(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093275
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】積層型キャパシタ及びその実装基板
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220616BHJP
H01G 2/06 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H01G4/30 201M
H01G4/30 201L
H01G2/06 500
H01G4/30 515
H01G4/30 512
H01G4/30 201K
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185647
(22)【出願日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】10-2020-0173139
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ヨ ハン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミン ホエ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ジョン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ミン スン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ビュン キル
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、ジュン ウン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AD02
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC31
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】向上された曲げ強度を有する積層型キャパシタ及びその実装基板を提供する。
【解決手段】
本発明は、複数の誘電体層と、上記誘電体層を間に挟んで交互に配置される第1及び第2内部電極を含み、上記第1及び第2内部電極が重なる活性領域と上記活性領域の上下にそれぞれ配置される上部及び下部カバーを含む本体と、上記本体上に上記第1及び第2内部電極とそれぞれ接続されるように配置される第1及び第2外部電極と、を含み、上記上部及び下部カバーがBT(チタン酸バリウム、BaTiO
3)及びYSZ(Yttria stabilized zirconia)を含む積層型キャパシタ及びその実装基板を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層と、前記誘電体層を間に挟んで交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極を含み、前記第1内部電極及び前記第2内部電極が重なる活性領域と前記活性領域の上下にそれぞれ配置される上部カバー及び下部カバーを含む本体と、
前記本体上に前記第1内部電極及び前記第2内部電極とそれぞれ接続されるように配置される第1外部電極及び第2外部電極と、を含み、
前記上部カバー及び前記下部カバーがBT(チタン酸バリウム、BaTiO3)及びYSZ(Yttria stabilized zirconia)を含む、積層型キャパシタ。
【請求項2】
前記YSZが部分的にテトラゴナル(tetragonal)相を有する、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項3】
前記本体は、前記活性領域の組成と前記上部カバー及び前記下部カバーの領域の組成が異なる、請求項1または2に記載の積層型キャパシタ。
【請求項4】
前記活性領域がBTを含み、YSZを含まない、請求項3に記載の積層型キャパシタ。
【請求項5】
前記上部カバー及び前記下部カバーは、BT100重量部に対して0.5~10重量部のYSZを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項6】
前記上部カバー及び前記下部カバーにおいて、YSZサイズがBTサイズに対して5~25%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項7】
前記上部カバー及び前記下部カバーの総厚さが前記本体の全体厚さに対して10~40%である、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項8】
前記上部カバー及び前記下部カバーは、BT100重量部に対して0.5~10重量部のYSZを含み、
前記上部カバー及び前記下部カバーにおいて、YSZサイズがBTサイズに対して5~25%である、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項9】
前記上部カバー及び前記下部カバーは、BT100重量部に対して0.5~10重量部のYSZを含み、
前記上部カバー及び前記下部カバーの総厚さが前記本体の全体厚さに対して10~40%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項10】
前記上部カバー及び前記下部カバーにおいて、YSZサイズがBTサイズに対して5~25%であり、
前記上部カバー及び前記下部カバーの総厚さが前記本体の全体厚さに対して10~40%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項11】
前記上部カバー及び前記下部カバーは、BT100重量部に対して0.5~10重量部のYSZを含み、
前記上部カバー及び前記下部カバーにおいて、YSZサイズがBTサイズに対して5~25%であり、
前記上部カバー及び前記下部カバーの総厚さが前記本体の全体厚さに対して10~40%である、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項12】
前記本体は、第1方向に互いに対向する第1面及び第2面と、第1方向と垂直な第2方向に互いに対向する第3面及び第4面と、第1方向と垂直な第3方向に互いに対向する第5面及び第6面を含み、
前記第1内部電極及び前記第2内部電極が第1方向に交互に配置され、
前記本体の第3面及び第4面に前記第1外部電極及び前記第2外部電極がそれぞれ配置される、請求項1から11のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項13】
前記第1外部電極及び前記第2外部電極は、前記本体の第3面及び第4面にそれぞれ配置される第1接続部及び第2接続部と、前記第1接続部及び前記第2接続部から前記本体の第1面の一部までそれぞれ延長される第1バンド部及び第2バンド部と、をそれぞれ含む、請求項12に記載の積層型キャパシタ。
【請求項14】
一面に第1電極パッド及び第2電極パッドを有する基板と、
請求項1から13のいずれか一項に記載の積層型キャパシタと、を含み、
前記積層型キャパシタの第1外部電極及び第2外部電極が前記第1電極パッド及び前記第2電極パッドにそれぞれ接続されるように実装される、積層型キャパシタの実装基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型キャパシタ及びその実装基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型キャパシタは、小型でありながらも高容量の実現が可能であり、様々な電子機器に用いられている。
【0003】
最近では、環境にやさしい自動車及び電気自動車の急浮上に伴い、自動車内の電力駆動システムが増加しており、これによって自動車に必要な積層型キャパシタの需要も増加している。
【0004】
自動車用部品として用いられるためには、高いレベルの熱信頼性、電気的信頼性、及び機械的信頼性が要求されるため、積層型キャパシタに要求される性能も次第に高度化している。
【0005】
かかる機械的特性のうち、曲げ強度がある。曲げ強度が弱いと、基板に積層型キャパシタを実装して押したとき、積層型キャパシタに加わる応力によって積層型キャパシタを貫通する形の曲げクラックが発生することがある。
【0006】
かかる曲げクラックは、内部電極を断絶させるようになり、これによって製品の容量を低下させる製品不良の原因になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許登録公報第10-1941092号
【特許文献2】日本特許公開公報第2009-71106号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、向上された曲げ強度を有する積層型キャパシタ及びその実装基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、複数の誘電体層と、上記誘電体層を間に挟んで交互に配置される第1及び第2内部電極を含み、上記第1及び第2内部電極が重なる活性領域と上記活性領域の上下にそれぞれ配置される上部及び下部カバーを含む本体と、上記本体上に上記第1及び第2内部電極とそれぞれ接続されるように配置される第1及び第2外部電極と、を含み、上記上部及び下部カバーがBT(チタン酸バリウム、BaTiO3)及びYSZ(Yttria stabilized zirconia)を含む積層型キャパシタを提供する。
【0010】
本発明の一実施形態において、上記YSZは部分的にテトラゴナル(Tetragonal)相を有することができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、上記本体は、上記活性領域の組成と上記上部及び下部カバー領域の組成が異なることができる。
【0012】
本発明の一実施形態において、上記活性領域はBTを含み、YSZを含まないことができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、上記上部及び下部カバーは、BT100重量部に対して0.5~10重量部のYSZを含むことができる。
【0014】
本発明の一実施形態において、上記上部及び下部カバーでのYSZサイズがBTサイズに対して5~25%であることができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、上記上部及び下部カバーの総厚さが上記本体の全体厚さに対して10~40%であることができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、上記本体は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面と、第1方向と垂直な第2方向に互いに対向する第3及び第4面と、第1方向と垂直な第3方向に互いに対向する第5及び第6面を含み、上記第1及び第2内部電極が第1方向に交互に配置され、上記本体の第3及び第4面に上記第1及び第2外部電極がそれぞれ配置されることができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、上記第1及び第2外部電極は、上記本体の第3及び第4面にそれぞれ配置される第1及び第2接続部と、上記第1及び第2接続部から上記本体の第1面の一部までそれぞれ延長される第1及び第2バンド部と、をそれぞれ含むことができる。
【0018】
本発明の他の側面は、一面に第1及び第2電極パッドを有する基板と、上記積層型キャパシタと、を含み、上記積層型キャパシタの第1及び第2外部電極が上記第1及び第2電極パッドにそれぞれ接続されるように実装される積層型キャパシタの実装基板を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態によると、BT及びYSZが混合された複合材料をカバーに適用して積層型キャパシタの曲げ強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタの概略的な構造を示した斜視図である。
【
図2】(a)及び(b)は、
図1の第1及び第2内部電極の構造をそれぞれ示した平面図である。
【
図4】YSZの含有量に応じたBT-YSZ複合物の3点曲げ強度を示したグラフである。
【
図5】(a)及び(b)は、活性領域のBTセラミック及びカバーのBT-YSZ複合材の破断面をそれぞれ示したSEM写真である。
【
図6】活性領域及びカバーがBTからなる比較例と、本発明の一実施形態による積層型キャパシタにおいて、押し込み深さに応じた良品率をそれぞれ示したグラフである。
【
図7】
図1の積層型キャパシタが基板に実装された形態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0022】
また、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0023】
図1~
図3を参照すると、本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタ100は、本体110と第1及び第2外部電極131、132を含む。
【0024】
本実施形態を明確に説明するために、本体110の方向を定義すると、図面上に表示されたX、Y、及びZはそれぞれ長さ方向、幅方向及び厚み方向を示す。
【0025】
ここで、厚さ方向は、誘電体層111が積層された積層方向と同一概念で用いられることができる。
【0026】
また、本体110の形状は特に制限されず、例えば、おおよそ六面体状を有することができる。
【0027】
本実施形態において、説明の便宜のために、本体110の誘電体層111が積層されるZ方向の互いに対向する両面を第1及び第2面1、2と、第1及び第2面1、2を連結し、互いに対向するX方向の両面を第3及び第4面3、4と、これと垂直に交差し、Y方向に互いに対向する両面を第5及び第6面5、6と定義することにする。
【0028】
本体110は、活性領域115及びマージン部である上部及び下部カバー112、113を含む。
【0029】
活性領域115は、キャパシタの容量形成に寄与する部分として、複数の誘電体層111と誘電体層111を間に挟んで第1及び第2内部電極121、122がZ方向に交互に配置されるように積層されたものである。
【0030】
上部カバー112は、図面上で活性領域115で最上部に配置された第1内部電極121の上面上に所定厚さで形成された部分であり、下部カバー113は、活性領域115で最下部に配置された第2内部電極122の下面に所定厚さで形成された部分である。
【0031】
本実施形態において、上部カバー112及び下部カバー113は、活性領域115に含まれる誘電体層111と異なる組成を有する誘電体からなることができる。
【0032】
この時、上部及び下部カバー112、113の総厚さは、本体110の全体厚さに対して10~40%であることができる。
【0033】
活性領域115の誘電体層111は、上述した実施形態の誘電体パウダーを含み、焼結された状態で隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずに確認しにくいほど一体化することができる。
【0034】
第1及び第2内部電極121、122は、互いに異なる極性を有する電極であって、誘電体層111の積層方向に沿って互いに対向するように配置され、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に絶縁されることができる。
【0035】
第1及び第2内部電極121、122は、その一端が本体110の第3及び第4面3、4を介して、それぞれ露出することができる。
【0036】
また、本体110の第3及び第4面3、4を介して露出する第1及び第2内部電極121、122の端部は、本体110の第3及び第4面3、4で第1及び第2外部電極131、132にそれぞれ接続されて電気的に連結されることができる。
【0037】
第1及び第2外部電極131、132に所定の電圧を印加すると、互いに対向する第1及び第2内部電極121、122の間に電荷が蓄積される。
【0038】
この時、積層型キャパシタ100の静電容量は、活性領域115でZ方向に互いに重なる第1及び第2内部電極121、122の重なり面積と比例するようになる。
【0039】
第1及び第2内部電極121、122は、導電性金属で形成され、例えば、ニッケル(Ni)またはニッケル(Ni)合金などの材料を用いることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0040】
また、上記導電性金属の印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0041】
第1及び第2外部電極131、132は、第1及び第2接続部131a、132aと、第1及び第2バンド部131b、132bをそれぞれ含む。
【0042】
第1及び第2接続部131a、132aは、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122の露出される部分と、それぞれ接触されて電気的に連結される部分である。
【0043】
第1及び第2バンド部131b、132bは、第1及び第2接続部131a、132aから本体110の第1面1の一部までそれぞれ延長される部分である。
【0044】
この時、固着強度の向上のために、第1及び第2バンド部131b、132bは、第1及び第2接続部131a、132aから本体110の第2面2の一部と第5及び第6面5、6の一部までそれぞれ延長されることができる。
【0045】
このような第1及び第2外部電極131、132は、導電性金属を含む導電性ペーストにより形成されることができる。
【0046】
上記導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、金(Au)またはこれらの合金であることができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0047】
一方、第1及び第2外部電極131、132は、必要に応じて、その表面にニッケル(Ni)またはスズ(Sn)などでめっき層(図示せず)をさらに形成することができる。
【0048】
従来の積層型キャパシタの曲げ強度を向上させる方法として、2つの積層型キャパシタを積み重ねて、外部電極をメタルフレームで連結して単一素子化する方法がある。他の方法としては、外部電極に導電性樹脂層を適用する方法がある。
【0049】
しかし、上記2つの方法は、積層型キャパシタが受ける応力を緩和させる方法として、積層型キャパシタが一定レベル以上の応力をさらに受けるようになると、本体が耐えられず、曲げクラックが発生することがある。
【0050】
また、メタルフレームを用いる場合、メタルフレームのサイズの分だけ電子部品自体のサイズが増加するようになるという問題がある。
【0051】
そして、積層型キャパシタの曲げ強度特性に影響を及ぼす因子として機械的強度がある。
【0052】
積層型キャパシタが実装された基板を押すと、基板の反りによる応力がチップに印加され、このような応力は、バンド部の端部で最大となり、この部分の小さな欠陥からクラックが発生するようになる。
【0053】
すなわち、クラック発生を最小限に抑えるための方法の一つは、積層型キャパシタで特に応力が集中されるバンド部の端部の付近の機械的強度を高めることである。
【0054】
このために、本発明においては、BT(チタン酸バリウム、BaTiO3)マトリックスにYSZ(Yttria stabilized zirconia)ナノ粒子が混合されたBT-YSZ合成材料を上部及び下部カバーに適用する。
【0055】
この時、上部及び下部カバー112、113は、BT100重量部に対して0.5~10重量部のYSZを含むことができる。
【0056】
図5の(a)及び(b)は、活性領域のBTセラミック及びカバーのBT-YSZ複合材の破断面の微細構造をそれぞれ示したSEM写真として、2万倍~5万倍の倍率で撮影したものであり、
図5のように、上部及び下部カバー112、113でのYSZサイズは、BTサイズに対して5~25%であることができる。
【0057】
この時、YSZサイズは、積層型キャパシタのX方向の中央に切断してY-Z面と平行に生成された破断面を撮影し、破断面のカバーをY方向に3等分した地点で撮影したイメージについてYSZの大きさを測定して平均した値である。
【0058】
BT-YSZ複合材料は、BT誘電体母体(matrix)にZrO2ナノ粒子が分散されている混合物構造である。
【0059】
挿入されたZrO2粒子は、3mol%のY2O3を含有して部分的にテトラゴナル(tetragonal)相として安定化している数十ナノメートルの大きさを有する酸化物粒子である。
【0060】
BT誘電体セラミックは、添加剤及び焼結温度に応じて異なるが、曲げ強度(bending strength)が約30~80MPaであるのに対し、ZrO2粒子は焼結された場合、1,200MPaと高い。
【0061】
したがって、
図4のように、BTにZrO
2粒子を挿入した複合材料の場合、YSZの含有量に応じて曲げ強度が125MPaに高まり、積層型キャパシタ製作時に曲げ強度の特性がBTのみで形成された誘電体セラミック材料よりも高くなると予想される。
【0062】
また、YSZの場合、焼結温度が1,300℃以上とBTよりも高いため、BTとYSZを混合して焼結すると、ほとんどが2次相に残っている化合物の形態になり、BT-YSZ混合材料は、混合規則(rule of mixture)によって弾性係数(elastic modulus)、ヤング率(Young's modulus)、及び曲げ強度などの機械的特性が増加するようになる。
【0063】
したがって、BT-YSZ複合材料を上部及び下部カバーに適用した本実施形態の積層型キャパシタの場合、既存の上部及び下部カバーがBTのみで形成された積層型キャパシタに対して積層型キャパシタの曲げ強度を向上させ、これにより曲げクラックが発生する程度を著しく下げるか、防止することができる。
【0064】
一方、BT-YSZ複合材料は、1,200度以上で焼結時、部分的にtetragonal相であるZrO2の一部がBT結晶粒に拡散されて入るため、BT誘電体にZr元素がドーピングされた効果を奏することができる。
【0065】
このようにBT誘電体にZr元素がドーピングされた効果が現れると、活性領域では、誘電体の特性変化が誘発されることがあるため、これを防止するために、本実施形態においては、上部及び下部カバーのみにBT-YSZ構造を適用し、活性領域はYSZを含まず、BTのみで実現することが好ましい。
【0066】
図6は、本発明の実施形態の構造を有する積層型キャパシタと、従来の積層型キャパシタの曲げ変形のテスト結果を比較して示したものである。
【0067】
ここで、比較例(#1)は、活性領域とカバーが同一のBTからなる構造であり、実施例(#2)は、上部及び下部カバーがBT-YSZ複合材料からなる構造を有する積層型キャパシタである。
【0068】
この時、それぞれのサンプルに用いられた積層型キャパシタは、X方向の長さが1.6mmであり、Y方向の長さが0.8mmであり、2.2μFの電気的特性を有する。
【0069】
そして、実施例の場合、上部及び下部カバーにBT100重量部に対して3重量部のYSZを添加した。
【0070】
このような積層型キャパシタをPCBにそれぞれ実装して、基板の押し込み深さを1mmずつ増加させながら積層型キャパシタにクラックが発生するかを観察して
図6に示す。
【0071】
図6を参照すると、比較例の場合、押し込み深さが5mmのときからクラックが発生し始めて、押し込み深さが10mmを超えると良品率が0%に近くなり、押し込み深さが11mmを超えると良品率が0%を示した。良品率は次のように決定されることができる。MLCCは、PCB基板に実装し、カスタマイズ型円型チップを用いて基板を押すと、基板が曲がり、MLCCの静電容量が変更される。このとき、特定の押し込み深さ(pressing depth)においては、クラック発生によって静電容量が急激に減少する。この場合、MLCCはショートされ、それは不良(dead)を意味する。良品率は、テストされたすべてのMLCCに対して生存したMLCC(不良ではないMLCC)の割合である。
図6の#1において、テストされたMLCCの総個数は、20個である。押し込み深さが4mmであると、すべてのMLCCにおいてクラックがないが、5mmで1個が不良であるため、5mmにおける良品率は、95%(1/20 dead)である。そして、6mmの押し込み深さの場合、良品率は80%(4/20 dead)である。
【0072】
これに対し、実施例の場合、押し込み深さ9mmまでは良品率が99%以上を示し、押し込み長さが10mmである場合にも良品率が95%であり、押し込み深さが11mmを超えても比較例のように良品率が急激に低下する現象は発生しなかった。
【0073】
したがって、本発明の実施形態のように、上部及び下部カバーにBT-YSZ複合材料を適用すると、積層型キャパシタの曲げ強度の特性が向上することが確認できる。
【0074】
図7は、
図1の積層型キャパシタが基板に実装された形態を示した斜視図である。
【0075】
図7を参照すると、本実施形態に係る積層型キャパシタの実装基板は、積層型キャパシタ100が実装される基板210と、基板210の上面に互いに離隔されるように形成された第1及び第2電極パッド221、222を含む。
【0076】
積層型キャパシタ100は、第1及び第2外部電極131、132が第1及び第2電極パッド221、222上にそれぞれ接触されるように位置した状態ではんだ231、232によって基板210と電気的に連結されることができる。
【0077】
この時、積層型キャパシタ100は、曲げ強度の改善効果を実現するためには、本実施形態のように第1及び第2内部電極121、122が基板210に対して水平に配置されることが好ましい。
【0078】
ここで、積層セラミックキャパシタ100は、上述した本発明の一実施形態に係る積層セラミックキャパシタであって、以下詳細な説明は重複を避けるために省略する。
【0079】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0080】
100 積層型キャパシタ
110 本体
111 誘電体層
112、113 上部及び下部カバー
115 活性領域
121、122 第1及び第2内部電極
131、132 第1及び第2外部電極
210 基板
221、222 第1及び第2電極パッド