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特開2022-93282シート状光硬化性組成物、光硬化性組成物溶液、シート状光硬化性組成物の製造方法および積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093282
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】シート状光硬化性組成物、光硬化性組成物溶液、シート状光硬化性組成物の製造方法および積層体
(51)【国際特許分類】
   C08F 287/00 20060101AFI20220616BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20220616BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20220616BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20220616BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220616BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20220616BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
C08F287/00
C09J133/00
C09J153/00
C09J4/02
C08F290/06
C08F2/44 Z
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190861
(22)【出願日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2020205609
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】上野 和之
(72)【発明者】
【氏名】根本 崇
【テーマコード(参考)】
4F100
4J011
4J026
4J040
4J127
【Fターム(参考)】
4F100AK25A
4F100AK25C
4F100AK42B
4F100AK51A
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100EJ08
4F100EJ54
4F100GB41
4F100JB14A
4J011AA05
4J011AC04
4J011CA01
4J011CC10
4J011PA69
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA06
4J011QA24
4J011QB16
4J011QB24
4J011RA03
4J011SA84
4J011UA01
4J011WA06
4J026AA45
4J026AC16
4J026AC33
4J026AC34
4J026BA32
4J026BA50
4J026BB03
4J026BB08
4J026DA11
4J026DA18
4J026DA20
4J026DB05
4J026DB06
4J026DB07
4J026DB36
4J026FA05
4J026GA07
4J040DF031
4J040DM001
4J040FA102
4J040FA142
4J040FA292
4J040HD32
4J040JB08
4J040KA13
4J040KA23
4J040LA01
4J040LA02
4J040MA10
4J040NA17
4J040NA19
4J040PA32
4J127AA03
4J127BB032
4J127BB112
4J127BB222
4J127BC021
4J127BD411
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BF141
4J127BF14X
4J127BF621
4J127BF62X
4J127BG271
4J127BG27Z
4J127CB161
4J127CB281
4J127CB341
4J127CC091
4J127DA28
4J127DA49
4J127EA13
4J127FA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光硬化性組成物について、常温および高温環境下の両方において、剥離接着強さを向上させることが困難である樹脂基材に対する剥離接着強さを向上させるための光硬化性組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】光硬化性組成物は以下の(A)~(D)成分を含み、硬化前の状態で25℃においてシート状である。
(A)成分:(メタ)アクリルトリブロック共重合体
(B)成分:(メタ)アクリレートオリゴマー(ただし、前記(A)成分を除く)
(C)成分:下記式1で表される、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー
(D)成分:光開始剤

(式1中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは酸素原子を含む一価の有機基である)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)~(D)成分を含み、硬化前の状態で25℃においてシート状である、シート状光硬化性組成物:
(A)成分:(メタ)アクリルトリブロック共重合体
(B)成分:(メタ)アクリレートオリゴマー(ただし、前記(A)成分を除く)
(C)成分:下記式1で表される化合物
【化1】

(上記式1中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは酸素原子を含む一価の有機基である)
(D)成分:光開始剤。
【請求項2】
前記(A)成分100質量部に対して、前記(C)成分を0.1~10質量部含む、請求項1に記載のシート状光硬化性組成物。
【請求項3】
前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分を10~80質量部含む、請求項1または2に記載のシート状光硬化性組成物。
【請求項4】
前記式1中のRは、水素原子であり、Rは、水酸基および/またはエーテル結合を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のシート状光硬化性組成物。
【請求項5】
前記(B)成分がウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマーである、請求項1~4のいずれか1項に記載のシート状光硬化性組成物。
【請求項6】
(E)成分としてカップリング剤をさらに含む、請求項1~5のいずか1項に記載のシート状光硬化性組成物。
【請求項7】
以下の(A)~(D)成分および溶剤を含む、光硬化性組成物溶液:
(A)成分:(メタ)アクリルトリブロック共重合体
(B)成分:(メタ)アクリレートオリゴマー(ただし、前記(A)成分を除く)
(C)成分:下記式1で表される化合物
【化2】

(上記式1中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは酸素原子を含む一価の有機基である)
(D)成分:光開始剤。
【請求項8】
硬化前の状態で25℃においてシート状である光硬化性組成物の製造方法であって、
請求項7に記載の光硬化性組成物溶液に含まれる前記溶剤を揮発させることを含む、シート状光硬化性組成物の製造方法。
【請求項9】
前記溶剤の揮発を離型紙または離型フィルム上で行う、請求項8に記載のシート状光硬化性組成物の製造方法。
【請求項10】
第1の被着体と、シート状光硬化性組成物と、第2の被着体と、がこの順に貼り合わされた構成を有する積層体であって、
前記シート状光硬化性組成物は、請求項7に記載の光硬化性組成物溶液に含まれる前記溶剤の揮発を前記第1の被着体および/または前記第2の被着体上で行うことにより形成される、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、25℃においてシート状である光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイなどの表示装置の組み立てに用いられる接着剤には、広い温度範囲にわたって接着性が良好であることが求められる。そして、このような特性を向上させるため、光硬化性組成物において、ガラス転移温度が高いハードセグメントと、ガラス転移温度が低いソフトセグメントとを有するトリブロック共重合体エラストマーを用いることが提案されている。
【0003】
例えば、特開2017-036368号公報には、(メタ)アクリレートのトリブロック共重合体エラストマーを主成分として含み、再剥離性を有する光硬化性粘着剤組成物(粘着性組成物)が提案されている。しかしながら、当該文献に開示された光硬化性粘着剤組成物は、粘着剤として用いることを意図したものである(すなわち、再剥離可能であり、その使用時、半固形で粘性を保持している)ことから、接着剤としての用途(すなわち、再剥離せず、被着体に対して固体の状態で接着する用途)には不適当である。具体的には、上記文献に開示された光硬化性粘着剤組成物は、高温雰囲気下において放置した場合、強度の低下などの理由により、信頼性試験において被着体(基材)から剥離することが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、従来技術によれば、光学用途に使用される(メタ)アクリレートのトリブロック共重合体を用いた光硬化性組成物が提案されている。しかしながら、常温および高温環境下の両方(例えば、25℃雰囲気下および85℃雰囲気下)において、被着体(基材)からの剥離が問題となることがあった。そして、被着体(基材)として、(メタ)アクリル樹脂板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどを用いた場合、これらの被着体(基材)に対する剥離接着強さ(接着力)を向上させることが特に困難であった。
【0005】
本発明は、上記の状況に鑑みてされたものであり、光硬化性組成物について、常温および高温環境下の両方において、剥離接着強さを向上させることが困難である樹脂基材に対する剥離接着強さを向上させるための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成するべく鋭意検討した結果、以下で詳説するシート状光硬化性組成物によれば、常温および高温環境下の両方において、剥離接着強さを向上させることが困難である樹脂基材に対する剥離接着強さを向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映したシート状光硬化性組成物は、以下の(A)~(D)成分を含み、硬化前の状態で25℃においてシート状である:
(A)成分:(メタ)アクリルトリブロック共重合体
(B)成分:(メタ)アクリレートオリゴマー(ただし、前記(A)成分を除く)
(C)成分:下記式1で表される化合物
【0008】
【化1】
【0009】
(上記式1中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは酸素原子を含む一価の有機基である)
(D)成分:光開始剤。
【0010】
また、本発明者らは、以下の光硬化性組成物溶液により、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した光硬化性組成物溶液は、以下の(A)~(D)成分および溶剤を含む:
(A)成分:(メタ)アクリルトリブロック共重合体
(B)成分:(メタ)アクリレートオリゴマー(ただし、前記(A)成分を除く)
(C)成分:上記式1で表される化合物
(D)成分:光開始剤。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を説明する。なお、本開示は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、「X~Y」は、その前後に記載される数値(XおよびY)を下限値および上限値として含む範囲を意味し、「X以上Y以下」を意味する。また、濃度、%は、特に断りのない限りそれぞれ質量濃度、質量%を表すものとし、比は特に断りのない限り質量比とする。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は、室温(20~25℃)/相対湿度40~55%RHの条件で行う。また、「Aおよび/またはB」は、A、Bの各々およびこれらの組み合わせを含むことを意味する。
【0013】
[シート状光硬化性組成物]
本発明の一態様に係るシート状光硬化性組成物(以下、「シート状光硬化性組成物」または単に「組成物」とも称する)は、以下の(A)~(D)成分を含み、硬化前の状態で25℃においてシート状である:
(A)成分:(メタ)アクリルトリブロック共重合体
(B)成分:(メタ)アクリレートオリゴマー(ただし、前記(A)成分を除く)
(C)成分:下記式1で表される化合物
【0014】
【化2】
【0015】
(上記式1中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは酸素原子を含む一価の有機基である)
(D)成分:光開始剤。
【0016】
本発明の一態様に係るシート状光硬化性組成物によれば、常温および高温環境下の両方(例えば、25℃雰囲気下および85℃雰囲気下)、すなわち、25℃程度の常温環境下から85℃程度の高温環境下に至るまで、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、(メタ)アクリル樹脂板、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の樹脂基材に対する剥離接着強さを向上させることができる。
【0017】
従来、これらの樹脂基材は、その表面が疎水性であるため、接着剤を用いた接着を行うことが難しく、これらの樹脂基材に対する(メタ)アクリレートのトリブロック共重合体を含む組成物の接着性は十分ではなかった。
【0018】
また、広い温度範囲で使用可能な接着剤を得ることを目的として、組成物に上記のようなトリブロック共重合体(ハードセグメントおよびソフトセグメントを有するトリブロック共重合体)を添加すると、構造が類似したセグメント(ブロック)同士が凝集してミクロ相分離構造を形成してしまい、基材に対する接着性が向上しにくいという問題もあった。
【0019】
しかし、本発明に係るシート状光硬化性組成物によれば、(C)成分として含まれる化合物を含むことにより、従来は剥離接着強度が向上しにくかった樹脂基材に対しても、良好な接着性が発揮されると推測される。したがって、本発明に係るシート状光硬化性組成物によれば、(メタ)アクリレートのトリブロック共重合体を用いた場合であっても、樹脂基材に対して良好な接着性が得られる。そして、(メタ)アクリレートのトリブロック共重合体を用いることにより、広い温度範囲において優れた接着性を得ることができる。
【0020】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、当該メカニズムの正誤が本発明の技術的範囲に影響することはない。
【0021】
本発明に係るシート状光硬化性組成物は、硬化前の状態で25℃においてシート状である。ここで、「シート状」とは、2次元の面としての広がりを持ち、厚み分の距離を隔てて対向する表面および裏面を有する形状を意味する。その厚みは特に制限されないが、例えば、好ましくは5~300μm、特に好ましくは10~200μmである。シート状光硬化性組成物の厚みが上記範囲であると、製造時に用いられる溶剤が十分に揮発し、ピンホールやボイドの発生を効果的に抑制できる。
【0022】
なお、本明細書において、硬化前の光硬化性組成物であってシート状に形成されたものを「シート状光硬化性組成物」と称する。また、シート状に加工されていない状態であって、硬化前の組成物を、単に「光硬化性組成物」とも称する。さらに、「光硬化性組成物溶液」とは、シート状光硬化性組成物に含まれる成分に加えて、溶剤をさらに含むものをいう。さらにまた、「硬化物」とは、シート状光硬化性組成物について、溶剤を含まない状態で光照射による重合を行ったものを指す。
【0023】
以下、本発明の一態様に係るシート状光硬化性組成物に含まれる成分について説明する。
【0024】
<(A)成分>
本発明に係るシート状光硬化性組成物に含まれる(A)成分は、(メタ)アクリレートのトリブロック共重合体(本明細書中、「(メタ)アクリルトリブロック共重合体」または単に「トリブロック共重合体」とも称する)である。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。また、「(メタ)アクリロイル」との語は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方を包含する。よって、例えば、「(メタ)アクリロイル基」との語は、アクリロイル基(HC=CH-C(=O)-)およびメタクリロイル基(HC=C(CH)-C(=O)-)の双方を包含する。また、同様に、「(メタ)アクリレート」との語は、アクリレートおよびメタクリレートの双方を包含し、「(メタ)アクリル」との語は、アクリルおよびメタクリルの双方を包含する。(メタ)アクリロイル基は、成分中に(メタ)アクリロイルオキシ基の形態として含まれていてもよい。
【0025】
(A)成分としての(メタ)アクリレートのトリブロック共重合体は、(メタ)アクリレートモノマー((メタ)アクリロイル基を1個以上有するエステル化合物)を重合させることで得られた、または得られうるトリブロック共重合体である。かような(A)成分を含むことにより、本発明に係るシート状光硬化性組成物は、常温および高温環境下(例えば、25℃雰囲気下および85℃雰囲気下)における剥離接着強さに優れる。また、(メタ)アクリレートのトリブロック共重合体は、(メタ)アクリレートオリゴマーとの相溶性が良好で、特に、以下で詳説する(B)成分との相溶性が良い。このように、(B)成分との相溶性が良好であると、透明性が高くなり、表示素子や光学用途に適したシート状光硬化性組成物が得られる。
【0026】
(A)成分は、反応性官能基を含まないエラストマーであると好ましい。(A)成分の引張伸びは、100~600%であると好ましく、110~580%であるとより好ましく、130~400%であると特に好ましい。引張伸びが100%以上であると、シート状光硬化性組成物の柔軟性が向上し、凹凸面や曲面などに追従しやすくなるため、多様な形状の面に対して優れた接着性を発揮できる。一方、引張伸びが600%以下であると、シート状光硬化性組成物が柔らかくなりすぎず、作業性が良好になることに加え、優れた剥離接着強さが得られる。また、光硬化性組成物をシート状に成形しやすくなる。なお、上記引張伸びはISO37:2017に準拠して測定された値である。
【0027】
(A)成分としてのトリブロック共重合体としては、セグメントX、セグメントYおよびセグメントZから構成されるX-Y-Z型(3つの互いに異なる種類のユニットを有する構造)、セグメントXと、セグメントYとから構成されるX-Y-X型(2つの同種のユニットによって、1つの異なる種類のユニットが挟まれる構造)等のトリブロック共重合体を用いることができる。なお、上記各セグメントは、単一のモノマーから構成されていてもよいし、二種以上のモノマーから構成されていてもよい。かようなトリブロック共重合体を作製する方法としては、特に限定されないが、各セグメント(ブロック)を構成する公知の(メタ)アクリレートモノマーをリビング重合する方法が挙げられる。前記リビング重合の手法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いてアニオン重合する方法、有機希土類金属錯体を重合開始剤として重合する方法などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いることで、各セグメント(ブロック)を構成する公知の(メタ)アクリレートモノマーを重合させることが可能である。
【0028】
なかでも、(A)成分としてのトリブロック共重合体は、X-Y-X型であると好ましい。かような構造の(A)成分を用いることにより、常温および高温環境下における剥離接着強さがより向上し、また、以下で詳説する(B)成分との相溶性が良好となるため、透明性も良好となる。
【0029】
さらに、(A)成分としてのトリブロック共重合体は、ガラス転移温度が高いハードセグメントXおよびガラス転移温度が低いソフトセグメントYからなるX-Y-X型等のトリブロック共重合体であると好ましい。ここで、「ガラス転移温度」とは、当該セグメントを構成する単量体の重合体のガラス転移温度(Tg)を意味する。なお、本明細書中、ガラス転移温度(Tg)の値には、昇温速度20℃/分で当該重合体の熱分析を行い、JIS K 7121:1987に従って求める中間点ガラス転移温度の値を採用する。
【0030】
上記セグメントXのガラス転移温度は80~250℃であると好ましく、90~200℃であるとより好ましく、100~150℃であると特に好ましい。セグメントXのガラス転移温度が上記範囲であると、硬化時の接着力に優れる。
【0031】
上記セグメントYのガラス転移温度は-150~0℃であると好ましく、-100~-15℃あるとより好ましく、-70~-30℃であると特に好ましい。セグメントYのガラス転移温度が上記範囲であると、常温および高温環境下において、PETフィルム等の接着力が向上しにくい樹脂基材に対する剥離接着強さがより向上する。
【0032】
(A)成分は、ガラス転移温度が100~150℃であるセグメントXと、ガラス転移温度が-70~-30℃であるセグメントYとから構成されるX-Y-X型の(メタ)アクリレートのトリブロック共重合体であると好ましい。さらに(A)成分は、上記好ましい範囲のガラス転移温度をそれぞれ有するセグメントXおよびセグメントYとから構成されるX-Y-X型の(メタ)アクリレートのトリブロック共重合体であると好ましい。かようなトリブロック共重合体を用いることにより、所期の剥離接着強さがより向上する。
【0033】
セグメントXを構成する単量体は、炭素数1~5の直鎖状または分枝状のアルキル基を有するメタクリレートであると好ましく、炭素数1~3の直鎖状または分枝状のアルキル基を有するメタクリレートであるとより好ましく、メチルメタクリレートであると特に好ましい。すなわち、(A)成分は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)ブロックとPMMA以外の(他の)ブロックとから構成されるトリブロック共重合体であると好ましい。かような構造を有するトリブロック共重合体を用いることにより、所期の剥離接着強さがより向上する。
【0034】
また、セグメントYを構成する単量体は、炭素数1~20の直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアクリレートであると好ましく、炭素数2~15の直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアクリレートであるとより好ましく、炭素数3~8の直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアクリレートであるとさらにより好ましく、n-ブチルアクリレートであると特に好ましい。すなわち、(A)成分は、PnBA(ポリn-ブチルアクリレート)ブロックを含むことが好ましい。かような構造を有するトリブロック共重合体を用いることにより、所期の剥離接着強さがより向上する。
【0035】
本発明の好ましい形態によれば、(A)成分のセグメントXが、炭素数1~3のアルキル基を有するメタクリレートの重合体であり、セグメントYが、炭素数3~8のアルキル基を有するアクリレートの重合体であることが好ましい。かような構造を有するトリブロック共重合体を用いることにより、所期の剥離接着強さがさらに向上する。さらに(A)成分は、セグメントXがPMMAブロックであり、セグメントYがPnBAブロックであるX-Y-X型の(メタ)アクリレートのトリブロック共重合体であるとより好ましい。
【0036】
(A)成分において、トリブロック共重合体全体を100質量%としたときのセグメントXの含有割合は、5質量%以上であると好ましく、15質量%以上であるとより好ましく、25質量%以上であると特に好ましい。一方、その上限は、60質量%以下であると好ましく、50質量%以下であるとより好ましく、45質量%以下であると特に好ましい。そしてこのとき、セグメントXは、PMMAブロックであると好ましい。このような構成により、(A)成分の引張伸びが100%以上になりやすくなるため、シート状光硬化性組成物の柔軟性が向上する。その結果、シート状光硬化性組成物が凹凸面や曲面などに追従しやすくなるため、多様な形状の面に対して優れた接着性を発揮できる。
【0037】
一方、前記(A)成分において、トリブロック共重合体全体を100質量%としたときのセグメントYの含有割合は、40質量%以上であると好ましく、50質量%以上であるとより好ましく、55質量%以上であると特に好ましい。一方、その上限は、95質量%以下であると好ましく、85質量%以下であるとより好ましく、75質量%以下であると特に好ましい。各セグメントの含有割合が上記範囲内であると、より一層、所期の剥離接着強さが向上する。
【0038】
さらに、(A)成分において、トリブロック共重合体全体を100質量%としたとき、セグメントXの含有割合は、5~60質量%であり、セグメントYの含有割合は、40~95質量%であると好ましい。この形態において、さらにセグメントXおよびセグメントYの含有割合が、それぞれ、上記の好ましい範囲のいずれかであると好ましい。
【0039】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)としては特に制限されないが、10,000~500,000であると好ましく、30,000~200,000であるとより好ましく、40,000~150,000であるとさらにより好ましく、50,000~100,000であると特に好ましい。重量平均分子量が、10,000以上であると、硬化性がより良好となる。また、重量平均分子量が500,000以下であると、粘性がより低く、被着体と貼りあわせる際に界面でのなじみがより良好となる結果、所期の剥離接着強さがより向上する。なお、本明細書中、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0040】
(A)成分としては、合成品および市販品のいずれも用いることができる。
【0041】
(A)成分の市販品の具体例としては、メチルメタクリレートおよびn-ブチルアクリレートを用いた、株式会社クラレのクラリティ(登録商標、以下同じ)LAシリーズ、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートを用いたクラリティLKシリーズなどが挙げられる。これらの具体例としては、株式会社クラレのクラリティLA2270、LA2250、LA2140、LA2330、LA3320など、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
(A)成分は1種類を単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても良い。なお、2種以上が併用される場合、(A)成分の含有量は、合計量を指す。
【0043】
(A)成分の含有量は特に制限されないが、(A)~(D)成分の合計100質量部に対して、40~90質量部であると好ましく、50~80質量部であるとより好ましく、60~70質量部であると特に好ましい。(A)成分の含有量が上記範囲内であることで、所期の剥離接着強さがより向上する。
【0044】
また、(A)成分の含有量は、シート状光硬化性組成物(溶剤などの揮発成分を除いた状態)の総質量に対して、40~90質量%であると好ましく、50~80質量%であるとより好ましく、60~70質量%であると特に好ましい。
【0045】
<(B)成分>
本発明に係るシート状光硬化性組成物に含まれる(B)成分は、(メタ)アクリレートオリゴマーである(ただし、上記(A)成分を除く)。(メタ)アクリレートオリゴマーとは、(メタ)アクリロイル基を1個以上有するオリゴマーを指す。また、「オリゴマー」とは、モノマー単位((メタ)アクリレートモノマー以外のモノマー単位を含む)が2~数十程度繰り返された重合体をいう。なお、(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位からなるセグメント(ブロック)を3個有する重合体は、(A)成分に含まれるものとし、(B)成分には含まれないものとする。
【0046】
(B)成分は、1分子当たり(メタ)アクリロイル基を2~5個を有すること(2~5官能(メタ)アクリレートオリゴマー)が好ましく、2個有すること(2官能(メタ)アクリレートオリゴマー)がより好ましい。また、(B)成分に含まれる(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基であると好ましい。
【0047】
(B)成分の重量平均分子量は、好ましくは、1,000~50,000であり、より好ましくは1,000~30,000であり、さらにより好ましくは3,000~10,000であり、特に好ましくは4,000以上10,000未満である。重量平均分子量が1,000以上であると硬化性が良好であり、重量平均分子量が50,000以下であると、粘性がより低く、被着体と貼りあわせる際に界面でのなじみが良好となる結果、所期の剥離接着強さが向上する。
【0048】
また、(B)成分のガラス転移点温度は、25℃以下であると好ましく、0℃以下であるとより好ましく、-30℃以下であると特に好ましい。(B)成分のガラス転移点温度を上記範囲とすることで剥離接着強さの向上に寄与することができる。一方、その下限は特に制限されないが、-100℃以上であると好ましい。
【0049】
(B)成分としては、エポキシ変性(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリルモノマーを重合させた主骨格を有し、当該主骨格の末端に(メタ)アクロイル基を有するオリゴマーなどが挙げられる。なかでも、保護パネルに用いられるガラスやプラスチックとの密着性が良好であることから、(B)成分は、ウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマーであると好ましい。
【0050】
エポキシ変性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂などに(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ変性(メタ)アクリルオリゴマーも挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
本明細書において、ウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマーとは、ウレタン結合および(メタ)アクリロイル基をそれぞれ1個以上有するオリゴマーをいう。ウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマーについて、1分子当たりに含まれる(メタ)アクリロイル基の好ましい数や、重量平均分子量は、上記(メタ)アクリレートオリゴマーに関する説明と同様である。
【0052】
(B)成分としては、合成品および市販品のいずれも用いることができる。(B)成分として好ましい形態であるウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマー例えば、分子内に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物(主骨格)、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物、および分子中に1個以上の水酸基を含有する(メタ)アクリレートの反応により合成される。
【0053】
分子内に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、カプロラクトンジオール、ビスフェノールポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ひまし油ポリオール、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。なかでも、透明性に優れ、耐久性に優れることから、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオールが好ましく、高温高湿の雰囲気下において硬化物が白濁しにくいという観点から、ポリカーボネートジオールが特に好ましい。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば芳香族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられ、なかでも、柔軟性のある硬化物が得られるという観点で、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートが好ましい。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。所期の剥離接着強さを向上させる観点から、(B)成分は、脂肪族ポリイソシアネートを用いて合成された脂肪族系ウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマーであると好ましい。
【0055】
芳香族ポリイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカトリイソシアネートなどが挙げられる。なかでも、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂環式または脂肪族ジイソシアネートが好ましく、脂肪族ジイソシアネートが特に好ましい。
【0056】
分子中に1個以上の水酸基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコールなどの二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレートまたはジ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。これらの中でも柔軟性に優れる硬化物が得られるという観点から、二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくはエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレートである。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
ウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマーの合成方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を使用することができる。ウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、上記の各化合物を原料とした反応により合成することができ、より具体的には、以下の方法により合成されうる。
【0058】
分子内に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物と、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物とを、好ましくは3:1~1:3のモル比(ポリオール化合物:イソシアネート化合物)、更に好ましくは2:1~1:2のモル比で、希釈剤(例えば、メチルエチルケトン、メトキシフェノールなど)中で反応させてウレタンプレポリマーを得る。次いで、更に、得られたウレタンプレポリマー中に残存するイソシアネート基と、これと反応するのに十分な量の分子中に1個以上の水酸基を含有する(メタ)アクリレートとを反応させて、ウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマーを合成することができる。
【0059】
合成時に用いる触媒としては、例えば、オレイン酸鉛、テトラブチルスズ、三塩化アンチモン、トリフェニルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、テトラ-n-ブチル-1,3-ジアセチルオキシジスタノキサン、トリエチルアミン、1,4-ジアザ[2,2,2]ビシクロオクタン、N-エチルモルホリンなどを挙げることができる。なかでも活性が高く、透明性に優れる硬化物が得られることから、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オクテン酸亜鉛が好ましく用いられる。これらの触媒を、反応物の総量100質量部に対して0.0001~10質量部用いると好ましい。また、反応温度は、通常10~100℃であり、30~90℃であると特に好ましい。ウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマーは原料の段階で溶剤または後記の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーで希釈されているものを使用しても良い。
【0060】
(B)成分の市販品の具体例としては、根上工業株式会社のUN-1255、UN-9200A、UN-9000PEPなど、新中村化学工業株式会社のU-200PA、UA-160TMなど、三菱ケミカル株式会社の紫光シリーズUV-3000B、UV-3700Bなど、日本曹達株式会社のTEAI-1000、ダイセル・オルネクス株式会社のEBECRYL(登録商標)シリーズ230、270、4858、8402、8804、8807、9270、4513、8311、9260、8701、4265、4587、8210、1290、5129、8310R、210、220などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
(B)成分は1種類を単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても良い。なお、2種以上が併用される場合、(B)成分の含有量は、合計量を指す。
【0062】
(B)成分の含有量は特に制限されないが、(A)成分100質量部に対して10~80質量部であると好ましく、20~60質量部であるとより好ましく、30~50質量部であると特に好ましい。(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量が10質量部以上であると、常温および高温環境下の両方(25℃雰囲気下および85℃雰囲気下)において剥離接着強さを向上させることができる、一方、当該(B)成分の含有量が80質量部以下であると、はラミネート時の流動開始温度を低くすることができ、被着体に対する熱的なダメージを低減できる。
【0063】
<(C)成分>
本発明に係るシート状光硬化性組成物に含まれる(C)成分は、下記式1で表される化合物である。下記式1で表される化合物は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであり、(メタ)アクリルアミドモノマーである。かような(C)成分を含むことにより、本発明に係るシート状光硬化性組成物は、(メタ)アクリレートのトリブロック共重合体((A)成分)を含みながらも、樹脂基材に対する優れた接着性を有する。
【0064】
【化3】
【0065】
式1中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは酸素原子を含む一価の有機基である。酸素原子を含む一価の有機基の具体例としては、水酸基および/またはエーテル結合を有する一価の有機基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。Rがエーテル結合を含む場合、当該エーテル結合は、アルコキシ基として含まれていると好ましい。すなわち、Rは、水酸基および/またはアルコキシ基を含むと好ましい。
【0066】
光照射による硬化を促進するという観点から、上記式1中のRは、水素原子であると好ましい。すなわち、(C)成分は、アクリルアミド化合物であると好ましい。より好ましい形態において、(C)成分としての化合物は、上記式1中のRが、水素原子であり、Rが、水酸基および/またはエーテル結合を含む。また、このとき、Rは、水酸基および/またはアルコキシ基を含むとより好ましい。
【0067】
さらに、式1中のRは、下記式2で表される一価の有機基であると好ましい。
【0068】
【化4】
【0069】
式2中、R’は、炭素数1~5の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、Aは、水素原子または炭素数1~5の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、「*」は、式1中の窒素原子との結合点である。
【0070】
R’としての炭素数1~5の直鎖状または分枝状のアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ジメチルエチレン基、エチルエチレン基などが挙げられる。
【0071】
Aとしての炭素数1~5の直鎖状または分枝状のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基が挙げられる。
【0072】
より好ましくは、(C)成分は、上記式1中、Rが水素原子であり、Rが上記式2で表される一価の有機基であり、上記式2中、R’が炭素数1~3の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、Aが水素原子または炭素数2~5の直鎖状のアルキル基である化合物である。さらに、上記形態において、Aは、水素原子であると特に好ましい。
【0073】
(C)成分の具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドやN-n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
(C)成分の市販品の具体例としては、KJケミカルズ株式会社のHEAA(登録商標)、株式会社新菱のNBMAなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0075】
(C)成分は1種類を単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても良い。なお、2種以上が併用される場合、(C)成分の含有量は、合計量を指す。
【0076】
(C)成分の含有量は特に制限されないが、(A)成分100質量部に対して0.1~30質量部であると好ましく、0.1~10質量部であるとより好ましく、1~9質量部であるとさらにより好ましく、3~8質量部であると特に好ましく、5~8質量部であると最も好ましい。(A)成分100質量部に対する(C)成分の含有量が0.1質量部以上であると接着性がより向上し、(メタ)アクリル樹脂板、TACフィルム、PETフィルムなどの樹脂基材に対する剥離接着強さをより一層向上できる。一方、当該(C)成分の含有量が30質量部以下であると流動開始温度を低くすることができ、被着体に対する熱的なダメージを低減できる。
【0077】
また、(B)成分100質量部に対して、(C)成分の含有量は1~50質量部であると好ましく、5~30質量部であるとより好ましく、10~20質量部であるとさらにより好ましく、12~18質量部であると特に好ましい。(B)成分100質量部に対する(C)成分の含有量が1質量部以上であると接着性がより向上し、上記樹脂基材に対する剥離接着強さをより一層向上できる。一方、当該(C)成分の含有量が50質量部以下であると流動開始温度を低くすることができ、被着体に対する熱的なダメージを低減できる。
【0078】
<(D)成分>
本発明に係るシート状光硬化性組成物に含まれる(D)成分は、光開始剤(光重合開始剤)である。光開始剤とは、紫外線、可視光、電子線などの活性エネルギー線を照射することにより分解して、ラジカル種、カチオン種またはアニオン種を発生する化合物である。
【0079】
(D)成分としては、アセトフェノン系光開始剤、ベンゾイン系光開始剤、ベンゾフェノン系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光開始剤などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、(D)成分は、アシルホスフィンオキサイド系光開始剤を含むと好ましい。アシルホスフィンオキサイド光開始剤を含む組成物は、組成物自体が黄色になる場合があるが、可視光領域の活性エネルギー線によって硬化しやすく、光硬化性が向上する。
【0080】
アセトフェノン系光開始剤としては、例えばジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマーなどが挙げられるが、この限りではない。
【0081】
ベンゾイン系光開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられるが、この限りではない。
【0082】
ベンゾフェノン系光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられるが、この限りではない。
【0083】
チオキサントン系光開始剤としては、例えば2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリドなどが挙げられるが、この限りではない。
【0084】
アシルホスフィンオキサイド系光開始剤としては、例えばビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-フェニルエトキシ-ホスフィンオキサイドなどが挙げられるが、この限りではない。
【0085】
(D)成分の市販品の具体例としては、IGM Resins B.V.社のOmnirad(登録商標)シリーズ TPOなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0086】
(D)成分は1種類を単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても良い。なお、2種以上が併用される場合、(D)成分の含有量は、合計量を指す。
【0087】
(D)成分の含有量(添加量)は特に制限されないが、(A)成分100質量部に対して0.1~5.0質量部であると好ましく、0.1~3.0質量部であるとより好ましく、0.3~1.0質量部であると特に好ましい。(A)成分100質量部に対する(D)成分の含有量が0.1質量部以上であると光硬化性に優れた光硬化性組成物が得られ、5.0質量部以下であると硬化物の着色を効果的に防ぐことができる。
【0088】
また、(B)成分100質量部に対して、(D)成分の含有量(添加量)は0.1~5.0質量部であると好ましく、0.5~3.0質量部であるとより好ましい。また、他の好ましい形態では、(B)成分100質量部に対する(D)成分の含有量(添加量)は、0.1~1.0質量部である。(B)成分100質量部に対する(D)成分の含有量が0.1質量部以上であると光硬化性に優れた光硬化性組成物が得られ、5.0質量部以下であると硬化物の着色を効果的に防ぐことができる。
【0089】
<(E)成分>
本発明に係るシート状光硬化性組成物は、上記(A)~(D)成分に加え、界面において接着力を向上させるという観点から、(E)成分として、カップリング剤をさらに含むと好ましい。
【0090】
本発明に係るシート状光硬化性組成物に含まれうる(E)成分としては、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0091】
アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤の具体例として、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのグリシジル基含有シランカップリング剤;ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル基含有シランカップリング剤;3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)などの(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;その他、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でもより樹脂基材に対する密着性の向上が期待できるという観点で、アルコキシシリル基に加え、エポキシ基(グリシジル基)または(メタ)アクリロイル基を含有するシランカップリング剤が好ましく、最も好ましいのはメタクリロイル基を含有するシランカップリング剤である。
【0092】
(E)成分は1種類を単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても良い。なお、2種以上が併用される場合、(E)成分の含有量は、合計量を指す。
【0093】
(E)成分の含有量(添加量)は特に制限されないが、(A)成分100質量部に対して0.05~15質量部であると好ましく、0.5~10質量部であるとより好ましく、0.8~5質量部であると特に好ましい。(A)成分100質量部に対する(E)成分の含有量が0.05質量部以上であると剥離接着強さのさらなる向上に寄与し、15質量部以下であるとアウトガスの低減効果が得られる。
【0094】
また、(B)成分100質量部に対して、(E)成分の添加量は0.1~20質量部であると好ましく、3~15質量部であるとより好ましい。(B)成分100質量部に対する(E)成分の含有量が0.1質量部以上であると剥離接着強さのさらなる向上に寄与し、20質量部以下であるとアウトガスの低減効果が得られる。
【0095】
<任意成分>
本発明に係るシート状光硬化性組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、溶剤、上記(C)成分以外の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、無機充填剤および有機充填剤などの充填剤、保存安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、染料、顔料、難燃剤、増感剤、熱開始剤、重金属不活性剤、イオントラップ剤、乳化剤、水分散安定剤、消泡剤、離型剤、レベリング剤、ワックス、レオロジーコントロール剤、界面活性剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0096】
((C)成分以外の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー)
上記(C)成分以外の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーとしては、単官能、二官能、三官能、四官能以上の多官能モノマーが挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリレートモノマーであり、特に、単官能または二官能の(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。光硬化性組成物の粘度を小さくするため、(C)成分以外の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーは分子量が1000以下であることが好ましい。かような化合物(低分子量化合物)の分子量は、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)法等、公知の方法で測定できる。
【0097】
単官能モノマーとしては、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、変性ブチル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性フェノキシ(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0098】
二官能モノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジアクリレート、ジ(メタ)アクリロイルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0099】
三官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0100】
多官能モノマーとしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの重合性モノマーは単独または二種類以上を混合して用いることができる。
【0101】
他の好ましい形態において、(C)成分以外の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーとは、1以上のエーテル結合および1以上の(メタ)アクリロイル基を含有する(メタ)アクリレートである。当該(メタ)アクリレートとしては、エーテル結合の繰り返し構造を1分子中に8~30有するポリエーテルモノマー(ポリエーテル(メタ)アクリレート)が好ましい。エーテル結合の繰り返し構造が8以上である場合、高温高湿の雰囲気下において外部から硬化物内部に透過してくる水分と、当該ポリエーテルモノマーとの間の分離に起因する白濁がより抑制される。一方、エーテル結合の繰り返し構造が30以下であるポリエーテルモノマーは、当該モノマー同士が結晶化しにくく、硬化物の白濁がより抑制される。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0102】
エーテル結合および(メタ)アクリロイル基を含有する(メタ)アクリレート(ポリエーテル(メタ)アクリレート)としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0103】
上記ポリエーテル(メタ)アクリレートの分子量は200~5,000の範囲が好ましく、より好ましくは250~3,000である。
【0104】
上記ポリエーテル(メタ)アクリレートの市販品の具体例としては、新中村化学工業株式会社のM-90G、AM-130G、M-230G、A-400、A-600、APG-700、A-1000、9G、14G、23G、1206PEなど、日油株式会社のPDE-600、PDP-700、ADE-600など、共栄社化学株式会社のライトエステルシリーズ130MA、130A、14EG、14EG-Aなどが挙げられるが、この限りではない。
【0105】
(無機充填剤)
無機充填剤の具体例としてはガラス粉、フュームドシリカ粉、シリカ粉、アルミナ粉、マイカ粉、シリコーンゴム粉、炭酸カルシウム粉、窒化アルミ粉、カーボン粉、カオリンクレー粉、乾燥粘土鉱物粉、乾燥珪藻土粉、金属粉などが挙げられる。さらに、フュームドシリカ粉としては、オルガノクロロシラン類、ポリオルガノシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどで表面を化学修飾(疎水化)したものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。無機充填剤の市販品の具体例としては、例えば日本アエロジル株式会社のアエロジル(登録商標)シリーズR974、R972、R972V、R972CF、R805、R812、R812S、R816、R8200、RY200、RX200、RY200S、R202などが挙げられる。流動性などの改良や硬化物の機械的強度を向上させる目的で、無機充填剤の含有量(配合量)は、上記(A)~(D)成分の合計100質量部に対し、0.1~100質量部程度であると好ましい。
【0106】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、2-(5-クロロ-2-ベンゾトリアゾリル)-6-tert-ブチル-p-クレゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。紫外線吸収剤の市販品の具体例としては、株式会社ADEKA社のアデカスタブ(登録商標)LA-52、LA-57、LA-63P、LA-68、LA-72、LA-77Y、LA-77Gなど、城北化学工業株式会社製のJF-90、JF-95などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
<流動開始温度>
本発明に係るシート状光硬化性組成物は、硬化前においてtanδ=1となる温度が60~120℃であると好ましい。当該温度が上記範囲内であることで、光硬化性組成物をフィルム状に加工しやすくなるとともに、常温におけるラミネートによる貼り合わせが容易になる。なお、上記tanδ=1の温度は、レオメーターにより測定することができる。tanδとは、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)から算出され、tanδ=G”/G’の関係にあり、「tanδ=1」とは、固体と液体との境目の温度であることを意味する。
【0108】
<貯蔵弾性率>
また、本発明に係るシート状光硬化性組成物は、硬化後において、25℃における貯蔵弾性率が0.1×10~10.0×10Paであると好ましく、0.1×10~5.0×10Paであるとより好ましい。上記貯蔵弾性率は、DMA(動的粘弾性測定)により各周波数で測定することができる。例えば、周波数1Hzでの数値が挙げられる。
【0109】
[光硬化性組成物溶液]
本発明においては、光照射により硬化する前の状態(未硬化の状態)である光硬化性組成物をシート状に加工するため、また、上記シート状光硬化性組成物に含まれる各成分を混合するために、溶剤を使用することもできる。すなわち、本発明の他の態様は、以下の(A)~(D)成分および溶剤を含む、光硬化性組成物溶液である:
(A)成分:(メタ)アクリルトリブロック共重合体
(B)成分:(メタ)アクリレートオリゴマー(ただし、前記(A)成分を除く)
(C)成分:上記式1で表される化合物
(D)成分:光開始剤。
【0110】
<溶剤>
溶剤としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;ジクロロエタン、トリクロロエタンなどの塩素系溶剤;トリクロロフルオロエタンなどのフッ素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;ジメチルエーテル、メチルエチルエーテルなどのエーテル類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶剤などが挙げられる。なかでも、(A)成分~(C)成分との相溶性を考慮するとケトン系溶剤が好ましい。
【0111】
光硬化性組成物溶液に含まれる溶剤の含有量は特に制限されないが、(A)~(D)成分の合計質量100質量部に対して、30~200質量部であると好ましく、50~100質量部であるとより好ましい。当該範囲であれば、光硬化性組成物をシート状に成形する際に300μm以下、さらには200μm以下の膜厚にすることがより容易となる。
【0112】
[光硬化性組成物溶液/シート状光硬化性組成物の製造方法]
<光硬化性組成物溶液の製造方法>
本発明に係る光硬化性組成物溶液の製造方法は、特に制限されず、公知の混合方法によって上記各成分および溶剤を混合することにより得ることができる。各成分の添加順は特に制限されないが、まず、(A)成分および溶剤を撹拌釜に添加して撹拌した後、他の成分を添加して撹拌すると好ましい。この際、混合中に溶剤が揮発している場合、揮発した分の溶剤を補うことが好ましい。製造条件は特に制限されないが、粘度が高くなってしまうことを抑制する目的から、遮光条件下で行うことが好ましい。また、混合条件も特に制限されないが、混合温度は好ましくは10~70℃、より好ましくは20~50℃、特に好ましくは常温(25℃)であり、混合時間(2段階で行う場合には、その合計時間)は好ましくは0.1~5時間、より好ましくは30分~3時間である。
【0113】
<シート状光硬化性組成物の製造方法>
光硬化性組成物をシート状に加工する方法(シート状光硬化性組成物の製造方法)としては、公知の技術を使用することができる。例えば、光硬化性組成物に含まれる各成分に溶剤を添加して意図的に粘度を下げた原液(光硬化性組成物溶液)を調製し、予め表面に離型処理が施された離型紙または離型フィルム(以下、「離型フィルム等」とも記載する)に上記原液を塗工した後(塗工工程)、溶剤を乾燥して(乾燥工程)シート状に加工する方法が挙げられる。これにより、硬化前の状態で25℃においてシート状である光硬化性組成物が得られる。すなわち、本発明のさらに他の態様は、硬化前の状態で25℃においてシート状である光硬化性組成物の製造方法であって、上記光硬化性組成物溶液に含まれる溶剤を揮発させることを含む、シート状光硬化性組成物の製造方法である。このとき、溶剤の揮発を離型紙または離型フィルム上で行うことが好ましい。
【0114】
塗工工程としては、公知の塗布方法を用いることができ、具体例としては、フローコート法、ロールコート法、グラビアロール法、ワイヤバー法、リップダイコート法などが挙げられるが、これらに限定されない。塗工時における原液(光硬化性組成物溶液)の厚み(膜厚)は、特に制限されないが、好ましくは50~300μmである。
【0115】
また、乾燥工程としては、公知の乾燥方法を用いることができる。このとき使用される乾燥装置としては、特に制限されないが、例えば、熱風乾燥炉やIR炉などが挙げられる。また、熱風乾燥炉内に、原液が塗工された状態の離型フィルム等を搬送するコンベアを設けてもよい。
【0116】
乾燥工程の温度は特に制限されず、原液中に含まれる溶剤が十分に揮発する温度であればよいが、例えば、40~150℃であると好ましく、60~120℃であるとより好ましい。また、乾燥時間も特に制限されないが、例えば、1~20分であると好ましく、3~10分であるとより好ましい。さらに、乾燥工程は、乾燥温度を変化させて多段階で行ってもよい。
【0117】
このように形成されたシート状光硬化性組成物は、前述のように離型フィルム等上に形成された構成(シート状光硬化性組成物の片面に離型フィルム等が貼り合わされた構成)を有する。また、シート状光硬化性組成物は、両面に離型フィルム等が貼り合わされていてもよい。さらに、上記塗工時に離型フィルム等を使用しない場合や、塗工時に使用したもの以外の離型フィルム等を使用する場合、シート状光硬化性組成物の片面または両面に離型フィルム等を別途貼り合わせてもよい。
【0118】
離型紙としては、特に制限されるものではないが、例えば、上質紙、クラフト紙、もしくはグラシン紙などの紙の少なくとも片面に、クレー、ポリエチレン、もしくはポリプロピレンなどの目止剤からなる塗布層を設け、その上にシリコーン系、フッ素系、もしくはアルキド系の離型剤が塗布されたものなどが挙げられる。
【0119】
離型フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、布、不織布などを挙げることができる。なかでも、離型性の観点からプラスチックフィルムが好ましい。離型フィルムの厚みは、好ましくは5~300μm、より好ましくは25~200μmである。また、離型フィルムは、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、長鎖アルキル系化合物などによる離型処理が施されたものが好ましい。
【0120】
[硬化物およびその製造方法]
本発明に係るシート状光硬化性組成物は、光(紫外線、可視光などの活性エネルギー線)の照射により硬化することができる。すなわち、本発明のさらに他の態様は、上記シート状光硬化性組成物を硬化させてなる硬化物である。ここでいう光とは、α線やβ線等の放射線、γ線やX線等の電磁波、電子線(EB)、波長150~750nmの照射光を含む広義の光を意味する。なかでも、照射光は、150~750nmの波長域が好ましく、波長150~400nm程度の紫外線、波長400~750nm程度の可視光線であると好ましい。
【0121】
シート状光硬化性組成物を硬化させる際に用いられる光源は特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプまたはLEDランプ等が挙げられる。また、本発明に係るシート状光硬化性組成物を光照射(活性エネルギー線照射)で硬化させる装置としては、上記光源(高圧水銀灯やLEDランプなど)を有する照射装置を用いることができる。当該装置の具体例としては、ベルトコンベア型照射器やスポット照射器などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0122】
積算光量の範囲は特に制限されないが、上記光源を使用して、1~100kJ/mの積算光量で硬化することが好ましく、より好ましくは5~70kJ/mであり、特に好ましくは10~50kJ/mである。
【0123】
[積層体]
上述のように、本発明に係るシート状光硬化性組成物に含まれる各成分に溶剤を添加して光硬化性組成物溶液(原液)を調製し、当該原液を被着体に塗工した後、溶剤を揮発(揮散)させることにより、25℃でシート状である光硬化性組成物と、被着体との積層体を形成することができる。すなわち、本発明のさらに他の態様は、第1の被着体と、シート状光硬化性組成物と、第2の被着体と、がこの順に貼り合わされた(積層された)構成を有する積層体であって、前記シート状光硬化性組成物は、上記光硬化性組成物溶液に含まれる前記溶剤の揮発を前記第1の被着体および/または前記第2の被着体上で行うことにより形成される、積層体である。
【0124】
上記積層体の製造方法の好ましい形態としては、まず、第1の被着体(または第2の被着体)上に光硬化性組成物溶液(原液)を塗工した後、当該原液に含まれる溶剤を揮発(乾燥)させることによりシート状光硬化性組成物を形成し、次いで、当該シート状光硬化性組成物上に第2の被着体(または第1の被着体)を積層させる方法が挙げられる。
【0125】
さらに、このようにして得られた積層体(第1の被着体-シート状光硬化性組成物-第2の被着体が順に積層された構成からなる積層体)中に含まれるシート状光硬化性組成物に対して、活性エネルギー線を照射することによりこれを硬化することにより、第1の被着体と第2の被着体とを接着することができる。したがって、本発明のさらに他の態様は、第1の被着体上に光硬化性組成物溶液(原液)を塗工する工程と、当該原液に含まれる溶剤を揮発(乾燥)させてシート状光硬化性組成物を形成する工程と、当該シート状光硬化性組成物の上に第2の被着体を積層させる工程と、シート状光硬化性組成物に対して活性エネルギー線を照射することによりこれを硬化する工程と、を含む、接着方法である。なお、このときの乾燥条件および硬化条件としては、特に制限されないが、上記<シート状光硬化性組成物の製造方法>の項に記載の乾燥条件および上記[硬化物およびその製造方法]の項に記載の硬化条件とそれぞれ同様である。
【0126】
また、上記のように、本発明に係るシート状光硬化性組成物は、好ましい形態において、光硬化性組成物溶液中に含まれる溶剤の揮発を離型フィルム等の上で行うことによっても得られ、シート状光硬化性組成物の片面に離型フィルム等が貼り合わされた構成を有する。
【0127】
したがって、第1の被着体と第2の被着体とを接着する方法(接着方法)の他の好ましい形態としては、片面に離型フィルム等が貼り合わせてあるシート状光硬化性組成物を用いて、二つの透明な被着体を接着する工程(接着工程)を含む方法もまた挙げられる。当該接着工程は、ラミネート工程および硬化工程を含むと好ましい。
【0128】
ラミネート工程では、シート状光硬化性組成物の離型フィルムが貼り合わされていない側の面(露出面)を、一方の被着体(第1の被着体)に付着(密着)させた状態で、ラミネーターを用いて圧力および熱をかけながら貼り合わせると好ましい。その後、離型フィルムをはがし、もう一方の被着体(第2の被着体)を同様にしてラミネーターにて貼り合わせる。ここで、ラミネート圧力は、特に制限されないが、例えば、0.1~3MPaであると好ましい。また、ラミネート温度は、特に制限されないが、例えば、15~100℃であることが好ましい。
【0129】
貼り合わせに用いる装置としては、ラミネーターの代わりに真空中や減圧雰囲気下で貼り合わせることができる真空プレス機、真空ラミネーターまたはオートクレーブなどを用いてもよい。
【0130】
硬化工程としては、前記ラミネート後の積層体(第1の被着体-シート状光硬化性組成物-第2の被着体の構成からなる積層体)に対して、活性エネルギー線を照射することによりシート状光硬化性組成物を硬化して二つの被着体を接着することができる。なお、このときの硬化条件としては、特に制限されないが、上記[硬化物およびその製造方法]の項に記載の条件と同様である。
【0131】
[用途]
本発明に係るシート状光硬化性組成物は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置の組み立てに用いることができる。具体的には、表示素子、カバーパネル、タッチパネルなどを表示装置に組み立てることや有機EL素子そのものの組み立てに適している。
【0132】
本発明の実施形態を詳細に説明したが、これは説明的かつ例示的なものであって限定的ではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきであることは明らかである。
【0133】
本発明は、下記態様および形態を包含する。
【0134】
1.以下の(A)~(D)成分を含み、硬化前の状態で25℃においてシート状である、シート状光硬化性組成物:
(A)成分:(メタ)アクリルトリブロック共重合体
(B)成分:(メタ)アクリレートオリゴマー(ただし、前記(A)成分を除く)
(C)成分:下記式1で表される化合物
【0135】
【化5】
【0136】
(上記式1中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは酸素原子を含む一価の有機基である)
(D)成分:光開始剤。
【0137】
2.前記(A)成分100質量部に対して、前記(C)成分を0.1~10質量部含む、上記1.に記載のシート状光硬化性組成物。
【0138】
3.前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分を10~80質量部含む、上記1.または2.に記載のシート状光硬化性組成物。
【0139】
4.前記式1中のRは、水素原子であり、Rは、水酸基および/またはエーテル結合を含む、上記1.~3.のいずれかに記載のシート状光硬化性組成物。
【0140】
5.前記(B)成分がウレタン変性(メタ)アクリレートオリゴマーである、上記1.~4.のいずれかに記載のシート状光硬化性組成物。
【0141】
6.(E)成分としてカップリング剤をさらに含む、上記1.~5.のいずかに記載のシート状光硬化性組成物。
【0142】
7.以下の(A)~(D)成分および溶剤を含む、光硬化性組成物溶液:
(A)成分:(メタ)アクリルトリブロック共重合体
(B)成分:(メタ)アクリレートオリゴマー(ただし、前記(A)成分を除く)
(C)成分:上記式1で表される化合物
(D)成分:光開始剤。
【0143】
8.硬化前の状態で25℃においてシート状である光硬化性組成物の製造方法であって、上記7.に記載の光硬化性組成物溶液に含まれる前記溶剤を揮発させることを含む、シート状光硬化性組成物の製造方法。
【0144】
9.前記溶剤の揮発を離型紙または離型フィルム上で行う、上記8.に記載のシート状光硬化性組成物の製造方法。
【0145】
10.第1の被着体と、シート状光硬化性組成物と、第2の被着体と、がこの順に貼り合わされた構成を有する積層体であって、前記シート状光硬化性組成物は、上記7.に記載の光硬化性組成物溶液に含まれる前記溶剤の揮発を、前記第1のおよび/または前記第2の被着体上で行うことにより形成される、積層体。
【実施例0146】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。以下、溶剤を含む光硬化性組成物(すなわち、光硬化性組成物溶液)を単に「原液」とも称することがある。また、当該「原液」から溶剤を揮発させて得られた、硬化前の状態で25℃においてシート状である光硬化性組成物を、単に「シート状組成物」とも称することがある。なお、特に記載がない限り、操作・試験等は25℃、55%RHの環境下で実施した。
【0147】
<光硬化性組成物溶液(原液)の調製>
[実施例1~13および比較例1~11]
(1)原液を調製するために下記成分を準備した。
【0148】
《(A)成分:(メタ)アクリルトリブロック共重合体》
・(メタ)アクリルトリブロック共重合体(PMMA(ポリメチルメタクリレート:ガラス転移温度105℃)を約40質量%、PnBA(ポリn-ブチルアクリレート:ガラス転移温度-54℃)を約60質量%含むPMMA-PnBA-PMMAトリブロック共重合体)(引張伸び:149%)(株式会社クラレ製 クラリティ(登録商標、以下同じ) LA2270)
・(メタ)アクリルトリブロック共重合体(重量平均分子量が約6万である、PMMAを約30質量%、PnBAを約70質量%含むPMMA-PnBA-PMMAトリブロック共重合体)(引張伸び:380%)(株式会社クラレ製 クラリティ LA2250)
・(メタ)アクリルトリブロック共重合体(PMMAを約20質量%、PnBAを約80質量%含むPMMA-PnBA-PMMAトリブロック共重合体)(引張伸び:570%)(株式会社クラレ製 クラリティ LA2140)
・(メタ)アクリルトリブロック共重合体(重量平均分子量が約11万である、PMMAを約20質量%、PnBAを約80質量%含むPMMA-PnBA-PMMAトリブロック共重合体)(引張伸び:490%)(株式会社クラレ製 クラリティ LA2330)
・(メタ)アクリルトリブロック共重合体(PMMAを約15質量%、PnBAを約85質量%含むPMMA-PnBA-PMMAトリブロック共重合体)(引張伸び:540%)(株式会社クラレ製 クラリティ LA3320)
なお、上記(A)成分の引張伸びの値は、ISO37:2017に準拠して測定された値である。
【0149】
《(B)成分:(メタ)アクリレートオリゴマー》
・脂肪族ウレタン変性ジアクリレート(官能基数:2、重量平均分子量(Mw):5,000、ガラス転移温度:-55℃)(ダイセル・オルネクス株式会社製 EBECRYL(登録商標)230)。
【0150】
《(C)成分:上記式1で表される(メタ)アクリレートモノマー》
・HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド)(KJケミカルズ株式会社製 HEAA(登録商標))
・NBMA(N-n-ブトキシメチルアクリルアミド)(株式会社新菱製)。
【0151】
《(C’)成分:上記(C)成分以外のモノマー》
・エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート(サートマー社製 SR502)
・ポリエチレングリコール#600ジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製 NKエステル14G)
・2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製 JPA-514)
・モノ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)ホスフェート(城北化学工業株式会社製 JAMP-514)
・ジメチルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社製 DMAA(登録商標))
・アクリロイルモルフォリン(KJケミカルズ株式会社製 ACMO(登録商標))
・ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社製 DMAPAA(登録商標)
・ジエチルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社製 DEAA(登録商標))。
【0152】
《(D)成分:光開始剤》
・2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製 Omnirad(登録商標) TPO)。
【0153】
《(E)成分:カップリング剤》
・3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503 信越化学工業株式会社製)。
【0154】
《溶剤》
・メチルエチルケトン(試薬)。
【0155】
(2)以下の操作により、各成分を撹拌混合し、原液を得た。
【0156】
(A)成分および溶剤(メチルエチルケトン)を秤量し、撹拌釜中、25℃雰囲気下で1時間撹拌した。この際、撹拌前の総重量から溶剤が揮発していれば、揮発した分の溶剤を補った。その後、(B)成分、(C)成分(または(C’)成分)、(D)成分および(E)成分を秤量して撹拌釜に添加し、遮光して30分間撹拌した。各原液における各成分の含有量(調製量)を表1にそれぞれ示す。なお、表1中の数値は全て質量部を単位として記載した。また、空欄は、該当成分が添加されていないことを示している。
【0157】
【表1-1】
【0158】
【表1-2】
【0159】
<評価>
下記の製造方法により、実施例1~13および比較例1~11の原液を用いてそれぞれシート状組成物を作製した。そして、当該シート状組成物を用いて、レオメーター測定(硬化前)、剥離接着強さ測定(硬化後)、白濁度(ヘーズ)測定(硬化後)および動的粘弾性測定(DMA)(硬化後)を実施した。各シート状組成物について、これらの評価(試験)から得られた結果を以下の表2に示す。なお、表2では、各シート状組成物の番号について、表1に記載された原液の番号をそのまま反映させて表記した。
【0160】
[シート状組成物の製造方法]
塗工機により、実施例1~13および比較例1~11の原液をそれぞれ、200μmのクリアランスで離型フィルム上に塗工した。次いで、500mm/分の速さで、80℃雰囲気とした長さ1.5mの乾燥ラインと、100℃雰囲気とした長さ1.5mの乾燥ラインとを順に通過させて乾燥することによって、原液をシート状にした。このような操作により、シート状組成物を得た。
【0161】
その後、上記とは異なる離型フィルムを貼り合わせて2種類の離型フィルムを付与したシートを作製した。このようにして得られた各シートについて、2種類の離型フィルムを含めた膜厚をシックネスゲージで測定し、2種類の離型フィルムの厚さを差し引いて、シートの膜厚(乾燥後)を求めたところ、いずれも100μmであった。溶剤を揮発させるための乾燥において、溶剤は原液の表面から乾燥していき、内部の溶剤は揮発しにくい。したがって、膜厚を厚くすると塗膜内部に気泡が残留することがあるため、上記塗工時のクリアランスは300μm以下であることが好ましい(下限:0μm超)。
【0162】
[レオメーター測定(硬化前)]
上記手順により得られたシート状組成物を離型フィルムから剥離し、全体の厚みが700μmになるように7枚重ねて、真空ラミネーターを用いて脱気した。Thermo Fisher社のHAAKE MARSIIIを用いて、0~130℃の温度範囲で粘弾性測定を行った。tanδ=1となる温度を「流動開始温度(℃)」とし、その値を表2に示す。本発明では、流動開始温度が60~120℃であると常温におけるラミネートが可能であるといえる。
【0163】
[剥離接着強さ測定(硬化後)]
長さ100mm×幅25mm×厚さ50μmの東洋紡フイルムソリューション株式会社製コスモシャイン(登録商標)A4300(PETフィルム)と、長さ100mm×幅25mm×厚さ2mmの株式会社アサヒビーテクノ製のアクリル樹脂板とを組み合わせてテストピースを作製し、JIS K 6854-2:1999に準拠して180度剥離接着強さを測定した。テストピースの作製条件としては、以下のとおりである。まず、PETフィルムに対して、長さ70mm×幅25mmの領域に、PETフィルム側とは反対側の面に離型フィルムが付されたシート状組成物を重ねた状態で、ロール温度25℃、圧力0.2MPaで熱ロールラミネーターを通し、次いで、離型フィルムを剥がしてアクリル樹脂板を重ねて同条件でもう一度ラミネーターを通した。その後、オートクレーブにて、70℃雰囲気下で圧力0.5MPaとし、20分間放置した。テストピースの温度が室温に下がったことを確認して、ベルトコンベア型紫外線照射器により積算光量が30kJ/mとなるように紫外線(光源:高圧水銀灯)を照射し、シート状組成物を硬化させた。株式会社島津製作所製の精密万能試験機(オートグラフAGX-Vシリーズ)により60mm/分のスピードで引っ張って強度を測定し、平均値を「剥離接着強さ(kN/m)」とした。25℃および85℃における剥離接着強さを「剥離接着強さ1」および「剥離接着強さ2」とそれぞれ称し、表2にその値を示す。上記「剥離接着強さ1」は、1.0kN/m以上であることが好ましく、上記「剥離接着強さ2」は、0.3kN/m以上であることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、剥離接着強さ1は3.0kN/m以下、剥離接着強さ2は2.0kN/m以下であると好ましい。なお、85℃における剥離接着強さは、以下のように測定した。まず、精密万能試験機に付属している恒温槽を85℃に設定し、当該恒温槽を精密万能試験機の後ろ側からスライドさせ、チャックおよびテストピース(上下それぞれのチャックに挟持されたテストピース)の全体を上記恒温槽が覆うように設置した。その後、上記チャックおよびテストピースを10分間恒温槽内で保持した後、上記のように強度を測定した。
【0164】
[白濁度(ヘーズ)測定(硬化後)]
一方の離型フィルムを剥がしたシート状組成物に対して、厚さ0.7mm×幅100mm×長さ100mmの無アルカリガラス板に密着させて、ロール温度を25℃に設定した熱ロールラミネーターにより転写を行った。その後、もう一方の離型フィルムを剥がして、上記と同様の無アルカリガラス板を貼り付けた。その後、テストピースをダイアフラム式真空ラミネーターに入れて120秒間脱気を行い、それぞれのシート状組成物の流動開始温度に設定して圧力0.1MPaで180秒間加圧した。最後にベルトコンベア型紫外線照射器により積算光量が30kJ/mとなるように紫外線(光源:高圧水銀灯)を照射してシート状組成物の硬化物によって無アルカリガラスを貼り合わせたテストピースを作製した。当該テストピースについて、日本電色工業株式会社製の分光ヘーズメーター SH7000を使用して、以下のように白濁度(ヘーズ)測定を行った。780nmから380nmの範囲の波長の光透過率測定を行い、JIS K 7136:2000に従って白濁度を算出した。試験数はn=3とし、平均値を算出した。その結果を「白濁度(単位無し)」として表2に示す。なお、光学用途に使用する場合は、白濁度が0.50以下であると好ましく、0.30以下であるとさらに好ましい。一方、その下限は特に制限されないが、0.01程度である。
【0165】
[動的粘弾性測定(DMA)(硬化後)]
長さ60mm×幅10mm×厚さ0.7mmのシート状組成物に対し、ベルトコンベア型紫外線照射器により積算光量が30kJ/mとなるように紫外線(光源:高圧水銀灯)を照射して硬化物を作製した。株式会社日立ハイテクサイエンス製の動的粘弾性測定装置DMS6100により周波数1Hzで温度範囲-50~100℃で測定した。周波数1Hzで25℃における「貯蔵弾性率(×10Pa)」を確認し、その値を表2に示した。なお、表2では、単位を「×10Pa」として記載した。貯蔵弾性率は0.1×10~10.0×10Paであることが好ましい。
【0166】
【表2】
【0167】
通常、剥離接着強さが向上しにくいPETフィルムを被着体(基材)として使用した剥離接着強さの測定試験において、実施例1~13では、25℃雰囲気下で1.0kN/m以上、85℃雰囲気下でも0.3kN/m以上と共に高い剥離接着強さを示した。明確な理由は分からないが、(C)成分として、式1で表される化合物を使用することで、シート状組成物が、PETフィルム表面に対して適度に親和性が高い状態となり、高い剥離接着強さが得られていると推測される。また、例えば、比較例2~4は、硬化物の貯蔵弾性率を低くすることができたが、本発明における(C)成分を含まない組成物である場合、剥離接着強さ1が小さく、その硬化物と被着体との界面で剥離が発生しているものと考えられる。さらに、実施例および比較例から、(A)成分の種類により流動開始温度が変化することが分かるが、貼り合わせ作業を行う際、それぞれのシート状組成物の流動開始温度となるように設定して貼り合わせ作業を行うことで、白濁度を低く抑えることができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明は液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置の組み立てに用いることができる。具体的には、表示素子、カバーパネル、タッチパネル、VRゴーグルなどを表示装置として組み立てることや有機EL素子そのものの組み立てに適しており、被着体が平面ではなく曲面であっても適用することができる。
【0169】
本出願は、2020年12月11日に出願された日本特許出願番号2020-205609号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として組み入れられている。