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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093173
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】容器入り飲食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20220616BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220616BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20220616BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/52
A23L2/00 T
A23L29/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206309
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】391026058
【氏名又は名称】ザ コカ・コーラ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】秋元 剛
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 憲
【テーマコード(参考)】
4B041
4B117
【Fターム(参考)】
4B041LC01
4B041LD01
4B041LD10
4B041LE08
4B041LH05
4B041LH07
4B041LH08
4B041LH09
4B041LH10
4B041LK01
4B041LP17
4B041LP18
4B117LC02
4B117LE03
4B117LE10
4B117LG01
4B117LG03
4B117LG05
4B117LG07
4B117LG17
4B117LG24
4B117LK01
4B117LK04
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK13
4B117LK17
4B117LK18
4B117LK24
4B117LK30
4B117LL04
4B117LL06
4B117LL09
4B117LP13
(57)【要約】
【課題】 ゲル状飲食品や固形状物質含有飲食品等の様々な形態の容器入り飲食品や、従来の飲食品よりも風味等に優れた容器入り飲食品を製造することのできる、新たな容器入り飲食品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 容器入り飲食品の製造方法であって、
第1の成分及び第2の成分を各々独立して調製する工程、
前記第1の成分及び前記第2の成分を容器内に充填する工程、
を含む、
製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器入り飲食品の製造方法であって、
第1の成分及び第2の成分を各々独立して調製する工程、
前記第1の成分及び前記第2の成分を容器内に充填する工程、
を含む、
製造方法。
【請求項2】
前記第1の成分がゲル化剤を含み、前記第2の成分がゲル化促進剤を含む、請求項1記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項3】
前記ゲル化促進剤がミネラル成分である、請求項2に記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項4】
前記ゲル化剤が、第1の成分中に溶解又は分散している、請求項2又は3に記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項5】
前記第1の成分及び第2の成分のいずれか1種以上が固形状物質を含む、請求項1~4のいずれか1項記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項6】
前記固形状物質は、果肉、タピオカ、粒ゼリー、コンニャク、ナタデココ、果実繊維、柑橘さのう、根菜類、アロエ、とうもろこし、鶏肉からなる群から選択されるいずれか1種以上である、請求項1~5のいずれか1項記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項7】
前記固形状物質の大きさが1mm~20mm(最長対角線)である、請求項5又は6記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項8】
前記第1の成分及び第2の成分のいずれか1種以上が、前記容器内への充填前に殺菌される工程を含む、請求項1~7のいずれか1項記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項9】
前記第1の成分の殺菌温度と前記第2の成分の殺菌温度が異なる、請求項8記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項10】
前記容器は、プラスチック容器である、請求項1~9のいずれか1項記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項11】
前記容器を殺菌する工程を含む、請求項1~10のいずれか1項記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項12】
前記第1の成分及び第2の成分の充填工程における、第1の成分及び第2の成分の温度が、いずれも40℃以下である、請求項1~11のいずれか1項記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項13】
前記第1の成分及び第2の成分の容器内への充填工程が、常温・無菌下で行われる、請求項1~12のいずれか1項記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項14】
前記第1の成分の充填工程及び第2の成分の充填工程が順次行われ、先に実施する充填工程の充填量に対する後に実施する充填工程の充填量の比(充填量(後)/充填量(先))が、1~25である、請求項1~13のいずれか1項記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項15】
前記第1の成分及び第2の成分の充填工程以降に、加熱工程を含まない、請求項1~14のいずれか1項記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項16】
前記第1の成分及び第2の成分のいずれか1種以上が炭酸ガスを含む、請求項1~15のいずれか1項記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項17】
前記容器入り飲食品のガス含有量が、1.6~4.0GV(炭酸ガスボリューム)である、請求項16記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項18】
前記容器入り飲食品のpHが、2.5以上である、請求項1~17のいずれか1項記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項19】
前記容器入り飲食品の粘度が、100mPa・s以上である、請求項1~18のいずれか1項記載の容器入り飲食品の製造方法。
【請求項20】
1mm~20mm(最長対角線)の固形状物質を含む炭酸飲食品。
【請求項21】
ベース材としての液体と、ゲルと、が分離した飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な容器入り飲食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲食品のバリエーションの増大に伴い、ゼリー、ジュレ、プリン、ムースなどのゲル状飲食品や、果肉等の固形状物質を含有した飲食品が普及・拡大している。
ゲル状飲食品は、通常、各種容器(例えば、缶、瓶、プラスチックボトル、パウチ袋(容器)等)に収容された状態で流通しているが、予め製造タンクでゲル化させた飲食品を製造した後、これを流通用の容器に充填しようとすると、貯留中にゲル化が進み、固まって製造タンクから取り出すのが困難になるという問題が生じることがある。
そのため、容器入りゲル状飲食品を製造するに際しては、一般に、ゲル化開始前の飲食品前駆組成物を調製し、これを流通用容器に充填した後に加熱・冷却してゲル化させる方法が採用されている。
【0003】
しかしながら、このような方法の場合、前駆組成物を容器充填前にはゲル化させず充填後に初めてゲル化するようにする必要があるため、その調製・保存(貯留)・充填条件等の設定、管理が難しい。特に、寒天やゼラチンのような冷却により直ちにゲル化が起こるゲル化剤を用いた場合、充填前のゲル化を防ぐためには、前駆組成物の温度をその凝固点(ゲル化開始温度)より下がらないように保つ必要があるところ、前駆組成物を長時間にわたり高温で保持すると熱劣化し、充填後にゲル化させようとしてもゲル化しないこともある。
【0004】
このような問題は、従来、ゲル化剤の選択等により前駆液の凝固点を下げ、前駆液を比較的低い温度で保持できるようにすることによって解決されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-191453号公報
【0006】
【特許文献2】特開2007-68519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前駆組成物の凝固点を下げたとしても、依然として、前駆組成物を加温貯留する必要はあり、前駆組成物の保存・充填条件等の設定、管理が難しいことや熱劣化の問題があることには変わりがなく、従来技術では根本的な解決とはなっていない。
【0008】
また、果肉等の固形状物質を含有する飲食品に関しては、従来の製造方法では、製造ラインや、容器充填後の殺菌処理の制約上、小さなサイズの固形状物質しか含有させることができず、また、炭酸ガスを含む飲食品とすることも困難である。
【0009】
さらに、従来の製造方法では、全成分を容器内に充填後、殺菌処理を行っているため、各成分毎に適用する殺菌温度を変えることができず、飲食品の風味等が落ちるという課題もある。
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、ゲル状飲食品や固形状物質含有飲食品等の様々な形態の容器入り飲食品や、従来の飲食品よりも風味等に優れた容器入り飲食品を製造することのできる、新たな容器入り飲食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果、第1成分と第2成分とを容器充填前に各々独立に調製した後、第1の成分及び第2の成分を容器内に充填することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
容器入り飲食品の製造方法であって、
第1の成分及び第2の成分を各々独立して調製する工程、
前記第1の成分及び前記第2の成分を容器内に充填する工程、
を含む、
製造方法。
[2]
前記第1の成分がゲル化剤を含み、前記第2の成分がゲル化促進剤を含む、上記[1]記載の容器入り飲食品の製造方法。
[3]
前記ゲル化促進剤がミネラル成分である、上記[2]記載の容器入り飲食品の製造方法。
[4]
前記ゲル化剤が、第1の成分中に溶解又は分散している、上記[2]又は[3]に記載の容器入り飲食品の製造方法。
[5]
前記第1の成分及び/又は第2の成分が固形状物質を含む、上記[1]~[4]のいずれか記載の容器入り飲食品の製造方法。
[6]
前記固形状物質は、果肉、タピオカ、粒ゼリー、コンニャク、ナタデココ、果実繊維、柑橘さのう、根菜類、アロエ、とうもろこし、鶏肉からなる群から選択されるいずれか1種以上である、上記[1]~[5]のいずれか記載の容器入り飲食品の製造方法。
[7]
前記固形状物質の大きさが1mm~20mm(最長対角線)である、上記[5]又は[6]記載の容器入り飲食品の製造方法。
[8]
前記第1の成分及び/又は第2の成分が、前記容器内への充填前に殺菌される工程を含む、上記[1]~[7]のいずれか記載の容器入り飲食品の製造方法。
[9]
前記第1の成分の殺菌温度と前記第2の成分の殺菌温度が異なる、上記[8]記載の容器入り飲食品の製造方法。
[10]
前記容器は、プラスチック容器である、上記[1]~[9]のいずれか記載の容器入り飲食品の製造方法。
[11]
前記容器を殺菌する工程を含む、上記[1]~[10]のいずれか記載の容器入り飲食品の製造方法。
[12]
前記第1の成分及び第2の成分の充填工程における、第1の成分及び第2の成分の温度が、いずれも40℃以下である、上記[1]~[11]のいずれか記載の容器入り飲食品の製造方法。
[13]
前記第1の成分及び第2の成分の容器内への充填工程が、常温・無菌下で行われる、上記[1]~[12]のいずれか記載の容器入り飲食品の製造方法。
[14]
前記第1の成分の充填工程及び第2の成分の充填工程が順次行われ、先に実施する充填工程の充填量に対する後に実施する充填工程の充填量の比(充填量(後)/充填量(先))が、1~25である、上記[1]~[13]のいずれか記載の容器入り飲食品の製造方法。
[15]
前記第1の成分及び第2の成分の充填工程以降に、加熱工程を含まない、上記[1]~[14]のいずれか記載の容器入り飲食品の製造方法。
[16]
前記第1の成分及び/又は第2の成分が炭酸ガスを含む、上記[1]~[15]のいずれか記載の容器入り飲食品の製造方法。
[17]
前記容器入り飲食品のガス含有量が、1.6~4.0GV(炭酸ガスボリューム)である、上記[16]記載の容器入り飲食品の製造方法。
[18]
前記容器入り飲食品のpHが、2.5以上である、上記[1]~[17]のいずれか記載の容器入り飲食品の製造方法。
[19]
前記容器入り飲食品の粘度が、100mPa・s以上である、上記[1]~[18]のいずれか記載の容器入り飲食品の製造方法。
[20]
1mm~20mm(最長対角線)の固形状物質を含む炭酸飲食品。
[21]
ベース材としての液体と、ゲルと、が分離した飲食品。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、ゲル状飲食品や固形状物質含有飲食品等の様々な形態の容器入り飲食品を製造することができる。また、従来の飲食品よりも、より風味等に優れた容器入り飲食品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
本実施形態の容器入り飲食品の製造方法は、
第1の成分及び第2の成分を各々独立して調製する工程、
前記第1の成分及び前記第2の成分を容器内に充填する工程、
を含む、
製造方法である。
ここで、「飲食品」には、食品と飲料の両者が含まれる。
【0016】
本実施形態の容器入り飲食品の製造方法は、第1の成分がゲル化剤を含み、第2の成分がゲル化促進剤を含んでいてもよい。この場合、本実施形態の製造方法により、ゲル状飲食品を製造することができる。
【0017】
本実施形態の製造方法によれば、単に、ゲル化剤とそのゲル化促進剤とを別々の供給源から容器に充填するだけで容器入りゲル状飲食品を製造することができ、従来技術のように前駆組成物を高温保持する必要がないので、容器入りゲル状飲食品を、簡便な方法で、しかも低不良品発生率で製造することができる。
【0018】
ゲル状食品の具体例としては、例えば、ゼリー、ジュレ、スープ、プリン、ムース、ババロア、杏仁豆腐、水羊羹等が挙げられ、ゲル状飲料の具体例としては、例えば、ゼリー飲料、プリン様飲料、ヨーグルト様飲料、スムージー様飲料等が挙げられる。なお、これらのゲル状飲食品は、機能性飲食品や栄養補助飲食品、さらには医薬品であってもよい。
【0019】
また、ゲル状飲食品の粘度に限定はないが、200mPa・s以上であることが好ましく、例えば、500mPa・s以上であってもよいし、1000mPa・s以上であってもよいし、2000mPa・s以上であってもよい。
【0020】
また、本実施形態の製造方法は、たとえば、ゲル化剤を含む第1の成分と、ベース材となる液体を含む第2の成分とを、各々独立して調製した後、容器内に充填することで、液体とゲルとが適度に分離した飲食品や、液体中にゲルが分散した飲食品等の、従来の製造方法では困難であった、新食感の飲食品を製造することができる。
【0021】
ゲル化剤の具体例として飲食品の分野で利用されている各種ゲル化剤を使用することができ、具体例としては増粘多糖類が挙げられる。また、ゲル化促進剤とは、ゲル化剤のゲル化を促進させる成分であり、ゲル化剤の種類に応じて、陽イオンを含むミネラル成分、乳成分、糖、アルコール等が挙げられる。
【0022】
ゲル化剤としては、特に限定されないが、常温においてそれ単独ではゲル化が実質的に開始しないものが好ましい。もしくは、ゲル化していても常温で製造工程中にポンプによる配管内送液が可能な濃度に調整したゲル化剤組成が好ましく、液粘度が500mPa・s以下であることが好ましい。このようなゲル化剤としては、例えば、ペクチン、ジェランガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、グァーガム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0023】
また、上記ゲル化剤とゲル化促進剤の組合せとしては、例えば、ペクチン(LMペクチン)とカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の2価の陽イオン;ジェランガムと1価又は2価の陽イオン;タマリンドシードガムと糖やアルコール;カラギーナンと1価又は2価の陽イオン;グァーガムとキサンタンガム;アルギン酸ナトリウムと2価の陽イオン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
ゲル化剤を含む第1の成分には、ゲル化剤の他に、水や乳成分等の飲食品のベース(主成分)となる材料や、甘味料、酸味料、果汁、香料、着色料、保存料、pH調整剤、乳化剤、各種安定剤や、果肉、タピオカ、粒ゼリー等の食用固形物等を含んでもよい。
【0025】
第1の成分中のゲル化剤の濃度に限定はなく、飲食品の粘度や食感等に応じて適宜決定することができ、例えば、0.5~5.0質量%とすることができる。
【0026】
第1の成分の調製方法に限定はなく、水や乳成分等の飲食品のベースとなる材料を溶媒又は分散媒として、これにゲル化剤及び必要に応じて添加されるその他の添加剤を混合し、溶解又は分散させればよい。
【0027】
なお、ゲル化剤は、第1の成分中(第1の成分中のベース材料中)に溶解していても分散していてもよい。ゲル化剤を第1の成分中に予め溶解させず、第2の成分と混合した後にゲル化させるようにすると、ゲル化の程度を任意に調整できるというメリットがある。
【0028】
ゲル化促進剤を含む第2の成分には、その他に、水や乳成分等の飲食品のベースとなる材料や、甘味料、酸味料、果汁、香料、着色料、保存料、pH調整剤、乳化剤、各種安定剤や、果肉、タピオカ、粒ゼリー等の食用固形物等を含んでもよい。
【0029】
第2の成分中のゲル化促進剤の濃度に限定はなく、飲食品の粘度や食感等に応じて適宜決定することができ、例えば、0.1~3.0質量%とすることができる。
【0030】
第2の成分の調製方法に限定はなく、水や乳成分等の飲食品のベースとなる材料を溶媒又は分散媒として、これにゲル化促進剤及び必要に応じて添加されるその他の添加剤を混合し、溶解又は分散させればよい。
【0031】
本実施形態の製造方法においては、第1の成分及び/又は第2の成分が固形状物質を含んでいてもよい。この場合、本実施形態の製造方法により、固形状物質含有飲食品を製造することができる。
【0032】
固形状物質としては、特に限定されないが、例えば、動植物由来の固形片又は塊をいい、例えば、果肉、タピオカ、粒ゼリー、コンニャク、ナタデココ、果実繊維、柑橘さのう、根菜類、アロエ、とうもろこし、鶏肉等が挙げられる。
【0033】
固形状物質の大きさは特に限定されないが、最長対角線の長さで、好ましくは1.0~20mmであり、より好ましくは1.0~10.0mmであり、さらに好ましくは1.0~7.0mmである。特に本実施形態の製造方法によれば、第1の成分及び第2の成分を各々独立して調製した後、容器内に各成分を充填することで、従来の製法のような製造ラインや殺菌処理上の制約がないため、サイズの大きな固形状物質を含む飲食品や、固形状物質の含有量の多い飲食品を簡便な方法で製造することができる。例えば、サイズの大きな固形状物質を含むスラリーと、飲食品のベース材料とを各々独立して調製し、それらを容器内に別々に充填することで、従来の飲食品よりも食感等に優れた固形状物質含有飲食品を製造することができる。さらに、後述するように、本実施形態の製造方法を用いることで、固形状物質を含む炭酸飲食品や、低酸性若しくは中性の飲食品を製造することができる。
【0034】
本実施形態の製造方法においては、第1の成分及び/又は第2の成分が、容器内への充填前に殺菌される工程を含んでいてもよい。この場合の殺菌方法に限定はなく、例えば、高温殺菌、超高温殺菌等の加熱殺菌が挙げられる。
【0035】
本実施形態の製造方法においては、第1の成分及び第2の成分を各々独立に調製するため、第1の成分の殺菌温度と第2の成分の殺菌温度を異なる温度とすることができる。従来の製造方法では、全成分を容器内に充填後、殺菌処理を行っていたため、各成分毎に適用する殺菌温度を変えることができず、飲食品の風味等が落ちるという課題がある。この点、本実施形態の製造方法では、第1の成分の殺菌温度と第2の成分の殺菌温度を異なる温度とすることで、より風味等に優れた飲食品を製造することができるという利点がある。例えば、ミルク入りコーヒーの場合、ミルクの殺菌温度を高めに設定し、コーヒーの殺菌温度は風味が損なわないように低めに設定することで、よりコーヒー風味に優れたミルク入りコーヒーを製造することができる。
【0036】
従来の製造方法においては、全成分を容器内に充填した後、殺菌処理を行っていたため、容器としては殺菌温度に耐えられるもの(例えば、缶や瓶)を選択する必要があった。一方、本実施形態の方法においては、容器内への充填前に、それぞれの成分に殺菌処理を施すことができるため、容器に耐熱性が要求されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン等のプラスチック容器(プラスチックボトル)を用いることができる。
【0037】
本実施形態の製造方法においては、容器を殺菌する殺菌工程を含んでいてもよい。この場合、第1の成分と第2の成分を充填する前に予め容器を殺菌しておくことになる。殺菌方法に限定はなく、例えば、高温殺菌等の加熱殺菌、薬剤殺菌、電子線殺菌等が挙げられる。
【0038】
第1の成分の充填工程と第2の成分の充填工程とは、同時に行ってもよいし、順次行ってもよい。順次行う場合、その順番に限定はなく、第1の成分の充填工程を先に実施しても、第2の成分の充填工程を先に実施してもよい。例えば、第1の成分の充填工程を先に行い、所定量を充填後、第2の成分の充填工程を行い、所定量を充填してもよいし、その逆であってもよい。また、第1の成分の充填工程及び第2の成分の充填工程を交互に各々複数回行ってもよい。
【0039】
第1及び/又は第2の成分の充填工程中に、容器に振動を与えたり、容器を振とうするなどの撹拌操作を行って、第1の成分と第2の成分の混合を促進させてもよい。なお、第1の成分の充填工程と第2の成分の充填工程を同時に行うと、第1の成分と第2の成分を均一に混合し易い傾向にあり、特段の撹拌操作を施さなくとも両者を均一に混合することができる傾向にある。
【0040】
第1の成分及び第2の成分の充填工程における、各成分の充填量に限定はなく、容器の容量等に応じて適宜設定することができる。例えば、第1成分20mlに対して、第2成分480mlで充填することができる。
【0041】
また、第1の成分の充填工程と第2の成分の充填工程を順次実施する場合、先に実施する充填工程の充填量に対する後に実施する充填工程の充填量の比(充填量(後)/充填量(先))が、1~25であると、第1の成分と第2の成分の混合効率がより良好となる傾向にある。
【0042】
第1の成分及び第2の成分の充填工程を実施する際の温度(第1、第2の成分の温度)に限定はなく、必要に応じて、第1及び第2の成分を加熱、冷却してもよい。もっとも、ゲル化剤やその他の成分の熱劣化を防ぐという観点からは、第1及び第2の成分の充填工程は、非加熱下で行うことが好ましい。具体的には、各充填工程における第1及び第2の成分の温度は、共に、40℃以下であることが好ましく、35℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましい。また、製造工程の簡素化という観点からは、第1及び第2の成分の充填工程は、常温下で行うことが好ましい。
【0043】
また、上述したとおり、本実施形態においては、充填工程以降に第1の成分及び/又は第2の成分を加熱する工程を行う必要はないため、内容物の熱で容器を殺菌するホットパック充填を行うメリットは特にない。したがって、容器、並びに、第1及び第2の成分を事前に殺菌しておき、常温・無菌下で第1及び第2の成分の充填工程を実施する、いわゆる無菌充填を採用することも好ましい。
【0044】
無菌充填を採用する場合には、容器として、一般に耐熱性が低いとされる最小厚みが200μm以下、或いは150μm、さらには100μm以下の軽量プラスチック(PET)容器を使用することもできる。また、無菌充填を採用する場合には、内容物を酸性に保つ必要もなくなるため、飲食品のpHを4.0以上としてもよい。
【0045】
また、本実施形態においては、充填工程後に、必ずしも第1の成分及び/又は第2の成分を加熱する必要はないため、第1の成分及び/第2の成分を調製する際に炭酸ガスを圧入するなどして第1の成分及び/第2の成分を炭酸ガス含有物とすることにより、内容物を炭酸飲食品とすることができる。
【0046】
本実施形態の容器入り飲食品中のガス含有量に限定はないが、例えば、ゼリー飲料の場合、1.6~4.0GV(COGV、ガスボリューム)とすると、ゼリー状という口当たりのなめらかさを有しながらも、炭酸飲料の爽快感を併せ持つ飲料を実現することができる。また、果肉入り飲料の場合、1.8~3.8GVとすると、炭酸ガスが固形物の中にも入り込み、また、固形物の触感と炭酸ガスの触感が、非炭酸固形入り飲料とは異なる新しい感覚の炭酸飲料を実現することができる。
【0047】
ここで、ガスボリューム(GV)とは、炭酸飲食品中の炭酸ガス量を表す単位であり、標準状態(1気圧、20℃)における、炭酸飲食品の体積に対する炭酸飲食品中に溶解した炭酸ガスの体積の比をいう。
【0048】
本実施形態においては、第1及び第2の成分を充填する充填工程に加えて、さらに、その他の成分を容器に充填するその他の充填工程を有していてもよい。例えば、第1及び第2の成分に添加してもよいとして先に挙げた添加剤(例えば、甘味料、酸味料、果汁、香料、着色料、保存料、pH調整剤、乳化剤、各種安定剤、食用固形物等)を、第1、第2の成分に含有させず、第1及び第2の成分の充填工程とは別のその他の充填工程において容器に充填してもよい。
【0049】
その他の充填工程の充填方法、時期に限定はなく、添加剤の添加目的、形状・形態、その他の特性に応じて適宜好ましい方法、順序で容器に充填すればよい。ただし、本実施形態の方法が容器を殺菌する工程を含む場合には、その他の充填工程は、少なくとも容器殺菌後に実施することが好ましい。
【0050】
本実施形態においては、飲食品がゲル状飲食品の場合、第1及び第2の成分の充填工程の後に、さらに、容器に充填された内容物を撹拌する撹拌工程や、内容物を充填した容器を冷却する冷却工程を設け、内容物のゲル化を促進させることもできる。上記撹拌工程における撹拌方法に限定はなく、例えば、容器に振動を与えたり、反転、振とうする方法が挙げられる。また、上記冷却工程における冷却温度にも限定はなく、例えば、0~25℃とすることができる。
【0051】
上述したとおり、本実施形態の製造方法によれば、ゲル状飲食品や固形状物質含有飲食品等の様々な形態の容器入り飲食品を製造することができ、また、従来の飲食品よりも、より風味等に優れた容器入り飲食品を製造することができる。さらに、例えば、第1の成分と第2の成分を独立して調製した後、容器に充填することで、第1の成分と第2の成分とが2層に分離した飲食品等の従来の方法では製造できなかった新たな食感の容器入り飲食品を製造することできる。より具体的には、例えば、最長対角線が1~20mmの固形状物質を含む炭酸飲食品や、ベース材としての液体とゲルとが分離した飲食品等が挙げられる。
【実施例0052】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
以下の実施例においては、各物性は以下の方法に従って測定した。
[pH]
pHの測定は、試料の液温を20℃にした後、pHメーター(東亜ティーケーケー株式会社製、MH-25R)を使用して行った。
【0054】
[粘度]
粘度の測定は、試料の液温を20℃に調整し、B型粘度計(東機産業株式会社製、TVB-10型)を用いて、TM2ローターを液中に入れ、回転数30rpmで60秒間回転させた直後の粘度の値を読み取った。
【0055】
[GV(ガスボリューム)]
炭酸ガスボリュームの測定は、ガスボリューム測定装置GVA-500C(京都電子工業株式会社製)を用いて行った。具体的には、試料の液温を20℃に調整した炭酸飲料をガス内圧計に固定し、一度ガス内圧計活栓を開いてガスを抜き、再度活栓を閉じ、ガス内圧計を振り動かして指針が一定の位置に達した時の値を読み取った。
【0056】
[Brix]
Brixの測定は、試料の液温を20℃に調整し、Density Brix計(京都電子工業株式会社製、DA-510C)を使用して行った。
【0057】
[実施例1](パイン果肉入り飲料)
以下の組成を有する第1及び第2の成分を調製した。具体的には、第1の成分については、各原料を調合タンク1内で常温で混合することにより、また、第2の成分については、各原料を調合タンク2内で常温で混合することにより調製した。
【0058】
<第1の成分>
【表1】

pH:3.7
粘度:250mPa・s
【0059】
<第2の成分>
【表2】

pH:3.7
粘度:3mPa・s
【0060】
第1及び第2の成分を、各々、115℃で60秒加熱処理した後、予め殺菌しておいた500mLのPET製の容器に、常温・無菌下で、第2/第1の充填容量比率が3.5になるように充填した。得られたパイン果肉入り飲料のpHは3.7、粘度は20mPa・sであった。
【0061】
[実施例2](生姜片入り炭酸飲料)
以下の組成を有する第1及び第2の成分を調製した。具体的には、第1の成分については、各原料を調合タンク1内で常温で混合することにより、また、第2の成分については、各原料を調合タンク2内で常温で混合することにより調製した。
【0062】
<第1の成分>
【表3】

pH:2.2
Brix:30.0
【0063】
<第2の成分>
【表4】

pH:2.7
Brix:5.8
GV:4.0
【0064】
第1の成分を、96℃で30秒加熱処理した後、予め殺菌しておいた380mLのPET製の容器に、常温・無菌下で、第2の成分を96℃で30秒加熱処理した後、10℃以下に冷却して炭酸ガスを圧入し、予め殺菌しておいた380mLのPET製の容器に、15℃以下・無菌下で、第2/第1の充填容量比率が9.0になるように充填した。得られた生姜片入り炭酸飲料のpHは2.6、Brixは8.2、GVは3.6であった。
【0065】
[実施例3](りんご果肉入り炭酸飲料)
以下の組成を有する第1及び第2の成分を調製した。具体的には、第1の成分については、各原料を調合タンク1内で常温で混合することにより、また、第2の成分については、各原料を調合タンク2内で常温で混合することにより調製した。
【0066】
<第1の成分>
【表5】

pH:3.4
Brix:4.5
粘度:250mPa・s
【0067】
<第2の成分>
【表6】

pH:3.4
Brix:17.8
【0068】
第1の成分を、110℃で30秒加熱処理した後、予め殺菌しておいた320mLのPET製の容器に、常温・無菌下で、第2の成分をブレンダーで水と容積比1.0:1.0で希釈した後、110℃で30秒加熱処理し、10℃以下に冷却して炭酸ガスを圧入し、予め殺菌しておいた320mLのPET製の容器に、15℃以下・無菌下で、第2/第1の充填容量比率が9.0になるように充填した。得られたりんご果肉入り炭酸飲料のpHは3.3、Brixは8.7、GVは3.3であった。
【0069】
[実施例4](カフェラテ飲料)
以下の組成を有する第1及び第2の成分を調製した。具体的には、第1の成分については、各原料を調合タンク1内で常温で混合することにより、また、第2の成分については、抽出機で抽出したコーヒー、および、各原料を調合タンク2内で常温で混合することにより調製した。
【0070】
<第1の成分>
【表7】

pH:7.4
Brix:15.2
【0071】
<第2の成分>
【表8】

pH:5.5
Brix:2.3
【0072】
第1の成分を、139℃で30秒以上加熱処理し、第2の成分を、132℃で30秒以上加熱処理した。次いで、予め殺菌しておいた280mLのPET製の容器に、常温・無菌下で、第2/第1の充填容量比率が1.0になるように充填し、容器入り飲食品を得た。得られたカフェラテ飲料のpHは6.5、Brixは9.0であった。
【0073】
[実施例5](とろみ紅茶飲料)
以下の組成を有する第1及び第2の成分を調製した。具体的には、第1の成分については、各原料を調合タンク1内で常温で混合することにより、また、第2の成分については、抽出機で抽出した紅茶、および、各原料を調合タンク2内で常温で混合することにより調製した。
【0074】
<第1の成分>
【表9】

pH:3.8
Brix:10.5
粘度:80mPa・s
【0075】
<第2の成分>
【表10】

pH:3.8
Brix:10.5
粘度:290mPa・s
【0076】
第1の成分を、110℃で30秒以上加熱処理し、第2の成分を、110℃で30秒以上加熱処理した。次いで、予め殺菌しておいた280mLのPET製の容器に、常温・無菌下で、第2/第1の充填容量比率が1.0になるように充填し、容器入り飲食品を得た。得られたとろみ紅茶飲料のpHは3.8、Brixは10.5、粘度は600mPa・sであった。