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特開2022-93261データベース生成装置、状態判定装置、データベース生成方法及び状態判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093261
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】データベース生成装置、状態判定装置、データベース生成方法及び状態判定方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
G05B23/02 301U
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161129
(22)【出願日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2020205625
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592115504
【氏名又は名称】金子産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214248
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 純
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】中村 善典
(72)【発明者】
【氏名】青山 文明
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA03
3C223BB17
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB02
3C223FF15
3C223FF23
3C223FF26
3C223GG03
3C223HH02
3C223HH22
(57)【要約】
【課題】流体圧駆動弁の状態を判定するための基準となるデータを簡単に収集することを可能とするデータベース生成装置を提供する。
【解決手段】データベース生成装置6は、流体圧駆動弁1にて開閉操作が行われたときの動作状態の基準となる判定基準データを登録可能なデータベース2を記憶する記憶部60と、使用環境10と主弁3との組合せに対して使用環境10にて主弁3が駆動されたときの負荷状態を仮想的に再現可能な仮想負荷部61と、試験対象とする使用環境10及び主弁3を再現する負荷状態が設定された仮想負荷部61と、試験対象とする駆動装置4及び電磁弁5とから構成される仮想的な前記流体圧駆動弁1aにて開閉操作が行われたときの判定基準データを取得する試験データ取得部62と、試験対象の組合せに対して仮想的な流体圧駆動弁1aにて取得された判定基準データを対応付けてデータベース2に登録するデータベース登録部63とを備える。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の使用環境にて使用される主弁と、前記主弁に連結された弁軸を駆動する駆動装置と、前記駆動装置に対して駆動流体の給排を制御する電磁弁とから構成される流体圧駆動弁の状態を判定するために用いられるデータベースを生成するデータベース生成装置であって、
複数種の前記使用環境と、複数種の前記主弁と、複数種の前記駆動装置と、1又は複数種の前記電磁弁との組合せ毎に、前記流体圧駆動弁にて所定の開閉操作が行われたときの動作状態の基準となる判定基準データをそれぞれ対応付けて登録可能な前記データベースを記憶する記憶部と、
複数種の前記使用環境と複数種の前記主弁との各組合せに対して、前記使用環境にて前記主弁が駆動されたときの負荷状態を仮想的に再現可能な仮想負荷部と、
試験対象とする前記使用環境及び前記主弁を再現する前記負荷状態が設定された前記仮想負荷部と、前記試験対象とする前記駆動装置及び前記電磁弁とから構成される仮想的な前記流体圧駆動弁にて前記開閉操作が行われたときの前記判定基準データを取得する試験データ取得部と、
前記試験対象とする前記使用環境と前記主弁と前記駆動装置と前記電磁弁との組合せに対して、前記仮想的な前記流体圧駆動弁にて取得された前記判定基準データを対応付けて前記データベースに登録するデータベース登録部と、を備える、
データベース生成装置。
【請求項2】
前記試験データ取得部は、
前記開閉操作における前記主弁の弁開度の時系列データ、及び、前記開閉操作中に前記電磁弁から前記駆動装置に給排される前記駆動流体の電磁弁出力側圧力の時系列データを前記動作状態として少なくとも含む前記判定基準データを取得する、
請求項1に記載のデータベース生成装置。
【請求項3】
前記試験データ取得部は、
前記開閉操作中に前記弁軸に作用する作用トルクの時系列データを前記動作状態として少なくとも含む前記判定基準データを取得する、
請求項1又は請求項2に記載のデータベース生成装置。
【請求項4】
前記試験データ取得部は、
前記開閉操作が行われたときの前記動作状態を学習モデルに入力することで、前記動作状態と前記流体圧駆動弁の正常な状態との相関関係を機械学習させた前記学習モデルを、前記判定基準データとして取得する、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のデータベース生成装置。
【請求項5】
前記試験データ取得部は、
前記開閉操作が行われたときの前記動作状態を、所定の基準により複数の動作区分に分割し、
前記動作区分毎の前記動作状態を、複数の前記動作区分に対応する複数の前記学習モデルにそれぞれ入力することで、前記相関関係を複数の前記動作区分毎に機械学習させた複数の前記学習モデルを、前記判定基準データとして取得する、
請求項4に記載のデータベース生成装置。
【請求項6】
前記試験データ取得部は、
前記開閉操作が行われたときの前記動作状態を、前記開閉操作における前記主弁の弁開度を前記基準にして複数の前記動作区分に分割する、
請求項5に記載のデータベース生成装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のデータベース生成装置により生成されたデータベースを用いて、所定の使用環境にて使用される主弁と、前記主弁に連結された弁軸を駆動する駆動装置と、前記駆動装置に対して駆動流体の給排を制御する電磁弁とから構成される流体圧駆動弁の状態を判定する状態判定装置であって、
前記データベースを参照し、判定対象とする前記流体圧駆動弁を構成する前記使用環境と前記主弁と前記駆動装置と前記電磁弁との組合せに対応付けられた前記判定基準データを取得する判定基準データ取得部と、
前記判定対象とする前記流体圧駆動弁にて所定の開閉操作が行われたときの動作状態を判定対象データとして取得する判定対象データ取得部と、
前記判定基準データと前記判定対象データとに基づいて前記判定対象とする前記流体圧駆動弁の状態を判定する状態判定部と、を備える、
状態判定装置。
【請求項8】
前記判定基準データ及び前記判定対象データが、
前記動作状態として時系列データを含むものであるとき、
前記状態判定部は、
前記判定基準データと前記判定対象データとを比較したときの類似度に基づいて前記流体圧駆動弁の異常の有無を判定する、
請求項7に記載の状態判定装置。
【請求項9】
前記判定基準データが、
前記動作状態と前記流体圧駆動弁の正常な状態との相関関係を機械学習させた学習モデルであるとき、
前記状態判定部は、
前記判定対象データを前記学習モデルに入力することにより、前記流体圧駆動弁の異常の有無を判定する、
請求項7に記載の状態判定装置。
【請求項10】
前記判定基準データが、
前記相関関係を、前記開閉操作が行われたときの前記動作状態が所定の基準により分割された複数の動作区分毎に機械学習させた複数の前記学習モデルであるとき、
前記状態判定部は、
前記判定対象データを、当該判定対象データが含まれる前記動作区分に対応する前記学習モデルに入力することにより、前記流体圧駆動弁の異常の有無を判定する、
請求項9に記載のデータベース生成装置。
【請求項11】
前記判定基準データが、
前記相関関係を、前記開閉操作が行われたときの前記動作状態が前記開閉操作における前記主弁の弁開度を前記基準にして分割された複数の前記動作区分毎に機械学習させた複数の前記学習モデルであるとき、
前記状態判定部は、
前記判定対象データを、当該判定対象データが取得されたときの前記開閉操作における前記主弁の弁開度が含まれる前記動作区分に対応する前記学習モデルに入力することにより、前記流体圧駆動弁の異常の有無を判定する、
請求項10に記載のデータベース生成装置。
【請求項12】
所定の使用環境にて使用される主弁と、前記主弁に連結された弁軸を駆動する駆動装置と、前記駆動装置に対して駆動流体の給排を制御する電磁弁とから構成される流体圧駆動弁の状態を判定するために用いられるデータベースを生成するデータベース生成方法であ
って、
複数種の前記使用環境と複数種の前記主弁との各組合せに対して、前記使用環境にて前記主弁が駆動されたときの負荷状態を仮想的に再現可能な仮想負荷部を用いて、試験対象とする前記使用環境及び前記主弁を再現する前記負荷状態が設定された前記仮想負荷部と、前記試験対象とする前記駆動装置及び前記電磁弁とから構成される仮想的な前記流体圧駆動弁にて所定の開閉操作が行われたときの動作状態の基準となる判定基準データを取得する試験データ取得工程と、
前記試験対象とする前記使用環境と前記主弁と前記駆動装置と前記電磁弁との組合せに対して、前記仮想的な前記流体圧駆動弁にて取得された前記判定基準データを対応付けてデータベースに登録するデータベース登録工程と、を備える、
データベース生成方法。
【請求項13】
請求項12に記載のデータベース生成方法により生成されたデータベースを用いて、所定の使用環境にて使用される主弁と、前記主弁に連結された弁軸を駆動する駆動装置と、前記駆動装置に対して駆動流体の給排を制御する電磁弁とから構成される流体圧駆動弁の状態を判定する状態判定方法であって、
前記データベースを参照し、判定対象とする前記流体圧駆動弁を構成する前記使用環境と前記主弁と前記駆動装置と前記電磁弁との組合せに対応付けられた前記判定基準データを取得する判定基準データ取得工程と、
前記判定対象とする前記流体圧駆動弁にて所定の開閉操作が行われたときの動作状態を判定対象データとして取得する判定対象データ取得工程と、
前記判定基準データと前記判定対象データとに基づいて前記判定対象とする前記流体圧駆動弁の状態を判定する状態判定工程と、を備える、
状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データベース生成装置、状態判定装置、データベース生成方法及び状態判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁弁により駆動流体を制御し、駆動装置により駆動される弁軸を介して主弁を開閉する流体圧駆動弁が知られている。例えば、特許文献1には、プラント設備の配管に使用される流体圧駆動弁として、設備に異常が発生したような緊急時に、電磁弁により駆動流体を制御して駆動装置を介してボールバルブ(主弁)を閉じることにより、配管を流れる流体を遮断する緊急遮断弁装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-97539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるような、プラント設備に用いられる緊急遮断弁等の流体圧駆動弁において、プラント設備全体の稼働率・信頼性を向上させるためには、流体圧駆動弁の状態を把握することが望まれる。その際、流体圧駆動弁の状態を判定するための基準となるデータ(判定基準データ)があれば、流体圧駆動弁の状態を的確に把握することが可能となる。
【0005】
しかしながら、流体圧駆動弁は、その構成として、主弁と駆動装置と電磁弁とを備え、主弁が使用される使用環境や流体圧駆動弁に要求される仕様等に基づいて、複数種の主弁と、複数種の駆動装置と、複数種の電磁弁とから特定の組合せが選定されて製造される。そのため、使用環境、主弁、駆動装置、及び、電磁弁という4つの要素からなる各組合せについて、判定基準データを事前に用意することは多くの時間と手間を要する作業であった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、流体圧駆動弁の状態を判定するための基準となるデータを簡単に収集することを可能とするデータベース生成装置、状態判定装置、データベース生成方法及び状態判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るデータベース生成装置は、
所定の使用環境にて使用される主弁と、前記主弁に連結された弁軸を駆動する駆動装置と、前記駆動装置に対して駆動流体の給排を制御する電磁弁とから構成される流体圧駆動弁の状態を判定するために用いられるデータベースを生成するデータベース生成装置であって、
複数種の前記使用環境と、複数種の前記主弁と、複数種の前記駆動装置と、1又は複数種の前記電磁弁との組合せ毎に、前記流体圧駆動弁にて所定の開閉操作が行われたときの動作状態の基準となる判定基準データをそれぞれ対応付けて登録可能な前記データベースを記憶する記憶部と、
複数種の前記使用環境と複数種の前記主弁との各組合せに対して、前記使用環境にて前記主弁が駆動されたときの負荷状態を仮想的に再現可能な仮想負荷部と、
試験対象とする前記使用環境及び前記主弁を再現する前記負荷状態が設定された前記仮想負荷部と、前記試験対象とする前記駆動装置及び前記電磁弁とから構成される仮想的な前記流体圧駆動弁にて前記開閉操作が行われたときの前記判定基準データを取得する試験データ取得部と、
前記試験対象とする前記使用環境と前記主弁と前記駆動装置と前記電磁弁との組合せに対して、前記仮想的な前記流体圧駆動弁にて取得された前記判定基準データを対応付けて前記データベースに登録するデータベース登録部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係るデータベース生成装置によれば、試験データ取得部が、試験対象とする使用環境及び主弁を再現する負荷状態が設定された仮想負荷部と、試験対象とする駆動装置及び電磁弁とから構成される仮想的な流体圧駆動弁にて開閉操作が行われたときの判定基準データを取得し、データベース登録部が、試験対象とする使用環境と主弁と駆動装置と電磁弁との組合せに対して、仮想的な流体圧駆動弁にて取得された判定基準データを対応付けてデータベースに登録する。
【0009】
そのため、試験対象とする使用環境及び主弁の組合せに応じた負荷状態が仮想負荷部により再現されることで仮想的な流体圧駆動弁が構成されるので、使用環境及び主弁の各組合せに応じて実設備をそれぞれ用意する必要がなく、仮想的な流体圧駆動弁にて開閉操作が行われたときの判定基準データが取得される。したがって、使用環境、主弁、駆動装置、及び、電磁弁という4つの要素からなる組合せ毎に、判定基準データを簡単に収集することができる。
【0010】
上記以外の課題、構成及び効果は、後述する発明を実施するための形態にて明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る流体圧駆動弁1の運転支援システム100の一例を示す全体構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る流体圧駆動弁1の一例を示す概略構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る流体圧駆動弁1の一例を示す概略ブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係るデータベース生成装置6及び状態判定装置7を構成するコンピュータ200の一例を示すハードウエア構成図である。
図5】本発明の実施形態に係るデータベース生成装置6の一例を示す概略ブロック図である。
図6】本発明の実施形態に係るデータベース2の一例を示すデータ構成図である。
図7】本発明の実施形態に係るデータベース生成装置6によるデータベース生成方法の一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態に係る状態判定装置7の一例を示す概略ブロック図である。
図9】本発明の実施形態に係る状態判定装置7による状態判定方法の一例を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施形態に係るデータベース2の変形例を示すデータ構成図である。
図11】本発明の実施形態に係る学習モデルの変形例における機械学習の学習フェーズを説明する図である。
図12】本発明の実施形態に係る学習モデルの変形例における機械学習の推論フェーズを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を実施するための実施形態について説明する。以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る流体圧駆動弁1の運転支援システム100の一例を示す全体構成図である。
【0014】
運転支援システム100において運転支援の対象である流体圧駆動弁1は、例えば、プラント設備やインフラ設備等において各種のガスや石油等の制御流体が流れる配管11に設置される。流体圧駆動弁1は、例えば、設備に何らかの異常が発生したような緊急停止時に、配管11の流れを遮断するための緊急遮断弁として使用される。なお、流体圧駆動弁1が設置される設備や用途は、上記の例に限られない。
【0015】
流体圧駆動弁1は、その主要な構成として、配管11の途中に配置される主弁3と、主弁3に連結された弁軸12を駆動する駆動装置4と、駆動装置4に対して駆動流体の給排を制御する電磁弁5とから構成される。また、流体圧駆動弁1自体に異常が発生した場合、上記のような緊急遮断弁としての機能が損なわれるため、流体圧駆動弁1は、所定の状態判定条件に従って流体圧駆動弁1の状態(例えば、異常の有無、余寿命の判定等)を監視するための状態判定機能を備える。
【0016】
流体圧駆動弁1を構成する構成部品としての主弁3、駆動装置4、及び、電磁弁5には、各種の仕様(構造、サイズ、材質、性能等)に応じて、複数種の主弁3(3、3、…、3)と、複数種の駆動装置4(4、4、…、4)と、複数種の電磁弁5(5、5、…、5)とがそれぞれ存在する。また、流体圧駆動弁1が使用される使用環境10は、配管11に流れる制御流体の種類や圧力、使用場所の状況(屋外か屋内か、外気温、湿度等)等の各種の条件が異なるため、複数種の使用環境10(10、10、…、10)が想定される。なお、添え字p、q、r、sは、任意の整数であり、使用環境10、主弁3、駆動装置4及び電磁弁5の種類の数をそれぞれ示す。
【0017】
そのため、流体圧駆動弁1は、使用環境10に応じて流体圧駆動弁1の仕様が決定されるとともに、その流体圧駆動弁1の仕様を満たす構成部品として、主弁3の種類と、駆動装置4の種類と、電磁弁5の種類とが選定される。そして、流体圧駆動弁1は、それぞれの種類が選定された組合せに応じて、主弁3、駆動装置4、及び、電磁弁5を組み立てることで製造される。種類は、例えば、機種名、型名、型番等で特定される。
【0018】
上記のようにして製造された流体圧駆動弁1は、状態判定条件を一律に設定することが難しく、使用環境10と主弁3と駆動装置4と電磁弁5との組合せに応じて状態判定条件を適切に設定した状態で運転する必要がある。流体圧駆動弁1の運転支援システム100は、このような流体圧駆動弁1に対して状態判定条件を設定するためのデータベース2を生成し、そのデータベース2を用いて流体圧駆動弁1の運転を支援するシステムとして機能する。
【0019】
流体圧駆動弁1の運転支援システム100は、その主要な構成として、流体圧駆動弁1の状態を判定するために用いられるデータベース2を生成するデータベース生成装置6と、データベース2を用いて流体圧駆動弁1の状態を判定する状態判定装置7とを備える。
【0020】
データベース生成装置6は、使用環境10と主弁3と駆動装置4と電磁弁5との組合せ毎に、状態判定条件として判定基準データを登録可能なデータベース2を備え、データベ
ース2に登録された判定基準データを状態判定装置7に提供する。
【0021】
状態判定装置7は、データベース2を参照し、データベース2に登録された判定基準データと、流体圧駆動弁1で計測された判定対象データとに基づいて、流体圧駆動弁1の状態を判定する。
【0022】
以下では、まず、運転支援システム100による運転支援の対象である流体圧駆動弁1の詳細を説明し、次に、データベース生成装置6及び状態判定装置7の詳細を説明する。
【0023】
(流体圧駆動弁1)
図2は、本発明の実施形態に係る流体圧駆動弁1の一例を示す概略構成図である。流体圧駆動弁1は、主弁3と、駆動装置4と、電磁弁5とを備えて構成される。
【0024】
図2に示す流体圧駆動弁1は、エアーレスクローズ方式が採用されている。定常運転時は、空気供給源13から電磁弁5を介して駆動装置4に空気A(給気)を供給することで、主弁3が開操作され、緊急停止時や試験運転時は、駆動装置4から電磁弁5を介して空気A(排気)を排出することで、主弁3が閉操作される。なお、流体圧駆動弁1は、エアーレスオープン方式を採用したものでもよく、その場合には、駆動装置4に空気Aを供給することで閉操作され、駆動装置4から空気Aを排出することで主弁3を開操作される。
【0025】
流体圧駆動弁1には、空気Aの流路として、空気供給源13及び電磁弁5の間を接続する第1の空気配管130と、電磁弁5及び駆動装置4の間を接続する第2の空気配管131とが設けられる。なお、駆動流体は、上記の空気Aに限られず、他の気体でもよいし、液体(例えば、油)でもよい。
【0026】
流体圧駆動弁1には、外部装置14及び電磁弁5の間で各種のデータを送受信する通信ケーブル140と、外部電源15から電磁弁5に電力を供給する電力ケーブル150とが接続される。
【0027】
外部装置14は、流体圧駆動弁1との間で各種の情報を送受信する装置である。外部装置14は、例えば、設備管理用のコンピュータ(ローカルサーバ及びクラウドサーバを含む)、作業者用のコンピュータ、データ保存用の記憶装置や記憶媒体等で構成される。なお、外部装置14及び電磁弁5の間の通信は、任意の通信規格が採用され、無線通信でもよい。
【0028】
図2に示す主弁3には、ボールバルブが採用されている。主弁3は、その具体的な構成として、配管11の途中に配置される弁箱30と、弁箱30内に回動可能に設けられたボール状の弁体31とを備え、弁体31の上部には、弁軸12が連結されている。弁軸12が0度~90度に回動されることに応じて弁箱30内で弁体31が回動し、主弁3の全開状態(図2に示す状態)と全閉状態が切り替えられる。なお、主弁3として用いられる弁は、ボールバルブに限られず、例えば、バタフライバルブやその他のオンオフ弁であってもよい。
【0029】
図2に示す駆動装置4には、単作動式のエアシリンダ機構が採用されている。駆動装置4は、その具体的な構成として、スプリング室47及びシリンダ室48を有するシリンダ40と、シリンダ40内に往復直線移動可能に設けられピストンロッド41を介して連結された一対のピストン42A、42Bと、第1のピストン42A側のスプリング室47に設けられたコイルばね43と、第2のピストン42B側のシリンダ室48に接続された空気給排口44と、シリンダ40を径方向に沿って貫通するように配置された弁軸12とピストンロッド41とが直交する部分に設けられた伝達機構45とを備える。なお、駆動装
置4は、単作動式に限られず、例えば、複作動式等の他の形式で構成されていてもよい。
【0030】
第1のピストン42Aは、コイルばね43により主弁3を閉じる方向に付勢される。第2のピストン42Bは、空気給排口44から供給された空気A(給気)によりコイルばね43の付勢力に抗して主弁3を開く方向に押圧される。伝達機構45は、ラックアンドピニオン機構、スコッチヨーク機構、リンク機構、カム機構等で構成されており、ピストンロッド41の往復直線運動を回動運動に変換して弁軸12に伝達するものである。
【0031】
図2に示す電磁弁5には、2ポジションでノーマルクローズタイプ(通電時「開」、非通電時「閉」)の三方電磁弁が採用されている。電磁弁5は、その具体的な構成として、収容部50の内部に、空気Aが流れる流路を切り替えるスプール部51と、通電状態(通電時又は非通電時)に応じてスプール部51を変位させるソレノイド部52と、電磁弁5の各部の物理量や状態量を計測するセンサ群53とを備える。なお、電磁弁5は、2ポジションでノーマルクローズタイプの三方電磁弁に限られず、3ポジションでもよく、ノーマルオープンタイプでもよく、四方電磁弁等でもよく、任意の組み合わせに基づく各種の形成で構成されていてもよい。
【0032】
収容部50は、屋内型又は防爆型の電磁弁5のハウジングとして機能する。収容部50は、弁軸12(第3の軸12c)が挿入される軸挿入口500と、通信ケーブル140及び電力ケーブル150が挿入されるケーブル挿入口501とを備える。
【0033】
スプール部51は、空気供給源13に第1の空気配管130を介して接続される入力ポート510と、駆動装置4に第2の空気配管131を介して接続される出力ポート511と、駆動装置4からの排気を排出する排気ポート512とを備える。
【0034】
ソレノイド部52は、通電時に、入力ポート510と出力ポート511との間を連通するように、スプール部51を変位させ、非通電時に、出力ポート511と排気ポート512との間を連通するように、スプール部51を変位させる。
【0035】
センサ群53は、収容部50の内部の各所に配置される。センサ群53は、例えば、入力ポート510に連通する第1の流路502を流れる空気Aの流体圧を計測する第1の圧力センサ530と、出力ポート511に連通する第2の流路503を流れる空気Aの流体圧を計測する第2の圧力センサ531と、弁軸12(第3の軸12c)が回動するときの回動角度を計測し、その回動角度に応じて主弁3の弁開度情報を取得する主弁開度センサ532とを備える。
【0036】
主弁開度センサ532は、例えば、磁気センサにより構成されており、弁軸12(第3の軸12c)に取り付けられた永久磁石120が発生する磁気の強さを計測し、その磁気の強さに応じて主弁3の弁開度情報を取得する。
【0037】
弁軸12は、回動可能なシャフト状に形成され、第1の軸12aと、第2の軸12bと、第3の軸12cとから構成される。第1の軸12aの両端部は、カップリングやコネクタ等を介して第2の軸12b及び第3の軸12cにそれぞれ連結されて、第1の軸12a、第2の軸12b及び第3の軸12cは同軸上に配置される。第1の軸12aは、駆動装置4を貫通するように配置され、駆動装置4により駆動される。第2の軸12bは、第1の軸12aに連結されるとともに主弁3に連結される。第3の軸12cは、第1の軸12aに連結されるとともに電磁弁5の収容部50に挿入されて軸支される。弁軸12は、駆動装置4により第1の軸12aが駆動されることに同期して、全体として回動運動を行う。
【0038】
上記の構成を有する流体圧駆動弁1において、電磁弁5が通電状態である場合には、空気供給源13からの空気A(給気)が、第1の空気配管130、入力ポート510、出力ポート511及び第2の空気配管131の順に流れて、空気給排口44に供給されることで、第2のピストン42Bが押圧されてコイルばね43が圧縮する。そして、コイルばね43の圧縮に応じてピストンロッド41が移動した分だけピストンロッド41及び伝達機構45を介して第1の軸12a(弁軸12)が回動されると、弁箱30内で弁体31が回動し、主弁3が全開状態に操作される。
【0039】
一方、電磁弁5が非通電状態である場合には、シリンダ40内の空気A(排気)が、空気給排口44から第2の空気配管131、出力ポート511及び排気ポート512の順に流れて、外気に排出されることで、第2のピストン42Bの押圧力が低下し、コイルばね43が圧縮状態から復元する。そして、コイルばね43の復元に応じてピストンロッド41が移動した分だけ伝達機構45を介して第1の軸12a(弁軸12)が回動されると、弁箱30内で弁体31が回動し、主弁3が全閉状態に操作される。
【0040】
図3は、本発明の実施形態に係る流体圧駆動弁1の一例を示す概略ブロック図である。電磁弁5は、図3に示すように、電気的な構成例として、上記のソレノイド部52及びセンサ群53の他に、電磁弁5を制御する制御部54と、外部装置14と通信するための通信部55と、外部電源15に接続される電源回路部56とを備える。
【0041】
センサ群53は、上記の第1の圧力センサ530、第2の圧力センサ531、主弁開度センサ532の他に、ソレノイド部52に対する供給電圧を計測する電圧センサ533と、ソレノイド部52における通電時の電流値及び非通電時の抵抗値を計測する電流・抵抗センサ534と、収容部50の内部温度を計測する温度センサ535と、ソレノイド部52が発生する磁気の強さを計測する磁気センサ536とを備える。
【0042】
また、センサ群53は、各部の動作履歴に関する情報を取得するセンサ群として、流体圧駆動弁1の稼働時間としてソレノイド部52に対する通電時間の合計及び現在の通電連働時間の少なくとも一方を計測する稼働時間計(タイマ)537と、電磁弁5、駆動装置4及び主弁3それぞれの作動回数を計数する作動カウンタ(カウンタ)538とを備える。
【0043】
なお、センサ群53は、上記のようにセンサが個別に設けられたものに限られず、特定のセンサが他のセンサの機能を兼ねることで、その他のセンサが個別に設けられていなくてもよい。例えば、磁気センサ536が、ソレノイド部52が発生する磁気の強さを計測するとともに、その磁気の強さに基づいてソレノイド部52における通電時の電流値を求めることで、電流・抵抗センサ534が個別に設けられていなくてもよい。また、コントローラ540が、センサの機能を内蔵したり、センサの機能の一部を実現したりしてもよく、例えば、コントローラ540が、稼働時間計537及び作動カウンタ538を内蔵することで、稼働時間計537及び作動カウンタ538が個別に設けられていなくてもよい。
【0044】
制御部54、通信部55及び電源回路部56は、例えば、汎用又は専用のコンピュータ(後述の図4参照)で構成される。
【0045】
制御部54は、センサ群53により計測された流体圧駆動弁1の各部の物理量や状態量を示す情報を処理するとともに、流体圧駆動弁1の各部を制御するコントローラ540と、ソレノイド部52の通電状態を制御し、試験運転時における主弁3の開閉操作を行うバルブテストスイッチ541とを備える。
【0046】
コントローラ540には、例えば、状態判定装置7が組み込まれており、コントローラ540は、状態判定装置7を実現する機能を含む。なお、状態判定装置7の全て又は一部の構成は、他の機器、例えば、外部装置14や流体圧駆動弁1に接続された他の装置で実現されてもよい。
【0047】
バルブテストスイッチ541は、所定の試験運転条件が満たされた場合にコントローラ540からの指令を受けて、所定の開閉操作を行う試験運転として、流体圧駆動弁1のストロークテストを実行する。
【0048】
ストロークテストは、例えば、フルストロークテスト及びパーシャルストロークテストのいずれかにより実行される。フルストロークテストは、主弁3を全開状態において通電状態から非通電状態に切り替えることで全閉状態に操作し、全閉状態において非通電状態から通電状態に切り替えることで全開状態に戻すことで実行される。パーシャルストロークテストは、主弁3を全閉状態に操作することなく(すなわち、設備を停止することなく)、主弁3を全開状態において通電状態から非通電状態に切り替えることで所定の開度まで部分的に閉じて、部分的な閉状態において非通電状態から通電状態に切り替えることで全開状態に戻すことで実行される。
【0049】
なお、試験運転条件としては、例えば、管理者により設定値として指定された実行頻度(例えば、1年に1回)による実行時期や特定の指定日時が到来したり、外部装置14からの実行命令を受け付けたり、電磁弁5に設けられた試験実行ボタン(不図示)が管理者により操作されたりした場合に、試験運転条件を満たすものとして、試験運転(ストロークテスト)が実行されるようにすればよい。
【0050】
図4は、本発明の実施形態に係るデータベース生成装置6及び状態判定装置7を構成するコンピュータ200の一例を示すハードウエア構成図である。
【0051】
データベース生成装置6及び状態判定装置7のそれぞれは、汎用又は専用のコンピュータ200により構成される。コンピュータ200は、図4に示すように、その主要な構成要素として、バス210、プロセッサ212、メモリ214、入力デバイス216、表示デバイス218、ストレージ装置220、通信I/F(インターフェース)部222、外部機器I/F部224、I/O(入出力)デバイスI/F部226、及び、メディア入出力部228を備える。なお、上記の構成要素は、コンピュータ200が使用される用途に応じて適宜省略されてもよい。
【0052】
プロセッサ212は、1つ又は複数の演算処理装置(CPU、MPU、GPU、DSP等)で構成され、コンピュータ200全体を統括する制御部として動作する。メモリ214は、各種のデータ及びプログラム230を記憶し、例えば、メインメモリとして機能する揮発性メモリ(DRAM、SRAM等)と、不揮発性メモリ(ROM、フラッシュメモリ等)とで構成される。
【0053】
入力デバイス216は、例えば、キーボード、マウス、テンキー、電子ペン等で構成される。表示デバイス218は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー、プロジェクタ等で構成される。入力デバイス216及び表示デバイス218は、タッチパネルディスプレイのように、一体的に構成されていてもよい。ストレージ装置220は、例えば、HDD、SSD等で構成され、オペレーティングシステムやプログラム230の実行に必要な各種のデータを記憶する。
【0054】
通信I/F部222は、インターネットやイントラネット等のネットワーク240に有線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って他のコンピュータとの間でデータの
送受信を行う。外部機器I/F部224は、プリンタ、スキャナ等の外部機器250に有線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って外部機器250との間でデータの送受信を行う。I/OデバイスI/F部226は、各種のセンサ、アクチュエータ等のI/Oデバイス260に接続され、I/Oデバイス260との間で、例えば、センサによる検出信号やアクチュエータへの制御信号等の各種の信号やデータの送受信を行う。メディア入出力部228は、例えば、DVDドライブ、CDドライブ等のドライブ装置で構成され、DVD、CD等のメディア270に対してデータの読み書きを行う。
【0055】
上記構成を有するコンピュータ200において、プロセッサ212は、プログラム230をメモリ214のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス210を介してコンピュータ200の各部を制御する。なお、プログラム230は、メモリ214の代わりに、ストレージ装置220に記憶されていてもよい。プログラム230は、インストール可能なファイル形式又は実行可能なファイル形式でCD、DVD等の非一時的な記録媒体に記録され、メディア入出力部228を介してコンピュータ200に提供されてもよい。プログラム230は、通信I/F部222を介してネットワーク240経由でダウンロードすることによりコンピュータ200に提供されてもよい。また、コンピュータ200は、プロセッサ212がプログラム230を実行することで実現する各種の機能を、例えば、FPGA、ASIC等のハードウエアで実現するものでもよい。
【0056】
コンピュータ200は、例えば、据置型コンピュータや携帯型コンピュータで構成され、任意の形態の電子機器である。コンピュータ200は、クライアント型コンピュータでもよいし、サーバ型コンピュータやクラウド型コンピュータでもよい。コンピュータ200は、データベース生成装置6及び状態判定装置7以外の他の装置に適用されてもよい。
【0057】
(データベース生成装置6)
図5は、本発明の実施形態に係るデータベース生成装置6の一例を示す概略ブロック図である。図6は、本発明の実施形態に係るデータベース2の一例を示すデータ構成図である。
【0058】
データベース生成装置6は、試験設備として動作し、試験対象とする流体圧駆動弁1を構成する使用環境10と主弁3と駆動装置4と電磁弁5との組合せ(試験対象の組合せ)毎に、試験対象とする流体圧駆動弁1にて所定の開閉操作が行われたときの動作状態を計測することで判定基準データを収集する。データベース生成装置6は、図5に示すように、記憶部60と、仮想負荷部61と、試験データ取得部62と、データベース登録部63とを備える。
【0059】
データベース生成装置6は、有線通信又は無線通信により各種の装置やシステムと通信可能に構成され、例えば、外部装置14や作業者用端末装置8等と接続される。
【0060】
データベース生成装置6は、例えば、図4に示すコンピュータ200で構成される。この場合、記憶部60は、ストレージ装置220で構成され、試験データ取得部62及びデータベース登録部63は、プロセッサ212等で構成される。
【0061】
記憶部60は、データベース2等の各種のデータを記憶する。データベース2は、図6に示すように、複数種の使用環境10と、複数種の主弁3と、複数種の駆動装置4と、1又は複数種の電磁弁5との組合せ毎に、流体圧駆動弁1にて所定の開閉操作が行われたときの動作状態の基準となる判定基準データをそれぞれ対応付けて登録可能に構成される。データベース2は、新たなレコードを登録するだけでなく、登録済みのレコードを検索、抽出して参照したり、更新又は削除したりすることが可能である。
【0062】
なお、図6に示すデータベース2では、説明の簡略化のため、使用環境10、主弁3、駆動装置4及び電磁弁5の各フィールドのデータとして符号を記載したが、使用環境10のフィールドには、使用環境10の条件を特定する情報が入力され、主弁3、駆動装置4及び電磁弁5のフィールドには、それぞれの種類を特定する情報(例えば、機種名、型名、型番等)がそれぞれ入力される。
【0063】
仮想負荷部61は、複数種の主弁3と複数種の使用環境10との各組合せに対して、使用環境10にて主弁3が駆動されたときの負荷状態を仮想的に再現可能な装置で構成される。仮想負荷部61は、例えば、ディスクブレーキ装置で構成され、第2の軸12bに連結される。ディスクブレーキ装置は、第2の軸12bに対する制動力を調整することで、試験対象とする使用環境10にて試験対象とする主弁3が駆動されたときに第2の軸12bに作用する負荷状態を再現する。
【0064】
試験データ取得部62は、試験対象の組合せに対応する仮想的な流体圧駆動弁1Aにて開閉操作が行われたときの判定基準データを取得する。なお、開閉操作は、複数回行われてもよく、その場合には、試験データ取得部62は、各回のデータを平均化したり、代表のデータを選択したりすることで判定基準データを取得すればよい。
【0065】
試験対象の組合せに対応する仮想的な流体圧駆動弁1Aは、試験対象とする使用環境10及び主弁3を再現する負荷状態が設定された仮想負荷部61と、試験対象とする駆動装置4及び電磁弁5とから構成される。すなわち、仮想的な流体圧駆動弁1Aは、仮想負荷部61と、仮想負荷部61に第1の軸12a及び第2の軸12bを介して連結された試験対象の駆動装置4と、第1の軸12aに連結された第3の軸12cが挿入される試験対象の電磁弁5とから構成される。
【0066】
複数種の使用環境10に対する判定基準データや、複数種の主弁3に対する判定基準データを取得する場合には、駆動装置4及び電磁弁5を交換することなく、仮想負荷部61に対する負荷状態の設定が変更されることで、それらの試験対象の組合せに対応する仮想的な流体圧駆動弁1Aが構成される。複数種の駆動装置4に対する判定基準データを取得する場合には、試験対象の駆動装置4が交換される必要があり、複数種の電磁弁5に対する判定基準データを取得する場合には、試験対象の電磁弁5が交換される必要がある。
【0067】
試験データ取得部62は、試験対象とする電磁弁5に通信ケーブル140(無線通信の場合には不要)を介して接続されて、電磁弁5のセンサ群53により計測された計測結果に基づいて判定基準データを取得する。
【0068】
この場合、試験データ取得部62は、仮想的な流体圧駆動弁1Aにて開閉操作が行われたときの動作状態として、開閉操作における主弁3の弁開度の時系列データ、及び、開閉操作中に電磁弁5から駆動装置4に給排される空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データを少なくとも含む判定基準データを取得する。
【0069】
主弁3の弁開度は、主弁開度センサ532により計測される。空気Aの電磁弁出力側圧力は、電磁弁5から駆動装置4に給排される空気Aの圧力であって、電磁弁5から駆動装置4に空気Aが供給されるときの空気A(給気)の圧力と、駆動装置4から電磁弁5を介して外気に空気Aが排出されるときの空気A(排気)の圧力とを含む。空気Aの電磁弁出力側圧力は、第2の圧力センサ531により計測される。
【0070】
また、データベース生成装置6が、試験設備用のセンサ群64を備える場合には、試験データ取得部62は、試験設備用のセンサ群64により計測された計測結果に基づいて判定基準データを取得してもよい。試験設備用のセンサ群64は、例えば、第1の軸12a
と第2の軸12bとの間に作用する第1の作用トルクを計測する第1のトルクセンサ640Aと、第1の軸12aと第2の軸12bとの間に作用する第1の作用トルクを計測する第2のトルクセンサ640Bの少なくとも一方を含む。
【0071】
この場合、試験データ取得部62は、仮想的な流体圧駆動弁1Aにて開閉操作が行われたときの動作状態として、主弁3の弁開度の時系列データ及び空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データに加えて又は代えて、開閉操作中に弁軸12に作用する作用トルクの時系列データを少なくとも含む判定基準データを取得する。作用トルクは、第1のトルクセンサ640A及び第2のトルクセンサ640Bの少なくとも一方により計測される。
【0072】
時系列データは、所定期間内の異なる複数の時点でそれぞれ計測された複数のデータで構成されたものであり、例えば、所定のサンプリング周期で取得される。本実施形態では、主弁3の弁開度の時系列データ、空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データ、及び、作用トルクの時系列データは、同一のサンプリング周期及び同一の位相(位相差がない状態)で複数の時点で計測されたものとするが、サンプリング周期及び位相の少なくとも一方が異なるものでもよい。
【0073】
所定期間は、主弁3の開閉操作が行われる期間であり、例えば、流体圧駆動弁1におけるストロークテストを実行したときの実行期間に相当する。所定期間は、ストロークテストの実行期間のうちテスト開始からテスト終了までの全期間でもよいし、そのうちの一部の期間でもよい。したがって、所定期間は、例えば、フルストロークテストの全期間(全開状態→全閉状態→全開状態)やパーシャルストロークテストの全期間(全開状態→部分的な閉状態)でもよいし、フルストロークテストの一部の期間(全開状態→全閉状態、又は、全閉状態→全開状態等)やパーシャルストロークテストの一部の期間(全開状態→部分的な閉状態、部分的な閉状態→全開状態等)でもよいし、これらに限られない。
【0074】
オプションとして、判定基準データは、主弁開度センサ532及び第2の圧力センサ531以外のセンサ群53により計測された計測結果に基づいて取得されてもよい。例えば、判定基準データは、空気供給源13から電磁弁5に供給される空気Aの電磁弁入力側圧力の時系列データ、空気Aの電磁弁入力側圧力と電磁弁出力側圧力との差圧の時系列データ、ソレノイド部52の制御パラメータ(供給電圧、通電時の電流値、非通電時の抵抗値、磁気の強さ等)の時系列データ、電磁弁5の温度の時系列データ、流体圧駆動弁1の総稼働時間、流体圧駆動弁1に対して最後に電源が投入されてからの稼働時間、主弁3の作動回数、駆動装置4の作動回数、電磁弁5(主にソレノイド部52)の作動回数、及び、主弁3の開閉時間をさらに含むものでもよい。
【0075】
なお、試験データ取得部62は、正常な状態の流体圧駆動弁1にて開閉操作が行われたときの動作状態を学習モデルに入力することで、開閉操作が行われたときの動作状態と流体圧駆動弁1の正常な状態との相関関係を機械学習させた学習モデルを、判定基準データとして取得してもよい。ここでの機械学習は、教師なし学習と呼ばれるものであり、例えば、ニューラルネットワーク(ディープラーニングを含む)、クラスタリング、多変量解析、サポートベクターマシン等の任意の機械学習手法を採用すればよい。
【0076】
データベース登録部63は、試験対象とする使用環境10と主弁3と駆動装置4と電磁弁5との組合せに対して、仮想的な流体圧駆動弁1Aにて取得された判定基準データを対応付けてデータベース2に登録する。すなわち、データベース登録部63は、試験データ取得部62が判定基準データを取得したときの仮想的な流体圧駆動弁1Aを構成する試験対象の組合せと、その判定基準データとを対応付けた新たなレコード(図6における1行分のデータ)をデータベース2に登録(追加)する。
【0077】
(データベース生成方法)
図7は、本発明の実施形態に係るデータベース生成装置6によるデータベース生成方法の一例を示すフローチャートである。
【0078】
まず、ステップS100において、作業者が、作業者用端末装置8を操作し、試験対象とする流体圧駆動弁1を構成する使用環境10と主弁3と駆動装置4と電磁弁5との組合せ(試験対象の組合せ)を指定すると、データベース生成装置6のデータベース登録部63は、その指定操作を受け付ける。
【0079】
次に、ステップS110において、作業者が、仮想負荷部61に対して、試験対象とする駆動装置4及び電磁弁5を取り付ける。このとき、仮想負荷部61と試験対象の駆動装置4とは、第1の軸12a及び第2の軸12bを介して連結されるとともに、試験対象の駆動装置4と試験対象の電磁弁5とは、第1の軸12a及び第3の軸12cを介して連結される。また、必要に応じて、第1のトルクセンサ640Aが、第1の軸12a及び第2の軸12bの間に取り付けられるとともに、第2のトルクセンサ640Bが、第1の軸12a及び第3の軸12cの間に取り付けられる。
【0080】
次に、ステップS120において、作業者が、仮想負荷部61に対して試験対象とする使用環境10及び主弁3の組合せを再現する負荷状態を設定することにより、試験対象の組合せに対応する仮想的な流体圧駆動弁1Aが構成される。なお、仮想負荷部61が、負荷状態を自動で設定可能に構成されている場合には、仮想負荷部61は、ステップS100で指定された試験対象の組合せに応じたデータに従って負荷状態を自動で設定する。
【0081】
次に、ステップS130において、作業者が、作業者用端末装置8を操作し、設定作業が完了した旨を入力すると、試験データ取得部62が、その設定完了操作を受け付けて、仮想的な流体圧駆動弁1Aにて開閉操作を実施する。
【0082】
そして、ステップS140において、試験データ取得部62は、ステップS130と並行して、その開閉操作が行われたときに、電磁弁5のセンサ群53により計測された計測結果に基づいて判定基準データを取得する。試験データ取得部62は、例えば、主弁開度センサ532及び第2の圧力センサ531によりそれぞれ計測された計測結果に基づいて、判定基準データとして、主弁3の弁開度の時系列データ及び空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データを取得する。
【0083】
次に、ステップS150において、データベース登録部63は、ステップS100で指定された試験対象の組合せに対して、ステップS140で取得された判定基準データを対応付けてデータベース2に登録する。
【0084】
次に、ステップS160において、作業者が、作業者用端末装置8を操作し、他の試験対象の組合せがあるか否かを指示すると、データベース登録部63は、その指示操作を受け付ける。
【0085】
ステップS160で受け付けた指示操作が、他の試験対象の組合せがあることを指示する場合には(ステップS160で「Yes」)、ステップS100に戻る。そして、ステップS100において、データベース登録部63は、他の試験対象の組合せの指定操作を受け付けることになるが、試験対象とする使用環境10又は試験対象とする主弁3の少なくとも一方のみが変更された場合には、ステップS110を省略し、ステップS120にて、変更後の使用環境10及び主弁3の組合せを再現する負荷状態が設定される。また、試験対象とする駆動装置4又は試験対象とする電磁弁5の少なくとも一方が変更された場合には、ステップS110にて、作業者は、変更後の駆動装置4に交換するか、又は、変
更後の電磁弁5に交換するか、変更後の駆動装置4及び電磁弁5に交換する。
【0086】
一方、ステップS160で受け付けた指示操作が、他の試験対象の組合せがないことを指示する場合には(ステップS160で「No」)、図7に示すデータベース生成方法を終了する。データベース生成方法において、ステップS130、S140が試験データ取得工程、ステップS150がデータベース登録工程に相当する。
【0087】
以上のように、本実施形態に係るデータベース生成装置6及びデータベース生成方法によれば、試験対象とする使用環境10及び主弁3の組合せに応じた負荷状態が仮想負荷部61により再現されることで仮想的な流体圧駆動弁1Aが構成されるので、使用環境10及び主弁3の各組合せも含めて実設備をそれぞれ用意する必要がなく、仮想的な流体圧駆動弁1Aにて開閉操作が行われたときの判定基準データが取得される。したがって、使用環境10、主弁3、駆動装置4、及び、電磁弁5という4つの要素からなる試験対象の組合せ毎に、判定基準データを簡単に収集することができる。
【0088】
(状態判定装置7)
図8は、本発明の実施形態に係る状態判定装置7の一例を示す概略ブロック図である。
【0089】
状態判定装置7は、データベース2を用いて、所定の使用環境10にて使用される流体圧駆動弁1の状態を判定する。状態判定装置7は、図8に示すように、記憶部70、判定基準データ取得部71と、判定対象データ取得部72と、状態判定部73と、出力処理部74とを備える。
【0090】
状態判定装置7は、例えば、図4に示すコンピュータ200で構成される。この場合、記憶部70は、ストレージ装置220で構成され、判定基準データ取得部71、判定対象データ取得部72、状態判定部73及び出力処理部74は、プロセッサ212等で構成される。
【0091】
記憶部70は、データベース2等の各種のデータを記憶する。データベース2は、任意の通信網又は記憶媒体を介してデータベース生成装置6から提供されたものである。その場合、データベース2は、全てのデータを含んでいてもよいし、一部のデータに限定されたものでもよい。
【0092】
判定基準データ取得部71は、記憶部70に記憶されたデータベース2を参照し、判定対象とする流体圧駆動弁1Bを構成する使用環境10と主弁3と駆動装置4と電磁弁5との組合せ(判定対象の組合せ)に対応付けられた判定基準データを取得する。
【0093】
例えば、状態判定装置7が、図8の実線の枠で示すように、判定対象の組合せ(使用環境10、主弁3、駆動装置4、電磁弁5)を特定した場合には、図6に示すデータベース2において、ID「4」に対応付けられた判定基準データ「Data4A」、「Data4B」を取得する。なお、状態判定装置7が、電磁弁5のコントローラ540内に組み込まれている場合には、判定基準データ取得部71は、当該電磁弁5が取り付けられた使用環境10と主弁3と駆動装置4とを特定することにより、判定対象の組合せを特定し、その組合せに対応付けられた判定基準データを取得すればよい。また、判定対象の組合せを示す流体圧駆動弁1の仕様データが、流体圧駆動弁1の組立時に記憶部70に記憶されてもよく、その場合、判定基準データ取得部71は、仕様データを参照し、判定対象の組合せを特定してもよい。
【0094】
データベース2は、外部装置14等に記憶されていてもよく、その場合、判定基準データ取得部71は、外部装置14等に記憶されたデータベース2を参照し、判定基準データ
を取得すればよい。その際、判定基準データ取得部71は、その判定基準データを記憶部70に記憶し、それ以降は記憶部70を参照してもよい。
【0095】
判定対象データ取得部72は、判定対象とする流体圧駆動弁1Bにて開閉操作が行われたときの動作状態を判定対象データとして取得する。判定対象データ取得部72は、判定対象とする流体圧駆動弁1Bを構成する電磁弁5に通信ケーブル140(無線通信の場合には不要)を介して接続されて、電磁弁5のセンサ群53により計測された計測結果に基づいて判定対象データを取得する。なお、状態判定装置7が、図3に示すように、コントローラ540に組み込まれている場合には、判定対象データ取得部72は、通信ケーブル140を介することなく、センサ群53から判定対象データを取得すればよい。
【0096】
この場合、判定対象データ取得部72は、判定対象とする流体圧駆動弁1Bにて開閉操作が行われたときの動作状態として、開閉操作における主弁3の弁開度の時系列データ、及び、開閉操作中に電磁弁5から駆動装置4に給排される空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データを少なくとも含む判定対象データを取得する。
【0097】
なお、判定対象データ取得部72は、電磁弁5のセンサ群53に接続されるが、判定基準データに含まれるデータの種類や形式に合わせて、センサ群53の一部に接続されてもよいし、センサ群53の全てに接続されてセンサ群53の計測結果から判定対象データとして取得するデータを選択してもよい。
【0098】
状態判定部73は、判定基準データと判定対象データとに基づいて、判定対象とする流体圧駆動弁1Bの状態を判定する。状態判定部73は、流体圧駆動弁1Bの状態として、例えば、正常な状態であるか、異常な状態であるか、すなわち、異常の有無を判定(診断)する。
【0099】
なお、異常な状態は、例えば、異常の具体的な内容や度合いに応じた複数の異常な状態を含んでいてもよい。この場合、状態判定部73は、流体圧駆動弁1Bの状態として、正常な状態であるか、複数の異常な状態のうちのいずれに該当するかを判定する。
【0100】
また、異常な状態は、判定時点において異常の発生が判明したような事後的な異常だけなく、判定時点では正常と判断される許容範囲ではあるが、将来的な異常の発生が予見されたような異常の兆候も含んでいてもよい。この場合、状態判定部73は、流体圧駆動弁1Bの状態として、正常な状態であるか、予め設定された余寿命の期間(例えば、数時間、数日、数ヶ月、又は、数年等)以内の異常な状態であるかを判定する。さらに、状態判定部73は、流体圧駆動弁1Bの状態として、正常な状態であるか、予め設定された複数の余寿命の期間以内の異常な状態のうちのいずれに該当するかを判定してもよい。
【0101】
状態判定部73が判定対象とする流体圧駆動弁1Bの状態を判定する手法は、判定基準データ及び判定対象データに含まれるデータの種類や形式に合わせて適宜選択される。
【0102】
判定基準データ及び判定対象データが、動作状態として、主弁3の弁開度の時系列データ及び空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データを含むものであるとき、状態判定部73は、判定基準データと判定対象データとを比較したときの類似度に基づいて流体圧駆動弁1Bの異常の有無を判定する。
【0103】
また、判定基準データが、作用トルクの時系列データを含むものであるとき、状態判定部73は、判定対象データに含まれる主弁3の弁開度の時系列データ及び空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データを所定の推定式や学習モデルに入力することで作用トルクの時系列データを推定し、判定基準データ(作用トルクの時系列データ)とその推定した作用
トルクの時系列データとを比較したときの類似度に基づいて流体圧駆動弁1Bの異常の有無を判定する。
【0104】
類似度は、例えば、判定基準データに含まれる時系列データと、判定対象データに含まれる時系列データとをそれぞれ時間推移のグラフで表したときの各時刻における両データの差分値を求め、各時刻の差分値を合計した合計値や、各時刻の差分値に対する統計値(例えば、平均値、標準偏差等)に基づいて算出される。この場合、合計値や統計値が小さいほど類似度が高くなるものとして扱い、状態判定部73は、類似度が所定の閾値以上である場合には正常な状態と判定し、そうでない場合には異常な状態と判定する。なお、類似度は、例えば、各グラフを代表する統計値(例えば、回帰式の回帰係数等)の差分値を求め、その差分値に基づいて算出されてもよい。
【0105】
また、判定基準データが、正常な状態の流体圧駆動弁1にて開閉操作が行われたときの動作状態と流体圧駆動弁1の正常な状態との相関関係を機械学習させた学習モデルであるとき、状態判定部73は、判定対象データを学習モデルに入力することにより、流体圧駆動弁1Bの異常の有無を判定する。学習モデルは、例えば、判定対象データが入力データとして入力されることで出力データを出力するものであり、状態判定部73は、その入力データに基づく特徴量と、その出力データに基づく特徴量との差分値を求め、その差分値が所定の閾値以下である場合には正常な状態と判定し、そうでない場合には異常な状態と判定する。なお、特徴量は、例えば、多次元空間上の特徴ベクトルとして表現されるパラメータであり、差は、特徴ベクトル間の距離として表現される。
【0106】
出力処理部74は、状態判定部73の判定結果として、判定対象とする流体圧駆動弁1Bの診断情報を出力する出力処理を行う。具体的な出力手段は、種々の手段を採用することが可能である。出力処理部74は、例えば、診断情報を、表示や音で作業者に報知したり、流体圧駆動弁1Bの診断履歴として、例えば、記憶部70に記憶したり、外部装置14に送信したりしてもよい。
【0107】
(状態判定方法)
図9は、本発明の実施形態に係る状態判定装置7による状態判定方法の一例を示すフローチャートである。以下では、状態判定装置7が組み込まれたコントローラ540が、判定対象とする流体圧駆動弁1Bが、正常な状態であるか、異常な状態であるかを判定するものとして説明する。
【0108】
外部電源15から流体圧駆動弁1に電力が供給されるとともに、空気供給源13から流体圧駆動弁1に空気Aが供給された状態において、所定の試験運転条件が満たされた場合、図9に示す一連の状態判定方法が、コントローラ540(状態判定装置7)にて実行される。
【0109】
まず、ステップS200において、コントローラ540(判定基準データ取得部71)は、データベース2を参照し、判定対象とする流体圧駆動弁1Bを構成する使用環境10と主弁3と駆動装置4と電磁弁5との組合せ(判定対象の組合せ)に対応付けられた判定基準データを取得する。
【0110】
次に、ステップS210において、バルブテストスイッチ541は、コントローラ540からの指令を受けて、所定の開閉操作を行う試験運転として、流体圧駆動弁1Bのストロークテストを実行する。
【0111】
次に、ステップS220において、コントローラ540(判定対象データ取得部72)は、電磁弁5のセンサ群53により計測された計測結果に基づいて、開閉操作が行われた
ときの動作状態を判定対象データとして取得する。
【0112】
次に、ステップS230において、コントローラ540(状態判定部73)は、ステップS200で取得した判定基準データとステップS220で取得した判定対象データとに基づいて、流体圧駆動弁1Bの状態を判定する。
【0113】
次に、ステップS240において、コントローラ540(出力処理部74)は、ステップS230における状態判定部73の判定結果である流体圧駆動弁1Bの診断情報が、「正常」及び「異常」のいずれを表すかを判定し、「正常」と判定した場合には(ステップS240:「正常」)、ステップS250に進み、「異常」と判定した場合には(ステップS240:「異常」)、ステップS260に進む。
【0114】
そして、ステップS250において、コントローラ540(出力処理部74)は、「正常」を表す情報を出力する。なお、ステップS250は省略されてもよい。
【0115】
また、ステップS260において、コントローラ540(出力処理部74)は、「異常」を表す情報を出力し、図9に示す一連の状態判定方法を終了する。状態判定方法において、ステップS200が判定基準データ取得工程、ステップS220が判定対象データ取得工程、ステップS230が状態判定工程、ステップS240~S260が出力処理工程に相当する。
【0116】
以上のように、本実施形態に係る状態判定装置7及び状態判定方法によれば、作業者の経験に依存することなく、流体圧駆動弁1の状態を高精度に判定(診断)することができる。
【0117】
(他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に制約されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【0118】
上記実施形態では、流体圧駆動弁1を構成する主弁3が複数種である場合について説明したが、主弁3は1種でもよい。流体圧駆動弁1を構成する駆動装置4が複数種である場合について説明したが、駆動装置4は1種でもよい。上記実施形態では、流体圧駆動弁1を構成する電磁弁5が複数種である場合について説明したが、電磁弁5は1種でもよい。
【0119】
(データベース2の変形例)
図10は、本発明の実施形態に係るデータベース2の変形例を示すデータ構成図である。図10に示すデータベース2は、図6に示す使用環境10及び主弁3のフィールドに代えて、負荷状態L(L1、L2、…、Lt)(添え字tは、任意の整数であり、負荷Lの種類の数を示す)のフィールドを有する。負荷状態Lのフィールドには、使用環境10及び主弁3の組合せに応じたデータとして、例えば、第2の軸12b(弁軸12)が0度~90度の範囲で回動されたときの負荷の大きさや変化量が登録される。
【0120】
データベース生成装置6のデータベース登録部63が、試験対象の組合せに対して判定データを対応付けて、図10に示すデータベース2に登録する場合(図7のステップS150)、ステップS120にて仮想負荷部61に対して設定された負荷状態Lを、データベース2(負荷状態Lのフィールド)に登録する。
【0121】
状態判定装置7の状態判定部73が、図10に示すデータベース2を用いて判定対象とする流体圧駆動弁1Bの状態を判定する場合(図9のステップS230)、ステップS2
00の前準備として、作業者が、判定対象とする流体圧駆動弁1Bにおいて第2の軸12bを手動で回動させたときの負荷状態Lを、例えば、仮設置のトルクセンサ等を用いて計測する。そして、負荷状態Lの計測結果が、使用環境10及び主弁3の組合せに応じたデータとして状態判定装置7に入力されると、ステップS200において、判定基準データ取得部71が、図10に示すデータベース2を参照し、判定対象とする流体圧駆動弁1Bを構成する負荷状態L(使用環境10と主弁3とを内在)と駆動装置4と電磁弁5との組合せ(判定対象の組合せ)に対応付けられた判定基準データを取得する。
【0122】
例えば、作業者による負荷状態Lの計測結果が、負荷状態L2に一致(所定の範囲内の場合に一致するものとしてもよい)する場合、状態判定装置7は、図8の実線の枠で示すように、判定対象の組合せ(負荷状態L2(使用環境10及び主弁3の組合せに相当)、駆動装置4、電磁弁5)を特定し、図10に示すデータベース2において、ID「4」に対応付けられた判定基準データ「Data4A」、「Data4B」を取得する。そして、ステップS210以降の工程は、上記実施形態と同様のため説明を省略する。
【0123】
(学習モデルの変形例)
上記実施形態では、判定基準データが、教師なし学習による学習モデルである場合について説明したが、学習モデルは、その変形例として複数の学習モデルで構成されていてもよい。以下では、判定基準データが、教師なし学習による複数の学習モデルで構成される場合について、上記実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0124】
図11は、本発明の実施形態に係る学習モデルの変形例における機械学習の学習フェーズを説明する図である。図12は、本発明の実施形態に係る学習モデルの変形例における機械学習の推論フェーズを説明する図である。
【0125】
まず、学習モデルの変形例における機械学習の学習フェーズを説明する。試験データ取得部62は、正常な状態の流体圧駆動弁1にて開閉操作が行われたときの動作状態を、所定の基準により複数の動作区分に分割し、動作区分毎の動作状態を動作区分に対応する複数の学習モデルにそれぞれ入力することで、開閉操作が行われたときの動作状態と流体圧駆動弁1の正常な状態との相関関係を複数の動作区分毎に機械学習させた複数の学習モデル(正常モデル)を、判定基準データとして取得する。
【0126】
動作状態を複数の動作区分に分割するにあたっては、動作状態のうち例えば開閉操作における主弁3の弁開度を基準にしてもよい。この場合、図11に示すように、まず、試験データ取得部62は、正常な状態の流体圧駆動弁1にて開閉操作が行われたときの主弁3の弁開度の時系列データや空気Aの電磁弁出力側圧力の時系列データ等の動作状態を複数セット収集し、収集した動作状態を弁開度の所定の範囲を基準に分割する。図11では、例として、弁開度0―10%の動作区分、弁開度10―20%の動作区分、弁開度20―30%の動作区分・・・のように、収集した動作状態を、弁開度を基準として0―100%のうちで10%刻み、すなわち10の動作区分に分割している。
【0127】
次に、試験データ取得部62は、分割された動作区分毎に用意された学習モデルに、動作区分に対応する収集した動作状態を入力する。例えば、弁開度0―10%の動作区分に分けられた動作状態は、弁開度0―10%の動作区分に対応する学習モデルに入力される。
【0128】
そして、動作区分に対応するそれぞれの学習モデルは、入力された動作区分毎の動作状態に基づき、開閉操作が行われたときの動作状態と流体圧駆動弁1の正常な状態との相関関係を機械学習することで、動作区分毎の流体圧駆動弁1の正常な状態を表す正常モデルとなる。試験データ取得部62は、これら動作区分毎の複数の学習モデル(正常モデル)
について、判定基準データとして取得する。
【0129】
データ取得部62は、こうして作成した正常モデルを判定基準データとして取得してもよい。ここでの機械学習は教師なし学習と呼ばれるものであり、図11では教師なし学習の手法の一つであるクラスタリングを用いて正常モデルを作成した例を挙げている。
【0130】
次に、学習モデルの変形例における機械学習の推論フェーズを説明する。判定基準データが、正常な状態の流体圧駆動弁1にて開閉操作が行われたときの動作状態を、所定の基準により複数の動作区分に分割し、開閉操作が行われたときの動作状態と流体圧駆動弁1の正常な状態との相関関係を複数の動作区分毎に機械学習させた複数の学習モデル(正常モデル)であるとき、状態判定部73は、判定対象データを、上述した学習フェーズにおいて生成した複数の正常モデルのうち判定対象データが含まれる動作区分の正常モデルに入力することにより、判定対象とする流体圧駆動弁1Bの異常の有無を判定する。
【0131】
まず、判定対象データ取得部72は、判定対象とする流体圧駆動弁1Bから判定対象データを取得する。状態判定部73は、学習フェーズにおいて生成した複数の正常モデルのうち、判定対象データが含まれる動作区分の正常モデルを選択する。図12では、学習フェーズで生成された正常モデルの一例として、弁開度0―10%の動作区分、弁開度10―20%の動作区分、弁開度20―30%の動作区分・・・のように、収集した動作状態を、弁開度を基準として0―100%のうちで10%刻み、すなわち10の動作区分に分割したもののうち、弁開度50―60%の正常モデルを表しており、判定対象データ取得部72が弁開度55%の判定対象データを取得したことによって、状態判定部73が動作区分毎に機械学習した複数の正常モデルのうち、弁開度50―60%の正常モデルを選択していることを表している。
【0132】
そして、状態判定部73は、選択した正常モデルに判定対象データ(弁開度55%の判定対象データ)を入力し、流体圧駆動弁1Bの異常の有無を判定する。正常モデルを用い、判定対象データを入力して流体圧駆動弁1Bの異常の有無を判定する方法としては、例えば、教師なし学習のアルゴリズムの一つであるクラスタリングを用いることができる。
【0133】
クラスタリングを用いた異常判定の手法は、学習フェーズにおいて、学習データである特定の状態(例えば正常状態)の複数の入力データを用いて学習モデルを機械学習し、学習済みの学習モデルに基づいて、特定の状態の入力データに対応する特徴量の集合を生成し、生成された集合に基づいて正常・異常の判断のための閾値を設定し、推論フェーズにおいて、判定対象となる入力データを取得し、判定対象となる入力データを学習モデルに入力して対応する特徴量を生成し、生成された特徴量が正常・異常の判断のための閾値を超えるか否かによって、判定対象となる入力データが正常であるか異常であるかを判断する。その他クラスタリングの手法には、マハラノビス距離を用いるものや、ダイナミック・タイム・ワーピングを用いるもの等があり、本発明においては任意の手法を用いることができる。
【0134】
上記以外にも、正常な状態の流体圧駆動弁1にて開閉操作が行われたときの動作状態を複数の動作区分に分割する基準は、弁開度に限られず、開閉操作中に電磁弁5から駆動装置4に給排される駆動流体の電磁弁出力側圧力や、開閉操作中に弁軸12に作用する作用トルクのような他の変数としてもよい。また、異なる2種類以上の変数の組み合わせを、動作状態を複数の動作区分に分割する基準として用いてもよい。さらに、分割する動作区分の数も10に限られず、任意の数を設定してよい。
【0135】
(プログラム)
本発明は、図4に示すコンピュータ200を、上記実施形態に係るデータベース生成装
置6が備える各部として機能させるプログラム(データベース生成プログラム)230の態様で提供することができる。また、本発明は、図4に示すコンピュータ200を、上記実施形態に係る状態判定装置7が備える各部として機能させるプログラム(状態判定プログラム)230の態様で提供することができる。
【符号の説明】
【0136】
1…流体圧駆動弁、1A…仮想的な流体圧駆動弁、1B…判定対象の流体圧駆動弁、
2…データベース、3…主弁、4…駆動装置、5…電磁弁、
6…データベース生成装置、7…状態判定装置、8…作業者用端末装置、
10…使用環境、11…配管、
12…弁軸、12a…第1の軸、12b…第2の軸、12c…第3の軸、
13…空気供給源、14…外部装置、15…外部電源、
30…弁箱、31…弁体、
40…シリンダ、41…ピストンロッド、42A…第1のピストン、
42B…第2のピストン、43…コイルばね、44…空気給排口、
45…伝達機構、47…スプリング室、48…シリンダ室、
50…収容部、51…スプール部、52…ソレノイド部、53…センサ群、
54…制御部、55…通信部、56…電源回路部、
60…記憶部、61…仮想負荷部、62…試験データ取得部、
63…データベース登録部、64…センサ群、
70…記憶部、71…判定基準データ取得部、72…判定対象データ取得部、
73…状態判定部、74…出力処理部、
100…運転支援システム、120…永久磁石、
130…第1の空気配管、131…第2の空気配管、
140…通信ケーブル、150…電力ケーブル、200…コンピュータ、
500…軸挿入口、501…ケーブル挿入口、502…第1の流路、
503…第2の流路、510…入力ポート、511…出力ポート、512…排気ポート、530…第1の圧力センサ、531…第2の圧力センサ、532…主弁開度センサ、
533…電圧センサ、534…抵抗センサ、535…温度センサ、
536…磁気センサ、537…稼働時間計、538…作動カウンタ、
540…コントローラ、541…バルブテストスイッチ、
640A…第1のトルクセンサ、640B…第2のトルクセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12