(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093273
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】エアコンディショナー用処理剤、エアコンディショナー用エアゾールおよびエアコンディショナー内の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C11D 17/04 20060101AFI20220616BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20220616BHJP
C11D 3/24 20060101ALI20220616BHJP
C11D 1/66 20060101ALI20220616BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
C11D17/04
C11D3/48
C11D3/24
C11D1/66
B08B3/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184868
(22)【出願日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2020205753
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木藤 舜
(72)【発明者】
【氏名】伊東 寛明
(72)【発明者】
【氏名】桐野 学
【テーマコード(参考)】
3B201
4H003
【Fターム(参考)】
3B201AA13
3B201AA47
3B201AB52
3B201BB21
3B201BB92
3B201BB95
3B201BB98
4H003AA03
4H003AC08
4H003AC23
4H003BA20
4H003DA05
4H003DA12
4H003DA14
4H003DB01
4H003DC03
4H003EA25
4H003EB21
4H003ED02
4H003ED19
4H003ED26
4H003FA01
4H003FA04
4H003FA07
4H003FA16
4H003FA34
(57)【要約】
【課題】本発明は、洗浄性、噴霧時の液剤の拡散性および防カビ性を維持しつつ、保存性および非引火性を有するエアコンディショナー用処理剤を提供することを目的とする。
【解決手段】原液組成物と、噴射剤と、を含み、前記原液組成物は、(A)成分:水と、(B)成分:HLB6以上の界面活性剤と、(C)成分:防カビ剤と、を含み、前記噴射剤は、(D)成分:HFOを含み、前記原液組成物の全体を100体積%(25℃)としたときに前記噴射剤が15~75体積%(25℃)で含まれ、引火点を有さない、エアコンディショナー用処理剤。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液組成物と、噴射剤と、を含み、
前記原液組成物は、(A)成分:水と、(B)成分:HLB6以上の界面活性剤と、(C)成分:防カビ剤と、を含み、
前記噴射剤は、(D)成分:HFO(ハイドロフルオロオレフィン)を含み、
前記原液組成物の全体を100体積%(25℃)としたときに、前記噴射剤が15~75体積%(25℃)で含まれ、
引火点を有さない、エアコンディショナー用処理剤。
【請求項2】
前記(C)成分が、有機系防カビ剤または無機系防カビ剤である、請求項1に記載のエアコンディショナー用処理剤。
【請求項3】
エタノールを実質的に含まない、請求項1または2に記載のエアコンディショナー用処理剤。
【請求項4】
前記(B)成分が、ノニオン界面活性剤である、請求項1~3のいずれか1項に記載のエアコンディショナー用処理剤。
【請求項5】
前記(B)成分が、前記(A)成分100質量部に対して、0.01~20質量部で含まれる、請求項1~4のいずれか1項に記載のエアコンディショナー用処理剤。
【請求項6】
前記(C)成分が、前記(A)成分100質量部に対して、0.1~30質量部で含まれる、請求項1~5のいずれか1項に記載のエアコンディショナー用処理剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のエアコンディショナー用処理剤がエアゾール容器に加圧充填された、エアコンディショナー用エアゾール。
【請求項8】
前記エアゾール容器の噴射圧(25℃)が0.2~0.8MPaである、請求項7に記載のエアコンディショナー用エアゾール。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載のエアコンディショナー用処理剤または請求項7もしくは8に記載のエアコンディショナー用エアゾールを、エアコンディショナー内に設けられたエバポレータに直接噴霧してエバポレータを洗浄する、エアコンディショナー内のエバポレータの洗浄方法。
【請求項10】
エアコンディショナーの稼働中にブロアモーターファンの内気吸入口に、請求項1~6のいずれか1項に記載のエアコンディショナー用処理剤または請求項7もしくは8に記載のエアコンディショナー用エアゾールを噴霧し、前記ブロアモーターファンの内気吸入による空気の流れによって噴霧された前記エアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールのミストをエアコンディショナー内に設けられたエバポレータに到達させ、前記エバポレータを洗浄する、エアコンディショナー内のエバポレータの洗浄方法。
【請求項11】
エアコンディショナーを停止して、請求項1~6のいずれか1項に記載のエアコンディショナー用処理剤または請求項7もしくは8に記載のエアコンディショナー用エアゾールをエアコンディショナーの吹出口から内部へ噴霧し、噴霧された前記エアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールのミストをエアコンディショナー内の配管に到達させ、前記配管を洗浄する、エアコンディショナー配管の洗浄方法。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか1項に記載のエアコンディショナー用処理剤または請求項7もしくは8に記載のエアコンディショナー用エアゾールをエアコンディショナーの吹出口から内部へ噴霧し、噴霧された前記エアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールのミストをエアコンディショナー内の配管に到達させ、前記配管を洗浄する、エアコンディショナー配管の洗浄工程と、
エアコンディショナーの稼働中にブロアモーターファンの内気吸入口より、請求項1~6のいずれか1項に記載のエアコンディショナー用処理剤または請求項7もしくは8に記載のエアコンディショナー用エアゾールを噴霧し、前記ブロアモーターファンの内気吸入による空気の流れによって噴霧された前記エアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールのミストをエアコンディショナーに設けられたエバポレータに到達させ、前記エバポレータを洗浄する、エアコンディショナー内のエバポレータの洗浄工程と、を含むエアコンディショナー内の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンディショナー用処理剤、エアコンディショナー用エアゾールおよびエアコンディショナー内の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エアコンディショナーを長期間使用することで、エアコンディショナー内のエバポレータにほこりが付着したり、カビ、バクテリアなどが繁殖し、悪臭が発生することが知られている。これに対して、特許文献1には、アルコールおよび噴射剤からなるエアコンディショナー用処理剤が開示されており、前述の悪臭の元を取り除くことができると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたエアコンディショナー用処理剤は、噴霧時の液剤の拡散性、防カビ効果向上のためアルコールなどの有機溶剤を用いているが、アルコールが原因で引火の恐れがあり、安全性の点で問題があった。さらには、保存性についても配慮されていなかった。
【0005】
本発明は、上記の状況に鑑みてされたものであり、洗浄性、噴霧時の液剤の拡散性、防カビ性を維持しつつ、保存性、非引火性を有するエアコンディショナー用処理剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨を次に説明する。
【0007】
[1]原液組成物と、噴射剤と、を含み、前記原液組成物は、(A)成分:水と、(B)成分:HLB6以上の界面活性剤と、(C)成分:防カビ剤と、を含み、前記噴射剤は、(D)成分:HFOを含み、前記原液組成物の全体を100体積%(25℃)としたときに前記噴射剤が15~75体積%(25℃)で含まれ、引火点を有さない、エアコンディショナー用処理剤。
【0008】
[2]前記(C)成分が有機系防カビ剤または無機系防カビ剤である、[1]に記載のエアコンディショナー用処理剤。
【0009】
[3]エタノールを実質的に含まない、[1]または[2]に記載のエアコンディショナー用処理剤。
【0010】
[4]前記(B)成分が、ノニオン界面活性剤である、[1]~[3]のいずれかに記載のエアコンディショナー用処理剤。
【0011】
[5]前記(B)成分が、前記(A)成分100質量部に対して、0.01~20質量部で含まれる、[1]~[4]のいずれかに記載のエアコンディショナー用処理剤。
【0012】
[6]前記(C)成分が、前記(A)成分100質量部に対して、0.1~30質量部で含まれる、[1]~[5]のいずれかに記載のエアコンディショナー用処理剤。
【0013】
[7][1]~[6]のいずれかに記載のエアコンディショナー用処理剤がエアゾール容器に加圧充填された、エアコンディショナー用エアゾール。
【0014】
[8]前記エアゾール容器の噴射圧(25℃)が0.2~0.8MPaである、[7]に記載のエアコンディショナー用エアゾール。
【0015】
[9][1]~[6]のいずれかに記載のエアコンディショナー用処理剤または[7]もしくは[8]に記載のエアコンディショナー用エアゾールを、エアコンディショナー内に設けられたエバポレータに直接噴霧してエバポレータを洗浄する、エアコンディショナー内のエバポレータの洗浄方法。
【0016】
[10]エアコンディショナーの稼働中にブロアモーターファンの内気吸入口に、[1]~[6]のいずれかに記載のエアコンディショナー用処理剤または[7]もしくは[8]に記載のエアコンディショナー用エアゾールを噴霧し、前記ブロアモーターファンの内気吸入による空気の流れによって噴霧された前記エアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールのミストをエアコンディショナー内に設けられたエバポレータに到達させ、前記エバポレータを洗浄する、エアコンディショナー内のエバポレータの洗浄方法。
【0017】
[11]エアコンディショナーを停止して、[1]~[6]のいずれかに記載のエアコンディショナー用処理剤または[7]もしくは[8]に記載のエアコンディショナー用エアゾールをエアコンディショナーの吹出口から内部へ噴霧し、噴霧された前記エアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールのミストをエアコンディショナー内の配管に到達させ、前記配管を洗浄する、エアコンディショナー配管の洗浄方法。
【0018】
[12][1]~[6]のいずれかに記載のエアコンディショナー用処理剤または[7]もしくは[8]に記載のエアコンディショナー用エアゾールをエアコンディショナーの吹出口から内部へ噴霧し、噴霧された前記エアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールのミストをエアコンディショナー内の配管に到達させ、前記配管を洗浄する、エアコンディショナー配管の洗浄工程と、
エアコンディショナーの稼働中にブロアモーターファンの内気吸入口より、[1]~[6]のいずれかに記載のエアコンディショナー用処理剤または[7]もしくは[8]に記載のエアコンディショナー用エアゾールを噴霧し、前記ブロアモーターファンの内気吸入による空気の流れによって噴霧された前記エアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールのミストをエアコンディショナーに設けられたエバポレータに到達させ、前記エバポレータを洗浄する、エアコンディショナー内のエバポレータの洗浄工程と、を含むエアコンディショナー内の洗浄方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、洗浄性、噴霧時の液剤の拡散性、防カビ性を維持しつつ、保存性、非引火性を有するエアコンディショナー用処理剤を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】自動車用のエアコンディショナーを模式的に表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に発明の詳細を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。なお、本明細書において、「X~Y」は、その前後に記載される数値(XおよびY)を下限値および上限値として含む意味で使用し、「X以上Y以下」を意味する。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RH/常圧(1atm)の条件で行う。
【0022】
本発明のエアコンディショナー用処理剤は、原液組成物と;噴射剤と;を含み、前記原液組成物は、(A)成分:水と、(B)成分:HLB6以上の界面活性剤と、(C)成分:防カビ剤と、を含み、前記噴射剤は、(D)成分:HFOを含み、前記原液組成物の全体を100体積%(25℃)としたときに前記噴射剤が15~75体積%(25℃)で含まれ、引火点を有さない。よって、本発明におけるエアコンディショナー用処理剤とは、(A)~(C)成分を含む原液組成物と、(D)成分を含む噴射剤(噴射ガス)とを含む。一実施形態において、本発明におけるエアコンディショナー用処理剤とは、(A)~(C)成分を含む原液組成物と、(D)成分を含む噴射剤(噴射ガス)とから構成される。
【0023】
本発明のエアコンディショナー用処理剤は、引火点を有しておらず、非引火性である。また、本発明のエアコンディショナー用処理剤は、エタノールを実質的に含有しない。ここで、「エタノールを実質的に含有しない」とは、原液組成物の全質量に対するエタノールの含有量が0.01質量%以下、好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下である場合をいう。好ましい実施形態において、本発明のエアコンディショナー用処理剤は、エタノールを含有しない。
【0024】
ここで、本発明のエアコンディショナー用処理剤は、容器に加圧充填されてエアコンディショナー用エアゾールとして用いることを想定されたものである。すなわち、本発明のエアコンディショナー用エアゾールは、エアコンディショナー用処理剤を容器に加圧充填されてなるものである。
【0025】
「原液組成物」
原液組成物は、(A)成分:水と、(B)成分:HLB6以上の界面活性剤と、(C)成分:防カビ剤と、を含む。原液組成物は、より好ましくは後述する(E)成分をさらに含むことが挙げられる。
【0026】
<(A)成分>
本発明のエアコンディショナー用処理剤は、(A)成分として、水を含む。(A)成分は、原液組成物の含有成分として本発明のエアコンディショナー用処理剤に含まれる。(A)成分である水は、本発明のその他成分と組み合わせることにより、水系エアコンディショナー用処理剤であるため発火の危険性を減らすことができる。(A)成分としては、特に制限されないが、例えば、蒸留水が挙げられる。なお、本発明のエアコンディショナー用処理剤は非引火性である。エアコンディショナー用処理剤の原液組成物には、非引火性の観点から、エタノールを実質的に含まないことが好ましく、エタノールを含まないことがより好ましく、有機溶剤を実質的に含まないことがさらに好ましく、有機溶剤を含まないことが特に好ましい。ここで、「有機溶媒を実質的に含有しない」とは、原液組成物の全質量に対する有機溶媒の含有量が0.01質量%以下、好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下である場合をいう。本明細書中、有機溶媒とは、(A)~(D)成分以外の25℃で液体の成分を意味する。なお、非引火性は、JIS K 2265(2007年版)に準拠して評価される。
【0027】
<(B)成分>
本発明のエアコンディショナー用処理剤は、(B)成分として、HLB6以上の界面活性剤を含む。(B)成分は、原液組成物の含有成分として本発明のエアコンディショナー用処理剤に含まれる。HLBが6未満である場合、各成分同士の相溶性が悪くなり、保存安定性が悪くなる。(B)成分としては、好ましくはHLBが6~20の界面活性剤であり、より好ましくはHLB6~17の界面活性剤であり、さらに好ましくはHLB7~15の界面活性剤であり、特に好ましくはHLB7~13の界面活性剤である。(B)成分を用いて、本発明のその他成分と組み合わせることにより、洗浄性と保存性とが優れたエアコンディショナー用処理剤が得られる。(B)成分の界面活性剤としては、例えば、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが挙げられる。(B)成分の界面活性剤としては、保存安定性がより一層向上することから、ノニオン界面活性剤が好ましい。(B)成分としては、HLB6以上の界面活性剤を単独で用いてもよいし、2種以上のHLB6以上の界面活性剤を組み合わせて用いてもよい。本発明におけるHLBとは、界面活性剤の親水性-親油性比(Hydrophilic-Lipophilic Balance)を意味し、グリフィン法に基づき求められる値である。
【0028】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられ、中でも、洗浄性、保存性が優れるという観点からポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどが好ましい。例えば、(B)成分がHLB6以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルから選択される場合、アルキルエーテル部分のアルキル基は、好ましくは炭素数10~18であり、より好ましくは炭素数12~16である。(B)成分がHLB6以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルのオキシエチレン基の付加モル数は、HLBが6以上となれば特に制限されない。例えば、炭素数10~18(好ましくは炭素数12~16、より好ましくは炭素数12~14)のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルの場合、オキシエチレン基の付加モル数は2~30であるのが好ましく、2~20であるのがより好ましく、2~10であるのがさらに好ましく、3~8であるのが特に好ましい。また、例えば、炭素数10~18(好ましくは炭素数12~18、より好ましくは炭素数12~16)のアルキル基を有するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの場合、オキシエチレン基およびオキシプロピレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは60モル%以上であり、さらにより好ましくは65モル%以上であり、特に好ましくは70モル%である。また、炭素数10~18(好ましくは炭素数12~18、より好ましくは炭素数12~16)のアルキル基を有するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの場合、オキシエチレン基の付加モル数は2~40であるのが好ましく、5~35であるのがより好ましく、10~30であるのがさらに好ましく、15~25であるのが特に好ましく;オキシプロピレン基の付加モル数は2~20であるのが好ましく、3~15であるのがより好ましく、4~12であるのがさらに好ましく、5~10であるのが特に好ましい。
【0029】
(B)成分のHLBが6以上の界面活性剤としては、公知の方法で合成されたものであってもよく、市販品であってもよい。市販品の例としては、日光ケミカル株式会社製 NIKKOL BTシリーズ(NIKKOL BT-3(HLB=8.0)、NIKKOL BT-5(HLB=10.5)、NIKKOL BT-7(HLB=12.0)、NIKKOL BT-9(HLB=13.5)、NIKKOL BT-12(HLB=14.5)、NIKKOL BT-12(HLB=14.5));NIKKOL BBシリーズ(NIKKOL BB-5(HLB=7.0)、NIKKOL BB-10(HLB=10.0)、NIKKOL BB-20(HLB=16.5)、NIKKOL BB-30(HLB=18.0));NIKKOL BCシリーズ(NIKKOL BC-5.5(HLB=10.5)、NIKKOL BC-7(HLB=11.5)、NIKKOL BC-10(HLB=11.5)、NIKKOL BC-15(HLB=15.5)、);NIKKOL BLシリーズ(NIKKOL BL-4.2(HLB=11.5)、NIKKOL BL-9EX(HLB=14.5)、NIKKOL BL-10(HLB=11.5);NIKKOL PBCシリーズ(NIKKOL PBC-33(HLB=10.5)、NIKKOL PBC-34(HLB=16.5)、NIKKOL PBC-44(HLB=12.5));等が挙げられる。
【0030】
(B)成分の添加量は、特に制限されないが、例えば、(A)成分100質量部に対して、0.01~20質量部であり、より好ましくは0.05~10質量部であり、さらに好ましくは0.08~8質量部であり、特に好ましくは0.1~5質量部であり、最も好ましくは0.15~3質量部である。(B)成分の含有量を上記範囲に設定することで、乳化性が優れるので、より一層、洗浄性と保存性とが優れたエアコンディショナー用処理剤を得ることができる。なお、(B)成分を2種以上組み合わせた場合は、(B)成分の配合量はその合計量である。
【0031】
<(C)成分>
本発明のエアコンディショナー用処理剤は、(C)成分として、防カビ剤を含む。(C)成分は、原液組成物の含有成分として本発明のエアコンディショナー用処理剤に含まれる。本発明のエアコンディショナー用処理剤の原液組成物において、(C)成分として防カビ剤が添加されることにより、洗浄性と、非引火性とを維持しながら防カビ性を付与することができる。(C)成分としては、例えば、有機系防カビ剤、無機系防カビ剤が挙げられる。有機系防カビ剤としては、例えば、イソチアゾリン系化合物、ピリチオン系化合物、メルカプトピリジンオキシド化合物などが挙げられ、中でも、メルカプトピリジンオキシド化合物が好ましい。無機系防カビ剤としては、例えば、銀担持無機系防カビ剤が挙げられる。(C)成分としては、1種の防カビ剤を単独で用いてもよいし、2種以上の防カビ剤を組み合わせて用いてもよい。本発明においては有機系防カビ剤と無機系防カビ剤とを併用することが広い範囲のカビに対し防カビ効果が得られることから好ましい。より好ましくは、銀担持無機系防カビ剤とメルカプトピリジンオキシド化合物とを併用することである。
【0032】
本発明における(C)成分の配合量としては、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.3~20質量部であり、さらに好ましく0.4~10質量部であり、特に好ましくは0.5~8質量部、最も好ましくは0.7~5質量部である。本発明において上記の範囲内に設定することで、より一層、防カビ性、洗浄性を維持できることから好ましい。なお、(C)成分を2種以上組み合わせた場合は、(C)成分の配合量はその合計量である。
【0033】
「噴射剤」
本発明のエアコンディショナー用処理剤は、噴射剤を含む。本発明のエアコンディショナー用処理剤において、噴射剤の配合割合は、原液組成物全体を100体積%としたときに15~75体積%を含むことが好ましく、より好ましくは、20~70体積%であり、さらに好ましくは、25~60体積%であり、特に好ましくは、30~55体積%である。上記の範囲内であることで、水系エアコンディショナー用処理剤にもかかわらず、細かい噴霧を行うことが可能となり、噴霧時の液剤の拡散性が優れる。なお、噴射剤を2種以上組み合わせた場合は、噴射剤の配合量はその合計量である。ここで、噴射剤の体積は、ガスとガスが液化されたもの(液体)とを含めての総量である。
【0034】
<(D)成分>
本発明のエアコンディショナー用処理剤において、噴射剤は、(D)成分として、HFO(ハイドロフルオロオレフィン)を含む。HFOは、水素、フッ素および炭素で構成される不飽和有機化合物を意味し、噴射剤として用いることができる。(D)成分は、本発明のその他成分と組み合わせることにより、洗浄性、噴霧時の液剤の拡散性、防カビ性を維持しつつ、保存性、非引火性を有するエアコンディショナー用処理剤を得ることができる。
【0035】
ここで、HFOとしては、分子内に3個以上8個以下のフッ素原子を有する化合物が好ましく、分子内に4個以上7個以下のフッ素原子を有する化合物がより好ましく、分子内に4個以上6個以下のフッ素原子を有する化合物がさらに好ましく、分子内に4個のフッ素原子を有する化合物が特に好ましい。HFO分子内にフッ素原子が上記範囲内で存在することにより、本発明の所期の効果がより一層発揮される。
【0036】
(D)成分であるHFOとしては、例えば、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、(E)-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンが挙げられる。これらのうち、HFOとしては、(E)-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンが好ましい。(D)成分としては、1種のHFOを単独で用いてもよいし、2種以上のHFOを組み合わせて用いてもよい。(D)成分の市販品としては、特に制限されないが、例えば、セントラル硝子製HFO-1234ze、ハネウェルHFO-1234zeが挙げられる。本発明の(D)成分として含まれるHFOは、塩素を含まない化合物であるのが好ましい。また、本発明において、噴射剤は、塩素を含まないことが好ましい。
【0037】
本発明の一実施形態において、噴射剤は、(D)成分から構成される。すなわち、一実施形態において、噴射剤は、実質的に(D)成分以外の物質を含まない。この場合、(D)成分の配合割合は、原液組成物全体を100体積%としたときに15~75体積%を含むことが好ましく、より好ましくは、20~70体積%であり、さらに好ましくは、25~60体積%であり、特に好ましくは、30~55体積%である。上記の範囲内であることで、水系エアコンディショナー用処理剤にもかかわらず、細かい噴霧を行うことが可能となり、噴霧時の液剤の拡散性が優れる。なお、(D)成分を2種以上組み合わせた場合は、(D)成分の配合量はその合計量である。ここで、(D)成分の体積は、ガスとガスが液化されたもの(液体)とを含めての総量である。原液組成物に対する(D)成分の含有量が当該範囲にあることで、本発明のエアコンディショナー用処理剤は、エアゾール容器内で(D)成分が原液組成物と適度な範囲で相溶し、噴射時に適切な噴射圧で吐出することができ、噴霧時の液剤の好ましい拡散性につながる。
【0038】
すなわち、本発明のエアコンディショナー用処理剤は、原液組成物と、噴射剤とを、体積比率(25℃)で原液組成物:噴射剤=100:15~100:75の割合で含む。また、本発明の一実施形態によれば、原液組成物と、噴射剤とを、体積比率(25℃)で原液組成物:噴射剤=100:15~100:75の割合で混合することによるエアコンディショナー用処理剤の製造方法も提供される。
【0039】
また、噴射剤としては、(D)成分:HFO以外に、他の噴射剤を組み合わせて用いることもできる。HFOとともに用いられる噴射剤としては、例えば、炭酸ガス、N2ガス、希ガス等が挙げられ、これらの中から1種以上を用いることができる。(D)成分が噴射剤としてHFO以外を含む場合、噴射剤が混合物である場合には、HFO:他の噴射剤の混合比率(体積比)は、気体状態(25℃)で、100:0~80:20であるのが好ましく、99.99:0.01~90:10であるのがより好ましく、99.99:0.01~95:5であるのがさらに好ましく、99.99:0.01~98:2であるのが特に好ましい。一実施形態において、噴射剤は、成分(D)以外の物質(噴射剤)を実質的に含まない。これは、噴射剤として成分(D)を含むことで、噴霧時の液剤の好ましい拡散性を付与することができるからである。
【0040】
<(E)成分>
さらに、本発明のエアコンディショナー用処理剤の原液組成物には、(E)成分として防錆剤を添加することで、洗浄性、非引火性を維持しながら防錆性を付与することができる。防錆剤としては、ホウ素系防錆剤、ベンゾトリアゾール系防錆剤、アンモニウム塩系防錆剤、安息香酸系防錆剤などが挙げられるが、中でも、ホウ素系防錆剤、ベンゾトリアゾール系防錆剤が好ましい。(E)成分の市販品としては例えば、ICC CHEMICAL製SYNKAD202などが挙げられる。
【0041】
本発明における(E)成分の配合量としては、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.001~10質量部であり、より好ましくは0.005~5質量部であり、さらに好ましくは0.007~3質量部であり、特に好ましく0.01~1質量部であり、最も好ましくは0.01~0.5質量部である。本発明において上記の範囲内に設定することで、より一層、洗浄性、非引火性を維持しながら防錆性が優れるエアコンディショナー用処理剤が得ることができる。
【0042】
<任意成分>
本発明のエアコンディショナー用処理剤に対し、本発明の目的を損なわない範囲で、消泡剤、消臭剤、保存安定剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、溶剤、顔料、染料、難燃剤等の添加剤を使用することができる。なお、本発明のエアコンディショナー用処理剤は、非引火性の観点から、エタノールを実質的に含まないことが好ましく、エタノールを含まないことがより好ましく、有機溶剤を実質的に含まないことがさらに好ましく、有機溶剤を含まないことが特に好ましい。
【0043】
<エアコンディショナー用エアゾール>
本発明のエアコンディショナー用エアゾールは、原液組成物と噴射剤とをスチール、アルミ等のエアゾール容器に公知の方法により充填することにより製造され、エアゾール形態として使用される。すなわち、本発明のエアコンディショナー用処理剤は、エアゾール容器に加圧充填して用いられるエアコンディショナー用エアゾールであることが好ましい。本発明の目的が損なわれない限り、原液組成物の組成のみならず、内容物の噴射量、噴霧・噴射形態は、エアゾール容器内の圧力やエアゾール容器のバルブにおける噴射孔径またはステム通路の径等を適宜設定することによって目的に応じて適宜選択して使用することができる。噴射形態としては、特に限定されないが、例えば、フォーム状、ミスト状などが挙げられ、中でも、ミスト状が好ましい。ミスト状であることで、エバポレータのみならず吹出口内部の防カビ施工を可能できる。
【0044】
本発明のエアコンディショナー用エアゾールにおいて、エアゾール容器の噴射圧(25℃)が0.2~0.8MPaとなるように、噴射剤を加圧充填することが好ましい。噴射剤を加圧充填する際のエアゾール容器の噴射圧(25℃)は、より好ましくは、0.3~0.6MPaであり、さらに好ましくは0.4~0.6MPaであり、さらに好ましくは0.45~0.55MPaであり、特に好ましくは0.51~0.55MPaである。上記の範囲内にすることで、エアコンディショナー用エアゾールとしての十分な圧力を確保でき、原液組成物を細かい霧状に噴出させることができる。エアゾール容器の噴射圧は、原液組成物と噴射剤との充填量を調整することにより設定できる。当該調整時の留意点として、エアゾール容器の容量に対する原液組成物の充填量が少ない場合には、噴射剤の充填比率を高めることにより、望ましい噴射圧を確保することができる。なおエアゾール容器への充填方法は従来公知の方法を採用することができる。例えば、予めブリキやアルミニウム製の耐圧容器に原液組成物を充填しておき、バルブ(弁)の付いた蓋により密封してから当該弁を介して圧縮した噴射剤を注入する、等の方法によりエアゾール容器への充填を行うことができる。
【0045】
本発明において、原液組成物と、噴射剤とが、体積比率(25℃)で原液組成物:噴射剤=100:15~100:75の割合でエアゾール容器に充填されることにより、エアゾール容器の噴射圧(25℃)は0.2~0.8MPaとなる。よって、本発明によれば、原液組成物と、噴射剤とを、体積比率(25℃)で原液組成物:噴射剤=100:15~100:75の割合でエアゾール容器に充填する、エアコンディショナー用エアゾールの製造方法も提供される。
【0046】
本発明のエアコンディショナー用エアゾールは、本発明のエアコンディショナー用処理剤がエアゾール容器に充填された形態であり、本発明のエアコンディショナー用処理剤と同様の構成を有する。すなわち、本発明のエアコンディショナー用エアゾールは、原液組成物と、噴射剤と、がエアゾール容器に充填され、前記原液組成物は、(A)成分:水と、(B)成分:HLB6以上の界面活性剤と、(C)成分:防カビ剤と、を含み、前記噴射剤は、(D)成分:HFO(ハイドロフルオロオレフィン)を含み、前記原液組成物の全体を100体積%(25℃)としたときに、前記噴射剤が15~75体積%(25℃)で含まれ、引火点を有さない。当該構成により、本発明のエアコンディショナー用エアゾールは、本発明のエアコンディショナー用処理剤と同様に、洗浄性、噴霧時の液剤の拡散性、防カビ性を維持しつつ、保存性、非引火性を有する。
【0047】
本発明のエアコンディショナー用処理剤および本発明のエアコンディショナー用エアゾールは、自動車用のエアコンディショナーを洗浄するために好適に用いられ、自動車用のエアコンディショナーに設けられたエバポレータを洗浄するのに特に好適に用いられる。ここで、本発明のエアコンディショナー用処理剤および本発明のエアゾールが用いられる好ましい実施形態について説明する。
【0048】
<エバポレータの洗浄方法>
本発明によれば、本発明のエアコンディショナー用処理剤および本発明のエアコンディショナー用エアゾールを用いたエバポレータの洗浄方法も提供される。
【0049】
ここで、まず、本発明のエアコンディショナー用エアゾールが用いられる自動車用のエアコンディショナーについて説明する。
図1には、自動車用のエアコンディショナー10を模式的に表した模式図である。
図1に基づいて、エアコンディショナー10について説明する。
【0050】
自動車用エアコンディショナー10は、ブロアモーターファン11と、エバポレータ12と、ヒータ13と、が配管20内に設けられている。
【0051】
配管20の一端は、配管21と配管22とに分岐しており、分岐した一端である配管21は車内に設けられた内気吸入口31に、分岐した他端である配管22は車外に設けられた外気吸入口32に、それぞれ接続されている。配管21と配管22との分岐点には、弁31aが設けられており、弁31aは、配管21、22の開閉を切り替えることができる。
図1では、弁31aは配管22側を閉じており、外気吸入口32は配管20と分断されている。弁31aが配管21側を閉じることにより、配管20は配管21と分断され、内気吸入口31が配管20と分断される。
【0052】
配管20の他端は、複数の配管23に分岐しており、配管23は、それぞれ車内に設けられた吹出口33に接続されている。配管20内は、内気吸入口31および外気吸入口32からエバポレータ12までの空気吸入通路34と、エバポレータからヒータまでの温度調整通路35と、ヒータ13から吹出口33までの空気吹出通路36と、から構成されている。
【0053】
配管20は、エバポレータ12の下部にドレイン24が設けられている。
【0054】
ブロアモーターファン11は、内気吸入口31から車内の空気を取り込むことができ、外気吸入口32から車外の空気を取り込むことができる。ブロアモーターファン11が作動して吸気することにより、内気吸入口31または外気吸入口32により空気が取り込まれ、取り込まれた空気は、空気吸入通路34を通過して、温度調整通路35を通過する。
【0055】
エバポレータ12は、冷凍サイクル装置(図示せず)により冷却されている。ヒータ13は、エンジン(図示せず)の作動により加熱されている。温度調整通路35において、エバポレータ12(表面)を通過した空気は冷却されて、エバポレータ12(表面)を通過した空気は、所定の温度となるようにヒータ13(表面)を通過してきた空気と混ぜられ、空気吹出通路36を通過して吹出口33から吹き出される。温度調整通路35において、エバポレータ12において空気が冷却されることにより生じる水分は、エバポレータ12の下部に設けられたドレイン24から排出される。
【0056】
本発明のエバポレータの洗浄方法としては、特に制限されないが、例えば、(1)本発明のエアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールを、エアコンディショナー内に設けられたエバポレータに直接噴霧する、エアコンディショナー内のエバポレータの洗浄方法や(2)エアコンディショナーの稼働中にブロアモーターファンの内気吸入口に、エアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールを噴霧し、ブロアモーターファンの内気吸入による空気の流れによって噴霧されたエアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールのミストをエアコンディショナー内に設けられたエバポレータに到達させ、エバポレータを洗浄する、エアコンディショナー内のエバポレータの洗浄方法などが挙げられる。なお、空気の流れとは、例えば、ブロアモーターファンを回転させることで得られる。
【0057】
また、(3)エアコンディショナーを停止して、エアコンディショナーを停止して、エアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールをエアコンディショナーの吹出口から内部へ噴霧し、噴霧されたエアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールのミストをエアコンディショナー内の配管に到達させ、配管を洗浄する、エアコンディショナー配管の洗浄方法などが挙げられる。ここで、配管とは、
図1における空気吹出通路36に相当する。
【0058】
中でも、防カビ性が特に優れることから、本発明のエアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールを、エアコンディショナーの吹出口から内部へ噴霧し、噴霧されたエアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールのミストをエアコンディショナー内の配管に到達させ、配管を洗浄する、エアコンディショナー配管の洗浄工程と、エアコンディショナーの稼働中にブロアモーターファンの内気吸入口より、本発明のエアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールを噴霧し、ブロアモーターファンの内気吸入による空気の流れによって噴霧されたエアコンディショナー用処理剤またはエアコンディショナー用エアゾールのミストをエアコンディショナーに設けられたエバポレータに到達させ、エバポレータを洗浄する、エアコンディショナー内のエバポレータの洗浄工程と、を含むエアコンディショナー内の洗浄方法が好ましい。
【実施例0059】
以下に実施例をあげて本発明についてさらに詳細な説明をするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、下記実施例において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で行ったものとする。
【0060】
<エアコンディショナー用エアゾールの調製>
・実施例1
本発明の(A)成分の(a1)成分として精製水(日本フィライト株式会社製80B)100質量部と、
(B)成分の(b1)成分として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含むHLB8.0である界面活性剤(日光ケミカルズ株式会社製NIKKOL BT-3)0.30質量部、
(C)成分の(c1)成分として、銀担持無機系とメルカプトピリジンオキシド系との複合防カビ剤1.00質量部と、
(E)成分の(e1)成分として、ホウ素系防錆剤(ICC CHEMICAL製SYNKAD202)0.02質量部と、
を添加し、25℃環境下にてミキサーで60分混合し、25℃で液状の原液組成物を調製した。
【0061】
次に、このようにして調製された原液組成物に対し、(D)成分の(d1)成分として(E)-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(ハイドロフルオロオレフィン系)(セントラル硝子株式会社製1234ZE)を、原液組成物の全体として100体積%としたときに30体積%(25℃での噴射圧0.51MPa)になる噴射剤を圧入、100cm3の試験用エアゾール容器に充填した。これにより、エアコンディショナー用処理剤が容器に加圧充填されたエアコンディショナー用エアゾールである実施例1を得た。
【0062】
ここで、本発明において、調製されたエアゾールの噴射圧は、JIS S 3301(2018)に従って測定し、算出された値である。
【0063】
・実施例2
実施例1において、(d1)成分を30体積%から40体積%(25℃での噴射圧0.52MPa)に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、エアコンディショナー用処理剤が容器に加圧充填されたエアコンディショナー用エアゾールである実施例2を得た。
【0064】
・実施例3
実施例1において、(d1)成分を30体積%から50体積%(25℃での噴射圧0.52MPa)に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、エアコンディショナー用処理剤が容器に加圧充填されたエアコンディショナー用エアゾールである実施例3を得た。
【0065】
・実施例4
実施例1において、(b1)成分を、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含む、HLB12.5である界面活性剤(日光ケミカルズ株式会社製NIKKOL PBC-44)(b2)成分に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、エアコンディショナー用処理剤が容器に加圧充填されたエアコンディショナー用エアゾールである実施例4を得た。
【0066】
・比較例1
実施例1において、(d1)成分を30体積%から12体積%(25℃での噴射圧0.50MPa)に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、エアコンディショナー用処理剤が容器に加圧充填されたエアコンディショナー用エアゾールである比較例1を得た。
【0067】
・比較例2
実施例1において、(d1)成分を窒素ガス(d’1)成分に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、エアコンディショナー用処理剤が容器に加圧充填されたエアコンディショナー用エアゾールである比較例2を得た。
【0068】
・比較例3
実施例1において、(a1)成分を100質量部から30質量部に変更し、さらに(a’1)成分としてエタノールを70質量部で添加した以外は、実施例1と同様にして調製し、エアコンディショナー用処理剤が容器に加圧充填されたエアコンディショナー用エアゾールである比較例3を得た。
【0069】
・比較例4
実施例1において、(b1)成分をオレイン酸ソルビタンを含みHLB4.3である界面活性剤(日光ケミカルズ株式会社製NIKKOL SO-10V)(b’1)に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、エアコンディショナー用処理剤が容器に加圧充填されたエアコンディショナー用エアゾールである比較例4を得た。
【0070】
下記の試験(1)~(5)の試験方法を実施例、比較例に行った結果を表1にまとめる。なお、下記試験は、
図1の自動車用エアコンディショナーを用いて行った。
【0071】
<(1)洗浄性>
車のブロアモーターファン11を回転させずに、車内に設けられたエアコンディショナーの空気の吹出口33から内部に向けて、各エアコンディショナー用エアゾールを用いて10秒間噴霧した。次に、車のブロアモーターファン11を回転させながら、各エアゾールをブロアモーターファン11の内気吸入口31に対して100秒間噴霧し、噴霧してから10分の間に、エバポレータ12の下部に設けられたドレイン24から流れ落ちた液を目視で下記の基準に基づき評価した。結果を表1に示す。本発明において液とともに、埃、塵などの不純物が認められることが好ましい。なお、表1中の「-」とは未評価を意味する。また、本試験で使用した車は、新車で購入後、3年間乗車(走行距離3万km)したものを用いた。
【0072】
評価基準
○:液とともに、埃、塵などの不純物が認められる。
×:液とともに、埃、塵などの不純物が認められない。
【0073】
<(2)防カビ性1>
車のブロアモーターファン11を回転させずに、車内に設けられたエアコンディショナーの空気の吹出口33から内部に向けて、各エアコンディショナー用エアゾールを用いて10秒間噴霧した。次に、車のエアコンディショナーの風量を最大にした状態で吹出口33にポテトデキストロース寒天の培地を5分間さらし、その後25℃、55%RHで3日間および7日間培養した後、カビ発生を目視で下記の評価基準に基づき評価した。結果を表1に示す(JIS Z 2911(2018年版)に準拠)。本発明において3日間養生後においてカビ発生が認められないことが好ましく、より好ましくは、7日間養生後もカビ発生が認められないことである。なお、表1中の「-」とは未評価を意味する。また、本試験で使用した車は、新車で購入後、3年間乗車(走行距離3万km)したものを用いた。
【0074】
評価基準
◎:7日間養生後も、カビ発生が認められない。
○:3日間養生後はカビ発生が認められないが、7日間養生後はカビ発生が認められる。
×:3日間養生後はカビ発生が認められる。
【0075】
<(3)噴霧時の液剤の拡散性>
各エアコンディショナー用エアゾールを用いて、50cm×50cmの被洗浄鉄板に対して15cm離れて1秒間噴霧したときの液の広がりを目視で評価した。30cm×30cm以上の広がりが確認されるか否かで判断した。評価基準は次の通りである。結果を表1に示す。本発明において作業性の観点から広がっていることが好ましい。なお、表1中の「-」とは未評価を意味する。
【0076】
評価基準
○:30cm×30cm以上の広がり有り。
×:30cm×30cm以上の広がり無し。
【0077】
<(4)非引火性>
各エアコンディショナー用エアゾール(エアコンディショナー用処理剤)の引火点の有無を下記の評価基準に基づき評価した。結果を表1に示す(JIS K 2265(2007年版)に準拠)。本発明のエアコンディショナー用エアゾール(エアコンディショナー用処理剤)は引火点がないものである。すなわち、本発明のエアコンディショナー用エアゾール(エアコンディショナー用処理剤)は非引火性である。
【0078】
評価基準
○:引火点無し
×:引火点有り。
【0079】
<(5)保存性>
各エアコンディショナー用エアゾールを25℃で1週間放置し、その後、各エアコンディショナー用エアゾールから1秒間噴霧された試料の状態を目視で外観を下記の基準に基づき評価した。結果を表1に示す。本発明において、析出物の浮遊または沈殿は認められないことが好ましい。なお、表1中の「-」とは未評価を意味する。
【0080】
評価基準
○:析出物の浮遊または沈殿は認められない
×:析出物の浮遊または沈殿は認められる。
【0081】
【0082】
表1の実施例1~4によれば、本発明は、洗浄性、噴霧時の液剤の拡散性、防カビ性を維持しつつ、保存性、非引火性を有するエアコンディショナー用エアゾール(エアコンディショナー用処理剤)を提供するものであることがわかる。
【0083】
また、表1の比較例1は、本願発明の(D)成分について所定量充填されていないエアゾールであるが、噴霧時の液剤の拡散性が劣る結果であった。また、比較例2は、本願発明の(D)成分の代わりに、(d’1)成分を用いたエアコンディショナー用エアゾールであるが、噴霧時の液剤の拡散性が劣る結果であった。また、比較例3は、エタノールを含むエアゾールであるが、非引火性について劣る結果であった。また、比較例4は、本願発明の(B)成分の代わりに(b’1)成分を用いたエアコンディショナー用エアゾールであるが、保存性について劣る結果であった。
【0084】
さらに、実施例2または実施例4を使用して、エアゾールによる洗浄方法を変えて防カビ性2の試験を行った。
【0085】
<(6)防カビ性2>
車のブロアモーターファン11を回転させずに、車の吹出口33に対して、実施例2または4のエアコンディショナー用エアゾールを用いて10秒間噴霧した。次に、車のブロアモーターファン11を回転させながら、実施例2または4のエアコンディショナー用エアゾールをブロアモーターファン11の内気吸入口31に対して100秒間噴霧した。そして、車のエアコンディショナーの風量を最大にした状態で吹出口33にポテトデキストロース寒天の培地を5分間さらし、その後25℃、55%RHで3日間および7日間培養した後、カビ発生を目視で下記の評価基準に基づき評価した。結果を表2に示す(JIS Z 2911(2018年版)に準拠)。本発明において3日間養生後においてカビ発生が認められないことが好ましく、より好ましくは、7日間養生後もカビ発生が認められないことである。
【0086】
評価基準
◎:7日間養生後も、カビ発生が認められない。
○:3日間養生後はカビ発生が認められないが、7日間養生後はカビ発生が認められる。
×:3日間養生後はカビ発生が認められる。
【0087】
【0088】
表2の実施例2、4の結果から、車の吹出口と内気吸入口の両方に対して実施例2、4のエアゾールで洗浄する方法が、特に防カビ性が優れることがわかった。
【0089】
本出願は、2020年12月11日に出願された日本特許出願番号2020-205753号に基づいており、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に組みこまれる。
本発明は、洗浄性、噴霧時の液剤の拡散性、防カビ性を維持しつつ、保存性、非引火性を有するエアコンディショナー用処理剤およびエアコンディショナー用エアゾールなので、カーエアコンディショナー、家庭内エアコンディショナー、業務用エアコンディショナーで使用することが可能であるので産業上有用である。