この離型剤は、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン・α‐オレフィンランダム共重合体等が挙げられる。
即ち、固定フィルム11は、離型層を有することにより、固定工程で保持フィルム10と張り合わせる際の保持層102に対する密着性の向上や、解除工程で保持フィルム10から引き剥がす際の保持層102に対する易剥離性の向上を図ることができる。
【0081】
なお、固定フィルム11は、例えば、保持フィルム10の保持層102のような、粘着剤によって形成される層(以下、「粘着層」とも記載する)の有無を問わない。
即ち、固定フィルム11には、粘着層を有するものと、粘着層を有さないものとの何れも使用することができる。
また、固定フィルム11は、上述の離型層を有するものを使用する場合、解除工程における保持フィルム10の保持層102との易剥離性の観点から、粘着層を有さないものが好ましい。
【0082】
また、固定フィルム11は、基層と離型層を有する場合、他層として、例えば、離型層との界面強度を向上する界面強度向上層、基層から離型層への低分子量成分の移行を抑制する移行防止層等を有することができる。
固定フィルム11は、上述した他層を、1種のみを有してもよく、2種以上を有してもよい。
【0083】
(5-3)物性
基層を有する固定フィルム11の線熱膨張係数(α11)は、特に限定されないが、上記保持フィルム10の線熱膨張係数よりも小さい(α11<α10)ことが好ましい。
具体的に、固定フィルム11の線熱膨張係数は、100ppm/K以下(α11≦100ppm/K)であることが好ましい。線熱膨張係数は、更に、90ppm/K以下(α11≦90ppm/K)が好ましく、80ppm/K以下(α11≦80ppm/K)がより好ましい。固定フィルム11の線熱膨張係数は、通常、20ppm/K以上(20ppm/K≦α11)である。このような線熱膨張係数の固定フィルム11に使用される基層の材料としては、上述したような熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0084】
固定フィルム11の線熱膨張係数が、保持フィルム10の線熱膨張係数よりも小さい場合(α11<α10)には、特に加熱環境下において、保持フィルム10よりも更に、固定フィルム11の熱膨張や伸張等の形状変化を抑制できる。
このため、上述の固定工程及び吸着工程で、固定フィルム11が、保持フィルム10の熱膨張や伸張等の形状変化を好適に抑制することができる。
尚、線熱膨張係数は、JIS K7197に準じて測定され、温度25℃から150℃までの間における熱膨張係数である。
【0085】
(6)電子部品
本発明に供される電子部品30には、以下の〈A〉、〈B〉が含まれるものとする。
〈A〉:半導体チップ(シリコンダイ)。なお、半導体チップ(シリコンダイ)は、半導体ウエハを個片化(ダイシング)して得られたもの。
〈B〉:パッケージ部品。なお、パッケージ部品は、複数個の半導体チップがアレイ状に封止されたパッケージアレイから個片化されて形成されたもの、又は、パッケージアレイを経ることなく個別に形成されたもの。
【0086】
上述の〈B〉について、パッケージ部品の封止に用いる封止材料は限定されず、有機材料(樹脂)及び無機材料(セラミックス、結晶化ガラス、ガラス等)を用いることができる。
更に、上述の〈B〉について、パッケージアレイには、封止後に再配線を行わないパッケージアレイ、封止後に再配線を行うファンアウト方式(eWLB方式)のパッケージアレイ、ウエハレベルチップサイズパッケージ(WLCSP)方式のパッケージアレイ等が含まれる。
【0087】
また、電子部品30は、通常、外部と電気的な接続を行うことができる電極31を有する。電極31は1つのみを有してもよいが、複数を有してもよい。
外部と電気的接続が可能な電極の形態は限定されず、例えば、半導体部品においては、パッド電極、ボンディング用電極、貫通電極の露出面等が含まれる。
また、パッケージ部品では、パッドタイプの電極、ピンタイプの電極、ボールタイプの電極、リードフレームタイプの電極等が含まれる。
【0088】
即ち、パッケージ部品としては、PGA(Pin Grid Array)タイプのもの、CPGA(Ceramic Pin Grid Array)タイプのもの、PPGA(Plastic Pin Grid Array)タイプのもの、SPGA(Staggered Pin Grid Array)タイプのもの、BGA(Ball Grid Array)タイプのもの、LGA(Land Grid Array)タイプのもの、QFP(Quad Flat Package)タイプのもの、PQFP(Plastic Quad Flat Package)タイプのもの、QFN(Quad Flat Non-leaded)タイプのもの、QFJ(Quad Flat J-leaded)タイプのもの、PQFJ(Plastic Quad Flat J-leaded)のもの、TCP(Tape Carrier Package)タイプのもの、CSP(Chip Size Package)タイプのもの等が含まれる。
【0089】
尚、電子部品は、固定工程及び吸着工程を経た後も、経る前と、通常、構成的な変化はない。
即ち、本発明の対象である電子部品は、固定工程及び吸着工程を経た後も、電子部品である。
但し、本発明において、吸着工程後に、電子部品に他の構成を付加することになる他工程を経る場合、この他工程を経たものについても、便宜的に電子部品であると換言される。
【0090】
[2]電子部品製造装置
本発明の実施形態の1つである電子部品製造装置50は、第1チャックテーブル51と、第2チャックテーブル52と、受渡機構54と、を備えている(図11参照)。
第1チャックテーブル51は、対象物を上面側から吸着できるように、下方へ開放された吸着面511を有している。
第2チャックテーブル52は、対象物を下面側から吸着できるように、上方へ開放された吸着面521を有している。且つ、第2チャックテーブル52は、固定された前記対象物を加熱する加熱機構を有している。
受渡機構は、前記第1チャックテーブル51及び前記第2チャックテーブル52の吸着面同士を対面させた状態で近接させ、前記第1チャックテーブル51に固定した前記対象物を、前記第2チャックテーブル52へ受け渡すことができる。
【0091】
電子部品製造装置50は、上述した電子部品30の製造方法において、各工程を実行するために使用されるものである。
従って、前記対象物は、通常、電子部品30をその上面側に保持した保持フィルム10である(図11中に二点鎖線で示す)。
【0092】
(1)第1チャックテーブル
第1チャックテーブル51は、上述のように、保持フィルム10を上面(保持面13)側から吸着できるように、下方へ開放された吸着面511を有している。
即ち、第1チャックテーブル51は、電子部品30を保持した状態の保持フィルム10を吸引し、吸着面511に固定するものである。
この第1チャックテーブル51は、保持フィルム10を吸着面511に吸引することができるのであれば、構成等について特に限定されない。
【0093】
具体的に、第1チャックテーブル51は、吸引孔や吸引溝等の吸引ルートを備えた成形体であり、通常、板形状で利用される。なお、これらの吸引孔及び/又は吸引溝は、必要な経路を介し、真空ポンプ等の吸引源と接続されることで、吸引作用を発揮できる。
上述の吸着面511には、通常、成形体の底面が利用される。
【0094】
吸着面511は、通常、図2に示すように、平坦にすることができるが、図4及び図5に示すように、該吸着面511を上方へ凹ませて、凹部513を設けることもできる。
凹部513は、電子部品30のサイズ(平面サイズ)や、保持フィルム10上における電子部品30の保持位置に応じて、複数が形成されている。
即ち、凹部513は、保持フィルム10の上面(保持面13)が吸着面511に吸引される際、その内部に電子部品30を収容する機能を有する。つまり、吸着面511の凹部513に電子部品30を収容することで、保持フィルム10を吸着面511に、撓ませることなく、平坦状に吸着させることができる。
【0095】
凹部513は、吸着面511を上方へ凹ませる長さ、つまり該凹部513の深さについて、特に限定されない。
凹部513の深さは、内部に収容される電子部品30の厚さと同等程度にした場合、該凹部513の内部で電子部品30を吸着することができ、電子部品30同士の位置関係を固定することができる(図4参照)。
また、凹部513の深さは、内部に収容される電子部品30の厚さよりも大きくした場合、該凹部513の内部で電子部品30が吸着されないようにすることができる(図5参照)。
【0096】
第1チャックテーブル51は、保持フィルム10を吸着する際、その吸着面511を保持フィルム10の保持面13に接触させる。吸着面511は、保持フィルム10の保持面13と接触する際、該保持面13が粘着されないように、保持面13に対し、剥離性を有する構成を有することが好ましい。
この構成の具体例として、シリコーン樹脂等を含む剥離剤を吸着面511に塗布することで該吸着面511に剥離層を設ける、第1チャックテーブル51の成形体に使用される材料を、シリコーン樹脂等のような剥離性を有する樹脂にする等が挙げられる。
【0097】
また、第1チャックテーブル51は、吸着された保持フィルム10を常温域に保つため、冷却機構を備えることができる。
この冷却機構は、保持フィルム10を常温域に保つことができればよく、機序及び構成は限定されない。例えば、冷却機構は、第1チャックテーブル51に冷媒を供給する冷媒供給機、保持フィルム10に風を当てて空冷する送風機等によって構成することができる。
なお、常温域は、15~30℃とすることができ、好ましくは15~25℃、さらに好ましくは20~25℃である。
【0098】
(2)第2チャックテーブル
第2チャックテーブル52は、上述のように、保持フィルム10を下面(非保持面14)側から吸着できるように、上方へ開放された吸着面521を有している。
更に、第2チャックテーブル52は、固定された保持フィルム10を加熱する加熱機構を有している。
即ち、第2チャックテーブル52は、第1チャックテーブル51に固定された保持フィルム10を、吸着面521に吸引することにより、第1チャックテーブル51から受け渡される保持フィルム10を固定するものである。
【0099】
また、第2チャックテーブル52は、加熱機構によって吸着面521が加熱されている。吸着面521に固定された保持フィルム10と、該保持フィルム10に保持された電子部品30とは、この加熱された吸着面521により、加熱されて加熱環境下に置かれる。
加熱された吸着面521の具体的な温度は限定されるものではないが、例えば、温度の下限は、50℃以上、更に100℃以上、更には150℃以上とすることができる。また、温度の上限は、通常、250℃以下である。
【0100】
第2チャックテーブル52は、上述の吸着面521を有すること以外に、その構成は限定されない。
具体的に、第2チャックテーブル52は、吸引孔や吸引溝等の吸引ルートを備えた成形体であり、通常、板形状で利用される。なお、これらの吸引孔及び/又は吸引溝は、必要な経路を介し、真空ポンプ等の吸引源と接続されることで、吸引作用を発揮できる。
吸着面521には、通常、成形体の天面が利用される。この吸着面521は、通常、全体として平坦である。
【0101】
また、第2チャックテーブル52は、加熱機構としてヒータを備える。
第2チャックテーブル52は、ヒータを備えることで、吸着面521を加温できる。当然ながら、第2チャックテーブル52は、ヒータを制御するための、センサー及び制御機構を備えることができる。
【0102】
(3)受渡機構
受渡機構54は、第1チャックテーブル51に固定した保持フィルム10を、第2チャックテーブル52へ受け渡すために、第1チャックテーブル51の吸着面511と、第2チャックテーブル52の吸着面521と、を対面させた状態で近接させる機構である(図11参照)。
具体的に、受渡機構54は、第1チャックテーブル51を第2チャックテーブル52へ向かって下降させる手段、第2チャックテーブル52を第1チャックテーブル51へ向かって上昇させる手段、又は、その両方を行う手段を備えている。
【0103】
受渡機構54は、第1チャックテーブル51の吸着面511と、第2チャックテーブル52の吸着面521と、を近接させることができればよく、その構成は限定されない。
受渡機構54の具体例として、図11には、第1チャックテーブル51を第2チャックテーブル52へ向かって下降させる手段を示す。
【0104】
即ち、この受渡機構54は、第1チャックテーブル51を吊り下げて支持する支持体541と、この支持体541を下方から支える支柱542と、を備えている。
支柱542は、上下方向へ伸張又は収縮自在に構成されている。
そして、支柱542が収縮した場合、支柱542に支持された支持体541が下降することで、支持体541とともに第1チャックテーブル51が、第2チャックテーブル52へ向かって下降する。
【0105】
受渡機構54は、上述の支持体541や支柱542の他に、支柱542を駆動するための駆動源等を適宜備えることができる。
また、受渡機構54は、第1チャックテーブル51から第2チャックテーブル52へ保持フィルム10を受け渡した後、支柱542を伸張させ、支持体541及び第1チャックテーブル51を上昇させて、第2チャックテーブル52から第1チャックテーブル51を離す機能を有する。
【0106】
(4)その他の機構
電子部品製造装置50は、第1チャックテーブル51、第2チャックテーブル52及び受渡機構54の他、電子部品30を評価する評価手段を備えることができる。
評価手段の具体例として、電子部品30の電気特性を評価するべく、プローブ531が配置されたプローブカード53(図9参照)や、電子部品30の外観特性を測定する外観特性評価手段(非接触の光学式の評価手段等)等が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の電子部品の製造方法及び電子部品製造装置は、電子部品の製造の用途において広く用いられる。特に、加熱環境下において、電子部品を保持する保持フィルムの弛みシワの発生を抑制可能な特性を有し、生産性に優れた部品製造を行うために好適に利用される。
【符号の説明】
【0108】
10;保持フィルム、101;基層、102;保持層、
11;固定フィルム、
12;枠体、
13;保持面、131;露出部、131A;周縁露出部、131B;間隙露出部、
14;非保持面、
30;電子部品、301;露出部、
31;電極、
50;電子部品製造装置、
51;第1チャックテーブル、511;吸着面、513;凹部、
52;第2チャックテーブル、521;吸着面、
53;プローブカード、531;プローブ、
54;受渡機構、541;支持体、542;支柱。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11