(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093279
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置、カメラ装置、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20220616BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20220616BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20220616BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20220616BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G03B5/00 J
G02B7/04 E
G02B7/04 D
G03B30/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189782
(22)【出願日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】202011442340.1
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】316006783
【氏名又は名称】新思考電機有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 紀之
【テーマコード(参考)】
2H044
2K005
【Fターム(参考)】
2H044AD01
2H044AJ06
2H044BD01
2H044BE02
2H044BE09
2K005AA06
2K005CA02
2K005CA23
2K005CA45
2K005CA53
(57)【要約】
【課題】ゴーストが発生しにくいレンズ駆動装置を提供する。
【解決手段】レンズ駆動装置1は、ホルダ19と、ベース25と、ケース11と、を有する。キャリア開口153の後側にはホルダ19のホルダ開口190があり、ホルダ開口190には、後側に行くほど開口の大きさが大きくなるような傾斜部194が設けられている。傾斜部194には、複数の畝が当該傾斜部194の傾斜に沿って前後に延びる鋸歯状部195が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ体を移動可能に支持することができ、且つ前記レンズ体の後側に画像センサを配置することができるレンズ駆動装置であって、
前記レンズ体と前記画像センサとの間に前記レンズ体から前記画像センサに至る光を通過させ且つ制限する開口を備え、
前記開口は、後側に行くほど開口の大きさが大きくなるような傾斜部を有し、
前記傾斜部は、複数の畝が該傾斜部の傾斜に沿って前後に延びる鋸歯状部を有するレンズ駆動装置。
【請求項2】
隣り合う前記畝は互いに平行である請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記畝の頂部の角度は、鋭角又は鈍角である請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記開口は上下方向に狭く、左右方向に広く形成されており、前記鋸歯状部は上側又は下側の少なくとも一方に設けられている請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記開口の後側にさらに第2の開口を備え、
前記第2の開口は後側に行くほど開口の大きさが小さくなるような逆傾斜面を有する請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
可動部と、中間部材と、固定部と、を備え、
前記可動部は、前記レンズ体を取り付けることができるキャリアを有し、前記中間部材に対して移動可能なように前記中間部材に支持され、
前記中間部材は、前記固定部に対して前記可動部と共に移動可能なように前記固定部に支持され、
前記開口は前記中間部材に形成されている請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項7】
可動部と、中間部材と、固定部と、を備え、
前記可動部は、前記レンズ体を取り付けることができるキャリアを有し、前記中間部材に対して移動可能なように前記中間部材に支持され、
前記中間部材は、前記固定部に対して前記可動部と共に移動可能なように前記固定部に支持され、
前記第2の開口は、前記固定部に形成されている請求項5記載のレンズ駆動装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のレンズ駆動装置を備えたカメラ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のカメラ装置を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン等の電子機器に用いられるレンズ駆動装置、カメラ装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
OIS(Optical Image Stabilizer)機能とAF(Auto Focus)機能とを併有するレンズ駆動装置の中には、潜望式と称されるものがある。潜望式のレンズ駆動装置では、レンズ体と画像センサが、被写体からの光の入射方向と直交する方向に並べて配置されており、被写体からの光がプリズムやミラーにより反射されて、光軸が折り曲げられてレンズ体に入光し、レンズ体を透過した光が画像センサにより画像信号に変換される。この種のレンズ駆動装置に関わる技術を開示した文献として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、潜望式のレンズ駆動装置において、レンズ体から出て画像センサに入射する光は、画像センサに直接入射する光だけではなく、他の物体に反射してから入射する光もあり、ゴーストが発生する場合があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ゴーストが発生しにくいレンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の好適な態様であるレンズ駆動装置は、レンズ体を移動可能に支持することができ、且つ前記レンズ体の後側に画像センサを配置することができるレンズ駆動装置であって、前記レンズ体と前記画像センサとの間に前記レンズ体から前記画像センサに至る光を通過させ且つ制限する開口を備え、前記開口は、後側に行くほど開口の大きさが大きくなるような傾斜部を有し、前記傾斜部は、複数の畝が該傾斜部の傾斜に沿って前後に延びる鋸歯状部を有する。
【0007】
この態様において、隣り合う前記畝は互いに平行であってもよい。
【0008】
また、前記畝の頂部の角度は、鋭角又は鈍角であってもよい。
【0009】
また、前記開口は上下方向に狭く、左右方向に広く形成されており、前記鋸歯状部は上側又は下側の少なくとも一方に設けられていてもよい。
【0010】
また、前記開口の後側にさらに第2の開口を備え、前記第2の開口は後側に行くほど開口の大きさが小さくなるような逆傾斜面を有してもよい。
【0011】
また、可動部と、中間部材と、固定部と、を備え、前記可動部は、前記レンズ体を取り付けることができるキャリアを有し、前記中間部材に対して移動可能なように前記中間部材に支持され、前記中間部材は、前記固定部に対して前記可動部と共に移動可能なように前記固定部に支持され、前記開口は前記中間部材に形成されていてもよい。
【0012】
また、可動部と、中間部材と、固定部と、を備え、前記可動部は、前記レンズ体を取り付けることができるキャリアを有し、前記中間部材に対して移動可能なように前記中間部材に支持され、前記中間部材は、前記固定部に対して前記可動部と共に移動可能なように前記固定部に支持され、前記第2の開口は、前記固定部に形成されていてもよい。
【0013】
本発明の別の好適な態様であるカメラ装置は、上記のレンズ駆動装置を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の別の好適な態様である電子機器は、上記のカメラ装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるレンズ駆動装置は、レンズ体を移動可能に支持することができ、且つ前記レンズ体の後側に画像センサを配置することができるレンズ駆動装置であって、前記レンズ体と前記画像センサとの間に前記レンズ体から前記画像センサに至る光を通過させ且つ制限する開口を備え、前記開口は、後側に行くほど開口の大きさが大きくなるような傾斜部を有し、前記傾斜部は、複数の畝が該傾斜部の傾斜に沿って前後に延びる鋸歯状部を有する。そのため、ゴーストを形成するような光がこの鋸歯状部で反射されることによって、画像センサに入射しにくくなるとともに光量自体が減衰されている。よって、ゴーストが発生しにくいレンズ駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態であるレンズ駆動装置1を含むカメラ装置2が搭載されたスマートフォン9の正面図である。
【
図2】は、
図1のレンズ駆動装置1の斜視図である。
【
図3】は、
図2からケース11を除いた斜視図である。
【
図4】は、
図2のホルダ開口190及びケース開口110の周囲の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態であるレンズ駆動装置1を含むカメラ装置2は、スマートフォン9に収容される。
【0018】
カメラ装置2は、画像センサ3と、被写体からの光を反射するミラー4と、ミラー4で反射した光を画像センサ3に導くレンズ体5と、レンズ体5を駆動するレンズ駆動装置1と、を有する。
【0019】
以降は、被写体からの光がミラー4に入射する中心の方向を適宜Y方向という。また、ミラー4で反射した光がレンズ体5に向かう一方向をX方向といい、Y方向及びX方向の両方と直交する方向をZ方向という。また、+Y側を上側、-Y側を下側、-X側を前側、+X側を後側、+Z側を左側、-Z側を右側と称することがある。
【0020】
レンズ体5は、レンズバレルにレンズを組み込んだものである。レンズ駆動装置1は、可動部と、中間部材と、固定部と、を有する。レンズ体5は、可動部に属するキャリア15に取り付けられる。中間部材は、固定部に対して可動部と共にX方向及びZ方向に移動可能なようにサスペンションワイヤ24によって支持されている。可動部は、中間部材に対してY方向に移動可能なように板ばね14によって支持されている。
【0021】
可動部は、キャリア15を有し、キャリア15にOIS用第1コイル16が取り付けられて構成されている。板ばね14の一端はキャリア15に取り付けられている。中間部材は、ホルダ19を有し、ホルダ19に、OIS用磁石18及びAF用磁石20が取り付けられて構成されている。板ばね14の他端はホルダ19に取り付けられている。また、サスペンションワイヤ24の一端は、板ばね14の他端を超えて延び出した延出部に固定される。固定部は、ケース11及びベース25を有し、ベース25にAF用コイル22が取り付けられ、また、図示しないOIS用第2コイルがこの固定部に取り付けられる。サスペンションワイヤ24の他端は、ベース25に固定される。
【0022】
ケース11とベース25は、筐体として組み合わされる。ケース11は箱型をなしており、ケース11の後側の壁の中央にはケース開口110が設けられている。ケース11の前側の壁の中央は下端から上端まで切り欠いた切り欠き120が設けられており、切り欠き120は上壁の一部も切り欠いている。画像センサ3は、ケース開口110の後側に設けられる。図示しないOIS用第2コイルはケース11の上壁の内側に配置されている。
【0023】
ベース25は、四角形の板状をなしており、ベース25の後側の縁には、上側に起立した起立部250が設けられ、前側部分の上面には、ミラー取付け部が設けられている。起立部250は、ベース開口251を構成する。また、ベース25には、電気配線が形成されている。AF用コイル22は、ベース25の左右側の上面に設けられる。
【0024】
ホルダ19は、レンズ体5から出射される光が通過するホルダ開口190を包囲する枠部191と、枠部191の左右の周縁部から前側に延在する側壁部192とを有する。ホルダ19は、ベース25の上側に位置し、全体として、キャリア15を囲むように形成されている。側壁部192の左右の上面には、OIS用磁石18が設けられている。側壁部192の左右の下面には、AF用磁石20がAF用コイル22と対向するように設けられている。
【0025】
キャリア15は、上下がつぶれた筒体151を有し、さらに筒体151の前側の上下部分が切り落とされて側面部が形成されている。筒体151の後端はキャリア開口153が形成されている。レンズ体5は、キャリア15の前側から筒体151に嵌め込まれ、支持されている。キャリア15の左右の側面部の外面には、OIS用第1コイル16がOIS用磁石18と対向するように設けられている。
【0026】
サスペンションワイヤ24は、Y方向に延びた金属製のワイヤであり、ホルダ19の四隅部分の外側に各1本ずつ設けられている。サスペンションワイヤ24は、可動部とともに中間部材をベース25から浮いた状態でX方向及びZ方向に移動可能なように支持している。
【0027】
板ばね14は、XZ方向に曲がりくねって細くワイヤ状に延びる腕によって構成されている。前述した一端から他端までの板ばね14は1本の腕で形成され、延出部は腕が環状に形成され、その中央にサスペンションワイヤ24の一端が固定される。
【0028】
次に、レンズ体5と画像センサ3の間にある開口について説明する。
図4に示すように、レンズ体5の後側には、前側から順にキャリア開口153、ホルダ開口190、ベース開口251、ケース開口110が設けられており、この後側に、
図4では図示されていない画像センサ3が設けられている。なお、本実施形態では、開口の下側部分について説明するが、上側部分についても同様の構造が設けられている。また、左右部分については同様の構造は設けられていないが、設けても構わない。
【0029】
キャリア15のキャリア開口153は、レンズ体5の直後に設けられている。キャリア開口153には、後側に行くほど開口の大きさが大きくなるような傾斜面155が設けられている。
【0030】
キャリア開口153の後側にはホルダ19のホルダ開口190があり、ホルダ開口190には、後側に行くほど開口の大きさが大きくなるような傾斜部194が設けられている。ホルダ開口190は、上下方向に狭く、左右方向に広く形成されている。傾斜部194の前端は傾斜面155の後端よりも上側にある。傾斜部194の傾斜の方が傾斜面155の傾斜よりも大きい。傾斜部194には、複数の畝が当該傾斜部194の傾斜に沿って前後に延びる鋸歯状部195が設けられている。鋸歯状部195の畝はY方向から見たときに、X方向に延びていて、隣り合う畝は互いに平行である。YZ平面で切断したときの鋸歯状部195の畝の頂部の角度は、90度以外の角度、即ち鋭角又は鈍角であることが望ましく、本実施形態では鈍角で形成されている。
【0031】
ホルダ開口190から少し離れた後側にベース開口251を構成するベース25の起立部250が設けられている。起立部250の上端には、逆傾斜面254が設けられている。逆傾斜面254は全体として傾斜部194よりもやや下側に位置して前上側、本実施形態では45度を向いている。
【0032】
起立部250の後側にほぼ接するようにケース11が設けられ、ベース開口251の直後にケース開口110が設けられている。ケース開口110の上端は起立部250の上端よりも下側に位置している。
【0033】
レンズ体5から出たゴーストになるような光は、まずキャリア開口153で除去される。次に、キャリア開口153を通過してホルダ開口190の傾斜部194に入射した光は、反射する際に減衰する。さらに、傾斜部194は鋸歯状部195となっていて入射光は入射方向とは異なる方向へ反射されるので、ゴーストになりにくい。このとき、鋸歯状部195が90度である場合、2回反射すると最初の入射光と同じ方向に向かうことになり、反射光が入射光とは異なる方向に向かうという効果は薄れるが、2回反射するので、反射による減衰効果は存在する。鈍角又は鋭角の場合、2回反射しても入射光と同じ方向には反射しないので、ゴーストになりにくい効果はより高まる。
【0034】
次に、ホルダ開口190を通過してベース開口251の逆傾斜面254に入射した光は、後側、即ち画像センサ3側ではなく、前側、即ちレンズ体5側、或いは被写体側に向けて反射される。ケース開口110の上端は起立部250の上端よりも下側に位置しており、本実施形態においては、ゴースト除去に大きな効果を持たせてはいない。
【0035】
以上によって、レンズ体5から出て画像センサ3に入射する光のうちゴーストを形成するような光は、途中の開口によって画像センサ3に入射する量が減少する。即ち、ゴーストを形成するような光が鋸歯状部195で反射されることによって、画像センサ3に入射しにくくなるとともに、仮に入射するとしても、光量が減衰してしまっている。さらに、逆傾斜面254によって、前側に反射されて、ますます画像センサ3に入射しにくい。これにより、ゴーストが発生しにくいレンズ駆動装置を提供することができる。
【0036】
可動部に設けられているOIS用第1コイル16と中間部材に設けられているOIS用磁石18は、互いに向かい合っている。OIS用第1コイル16に電流が流れると、OIS用第1コイル16には、Y方向の電磁力が発生する。これによって、可動部が、中間部材に対して、Y方向に移動する。
【0037】
中間部材に設けられているOIS用磁石18と固定部に設けられている図示しないOIS用第2コイルは、互いに向かい合っている。OIS用第2コイル13に電流が流れると、OIS用第2コイルには、Z方向の電磁力が発生する。これの反作用により、可動部とともに中間部材が、固定部に対して、Z方向に移動する。
【0038】
中間部材に設けられたAF用磁石20と固定部に設けられたAF用コイル22は、互いに向かい合っている。AF用コイル22に電流が流れると、AF用コイル22には、X方向の推力が発生する。これの反作用により、可動部とともに中間部材が、固定部に対して、X方向に移動する。
【0039】
なお、本実施形態におけるレンズ駆動装置1は、潜望式のレンズ駆動装置1について説明したが、光軸が折り曲げられていないレンズ駆動装置1にも適用できる。また、レンズ体5は、レンズバレルを含まなくてもよく、その場合、レンズは直接キャリア15に取り付けられる。また、可動部は3方向に移動する必要は無く、2方向の移動でも1方向の移動でも構わない。その場合、ミラー4やプリズムに代わりの動作をさせてもよい。また、鋸歯状部195の畝は、互いに平行である必要は無く、前側から後側に向けて互いに広がるような形状でもよいし、狭まるような形状でもよい。また、鋸歯状部195と逆傾斜面254を同じ部材に設けてもよい。また、鋸歯状部195をホルダ19以外の部材に設けてもよいし、逆傾斜面254をベース25以外の部材に設けてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 レンズ駆動装置
2 カメラ装置
3 画像センサ
4 ミラー
5 レンズ体
9 スマートフォン
11 ケース
14 板ばね
15 キャリア
16 OIS用第1コイル
18 OIS用磁石
19 ホルダ
20 AF用磁石
22 AF用コイル
24 サスペンションワイヤ
25 ベース
110 ケース開口
254 逆傾斜面
120 切り欠き
151 筒体
153 キャリア開口
155 傾斜面
190 ホルダ開口
191 枠部
192 側壁部
194 傾斜部
195 鋸歯状部
250 起立部
251 ベース開口