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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093251
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
H01G4/30 516
H01G4/30 201D
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130627
(22)【出願日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0173403
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジン キュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、スン イル
(72)【発明者】
【氏名】カン、ス ジ
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、ムン セオン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AC10
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE23
5E082EE27
(57)【要約】
【課題】積層型電子部品を提供する
【解決手段】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層、及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体に配置されて上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記内部電極はNi及びDyを含み、上記Ni及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比をC0としたときに、0.02at%≦C0≦5at%を満たす。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層、及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体に配置されて前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記内部電極はNi及びDyを含み、前記Ni及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比をC0としたときに、0.02at%≦C0≦5at%を満たす、積層型電子部品。
【請求項2】
前記内部電極のうち前記誘電体層との界面から前記第1方向に2nm離隔した領域における、Ni及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比をC1としたときに、C0<C1を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記C1が0.07at%≦C1≦7at%を満たす、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記内部電極のうち前記第1方向の中央における、Ni及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比をC2としたときに、C2≦2.3at%及びC2<C0<C1を満たす、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記C1及びC2が3.04≦C1/C2≦70を満たす、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記C0が0.02at%≦C0≦1at%を満たす、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記C0が0.05at%≦C0≦5at%を満たす、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記内部電極のうち前記誘電体層との界面から前記第1方向に2nm離隔した領域における、Ni及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比をC1としたときに、0.7at%≦C1≦7at%及びC0<C1を満たす、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記内部電極のうち前記第1方向の中央における、Ni及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比をC2としたときに、0.05at%≦C2≦2.3at%及びC2<C0<C1を満たす、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記C1及びC2が3.04≦C1/C2≦14を満たす、請求項9に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記C0が0.5at%≦C0≦5at%以下を満たす、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記内部電極がDy酸化物を含む、請求項11に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記Dy酸化物は、前記内部電極と前記誘電体層の界面から前記内部電極の厚さの1/3の地点までの領域に配置される、請求項12に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記Dy酸化物がDyである、請求項13に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記内部電極は複数のNi結晶粒を含み、前記複数のNi結晶粒間の結晶粒系に含まれたDyの含量が、前記複数のNi結晶粒中に含まれたDyの含量よりも高い、請求項1から14のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
前記内部電極がBaTiOを含まない、請求項1から15のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項17】
前記内部電極の平均厚さが0.45μm以下である、請求項1から16のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項18】
前記誘電体層の平均厚さが0.45μm以下である、請求項1から17のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項19】
第2方向の最大サイズが0.44mm以下であり、第3方向の最大サイズが0.22mm以下である、請求項1から18のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項20】
誘電体層、及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体に配置されて前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記内部電極が、Dy酸化物を含み、且つBaを含まない、請求項1から19のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項21】
前記内部電極に含まれたNi及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比をC0としたときに、0.02at%≦C0≦5at%を満たす、請求項20に記載の積層型電子部品。
【請求項22】
前記内部電極のうち前記誘電体層との界面から前記第1方向に2nm離隔した領域における、Ni及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比をC1としたときに、C0<C1を満たす、請求項21に記載の積層型電子部品。
【請求項23】
前記C1が0.07at%≦C1≦7at%を満たす、請求項22に記載の積層型電子部品。
【請求項24】
前記内部電極のうち前記第1方向の中央における、Ni及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比をC2としたときに、C2≦2.3at%及びC2<C0<C1を満たす、請求項23に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の1つである積層型セラミックキャパシター(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピューター、スマートフォン、及び携帯電話などの種々の電子製品のプリント回路基板に取り付けられ、電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサーである。
【0003】
かかる積層型セラミックキャパシターは、小型でありながらも高容量が保障され、且つ実装が容易であるという利点を有するため、種々の電子装置の部品として用いられることができる。近年、電子装置の部品の小型化に伴い、積層型セラミックキャパシターの小型化及び高容量化の要求が増大している。
【0004】
積層型セラミックキャパシターの小型化及び高容量化のためには、内部電極及び誘電体層の厚さを薄く形成できる技術が必要である。
【0005】
しかしながら、内部電極と誘電体層の薄層化により、内部電極及び誘電体層の材料が微粒化しているが、材料が微粒化するほど融点が減少し、これに伴って熱収縮開始温度が低くなる。特に、金属は、微粒化による熱収縮開始温度減少率がセラミックより大きいため、材料が微粒化するほど、誘電体層と内部電極の熱収縮開始温度の差が大きくなる。これにより、内部電極の連結性が低下し得て、平滑度が減少し得るため、信頼性が低下する恐れがある。
【0006】
誘電体層と内部電極の熱収縮開始温度の差を減らすための従来技術としては、内部電極ペーストにセラミック添加剤としてBaTiOを添加する方法がある。しかし、内部電極を薄く形成するために内部電極の材料が微粒化し、材料が微粒化するほど、材料の表面積の増加、熱的安定性の減少などにより、セラミック添加剤であるBaTiOの添加量が増加するようになる。セラミック添加剤であるBaTiOの添加量が増加すると、内部電極の膜密度が減少し、焼成工程が進行するにつれてセラミック添加剤であるBaTiOが誘電体層に移動するようになるため、誘電体層の厚さが厚くなり、容量が減少し得る。
【0007】
したがって、従来のセラミック添加剤であるBaTiOに代替可能な新しい添加剤の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の様々な目的の1つは、積層型電子部品の信頼性を向上させることにある。
【0009】
本発明の様々な目的の1つは、MTTF(平均故障時間、Mean Time To Failure)が向上した積層型電子部品を提供することにある。
【0010】
本発明の様々な目的の1つは、破壊電圧(BDV、Breakdown voltage)が向上した積層型電子部品を提供することにある。
【0011】
本発明の様々な目的の1つは、信頼性が高い小型及び高容量の積層型電子部品を提供することにある。
【0012】
但し、本発明の目的は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層、及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体に配置されて上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記内部電極はNi及びDyを含み、上記Ni及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比をC0としたときに、0.02at%≦C0≦5at%を満たす。
【発明の効果】
【0014】
本発明の様々な効果の1つは、内部電極にDyを含ませることで、積層型電子部品の信頼性を向上させたことである。
【0015】
但し、本発明の多様で且つ有益な利点と効果は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
図2図1のI-I'の断面図を概略的に示したものである。
図3図1のII-II'の断面図を概略的に示したものである。
図4】本発明の一実施形態による誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
図5図2のP1領域を拡大して示した図である。
図6】本発明の一実施形態による内部電極の断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)によりスキャンした写真である。
図7】本発明の一実施形態による内部電極の断面で、SEM-EDSを用いてDy元素の分布を観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0018】
なお、本発明を明確に説明すべく、図面において説明と関係ない部分は省略し、図面に示された各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜のために任意で示したものであり、本発明が必ずしも図示されたものに限定されない。また、同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に異なる趣旨の説明がされていない限り、他の構成要素を除外する趣旨ではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0019】
図面において、第1方向は、積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は、長さ(L)方向、第3方向は、幅(W)方向と定義されることができる。
【0020】
[積層型電子部品]
図1は本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、図2図1のI-I'の断面図を概略的に示したものであり、図3図1のII-II'の断面図を概略的に示したものであり、図4は本発明の一実施形態による誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示した分解斜視図であり、図5図2のP1領域を拡大して示した図である。
【0021】
以下、図1から図5を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳細に説明する。
【0022】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111、及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含む本体110と、上記本体に配置されて上記内部電極と連結される外部電極131、132と、を含み、上記内部電極はNi及びDyを含み、上記Ni及びDyの含量の和に対する上記Dyの含量が0.02at%以上5at%以下である。
【0023】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0024】
本体110の具体的な形状は特に制限されないが、図示されたように、本体110は、六面体形状またはそれに類似の形状からなることができる。焼成過程における、本体110に含まれているセラミック粉末の収縮により、本体110は、完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0025】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2と、上記第1及び第2面1、2と連結されて第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4と、第1及び第2面1、2と連結され、且つ第3及び第4面3、4と連結されて第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6と、を有することができる。
【0026】
本体110を成す複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111の間の境界は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いずには確認が困難な程度に一体化されていることができる。
【0027】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量を得ることができれば特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、またはチタン酸ストロンチウム系材料などが使用できる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例として、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCa)TiO、Ba(Ti1-yCa)O、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O、またはBa(Ti1-yZr)Oなどが挙げられる。
【0028】
上記誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末に、本発明の目的に応じて、種々のセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0029】
一方、誘電体層111の厚さtdは、特に限定する必要はない。
【0030】
但し、一般に、誘電体層111を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に、誘電体層111の厚さtdが0.45μm以下である場合には、微粒の材料を用いることにより誘電体層と内部電極の熱収縮開始温度の差が大きくなるため、デラミネーション(delamination)などの不良が発生し、信頼性が低下する可能性が高くなる。
【0031】
後述のように、本発明の一実施形態によると、内部電極に含まれたDyの含量を、Niの含量を考慮して調節することで、誘電体層と内部電極の熱収縮開始温度の差を減らすことができるだけでなく、誘電率を減少させることなく熱的安定性を向上させることができるため、誘電体層111の厚さtdを0.45μm以下に薄く確保しながらも、信頼性を向上させることができる。
【0032】
したがって、誘電体層111の厚さtdが0.45μm以下である場合に、本発明による効果がより顕著になることができ、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
【0033】
上記誘電体層111の厚さtdは、上記第1内部電極121と第2内部電極122との間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味し得る。
【0034】
上記誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージスキャンして測定することができる。
【0035】
例えば、本体110の幅方向の中央部で切断した長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)によりスキャンした画像から抽出された任意の誘電体層において、長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。
【0036】
上記等間隔である30個の地点で測定した厚さは、第1及び第2内部電極121、122が互いに重なる領域を意味する容量形成部Aで測定されることができる。
【0037】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含み、容量が形成される容量形成部Aと、上記容量形成部Aの上部及び下部に形成されたカバー部112、113と、を含むことができる。
【0038】
また、上記容量形成部Aは、キャパシターの容量形成に寄与する部分であり、誘電体層111を挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層することで形成されることができる。
【0039】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Aの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層することで形成されることができ、基本的に、物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0040】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。
【0041】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0042】
一方、カバー部112、113の厚さは、特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtpは20μm以下であることができる。
【0043】
また、上記容量形成部Aの側面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0044】
マージン部114、115は、本体110の第6面6に配置されたマージン部114と、第5面5に配置されたマージン部115と、を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両側面に配置されることができる。
【0045】
マージン部114、115は、図3に示されたように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面において、第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面の間の領域を意味し得る。
【0046】
マージン部114、115は、基本的に、物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0047】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上に、マージン部が形成されるべき箇所を除いて導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであることができる。
【0048】
また、内部電極121、122による段差を抑えるために、積層後に内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Aの両側面に、幅方向に積層することでマージン部114、115が形成されてもよい。
【0049】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に積層される。
【0050】
内部電極121、122は第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0051】
図2を参照すると、第1内部電極121は、第4面4と離隔して第3面3を介して露出し、第2内部電極122は、第3面3と離隔して第4面4を介して露出することができる。
【0052】
この際、第1及び第2内部電極121、122は、その間に配置された誘電体層111により互いに電気的に分離されることができる。
【0053】
図4を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成することで形成されることができる。
【0054】
本発明の一実施形態によると、内部電極121、122はNi及びDyを含み、上記Ni及びDyの含量の和に対するDyの含量(Dy/(Ni+Dy))の原子比をC0としたときに、0.02at%≦C0≦5at%を満たす。
【0055】
積層型電子部品の小型化及び高容量化のためには、内部電極と誘電体層を薄くする必要がある。内部電極と誘電体層の薄層化により、内部電極及び誘電体層の材料は微粒化し、材料が微粒化するほど融点が減少し、これに伴って熱収縮開始温度が低くなる。特に、金属は、微粒化による熱収縮開始温度減少率がセラミックより大きいため、材料が微粒化するほど、誘電体層と内部電極の熱収縮開始温度の差が大きくなる。誘電体層と内部電極の熱収縮開始温度の差が大きくなるほど内部電極の連結性が低下して、平滑度が減少し得るため、信頼性が低下する恐れがある。
【0056】
誘電体層と内部電極の熱収縮開始温度の差を減らすための従来技術としては、内部電極ペーストにセラミック添加剤としてBaTiOを添加する方法がある。しかし、内部電極を薄く形成するために内部電極の材料が微粒化し、材料が微粒化するほど、材料の表面積の増加、熱的安定性の減少などにより、セラミック添加剤であるBaTiOの添加量が増加するようになる。セラミック添加剤であるBaTiOの添加量が増加すると、内部電極の膜密度が減少し、焼成工程が進行するにつれてセラミック添加剤であるBaTiOが誘電体層に移動するようになるため、誘電体層の厚さが厚くなり、容量が減少し得る。
【0057】
下記表1は各材料の融点及び原子半径を記載したものである。表1を参照すると、Dy酸化物(Dy)はBaTiOに比べて融点が約800℃以上高く、原子半径がTiよりも大きいため、高温焼成時に誘電体層に拡散されにくく、拡散されたとしても誘電率に与える影響が制限される。これに対し、酸化アルミニウム(Al)は、融点が高くて熱的安定性は確保可能であるが、原子半径がTiよりも小さいため、誘電体と二次相を形成することで誘電率を減少させることができる。
【0058】
【表1】
【0059】
本発明では、内部電極121、122が、融点がBaTiOよりも高いながらも誘電体層に吸収されにくく、誘電体層に吸収されるとしても誘電率に大きい影響を与えないDyを含み、Niの含量を考慮して上記Dyの含量を調節することで、誘電体層と内部電極の熱収縮開始温度の差を減らすことができるだけでなく、誘電率を減少させることなく熱的安定性を向上させ、信頼性を向上させることができる。
【0060】
内部電極121、122に含まれたNi及びDyの含量の和に対するDyの含量(Dy/(Ni+Dy))の原子比(C0)が0.02at%未満である場合には、Dyの添加による熱収縮開始温度の遅延、熱的安定性の増加、MTTF(平均故障時間、Mean Time To Failure)の向上、破壊電圧(BDV、Breakdown voltage)の向上などの効果が不十分になり得る。したがって、C0の下限は0.02at%であることが好ましい。この際、Dyの添加による破壊電圧及びMTTFの向上効果をより増加させるために、C0の下限は0.05at%であることがより好ましい。また、Dyの添加による破壊電圧及びMTTFの向上効果をさらに増加させるために、C0の下限は0.5at%であることがより好ましい。
【0061】
これに対し、内部電極121、122に含まれたNi及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比(C0)が5at%を超える場合には、Dyが過量添加されることにより内部電極121、122でDyが占める割合が増加し、チップの厚さが増加することがあり、積層型電子部品100の単位体積当たりの容量が減少する恐れがある。したがって、内部電極がDyを含まない場合と類似のレベルまたは同等以上の容量を確保するためには、C0の上限は5at%であることが好ましい。この際、内部電極がDyを含まない場合に比べて容量が向上する効果を確保するために、C0の上限は1at%であることがより好ましい。
【0062】
一方、Dyは、内部電極中に存在する形態は特に限定されず、Niに固溶された形態、Dy酸化物の形態であるDy、またはNiとの複合酸化物の形態であるNi-Dy-Oなどで存在することができる。
【0063】
一実施形態において、積層型電子部品100は、誘電体層111、及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含む本体110と、上記本体に配置されて上記内部電極と連結される外部電極131、132と、を含み、上記内部電極はDy酸化物を含み、Baを含まないことができる。従来、一般的に用いられていたセラミック添加剤であるBaTiOに代わり、BaTiOより融点が高いながらも誘電体層に吸収されにくく、誘電体層に吸収されるとしても誘電率に大きい影響を与えないDy酸化物を添加することにより、誘電体層と内部電極の熱収縮開始温度の差を減らすことができるだけでなく、誘電率を減少させることなく熱的安定性を向上させ、信頼性を向上させることができる。
【0064】
一実施形態において、内部電極121、122のうち誘電体層111との界面から第1方向に2nm離隔した領域における、Ni及びDyの含量の和に対するDyの含量(Dy/(Ni+Dy))の原子比をC1としたときに、C0<C1を満たすことができる。
【0065】
内部電極121、122に含まれたDyは、焼結初期にはNi粉末の収縮開始を抑えて焼結開始温度を高める役割を果たし、焼結が進行するにつれて誘電体層との界面に移動するようになる。これにより、内部電極と誘電体層の界面でのDyの濃度が、C0に比べて高いことができる。内部電極と誘電体層の界面でのDyの濃度が増加することにより、内部電極の電極凝集を抑え、内部電極の連結性を向上させることができる。
【0066】
一実施形態において、上記C1は0.07at%≦C1≦7at%を満たすことができる。
【0067】
C1が0.07at%未満である場合には、内部電極の全体に含まれたDyの平均濃度が低くなるため、Dyの添加による熱収縮開始温度の遅延、熱的安定性の増加、MTTFの向上などの効果が不十分になり得る。したがって、C1の下限は0.07at%であることが好ましい。この際、Dyの添加による破壊電圧及びMTTFの向上効果をより増加させるために、C1の下限は0.7at%であることがより好ましい。また、Dyの添加による破壊電圧及びMTTFの向上効果をさらに増加させるために、C1の下限は2at%であることがより好ましい。
【0068】
これに対し、C1が7at%を超える場合には、Dyが過量添加されることにより内部電極でDyが占める割合が増加し、チップの厚さが増加することがあり、積層型電子部品の単位体積当たりの容量が減少する恐れがある。したがって、Dyを含まない場合と類似のレベルまたは同等以上の容量を確保するためには、C1の上限は7at%であることが好ましい。この際、Dyを含まない場合に比べて容量が向上する効果を確保するために、C1の上限は5at%であることがより好ましい。
【0069】
一実施形態において、内部電極のうち上記第1方向の中央における、Ni及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比をC2としたときに、C2≦2.3at%及びC2<C0<C1を満たすことができる。
【0070】
内部電極121、122に含まれたDyは、焼結が進行するにつれて誘電体層111との界面に移動するようになるため、内部電極のうち第1方向の中央では、誘電体層111との界面でのDyの濃度及び内部電極の全体に含まれたDyの平均濃度より低い値を有することができる。
【0071】
C2が2.3at%を超える場合には、Dyが過量に添加されることにより内部電極でDyが占める割合が増加し、チップの厚さが増加することがあり、積層型電子部品の単位体積当たりの容量が減少する恐れがある。したがって、Dyを含まない場合と類似のレベルまたは同等以上の容量を確保するために、C2の上限は2.3at%であることが好ましい。この際、Dyを含まない場合に比べて容量が向上する効果を確保するために、C2の上限は0.8at%であることがより好ましい。
【0072】
これに対し、C2の下限は特に限定する必要はなく、0であるか、略0に近い値を有してもよい。但し、Dyの添加による破壊電圧及びMTTFの向上効果をより増加させるために、C2の下限は0.05at%であることがより好ましい。また、Dyの添加による破壊電圧及びMTTFの向上効果をさらに増加させるために、C2の下限は0.2at%であることがより好ましい。
【0073】
一実施形態において、上記C1及びC2は3.04≦C1/C2を満たすことができる。
【0074】
C1/C2の下限は、Dyを含まない場合と類似のレベルまたは同等以上の容量を確保するために、3.04であることが好ましく、Dyを含まない場合に比べて容量が向上する効果を確保するためには、6.25であることがより好ましい。
【0075】
これに対し、C1/C2の上限は、C2が0または0に近い値を有するため、無限大の値を有してもよい。但し、C1/C2の上限は、破壊電圧及びMTTFの向上効果をより増加させるためには14であることがより好ましく、破壊電圧及びMTTFの向上効果をさらに増加させるためには10であることがさらに好ましい。
【0076】
一実施形態において、内部電極121、122はDy酸化物を含むことができる。Dyの添加量が増加することにより、Dyが酸化物の形態で残存し、内部電極中にトラップされた形態で存在することができる。特に、C0が0.5at%以上、C1が2at%以上、C2が0.2at%以上、またはC1/C2が10以下である場合に、Dyが酸化物の形態で内部電極中にトラップされた形態で存在する確率が高い。
【0077】
この際、焼成が進行するにつれてDyが誘電体層111との界面に移動するため、上記Dy酸化物は、上記内部電極と上記誘電体層の界面から上記内部電極の厚さの1/3の地点までの領域に配置されることができる。すなわち、内部電極を第1方向に3等分したときに、中間部分を除いた領域にDy酸化物が配置された形態であることができる。また、上記Dy酸化物はDyであることができる。
【0078】
これにより、界面抵抗を向上させ、Dyの添加による破壊電圧及びMTTFの向上効果をさらに増加させることができる。
【0079】
一実施形態において、内部電極121、122は複数のNi結晶粒121aを含み、上記複数のNi結晶粒間の結晶粒系121cにおけるDyの含量は、上記Ni結晶粒121a中に含まれたDyの含量よりも高いことができる。但し、Dyは、焼結が進行するにつれて内部電極121、122と誘電体層111の間の界面に移動するため、複数のNi結晶粒間の結晶粒系121cにおけるDyの含量は、内部電極121、122と誘電体層111の間の界面121bに含まれたDyの含量よりは低いことができる。
【0080】
図6は本発明の一実施形態による内部電極の断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)によりスキャンした写真である。図7は本発明の一実施形態による内部電極の断面で、SEM(Scanning Electron Microscope)-EDS(Energy-dispersive X-ray spectroscopy)を用いてDy元素の分布を観察した写真である。図6を参照すると、内部電極と誘電体層の界面で、誘電体層及び内部電極と明らかな相違を有する層が観察されることが確認でき、図7を参照すると、複数のNi結晶粒間の結晶粒系121cにおけるDyの含量が、上記Ni結晶粒121a中に含まれたDyの含量より高いことが確認できる。
【0081】
一方、内部電極を形成する材料は特に限定する必要はないが、例えば、Ni粉末及びDy粉末を含む内部電極用ペーストを用いて形成することができ、Ni粉末に対するDy粉末の原子比を調節することで、焼成後に内部電極に含まれるDyの含量を制御することができる。
【0082】
また、本発明の内部電極を形成する内部電極用ペーストには、セラミック添加剤であるBaTiOが含まれなくてもよい。これにより、内部電極121、122はBaTiOを含まなくてもよい。本発明によると、従来のセラミック添加剤であるBaTiOの役割をDyが代替し、内部電極の熱収縮開始を抑えることができるため、BaTiOが含まれていない内部電極用導電性ペーストを用いても、内部電極を薄く形成することができ、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0083】
一方、内部電極121、122の厚さteは、特に限定する必要はない。
【0084】
但し、一般に、内部電極121、122を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に、内部電極121、122の厚さteが0.45μm以下である場合には、微粒の材料を用いることにより、誘電体層と内部電極の熱収縮開始温度の差が大きくなるため、デラミネーション(delamination)などの不良が発生し、信頼性が低下する恐れが大きい。
【0085】
上述のように、本発明の一実施形態によると、内部電極に含まれたDyの含量を、Niの含量を考慮して調節することで、誘電体層と内部電極の熱収縮開始温度の差を減らすことができるだけでなく、誘電率を減少させることなく熱的安定性を向上させることができるため、内部電極121、122の厚さteを0.45μm以下に薄く確保しながらも、信頼性を向上させることができる。
【0086】
したがって、内部電極121、122の厚さteが0.45μm以下である場合に、本発明による効果がより顕著になることができ、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
【0087】
上記内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さを意味し得る。
【0088】
上記内部電極121、122の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージスキャンして測定することができる。
【0089】
例えば、本体110の第3方向(幅方向)の中央部で切断した第1及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)によりスキャンした画像から抽出された任意の第1及び第2内部電極121、122において、長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。
【0090】
外部電極131、132は、本体110に配置されて内部電極121、122と連結される。
【0091】
図2に示された形態のように、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0092】
本実施形態では、積層型電子部品100が2個の外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的によって変わり得る。
【0093】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば如何なる物質を用いて形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらには、多層構造を有することができる。
【0094】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132aと、電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bと、を含むことができる。
【0095】
電極層131a、132aのより具体的な例としては、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であってもよく、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0096】
また、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順に形成された形態であることができる。また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式により形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式により形成されてもよい。
【0097】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を用いることができるが、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及びこれらの合金のうち1つ以上であることができる。
【0098】
めっき層131b、132bは、実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd、及びこれらの合金のうち1つ以上を含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることができる。
【0099】
めっき層131b、132bのより具体的な例としては、めっき層131b、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層が順に形成された形態であってもよい。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0100】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
【0101】
但し、小型化及び高容量化をともに達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くし、積層数を増加させる必要があるため、0402(長さ×幅、0.4mm×0.2mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において、本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。
【0102】
したがって、製造誤差、外部電極のサイズなどを考慮すると、積層型電子部品100の長さが0.44mm以下であり、幅が0.22mm以下である場合、本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。ここで、積層型電子部品100の長さは、積層型電子部品100の第2方向の最大サイズを意味し、積層型電子部品100の幅は、積層型電子部品100の第3方向の最大サイズを意味し得る。
【0103】
[実施例]
内部電極用ペーストに含まれたNi粉末及びDy粉末の含量を調節し、下記表2に記載の、内部電極全体のNi及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比(C0)、内部電極のうち誘電体層との界面から第1方向に2nm離隔した領域における、Ni及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比(C1)、及び内部電極のうち第1方向の中央における、Ni及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比(C2)を満たす内部電極が含まれたサンプルチップを製作した。
【0104】
C0、C1、及びC2は、サンプルチップの第2方向の1/2地点で第1及び第3方向に切断した断面(W-T断面)において、FIBによるマイクロサンプリング加工法により薄片化された分析用試料を製作した後、上記分析用試料をSTEMにより観察し、任意の4個の内部電極の平均値を記載したものである。
【0105】
誘電体層と内部電極が当接する部分においてラインマッピング(Line mapping)を行うことにより、誘電体層からBaの含量が急激に減少して0に収束する部分と、内部電極からNiの含量が急激に減少して0に収束する部分の中間部分を界面と設定した。
【0106】
C1は、上記誘電体層と内部電極の界面を基準として内部電極の方向に深さ2nmの部分において、1個の内部電極当たり等間隔である5個の地点に対してEDSによりNi及びDyを定量分析し、総4個の内部電極で測定した20地点の値を平均して下記表2に記載した。C2は、内部電極の厚さ方向(第1方向)の中心において、1個の内部電極当たり等間隔である5個の地点に対してEDSによりNi及びDyを定量分析し、総4個の内部電極で測定した20地点の値を平均して下記表2に記載した。この際、EDSのBean resolutionは0.14nm、測定露出時間は3分にして100万カウント測定した。
【0107】
C0は、第1方向の上部の誘電体層と内部電極の界面から、第1方向の下部の誘電体層と内部電極の界面までを第1方向にラインマッピング(Line mapping)を行うことにより、Ni及びDyを定量分析して求めた。1個の内部電極当たり等間隔である5本のラインをラインマッピング(Line mapping)により、Ni及びDyの含量の和に対するDyの含量の原子比を求め、総4個の内部電極で測定した20本のラインでの値を平均して下記表2に記載した。
【0108】
各サンプルチップの容量、BDV、及びMTTFを測定し、内部電極にDyが含まれていない試験番号1の容量、BDV、及びMTTFを基準値として、他の試験番号は相対値を下記表2に記載した。
【0109】
容量は、LCR meterを用いて1kHZ、AC0.5Vの条件で測定した。試験番号1の容量を基準値1として、他の試験番号は相対値を記載した。
【0110】
BDVは、各サンプルチップを回路に連結し、0Vから0.5Vずつ順に昇圧しつつ、電流が20mA以上になる地点の電圧をBDVと判断した。試験番号1のBDVを基準値1として、他の試験番号は相対値を記載した。
【0111】
MTTFは、各試験番号当たり400個のサンプルに対して、125℃、8Vの条件で高温負荷試験を実施して測定した。この際、絶縁抵抗が10KΩ以下になった時間を故障時間とし、試験番号1のMTTFを基準値1として、他の試験番号は相対値を記載した。
【0112】
【表2】
【0113】
試験番号1は、内部電極がDyを含まない場合であり、試験番号1の容量、BDV、及びMTTFを基準として他の試験番号は相対値を記載した。
【0114】
試験番号2は、内部電極全体のNi及びDyの含量の和に対するDyの含量(C0)が0.02at%であって、試験番号1に比べて容量、BDV、及びMTTFが向上したことが確認できる。特に、MTTFは、試験番号1に比べて12%向上し、著しい効果があることが確認できる。
【0115】
試験番号3は、内部電極全体のNi及びDyの含量の和に対するDyの含量(C0)が0.05at%であって、試験番号1に比べて容量、BDV、及びMTTFが向上したことが確認できる。特に、BDVは試験番号1に比べて15%、MTTFは試験番号1に比べて22%向上して、著しい効果があることが確認できる。また、試験番号2に比べてBDVが12%、MTTFが10%向上し、試験番号2と比較しても著しい効果があることが確認できる。
【0116】
試験番号4及び5はC0がそれぞれ0.5at%及び1at%であって、試験番号3と同等以上のBDV及びMTTF値を示し、容量は、Dyの含量の増加によってやや低くなる傾向にあることが確認できる。
【0117】
試験番号6はC0が5at%であって、試験番号1に比べてBDVが37%、MTTFが32%向上し、非常に優れた効果があることが確認できる。但し、容量は、試験番号1に比べて8%低くなった。さらに、試験番号7はC0が6at%であって、容量が試験番号1に比べて30%と急激に低くなり、試験番号6と比べても22%低くなったことが確認できる。
【0118】
このことから、類似のレベルまたは同等以上のレベルの容量を確保しながらも、BDV及びMTTFを向上させるためには、C0が0.02at%以上5at%以下であることが好ましいことが分かる。
【0119】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態及び添付図面により限定されず、添付の特許請求の範囲により限定しようとする。よって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者による多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0120】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
131a 電極層
132b めっき層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7