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特開2022-9317改善された性能を有する鉛蓄電池セパレータ及び同セパレータを有する電池及び車両及び関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009317
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】改善された性能を有する鉛蓄電池セパレータ及び同セパレータを有する電池及び車両及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/463 20210101AFI20220106BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20220106BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20220106BHJP
   H01M 50/437 20210101ALI20220106BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20220106BHJP
   H01M 50/454 20210101ALI20220106BHJP
   H01M 50/474 20210101ALI20220106BHJP
   H01M 50/477 20210101ALI20220106BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20220106BHJP
   H01M 10/12 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01M50/463 B
H01M50/417
H01M50/414
H01M50/437
H01M50/44
H01M50/454
H01M50/474
H01M50/477
H01M50/46
H01M10/12 K
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171878
(22)【出願日】2021-10-20
(62)【分割の表示】P 2018517386の分割
【原出願日】2016-10-07
(31)【優先権主張番号】62/238,373
(32)【優先日】2015-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2016/012805
(32)【優先日】2016-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/385,347
(32)【優先日】2016-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505458359
【氏名又は名称】ダラミック エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,エリック,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ゴロヴィン,エム.ニール
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナムルズィー,アヒラ
(72)【発明者】
【氏名】ハワード,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ペリー,ジェームス,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィアー,ジェイ.,ケビン
【テーマコード(参考)】
5H021
5H028
【Fターム(参考)】
5H021AA01
5H021AA06
5H021BB17
5H021CC02
5H021CC04
5H021CC05
5H021CC09
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE11
5H021EE28
5H021EE31
5H021EE34
5H021HH10
5H028AA06
5H028AA07
5H028AA08
5H028CC08
5H028CC10
5H028EE04
5H028EE06
5H028EE09
5H028HH00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改良又は最適化された浸水型鉛蓄電池、システム、及び強化浸水型鉛蓄電池用セパレータ、並びにそれらの製造、検査、及び/又は使用方法、及び/又はそれらを備える車両を提供する。
【解決手段】浸水型鉛蓄電池における酸混合を強化するための電池セパレータであって、多孔質バックウェブ及び前記バックウェブの少なくとも一面から延びている複数の分割リブと、前記電池のスタート及びストップの動きに平行に位置付けられる前記セパレータを伴う電池の特に動作中の酸混合を強化するために角度方向により画定される前記複数の分割リブの少なくとも一部位と、を備える電池セパレータとする。
【選択図】図26D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸水型鉛蓄電池における酸混合を強化するための電池セパレータであって、
多孔質バックウェブ及び前記バックウェブの少なくとも一面から延びている複数の分割リブと、
前記電池のスタート及びストップの動きに平行に位置付けられる前記セパレータを伴う電池の特に動作中の酸混合を強化するために角度方向により画定される前記複数の分割リブの少なくとも一部位と、
を備える電池セパレータ。
【請求項2】
前記角度方向は、前記セパレータの縦方向に関連し、前記角度方向は、ゼロ度(0°)より大きく180度(180°)未満、及び180度(180°)より大きく360度(360°)未満の間からなる群より選ばれる角度である請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項3】
さらに、
前記複数の分割リブ内の1以上の組のリブと、
第1角度方向を有する前記1以上の組のリブ内の第1組のリブと、
第2角度方向を有する前記1以上の組のリブ内の少なくとも第2組のリブと
を備える請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項4】
前記複数の分割リブは、列及び行の配列で配置される請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項5】
前記列は、可変の列間隔で離されている請求項4に記載の電池セパレータ。
【請求項6】
前記行は、可変の行間隔で離されている請求項4に記載の電池セパレータ。
【請求項7】
前記複数の分割リブは、列の配列で配置され、
前記列の配列は、複数の列区分で配置され、
前記複数の列区分の少なくとも1つは、前記複数の列区分の少なくとも他の1つと比較して、前記複数の分割リブの異なる配置を有する請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項8】
前記複数の分割リブは、行の配列で配置され、
前記行の配列は、複数の行区分で配置され、
前記複数の行区分の少なくとも1つは、前記複数の行区分の少なくとも他の1つと比較して、前記複数の分割リブの異なる配置を有する請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項9】
前記セパレータは、ポリオレフィン、ゴム、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、セルロース誘導体、又はそれらの組合せからなる群より選ばれる請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項10】
前記セパレータは、充填材、界面活性剤、又はそれらの組合せからなる群より選ばれる1つを備える請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項11】
さらに、
吸収性ガラスマットを備える請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項12】
セパレータであって、
前記セパレータに配置される1以上のリブを備え、
前記セパレータは、電池内に配置され、前記電池内に配置される酸性電解質内に浸され、
前記1以上のリブは、前記電池の速度変化中に前記酸性電解質の混合を促すセパレータ。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の電池セパレータを備える鉛蓄電池。
【請求項14】
1以上のセパレータ又はスペーサを備え、
前記1以上のセパレータ又はスペーサは、それぞれ材料のウェブ又は枠組みから延びている複数の個別リブを備え、
前記複数の個別リブは、それぞれ前記1以上のセパレータ又はスペーサの縦方向に関連する角度方向により画定され、
前記複数の個別リブ内の1以上の組のリブと、
同一のリブ角度方向を有する前記1以上の組のリブの第1組と、
を備える請求項13に記載の鉛蓄電池。
【請求項15】
前記鉛蓄電池は、浸水型鉛蓄電池、部分充電状態で動作している電池である、又はアイドリングストップ/スタートアプリケーション、原動力アプリケーション、及びディープサイクルアプリケーション、又はそれらの組合せからなる群より選ばれるアプリケーションで利用される 請求項13又は14に記載の鉛蓄電池。
【請求項16】
前記鉛蓄電池は、部分充電状態の電池で利用される請求項13に記載の鉛蓄電池。
【請求項17】
前記鉛蓄電池は、移動及び停止の動きを受ける請求項13に記載の鉛蓄電池。
【請求項18】
前記1以上のセパレータの各々は、一般に、前記移動及び停止の動きの方向に平行に配置される請求項17に記載の鉛蓄電池。
【請求項19】
さらに、
正極及び負極の交互シーケンスを有する電池を備え、
前記セパレータは、前記負極の周囲に配置される請求項13に記載の鉛蓄電池。
【請求項20】
前記複数の分割リブは、前記正極に隣接している請求項19に記載の鉛蓄電池。
【請求項21】
電池において成層化を低減させる方法であって、
電池を提供する工程であって、前記電池が1以上の正極及び1以上の負極を収容する工程と、
1以上のセパレータ提供する工程であって、セパレータが前記1以上の正極及び前記1以上の負極の各々の間に配置され、前記1以上のセパレータの各々が角度方向により画定される複数のリブを備える工程と、
電解質を提供する工程と、
前記電池に動きを提供する工程と、
を備える方法。
【請求項22】
さらに、
前記複数の交互の正極及び負極を前記動きの方向に平行に設置する工程を備える請求項21に記載の方法。
【請求項23】
さらに、
前記負極の周囲で前記1以上のセパレータの各々を包む工程を備える請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記複数のリブは、前記正極に隣接する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
さらに、
移動及び停止の動きが可能な車両を提供する方法と、
前記複数のセパレータが前記移動及び停止の動きに平行であるように前記車両に前記電池をセットする工程と
を備える請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記ケース及び蓋は、前記電池の頂部の内部空間を画定し、
前記内部空間に1以上のバッフルを提供して、動きの間、前記動きに誘発される前記電解質の少なくとも一部位を前記電池に向け直す請求項21に記載の方法。
【請求項27】
鉛蓄電池であって、
ケース及び蓋と、
複数の正極及び負極であって、前記正極及び負極にそれぞれストラップが取り付けられている正極及び負極と、
酸塩基電解質と
を備え、
前記ケース及び前記蓋は、互いにつながり、その中に内部体積を形成し、
前記複数の正極及び負極及び前記酸塩基の電解質は、前記内部体積の少なくとも下方部分内に収容され、
1以上のバッフルは、前記内部体積の上方部分内に配置される鉛蓄電池。
【請求項28】
前記バッフルは、前記蓋の少なくとも一部位に配置される請求項27に記載の鉛蓄電池。
【請求項29】
前記バッフルは、前記ケースの少なくとも一部位に配置される請求項27に記載の鉛蓄電池。
【請求項30】
前記バッフルは、前記ストラップから延びている請求項27に記載の鉛蓄電池。
【請求項31】
前記バッフルは、前記ケース及び前記蓋とは区別可能な、分離したものから形成される請求項27に記載の鉛蓄電池。
【請求項32】
前記バッフルは、前記ストラップに取り付けられる請求項31に記載の鉛蓄電池。
【請求項33】
前記バッフルは、曲面を備える請求項27に記載の鉛蓄電池。
【請求項34】
前記バッフルは、一般に平面を備える請求項27に記載の鉛蓄電池。
【請求項35】
前記バッフルは、一般に前記電極の長手の長さと垂直な面を備える請求項27に記載の鉛蓄電池。
【請求項36】
前記セパレータは、従来の固体リブ輪郭セパレータよりも酸混合を促す、又は酸混合を改善する請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項37】
請求項36のセパレータを備える浸水型鉛蓄電池。
【請求項38】
スタート/ストップ車両であって、
前記改善は、請求項37の電池を備えるスタート/ストップ車両。
【請求項39】
前記電池は、プレートを有し、前記プレートが前記車両の動きの方向に実質的に平行に位置付けられ請求項38に記載の車両。
【請求項40】
60秒間に少なくとも15%の酸混合の増加及び少なくとも0.37の体積均一性の少なくとも1つを提供するように、酸混合を強化する正極面リブ輪郭を有する酸混合リブ付セパレータ。
【請求項41】
60秒間に20%の酸混合の増加及び少なくとも0.38の体積均一性の少なくとも1つを提供するように、酸混合を強化する正極面リブ輪郭を有する酸混合リブ付セパレータ。
【請求項42】
60秒間に25%の酸混合の増加及び少なくとも0.40の体積均一性の少なくとも1つを提供するように、酸混合を強化する正極面リブ輪郭を有する酸混合リブ付セパレータ。
【請求項43】
60秒間に30%の酸混合の増加及び少なくとも0.42の体積均一性の少なくとも1つを提供するように、酸混合を強化する正極面リブ輪郭を有する酸混合リブ付セパレータ。
【請求項44】
前記セパレータは、負極板エンベロープである請求項40乃至43のいずれか一項に記載の酸混合リブ付セパレータ。
【請求項45】
60秒間に標準的な固体リブセパレータよりも少なくとも5%の酸混合の増加及び少なくとも0.01の体積均一性の増加の少なくとも1つを有するような、酸混合を強化する正極面リブ輪郭を有する酸混合リブセパレータ。
【請求項46】
60秒間に10%の酸混合の増加及び少なくとも0.02の体積均一性の増加の少なくとも1つを有するような、酸混合を強化する正極面リブ輪郭を有する酸混合リブセパレータ。
【請求項47】
60秒間に15%の酸混合の増加及び少なくとも0.03の体積均一性の増加の少なくとも1つを有するような、酸混合を強化する正極面リブ輪郭を有する酸混合リブセパレータ。
【請求項48】
60秒間に20%の酸混合の増加及び少なくとも0.035の体積均一性の増加の少なくとも1つを有するような、酸混合を強化する正極面リブ輪郭を有する酸混合リブセパレータ。
【請求項49】
60秒間に25%の酸混合の増加及び少なくとも0.04の体積均一性の増加の少なくとも1つを有するような、酸混合を強化する正極面リブ輪郭を有する酸混合リブセパレータ。
【請求項50】
前記セパレータは、負極板エンベロープである請求項45乃至49のいずれか一項に記載の酸混合リブ付セパレータ。
【請求項51】
60秒間の混合で少なくとも25%の酸混合の増加及び少なくとも0.40の体積均一性の少なくとも1つを有するような、酸混合を強化する正極面リブ輪郭を有する負極板エンベロープ用の酸混合リブセパレータ。
【請求項52】
60秒間の混合で少なくとも28%の酸混合の増加及び少なくとも0.41の体積均一性の少なくとも1つを有するような、酸混合を強化する正極面リブ輪郭を有する浸水型鉛蓄電池用の負極板エンベロープ用の酸混合リブセパレータ。
【請求項53】
請求項40乃至52のいずれか一項に記載のセパレータを備える電池。
【請求項54】
請求項53に記載の電池を備える車両。
【請求項55】
前記電池は、前記車両の前記長さに平行な前記プレートと共に位置付けられる請求項54に記載の車両。
【請求項56】
浸水型鉛蓄電池のような改良された鉛蓄電池、鉛蓄電池、及び/又は電池セパレータを含む改良されたシステム、改良された電池セパレータ、このようなシステムを含む改良された車両、製造及び/又は使用、又はそれらの組合せ;改良された浸水型鉛蓄電池、このような電池用の改良された電池セパレータ、及び/又はこのような改良された浸水型鉛蓄電池を製造、検査、又は使用する方法、又はそれらの組合せ;浸水型鉛蓄電池において成層化を低減させ、電池寿命及び性能を伸ばすための方法、システム、電池、及び/又は電池セパレータ;及び示され又は記載されているそれらの組合せ。
【請求項57】
従来のセパレータに比べて強化された電解質混合及び/又は酸循環を提供するセパレータ;前記セルの前記頂部及び底部における電解質濃度により測定されるような、成層化の低減をもたらすセパレータ;前記セルが30、60、90回又はそれ以上のスタート/ストップイベント又はサイクルを受けた後、前記濃度差は、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、2.5%、又は1%未満であってもよい;前記セルが24、48、72時間、又はそれ以上静止した後、前記濃度差は、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、2.5%、又は1%未満であってもよい;及び本明細書中に示される又は説明されているようなそれらの組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2015年10月7日に出願された米国仮特許出願番号62/238373、(2015年10月7日に出願された米国仮特許出願番号62/238373の優先権を主張する)2016年1月11日に出願されたPCT特許出願番号PCT/US2016/012805、及び2016年9月9日に出願された62/385347の優先権及び利益を主張する。これらの各コンテンツ全体は、参照により本明細書中に完全に組み込まれている。
【0002】
少なくとも選択された実施形態に従って、本開示は、浸水型鉛蓄電池のような、改良された鉛蓄電池、鉛蓄電池を含む改良されたシステム、及び/又は電池セパレータ、改良された電池セパレータ、このようなシステムを含む改良された車両、製造又は使用方法、又はそれらの組合せを対象にする。少なくとも特定の実施形態に従って、本開示又は発明は、改良された浸水型鉛蓄電池、このような電池用の改良された電池セパレータ、及び/又はこのような改良された浸水型鉛蓄電池の製造、検査、又は使用方法、又はそれらの組合せを対象にする。加えて、本明細書中には、浸水型鉛蓄電池における、及び部分状態充電で作動するこのような電池における、成層化を低減させ、電池寿命及び性能を伸ばすための方法、システム、電池、及び/又は電池セパレータが開示されている。
【背景技術】
【0003】
燃料消費及び排気管放出物の生成を減らすため、自動車メーカーは、様々な程度の電気ハイブリダイゼーションを実装してきた。ハイブリッド電気自動車(HEV)の一形態は、「マイクロHEV」又は「マイクロハイブリッド」と呼ばれることもある。このようなマイクロHEV又は同様な車両において、自動車は、アイドリングスタート/ストップ(ISS)機能を有してもよく、この機能において、エンジンは、アイドリングスタート/ストップ及び/又は回生制動中の様々な時点で停止してもよい。これにより車両燃料効率は向上するが、車両の停止中、(空調、メディア・プレーヤー等の)補助装置に動力を提供しなければならない電池にかかる負担も増大する。
【0004】
従来の車両(スタート/ストップ性能を持たない自動車等)は、始動点灯イグニッション(SLI)鉛蓄電池のような従来の浸水型鉛蓄電池を使用してもよい。エンジンが使用中、決して停止しないため、動力が電池から引き出されるのは、エンジンがクランキングされたときだけである。そのような時、電池は、典型的には部分充電の状態ではなく、過充電の状態にある。例えば、このような従来の浸水型鉛蓄電池は、95%より多く充電された、96%より多く、97%より多く、98%より多く、99%より多く、又はしばしば過充電の状態であるような、100%より多くさえ充電された、充電状態であってもよい。過充電においては、従来の鉛蓄電池内でガス気泡(例えば、水素ガス気泡)が生成され、これらの循環ガス気泡は、電池内で液体電解質(酸)を混合する働きをする。
【0005】
一方、スタート/ストップ車両は、連続的に電池から動力を引き出し、それ故、常に部分充電の状態にある。部分充電においては、ガス気泡は生成されず、電解質内の混合は大幅に減少し、電池内の成層化につながる。このように、成層化は、スタート/ストップ浸水型鉛蓄電池及び様々な強化浸水型電池内で問題になるが、過充電又は完全な(又は完全に近い)充電の状態で作動される、より従来的で伝統的な浸水型鉛蓄電池では、全く問題にはならなかった。
【0006】
成層化は、濃厚な硫酸が電池の底部で濃縮され、電池の頂部ではそれに対応して高い水濃度が導かれる過程に関する用語である。成層化は、強化浸水型鉛蓄電池又はスタート/ストップ浸水型鉛蓄電池等の浸水型鉛蓄電池内では好ましくない。電極の頂部で酸のレベルが減少すると、電池システム内の均一性及び電荷受容性が阻害され、電池の高さに沿った頂部から底部への内部抵抗のばらつきが増加するかもしれない。電池の底部で酸のレベルが増加すると、電池管理システムを妨げ得る、電池の電圧が人工的に上昇し、電池管理システムに意図しない/誤った健康状態信号が送信される恐れがある。概して、成層化は、電池の部位に沿って高い抵抗を引き起こし、それが電極の問題及び/又は電池の短命化につながるかもしれない。スタート/ストップ電池及び/又は他の強化浸水型鉛蓄電池が、ハイブリッド及び完全な電気自動車と共にますます普及し、車両燃料効率を増加させ、CO2排出を低減させるために期待されているとすれば、成層化の低減及び/又は酸混合の改善のための解決手段が大いに求められている。
【0007】
場合によっては、成層化は、酸がゲル電解質及び/又はグラスマット吸収式(AGM)電池セパレータシステムのどちらかにより固定化される制御弁式鉛蓄電池(VRLA)技術を使用すれば回避できる。浸水型鉛蓄電池内の自由流体電解質と対照的に、VRLA・AGM電池においては、電解質は、繊維又はガラス繊維マット、高分子繊維マット、ゲル電解質等の繊維性材料に吸収される。しかし、VRLA・AGM電池システムの製造費用は、浸水型電池システムよりも大幅に高い。VRLA・AGM技術は、場合によっては、過充電により敏感で、高熱で干上がり、容量の段階的な低下を経験し、より低い比エネルギーを有するかもしれない。同様に、場合によっては、ゲルVRLA技術は、高い内部抵抗を有し、電荷受容性が減少しているかもしれない。
【0008】
よって、使用中に成層化を経ることのなく、及び/又は使用中に成層化のレベルの低減又は著しい低減を示す、強化浸水型スタート/ストップ電池等の強化浸水型鉛蓄電池の更なる開発が求められている。これまで使用されてきたものに比べて改良された均一性及び性能を有し、特定のVRLA・AGM電池で見られるものに匹敵、又は上回りさえする性能を有する、改良された強化浸水型鉛蓄電池が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
少なくとも選択された実施形態に従って、本開示又は発明は、上述及び他のニーズに対処してもよい。例えば、少なくとも特定の実施形態に従って、本開示又は発明は、新規で、改良又は最適化された浸水型鉛蓄電池、システム、及び強化浸水型鉛蓄電池用セパレータ、及びそれらの製造、検査、及び/又は使用方法、及び/又はそれらを備える車両を対象にする、又は提供してもよい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書中で開示されるものは、特定の種類のセパレータを有する、新規で、改良又は最適化された強化浸水型鉛蓄電池である。驚くべきことに、セパレータの表面特性(及び任意に車両内の特定の電池プレート及びセパレータの方向付けも合わせて)を適切に選択することにより、成層化を低減させる及び/又は予防することができ、これに対応して電池性能の増加が確認でき、性能は、特定のVRLA・AGM又はVRLA・AGM電池の性能に近い、一致、又はより優れてさえいることが判明した。さらに、驚くべきことに、本明細書中に説明されている1以上の電池と共に本明細書中に説明されている1以上のセパレータを使用すること、及びそれらを動かして使用することにより、発明の電池及びセパレータのこのような動きが、何らかの機械的手段又は(酸混合用ポンプ等の)何らかの酸混合用の道具を必要とすることなく、酸混合又は循環の改善及び/又は成層化の低減又は同時に防止を促進することが判明した。様々な実施形態が以下、さらに詳細に説明される。
【0011】
少なくとも選択された実施形態、態様又は目的に従って、本開示は、浸水型鉛蓄電池等の改良された鉛蓄電池、鉛蓄電池及び電池セパレータを含む改良されたシステム、改良された電池セパレータ、このようなシステムを含む改良された車両、及び/又は製造及び/又は使用方法を対象にする。
【0012】
少なくとも選択された実施形態、態様又は目的に従って、本開示は、使用中に成層化を経ることのない、及び/又は使用中の成層化の低減又は著しい低減を示す、強化浸水型スタート/ストップ電池等の強化浸水型鉛蓄電池、これまで使用されてきたものと比較して酸混合均一性等のような、改良された均一性、部分充電状態で作動する改良された電池、及び/又は性能を有する改良された強化浸水型鉛蓄電池及び/又は少なくとも特定のVRLA・AGM電池に匹敵又は超える性能を有する改良された強化浸水型鉛蓄電池を提供してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1には、90回のストップ/スタートイベント又はサイクルを受けたセルを比較する一連の写真が含まれる。上の行は、例示の実施形態に係るセレーテッドリブ付セパレータを有するセルを示す。下の行は、セパレータに沿って垂直に延びている従来の固体リブ付きのセパレータを有するセルを示す。
図2図2には、一晩の静止後、60回のストップ/スタートイベント又はサイクルを受けたセルを比較する一連の写真が含まれる。テストセルには、図1に示されるものと類似するセパレータが備えられ、上の行は例示の実施形態に係るセレーテッドリブ付セパレータを示し、下の行は従来の固体リブ付セパレータを有するセルを示す。
図3図3には、90回のストップ/スタートイベント又はサイクルを受けたセルを比較する一連の写真が含まれる。上の行のテストセルは、図1及び図2に示されるものと比較して近い間隔のセレーテッドリブを有するセパレータを備える。下の行は、セパレータに沿って垂直な従来の固体リブ付きのセパレータを有するセルを備える。
図4図4には、90回のストップ/スタートイベント又はサイクルを受けたセルを比較する一連の写真が含まれる。上の行は、例示の実施形態に係るディンプルのあるセパレータを有するセルを示す。下の行は、セパレータに沿って垂直に延びている固体大リブ及び固体小リブを含む従来のセパレータを有するセルを示す。
図5図5には、90回のストップ/スタートイベント又はサイクルを受けたセルを比較する一連の写真が含まれる。上の行は、例示の実施形態に係るディンプルのあるセパレータを有するセルを示す。下の行は、ディンプルと結合したセパレータに沿って垂直に延びている固体リブを含むセパレータを有するセルを示す。
図6図6には、90回のストップ/スタートイベント又はサイクルを受けたセルを比較する一連の写真が含まれる。上の行は、例示の実施形態に係るディンプルのあるセパレータを有するセルを示し、下の行は、(セパレータの垂直方向に対してわずかな角度で)セパレータに沿って斜めに延びている固体リブを含むセパレータを有するセルを示す。
図7図7(A)及び(B)には、混合されている1.28比重の酸で満たされたジャー内の従来の固体リブセパレータ(A)及び全くセパレータなし(B)の比較写真が含まれる。
図8図8には、成層化に対する検査前の本開示に係るセレーテッドリブ付セパレータを使用して構成されたセルの写真が含まれる。
図9図9には、成層化検査のためのケースにまとめられた図8のセルの写真が含まれる。電極及びセパレータのグループに亘って、リードストラップが設置される。
図10図10には、本明細書中に説明されている様々な実施形態に従って利用されるセパレータ上のセレーション又はセレーテッドリブの断面図の写真が含まれる。
図11図11には、本明細書中に説明されている様々な実施形態に従って利用されるセレーテッドリブセパレータの輪郭の2つの図が含まれる。
図12図12には、25℃(77°F)での硫酸溶液の伝導率のグラフが示される。当該グラフは、成層化がセル及び/又は電池の高い及び低い酸領域における伝導率の差に起因する不均一な電流に繋がり得ることを理解する助けになる。グラフは、2016年7月26日にアクセスされたhttp://myweb.wit.edu/sandinic/Research/conductivity%20v%20concentration.pdfから収集されたデータを表しており、伝導率がジーメンス/センチメートルで測定され、硫酸溶液の濃度の関数が重量パーセントで表されている。
図13図13には、図6に示されるセルと同様に構成されたセルの写真が含まれる。ただし、図13に示されるセルに関しては、セパレータは、車両の動きの方向と垂直なシステムに挿入された。一方、図6に示されるセルに関しては、セパレータは、動きの方向と平行なシステムに挿入された。
図14図14には、本明細書中に説明されている様々な実施形態に係るセレーテッドリブを含む電池セパレータの写真が含まれる。このセパレータは、検査用のスタート/ストップ自動車用浸水型鉛蓄電池を作るための電極を包むために利用された。その検査の結果は後述される。
図15A図15A(A)及び(B)には、本明細書中の様々な実施形態に係るセパレータ用の複数のセレーションの輪郭の図が含まれる。酸混合を改善し強化するためのセパレータ用の様々な最適な輪郭は、本明細書中に開示される。図15A(A)及び(B)に示される図は、単にこのような最適な輪郭の例であり、多数の他の最適な輪郭が本明細書中で説明され、主張される改良されたセパレータ、電池、システム、及び方法の適用範囲内に含まれる。
図15B図15B(C)及び(D)には、本明細書中の様々な実施形態に係るセパレータ用の複数のセレーションの輪郭の図が含まれる。酸混合を改善し強化するためのセパレータ用の様々な最適な輪郭は、本明細書中に開示される。図15B(C)及び(D)に示される図は、単にこのような最適な輪郭の例であり、多数の他の最適な輪郭が本明細書中で説明され、主張される改良されたセパレータ、電池、システム、及び方法の適用範囲内に含まれる。
図16図16には、強化浸水型電池又は強化モードで作動している浸水型電池の一例に対するサイクル試験を示すグラフが含まれる。
図17A図17Aは、計算流体力学(CFD)を使用した分析のために電池セパレータが受けた正弦波加速としてモデル化された横又は左右交互の動きを伴う水平加速度の輪郭を示す。
図17B図17Bは、固体リブセパレータ及びセレーテッドリブセパレータの目視比較を示し、各々は(図のように)約6秒間であり、各々は図17Aに定義される動きを受け、CFDを使用して分析された。分析された両セパレータは、正極板を包んでいた(「正エンベロープ化」又は「正ラッピング」)。
図18A図18Aは、図17Aに定義される動きを水平加速度で60秒間受け、CFDを使用して分析された固体リブセパレータを示し、浸水型鉛蓄電池の成層電解質の混合を示す。
図18B図18Bは、図18Aの分析の酸分率の体積均一性を示す。
図19A図19Aは、図17Aに定義される動きを60秒間受け、CFDを使用して分析されたセレーテッドリブセパレータを示し、浸水型鉛蓄電池の成層電解質の混合を示す。
図19B図19Bは、図19Aの分析の体積均一性を示す。
図20A図20Aは、図18A及び18B及び図19A及び19BのCFD分析の比較を示す。
図20B図20Bは、図18A及び18B及び図19A及び19BのCFD分析の比較を示す。
図21図21は、セレーテッドリブセパレータのCFD分析で利用されるロッキングモーションを定義する。
図22図22は、図21に記載される動きを受けたセレーテッドリブセパレータのCFD分析の視覚的表現を示す。
図23図23は、強化浸水型鉛蓄電池及び/又はISS浸水型鉛蓄電池等の浸水型鉛蓄電池の負極板を包む(「負エンベロープ化」又は「負ラッピング」)セパレータの模式表現である。
図24A図24Aは、横の動きを受けた負エンベロープ化セレーテッドリブセパレータのCFD分析のグラフ表示であり、さらに、これを同一の横の動きを受けた正エンベロープ化セレーテッドリブセパレータのCFD分析のグラフ表示と比較する。
図24B図24Bは、図24Aの負エンベロープ化セレーテッドリブセパレータの体積均一性のグラフ表示である。
図24C図24Cは、負エンベロープ化及び正エンベロープ化セレーテッドリブセレータの体積均一性のグラフィカル比較である。
図25A図25Aは、本開示の例示の実施形態に係る分割リブパターンの変数を示す。
図25B図25Bは、本開示の例示の実施形態に係る分割リブパターンの変数を示す。
図25C図25Cは、本開示の例示の実施形態に係る分割リブパターンの変数を示す。
図25D図25Dは、本開示の例示の実施形態に係る分割リブパターンの変数を示す。
図25E図25Eは、本開示の例示の実施形態に係る分割リブパターンの変数を示す。
図25F図25Fは、本開示の例示の実施形態に係る分割リブパターンの変数を示す。
図26A図26A(A)~26(C)は、本開示の例示の実施形態に係る及びそこに示されるパターンで定義されるような分割リブを有する電池セパレータを示す。
図26B図26B(D)は、本開示の例示の実施形態に係る及びそこに示されるパターンで定義されるような分割リブを有する電池セパレータを示す。
図26C図26C(E)は、本開示の例示の実施形態に係る及びそこに示されるパターンで定義されるような分割リブを有する電池セパレータを示す。
図26D図26D(F)は、本開示の例示の実施形態に係る及びそこに示されるパターンで定義されるような分割リブを有する電池セパレータを示す。
図26E図26E(G)は、本開示の例示の実施形態に係る及びそこに示されるパターンで定義されるような分割リブを有する電池セパレータを示す。
図27A図27Aは、横の動きを受けた負エンベロープ化セレーテッドリブセパレータ及び負エンベロープ化分割リブセパレータのCFD分析のグラフィカル比較である。
図27B図27Bは、これまでに説明された横の動きを受けたセパレータの複数のCFD分析の体積均一性の比較を示す。
図28A図28Aは、横の動きを受けた負エンベロープ化固体リブセパレータ及び負エンベロープ化分割リブセパレータのCFD分析のグラフィカル比較である。
図28B図28Bは、全て負エンベロープ化の、固体リブセパレータ、セレーテッドリブセパレータ、及び分割リブセパレータの複数のCFD分析の体積均一性の比較を示す。
図29A図29Aは、様々な分割リブパターンの3つの区分を有するセパレータを詳細に示す。
図29B図29Bは、3つに区分された分割リブセパレータに対する分割リブ変数を示す。
図29C図29Cは、単一に区分された分割リブセパレータに対する分割リブ変数を示す。
図30A図30A(A)~(C)は、複数に区分された分割リブパターンのセパレータの変数を示す。
図30B図30B(D)は、複数に区分された分割リブパターンのセパレータの変数を示す。
図30C図30C(E)は、複数に区分された分割リブパターンのセパレータの変数を示す。
図30D図30D(F)は、複数に区分された分割リブパターンのセパレータの変数を示す。
図30E図30E(G)は、複数に区分された分割リブパターンのセパレータの変数を示す。
図30F図30F(H)は、複数に区分された分割リブパターンのセパレータの変数を示す。
図31図31は、4つの異なる3つに区分された分割リブパターンの負エンベロープ化セパレータのCFD分析のグラフ表を示す。
図32A図32Aは、横の動きを受けた負エンベロープ化の3つに区分された分割リブパターンのセパレータ及び(図26Dに示されるような)負エンベロープ化の単一に区分された分割リブセパレータのCFD分析のグラフィカル比較である。
図32B図32Bは、これまでに説明された横の動きを受けたセパレータの複数のCFD分析の体積均一性の比較を示す。
図33A図33Aは、本開示の例示の実施形態に係るスプラッシュバッフルを有する電池のヘッドスペースを示す。
図33B図33Bは、本開示の例示の実施形態に係るスプラッシュバッフルを有する電池のヘッドスペースを示す。
図33C図33Cは、本開示の例示の実施形態に係るスプラッシュバッフルを有する電池のヘッドスペースを示す。
図34A図34Aは、本開示の例示の実施形態に対する変化例を示す。
図34B図34Bは、本開示の例示の実施形態に対する変化例を示す。
図34C図34Cは、本開示の例示の実施形態に対する変化例を示す。
図34D図34Dは、本開示の例示の実施形態に対する変化例を示す。
図34E図34Eは、本開示の例示の実施形態に対する変化例を示す。
図34F図34Fは、本開示の例示の実施形態に対する変化例を示す。
図34G図34Gは、本開示の例示の実施形態に対する変化例を示す。
図34H図34Hは、本開示の例示の実施形態に対する変化例を示す。
図34I図34Iは、本開示の例示の実施形態に対する変化例を示す。
図35図35は、図26Dで実質的に示されたようなリブパターンを有する長いセル電池用のセパレータを示す。
図36図36は、図35に示されるセパレータのCFD分析の時間をかけて変化する体積均一性を他のセパレータ設計の体積均一性と比較して示す。
図37図37は、発明のコンセプト1トール酸混合の輪郭の従来の固体バッフルトール輪郭との速度コンター時間履歴比較を示す。
図38図38は、例えば、平面セパレータと電極間に設置される分割リブのパターンを有する発明のスペーサの一例を示す。
図39A図39Aは、例えば、長い電池又は電池ケース内の発明の原動力型セパレータ輪郭、間隔、及びヘッドスペースを示す寸法値の例示の実施形態を示す。
図39B図39Bは、例えば、長い電池又は電池ケース内の発明の原動力型セパレータ輪郭、間隔、及びヘッドスペースを示す寸法値の例示の実施形態を示す。
図39C図39Cは、例えば、長い電池又は電池ケース内の発明の原動力型セパレータ輪郭、間隔、及びヘッドスペースを示す寸法値の例示の実施形態を示す。
図40図40は、例示の発明の酸混合の輪郭の輪郭プロトタイプを示す。
図41図41は、例示の発明の酸混合の輪郭の輪郭プロトタイプを示す。
図42図42には、従来の固体リブの輪郭より高い発明の輪郭の混合メリットを示す画像が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中に説明されている様々な実施形態において、浸水型鉛蓄電池における電解質混合及び/又は循環を高めるセパレータが用いられている。特定の実施形態においては、成層化を低減させるセパレータが用いられている。様々な実施形態において、酸混合のため及び成層化及び成層化の悪影響を防止、又は少なくとも減少させるために改良又は強化されたセパレータ又はセパレータシステムのために、既知の電池に比べて成層化が大幅に低減される鉛蓄電池が開示されている。このような電池は、例えば、電池を有する移動中の車両で利用されてもよい。また、様々な実施形態において、実際に酸又は電解質を混合するための車両(例えば、スタート/ストップ鉛蓄電池を含む電気自動車又は部分的電気自動車)の動きは、本明細書中に説明されている強化電池セパレータと相まって、スタート/ストップ浸水型鉛蓄電池及び/又は強化浸水型鉛蓄電池又は強化モードで作動している電池内において、本明細書中に示されている酸混合の大幅な改善と同様に本明細書中に示されている成層化の大幅な低減を予想外にもたらす。例えば、スタート/ストップ電気自動車の停止及び出発は、本明細書中の様々な実施形態においてエネルギーを供給しており、強化浸水型鉛蓄電池内の酸/電解質を混合し、酸混合を改善し、成層化を低減又は完全に防止する。
【0015】
本明細書中に説明されているセパレータの例示の実施形態(好ましくは強化された酸混合セパレータ、リーフ、スリーブ、ラップ、ポケット、又はエンベロープ)は、好ましくは、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ゴム、合成パルプ(SWP)、ガラス繊維、セルロース系繊維、又はそれらの組合せ等の適切な天然又は合成材料から成る(約1μm未満の細孔を有する微多孔膜、メソ多孔、又は約1μmより大きい細孔を有するマクロ多孔膜、多孔質高分子膜、又は多孔質充填高分子膜等の)多孔膜で成り、より好ましくは、熱可塑性重合体から成る微多孔膜である。好適な微多孔膜は、約0.1μm(100nm)の細孔径及び約60%の多孔度を有してもよい。熱可塑性重合体は、原則として、鉛蓄電池で使用するのに適切な全ての耐酸熱可塑性材料を含んでもよい。好適な熱可塑性重合体には、ポリビニル及びポリオレフィンが含まれる。ポリビニルは、例えば、PVCを含む。ポリオレフィンは、例えば、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、及びポリプロピレンを含む。好適な一実施形態は、充填材(例えば、シリカ)及びUHMWPEの混合体を含んでもよい。概して、好適なセパレータは、押出機内で、約30重量%のシリカを約10重量%のUHMWPE及び約60%のプロセス油と混合することにより作られてもよい。混合体は、また、(湿潤剤、着色剤、帯電防止剤、類似材料、又はそれらの組合せ等の)セパレータ技術で一般的で、フラットシートの形状で押し出される少量の他の添加剤又は薬剤を含んでもよい。好適と思われるポリオレフィンセパレータは、(好ましくは、車両の動きに起因する電解質揺動に伴って酸混合効果をもたらすかも知れない)1以上のその表面にセレーテッドリブ、突起、エンバトルメント、ディンプル、エンボス、及びそれらの組合せを有する(残油及び1以上の添加剤又は界面活性剤の有無にかかわらない)ポリオレフィンのシリカ充填微孔シートであり得る。
【0016】
セパレータは、ポリオレフィン製が好ましく、例えば、ポリプロピレン、エチレン-ブテン共重合体、好ましくはポリエチレン、より好ましくは高分子量ポリエチレン、例えば、少なくとも600,000の分子量を有するポリエチレン、又は高密度ポリエチレン、例えば、少なくとも500,000の分子量を有するポリエチレンである。実施形態によっては、1以上の超高分子量ポリエチレンが利用される。例えば、少なくとも1,000,000の分子量を有するポリエチレン、特に4,000,000より多く、場合によっては(粘度測定により測定され、マーゴリーズの方程式により算出された)5,000,000~8,000,000、(2,160gの標準的負荷を使用したASTM D1238(条件E)で指定され測定された)実質0の標準的負荷メルトインデックス及び600ml/g以上の粘度数、好ましくは1,000ml/g以上、より好ましくは2,000ml/g以上、及び最も好ましくは(130℃の100gのデカリンにおける0.02gのポリオレフィンの溶液で決定された)3,000ml/g以上である。
【0017】
少なくとも一実施形態に従って、セパレータは、プロセス油及びシリカ、例えば、沈降シリカ及び/又はヒュームドシリカと混合された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)から成る。少なくとも他の一実施形態に従って、セパレータは、プロセス油、添加剤及びシリカ、例えば、沈降シリカと混合された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)から成る。セパレータは、好ましくは、8~100体積%のポリオレフィン、0~40体積%の可塑剤及び0~92体積%の不活性充填材の均一混合物を備える。場合によっては、好適な充填材は、乾いて、微細に分割されたシリカである。しかし、充填材は、以下から構成されるグループから選択されてもよい:シリカ、雲母、モンモリロナイト、カオリナイト、アスベスト、タルク、ケイソウ土、バーミキュライト、天然及び合成ゼオライト、セメント、ケイ酸カルシウム、クレー、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、アルミニウムポリシリケート、アルミナシリカゲル、ガラス粒子、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、炭、黒鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化鉛、タングステン、酸化アンチモン、ジルコニア、マグネシア、アルミナ、二硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、など、及びそれらの様々な組合せ。
【0018】
好適な可塑剤は、石油、ワックス、又はそれらの組合せである。可塑剤はポリマー-充填材-可塑剤混合物から最も取り除きやすい成分であるため、電池セパレータに多孔度を付与するのに役立つ。細孔は、また、粒子を取り除くことによる等、他の処理又は材料により形成されてもよい。
【0019】
セパレータは、直径5μm未満、好ましくは1μm未満の平均細孔サイズを有する。好ましくは、細孔の50%より多くは、直径0.5μm以下である。細孔の少なくとも90%は0.9μm未満の径を有するのが好ましい。微孔セパレータは、0.05~0.9μm、場合によっては、0.1~0.3μmの範囲内の平均細孔サイズを有するのが好ましい。
【0020】
細孔サイズは、場合によっては、リッター、H.L.、及びドレイク、L.C.、産業・技術化学分析17版、787(1945)に記載の水銀圧入方法を使用して測定されてもよい。当該方法によれば、ポロシメーター(ポロシメーターモデル2000、カルロ・エルバ社)を用いて水銀にかかる圧力を変化させることにより、水銀を異なるサイズの細孔へ入れる。細孔分布は、MILESTONE200ソフトウェアでの未分析データの評価により決定されてもよい。
【0021】
セパレータの厚さは、好ましくは0.1mmより大きく、5.0mm以下である。セパレータの厚さは、0.15~2.5mm、0.25~2.25mm、0.5~2.0mm、0.5~1.5mm、又は0.75~1.5mmの範囲内とすることができる(このような厚さは、任意のリブ、突起、ディンプル等を含むセパレータ全体の厚さを考慮している)。場合によっては、セパレータは、約0.8mm又は1.1mmの厚さであり得る。セパレータは、1以上のその表面に付着する薄板又は何らかの他の層(例えば、不織布層及び/又はAGM層)を有しても有さなくてもよい。また、電極の1つ又は両方は、1以上のガラスマット又はガラス繊維の層、及び/又は多孔板ラップで包まれてもよい。
【0022】
様々な好適と思われる実施形態において、微多孔性ポリオレフィンセパレータ層は、セレーション、エンバトルメント、角のあるリブ、又は分割リブ、又はそれらの組合せのようなリブを含む。好適なリブは、8μm~1mmの高さで、1μm~20mm離れて置かれてもよい。一方、(リブ又はエンボスを含まない)微多孔性ポリオレフィンセパレータ層の好適なバックウェブの厚さは、約0.05mm~約0.50mm(例えば、特定の実施形態においては、約0.25mm)でもよい。例えば、リブは、0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.2mm、1.4mm、1.6mm、1.8mm、2.0mm、2.25mm、2.5mm、2.75mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、又は10mm離れ得る。実施形態によっては、リブは、相互の関係が0°~90°で、セパレータ層の一面、又はポリオレフィンセパレータの両面にあるようなパターンであってもよい。実施形態によっては、酸混合リブは、正面、正又は正極側リブであってもよい。セパレータ又はセパレータ層の両面にリブを含む様々なパターンは、より小さく、より近い間隔の負の長手又は横リブ又はミニリブ等、セパレータの第2の面又は背面に正のリブ及び負の長手又は横リブを含んでもよい。このような負の長手又は横リブは、場合によっては、約0.025mm~約0.1mmの高さ、好ましくは約0.075mmの高さを有してもよいが、0.25mmぐらいの大きさであってもよい。他のパターンは、セパレータの第2又は背面に負のミニリブ(セパレータの他の面における主要リブに比べ、横方向に対して同一方向に延びるミニリブ)を有して、セパレータ層の両面にリブを含んでもよい。このような負のミニリブは、場合によっては、約0.025mm~約0.25mmの高さ、好ましくは約0.050mm~約0.125の高さを有してもよい。
【0023】
リブは、特定の好適な実施形態においては、セレーションを有してもよい。セレーションは、約0.05mm~約1mmの平均チップ長を有してもよい。例えば、平均チップ長は、0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、又は0.9mm以上、及び/又は1.0mm、0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm、又は0.1mm以下であり得る。
【0024】
セレーションは、約0.05mm~約1mmの平均基線長を有してもよい。例えば、平均基線長は、約0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、又は0.9mm以上、及び/又は約1.0mm、0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm、又は0.1mm以下であり得る。
【0025】
セレーションが存在する場合、セレーションは、約0.05mm~約4mmの平均高さを有してもよい。例えば、平均高さは、約0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、又は0.9mm以上、及び/又は約1.0mm、0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm、又は0.1mm以下であり得る。セレーションの高さがリブの高さと同一な実施形態に関しては、セレーテッドリブは、突起と呼ばれてもよい。このような範囲は、工業用のスタート/ストップ主電池用セパレータに適用してもよく、そのセパレータの全体の厚さは、典型的に約1mm~約4mmであってもよい。同様に、自動車用スタート/ストップ電池は、そのセパレータの全体の厚さが、少し薄くてもよい(例えば、典型的には約0.3mm~約1mm)。
【0026】
セレーションは、約0.1mm~約50mmの平均中心間ピッチを有し得る。例えば、平均中心間ピッチは、約0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.25mm、又は1.5mm以上、及び/又は約1.5mm、1.25mm、1.0mm、0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、又は0.2mm以下であり得る。
【0027】
セレーションは、約0.1:1~約500:1の平均高さ底幅比率を有し得る。例えば、平均高さ底幅比率は、約0.1:1、25:1、50:1、100:1、150:1、200:1、250:1、300:1、350:1、又は450:1以上、及び/又は約500:1、450:1、400:1、350:1、300:1、250:1、200:1、150:1、100:1、50:1、又は25:1以下であり得る。
【0028】
セレーションは、約1000:1~約0.1:1の平均底幅チップ幅比率を有し得る。例えば、平均底幅チップ幅比率は、約0.1:1、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、50:1、100:1、150:1、200:1、250:1、300:1、350:1、450:1、500:1、550:1、600:1、650:1、700:1、750:1、800:1、850:1、900:1、950:1以上、及び/又は約1000:1、950:1、900:1、850:1、800:1、750:1、700:1、650:1、600:1、550:1、500:1、450:1、400:1、350:1、300:1、250:1、200:1、150:1、100:1、50:1、25:1、20:1、15:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、又は1:1以下であり得る。
【0029】
実施形態によっては、セパレータは、ディンプルがあり得る。ディンプルは、典型的にセパレータの1以上の表面における突起型特性又は塊である。ディンプルの厚さは、セパレータの厚さの1~99%であり得る。例えば、ディンプルの平均厚さは、セパレータの平均厚さの約95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、又は5%未満であり得る。ディンプルは、セパレータに沿って行方向に配置されてもよい。行又は線は、約1μm~約10mm離れて配置されてもよい。例えば、行は、約0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.2mm、1.4mm、1.6mm、1.8mm、2.0mm、2.25mm、2.5mm、2.75mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、又は10mm離れ得る。一方、ディンプルは、ランダム配列で又はランダムに配置されてもよい。
【0030】
ディンプルは、約0.05mm~約1mmの平均ディンプル長を有してもよい。例えば、平均ディンプル長は、約0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、又は0.9mm以上、及び/又は約1.0mm、0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm、又は0.1mm以下であり得る。
【0031】
ディンプルは、約0.01mm~約1.0mmの平均ディンプル幅を有してもよい。例えば、平均ディンプル幅は、約0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、又は0.9mm以上、及び/又は約1.0mm、0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm、又は0.1mm以下であり得る。
【0032】
ディンプルは、約0.10mm~約50mmの平均中心間ピッチを有し得る。例えば、平均中心間ピッチは、約0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.25mm、又は1.5mm以上、及び/又は約1.5mm、1.25mm、1.0mm、0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、又は0.2mm以下であり得る。
【0033】
ディンプルは、例えば、正方形及び長方形の四角形であり得る。ディンプルは、約0.1:1~約100:1の平均ディンプル長ディンプル幅比率を有し得る。例えば、平均長底幅比率は、約0.1:1、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、50:1、100:1、150:1、200:1、250:1、300:1、350:1、450:1、500:1、550:1、600:1、650:1、700:1、750:1、800:1、850:1、900:1、950:1以上、及び/又は約1000:1、950:1、900:1、850:1、800:1、750:1、700:1、650:1、600:1、550:1、500:1、450:1、400:1、350:1、300:1、250:1、200:1、150:1、100:1、50:1、25:1、20:1、15:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、又は1:1以下であり得る。
【0034】
実施形態によっては、ディンプルは、実質的に円状であり得る。円状ディンプルは、約0.05~約1.0mmの径を有し得る。例えば、平均ディンプル径は、約0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、又は0.9mm以上、及び/又は約1.0mm、0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm、又は0.1mm以下であり得る。
【0035】
ディンプルの他の様々な形状も同様に含まれてもよい。ほんの一例として、このようなディンプルは、三角形、五角形、六角形、七角形、八角形、卵形、楕円形、及びそれらの組合せかもしれない。
【0036】
実施形態によっては、セパレータは、リブの組合せ、セレーション、ディンプル、又はそれらの組合せを特色にし得る。例えば、セパレータは、セパレータに沿って頂部~底部に延びている一連のセレーテッドリブ、及びセパレータに沿って水平に延びている第2の一連のセレーテッドリブを有し得る。他の実施形態においては、セパレータは、セレーテッドリブ、ディンプル、連続的、断続又は分割固体リブ、又はそれらの組合せの交互シーケンスを有し得る。
【0037】
表1は、浸水型鉛蓄電池(強化浸水型電池と呼ばれる場合もある)における成層化を防止し、酸混合を高めるためのセパレータを形成する際に利用される、セレーション及び/又はディンプル及び様々なパラメータを有するセパレータの複数の具体的な実施形態を含むが、ほんの一例として示され、限定することは意図されていない。
【0038】
【表1】
【0039】
本明細書中に開示されるセパレータは、好ましくは、従来のセパレータに比べて強化された電解質混合及び/又は酸循環を提供する。特定の実施形態においては、セパレータは、セルの頂部及び底部における電解質濃度により測定されるような、より少ない成層化を提供する。濃度差は、セルが30、60、90回又はそれ以上のスタート/ストップイベント又はサイクルを経た後、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、2.5%、又は1%未満であってもよい。特定の選択された実施形態においては、濃度差は、セルが24、48、72、又はそれ以上の時間静止したままであった後、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、2.5%、又は1%未満であってもよい。
【0040】
実施形態によっては、改良されたセパレータは、一面又は両面にコーティングを含んでもよい。このようなコーティングは、界面活性剤又は他の材料を含んでもよい。実施形態によっては、コーティングは、例えば、本明細書中に参照により組み込まれている米国特許公報番号2012/0094183に説明されている1以上の材料を含んでもよい。このようなコーティングは、例えば、電池システムの過充電電圧を減少させ、その結果、格子腐食を減らして電池寿命を伸ばし、干上がり及び/又は水分損失を防いでもよい。
【0041】
本明細書中の様々な実施形態において利用されるセパレータは、1以上の添加剤を備えていてもよい。このような場合には、添加剤が特定の車両用の特定のストップ/スタート浸水型鉛蓄電池用のセパレータを強化するかも知れないからである。ポリオレフィンに存在するこのような添加剤の1つは界面活性剤である。一方、他のこのような添加剤は、1以上のラテックス添加剤を含んでもよい。適切な界面活性剤は、アルキル硫酸塩、アルキルアリールスルホネート塩、アルキルフェノール-アルキレンオキシド付加生成物、せっけん、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩のジアルキルエステル、第四級アミン、エチレンオキシド及び酸化プロピレンのブロック共重合体、及びモノ及びジアルキルホスフェートエステルの塩等の界面活性剤を含む。添加剤は、ポリオール脂肪酸エステル、ポリエトキシル化エステル、ポリエトキシル化脂肪アルコール、アルキルポリグリコシド及びそのブレンド等のアルキル多糖類、アミンエトキシレート、ソルビタン脂肪酸エステルエトキシレート、オルガノシリコーン系界面活性剤、エチレンビニルアセテートターポリマー、エトキシル化アルキルアリールリン酸エステル及びショ糖脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤であり得る。
【0042】
特定の実施形態において、添加剤は、以下の化合物により表すことができる。
式(I)=R(OR1n(COOMx+ 1/xm (I)
ここでは、
Rは、酸素原子により遮られ得る、10~4200の炭素原子、好ましくは13~4200の炭素原子を有する非芳香族炭化水素基である。
R1は、H、-(CH2)kCOOMx+1/x又は-(CH2)k-SO3MX+1/X、好ましくはH、ここでk=1又は2である。
Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属イオン、H+又はNH4+、ここで、全ての変数Mが同時にH+の意味を有しているわけではない。
n=0又は1である。
m=0又は10~1400の整数である。
x=1又は2である。ここで、式(I)に従った化合物における酸素原子炭素原子比率は1:1.5~1:30の範囲であり、m及びnは同時に0となることはできない。ただし、好ましくは、変数n及びmの1つのみが0ではない。
【0043】
非芳香族炭化水素基により、芳香族基を含まない、又はそれ自体を表す基が意図される。炭化水素基は、酸素原子により遮られ得る、すなわち1以上のエーテル基を含む。
【0044】
Rは、好ましくは、酸素原子により遮られ得る直鎖又は分岐脂肪族炭化水素基である。飽和、未架橋炭化水素基が、非常に好適である。
【0045】
本明細書中に説明されている様々な電池セパレータ用添加剤の製造に式(I)の化合物を使用するにより、このようなセパレータに酸化破壊に対する有効な保護が提供されてもよい。実施形態によっては、式(I)に従った化合物を含有する添加剤を含む電池セパレータが好適である。ここでは、
Rは、1~60、好ましくは1~20及び非常に好ましくは1~8の酸素原子により遮られ得る10~180、好ましくは12~75及び非常に好ましくは14~40の炭素原子を有する炭化水素基、特に好ましくは式R2-[(OC24p(OC36q]-の炭化水素基である。ここでは、
2は、10~30の炭素原子、好ましくは12~25、特に好ましくは14~20の炭素原子を有するアルキル基である。
Pは、0~30、好ましくは0~10、特に好ましくは0~4の整数である。
qは、0~30、好ましくは0~10、特に好ましくは0~4の整数である。
化合物は、p及びqの合計=0~10、特に0~4であると特に好適である。
n=1である。
m=0である。
【0046】
式R2-[(OC24p(OC36q]-には、これらの化合物ではあるが、角括弧内の基のシーケンスが示されているものとは異なるものも含まれているとして理解される。例えば、本開示によれば、括弧内の基が(OC24)基と(OC36)基を置換することにより成る化合物も適切である。
【0047】
2が10~20、好ましくは14~18の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基である添加剤は、特に有利であることが証明されている。OC24は、好ましくは、OCH2CH2を表し、OC36は、OCH(CH3)CH2及び/又はOCH2CH(CH3)を表す。
【0048】
好適な添加剤として、特にアルコール(p=q=0、m=0)が言及されてもよい。第一アルコールが特に好適であり、脂肪アルコールエトキシレート(p=1~4、q=0)、脂肪アルコールプロポキシレート(p=0、q=1~4)及び脂肪族アルコールアルコキシレート(p=1~2、q=1~4)第一アルコールのエトキシレートが好適である。脂肪族アルコールアルコキシレートは、例えば、対応するアルコールのエチレンオキシド又は酸化プロピレンとの反応を通じて入手できる。
【0049】
水及び硫酸に溶けない、又は部分的にのみ溶けるm=0型の添加剤は、特に有利であることが証明されている。
【0050】
式(I)に従った化合物を含む添加剤も好適である。ここでは、
Rは、20~4200、好ましくは50~750及び非常に好ましくは80~225の炭素原子を有するアルカン基である。
Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属イオン、H+又はNH4 +、特に、Li+、Na+及びK+又はH+等のアルカリ金属イオンであり、全ての変数Mが同時にH+の意味を有するわけではない。
N=0である。
mは、10~1400の整数である。
x=1又は2である。
【0051】
適切な添加剤としては、特に、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びアクリル酸-メタクリル酸共重合体が言及されてもよく、その酸基は、少なくとも一部は、例えば、好ましくは40%、特に好ましくは80%、中和されている。割合は、酸基の数を参照する。塩形態において全体的に存在するポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)が非常に好適である。ポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)により、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びアクリル酸-メタクリル酸共重合体が意図される。ポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)、特に1,000~100,000g/mol、特に好ましくは1,000~15,000g/mol及び非常に好ましくは1,000~4,000g/molの平均モル質量Mwを有するポリアクリル酸が好適である。ポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)重合体及び共重合体の分子量は、重合体の水酸化ナトリウム溶液で中和された1%水溶液の粘度を計測することにより確認される(フィケンチャーの定数)。
【0052】
アクリル酸(メタクリル酸)の共重合体、特に、アクリル酸(メタクリル酸)に加えて、エチレン、マレイン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及び/又はアクリル酸エチルヘキシルをコモノマーとして含む共重合体も適切である。少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも80重量%のアクリル酸(メタクリル酸)単量体を含む共重合体が好適であって、割合は、単量体又は重合体の酸性型に基づく。
【0053】
ポリアクリル酸重合体及び共重合体を中和するためには、アルカリ金属及び水酸化カリウム及び特に水酸化ナトリウム等のアルカリ土類金属水酸化物が特に適切である。
【0054】
微多孔性ポリオレフィンは、様々な方法で添加剤又は複数の添加剤を含み得る。添加剤は、例えば、仕上がった際(例えば、抽出後)又はポリオレフィンを製造するために利用される混合体に追加される際にポリオレフィンに塗布できる。好適な実施形態によれば、添加剤又は添加剤の溶液は、ポリオレフィンの表面に塗布される。このバリアントは、非熱安定性添加剤及び後に続く抽出のために利用される溶剤に溶けやすい添加剤の塗布に特に適している。本開示に係る添加剤に対する溶剤として特に適しているのが、メタノール及びエタノール等の低分子量アルコールと同様に、これらのアルコールと水の混合体である。塗布は、セパレータの負極に面する側、正極に面する側、又は両側に施され得る。
【0055】
添加剤は、少なくとも0.5g/m2、1.0g/m2、1.5g/m2、2.0g/m2、2.5g/m2、3.0g/m2、3.5g/m2、4.0g/m2、4.5g/m2、5.0g/m2、5.5g/m2、6.0g/m2、6.5g/m2、7.0g/m2、7.5g/m2、8.0g/m2、8.5g/m2、9.0g/m2、9.5g/m2又は10.0g/m2の濃度で存在し得る。添加剤は、0.5~10g/m2、1.0~10.0g/m2、1.5~10.0g/m2、2.0~10.0g/m2、2.5~10.0g/m2、3.0~10.0g/m2、3.5~10.0g/m2、4.0~10.0g/m2、4.5~10.0g/m2、5.0~10.0g/m2、5.5~10.0g/m2、6.0~10.0g/m2、6.5~10.0g/m2、7.0~10.0g/m2、7.5~10.0g/m2、5.0~10.5g/m2、5.0~11.0g/m2、5.0~12.0g/m2、又は5.0~15.0g/m2間の濃度でセパレータに存在し得る。
【0056】
塗布は、ポリオレフィンに添加剤又は添加剤の溶液をローラー塗りする又はポリオレフィンを添加剤又は添加剤の溶液に浸し、続いて(例えば乾燥させることにより)任意に溶剤を除去することにより、施されてもよい。塗布は、また、任意の他の既知の方法で施されてもよい。このようにして、添加剤の塗布を、例えば、ポリオレフィン製造中に実施されることが多い抽出と組み合わせることができる。
【0057】
図1~7Bの以下の写真の例は、酸内に含有された赤い染料を有する酸塩基電解質を包含し、高い酸濃度及び低いpHレベルを有する電解質を視覚的に表し、低い酸濃度及び高いpHレベルを有するものと識別している。
【0058】
図1を参照すると、例示の実施形態に係るセレーテッド又はエンバトルメントリブ付セパレータを有するセル(上の行)をセパレータに沿って垂直に延びている従来の固体リブ付セパレータを有するセル(下の行)を比較する一連の写真が示されている。上の行に示されるセパレータに対するエンバトルメントリブの間隔(リブの先からリブの先)は、約11mmであった。図1は、典型的に、部分充電の状態の浸水型鉛蓄電池等の浸水型鉛蓄電池の正極に面する、電池セパレータの面を示す。ただし、このようなリブは、代わりに負極に面してもよいし、セパレータの両面に含まれてもよい(例えば、浸水型鉛蓄電池の負極に面するように設計されたセパレータの面に含まれていてもよい)。図1に示されるセルは、動きの方向に平行なセパレータ及びエンベロープ化された電極を有して、90回のスタート/ストップイベント又はサイクルを受けた。図1に示されるように、30、60、及び90回のスタート/ストップイベント又はサイクル後、セレーテッドリブ付セパレータを有するセルが示している成層化は、従来のセパレータを有するセルよりも大幅に少ない。
【0059】
図2を参照すると、図1に示されるものと同タイプのセルを比較している一連の写真が示されている。セルは、一晩の静止後、時速25マイルで走行している車両内で60回のスタート/ストップイベント又はサイクルを受けた。上の行は、例示の実施形態に係るセレーテッドリブ付セパレータを有するセルを示す。一方、下の行は、従来の固体リブ付きの従来のセパレータを有するセルを示す。図2に示されるように、セレーテッドリブ付セパレータを有するセルが示している成層化は、従来のセパレータを有するセルより大幅に少ない。このような検査により、図1の写真に示される実験結果が実証された。
【0060】
図3に移ると、例示の実施形態に係るより近い間隔のセレーテッドリブ付セパレータを有するセル(上の行)が、セパレータに沿って垂直である従来の固体リブ付きのセパレータを有するセル(下の行)と比較された。上の行に示されるセパレータに対するエンバトルメントリブの間隔は、約7mmであった。セルは、90回のスタート/ストップイベント又はサイクルを受けた。図3に示されるように、30、60、及び90回のスタート/ストップイベント又はサイクル後、セレーテッドリブ付セパレータを有するセルが示している成層化は、従来のセパレータを有するセルよりも大幅に少ない。
【0061】
図4を参照すると、一連の写真により、例示の実施形態に係るディンプルのあるセパレータを有するセル(上の行)と、セパレータに沿って垂直に延びている固体大及び固体小リブを含む従来のセパレータを有するセル(下の行)との比較が示されている。セルは、90回のスタート/ストップイベント又はサイクルを受けた。図4に示されるように、30、60、及び90回のスタート/ストップイベント又はサイクル後、ディンプルのあるセパレータを有するセルが示している成層化は、従来のセパレータを有するセルより大幅に少ない。このように、例えば、図4の下の行の写真に示すような固体リブは、アイドリングスタート/ストップ鉛蓄電池内のセパレータに対する酸混合を実際に阻害している。
【0062】
図5を参照すると、一連の写真により、例示の実施形態に係るディンプルのあるセパレータを有するセル(上の行)と、ディンプルと結合したセパレータに沿って垂直に延びている固体リブを含むセパレータを有するセル(下の行)との比較が示されている。セルは、90回のスタート/ストップイベント又はサイクルを受けた。図5に示されるように、ディンプルのあるセパレータを有するセル(上の行)が示している成層化は、ディンプルと固体リブの結合体を含むセパレータを有する下の行のスタート/ストップ鉛蓄電池セルよりも少ない。しかし、例えば、図1~4の写真の下の行と比較すると、下の行にいくらかの酸混合が示されている。例えば、下の行の写真のいくつかにおいては、酸濃度が低い明確な領域又はポケットが見られるが、酸混合も見られる。下の行の写真により、セレーション及び固体リブの組合せ又はディンプル及び固体リブの組合せが、本開示に係る様々な電池、システム、及び方法に有用であることが判明するかもしれないということがわかる。
【0063】
図6を参照すると、そこには、例示の実施形態に係るディンプルのあるセパレータを有するセル(上の行)を、セパレータの垂直方向に対してわずかな角度でセパレータに沿って斜めに延びている固体リブを含むセパレータを有するセルと比較している一連の写真が含まれる。セルは、90回のスタート/ストップイベント又はサイクルを受けた。図6に示されるように、ディンプルのあるセパレータを有するセル(上の行)が示している成層化は、図1~4の下の行に示されるもののような写真のスタート/ストップ鉛蓄電池セルより少ない。図6の写真の下の行に関しては、60回のサイクル又は60回のスタート/ストップイベントで、いくらかの成層化がまだ存在しているのがわかるが、成層化は90回のサイクルで改善する。
【0064】
図7A及び7Bには、混合されている1.28の比重を有する酸で満たされたジャー内の従来の固体リブセパレータ(図7A)及び全くセパレータなし(図7B)の比較写真が含まれる。図7Aには、従来のリブ付セパレータの写真が含まれ、ジャーの底部の赤い酸の集中及びジャーの頂部へ向けての透明な液体により成層化が示されている。図7Bには、セパレータがない鉛格子電極のみの写真が含まれ、ジャーにわたって赤色が示されているように、成層化の発生はずっと少ない。図7A及び7Bは、固体リブ付きの従来のセパレータが、スタート/ストップ浸水型鉛蓄電池内部の酸混合を妨げ、成層化を促すかもしれないことを説明するのに役立つ。同様に、図7Bは、様々なセパレータがそれに対して比較対照できる、セパレータを含まない、ベンチマークの一形態を提供する。
【0065】
図8には、成層化に対する検査前の本開示に係るセレーテッドリブ付セパレータを使用して構成されたセルの写真が含まれる。
【0066】
図9には、成層化検査のためのケースにまとめられた図8のセルの写真が含まれる。電極及びセパレータのグループに亘って、リードストラップが設置される。一旦酸がケースに追加されると、酸のレベルがこれらのリードストラップの上、数mmとなるかもしれない(ほんの一例として、場合によっては、リードストラップ上、約3mm)。電極及びセパレータを含むこのケースがセル内の成層化に関して検査される際、特定の実施形態においては、検査の動きの方向が、スタート/ストップ電気自動車の動きを模倣することが好ましい。動きは、それ故、車両が動かされ、加速され、減速され、及び/又は停止されるように酸が電極の表面に亘って動かされるように、写真のプレート及びセパレータに実質的に平行である。図9は、写真の頂部がスタート/ストップ性能を有する電気自動車のフロントバンパーへ向かって延びている一方、図9の写真の底部が同電気自動車のリアバンパーへ向かって延び、まもなく成層化検査用の酸で満たされる、電極、セパレータ、及びリードストラップのグループが見下ろされているように見えてもよい。言い換えると、電極及びセパレータは、テストで作られた動きと平行である。
【0067】
図10には、本明細書中に説明されている様々な実施形態に従って利用されるセパレータ上のセレーション又はセレーテッドリブの断面図の写真が含まれる。
【0068】
図11には、本明細書中に説明されている様々な実施形態に従って利用されるセレーテッドセパレータの輪郭の2つの図が含まれる。
【0069】
図12には、25℃での硫酸溶液の伝導率のグラフが示される。当該グラフは、成層化がセル及び/又は電池の高い及び低い酸領域における伝導率の差に起因する不均一な電流に繋がり得ることを理解する助けになる。
【0070】
図13には、図6に示されるセルと同様に構成されたセルの写真が含まれる。ただし、図13に示されるセルに関しては、セパレータは、車両の動きの方向と垂直なシステムに挿入された。一方、図6に示されるセルに関しては、セパレータは、上記の図9の方向の説明と同様に、動きの方向と平行なシステムに挿入された。様々な実施形態において、セパレータが車両及び電池システムに対する動きの方向に平行に位置付けられることが好ましい。これは、図13に示される写真が、良好な酸混合を伴わず、60回のスタート/ストップイベント又はサイクル後に成層化がなお起こっていることを明らかにしているからである。例として図13の上の行を使用すると、そこでは、ディンプルのあるセパレータが本開示の様々な実施形態に従って利用されているが、成層化がなお発生しており、酸混合が最適ではなかった。
【0071】
図14には、本明細書中に説明されている様々な実施形態に係るセレーテッドリブを含む電池セパレータの写真が含まれる。このセパレータは、検査用のスタート/ストップ自動車用浸水型鉛蓄電池を作るための電極を包むために利用された。その検査の結果は後述される。
【0072】
図15A~15Dには、本明細書中の様々な実施形態に係るセパレータ用の複数のセレーションの輪郭の図が含まれる。酸混合を改善し強化するためのセパレータ用の様々な最適な輪郭は、本明細書中に開示される。図15A~15Dに示される図は、単にこのような最適な輪郭の例である。多数の他の最適な輪郭が本明細書中で説明される改良されたセパレータ、電池、システム、及び方法の適用範囲内に含まれる。
【0073】
図16には、強化浸水型電池又は強化モードで作動している浸水型電池の一例に対するサイクル試験を示すグラフが含まれる。今日のより新しい電池アプリケーションにおいては、強化浸水型電池が、過充電または100%より多い充電状態で作動されることが多いこれまで知られてきた浸水型鉛蓄電池よりも低い充電状態で作動している。よって、このような強化浸水型電池は、95%未満、場合によっては90%未満、場合によっては85%未満、場合によっては80%未満、さらに場合によっては70%未満、場合によっては60%未満、場合によっては50%未満、場合によっては25%未満、場合によってはさらに10%未満の充電状態(SoC)で作動していてもよい。この特定のグラフにおいて、サイクル試験は、17.5%の放電深度(DoD)の電池に対して実施され、利用されたセパレータは、図1の写真の下の行に示されるもののような従来のリブ付セパレータであった。この特定の電池は、部分的に放出される充電状態における高いサイクル条件の下、エネルギーを届け、硫酸鉛が豊富な環境でうまく働く能力を示した。図16に関して検査され、スタート/ストップアプリケーションで利用されたもののような電池は、(EN50342のような規格で示されたもののような)標準SLI電池に比べてエネルギーのスループットを劇的に増加させた。このようなスタート/ストップアプリケーション用の強化浸水型電池及び/又は浸水型電池は部分充電状態で作動しているため、より高い充電効率を有する及び/又はより迅速に充電を受ける必要がある。場合によっては、強化浸水型電池は、1以上の電極と共に様々な添加剤を用いて、充電効率を上げる及び/又はより迅速に充電を受ける電池を作成する。ただし、本明細書中に説明されている強化セパレータは、同一のゴールを達成できる。
【0074】
本明細書中に説明されているセパレータ、方法、電池、及び電池システムは、長い期間をかけて、成層化を低減させ、電解質の循環及び混合を改善してもよい。このことは、成層化が電池性能を大幅に減少させ得る、深さがある循環及び/又は強化浸水型鉛蓄電池にとって特に重要である。様々な浸水型鉛蓄電池、強化浸水型鉛蓄電池、及びその適用は、本明細書中に説明されている改良されたセパレータ、方法、電池、及びシステムから恩恵を受けてもよい。様々な電気自動車、自動車、ハイブリッド自動車、フォークトラック、ゴルフカート、ネイバーフッド・エレクトリック・ビークル等を含むがこれらに限られない様々なスタート/ストップ車両、特に、十分充電されず、部分充電状態にある車両及び/又は電池は、本明細書中に説明されている改良されたセパレータ、電池、電池システム、及び方法から恩恵を受けてもよい。
【0075】
酸混合セパレータとして知られている、本明細書中に説明されている強化浸水型セパレータの例示の実施形態は、強化浸水型電池、特に移動する電池で使用されてもよく、驚くべきことに、また予想外に、このような強化浸水型電池に酸混合及び/又は酸循環の大幅な改善をもたらし、その結果、強化浸水型電池内の成層化を大幅に低減又は完全に予防する。このようなことは、セパレータ全体に沿った酸の流れ及び循環が、電池全体が使用中の電池のいくつかのより小さい部位に対して利用されていることを意味するため、極めて重要かもしれない。すなわち、本開示の強化されたセパレータ、電池、システム、及び方法を使用すると、電解質(例えば、硫酸)がセパレータの全て又はほぼ全ての部分へ、及び全て又はほぼ全ての部分に沿って自由に流れ、それ故、電極の正極活物質及び負極活物質の全て又はほぼ全ての部分へ、及び全て又はほぼ全ての部分に沿って自由に流れている。一方、成層化(ほんの一例として、図1~4の写真の下の行にある成層化を参照。ここでは、赤色の指標が酸に追加されている。透明な液体、すなわち、水が明確に視認でき、テストセルの上半分当たりに存在するのに対し、酸は、明確に視認でき、テストセルの下半分当たりに存在する。)により、セパレータの全体、それ故、このようなセパレータのどちらかの側における正極活物質及び負極活物質の全体が、完全に酸を欠いているため、最大限の可能性を使用して、基礎を成す装置/車両に電池を使って動力を供給することができない。よって、本明細書中に説明されている改良されたセパレータ、電池、システム、及び方法は、浸水型鉛蓄電池、例えば、強化浸水型電池における成層化を大いに低減させる。
【0076】
成層化への懸念の理由は、結果として正負板又は正負極の表面に亘る電流密度不均一性を生じさせることである。図12に示されるグラフは、重量パーセントによる硫酸の濃度に対するH2SO4の伝導率を示す。
【0077】
本開示の好適な実施形態によっては、セパレータの1以上の表面に存在するセレーション、ディンプル、及び/又は分割リブは、不均一に分散されている。さらに、好適な実施形態によっては、セパレータの1以上の表面に存在するセレーション、ディンプル、及び/又は分割リブは、セパレータの少なくとも一面における特定の区分又は領域で異なっている。例えば、セレーション及びディンプルそれら自身は、大きさが不均一でもよく、(例えば、ランダムに形成されてもよく)、セレーション及び/又はディンプルの間隔は、ランダム及び/又は不均一でもよい。例として、本明細書中で利用されている様々なセレーション及び/又はディンプルは、規則配列又は不規則配列でセパレータの一面又は両面に存在してもよい。さらに、本明細書中で利用されている様々なリブ、例えば、セレーテッドリブは、非線形でもよい。例えば、セレーテッドリブによっては、波状パターン又は非線形パターンであってもよい。
【0078】
様々な実施形態において、本明細書中に説明されている強化浸水型電池用の強化浸水型セパレータの効果が際立つのは、セパレータに対する強化が移動中の電池が進んでいる動きの方向と平行に延びるように、セパレータが強化浸水型電池内に置かれた場合である。このような効果は、図6の望ましい結果と図13のあまり望ましくない結果を比較することにより理解され得る。図13の写真では、酸混合用の強化された輪郭を有するセパレータが利用されているにも関わらず、成層化がなお観測される。これは、図13のセルが、セパレータ及び電極における強化が車両内で電池が進んでいる動きの方向と垂直であるように位置付けられているためである。スタート及びストップ慣性と平行な電極及びセパレータを有する車内の電池の配置により、場合によっては、垂直な位置決めよりも良好な酸の混合が可能になってもよい。
【0079】
本明細書中に説明されている様々な強化セパレータ、例えば、酸混合及び酸循環を改善するためのセレーションを有する強化セパレータは、様々な間隔及び/又は様々なパターンを有してもよい。ほんの一例として、図15A~15Dは、例示の実施形態において効果的な可能性があるセレーテッドリブの例を示す。このようなパターン、及び他のパターン(均一及び不均一の両方、及び規則的及び不規則の両方)により、電池の電気的特性における他の主要な改善と同様、浸水型鉛蓄電池内のコールドクランキングアンペア数(CCA)の改善も可能としてもよい。(ほんの一例として、)図15A~15Dにおけるもののようなセレーテッドパターンでは、結果としてCCA性能を改善させる正極活物質(PAM)に接触しているリブを減らすことを可能にする固体リブ(制御手段)を有するセパレータに比べて、表面積が約53%削減されている。図15A~15Dに示されるもののような、このようなパターンでは、酸利用率を高め、性能を改善できる固体リブ輪郭(制御手段)に比べて、リブの質量が33%削減されてもよい。さらに、正極活物質(PAM)圧縮を酸混合及び酸利用率のためのリブの質量及び開口のバランスで維持することが重要かもしれない。
【0080】
さらに、(ディンプル、セレーション等のような)突起の配置及び設計は、PAM排出を促進しないように圧縮用に最適化されなければならず、好ましくは、正格子フレーム又は電流コレクタとの親密な関係からペレットを押し出さないように格子フレームに亘って支持される。
【0081】
本開示の電池は、PAMの利用の増加から生じる優れた性能のために必要な鉛を減らしてコスト削減するために提供されてもよい。また、このようなことにより、自動車メーカーが求める電池のコスト削減、及びこれもまた自動車メーカーが求める電池の重量削減が可能になるかもしれない。
【0082】
場合によっては、本開示で利用される強化セパレータは、従来のリブの表面積の10~90%、好ましくは従来のリブの表面積の30~70%、より好ましくは、場合によっては、従来のリブの表面積の40~60%である固形の垂直リブ輪郭のような、従来のリブ輪郭のリブ表面積と比較して、リブの表面積を有する最適化された輪郭を有してもよい。この全ては、リブ形状、リブ間隔、及び酸混合を改善し、成層化を予防する最終目標によって決まり、これら全ては最適化される。
【0083】
(例)
図8及び図9は、セル容器内で実施された電池実験を示す。白いケース及び鉛電極のグループと共にこれらの写真に示される電池テストセルは、以下の一般的特性を有していた。
【0084】
【表2】
【0085】
以下に示す追加例において、商業グループ31 19プレート/グループCa/Caは、拡張された電池検査データが示されている。この表において、「新規」と記されたセパレータは、図14のエンベロープに示されるセレーションの輪郭を有する。一方、「制御」と記された結果は、セパレータに垂直に沿った固体リブを有する。これらの結果により、本開示に係る強化セパレータを使用したスタート/ストップ強化浸水型鉛蓄電池に対する電池性能の改善に関して、予想外の及び/又は驚くべき結果が明らかになった。以下の表の結果は、電池が車内で大きく動いて設置されておらず、むしろ検査用の設備内であちこちに移動しながら一般的な動きでいる場合でさえ、著しい改善を示した。このように、車両からの動き及び/又は様々なスタート/ストップイベントからのエネルギーと結合して、電池性能結果は、さらにいっそう著しく改善するかもしれない。
【0086】
【表3】
【0087】
図18A~32Bに関して説明されているCFD例は、ISS、SLI、又はゴルフ・カー電池で利用されているもののような短い電池におけるセルを示している。図35~37及び39で説明されているCFD例は、動力車産業、例えば、フォークトラック電池で利用されているもののような長い電池におけるセルを示している。
【0088】
短いセルの例は、幅約142mm、高さ約129mm、バックウェブの厚さ約250μm、及びリブ高さ約600μmのセパレータを示す。短いセルの例は、また、セパレータのどちらかの側辺と電池ケースの側壁境界の間が約3mmで、セパレータ上のヘッドスペースが約44mmであることを示す。
【0089】
長いセルの例は、幅約158mm、高さ約406mm、バックウェブの厚さ約500μm、及びリブ高さ約1.8mmのセパレータを示す。長いセルの例は、また、セパレータのどちらかの側辺と電池ケースの側壁境界の間が約3mmで、セパレータ上のヘッドスペースが約51mmであることを示す。
【0090】
このミドトロニクスCCAテストの重要性は、グローバル・スタンダード・テストではないが、アルゴリズムを使用して迅速に及び簡単に電池の性能を計算するハンドヘルドデバイスであることである。酸混合セパレータを使用して酸に露出された正格子の表面積を増加させることにより、伝導性の改善と電極性能の改善が可能となる。業界標準ではないが、使い勝手の良さのため、今日、世界中の購買決定において利用されている。このアルゴリズムテスターの性能を改善することは、顧客満足のキーとなり、酸混合セパレータの改良は、表3に示されたようにその結果を促進する。
【0091】
以下の例は、計算流体力学(CFD)を使用した例示のセパレータ及び電池の分析を詳述し、本明細書中に開示されている例示の実施形態の有効性を数値化し、鉛蓄電池又は浸水型鉛蓄電池又は強化浸水型電池又はアイドリングスタート/ストップ浸水型電池内の成層化を逆流させ、低減され、又は完全に排除する。モデルは、概して、電池の下方部分に位置する高濃度の酸及び電池の上方部分の水、それらの間に備えられたインターフェースを有する、完全な成層状態で開始された。
【0092】
横の動きの正弦波のグラフ表示が図17Aに示される。この動きは、一方向における開始位置から正の1フット変位へセパレータ及び/又は電池を移動させ、方向を逆転させてモデルのセパレータ及び/又は電池を開始位置を通り越して負の1フット変位まで戻し、方向を逆転させてモデルを開始位置まで戻すように記載されてもよい。上述の動きは、1秒間で起きる。この動きのパターンは、水平の横の又は水平の横向きの動きをシミュレーションする全てのCFDモデルで利用され、所望の時間、分析を行うために必要な数だけ繰り返された。本明細書中に説明されているCFD分析は、例示のセパレータの幅方向に平行な方向における、横の又は横向きの動きを利用した。言い換えると、動きは、水平で、例示のセパレータの主要な平面に平行な方向であった。
【0093】
加えて、CFDモデルの分析は、完全に混合された電解質が1.0の均一性指数を有する液体電解質内の酸体積分率の体積均一性指数(φ)を導き出した。この値は、下記の式1を使用して算出された。
【0094】
【数1】
ここで、
は、φの体積平均である。
φcは、セル内の選択されたスカラーの値である。
cは、セルの体積である。
【0095】
図17Bは、固体リブセパレータ及びセレーテッドリブセパレータの比較を示し、各々は、図17Aに定義される動きを受け、CFDを使用して分析された。分析された両セパレータは、正エンベロープ化セパレータであった。これは、セパレータが正極板に面する固体又はセレーテッド(及び後述のとおり分割)リブで正極板を包んだことを意味している。
【0096】
図18Aは、60秒間横の動きを受け、CFDを使用して分析された正エンベロープ化固体リブセパレータを示し、浸水型鉛蓄電池の成層電解質の混合を示す。セパレータの外周にわずかな量の混合が見られるが、固体リブ間の混合は、たとえあるとしても、非常に少ない。図18Bは、分析の体積均一性を示し、横の動きの混合が体積均一性において7%の増加を生み出したことが明らかになっている。
【0097】
図19Aは、60秒間横の動きを受け、CFDを使用して分析された正エンベロープ化セレーテッドリブセパレータを示し、浸水型鉛蓄電池の成層電解質の混合を示す。セパレータの外周にある程度の量の混合が見られ、内側のセレーテッドリブ間の混合も増加している。図19Bは、分析の体積均一性を示し、横の動きの混合が体積均一性において12%の増加を生み出したことが明らかになっている。
【0098】
図20Aは、図18A及び19Aに示されるセパレータのCFD混合結果の対照比較である。図20Bは、正エンベロープ化固体リブセパレータと比較して、正エンベロープ化セレーテッドリブセパレータが混合均一性において5%の増加を生み出していることを示している。
【0099】
図21は、正エンベロープ化セレーテッドリブセパレータのCFD分析で利用されたロッキングモーションを定義している。図22は、図21に記載のロッキングモーションを受けたセレーテッドリブセパレータの視覚的表現CFD分析を示している。
【0100】
図23は、正極板に面する固体又はセレーテッド(及び後述のとおり、分割)リブを有する浸水型鉛蓄電池の負極板を含む又は包む(負エンベロープ化)セパレータの模式表現である。
【0101】
図24Aは、横の動きを受けた負エンベロープ化セレーテッドリブセパレータのCFD分析のグラフ表示であり、さらに、これを同一の横の動きを受けた正エンベロープ化セレーテッドリブセパレータのCFD分析のグラフ表示と比較する。図24Bは、図24Aの負エンベロープ化セレーテッドリブセパレータの体積均一性のグラフ表示であり、成層開始から60秒間の混合における体積均一性の22%の変化を明らかにしている。図24Cは、負エンベロープ化及び正エンベロープ化セレーテッドリブセパレータの体積均一性のグラフィカル比較であり、負エンベロープ化セパレータが正エンベロープ化セパレータに比べて混合において10%の増加を有することを示している。
【0102】
図25A~25Fに取りかかると、複数の例示の実施形態は、CFD分析で利用された様々な分割リブパターンを定義する変数を有する分割リブ配置を示している。図26A~26Gは、本開示の例示の実施形態に係り、図25A~25Fのパターンで定義されたような分割リブを有する電池セパレータを示す。例示の電池セパレータは、図26A~26Gに示され、さらに、本明細書中に開示される例示の電池セパレータは、任意の数の列26061~2006nを有してもよい。
【0103】
図27Aは、実質的に横又は水平の動きを受けた、負エンベロープ化セレーテッドリブセパレータ及び(図26Dに示されるような)負エンベロープ化分割リブセパレータのCFD分析のグラフィカル比較である。図27Bは、横の動きを受けたこれまでに説明されたセパレータの複数のCFD分析の体積均一性の比較を示す。負エンベロープ化分割リブセパレータは、負エンベロープ化セレーテッドリブセパレータと比較して、60秒間の混合において26%の増加を生み出す。
【0104】
図28Aに取りかかると、図に示されるように実質的に横又は水平の動きを受けた、負エンベロープ化固体リブセパレータ及び(図26Dに示されるような)負エンベロープ化分割リブセパレータのCFD分析のグラフィカル比較を示している。図28Bは、実質的に横又は水平の動きを受けたこれまでに説明されたセパレータの複数のCFD分析の体積均一性の比較を示す。負エンベロープ化分割リブセパレータは、60秒間の混合において28%の増加を生み出す。
【0105】
図29Aは、様々な分割リブパターンの3つの区分を有するセパレータを詳述し、区分は、セパレータの幅方向に沿って横方向に変化している。区分は、また、セパレータの縦方向又はセパレータの縦及び幅方向の両方に広がってもよいことが記される。さらに、どちらか又は両方の方向に任意の数の区分があってもよいことが理解される。加えて、セパレータの縁が、より良い結果のために明確な設計及び/又はリブ付パターン及び/又は分割リブパターン等で最適化されるように、その縁自体が区分となってもよい。本明細書中の特定の好適な実施形態において、各区分におけるパターニングの質量が相対的に一貫するように、及び/又はパターンのあるセパレータが電池形成機器上にうまく延びているように、及び/又は酸充填における効果のためバッター形成がより速められるように、(複数に区分されたセパレータ用の)セパレータの区分が形成される。
【0106】
図29Bは、区分されたセパレータ用の分割リブパターン変数を示す。下付き番号「1」及び「2」は、2つの異なる分割リブパターンに関連する。特定の実施形態において、区分1及び区分3(下付き文字「1」)は、分割リブパターン等の同一のパターンを組み込み、区分2(下付き文字「2」)は、区分1及び3のものとは異なる、分割リブパターン等のパターンを有する。図29Cは、単一に区分された分割リブセパレータ用の分割リブ変数を示す。
【0107】
図30A~30Hは、3つに区分された分割リブパターンのセパレータの変数を示す。
【0108】
図31は、4つの異なる3つに区分された分割リブパターンの負エンベロープ化セパレータのCFD分析のグラフ表示を示す。
【0109】
図32Aは、横の動きを受けた、負エンベロープ化の3つに区分された分割リブパターンのセパレータ及び(図26Dに示されるような)負エンベロープ化の単一に区分された分割リブセパレータのCFD分析のグラフィカル比較である。図32Bは、横の動きを受けたこれまでに説明されたセパレータの複数のCFD分析の酸分率の体積均一性の比較を示す。このグラフにおいて、3つに区分されたセパレータは、単一に区分されたセパレータと比較して混合において1%の増加を生み出すことが示されている。
【0110】
図33A~33Cは、本開示の例示の実施形態に係るスプラッシュバッフルを有する電池のヘッドスペースを示す。これらのスプラッシュバッフルは、本明細書中に説明されている例示のセパレータの何れかと共に利用されてもよい。これらの実施形態において、各電池のヘッドスペースは、移動又は揺動している電解質及び/又は酸性波又は波動の動力又はエネルギー(水平及び垂直の両エネルギー)をさらに抑制して、鉛蓄バッター内で、及び電池内の電極板の全ての部位に沿って、酸混合及び酸分率の体積均一性をさらに増加させ、1.0(完全に混合)の体積均一性に近づける又はさらに実現するように、最適化される。スプラッシュバッフルは、電池ケースの蓋又は内部壁に形成又は取り付けられてもよく、電極ストラップ上にクリップで留まる装置の形態を取ってもよい。スプラッシュバッフルは、さらに、平面、湾曲した凸又は凹形状、凹凸形状、鋭い又はヒレ状エッジ、又は任意の他の形状を有してもよい。加えて、電極ストラップは、スプラッシュバッフル又は電池が動いている間に電解質が経る任意の他の飛散及び/又は移動とより良く連携するために、設計又は動かされてもよい。スプラッシュバッフルは、また、電池が動いている間に電解質が経る任意の飛散及び/又は移動の効果を最適化するために、電極に浮かんでもよいし、1以上のピボットを組み込んでもよい。
【0111】
さらに、電池の設計は、成層破壊の促進を手助けするために変更されてもよい。このような例の1つには、例えば、バネ、又はゴム又は他の粘弾性材料等の弾性マウントに電池を取り付けることが含まれ、速度変化後に電池が移動又は振動し続けることを可能にしてもよい。電池ケースは、電池内の電解質供給全体のヘッド圧を増加させるために追加されたより多くの電解質を有して、より長く作られてもよい。電池は、また、水平気筒又は卵形、又はさらには球として設計されてもよい。加えて、ケースの蓋は、半球体として設計されてもよい。
【0112】
図34A~34Iは、本開示の例示の実施形態の様々な詳細を示す。
【0113】
図35は、実質的に図26Dに示されるようなリブパターンを有する長いセル電池用のセパレータを示す。図36は、図35に示されるセパレータのCFD分析から導かれる時間と共に変化する体積均一性を他のセパレータ設計のものと比較して示す。テストセルは、図17Aに示されるように横の動きを受けたようにシミュレートされた。セパレータは、60秒間、動きの方向に平行である。細い下のラインは、固体リブパターンを有する短いセパレータを表し、太い下のラインは、固体リブ設計を有する長いセパレータを表す。上の細いラインは、好適な分割リブパターンを有する短いセパレータを表し、上の太いラインは、好適な分割リブパターンを有する長いセパレータを表す。図に示すように、7%の増加を示したのみである固体リブパターンを有する長いセパレータと比較して、固体リブパターンを有する短いセパレータは、その体積均一性において13%の増加を示した。好適な分割リブパターンを有する短いセパレータは、その体積均一性において28%の増加を示した。好適な分割リブパターンを有する長いセパレータは、60秒の横の動きを通じて、その体積均一性において62%の増加を示した。検査されたロットの中で、最大の増加である。
【0114】
図37は、発明のコンセプト1トール酸混合輪郭と従来の固体バッフルトール輪郭との速度コンター時間履歴比較を示す。
【0115】
図38は、セパレータと電極の間に置かれる分割リブのパターンを有する例示の発明のスペーサを示す。図に示すように、分割リブは、細いストリンガーの網により適所に保たれる。ストリンガーは、垂直及び水平配置で示されるが、他の角度が組み込まれてもよいことが理解される。
【0116】
図39A~39Cは、例えば、長い電池又は電池ケースにおける発明の原動力型セパレータの輪郭、間隔、及びヘッドスペースを示す寸法値の例示の実施形態を示す。
【0117】
図40及び図41は、例示の発明の酸混合の輪郭の輪郭プロトタイプを示す。
【0118】
図42には、従来の固体リブの輪郭より高い発明の輪郭の混合メリットを示す画像が含まれる。
【0119】
さらに、電池の設計は、成層破壊の促進を手助けするために変更されてもよい。このような例の1つには、例えば、バネ、又はゴム又は他の粘弾性材料等の弾性マウントに電池を取り付けることが含まれ、速度変化後に電池が移動又は振動し続けることを可能にしてもよい。電池ケースは、電池内の電解質供給全体のヘッド圧を増加させるために追加されたより多くの電解質を有して、より長く作られてもよい。電池は、また、水平気筒又は卵形、又はさらには球として設計されてもよい。加えて、ケースの蓋は、半球体として設計されてもよい。
【0120】
本明細書中に説明されているセパレータは、さらに、例えば、堰装置、浸漬管、酸ポンプ又はバブラー、変位装置又はそれらの任意の組合せ等、成層化防止/逆転のために利用される他の装置と併用して利用されてもよい。複数のこのような装置が、以下に開示されている:米国特許出願公開番号2012/0214032(フランクリン、他)、2004/0067410(ジョーンズ)、及び2003/0148170(ジョーンズ)、及び米国特許番号6274263(ジョーンズ)、4629622(ヨネヅ、他)、及び4565748(ダール)。これらは全て参照により本明細書中に組み込まれている。セパレータは、リーフの形式、エンベロープ、又は完全なチューブ/スリーブで証明されてもよい。セパレータは、さらに、全輪郭のひだ/シール又は断続的なひだ/シールを備えてもよく、さらに折られたセパレータの底部の折り目における開口を備えてもよい。
【0121】
本明細書中に説明されているリブパターンの何れかが、列の間隔を有し、過充電のイベント中に気体を増加させることができることが理解される。さらに、分割リブパターンは、分割リブの行間の縦方向に間隔を有さず、セパレータがエンベロープを形成するために折られた場合に強度を提供してもよい。加えて、分割リブセパレータは、さらに、エンボス加工されてもよい。リブパターン又は他の突起の何れかが電池ケースの任意の内部の表面又は正極及び負極のどちらか又は両方の任意の表面に設けられてもよいことが、さらに理解される。車内に設置された電池に関して、好適な実施形態は、その車両の出発及び停止の動きを生かすために、一般的に車両の動きに平行な向きでセパレータを載置してもよい。
【0122】
本明細書中に説明されている分割リブセパレータ等の、本明細書中に説明されている改良されたセパレータは、さらに、硫酸化結晶の形成を防止する手助けをしてもよく、また、セパレータに亘って、より均一な熱的分布及び/又は熱混合及び/又は熱散逸又は熱放散(浸水型鉛蓄電池用の固体リブ付セパレータ等の、既知のセパレータに比べて少ない時間で熱放散させる)をもたらすのに役立ってもよいと思われる。本明細書中に説明されている例示の分割リブセパレータは、また、浸水型鉛蓄電池、ゲル電池、及び/又は強化浸水型電池の改善された又はより速い又はより効率的な充填をもたらしてもよいとも考えられる。
【0123】
本開示の様々な実施形態において、開示されたセパレータは、浸水型鉛蓄電池内の酸又は電解質の混合レベル又は体積均一性が1.0又はほぼ1.0に近づくようにして、成層化を低減させ、又はさらに、成層化の完全な除去をもたらす。様々な実施形態において、本明細書中に開示されたセパレータは、また、低電気抵抗(ER)セパレータである。このような実施形態において、セパレータは、多孔度、細孔サイズ、内部細孔表面積、濡れ性及び/又はセパレータの表面積を増加させる、改良された充填材等の、改良を含んでもよい。実施形態によっては、改良された充填材は、これまでに既知の充填材より高い構造形態及び/又は小さい粒子サイズ及び/又は異なる量のシラノール基を有する、及び/又はこれまでに既知の充填材より水酸化されている。改良された充填材は、油をより多く吸収してもよい、及び/又は油が押し出し後に除去される際に同時収縮又は圧縮することなく、セパレータ形成中、より多い量のプロセス油の組み込みを可能にしてもよい。例として、改良されたセパレータは、約175~350ml/100g、実施形態によっては、200~350ml/100g、実施形態によっては、250~350ml/100gm、及びさらにいくつかの実施形態においては、260~320ml/100gの固有油吸収値を有するシリカを使用して形成されるが、他の油吸収値も同様に可能である。
【0124】
充填材は、さらに、電解質イオンのいわゆる水和球を減少させ、電解質イオンの膜透過移送を高め、その結果、強化浸水型電池又はシステム等の、電池の全体電気抵抗又はERを再度下げてもよい。
【0125】
充填材又は複数の充填材は、セパレータに亘る電解質及びイオンの流れを促進する(金属等の極性種等の)様々な種を含んでもよい。また、このようなものにより、このようなセパレータが強化浸水型電池等の浸水型電池で利用されるように、電気抵抗全体の減少がもたらされる。
【0126】
本明細書中の低ER微孔セパレータは、さらに、セパレータが浸水型鉛蓄電池で利用される際にこのようなセパレータがこのような浸水型鉛蓄電池における電気抵抗の著しい減少に貢献するように、新規の及び改良された細孔形態及び/又は新規の及び改良された原繊維形態を備えてもよい。このような改良された細孔形態及び/又は原繊維形態は、結果として細孔及び/又は原繊維がシシケバブ(又はシシカバブ)型形態に近いセパレータであってもよい。新規の及び改良された細孔形状及び構造を説明する他の方法は、シリカノード又はシリカのノードが電池セパレータ内の重合体原繊維(原繊維はシシと呼ばれることもある)におけるケバブ型構成に存在する、ざらつきのある原繊維形態である。さらに、特定の実施形態において、本発明に係るセパレータのシリカ構造及び細孔構造は、骨格構造又は椎骨構造又は脊髄構造として説明されてもよく、重合体の原繊維に沿った、重合体のケバブにおけるシリカノードは、椎骨又はディスク(「ケバブ」)のように現れ、実質的に脊髄円柱形状(「シシ」)に近い、細長い中心脊椎又は原繊維(伸長鎖状重合体結晶)に垂直に配向されることがある。
【0127】
場合によっては、改良された細孔形態及び/又は原繊維形態を有する改良されたセパレータを備える改良された電池は、電気抵抗の20%の減少、場合によっては、25%の減少、場合によっては、30%の減少、及び場合によっては、さらに(電池内部抵抗を減少させる)電気抵抗(「ER」)における30%より大きい下落を示してもよい。一方、このようなセパレータは、鉛蓄電池セパレータの他のキーとなる、好ましい機械特性のバランスは保持及び維持する。さらに、特定の実施形態において、本明細書中に説明されているセパレータは、既知のセパレータと比較して、より多くの電解質が細孔及び/又は空隙を通って流れる又は細孔及び/又は空隙を充填するように、新規の及び/又は改良された細孔形状を有する。セパレータにおける超高分子量ポリエチレンは、複数の伸長鎖状結晶(シシ構成)及び複数の折り畳み鎖状結晶(ケバブ構成)を備えるシシケバブ構成の重合体を備えてもよく、そのケバブ構成の平均頻度又は周期性は、(少なくともセパレータのリブ側の部位において)1nm~150nm、好ましくは10nm~120nm、及びより好ましくは20nm~100nmである。本セパレータのこれらの低ER実施形態のいくつかにおいて、本明細書中に説明されている鉛蓄電池用セパレータは、シリカ、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、及び沈降非晶質シリカからなる群より選ばれる充填材を備え、前記充填材内のOHのSi基に対する分子比は、29Si-NMRにより測定され、21:100~35:100、実施形態によっては、23:100~31:100、実施形態によっては、25:100~29:100、及び特定の好適な実施形態においては、27:100又はそれ以上の範囲内にある。
【0128】
特定の選択された実施形態において、開示されたセパレータは、電気抵抗、例えば、約200mΩcm2、180mΩcm2、160mΩcm2、140mΩcm2、120mΩcm2、100mΩcm2、80mΩcm2、60mΩcm2、50mΩcm2、40mΩcm2、30mΩcm2、又は20mΩcm2と同じくらいの大きさの電気抵抗の減少を示す。様々な実施形態において、本明細書中に説明されているセパレータは、同一の厚さの既知のセパレータに比べて、約20%以上のERの減少を示している。例えば、既知のセパレータは、60mΩcm2のER値を有してもよい。そして、同一の厚さにおける本発明にかかるセパレータは、約48mΩcm2未満のER値を有する。低ERを有する本明細書中に説明されているセパレータは、ダラミック社に所有され、2016年4月8日に出願された米国仮特許出願番号62/319959に説明された任意の又は全ての特性を有してもよく、この仮出願は、これによって、その全体が参照により組み込まれている。
【0129】
少なくとも選択された実施形態に従って、本開示は、浸水型鉛蓄電池のような、改良された鉛蓄電池、鉛蓄電池を含む改良されたシステム、及び/又は電池セパレータ、改良された電池セパレータ、このようなシステムを含む改良された車両、製造又は使用方法、又はそれらの組合せを対象にする。少なくとも特定の実施形態に従って、本開示は、改良された浸水型鉛蓄電池、このような電池用の改良された電池セパレータ、及び/又はこのような改良された浸水型鉛蓄電池の製造、検査、又は使用方法、又はそれらの組合せを対象にする。加えて、本明細書中には、浸水型鉛蓄電池における成層化を低減させ、電池寿命及び性能を伸ばすための方法、システム、電池、及び/又は電池セパレータが開示されている。
【0130】
本明細書中に開示されるような例示のセパレータは、好ましくは、時間と共に改善される伝導性を有する又はもたらすことにより特徴付けられてもよい。伝導性は、例えば、ミドトロニクステスターで測定される、コールドクランキングアンペア(CCA)として決定されてもよい。例えば、発明のセパレータを備えた鉛蓄電池は、ミドトロニクスCCAテスターにより測定されるように30日間に亘って10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、又は0.5%未満のCCAの減少を示し得る。
【0131】
本発明のセパレータは、好ましくは、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、PVC、ゴム、合成パルプ(SWP)、ガラス繊維、セルロース系繊維、又はそれらの組合せ等の天然又は合成材料から成る(約1ミクロン未満の細孔を有する微多孔膜、メソ多孔、又は約1ミクロンより大きい細孔を有するマクロ多孔膜等の)多孔膜、より好ましくは、熱可塑性重合体から成る微多孔膜を含む。好適な微多孔膜は、約0.1ミクロン(100ナノメートル)の細孔径及び約60%の多孔度を有してもよい。熱可塑性重合体は、原則として、鉛蓄電池での使用に適切な全ての耐酸熱可塑性材料を含んでもよい。好適な熱可塑性重合体は、ポリビニル及びポリオレフィンを含む。ポリビニルは、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)を含む。ポリオレフィンは、例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等のポリエチレン、及びポリプロピレンを含む。好適な一実施形態は、充填材(例えば、シリカ)及びUHMWPEの混合体を含んでもよい。
【0132】
多孔膜層は、ポリプロピレン、エチレン-ブテン共重合体、及び好ましくはポリエチレン、より好ましくは高分子量ポリエチレン、(例えば、少なくとも600,000の分子量を有するポリエチレン)、さらにいっそう好ましくは超高分子量ポリエチレン、(例えば、少なくとも1,000,000、特に4,000,000より多く、及び最も好ましくは(粘度測定により測定され、マーゴリーズの方程式により算出された)5,000,000~8,000,000の分子量を有するポリエチレン等のポリオレフィン、(2,160gの標準的負荷を使用したASTM D1238(条件E)で指定され測定された)実質0の標準的負荷メルトインデックス及び600ml/g以上、好ましくは1,000ml/g以上、より好ましくは2,000ml/g以上、及び最も好ましくは(130℃の100gのデカリンにおける0.02gのポリオレフィンの溶液で決定された)3,000ml/g以上の粘度数を含むことができる。
【0133】
少なくとも一実施形態に従って、多孔膜は、プロセス油及び沈降シリカと混合された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含むことができる。少なくとも一実施形態に従って、微多孔膜は、プロセス油、添加剤及び沈降シリカと混合された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含むことができる。混合体は、また、(湿潤剤、着色剤、帯電防止剤、及び/又は同類のもの等の)セパレータ技術において一般的であるような、少量の他の添加剤又は薬剤を含んでもよい。場合によっては、微孔重合体層は、8~100体積%のポリオレフィン、0~40体積%の可塑剤及び0~92体積%の不活性充填材の均一混合物であり得る。充填材は、乾いて、微細に分割されたシリカであってもよい。好適な可塑剤は、石油である。可塑剤はポリマー-充填材-可塑剤混合物から最も取り除きやすい成分であるため、電池セパレータに多孔度を付与するのに役立つ。
【0134】
実施形態によっては、多孔膜は、押出機において、約30重量%のシリカを約10重量%のUHMWPE、及び約60%のプロセス油と混合することにより作られてもよい。微多孔膜は、原料を加熱された押出機に通し、押出機により生成された押し出し物を型に通して2つの加熱されたカレンダロールにより形成されたニップに入れて連続ウェブを形成し、溶剤を用いて相当量のプロセス油をウェブから抽出し、抽出されたウェブを乾燥させ、ウェブを細長く切って所定の幅のレーンにし、レーンを巻いてロールにすることにより作成できる。カレンダロールには、様々な溝パターンが彫り込まれ、膜にリブ、セレーション、エンボス等を付与してもよい。代わりに、又はさらに、押し出された膜を追加の適切に溝が掘られたカレンダロール又はプレス機に通すことにより、リブ等が多孔膜に付与されてもよい。
【0135】
多孔膜は、様々な方法で添加剤、界面活性剤、薬剤、充填材、又は複数の添加剤を備えることができる。例えば、添加剤又は複数の添加剤は、(例えば、抽出後に)完成する及び/又は膜を作るために利用される混合体に追加される際に、多孔膜に塗布されてもよい。好適な実施形態によれば、添加剤又は添加剤の溶液は、多孔膜の表面に塗布される。このバリアントは、非熱安定性添加剤及び後に続く抽出のために利用される溶剤に溶けやすい添加剤の塗布に特に適している。本発明に係る添加剤に対する溶剤として特に適しているのが、メタノール及びエタノール等の低分子量アルコールと同様に、これらのアルコールと水の混合体である。塗布は、微多孔膜の負極に面する側、正極に面する側、又は両側に施され得る。
【0136】
塗布は、また、微多孔膜を添加剤又は添加剤の溶液に浸し、続いて任意に溶剤を除去する、例えば乾燥させることにより施されてもよい。このようにして、添加剤の塗布が、例えば、セパレータ製造中に実施されることが多い抽出と結合し得る。
【0137】
他の好適なオプションには、添加剤又は複数の添加剤を、熱可塑性重合体及び任意で充填材及び多孔膜の作成に利用される他の添加剤の混合体に混合することがある。添加剤含有の均一混合物は、続いて、ウェブ状材料に形成される。
【0138】
本発明のセパレータは、低ERセパレータ、低水分損失セパレータであってもよく、及び/又は少なくとも突起、分割リブ、セレーテッドリブ、不連続リブ、及び/又は(固体リブではない)同等物を含む部位を有し、セパレータの酸混合又は伝導性を向上させることができる。突起は、短いリブ部分、塊、エンボス等のような特性を含む。突起は、セパレータのどちらかの面、又は両面に存在し得る。典型的には、突起は、少なくとも正極板(正極活物質又はPAM)に面する側に存在する。突起は、行方向に配置することができ、各行の突起は、互いに及び隣接行の突起とは間隔を空けている。場合によっては、突起は、正極活物質に面するセパレータの側、負極活物質(又はNAM)に面するセパレータの側、又はセパレータの両側に配置できる。
【0139】
本発明の実施形態によっては、突起は、少なくとも約0.005mm、0.01mm、0.025mm、0.05mm、0.075mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、又は1.5mmのリブ高さを有するリブである。
【0140】
本発明の実施形態によっては、突起は、少なくとも約0.005mm、0.01mm、0.025mm、0.05mm、0.075mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、又は1.5mmのリブ幅を有する短尺リブである。リブは、約0.005~1.5mm、0.01~1.0mm、0.025~1.0mm、0.05~1.0mm、0.075~1.0mm、0.1~1.0mm、0.2~1.0mm、0.3~1.0mm、0.4~1.0mm、0.5~1.0mm、0.4~0.8mm又は0.4~0.6mm間の幅を有することができる。
【0141】
セパレータは、約25~250ミクロン、おそらく好ましくは約50~125ミクロン、及びより好ましくは約75ミクロンの高さを有する負リブ等の、負の長手又は横リブ又はミニリブを含んでもよい。
【0142】
特定の実施形態において、突起は、リブを含むことができ、各リブは、セパレータの上端に対して、0°から180°未満の角度で配置された長手軸を有する。場合によっては、セパレータの全てのリブを、同一の角度で配置することができる。一方、他の実施形態においては、異なる角度でリブを配置できる。例えば、実施形態によっては、セパレータは、何行ものリブを含むことができ、少なくとも行のいくつかは、セパレータの上端に対して、角度Θのリブを有する。単一行の全てのリブは、同一の近似の角度を有することができるが、他のケースでは、単一行は、異なる角度のリブを含めることができる。
【0143】
特定のケースにおいて、セパレータの全面が、何行もの突起を含む一方、他の実施形態においては、セパレータの面の特定の断片は、突起を含まない。これらの断片は、頂部、底部又は横を含むセパレータの任意の縁に沿って存在してもよいし、セパレータの中央へ向けて存在してもよい。断片は、突起を有する部位を有する1以上の面の周りにある。
【0144】
分割リブ(図1参照)を有する特定の好適と思われる実施形態において、その部位は、少なくとも2組の行を有し、1行目のリブは、0°から180°未満の角度で配置され、2行目のリブは、0°から180°未満の角度で配置されるが、1組目の行のリブの角度とは同一でも異なっていてもよい。図40は、第1(102)及び第2(103)行の組を有する上端(101)を含むセパレータ(100)の描写を含む。
【0145】
特定の他の好適と思われる実施形態(図41参照)において、第2の部位は、少なくとも2組の行を有し、1行目のリブは、0°から180°未満の角度で配置され、2行目のリブは、0°から180°未満の角度で配置されるが、1組目の行のリブの角度とは同一でも異なっていてもよい。図41は、中央の第1部位(402)及び外側の第2(403)部位を有する上端(401)を含むセパレータ(400)の描写を含む。
【0146】
場合によっては、第2の部位は、本明細書中、R5(404)で指定され、バックウェブの上端に対してΘ5の角度(405)を有するリブを有する第5組の行を含む。Θ5は、0°~90°、30°~85°、45°~85°、60°~85°、60°~80°、又は60°~75°である。Θ5の好適な値は、90°である。部位は、本明細書中、R6(406)で指定され、Θ6の角度(407)を有し、バックウェブの上端に対して角度Θ6を有するリブを有する第6組の行を含むことができる。Θ6は、90°から180°未満、95°~150°、95°~120°、100°~120°、又は105°~120°である。Θ6の好適な値は、90°である。異なる行のリブは、(400で示されるように)同一又は異なる寸法を有することができる。隣接行間の距離は、-5~5mmであり得る。負数は、行の重なりの度合いを示す。距離は、中央リブから中央リブで測定できる。
【0147】
異なる行が存在する場合、行は、繰り返しパターンで存在してもよい。最もシンプルな繰り返しパターン-R5-R6-は、(400)で見られてもよい。他のパターンには、-R5-R5-R6-、-R5-R5-R5-R6-、-R5-R5-R6-R6-、-R5-R5-R5-R5-R6-、-R6-R5-R5-R5-R6-、-R5-R5-R5-R6-R6-等が含まれる。
【0148】
いくつかの選択された実施形態において、多孔質セパレータは、突起として膜の反対の面に負の長手又は横リブを有し得る。負の又は背面リブは、セパレータの上端に平行であり得る、又はそこに斜めに配置できる。例えば、横リブは、上端に対して約90°、80°、75°、60°、50°、45°、35°、25°、15°又は5°で配向され得る。横リブは、上端に対して約90~60°、60~30°、60~45°、45~30°、又は30~0°で配向され得る。典型的には、横リブは、負極に面する膜の面に存在する。本発明の実施形態によっては、リブ付き膜は、少なくとも約0.005mm、0.01mm、0.025mm、0.05mm、0.075mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、又は1.0mmの横断横リブ高さを有し得る。本発明の実施形態によっては、リブ付き膜は、約1.0mm、0.5mm、0.25mm、0.20mm、0.15mm、0.10mm又は0.05mmと同じくらいの横断横リブ高さを有し得る。
【0149】
本発明の実施形態によっては、リブ付き膜は、少なくとも約0.005mm、0.01mm、0.025mm、0.05mm、0.075mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、又は1.0mmの横断横リブ幅を有し得る。本発明の実施形態によっては、リブ付き膜は、約1.0mm、0.5mm、0.25mm、0.20mm、0.15mm、0.10mm又は0.05mmと同じくらいの横断横リブ幅を有し得る。
【0150】
特定の選択された実施形態において、多孔膜は、約0.10~0.15mmの横断横リブ高さ、及び約0.1~0.15mmの長手リブ高さを有し得る。実施形態によっては、多孔膜は、約0.10~0.125mmの横断横リブ高さ、及び約0.1~0.125mmの長手リブ高さを有し得る。
【0151】
微多孔膜は、少なくとも0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm又は1.0mmであるバックウェブの厚さを有し得る。リブ付セパレータは、約1.0mm、0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm又は0.1mm以下であるバックウェブの厚さを有し得る。実施形態によっては、微多孔膜は、約0.1~1.0mm、0.1~0.8mm、0.1~0.5mm、0.1~0.5mm、0.1~0.4mm、0.1~0.3mm間のバックウェブの厚さを有し得る。実施形態によっては、微多孔膜は、約0.2mmのバックウェブの厚さを有し得る。
【0152】
本発明のセパレータは、シート状又はラップ、スリーブ、ポケット、又はエンベロープ状のどちらかで提供され得る。実施形態によっては、少なくとも一面において少なくとも1つの線維層で覆われる微多孔膜は、ポケット又はエンベロープとして提供される。線維層が存在する場合、微多孔膜が線維層より大きい表面積を有するのが好ましい。よって、微多孔膜と線維層を結合する際、線維層は、微孔層を完全には覆わない。膜層の少なくとも2つの対向する縁領域が覆われずに、ポケット又はエンベロープの形成を促進する熱シール用の縁が提供されることが好ましい。セパレータは、ハイブリッドエンベロープを形成するために処理され得る。ハイブリッドエンベロープは、エンベロープを形成するためにセパレータシートを半分に折り、セパレータシートの縁を互いに結合させる前、間又は後に1以上の切れ目又は開口を形成することにより作成できる。溶着又は機械的シールを使用して両面が互いに結合され、セパレータシートの一面をセパレータシートの他の面と接触させる継ぎ目を形成する。溶着は、例えば、熱又は超音波処理を使用して遂行できる。この処理の結果、底部の折られた縁及び2つの横の縁を有するエンベロープ形状となる。
【0153】
エンベロープの形で本明細書中に開示されるセパレータは、エンベロープの折られた又は密封された皺に沿って1以上の切れ目又は開口を有してもよい。開口の長さは、全ての縁の長さの少なくとも1/50、1/25、1/20、1/15、1/10、1/8、1/5、1/4、又は1/3であり得る。開口の長さは、全ての縁の長さの1/50~1/3、1/25~1/3、1/20~1/3、1/20~1/4、1/15~1/4、1/15~1/5又は1/10~1/5であり得る。ハイブリッドエンベロープは、1~5、1~4、2~4、2~3又は2つの開口を有することができ、これらは、下端の長さに沿って均等に配置されてもよいし、均等に配置されなくてもよい。エンベロープの隅には開口がないのが好ましい。切れ目は、セパレータがエンベロープを作るために折られ、密封された後にカットされてもよいし、切れ目は、多孔膜をエンベロープに形作るのに先立って形成されてもよい。
【0154】
本明細書中に開示されるようなセパレータは、時間と共に伝導性が改善されることにより特徴付けられてもよい。伝導性は、例えば、ミドトロニクステスターで測定される、コールドクランキングアンペア(CCA)として決定されてもよい。例えば、本発明のセパレータを備えた鉛蓄電池は、ミドトロニクスCCAテスターにより測定されるように30日間に亘って、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、又は0.5%未満のCCAの減少を示し得る。対照的に、類似条件下において従来の電池で観測されたCCAの減少は、より大きいことが多い。
【0155】
本明細書中で提供されたセパレータは、従来のセパレータから成る電池と比較して、電池内の水分損失及び浮遊電流が減少する電池の製造を可能にする。実施形態によっては、水分損失は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%又は80%より多く減少し得る。実施形態によっては、浮遊電流は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%又は80%より多く減少し得る。開示されたセパレータを使用して用意された電池は、時間と共に内部抵抗増加の減少を示し、場合によっては、内部抵抗の増加を示さなかった。
【0156】
水分損失を減少させ、電池寿命の伸びを導くのに加え、好適と思われるセパレータは、他の利点ももたらすように設計される。組み立てに関して、セパレータは、曲げ剛性を最大化し、最も高い製造生産性を実現するように意図された負の横リブを有する。すばやい組み立ての間及びその後のショートを防止するために、セパレータは標準のPEセパレータと比較した際、より優れた耐穿刺及び耐酸化性を有する。
【0157】
少なくとも選択された実施形態に従って、本開示又は発明は、改良された電池セパレータ、低ER又は高伝導性セパレータ、浸水型鉛蓄電池や高伝導性電池等の改良された鉛蓄電池、及び/又は、このような電池を含む改良された車両、及び/又はこのようなセパレータ又は電池の製造又は使用方法、及び/又はそれらの組合せを対象にする。少なくとも特定の実施形態に従って、本開示又は発明は、改良されたセパレータを組み込み、伝導性の増加を示す改良された鉛蓄電池を対象にする。
【0158】
本明細書中に説明されている分割リブセパレータ等の、本明細書中に説明されている改良されたセパレータは、さらに、硫酸化結晶の形成を防止する手助けをしてもよく、また、セパレータに亘って、より均一な熱的分布及び/又は熱混合及び/又は熱散逸又は熱放散(浸水型鉛蓄電池用の固体リブ付セパレータ等の、既知のセパレータに比べて少ない時間で熱放散させる)をもたらすのに役立ってもよいと思われる。本明細書中に説明されている例示の分割リブセパレータは、また、浸水型鉛蓄電池、ゲル電池、及び/又は強化浸水型電池の改善された又はより速い又はより効率的な充填をもたらしてもよいとも考えられる。
【0159】
本開示の様々な実施形態において、開示されたセパレータは、浸水型鉛蓄電池内の酸又は電解質の混合レベル又は体積均一性が1.0又はほぼ1.0に近づくようにして、成層化を低減させ、又はさらに、成層化の完全な除去をもたらす。様々な実施形態において、本明細書中に開示されたセパレータは、また、低電気抵抗(ER)セパレータである。このような実施形態において、セパレータは、多孔度、細孔サイズ、内部細孔表面積、濡れ性及び/又はセパレータの表面積を増加させる、改良された充填材等の、改良を含んでもよい。実施形態によっては、改良された充填材は、これまでに既知の充填材より高い構造形態及び/又は小さい粒子サイズ及び/又は異なる量のシラノール基を有する、及び/又はこれまでに既知の充填材より水酸化されている。改良された充填材は、油をより多く吸収してもよい、及び/又は油が押し出し後に除去される際に同時収縮又は圧縮することなく、セパレータ形成中、より多い量のプロセス油の組み込みを可能にしてもよい。例として、改良されたセパレータは、約175~350ml/100g、実施形態によっては、200~350ml/100g、実施形態によっては、250~350ml/100gm、及びさらにいくつかの実施形態においては、260~320ml/100gの固有油吸収値を有するシリカを使用して形成されるが、他の油吸収値も同様に可能である。
【0160】
充填材は、さらに、電解質イオンのいわゆる水和層を減少させ、電解質イオンの膜透過移送を高め、その結果、強化浸水型電池又はシステム等の、電池の全体電気抵抗又はERを再度下げてもよい。
【0161】
充填材又は複数の充填材は、セパレータに亘る電解質及びイオンの流れを促進する(金属等の極性種等の)様々な種を含んでもよい。また、このようなものにより、このようなセパレータが強化浸水型電池等の浸水型電池で利用されるように、電気抵抗全体の減少がもたらされる。
【0162】
本明細書中の低ER微孔セパレータは、さらに、セパレータが浸水型鉛蓄電池で利用される際にこのようなセパレータがこのような浸水型鉛蓄電池における電気抵抗の著しい減少に貢献するように、新規の及び改良された細孔形態及び/又は新規の及び改良された原繊維形態を備えてもよい。このような改良された細孔形態及び/又は原繊維形態は、結果として細孔及び/又は原繊維がシシケバブ(又はシシカバブ)型形態に近いセパレータであってもよい。新規の及び改良された細孔形状及び構造を説明する他の方法は、シリカノード又はシリカのノードが電池セパレータ内の重合体原繊維(原繊維はシシと呼ばれることもある)におけるケバブ型構成に存在する、ざらつきのある原繊維形態である。さらに、特定の実施形態において、本発明に係るセパレータのシリカ構造及び細孔構造は、骨格構造又は椎骨構造又は脊髄構造として説明されてもよく、重合体の原繊維に沿った、重合体のケバブにおけるシリカノードは、椎骨又はディスク(「ケバブ」)のように現れ、実質的に脊髄円柱形状(「シシ」)に近い、細長い中心脊椎又は原繊維(伸長鎖状重合体結晶)に垂直に配向されることがある。
【0163】
場合によっては、改良された細孔形態及び/又は原繊維形態を有する改良されたセパレータを備える改良された電池は、電気抵抗の20%の減少、場合によっては、25%の減少、場合によっては、30%の減少、及び場合によっては、さらに(電池内部抵抗を減少させる)電気抵抗(「ER」)における30%より大きい下落を示してもよい。一方、このようなセパレータは、鉛蓄電池セパレータの他のキーとなる、好ましい機械特性のバランスは保持及び維持する。さらに、特定の実施形態において、本明細書中に説明されているセパレータは、既知のセパレータと比較して、より多くの電解質が細孔及び/又は空隙を通って流れる又は細孔及び/又は空隙を充填するように、新規の及び/又は改良された細孔形状を有する。セパレータにおける超高分子量ポリエチレンは、複数の伸長鎖状結晶(シシ構成)及び複数の折り畳み鎖状結晶(ケバブ構成)を備えるシシケバブ構成の重合体を備えてもよく、そのケバブ構成の平均頻度又は周期性は、(少なくともセパレータのリブ側の部位において)1nm~150nm、好ましくは10nm~120nm、及びより好ましくは20nm~100nmである。本セパレータのこれらの低ER実施形態のいくつかにおいて、本明細書中に説明されている鉛蓄電池用セパレータは、シリカ、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、及び沈降非晶質シリカからなる群より選ばれる充填材を備え、前記充填材内のOHのSi基に対する分子比は、29Si-NMRにより測定され、21:100~35:100、実施形態によっては、23:100~31:100、実施形態によっては、25:100~29:100、及び特定の好適な実施形態においては、27:100又はそれ以上の範囲内にある。
【0164】
特定の選択された実施形態において、開示されたセパレータは、電気抵抗、例えば、約200mΩcm2、180mΩcm2、160mΩcm2、140mΩcm2、120mΩcm2、100mΩcm2、80mΩcm2、60mΩcm2、50mΩcm2、40mΩcm2、30mΩcm2、又は20mΩcm2と同じくらいの大きさの電気抵抗の減少を示す。様々な実施形態において、本明細書中に説明されているセパレータは、同一の厚さの既知のセパレータに比べて、約20%以上のERの減少を示している。例えば、既知のセパレータは、60mΩcm2のER値を有してもよい。そして、同一の厚さにおける本発明にかかるセパレータは、約48mΩcm2未満のER値を有する。低ERを有する本明細書中に説明されているセパレータは、ダラミック社に所有され、2016年4月8日に出願された米国仮特許出願番号62/319959に説明された任意の又は全ての特性を有してもよく、この仮出願は、これによって、その全体が参照により組み込まれている。
【0165】
少なくとも選択された実施形態に従って、本開示は、浸水型鉛蓄電池のような、改良された鉛蓄電池、鉛蓄電池を含む改良されたシステム、及び/又は電池セパレータ、改良された電池セパレータ、このようなシステムを含む改良された車両、製造又は使用方法、又はそれらの組合せを対象にする。少なくとも特定の実施形態に従って、本開示は、改良された浸水型鉛蓄電池、このような電池用の改良された電池セパレータ、及び/又はこのような改良された浸水型鉛蓄電池の製造、検査、又は使用方法、又はそれらの組合せを対象にする。加えて、本明細書中には、浸水型鉛蓄電池における成層化を低減させ、電池寿命及び性能を伸ばすための方法、システム、電池、及び/又は電池セパレータが開示されている。
【0166】
本開示の様々な実施形態において、開示されたセパレータは、浸水型鉛蓄電池内の酸又は電解質の混合レベル又は体積均一性が1.0又はほぼ1.0に近づくようにして、成層化を低減させ、又はさらに、成層化の完全な除去をもたらす。様々な実施形態において、本明細書中に開示されたセパレータは、また、低電気抵抗(ER)セパレータである。このような実施形態において、セパレータは、多孔度、細孔サイズ、内部細孔表面積、濡れ性及び/又はセパレータの表面積を増加させる、改良された充填材等の、改良を含んでもよい。実施形態によっては、改良された充填材は、これまでに既知の充填材より高い構造形態及び/又は小さい粒子サイズ及び/又は異なる量のシラノール基を有する、及び/又はこれまでに既知の充填材より水酸化されている。改良された充填材は、油をより多く吸収してもよい、及び/又は油が押し出し後に除去される際に同時収縮又は圧縮することなく、セパレータ形成中、より多い量のプロセス油の組み込みを可能にしてもよい。例として、改良されたセパレータは、約175~350ml/100g、実施形態によっては、200~350ml/100g、実施形態によっては、250~350ml/100gm、及びさらにいくつかの実施形態においては、260~320ml/100gの固有油吸収値を有するシリカを使用して形成されるが、他の油吸収値も同様に可能である。
【0167】
充填材は、さらに、電解質イオンのいわゆる水和層を減少させ、電解質イオンの膜透過移送を高め、その結果、強化浸水型電池又はシステム等の、電池の全体電気抵抗又はERを再度下げてもよい。
【0168】
充填材又は複数の充填材は、セパレータに亘る電解質及びイオンの流れを促進する(金属等の極性種等の)様々な種を含んでもよい。また、このようなものにより、このようなセパレータが強化浸水型電池等の浸水型電池で利用されるように、電気抵抗全体の減少がもたらされる。
【0169】
本明細書中の低ER微孔セパレータは、さらに、セパレータが浸水型鉛蓄電池で利用される際にこのようなセパレータがこのような浸水型鉛蓄電池における電気抵抗の著しい減少に貢献するように、新規の及び改良された細孔形態及び/又は新規の及び改良された原繊維形態を備えてもよい。このような改良された細孔形態及び/又は原繊維形態は、結果として細孔及び/又は原繊維がシシケバブ(又はシシカバブ)型形態に近いセパレータであってもよい。新規の及び改良された細孔形状及び構造を説明する他の方法は、シリカノード又はシリカのノードが電池セパレータ内の重合体原繊維(原繊維はシシと呼ばれることもある)におけるケバブ型構成に存在する、ざらつきのある原繊維形態である。さらに、特定の実施形態において、本発明に係るセパレータのシリカ構造及び細孔構造は、骨格構造又は椎骨構造又は脊髄構造として説明されてもよく、重合体の原繊維に沿った、重合体のケバブにおけるシリカノードは、椎骨又はディスク(「ケバブ」)のように現れ、実質的に脊髄円柱形状(「シシ」)に近い、細長い中心脊椎又は原繊維(伸長鎖状重合体結晶)に垂直に配向されることがある。
【0170】
場合によっては、改良された細孔形態及び/又は原繊維形態を有する改良されたセパレータを備える改良された電池は、電気抵抗の20%の減少、場合によっては、25%の減少、場合によっては、30%の減少、及び場合によっては、さらに(電池内部抵抗を減少させる)電気抵抗(「ER」)における30%より大きい下落を示してもよい。一方、このようなセパレータは、鉛蓄電池セパレータの他のキーとなる、好ましい機械特性のバランスは保持及び維持する。さらに、特定の実施形態において、本明細書中に説明されているセパレータは、既知のセパレータと比較して、より多くの電解質が細孔及び/又は空隙を通って流れる又は細孔及び/又は空隙を充填するように、新規の及び/又は改良された細孔形状を有する。セパレータにおける超高分子量ポリエチレンは、複数の伸長鎖状結晶(シシ構成)及び複数の折り畳み鎖状結晶(ケバブ構成)を備えるシシケバブ構成の重合体を備えてもよく、そのケバブ構成の平均頻度又は周期性は、(少なくともセパレータのリブ側の部位において)1nm~150nm、好ましくは10nm~120nm、及びより好ましくは20nm~100nmである。本セパレータのこれらの低ER実施形態のいくつかにおいて、本明細書中に説明されている鉛蓄電池用セパレータは、シリカ、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、及び沈降非晶質シリカからなる群より選ばれる充填材を備え、前記充填材内のOHのSi基に対する分子比は、29Si-NMRにより測定され、21:100~35:100、実施形態によっては、23:100~31:100、実施形態によっては、25:100~29:100、及び特定の好適な実施形態においては、27:100又はそれ以上の範囲内にある。
【0171】
特定の選択された実施形態において、開示されたセパレータは、電気抵抗、例えば、約200mΩcm2、180mΩcm2、160mΩcm2、140mΩcm2、120mΩcm2、100mΩcm2、80mΩcm2、60mΩcm2、50mΩcm2、40mΩcm2、30mΩcm2、又は20mΩcm2と同じくらいの大きさの電気抵抗の減少を示す。様々な実施形態において、本明細書中に説明されているセパレータは、同一の厚さの既知のセパレータに比べて、約20%以上のERの減少を示している。例えば、既知のセパレータは、60mΩcm2のER値を有してもよい。そして、同一の厚さにおける本発明にかかるセパレータは、約48mΩcm2未満のER値を有する。低ERを有する本明細書中に説明されているセパレータは、ダラミック社に所有され、2016年4月8日に出願された米国仮特許出願番号62/319959に説明された任意の又は全ての特性を有してもよく、この仮出願は、これによって、その全体が参照により組み込まれている。
【0172】
少なくとも選択された実施形態に従って、本開示は、浸水型鉛蓄電池のような、改良された鉛蓄電池、鉛蓄電池を含む改良されたシステム、及び/又は電池セパレータ、改良された電池セパレータ、このようなシステムを含む改良された車両、製造又は使用方法、又はそれらの組合せを対象にする。少なくとも特定の実施形態に従って、本開示は、改良された浸水型鉛蓄電池、このような電池用の改良された電池セパレータ、及び/又はこのような改良された浸水型鉛蓄電池の製造、検査、又は使用方法、又はそれらの組合せを対象にする。加えて、本明細書中には、浸水型鉛蓄電池における成層化を低減させ、電池寿命及び性能を伸ばすための方法、システム、電池、及び/又は電池セパレータが開示されている。
【0173】
実施形態によっては、改良された高伝導性セパレータは、低ERセパレータ、低水分損失セパレータ、分割又はセレーテッドリブセパレータであってもよく、及び/又は任意に一面又は両面にコーティングを含んでもよい。このようなコーティングは、界面活性剤又は他の材料を含んでもよい。実施形態によっては、コーティングは、例えば、本明細書中に参照により組み込まれている米国特許公報番号2012/0094183に説明されている1以上の材料を含んでもよい。このようなコーティングは、例えば、電池システムの過充電電圧を減少させ、その結果、格子腐食を減らして電池寿命を伸ばし、干上がり及び/又は水分損失を防いでもよい。
【0174】
本明細書中の様々な実施形態において利用されるセパレータは、1以上の添加剤を備えていてもよい。このような場合には、添加剤が特定の車両用の特定のストップ/スタート浸水型鉛蓄電池用のセパレータを強化するかも知れないからである。ポリオレフィンに存在するこのような添加剤の1つは界面活性剤である。一方、他のこのような添加剤は、1以上のラテックス添加剤を含んでもよい。適切な界面活性剤は、アルキル硫酸塩、アルキルアリールスルホネート塩、アルキルフェノール-アルキレンオキシド付加生成物、せっけん、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩のジアルキルエステル、第四級アミン、エチレンオキシド及び酸化プロピレンのブロック共重合体、及びモノ及びジアルキルホスフェートエステルの塩等の界面活性剤を含む。添加剤は、ポリオール脂肪酸エステル、ポリエトキシル化エステル、ポリエトキシル化脂肪アルコール、アルキルポリグリコシド及びそのブレンド等のアルキル多糖類、アミンエトキシレート、ソルビタン脂肪酸エステルエトキシレート、オルガノシリコーン系界面活性剤、エチレンビニルアセテートターポリマー、エトキシル化アルキルアリールリン酸エステル及びショ糖脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤であり得る。
【0175】
構造及び方法の先の記述は、説明のために提示されている。例は、最良の態様を含む例示の実施形態を開示し、また、任意の当業者が任意の装置又はシステムを制作及び使用する及び任意の組み込まれた方法を実行することを含んで、本発明を実行できるようにするために利用される。これらの例は、徹底的であること又は本発明を開示された詳細な工程及び/又は形式に限定することを意図していない。上記の教示の観点から、多数の変形例及び変形が可能である。本明細書中に説明されている特性は、任意の組合せで結合されてもよい。本明細書中に説明されている方法の工程は、物理的に可能な任意のシーケンスで実施されてもよい。本発明の特許性のある適用範囲は、添付の請求項により定義され、当業者が想到可能な他の例を含んでもよい。このような他の例は、請求項の文字言語と変わらない構造要素を有する場合、又は請求項の文字言語とごくわずかな違いを有する同等の構造要素を含む場合、請求項の適用範囲内にあると意図される。
【0176】
添付の請求項の組成及び方法は、本明細書中に説明されている特定の組成及び方法による適用範囲に限定されず、本明細書中に説明されている特定の組成及び方法は、請求項の数少ない態様の説明を意図している。機能的に同等な任意の組成及び方法は、請求項の適用範囲内にあることを意図している。本明細書中に示されている及び説明されているものに加えて、様々な組成及び方法の変形例が、添付の請求項の適用範囲内にあることを意図している。さらに、本明細書中に開示されている特定の代表的組成及び方法工程のみが具体的に説明されているが、組成及び方法工程の他の組合せも、たとえ具体的に列挙されていないにしても、添付の請求項の適用範囲内にあることが意図されている。このように、工程、要素、成分、又は構成の組合せは、本明細書中に明示的に又はそれ以下で言及されているが、工程、要素、成分、及び構成の他の組合せも明示的に述べられていないが、含まれる。
【0177】
明細書及び添付の請求項で利用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈で明確に異なったふうに指示していない限り、複数の指示対象を含む。範囲は、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」他の特定の値までとして、本明細書中に表されてもよい。このような範囲が表される場合、他の実施形態は1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、既述の「約」を用いて、値が近似として表される場合、特定の値は、他の実施形態を形成することが理解される。さらに、範囲の各々の端点は、他の端点に関して、及び他の端点から独立しての両方において重要であることが理解される。
【0178】
「任意の」又は「任意に」は、続いて説明されるイベント又は状況が起きても起きなくてもよいこと、及び記述が前記イベント又は状況が起きる場合及びそれが起きない場合を含むことを意味している。
【0179】
本明細書の説明及び請求項を通して、単語「を備える」及び「を備えている」及び「を備える」等のその単語の変化形は、「を含むが限定されない」を意味し、例えば、他の添加剤、成分、整数、又は工程を除外することを意図していない。「基本的に~から成る」及び「から成る」という用語は、本発明のより特定の実施形態に対して提供されるために「を備えている」及び「を含んでいる」の代わりに利用でき、これもまた開示される。「例示の」は、「の例」を意味し、好適な又は理想的な実施形態が指示することを伝えることを意図していない。「等の」は、限定的意味で利用されず、説明的又は例示の目的のために利用される。
【0180】
記されている以外に、明細書及び請求項で利用されている形状、寸法等を表す全ての数字は、少なくとも、請求項の適用範囲への同等物の原則の適用を制限する試みとしてではないとして理解されるべきであり、有効数字の数及び通常の丸み付けアプローチの観点から解釈されるべきである。
【0181】
別途定義されない限り、本明細書中に利用されている全ての技術及び科学用語は、開示されている発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されているものと同一の意味を有する。本明細書中に引用された出版物及びそれらが引用されている資料は、参照により具体的に組み込まれている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21
図22
図23
図24A
図24B
図24C
図25A
図25B
図25C
図25D
図25E
図25F
図26A
図26B
図26C
図26D
図26E
図27A
図27B
図28A
図28B
図29A
図29B
図29C
図30A
図30B
図30C
図30D
図30E
図30F
図31
図32A
図32B
図33A
図33B
図33C
図34A
図34B
図34C
図34D
図34E
図34F
図34G
図34H
図34I
図35
図36
図37
図38
図39A
図39B
図39C
図40
図41
図42
【手続補正書】
【提出日】2021-11-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸水型鉛蓄電池における酸混合を強化するための電池セパレータであって、
多孔質バックウェブ及び前記バックウェブの少なくとも一面から延びている複数の分割リブを備え、
前記複数の分割リブは前記セパレータの上部端面に相対する複数の行及び列上に配置され、少なくとも1つの前記行内において互いに異なる方向に傾いた分割リブを備え、
前記行内のリブは、前記電池の動きに平行な位置に前記セパレータが備えられた電池の動作中、酸混合を強化するように構成されている、電池セパレータ。
【請求項2】
前記列は、可変の列間隔で離されている請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項3】
前記行は、可変の行間隔で離されている請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項4】
前記セパレータは、ポリオレフィン、ゴム、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、セルロース誘導体、又はそれらの組合せからなる群より選ばれる請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項5】
前記セパレータは、充填材、界面活性剤、又はそれらの組合せからなる群より選ばれる1つを備える請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項6】
さらに、
吸収性ガラスマットを備える請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電池セパレータを備える鉛蓄電池。
【請求項8】
電池において成層化を低減させる方法であって、
電池を提供する工程であって、前記電池が1以上の正極及び1以上の負極を収容する工程と、
請求項1に記載の電池セパレータを1以上提供する工程と、
電解質を提供する工程と、
前記電池に動きを提供する工程と、
を備える方法。
【請求項9】
さらに、
前記複数の交互の正極及び負極を前記動きの方向に平行に設置する工程を備える請求項に記載の方法。
【請求項10】
さらに、
前記負極の周囲で前記1以上のセパレータの各々を包む工程を備える請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のリブは、前記正極に隣接する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
さらに、
移動及び停止の動きが可能な車両を提供する工程と、
前記複数のセパレータが前記移動及び停止の動きに平行であるように前記車両に前記電池をセットする工程と
を備える請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記ケース及び蓋は、前記電池の頂部の内部空間を画定し、
前記内部空間に1以上のバッフルを提供して、動きの間、前記動きに誘発される前記電解質の少なくとも一部位を前記電池に向け直す請求項に記載の方法。