(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093327
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】気化器
(51)【国際特許分類】
F17C 9/02 20060101AFI20220616BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
F17C9/02
F17C13/00 302Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029228
(22)【出願日】2022-02-28
(62)【分割の表示】P 2020205824の分割
【原出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】江頭 慎二
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB13
3E172AB20
3E172BA04
3E172BB05
3E172DA90
3E172EB03
3E172GA17
3E172GA23
3E172KA03
(57)【要約】
【課題】低温液化ガス気化器において、主成分と、沸点が主成分の沸点よりも高い高沸点成分とを含む液化ガスを気化させる場合に、高沸点成分がシェル内に蓄積することを抑制する。
【解決手段】気化器10は、シェル15と、シェル15内に液化ガスを供給する供給部35と、第1加熱流体が流れる複数の伝熱管16と、気化した液化ガスの主成分を導出させる導出部41と、シェル15内に溜まった液化ガスを流出させる液流出部45と、液流出部45から導出された液化ガスを第2加熱流体によって気化させる加熱器12とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分と、前記主成分の沸点よりも高い沸点を有する高沸点成分とを含む液化ガスを気化させる気化器であって、
シェルと、
前記シェル内に前記液化ガスを供給する供給部と、
前記シェル内に配置され、前記液化ガスの前記主成分を気化させる温度を有する第1加熱流体が導入される複数の伝熱管と、
前記シェル内で気化した前記主成分を前記シェルから導出させる導出部と、
前記シェルの底部に配置され、前記シェル内に溜まった前記液化ガスを前記シェルから流出させる液流出部と、を備え、
前記液流出部を通して前記シェルから導出された前記液化ガスに含まれる前記主成分を気化させる、気化器。
【請求項2】
前記シェル内に溜まった前記液化ガスを前記液流出部を通して引き込むポンプを備える請求項1に記載の気化器。
【請求項3】
前記導出部から前記主成分を流出させる導出配管と、
前記液流出部から前記液化ガスを流出させる接続管と、
前記導出配管を流れる前記主成分を加熱する加熱部と、を備え、
前記加熱部により加熱された前記主成分は、前記接続管からの前記液化ガスと合流する、請求項1または請求項2に記載の気化器。
【請求項4】
前記導出部から前記主成分を流出させる導出配管と、
前記液流出部から前記液化ガスを流出させる接続管と、を備え、
前記導出配管を流れる前記主成分は、前記接続管からの前記液化ガスと合流する、請求項1または請求項2に記載の気化器。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の気化器において、
前記供給部は、前記シェル内に前記液化ガスを供給する供給口を有しており、
前記供給口は、前記シェル内において、前記複数の伝熱管のうち最も下に位置する伝熱管よりも上に位置する、気化器。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の気化器において、
前記供給部は、前記シェル内に前記液化ガスを供給する供給口を有しており、
前記供給口は、前記シェル内において、前記シェル内に溜まった液化ガスの液面よりも上に位置する、気化器。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の気化器において、
前記供給部を通して前記シェル内に供給される液化ガスの流量に対する、前記液流出部から導出される液化ガスの流量の割合の値は、前記供給部を通して供給される前記液化ガスに含まれる前記高沸点成分の割合以上の値である、気化器。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の気化器において、
前記供給部を通して前記シェル内に供給される液化ガスに含まれる高沸点成分の流量は、前記液流出部から流出する液化ガスに含まれる高沸点成分の流量と同じである気化器。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れか1項に記載の気化器において、
前記液化ガスは、水分を含む液化アンモニアであり、前記第1加熱流体は水である、気化器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液化天然ガス等の低温の液化ガスを気化させる気化装置として、伝熱管の外表面に海水等の熱源流体を流下させて伝熱管内を流れる液化ガスを気化させるオープンラック式の気化器、熱源流体に加えて中間媒体を用いる中間媒体式の気化器、円柱状の胴体と伝熱管から構成されたシェルアンドチューブ式の気化器等が知られている。特許文献1には、シェルアンドチューブ式の気化器が開示されており、熱源流体として入手が容易な工水または海水が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の気化器は、伝熱管内に流通させた液化ガスを、シェル内の加熱流体によって気化させるように構成されている。これに対して、熱源流体に海水を用いる場合には、気化器のシェル内における隙間腐食防止や洗浄性向上の観点から、シェル内の液化ガスを、伝熱管内に流通させた熱源流体によって気化させることも可能である。
【0005】
液化ガスには、主成分と、沸点が主成分の沸点よりも高い高沸点成分とを含む液化ガスがある。この種の液化ガスを、伝熱管内に海水を流入させ且つシェル内に液化ガスを流入させる構成の気化器を用いて気化させることを考えた場合、シェル内に高沸点成分が蓄積される虞があると推測される。すなわち、シェル内の液化ガスでは主成分が優先的に気化するため、シェル内に溜まる液化ガス内に高沸点成分が蓄積される傾向があると推測される。
【0006】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、主成分と、沸点が主成分の沸点よりも高い高沸点成分とを含む液化ガスをシェル内で気化させる場合において、高沸点成分がシェル内に蓄積することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る気化器は、主成分と、前記主成分の沸点よりも高い沸点を有する高沸点成分とを含む液化ガスを気化させる気化器であって、シェルと、前記シェル内に前記液化ガスを供給する供給部と、前記シェル内に配置され、前記液化ガスの前記主成分を気化させる温度を有する第1加熱流体が導入される複数の伝熱管と、前記シェル内で気化した前記主成分を前記シェルから導出させる導出部と、前記シェルの底部に配置され、前記シェル内に溜まった前記液化ガスを前記シェルから流出させる液流出部と、を備え、前記液流出部を通して前記シェルから導出された前記液化ガスに含まれる前記主成分を気化させる。
【0008】
本発明では、シェル内に溜まった液化ガスと伝熱管内の第1加熱流体との熱交換がされることにより、液化ガスの主成分の大部分が気化する。この気化したガスは導出部を通じてシェル外に導出される。一方、気化しない高沸点成分はシェル内に溜まる液化ガス内にとどまる。しかしながら、このシェルの底部に溜まった液化ガスは液流出部を通してシェル外に抜き出されるので、シェル内において、高沸点成分が蓄積されることを抑制できる。したがって、シェル内に溜まった液化ガスにおいて、高沸点成分が次第に濃縮されることを抑制できる。しかも、液流出部を通して流出した、高沸点成分を含む液化ガスが気化するので、シェルから液の状態で抜き出された主成分をガス状にして得ることができる。
【0009】
前記気化器は、前記シェル内に溜まった前記液化ガスを前記液流出部を通して引き込むポンプを備えていてもよい。
【0010】
前記気化器は、前記導出部から導出された前記主成分を流入させる導出配管と、前記液流出部から流出した前記液化ガスを流入させる接続管と、前記導出配管を流れる前記主成分を加熱する加熱部と、を備えていてもよく、前記加熱部により加熱された前記主成分は、前記接続管からの前記液化ガスと合流してもよい。
【0011】
前記気化器は、前記導出部から導出された前記主成分を流入させる導出配管と、前記液流出部から流出した前記液化ガスを流入させる接続管と、を備えていてもよく、前記導出配管を流れる前記主成分は、前記接続管からの前記液化ガスと合流してもよい。
【0012】
前記供給部は、前記シェル内に前記液化ガスを供給する供給口を有していてもよく、その場合、前記供給口は、前記シェル内において、前記複数の伝熱管のうち最も下に位置する伝熱管よりも上に位置していてもよい。
【0013】
この態様では、供給部の供給口を通してシェル内に供給された液化ガスが伝熱管内の第1加熱流体と熱交換しないまま液流出部を通してシェル外に流出することを抑制できる。したがって、シェル内において第1加熱流体と液化ガスとの熱交換を効果的に行うことができる。
【0014】
前記供給部は、前記シェル内に前記液化ガスを供給する供給口を有していてもよく、その場合、前記供給口は、前記シェル内において、前記シェル内に溜まった液化ガスの液面よりも上に位置していてもよい。
【0015】
この態様では、供給部の供給口を通して供給された液化ガスはシェル内に溜まった液化ガスに液面側から合流する。このため、供給された液化ガスが、伝熱管内の第1加熱流体と熱交換せずに液流出部を通じてシェル外に流出することを防止できる。これにより、シェル内において、第1加熱流体と液化ガスとの熱交換を効果的に行うことができる。
【0016】
前記気化器では、前記供給部を通して前記シェル内に供給される液化ガスの流量に対する、前記液流出部から導出される液化ガスの流量の割合の値は、前記供給部を通して供給される前記液化ガスに含まれる前記高沸点成分の割合以上の値でもよい。
【0017】
この態様では、シェル内に供給される液化ガスに含まれる高沸点成分の割合以上の割合の高沸点成分を含む液化ガスが、液流出部を通してシェルから導出される。このため、シェル内に供給される高沸点成分の量を、シェルから導出される高沸点成分の量以上の量にすることができる。したがって、シェル内に溜まる液化ガスに含まれる高沸点成分の割合が無制限に高くなることを防止できるため、シェル内に溜まる液化ガスにおいて、高沸点成分が無制限に濃縮されることを防止できる。
【0018】
前記気化器では、前記供給部を通して前記シェル内に供給される液化ガスに含まれる高沸点成分の流量は、前記液流出部から流出する液化ガスに含まれる高沸点成分の流量と同じでもよい。
【0019】
この態様では、シェル内に溜まる液化ガスに含まれる高沸点成分の量の増加は抑制される。したがって、シェル内に溜まる液化ガスに含まれる高沸点成分の濃縮を防止できる。
【0020】
前記液化ガスは水分を含む液化アンモニアであってもよく、前記第1加熱流体は水であってもよい。
【0021】
この態様では、海水、工業用水等の水を用いて液化アンモニアを加熱し、アンモニアガスを得ることができる。したがって、ランニングコストが過大になることを防止しつつ、アンモニアガスを得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、主成分と、沸点が主成分の沸点よりも高い高沸点成分とを含む液化ガスをシェル内で気化させる場合において、高沸点成分がシェル内に蓄積することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に示す気化器の構成を概略的に示す図である。
【
図2】第2実施形態に示す気化器の構成を概略的に示す図である。
【
図3】第3実施形態に示す気化器の構成を概略的に示す図である。
【
図4】その他の実施形態に示す気化器の一部の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
<第1実施形態>
図1に示すように、第1実施形態に係る低温液化ガス気化器(以下、気化器と称する)10は、液化ガスを加熱流体によって気化させるための気化器である。ここで、液化ガスとは常温で気体状態であって低温に冷却することで液状となる流体であり、本実施形態では液化ガスとして液化アンモニアを用いるが、これに限らず、例えば液化二酸化炭素等であってもよい。
【0026】
液化アンモニアには、主成分であるアンモニアと、主成分の沸点よりも高い沸点を有する高沸点成分である水とが含まれる。気化器10では、供給された液化ガスのうち主成分である液状のアンモニアが優先的に気化し、ガス状のアンモニアを需要先に供給する。なお、液化二酸化炭素にも高沸点成分である水が含まれるため、気化器10において液化二酸化炭素を気化させる場合には、二酸化炭素が優先的に気化する。このため、水が気化器10内に残りやすい。ただし、高沸点成分は水に限らず、主成分の沸点よりも高い沸点を有する他の流体でもよい。
【0027】
気化器10は、液化ガスと第1加熱流体とを熱交換させる主熱交換器11と、主熱交換器11から流出された液化ガスを加熱する加熱器12と、を備えている。
【0028】
主熱交換器11は、シェルアンドチューブ式の熱交換器であり、シェル15と、シェル15内に配置された複数の伝熱管16とを備えている。シェル15は、一方向に延びる筒状の胴部21と、胴部21の一端側に位置する第1管板22と、胴部21の他端側に位置する第2管板23とを備えている。シェル15は、胴部21、第1管板22及び第2管板23により中空状に形成されている。複数の伝熱管16は、第1管板22及び第2管板23に架け渡されている。
【0029】
複数の伝熱管16は、水平方向に直線的に延びるように配設されている。複数の伝熱管16は、シェル15の長手方向に間隔をおいて配置された複数の保持部材18によって支持されている。
【0030】
シェル15には、入口室25と出口室26が隣接している。入口室25は、第1管板22側に隣接しており、出口室26は第2管板23側に隣接している。第1管板22に室形成部27が接続されることにより、シェル15の端部に中空状の入口室25が形成されている。また、第2管板23に室形成部28が接続されることにより、シェル15の端部に中空状の出口室26が形成されている。入口室25及び出口室26は、複数の伝熱管16を通して互いに連通している。
【0031】
入口室25には、入口ポート31が設けられており、第1加熱流体は、入口ポート31を通して外部から入口室25内へ導入される。入口室25内の第1加熱流体は、複数の伝熱管16を通して出口室26に導入される。出口室26には、出口ポート32が設けられており、第1加熱流体は出口ポート32を通して出口室26内から外部へ排出される。第1加熱流体は、海水、工業用水等の水である。すなわち、第1加熱流体は、液化ガスの沸点よりも高温の流体である。なお、第1加熱流体は、高沸点成分の沸点よりも高温であってもよい。この場合でも、連続運転した場合に高沸点成分が気化することなくシェル15内に溜まることがある。
【0032】
シェル15内には、液化ガスをシェル15内に供給する供給部35が設けられている。供給部35は、シェル15内において複数の伝熱管16の延びる方向に延びるように配置された供給管36と、供給管36からシェル15外に延びるように配置された接続管37と、を備えている。
【0033】
供給管36は、複数の伝熱管16よりも上方に配置されている。供給管36には、長手方向に間隔をおいて配置された複数の供給口38が設けられ、この複数の供給口38を通して液化ガスをシェル15内に供給する。
【0034】
供給管36は、シェル15内に溜まった液化ガスの液面よりも上方に位置している。したがって、複数の供給口38から供給された液化ガスは落下して液面に降り注ぐ。
【0035】
接続管37は、上端が胴部21の上部に固定されており、下端が供給管36の端部に接続されている。すなわち、接続管37は供給管36を支持している。接続管37の上端には、シェル15の外部から液化ガスを流入させる外部配管39が接続される。なお、
図1では、接続管37の下端が供給管36の端部に接続された構成を示しているが、接続管37は供給管36の中間部に接続されていてもよい。また、供給管36は、1本の管部材によって構成されていてもよいが、接続管37から分岐する複数の管部材によって構成されていてもよい。
【0036】
シェル15内においては、複数の伝熱管16内を流れる第1加熱流体と、シェル15内に溜まった液状の液化ガスとの間で熱交換が行われ、液化ガスの主成分の大部分が気化する。このため、シェル15の上部には、気化した主成分ガスをシェル15外に導出する導出部41が設けられている。導出部41には、導出配管42が接続されており、主成分ガスはこの導出配管42を通して需要先に送られる。
【0037】
一方、シェル15内には、液状の液化ガスが溜まっているが、この液化ガスには、第1加熱流体との熱交換によっては気化しない高沸点成分が含まれている。このため、シェル15の底部には、高沸点成分を含む液状の液化ガスをシェル15から流出させる液流出部45が設けられている。液流出部45は、胴部21の底面に位置していてもよいが、胴部21の側面における下端部に位置していてもよい。
【0038】
液流出部45には接続管46が接続されており、接続管46には、加熱器12とポンプ47とが設けられている。ポンプ47は、シェル15内に溜まった液状の液化ガスを液流出部45を通して接続管46内に引き込む。ポンプ47の作動によって接続管46を流れる液化ガスは、加熱器12に導入される。
【0039】
ポンプ47は、所定量の液化ガスを、液流出部45を通してシェル15から導出させるように設定されている。すなわち、ポンプ47は、供給部35を通してシェル15内に供給される液化ガスに含まれる高沸点成分の流量と同じ流量の高沸点成分を含む液化ガスをシェル15から流出させるように、設定されている。このため、ポンプ47が作動すると、シェル15内に供給される液化ガスに含まれる高沸点成分の流量と同じ流量の高沸点成分を含む液化ガスが、液流出部45を通してシェル15から導出される。したがって、シェル15内に液化ガスが溜まった状態で連続運転を継続したとしても、シェル15内で溜まっている液化ガス中に含まれる高沸点成分の量が次第に増加することを防止することができる。
【0040】
ポンプ47は、見方を変えれば、供給部35を通してシェル15内に供給される液化ガスの流量に対する、液流出部45から導出される液化ガスの流量の割合の値が、供給部35を通して供給される液化ガスに含まれる高沸点成分の割合の値以上の値となるように、設定されている。なお、ここでいう「液化ガスに含まれる高沸点成分の割合の値」とは、質量基準の値(質量%)であってもよいし、体積基準の値(体積%)であってもよい。
【0041】
なお、接続管46にはポンプ47が設けられていなくてもよく、その場合、シェル15内の液化ガスの液面と、加熱器12における液化ガスの液面との高低差によって、液化ガスが流れるように構成される。
【0042】
加熱器12は、接続管46を通して導入された液化ガスを、外部から供給される第2加熱流体によって気化させるよう構成された熱交換器である。第2加熱流体は、第1加熱流体よりも高温の流体であり、例えば、温水、水蒸気等である。第2加熱流体は、高沸点成分の沸点よりも高温であってもよい。加熱器12において第2加熱流体によって加熱されて気化したガスは、需要先に送られる。なお、接続管46には導出配管42が接続されているため、第2加熱流体によって気化したガスは、導出部41を通してシェル15から導出されたガスに合流した上で需要先に送られる。
【0043】
上記のように構成された気化器10の運転時には、外部配管39から供給部35へ供給された液化ガスは、複数の供給口38から供給されて、シェル15内の液化ガスの液面に降り注がれる。シェル15内に溜まった液化ガスは複数の伝熱管16内を流れる第1加熱流体と熱交換して気化する。したがって、シェル15内の液化ガスは、飽和圧力の状態となっている。このとき、液化ガスの主成分の沸点が、高沸点成分の沸点よりも低いため、主成分は優先的に気化する。気化した液化ガス(主成分)は、導出部41を通じて導出配管42へ流出する。気化されなかった液化ガスは、シェル15内に溜まる。
【0044】
例えば主成分であるアンモニアと、高沸点成分である水との場合では、水の方がアンモニアよりも比重が大きい。このため、液化ガスのうち、高沸点成分がより多く溶存している部分が、シェル15の底部に移動し易い。すなわち、シェル15内に溜まる液化ガスにおいて、上方よりも下方の方が高沸点成分の濃度が大きくなり易い。
【0045】
シェル15内に溜まっている液化ガスは、ポンプ47の作動により、シェル15底部の液流出部45から抜き出されて加熱器12に送られる。このとき、シェル15内に供給される高沸点成分の流量よりも大きな流量の高沸点成分を含む液化ガスが、液流出部45を通してシェル15から導出される。
【0046】
加熱器12に流入した液化ガスは、第2加熱流体との熱交換によって加熱されて気化する。このとき、液化ガスの主成分であるアンモニアと、高沸点成分である水とが、ともに気化する。加熱器12で気化したガスは、接続管46を通じて需要先に供給される。
【0047】
なお、本実施形態では、加熱器12が、高沸点成分をも気化させる構成となっているが、これに限られるものではなく、加熱器12において、高沸点成分が気化しない設定となっていてもよい。この場合には、主成分が高沸点成分と分離した上で、ガス状の主成分のみを需要先に供給することもできる。
【0048】
上記のごとく構成された気化器10では、シェル15に流入した液化ガスにおいて、液化ガスの主成分の大部分は、複数の伝熱管16を流通する第1加熱流体との熱交換によって加熱されて気化し、導出部41を通じてシェル15外に導出される。一方で、気化しなかった高沸点成分はシェル15内に溜まる液化ガス内にとどまる。しかしながら、このシェル15の底部に溜まった液化ガスは液流出部45を通じてシェル15外に抜き出されるので、シェル15内において、高沸点成分が蓄積することを抑制できる。しかも、加熱器12によって、液流出部45から流出した高沸点成分を含む液化ガスをも気化させて、需要先に供給できる。したがって、加熱器12で使用される第2加熱流体は、シェル15内で気化しなかった液化ガスのみを加熱するため、第2加熱流体の使用量が過大になることを防止できる。
【0049】
さらに、シェル15内の液化ガスにおいて、高沸点成分の比重が主成分の比重より重い場合、上側よりも下側の方が高沸点成分の濃度が大きくなり易く、特にシェル15底部では高沸点成分の濃度が大きくなり易い。このため、シェル15の底部に配置された液流出部45によって、より多く高沸点成分を抜き出すことができ、シェル15内の高沸点成分の蓄積をさらに抑制できる。
【0050】
一方、本実施形態では、供給部35の供給口38は、シェル15内に溜まる液化ガスの液面よりも上方に位置しており、供給部35を通して供給された液化ガスは、シェル15内溜まった液化ガスに液面側から合流する。このため、供給された液化ガスが、伝熱管16内の第1加熱流体と熱交換することなく液流出部45を通じてシェル15外に流出することを防止できる。したがって、シェル内において、第1加熱流体と液化ガスとの熱交換を効果的に行うことができる。
【0051】
また本実施形態では、液化ガスに含まれる主成分及び高沸点成分は、加熱器12における第2加熱流体との熱交換によって気化する。したがって、ガス状の主成分及び高沸点成分を需要先に供給できる。
【0052】
また本実施形態の気化器10では、供給部35を通してシェル15内に供給される液化ガスの流量に対する、液流出部45から導出される液化ガスの流量の割合の値は、供給部35を通して供給される液化ガスに含まれる高沸点成分の割合以上の値である。このため、シェル15内に供給される高沸点成分の流量と、シェル15から流出する高沸点成分の流量とは同じ又はそれ以上の流量になる。すなわち、シェル15内に供給される液化ガスに含まれる高沸点成分の割合に相当する流量と同じ又はそれ以上の流量の高沸点成分を含む液化ガスが、液流出部45を通してシェル15から導出され。このため、シェル15内に溜まる液化ガスに含まれる高沸点成分の割合が無制限に高くなることを防止できる。したがって、シェル15内に溜まる液化ガスにおいて、高沸点成分が無制限に濃縮されることを防止できる。
【0053】
なお、気化器10は、シェル15に供給される液化ガスに含まれる高沸点成分の流量と同じ流量の高沸点成分を含む液化ガスが、シェル15から導出されるが、これ以外でもよい。例えば、シェル15に供給される液化ガスに含まれる高沸点成分の割合と、シェル15から流出する高沸点成分の割合とが同じ割合(平衡状態)となってもよい。
【0054】
なお、導出配管42において、接続管46と合流する前に主成分を加熱する第2の加熱器(図示省略)が設けられていてもよい。この第2の加熱器では、加熱器12で用いられる第2加熱流体と同じ加熱流体が加熱源として用いられてもよく、これとは別個の加熱流体が加熱源として用いられてもよい。
【0055】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る気化器10について、
図2を参照しながら説明する。ここでは、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0056】
第2実施形態の気化器10では、導出配管42は、加熱器12よりも上流側で且つポンプ47の下流側において、接続管46に合流している。このため、導出部41から流出されたガス状の主成分と、液流出部45から流出された液化ガスとは合流した後に、加熱器12に導入される。これにより、加熱器12においては、液流出部45から流した液化ガスだけでなく、導出部41から導出したガス状の主成分をも加熱される。したがって、ガス状の主成分をより高い温度に上げることができるため、高温のガスを要求する需要先に対応できる。
【0057】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
【0058】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る気化器10について、
図3を参照しながら説明する。ここでは、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
第2実施形態では、導出部41を流れるガス状の主成分と液流出部45を流れる液化ガスとは、加熱器12に導入される前に合流している。これに対し、第3実施形態では、導出部41を流れるガス状の主成分と液流出部45を流れる液化ガスとは、合流することなく別個に加熱器12に導入される。
【0060】
加熱器12は、導出配管42に連通する複数の流路を有する第1低温層と、接続管46に連通する複数の流路を有する第2低温層と、第2加熱流体が導入される複数の流路を有する高温層と、が積層された構成の積層型熱交換器によって構成される。第1低温層では、ガス状の主成分が加熱されてより高温の主成分となる。一方、第2低温層では、液状の液化ガスが気化してガスとなる。第1低温層で加熱された主成分と、第2低温層で気化したガスとは、加熱器12から導出された後で合流されて、需要先に供給される。
【0061】
第3実施形態においても、導出部41から流出したガス状の主成分をより高い温度に上げることができる。
【0062】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第2実施形態の説明を第3実施形態に援用することができる。
【0063】
<その他の実施形態>
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上述した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0064】
第1~第3実施形態では、供給部35の供給管36は、シェル15内に溜まった液化ガスの液面よりも上に位置するように配置されているが、これに限られない。例えば、
図4に示すように、供給管36は複数の伝熱管16のうち最も下に位置する伝熱管よりも上に位置していれば、液化ガスの液面よりも下に位置していてもよい。この構成でも、供給部35を通してシェル15内に供給された液化ガスが、複数の伝熱管16内の第1加熱流体と熱交換しないまま液流出部45を通じてシェル15外に流出することを抑制できる。したがって、シェル15内において、第1加熱流体と液化ガスとの熱交換を効果的に行うことができる。なお、供給管36の位置は、最も上側に位置する伝熱管と最も下側に位置する伝熱管との間の高さ位置であってもよく、最も上側に位置する伝熱管と液面との間の高さ位置であってもよい。
【0065】
第1~第3実施形態では、主熱交換器11において、複数の伝熱管16は、第1管板22から第2管板23に向けて、一方向に延びるように形成されているが、この構成に限られない。例えば、複数の伝熱管16はそれぞれU字形に形成されていてもよい。この場合、複数の伝熱管16の両端は第1管板22に接続され、シェル15において、第1管板側の端部に入口室25及び出口室26が隣接する構成となる。
【符号の説明】
【0066】
10 気化器
11 主熱交換器
12 加熱器
15 シェル
16 伝熱管
35 供給部
38 供給口
41 導出部
45 液流出部